ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部
――デザリアム戦役が熱を帯び始め、ネオ・ジオンも蜂起した。そして、兵力温存が成功した百鬼帝国と結ぶ事で、兵力の回復に成功したミケーネ帝国も再起を賭けて蜂起し、パルチザンの頭痛の種となっていた。地球連邦軍に組織的抵抗力はないため、パルチザンがその矢面に立つこととなった――
――カシオペア 作戦室(のび太が看病され始めてから半日後)――
「新たに、ミケーネ帝国と百鬼帝国が、死に体同然のベガ星連合軍を併合して蜂起した。なお、恐竜帝国とドクターヘル軍団の残存兵力も取り込んでおり、ギリシアを中心に展開している」
藤堂が説明する。敵は地球と宇宙のスーパーロボットの敵軍団の集団であり、機械獣、戦闘獣、ベガ獣、円盤獣、ベガ獣、メカザウルスと雑多な兵力である。百鬼帝国の百鬼メカは母艦中心の供出らしく、メカ要塞鬼を出している。スーパーロボットの敵らしく、重装甲であり、多くのジム系量産機では相手にならない強さである。
「へっ、まだ生きていやがったのか、トカゲに鬼、それと古代人が」
「竜馬、あまりガキ共をビビらせるなよ?」
「ったく、最近はガキが増えて面倒だぜ」
「お前の倅もいるんだし、ちっとは父親らしところ見せたらどうだ」
「つか、別の俺の倅だぜ?」
竜馬はこの未来世界においては、弁慶の行方不明をきっかけに、空手道場を経営して隠居していたので、服装が行者姿の僧衣となっている。以前より筋肉質な体つきに成長した事もあり、子供が見たら泣くこと間違い無しの風貌である。また、空手道場を経営していたため、身体能力は磨きがかかり、素手で爬虫類人を一撃で撲殺できるほどになっている。
「お前の倅には変わりないだろうが。それにゲッちゃんの面倒もあるんだぞ」
「おいおい、女の面倒なんざ、中1の時に事故で死んだ妹以来だし、もう遠い昔だぞ」
「妹がまたできたつもりでやれ。俺はガラじゃないしな」
「分かったよ。戻ってきたばかりの弁慶にはやらせられねぇしな。あいつが一番向いてると思うんだけどな」
愚痴る竜馬。ゲッちゃんの面倒を押し付けられたからだ。隼人は號チームの指揮官としての責務もあり、多忙だ。竜馬はやることがパイロット以外にはないため、隼人は体よく竜馬に押し付けたわけだ。今回は弁慶がゲッターの使者という形で早期に復活したが、弁慶は身体検査が目白押しであり、暇がないという最もな理由もあったが。
「それにしても、こんな怪獣みたいなロボット持ってるのに、なんでこっちのゲッターとかマジンガーの劣化版みたいなのまであるんデスか?」
「それは恐らく、平行世界から設計図、あるいは現物を回収したり、製造メーカーからの横流し品も含まれると思われる。特にゲッタードラゴンはこちらのデータと差異が大きく、量産重視のセッティングが成されている事から、開発理由が異なる世界から回収したのだろう」
ウィッチ世界にも何度か姿を見せ、ダイ・アナザー・デイ作戦でも鹵獲されている量産型ゲッタードラゴンは、ゲッター線増幅炉にリミッターがあり、ワンオフ機であるオリジナル版の70%程度の出力であり、カラーリングも簡略化されている。また、オリジナル版にはない無限合体機能がついていたので、『巨大なゲッターを構成する一部分』ではないか、と、敷島博士は推測している。量産型グレートも、Gカイザーを生み出す理由、エンペラー開発のきっかけである。超合金ニューZは頑丈そのものであり、シンフォギアやISさえも傷をつける事すら極めて困難である。(超合金ニューZは物理的強度もそうだが、Z神の加護があるジャパニウムの特性を更に強化しているため、イガリマ、天羽々斬、アガートラーム、シュルシャガナの攻撃を完全に防げる)そのためか、シンフォギア装者達の内、マリアと切歌はジャパニウムから精錬された合金である『超合金』を厄介と見ているようだった。調は共有意識から、超合金ニューZα及び、そのハイブリッド素材『ニューゲッター合金』を生成できるため、さほど脅威とは見ていない。が、アームドギアを寄せ付けない防御力の装甲があるという事実は、通常の装者には充分に脅威である。
「マリア、これは不味いですよ」
「ジャパニウムはゼウスの加護を持つ。通常の金属の概念を超えた一面がある。現状、それに真っ向から対抗できるのは、調が綾香から引き継いだ能力で作る武器だけ……。厄介ね」
マリアはほぼ例外なく、ジャパニウム系合金にはアームドギアでは歯が立たなかったという事実(ひいてはノイズの炭素化も、通常攻撃無効化も『理を以て、常識を覆す』の論理で無効化した)に焦りを見せた。実際、Gカイザーはシンフォギア世界の常識を覆すような事を引き起こしまくり、しかも『明らかにロボットなのに、アルカ・ノイズの攻撃をシャットアウトし、蹂躙していた』。誰も見ていないのが幸運だろうか。(下手すれば、装者の存在意義を揺るがすため)
「ミケーネ帝国は以下の幹部により、統制を取り戻しつつある。その内、あしゅら男爵の真の正体が判明した。彼の本当の姿は『トリスタンとイゾルデ』という名のミケーネ帝国の神官を勤めていた夫婦である」
「トリスタンとイゾルデ…!?」
「彼らはドクターヘルが蘇らせる以前、即ち生前は夫婦だった。それぞれ神官であり、巫女だった。その能力は高く、正に超人と言っていい」
あしゅら男爵が真の記憶に目覚め、それまでの三下感を吹き飛ばす幹部感を漂わせる大物ぶりを発揮しだした事にパルチザンの軍出身者や甲児達がどよめく。彼らは『間の抜けた三下』という認識を、あしゅらに対して持っていたからだ。
「ロボットガールズが偵察に向かったが、連絡が途絶えた。そこで残留組である、ガイちゃん、グレちゃんと共に誰かを救援に向かわせたい。志願者は?」
「私が行きます」
調は、レヴィや黒江、智子、なのはは幹部であり、デザリアム対策で安易に動くわけにはいかず、アイオリア(体はフェイト)に安易に頼るわけにもいかない事も知っているため、ロボットガールズの救援に志願した。デザリアムの事も気がかりなパルチザンに取って、安易な行動は壊滅を意味する。そこでロボットガールズは重宝されているのだが、あしゅら、いやトリスタンとイゾルデは彼女らすらも凌駕しうる可能性を秘めている。また、現状、ガイちゃんとグレちゃんに肩を並べる戦闘力を持つのは、シンフォギア装者/IS操縦者では自分のみという認識もあった。
「調、貴方……!?」
「マリア、切ちゃん。のび太くんの看病をお願い。あしゅら男爵――いや、トリスタンとイゾルデと戦える装者は……私だから。藤堂総長、ぜひ私にやらせてください」
「分かった。ギアを展開し、グレちゃんとガイちゃんに合流したまえ。格納庫にいるはずだ」
「了解!」
「悔しいけど、ここは貴方に託すわ。貴方は変わった。どことなくだけど、響に似た何かを感じる……。綾香との出会いが変えたの?」
「師匠だけじゃないよ。色々な人たちとの出会いがあって、別れて……。私は変われた。全部が守れたわけじゃないけど、何かは見いだせた。今は――!Various shul shagana tron……」
シンフォギアの起動シークエンスである聖詠。心象と一定の適合率により、聖詠の最後の部分が異なり、適合率が低く、尚且つ何かの負の感情が極端に強いと『zizzl』となり、純真かつ、一途な思いと一定の適合率があれば『tron』となる。調の場合、適合率が跳ね上がった影響で、ギアは当初のものよりカラーリングが大きく変化しており、白の割合が増えてヒロイックになっている。マリアと切歌は『黒江が纏う』ギアとしては見慣れていたが、正真正銘、調が纏う光景を目にするのは、これが初めてだった。
「調、気をつけるデス……」
「ありがとう、切ちゃん。今ならはっきり戦う理由を言える。『みんなの笑顔を、また会いたいと願った空を守るために』――」
芳佳や黒江の影響をはっきりと受け、『空』という言葉を用いるようになった調。それが最大の変化と言えるものだった。空への思いを口にする事は無かったからだ。笑顔を守ると言及したのは、芳佳からの影響だろう。空を見上げる余裕ができ、空をフィールドとし、そこで戦う師に憧れを持つようになった。その心象が反映されたか、背中には翼が生えていた。サジタリアスの聖衣を連想させる形状の翼が。しかも限定解除たるエクスドライブでもないのに、だ。
「あ、あの翼は……綾香が前に見せたサジタリアスの黄金聖衣と同じ形の……!?限定解除でもないのに……!?」
「どういう事デスか……!?」
二人が驚くのも無理はないが、黒江や芳佳は空を飛んで戦う事が本来の存在理由だった。その内の黒江の『飛びたい』という強い想いと心象が同調で深く影響を及ぼし、その願いにギアが応えたのである。元々、ギアには心象で形状を変える特徴があるが、ここまでの変異はギアの機能の範疇を超えていた。これは調に『天馬星座』になりえる素養があった証でもあった。
――格納庫――
「ガイちゃんと……、グレちゃん……!?」
「来たか。この姿見たの初めてではないだろう?」
「エンペラー化したの!?」
「エンペラーソードを媒介にして念ずる必要があるがな」
グレちゃんは小柄なダウナー系の姿ではなく、マジンエンペラーGを象ったスーツを纏った10代後半の高身長な少女の姿を取っていた。口調もダウナー系ではなく、強気なものになっており、一人称も「オレ」に変貌していた。言わば、『エンペラーグレちゃん』という形態だ。その強気な姿は剣鉄也を思わせる。淡い小麦色の肌になっており、炎ジュン成分も入ったらしい。
「さて、行くぞぉ!こっちもグレートになったから、これでグレちゃんに遅れはとんないもんね!」
ガイちゃんはザ・グレートになっても平常運転だが、テンションMAXである。三人はカタパルトのシャトルに掴まる形で打ち出され、Zちゃんらの救援に向かった。
――戦場――
「うわああっ?!」
Zちゃんはあしゅらの鉄拳を食らい、その衝撃で昏倒し、地面に墜落し、ジェットスクランダーの片翼と、片腕が折れてしまう。
「Zちゃん!くっそぉぉっ!!」
あしゅらに食い下がるジークさんだが、トリスタンとイゾルデとしての記憶に目覚めたあしゅら相手では分が悪かった。ジーグブリーカーを解かれ、膝蹴りを腹に喰らい、仰け反る。
「ば、馬鹿な……!これがあしゅらの真の力だというのか!?」
膝蹴りを食らいつつも、なんとか堪える。あしゅらの猛攻を、同じラッシュを打ち返すことで凌ぐ技巧者の面を見せる。
「あしゅらなどと言う名前で呼ぶではない、我らはトリスタンとイゾルテなるぞ!!」
「貴様、ミケーネ帝国時代の記憶が蘇ったというのか!?」
「そうだ。闇の帝王、いや、ハーデス様の御力によってな!もう我らは貴様らの知るあしゅらではない!」
「何をっ!」
パンチをぶつけ合うが、ジークさんのグローブのほうが綺麗に破れ、ジークさんの拳を負傷させる。
「が、あああああ!?」
血を吹き出すジークさんの右拳。あまりの痛みでジークさんは悲鳴をあげ、右拳を抑える。
「これでどうですの!?ダブルトマホォォゥクブゥゥメラン!!」
「おまけだぁ!ジーク!バズゥゥカ!!」
ゲッちゃんドラゴン、ジークさんは同時に攻撃を加えた。ジークさんは珍しく一発でトートバッグからジークバズーカを取り出せ、撃ったが、トリスタンとイゾルデは拳を横からぶつけ、バズーカの弾、次いでダブルトマホークを処理した。ジークさんとゲッちゃんは絶句する。
「なら、マッハァァドリルゥゥ!」
ジークさんはマッハドリルで起死回生を狙ったが、それすら回転を止められ、真っ向から砕かれてしまう。
「マッハ……ドリルが砕かれ……!?あ、ああああああっ!?」
マッハドリルを砕き、そのままジークさんの頭を砕かんと、顔を掴み、そのまま力を強める。ミシミシという音をたてるジークさんの頭。悲鳴をあげるジークさん。片手間にゲッちゃんが顔面に裏拳を食らって、その場に倒れ伏す。Zちゃんは悲鳴で目覚めるが、片腕が折れている痛みと、ジェットスクランダーが折れたダメージにより、目の前が朦朧とし、足はガクガクと震え、片腕が使えない状態であった。
「ジークさんを離せ、あしゅらぁ!」
「「ほう。まだ立ち上がれたか(の)」」
「あたしは負けない、不死身なんだ!それはこーじお兄ちゃんとの約束なんだ!!それを壊すのはゆるさねぇぇ!!」
「「フッ、『弱い犬ほど吠える』とはまさにこのことだな(ね)」」
Zちゃんは吠えるが、満身創痍の状態であり、次の一撃を喰らえば確実に戦闘不能の状態なのは目に見えていた。あしゅらがZちゃんに向けて攻撃を加えようとした瞬間であった。トリスタンとイゾルデの目の前に、エンペラーソードが突き刺さったのだ。
「「ぬっ!この剣、この雷、貴様か!」」
「そうだ!!これが、これこそが、偉大なる魔神皇帝!!マジンエンペラーGだ!!」
グレちゃんだった。グレートマジンガーとしてではなく、マジンエンペラーGとして颯爽登場したのだ。成長した姿なので、Zちゃんはキョトンとしていたが、グレちゃんらしいことが分かると、大喜びだった。
「ぐ、グレちゃん!来てくれたんだ!」
「あしゅら男爵、いや、トリスタンとイゾルデ!!Zちゃんにこれ以上勝手な真似はさせん!!喰らえ!!『グレートスマッシャーパーンチ!!』」
エンペラーとなったグレちゃんの力はトリスタンとイゾルデにも引けを取らなかった。グレートスマッシャーパンチで一発食らわし、そこからエンペラーソードを拾い、Zちゃんにはエンペラーブレードを投げ渡す。エンペラーブレードを拾った瞬間、Zちゃんに衝動が起きる。破壊。Zを否定する者の破壊。全てを零に返せという衝動。だが、Zちゃんはそれを否定し、自身を甲児の意思を体現する存在へと変身する。その名も。
「パイルダーァァァオ――ンッ!!」
Zちゃんのスーツの各部がマジンガーZからマジンカイザーのそれに変貌し、負傷はそのままながら、完全にマジンカイザーを象った姿となる。
「「フハハ!そうか、それが貴様の切り札か!」」
「そうだ!!これが魔神皇帝!!マジンカイザーだぁああ!」
グレちゃんがマジンエンペラーG形態になれるように、Zちゃんはマジンカイザーになれる。だが、この時点ではモノにできておらず、感情の高鳴りでなれるにすぎない。その辺りはZちゃんが技巧タイプではない証拠と言える。
「お返しだぁ!!ターボスマッシャァァパァンチィ!!」
残った右拳でターボスマッシャーパンチを繰り出す。負傷の影響は再変身で幾分、軽減はされたが、それでも痛みは引いていないため、顔を顰める。だが、グレちゃんとの友情が成せる業か、ようやく、トリスタンとイゾルデに有効打を与えた。
「光子力ビィィィム!!」
「ルストタイフーン!!」
ルストタイフーンと光子力ビームの合わせ技。それに耐えるトリスタンとイゾルデだが、そこへガイちゃんと調も到着する。
『どうぅりゃああ!!』
同時にパンチを食らわせ、グレちゃんの両隣に着地する二人。トリスタンとイゾルデは笑う。獲物が増えたからだろう。
「「フハハ!!よかろう、小娘共。貴様らをまとめて倒し、ハーデス様への手土産としてくれるわ!!」」
「それはこっちの台詞!!あしゅら男爵!いつものパターンにしてやるッ!!」
黒江の影響か、いの一番に啖呵を切る調。指差すポーズがヒーロー然としているあたり、地味に成り代わり当時の黒江の行いの名残りだろう。
「違う!トリスタンとイゾルテだ!忌々しい名で呼ぶな!」
「長い!あしゅら男爵で通じてるんだから、お前はあしゅらなんだよ!この野郎!」
ガイちゃんが混ぜっ返し、調も同意する。
「おのれ、言わせておけば!!」
「クロガネ頭とあたしは違うぜ、あしゅら!!それを思い知らせてやる!!」
「なんだとぉ!このマイナーロボ!」
「何をぉ!」
「喧嘩してる場合じゃないって!行くよ、みんな!!」
「おう!!」
合流した一同はあしゅら(トリスタンとイゾルデ)と死闘を展開した。調はシュルシャガナのギミックを最大限使い、尚且つ流星拳などの闘技を織り交ぜて戦い、ガイちゃんは拳やデスパーサイト、ミラクルドリルランスを、グレちゃんはエンペラーソードで、Zちゃんはエンペラーブレードで立ち向かった。
「はぁっ!!」
調はヘッドギアの左右のホルダーから巨大な2枚の回転鋸を展開し、アームで保持して斬りかかるが、回転鋸は二つとも指でつまむ形で止められ、へし折られる。続いて、小型の丸ノコを連続で放つも、これも弾かれる。シンフォギアの攻撃を、生身で容易く弾かれる光景にも慣れてしまった事に内心で溜息を付く。拳を撃ち合い、衝撃波が空気を震わせる。
「「ほう。小娘、聖闘士か」」
「そうだッ!!シンフォギア装者で、聖闘士!それが私ッ!」
小宇宙を感じたらしく、トリスタンとイゾルデは不敵に笑う。
「ゼウスの娘の加護は侮れん、少々ギアを上げるか」
「なッ!……が、は…ッ!」
脇腹に膝蹴を食らわし、更に左腕部装甲を手刀で砕く。ギアを上げたという通り、調は視認すらできなかった。そして、そのまま首を絞められる。その様子をモニタしていた切歌は、抑えていた感情が一気に爆発し、小宇宙が完全に目覚めた。その影響で、イガリマが自動的に起動し、切歌の身に装着された。不思議とバックファイアもなく、まるで普段着と変わらない、いや、身体の一部のような感覚。
「コレが……コスモ、コレがセブンセンシズなのデスか……!?これなら調を助けに行けるデス!」
「な、何が起こったの、説明して、レヴィ!」
「あー。セブンセンシズに到達したんだよ、切歌のガキは」
「この黄金の光が……そうだというの!?」
「この場合は、ガキンチョの思いが届けさせたと言って良いな。セブンセンシズってのは、ホイホイ到達できる境地でもないんだがな」
「行け」
「ありがとうデス!えーと、ケイじゃなくて……」
「レヴィだ。この姿ん時はそう呼べ、ガキ」
「ガキじゃないデス、私は暁切歌デス」
「わーっとる。とっとっと行け」
「ハイデス!!」
切歌はレヴィに一礼し、調を助けに向かう。マリアが止める間もなく。
「なぜ行かせたの!?」
「セブンセンシズに到達したのなら、聖闘士として充分に成長したって事だ。そうカッカしてると、美容によくねーぜ」
「不老不死になってる貴方に言われたくない台詞ね、それは…」
レヴィ(圭子)は前史で死したあとの転生と昇神で現在の年齢からは不老不死になっていた。それを踏まえたマリアが零したわけだ。
「神様になるって事は大事だぞ?死ななくなるが、その代わりに未来永劫戦いが待ってるんだからな。こう見えても軍神ポジだしよ」
「ぐ、軍神!?」
「靖国神社で祀られた結果だからな、これ。同位体の力も含めて神格になったから、これから生まれ出る傍流の子孫は半神だし、そいつらの面倒見る必要もあるしな」
「傍流?あなた達、直系子孫は?」
「その暇があると思うか?それにあたしらの経歴じゃ、男のほうが避けるぜ」
「確かに国家英雄だけど、そこまでのものなの?」
「戦前日本は、徴兵検査で甲合格って出れば、女にもてる社会だったんだよ」
「!?」
「有名な三十数人殺しだって、徴兵検査で落ちたのが原因の一つだって言われてる。あたしらの世界じゃ、30年代から志願制に変わってきてたけど、その風潮は残ってる。ケイとしては、もうじき30だから、見合いしろって親父とお袋の矢のような催促が来やがる」
「ご、ご愁傷様です……」
マリアは目が点となった。圭子はお見合い話に連戦連敗中で、智子や黒江から爆笑されているのだ。それにうんざりしているのも、レヴィになっている原因だ。(因みに、圭子は今回、未来世界の戦乱が落ち着いた頃、澪からの系統とは別の系統になる子を産む事となる。その子はゲッターの申し子であり、名は『加東唯』と名付けられ、自分で分家の創設に成功したという。その子が誕生したため、レイブンズの三代目以降のメンバーに変化が生じたという)
――戦場では切歌が光速で到着し、トリスタンとイゾルデに一撃を加える。高まった小宇宙を受け止めきれず、ギアが解除される(一気に負荷をかけすぎた)。トリスタンとイゾルデから開放され、落ちてゆく調を助けようと受け止め、助け起こそうと手を握った瞬間であった。二人の脳裏に走馬灯が走った。互いの同調が起こったのだ。そして、それに反応した一つの聖衣が戦場に送られた。アウリーガの聖衣である――
――ゴメンね……切ちゃん……――
――いいって事デス……。今は……。
――師匠やみんなが守る世界を、私達も守るために……強くなるんだッ!!――
二人は精神感応でこの様な会話を交わし、飛来した聖衣が分解し、二つの聖衣となる。正確に言えば、古代に作られた当時の姿へ戻ったと言うべきだろう。馭者座と仔山羊座の聖衣へ分離した。『纏え』という意思を感じ取った二人はそれをそれぞれ纏う。それに要した時間は実感時間では数ナノ秒間である。
『馭者座の調!』
『仔山羊座の切歌!』
「「ぬぅ、ゼウスの娘め、聖衣を送り込みおったか!」」
二人は聖衣をギアの代わりに纏い、セブンセンシズを発動させる。そこから調が導く形で二人で流星拳を放つ。速度は段々と早くなり、光速に達する。さしものトリスタンとイゾルデも、これは避けられず、直撃を食らう。
「追い打ちだ!サンダーボルトブレーカー!!」
グレちゃんも光速のサンダーボルトブレーカーを放つ。そして、追撃にガイちゃんが突撃する。
「これでどーだぁあああ!!」
「「ドリルは効かんと言ったぁ!」」
「このミラクルドリルは、ただのドリルじゃない!槍でもあるんだつーのぉ!穿けぇええええ!」
炎を纏ったガイちゃん・ザ・グレートがミラクルドリルランスを突き立てる。それを受け止めようとしたが、ガイちゃんの炎はトリスタンとイゾルデの力を上回った。更にザ・ナイトに変身し、親友である黒江の技を借りた。調は驚愕した。それは師である黒江最大の秘技だからだ。
「あ、あれは師匠の秘剣!?ガイちゃん、できるの!?」
「やるっきゃないだろ!ナイト!フェェェイスゥ、オォォプゥン!」
ナイト状態でフェイスオープンを敢行し、左腕を天に掲げ、光を発する。黒江とは親友である事、ガイキング・ザ・ナイトという機神の力を用いる状態である事から、実現した奇跡だった。
「エヌマァ・エリーシュ!!」
ルーティンが異なっていたため、不発に終わる。そこで黒江からテレパシーが届く。
『ガイちゃん、ルーティンが違う。私の言う通りにやるんだ』
『あーや!?』
『いいか?口上は……』
「借り物の技じゃ一発で成功はしないかっ!次はっ!」
黒江から発動ルーティンを教えられ、今度はミラクルドリルランスを持って構えた。
「天地を分かつ一閃!!神剣・エア!!」
ガイちゃんなりのアレンジと簡略化が入ったが、エアを発動させた。トリスタンとイゾルデは咄嗟に自身の片手を切り落とす事でエアから逃れた。
「で、できた……!」
「「ふふ、フハハ!!面白い、面白いぞ!小娘共!楽しませてもらったぞ!また会おう!」
と、高笑いしながら去るトリスタンとイゾルデ(あしゅら)。調はガイちゃんに抱きついて喜ぶ。以前には見られなかった側面だ。
「やったね、ガイちゃん!師匠の秘剣が撃てるなんて!」
「いやあ〜、あーやがテレパシーで教えてくれてさ〜。にゃはは」
「師匠が?」
『話はレヴィから聞いた。マリアに言って、シーガルでそっちに向かわせた。負傷者を乗せて引き上げろ。本当なら褒めてやりたいが、そうもいかなくなった。デザリアムが人間狩りを始めやがった。負傷者以外は私と一緒に、そのまま人間狩りを止める任務についてもらう』
「師匠。私達の聖衣は?」
『ああ、私がアテナに言って転移を頼んだ。大体の事情はドラえもんがモニタを続けていたから分かってる。そのままそれぞれの星座への叙任を私がシオンに進言しておく。近日中に正式に了承されるだろう。……まさか、聖衣が分割されるとはなぁ』
やることの手際はピカイチの黒江。レイブンズ一の根回しの早さは健在だが、切歌にも聖衣が装着された事、しかもそれが一つの聖衣から分かれたモノなので、聖域は大パニックになるだろう。前代未聞の事態である。
『事が全部終わったら、改めてお前らをビシバシ鍛えてやんから、覚悟しとけ。それと、切歌。分かっとると思うが、訓練の一環だ、落ち着いたら、ギアで何週間か生活してみろ』
「なんデスとぉ!?」
『調もやった事だ。ただ生活すればいいんだから、訓練としては楽だぞ』
「り、理屈は分かりますよ?分かりますけど、なんだか羞恥心が……」
『なぁに、のび太んところに下宿するメンバーに混ぜとくから、普段からギア姿でも文句は言われん。玉子さんも行儀以外は細かく言わねーし』
「私も付き合うから、頑張ろう?ね?」
「そ、そうデスね。調と一緒なら……でも、先輩たちが聞いたら腰抜かしますよ?、えーと、綾香さん?」
『問題ない。箒にもアガートラームで生活させていたし、調が生活してるところは響達に送って、返事が届いたところだ』
調が野比家駐在中、シュルシャガナのギア姿で皿洗いやら、ギアの上からエプロンを巻いて食事を作ったり、駅前商店街へ買い物袋を下げて買い物に行く光景を収めた画像データは響たちへ送られ、響達を驚天動地に追い込んでいた。ギアを戦闘目的以外に用い、それで生活するのは、黒江という例外を除けば、極秘なはずのシンフォギアの平和利用というものなのだろうが……。当然、ギアの運用に厳格であった翼は「ふ、不埒なッ!」と言った後、驚きとショックで数時間ほど言葉を失い、響も呆然としたという。唯一、クリスは比較的に黒江と仲が良かったため、風鳴弦十郎と共に大爆笑したという。翼にとって、更なる衝撃は、黒江がおまけと称して送った、もう一個の動画であった。それはフェイトが任務で真ソニックフォームを発動させている状態で、天羽々斬を起動させた際のモノだった。
『Imyuteus amenohabakiri tron』
フェイトは翼と瓜二つの声であった事、剣筋も自分に似通っている、更に言動も似ていたので、翼は脳がオーバーヒートして知恵熱を出してしまい、数日寝込んだそうである。クリス曰く、『ばーちゃんもすげえの送って来たな』との事。弦十郎は動画で『玉子が普通に、ギア姿の調に買い物かご持たせて買い物にいかせる』シーンが大受けだったようで、『あの奥さんスゴいな、何の気負いもなくシンフォギアスルーとは!』と感動と大笑いしており、後に翼に『ギア姿で野比のび太君の邸宅を訪ねたらどうだ?』と冗談めかして言い、翼を膨れさせたが、翼が実際にのび太宅を訪ねると、普通に応対されたので、頭上に閑古鳥が鳴いたという。
「あ、シーガルだ。マリアが操縦を?」
『覚えさせた。説明はしてある。しかし、聖域も驚くぞ、その状況』
「ですよね。今度はデザリアムか。休む暇ないですよ」
『文句をいうなら、デザリアムをぶちのめせ』
「はい…くぅぅ、デザリアムめぇ〜!折角の切ちゃんとの仲直りタイムをぉ〜!」
「ツッコむのそこデスか!?」
と、ギャグじみた調の叫びに思わずツッコむ。そして、シーガルが到着する。
「負傷者を乗せたら、出発するわ!切歌、調も乗って」
マリアが衛生兵と共に担架を出し、ゲッちゃんたちを担架に乗せながら言う。切歌は一瞬躊躇したが、調は手を出し、「さぁ、一緒に行こう!」と促す。切歌はその手をにぎる。ここに至り、わだかまりを解消した二人だが、ガイちゃんやグレちゃん、Zちゃんからは『デートだな』、『デートかよ』、『デートなんてしてる場合!?』と囁かれ、調は慌てて、『だぁから、切ちゃんは家族なんだってば!』と言うが、ロボットガールズの無事な面々からはニヤニヤした目で見られ、慌てふためく。マリアはその光景を見て、調を変えてくれた黒江に感謝するのだった。
「別に恋人や夫婦でもいいデスよ?一緒に居られるなら」
「き、切ちゃん!」
『ったく、こりゃ本物らしいな。よし、藤堂総長に報告しとく』
「し、師匠〜!」
――復活したミケーネ帝国と百鬼帝国。デザリアムとの三つ巴の戦いを強いられるパルチザン。そして百鬼帝国の一科学者として暗躍するマッドサイエンティスト『プロフェッサー・ランドウ』。黒江達に取っては『三度目』になるデザリアム戦役は激しさを増し始めるのだった――
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