ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――デザリアム戦役において、今回は前史とは大きく変わった事がある。それはGウィッチ達の覚醒に伴い、世界を問わず、適合した肉体を持つ者達がかつての偉人の復活の依代になっていた事で、ペリーヌ・クロステルマンが円卓の騎士であった『モードレッド』になったように、かつてのフランスの聖女『ジャンヌ・ダルク』の依代に、ルナマリア・ホークが選ばれていた――。


――デザリアム戦役前に依代にされたルナマリア・ホークだったが、ジャンヌ・ダルクの魂が死の直後に憎悪に染まった状態であったためと、ルナマリア自身の精神状態もあり、当初は属性が反転した『オルタ』の状態で憑依されたが、シンの献身が実り、ジャンヌ・ダルクの魂がある過程を経て浄化されたため、デザリアム戦役が始まった段階では、まさしくジャンヌ・ダルクそのものに覚醒めていた――。


――黒江がトリエラに変身して、Σガンダムに乗って戦っていると、サナリィのとある試作ガンダム(小型化されたZタイプのような機体)が飛来する。前史の記憶通りであるなら、その機体には……――

「おい、そこのガンダム、誰が乗ってる?」

「准将、私です」

「ルナ……いや、ジャンヌ!?お、おま、よくモビルスーツを動かせたな。死ぬ前は学ないとか言ってたやん」

「この子の知識と経験が使えるので、そこはまぁ……。促成コースとは言え、正規軍人だったのが功を奏しました」

憑依するに当たっての依代に選んだ肉体が元々、高度な軍事訓練を受けていた上、コーディネーターの中でも優秀とされたルナマリアだった事、ルナマリアが『プラント』に見捨てられたショックで、アナハイム・エレクトロニクスのテストパイロットを経て、星間連邦宇宙軍に転職していたという幸運もあり、今回はルナマリア・ホークとしての身分を使ってのジャンヌ・ダルクの参陣となった。従って、技能もルナマリア・ホークのそれが付加されている。

「依代にしたルナマリアのおかげだな。それとシンに感謝しろよ?あいつが頑張ったおかげで、お前、オルタから元に戻れたんだし」

「ええ、あの方にはとても感謝しています。私の魂があるべき姿に戻れたのは、彼のおかげです。気がついたら……、こ、これ以上はご容赦ください……。は、恥ずかしいので……」

その口ぶりから、黒江は『シンがジャンヌ・ダルクの魂を救済するために、ある手段を使った』事を悟る。シンにとっても一世一代の決断だったのは容易に想像できるので、それにより、ジャンヌ・ダルクの魂が完全に浄化されたのだろう。また、依代になった人物が軍人だったおかげで、この時代の軍人としての知識が身についている事を示唆するジャンヌ。姿がジャンヌの生前のそれになっているのもあり、ルナマリア・ホークの肉体を依代にしているとは推察できない。彼女の場合は、オルタとしての出現時に、ルナマリアの体の主導権を握る形となったため、モードレッドと同様、肉体の外見はその時の主人格が優先されるタイプの出現であった。そして、ジャンヌの場合は、『外見は行動占有率が半分越えたら変化、変化無しでも意思が揃えば技が出せる』という特殊な条件がある。この時点では、ジャンヌ・ダルクとしての行動専有率が高いので、ジャンヌとしての外見であった。

「しかし、お前。ほんと、覚醒してオルタだった時の記憶はあるのか?」

「夢のような感覚ですが……、ただ、オルタ化が解除された時の恥ずかしさははっきりと……」

「シンは責任とるとか言ってるから、そのまま籍入れちまえ」

「な、な、何言ってるのですか、こ、こんな時に!?」

「戦争終わったら籍入れちまえ。どうせ、ルナマリア・ホークとして、プラントには帰れね―んだしよ」

「た、確かに…」

ジャンヌも、肉体の元の持ち主『ルナマリア・ホーク』がプラントには帰れない(戦死扱い)身であるのは自覚しており、シンと籍を入れて落ち着くしか選択がない事は悟っていた。そのため、ある意味ではシンは『オルレアンの乙女』を妻として娶るという贅沢なことになる。

「確か、戦時中でも婚姻届書は出せるはずだから、なんだったら私が出して……。それとヤツはもう一人抱えてるから、もめそうならネオアラビアかムスリム法特区で入籍すれば四人まで正妻名乗れるぞ」

「わ、私が出しますって……。参りました……。まさかこんな事になろうとは……」

「ま、書類なんざ、形式だから相手が責任とるってんだから、こっちから内縁の妻ですってなのっちまえば早ぇよ。それに、ジルドレも喜ぶと思うぜ?あいつ、どこかのメディアミックスだと、お前の死のショックで精神がイカれちまったらしいし…」

「……ジルドレ…」

「それと、お前、オルタん時に酒入れたら、『フランスが私を否定したー!』とかぐずってたし」

「それもそうですよ、フランス王家には今でもちょっと…」

「まぁ、王室の最後の一家もあれな結末だったし、そこは許してやれ。断頭台の露と消えたんだし。マリー・アントワネットやその息子の悲劇については、日本の『ベル◯イユのばら』でも読んどけ。解釈は古いが、おおよその流れは掴める。……って、お前の頃はヴァロワ朝じゃん!」

「え?王室が変わったのですか?」

「変わっとるわ!断絶して、ブルボン朝に代替わりしとるわい!」

黒江は気がついた。フランス王朝はフランク王国を起源とし、入れ替わり立ち替わりで王朝が変わり、ジャンヌ・ダルクを火刑にしたヴァロワ朝はブルボン朝に取って代わられて滅んでいる。つまり、ジャンヌが憎んだ対象はそう遠くない未来に滅んでるのだ。

「つまりだ、カペー朝が滅んで、お前の生前のヴァロワ朝、それに取って代わったブルボン朝……そこで王国の歴史は終わる」

「革命、ですね」

「ああ。そこで恐怖政治が蔓延って、結局、世が英雄を求めて、ナポレオンというコルシカの小男が皇帝になるんだ」

正確に言えば、オルレアン朝もあるのだが、そこは省いた。日本人は『ベル◯イユのばら』の大ヒットで、フランス人よりフランスの歴史に詳しいという珍現象を起こした経験がある。ガリアがヘンテコな声明を出す羽目になったのは、その辺りを日本のある年代層からつつかれたためでもある。

「革命の辺りはかなり混沌とした状況になってたんだ。ルイ17世になれたはずの男の子は虐待で獄死してるし、王妃も王も断頭台の露と消えた。で、結局、その後は革命と平和と戦争の『終わらない円舞曲』が続く。それがお前が死んだ後の大まかなフランスの流れだ」

「……改めて聞くと、複雑です」

「フランスは、一二を争う『混沌とした歴史持ち』だしな。アメリカみたいに『超大国』だった時代は戦争しまくってた国もあるからな。気にしてたら負けだぞ、ジャンヌ。日本なんて不死鳥のごとく蘇るからなー」

日本は軍事的敗北、経済大国からの経済的衰退という2つの衰退の道から不死鳥のごとく蘇ったので、日本もドラマティックな歴史を辿っている。ジャンヌは生きた時代が1400年代なので、生前は絶対王政より前の時代であるので、それを教えられ、なんとも言えない気持ちらしい。

「まさか、未来でもう一度生きることになるとは思いませんでしたが、これは…」

「ジルドレの墓あったかな……?もし、あったら、墓参りでもしてやれ。お前の救済を祈って、狂気に堕ちたほど、お前を信仰していたからな。いや、愛していたかも知れんな」

「……」

ジルドレ。ジャンヌを愛したために、ジャンヌの死後に狂気に堕ちた男。ジャンヌも彼のことを気に病むような素振りを見せた。(どこかでの彼はジャンヌの幻影を目にして最期を迎えたというが……)

「だから、今回の生では『幸福』を掴め。前世で掴めなかったもの、そして、ジルドレの冥福のためにもな」

「……婚姻届書、用意してくれますか?」

「帰ったらな。シンの了承は得てある。後は判子押して役所に出すだけだ」

「……ありがとうございます」

「フランス人が聞いたら、血の涙を流すと思うけど。お前のミドルネームはJにしとく。戸籍上はルナマリア・ホークなんだし、お前」

「確かに」

「それと出身地はフランスか、ネオフランスコロニーに細工しておく。どうせプラントには戻んねーだろ?」

「感謝します……准将」

「な〜に、お安い御用だ。つか、お前。それ、サナリィ系の試作機か?」

「ええ。基地で放置されてたのを起動させて、持って来ました。可変機の小型版を模索してたみたいで」

「サナリィもZ系は意識していたのか。しかし、採用されんと思うぞ?VFでそのサイズは間に合ってるぜ」

「うーん。市場に食い込むつもりだったんでしょうかね」

「MSの規格部品使えるVFでも出すつもりだったのかね?今じゃ、飛行技術も熟成されたし、アナハイム・エレクトロニクス製ので間に合ってるぞ、可変機」

「そうなんですよね。小型じゃバッティングしてしまうし、作る意義は今では」

「どこから持ってきた?」

「佐世保あたりです」

「あそこ、たしか飛鷹型航空母艦を引き取ってたはずだな……。海軍に連絡入れるかな」


デザリアム戦役当時、扶桑は飛鷹型航空母艦の改造を連邦に委託。佐世保に回航していた。当時、飛鷹型航空母艦は日本連邦内での扱いに揉めたので、23世紀の連邦が仲立ちし、『俺達が弄ってみる』とし、回航していたのだ。

「私のもエゥーゴ時代の置き土産だが、お前のはややこしいな。サナリィの試作可変機なんて。飛鷹型に載せるつもりだったのか?」

「そこまでは。ただ、MS形態ではZプラス級の出力はあるようです」

「うーん。ノウハウ不足目立ってんなぁ」

サナリィにしては凡作に近い機体である。可変機を小型化するアプローチといい、どうにも外しているように黒江には思えた。サナリィは小型機に定評があるが、こだわりすぎて、どうにも外しているからだ。

「とりあえず、持ち帰ってテストは続けよう。こいつら相手には使えるだろうからな」

「どうしますか、敵」

「撃退して、こっちの旗艦に連絡入れる。三沢の安全を確保し次第、合流の手筈を整える。お前の事はモードレッドのことがあるから、そのまま報告しておくよ。ただ、お前。ルナマリアの技能受け継いだなら、外すなよ?射撃」

「う、痛いところを…」

ジャンヌはルナマリアを出現の依代としたので、彼女のMS操縦技術を持った。黒江はルナマリアの腕前は知っていたので、当然ながらジャンヌも同じ特徴を持つだろうと目星をつけていた。

「しかし、ルナマリアはコーディネーターだったような。お前の霊格に波長が合ったのか?」

「おそらく。そうでなければ、私は転生出来ませんから」

「うーむ。もうちょい調べる必要があるな。ほい、ハイメガキャノン」

黒江はΣガンダムのハイメガキャノンを撃ち、デザリアム帝国の機動兵器を消し炭に変える。もののついでのルーチンワークのようだが、人型兵器の存在を想定していないデザリアム相手ではルーチンワークになりがちである。

「あっさりと落とせますね」

「そりゃ奴さんは人型兵器の想定なんぞしていないからさ。撃墜スコア稼ぎには持ってこい対人兵器だ、対機動兵器対策が出来てねぇカモだからな」

黒江達はルーチンワークのように、デザリアムの戦車を破壊する。数は多いが、烏合の衆。地上ではこちらの機動兵器が優位だと言わんばかりに破壊しまくる。

「剣は使った事がないのですが、この肉体に刻まれた記憶で……!」

ジャンヌ自身は生前、剣での戦いは不得手だったのだが、ルナマリアは格闘戦に適正を見せていたため、奇しくも、生前の弱点をカバーした事になる。ビーム・サーベルの振るい方はルナマリアそのもので、二刀流を好むあたり、黒江は『そっちのほうの機体で良かったんじゃね?』と、依代になったルナマリアの経歴を思い出し、考えた。

「なぁ、ジャンヌ。どこが格闘戦ダメなんだよ」

「あ、あれ……?」

「思い切り二刀流とツインブレード振り回しといて、苦手ですーはねーよ」

「は、はい…あ、あはは…」

さしものジャンヌも、ルナマリアの肉体に刻まれた記憶が自然と体を動かしたのか、格闘戦で抜群のセンスを見せた事に驚くと同時に、乾いた笑いが出たようだ。

「しかも、バシッと決めポーズなんかとりやがって!どこのスーパーロボットだ」

「か、体が自然と……」

「どこのサ◯ラ大戦だよ!」

機体越しとは言え、バシッと決めポーズを決めてしまうあたり、インパルスにそういう動きがインプットされているのを自然と考えていたザフト出身パイロットの名残りであろう。黒江がツッコミ役なあたり、かなり自然にやっていたのが分かる。

「私自身は剣持った事ないですってば、本当ですっ!」

「…ハハ、嘘だぁ」

「ほんとうなんですってばぁ〜!」

半泣きのジャンヌ。実際、後世での映画では剣を振り回していたりするイメージが強いが、彼女自身は槍をメインウェポンにしており、剣は象徴、戦士のステイタス、儀礼の3つの理由で持っていただけだ。

「剣は持ってないと、あの時代は戦士のステイタスを満たせなかったし、騎士の象徴だったんですよぉ!槍のほうは得意でしたよ、槍は!」

「わーったわーった」

ぶーたれるジャンヌをなだめつつ、ハイパービームサーベルで最後の一機を斬り裂く。黒江は変身してても、体格が変わるだけで、戦闘能力は変わりはないので、機動兵器の操縦はお手の物だ。次にやることは三沢基地と『カシオペア』への暗号通信だ。コンソールを操作し、双方に通信で『敵殲滅』を伝える。カシオペアから、『シン達の援護に向かえ』という通信が入り、ジャンヌの中のルナマリアの因子が反応したらしく、すぐに機体を飛行形態に変形させ、その場の勢いで飛んでいった。

「あ、やっぱダンナのことが気になるんじゃねぇか。しゃーねー。追うか!」

黒江も機体をウェーブライダーに変形させ、後を追う。ジャンヌはなんだかんだで、シンのことが気になっているようで、その辺りはルナマリアの抱いていた好意が彼女にも反映されたのがわかる。黒江は微笑み、ジャンヌの後を追う。こうして、23世紀において、ルナマリア・ホークを依代にする形で憑依し、新たな生を始めた『ジャンヌ・ダルク』。黒江の言うように、新たな生においては幸せを掴みたいという願望は、彼女に変化をもたらしていた。






――ジャンヌとしての姿は、ルナマリア・ホークの肉体本来の容姿からは離れた、金髪と薄い青の瞳の容姿の美少女で、生前の死亡時も依代となったルナマリアと同年代である。依代となったルナマリアのパーソナリティは、憑依したジャンヌに影響を及ぼしており、純潔の聖女と讃えられた生前と比較すれば、『世俗的になった』と思しき面もある。だが、それはむしろ、『史実の悲劇を考えれば……』、『彼女が戦いに身を投じなければ起こり得た可能性』と肯定的に見られている。そのため、彼女はルナマリア・ホークとして生活しつつ、新たな人生をやり直しているのだった。また、憑依後もルナマリアの姿は行動専有率の変化で取れるようになっているので、必要に応じて使い分けている。また、先に表れていたモードレッドとも知り合っており、生前は別々の時代を生きながら、互いに転生したため、時代と国を超えた関係を築く事になる他、シンがやさぐれ属性の『オルタ』状態からジャンヌを立ち直らせるため、一世一代の賭けで『キス』に打って出た事で、ジャンヌもまた、シンに好意を抱くようになっていた。ジャンヌはオルタでは無くなった瞬間、気恥ずかしさのあまり、『何をしているのですか!?わ、私……ふぁ、ファーストキスだったのに!?』とパニック状態。シンは『すまない。君を正気に戻すために禁じ手を使ってしまったんだ…!責任は取るから…』と弁明するが、聖処女と謳われたジャンヌの唇を奪ってしまったという歴史的な偉業(?)は、パニックになったジャンヌにより、シンを病院送りにするに充分であったが、シンはノックアウトされても、本来の姿である、心優しい少年としての姿を垣間見せたので、ルナマリアの体を依代にして復活したジャンヌをノックアウトした。結果、ジャンヌはシンを意識し始め、黒江の勧めで婚姻届書を書くに至る。ルナマリアの体に憑依し、人格融合のような体裁を取っていた事もあり、公の場では、『ルナマリア・J(ジャンヌ)・H(ホーク)・・アスカ』という名を使うようになり、以後はシンの『妻』という形で生活を送る。これはペリーヌ・クロステルマンが『モードレッド』への覚醒により、互いに人格が時々、入れ替わる形で生活を送っているのに範を取った形だが、ジャンヌの場合は、アルトリア/ハインリーケと同種の人格融合であるので、外見をTPOで入れ替えたりするという形になる。また、ジャンヌは聖人に列せられていたため、後に行われる披露宴では、旧・仏地域とネオフランスコロニーから非公式の祝電が贈られたり、連邦軍の仏出身者達か血の涙を流して大泣きしたり、ジョルジュ・サンドがガンダムローズで駆けつけて祝福の言葉を述べたり、何気に、十字教の枢機卿達が参列していたりする出来事が起こり、色々とニュースとワイドショーを賑わせたが、それはここよりも未来の話に属する。ジャンヌ・ダルクはある意味では、生前の行為が転生・憑依する事で報われた例になる。

「おい、ジャンヌ!思い出したんだが、世の中には、ダメージジーンズの聖人いるんだし、その格好通さなくていいと思うぞ」

十字教も時代の変化で、神裂火織のような服装と性格(一皮抜くと、レヴィのごとく粗野である)でも聖人なので、それを教える黒江。データを送ると、衝撃が走ったようで、しばしの沈黙の後、『ろ、露出狂?』としか言えなかった。

「21世紀ごろの聖人だが、連絡は時たま入れてるから、神父役でもやらせるよ、そいつに」

(ちなみに、神裂火織はマルセイユと天命が同じだったようで、マルセイユが彼女に近づく形で影響を受け、普段着がダメージジーンズ姿になったとか)

「十字教も変わったのですね……」

「お前の時代は、宗教改革の更に150年近い昔だしな。別の宗派が出来たんだよ、お前の時代から100年位後から」

十字教も色々と出来事がジャンヌの死後に巻き起こっている。ルナマリアがプラントでそれまでの歴史を教わっていなかった(プラントはジオン以上の人種優越意識の国で、それまでの人類の歴史を触り程度にしか教えていない)事もあり、ジャンヌは宗教改革を知らなかった。そのため、黒江は呆れた。

「プラントはどーいう教育してんだ?ジオンでさえ教えてた事を教えてねぇのかよ」

「コーディネーター至上主義の国ですし、実技しかやってませんね」

「シャカなみに見下してんな……。ラウ・ル・クルーゼがナチュラルだった事も見抜けなかったし、どうなってるんだよ」

「それ、『私』も後で知りましたよ。呆れましたよ、故郷(くに)のそういう風潮」

未来世界では、過去にコズミック・イラの出来事がアニメとして存在した。それを見てみた事で、故郷に愛想が尽きたらしいジャンヌ(ルナマリア)。更に連邦軍に属した事で、ザフトは組織的に色々と不味い事も自覚した。中世の騎士の間にさえあった、互いの上下関係が明確化されていないのだ。そのため、上下関係がハッキリしている(階級制度がある)連邦軍のほうがやりやすい。ルナマリアとして入隊したわけだが、元・ザフトの人間であることが考慮され、士官学校の速成コース(なのはが辿ったのと同じカリキュラム)で少尉任官、半年の勤務で中尉になっている。そのため、軍務を離れていたシンと違い、ルナマリアとして、アナハイムのテストパイロットから軍パイロットに転じたジャンヌのほうがブランクがない分、即戦力である。また、連邦軍人として『ウイングマーク』を持っているのもあり、オルタであった時期の生活面以外は無難にこなしており、この時期の所属部隊は種子島宇宙港の守備隊であった。そのため、シンは入籍前から早くも『尻に敷かれている』。(後に、主人格がジャンヌ・ダルクであるため、ロンド・ベルへ転属扱い)

「私はいくつか姿を使い分けてるが、お前はルナマリアの姿と、ジャンヌとしての姿か?」

「はい。貴方の方が自由度高くありません?体格も自由なんて」

「神格だから、肉体操作はお手の物だしな」

黒江は存在の位が神格であるので、肉体操作もお手の物。一度出逢うなり、目にすれば、その人物になりきれる。好みもあるので、黒江は『月詠調』、『トリエラ』、『篠ノ之箒』の3人の容姿を主に使い分けている。

「この姿じゃイタリア人のフリしてるから、イタリア語話せるぜ?マルチリンガルだし」

黒江は日本語の他、英語、イタリア語、フランス語、ドイツ語を元からネイティブ級に話せる。連合軍では、将校にそのくらいの語学スキルが求められているからだ。特に、変身スキルを活用するようになってからは大いに役立っており、芳佳も同等の語学スキルがある。

「ズルいです!私は生前、学がなかったから、フランス語の読み書きもままならなかったのに!」

「けど、この時代じゃ統一言語が英語と日本語だし、使う機会、21世紀以前に行く時くらいだぜ」

「た、確かに」

「それに、21世紀以前に行くには、どうしても日本に行くんだし、日本で大抵の用事済むぜ?」

「日本語は話せるようになってますけど……うーん、喜んでいいものか」

「なら、日本で用事済むやん。ネットで取り寄せできるし、未来デパートからどこでもドアでも買って、どこでも行けるしな」

「ある意味、すごい世の中です……」

「私なんて、それで別世界の中国の五老峰とその世界の日本とを修行で往復してるからな。慣れろという他ないな」

科学が発達すると、気軽に大陸間を往復できるようになる。統合戦争の際のアメリカが特異点への到達を恐れたのも分からなくはない。

「統合戦争でそのテクノロジーが狙われたのも分かるだろ?アメリカが裏切ったのは、日本の科学力の恩恵を受け続けようとする派閥が歪んだ愛国者共に負けたせいだしな」

統合戦争末期、アメリカは結局、日本との同盟堅持派の『アメリカ合衆国』と歪んだ愛国者が結集して再誕させた『アメリカ連合国』に分裂した。そのため、北米はその後も争いの種であり、23世紀現在ではティターンズ残党の巣窟という『治安が悪い地区の代名詞』扱いである。ネオアメリカコロニーに移民していった者はこの時の当事者であった世代が初めてである。地球連邦軍の軍閥時代以降では、東海岸部がティターンズ系、南部西部はエゥーゴ/地球連邦系派に分かれている。また、ガイアとの連合も模索され始めており、更なる再編も近いと噂されている。そのため、今回の再編された政府の正式名称を『惑星連邦に変えるべきだ』、『太陽系連邦にすべきだ』とする意見があった。結果、後にこの案は太陽系惑星連邦政府という事で採用され、地球星間連邦という『過渡期』を経て、太陽系の統一政府が樹立されるが、それも未来の話である。形式上はガイアの地球連邦がアースの地球星間連邦に加盟して改称する形であったという。

「ええ。何故、宇宙移民者は地球に反抗を?元は同じ地球人のはず……。ナチュラルとコーディネーターのような違いはないはずでは?」

「これもまた、ややこしーんだ。ジオニズムの台頭で、宇宙移民者の間に『地球への被害者意識』ができちまったんだが、それが選民思想に変わっちまった。それがジオンの始まりだ。その戦争が負けても、狂信的なのはいくらでもいるのさ。ニュータイプとオールドタイプってやつだが、ウッソのように地球生まれのニュータイプが出てきたから、死に体も同然の概念さ」


ウッソ・エヴィンのニュータイプ覚醒は、ジオンのニュータイプ論を根底から覆した。その事が契機となり、ジオンはかつてほどの求心力を持ち得なくなった。もっとも、シャアが愛した、ただ一人の女性『ララア・スン』からして、インド生まれなので、ニュータイプ論と、フラナガン機関の研究理論も既に過去のもので、クエス・パラヤ、ハサウェイ・ノアなどが覚醒していた事実もあり、ジオンの振りかざした理念も大義も過去のものになりつつある。

「本当は生まれよりも、宇宙で生活する人類って定義なんだが、ジオンが選民思想に使って、それも機動兵器に乗せると、下手なパイロットより強いから、そっちの意味が広がったんだ」

ニュータイプは戦場に出されたら、下手な一個大隊から師団よりも強く、戦場を支配し得る。その意味のほうが広まってしまったが、カツ・コバヤシのように、操縦技術がニュータイプ能力に伴わなかった例もある。ニュータイプ=強いというわけではないのだ。

「なるほど」

「さて、お前のこと、どう紹介すればいいのやら。フランス系の連中は喜ぶだろうが」

「うーん……。過去は過去ですけど、『再来』ってことで。基本別人だし、中身が本人でも」

「それかな?しかし、お前の霊格によく、ルナマリアの肉体が適合したもんだ」

「スッと入り込めて声が出せたから、相性が良いのかも知れませんね」

「なるほど。私も三度目の人生してるが、不思議なもんだ。さて、『花火』の中に飛び込むぞ!」

「はい!」

二人はちょうど、シンと武子が戦闘を繰り広げているところにウェーブライダー形態で飛来し、かっこよく変形で降り立つという、劇的な登場だった。

『よう、ガキ共。騎兵隊の到着だぜ』

「あー!またしてもアタシの見せ場がぁ〜!これからイガリマのフルポテンシャルを発揮しようと……」

『いや、そんなの知らねーし』

切歌は聖衣を一端脱ぎ、慣れているイガリマで戦っていたらしい。活動時間に制限が無くなったか、確かめたかったのだろう。

「せっかく、セブンセンシズに覚醒めて、制限時間も無くなったのにぃ!」

『聖衣で出たって聞いたが、脱いだのか?』

「慣れてないし、確かめたかったデスから」

切歌は聖闘士の闘技を身に着けていないため、聖衣よりも、手慣れたシンフォギアで戦う方が手っ取り早かったらしい。仕方がないが、流星拳すら身に着けていない状態では宝の持ち腐れだ。

「仕方がないから、オレがカバーしていたよ」

「大きくなると、本当、鉄也さん寄りの性格になるなぁ、グレちゃん」

グレちゃんがフォローに回っていたが、大きくなった(エンペラー化)は魔法少女事変の元凶のキャロル・マールス・ディーンハイムの大人モードの際の声に酷似した声色になるため、切歌は気が気でないらしい。

「おかげで、こいつには避けられているがな」

「なんか、この子の声聞いてると、キャロルを思い出しちゃって…」

「そいや似てるな」

「つーか、変形するガンダムに乗ってるんデスか?」

「一応、パイロット兼任してるし」

「なんデスかそれぇ!もう一機のに乗ってるのは?」

「なんと言おうか、うん。この時代の人間を依代にして蘇った過去の偉人?」

「なぁ!?」

「ほら、ウチのペリーヌが円卓の騎士のモードレッドだったろ?今回は大物だぞ?」

「誰デス?」

「ジャンヌ・ダルク」

「なんデスと――!?」

「お前、それくらいは知ってんのな」

「いくらなんでも、それは常識デスから知ってますって!」

「なんかダイ・アナザー・デイの時から、偉人の前世を持つ者が覚醒するか、偉人の魂がある人物に憑依することが多発しててな。今回で三例目。ジャンヌ・ダルクが蘇ったわけ」

「嘘ぉ!?」

「神様のやることは分からんが、星矢がハーデスぶっ倒したから、その影響かもしれん。ハーデスが肉体失って、秩序崩れたからなー」

「……なんでもありデスか?」

「うむ。私も従神だが、自由意志で行動してるしな」

「う〜…」

「よし、ジオンの連中に気取られても不味い、一気にケリをつけよう。武子とシンは?」

「あそこデス」

「お、派手にやってるな。んじゃ……。即席の装備らしいが、メガビームライフルとハイメガを同時発射っと!」

ZUのそれの改良型らしいメガビームライフルとハイメガキャノンを同時にドライブする。ZZでは出来ない芸当だが、サブジェネレータも高出力のに換装されているらしく、エンジンはこれでも余裕である。メガビームライフルは簡易Gバード化しており、威力はZZのダブルビームライフルを超え、ユニコーンのビームマグナムに匹敵する。

「流石、ZZの後継機種。ご機嫌だぜ」

コックピットでご機嫌の黒江。黒江が第二射を撃とうとしたタイミングで、隊舎が爆破され、そこから内部侵入組がバイクで飛び出してきた。作戦は成功したらしい。

「あ、V3さん達、作戦成功したらしいな。各員、侵入組を援護しつつ、ずらかるぞ!そろそろ敵の艦隊も気づく頃だ!連中を回収しつつ、カシオペアへずらかる!」

一同は捕虜収容所に配備されていた警備部隊をあらかた壊滅させ、行き掛けの駄賃で、更に救援に来た艦隊を壊滅させて去った。デザリアムにとっての損害は人間のボディ確保率の低下と、占領統治に綻びを生じさせかねない要素となる。パルチザンは地球連邦の中の指折りの精鋭がゲリラ化しているので、当然といえば当然の損害だが、あまりに膨大なので、占領軍司令官のカザンはヒステリックに部下へ当たり散らしたという。



――帰還途中――

「そのガンダム、三沢にあったの?」

「ああ。アナハイムがネオ・ジオン戦争の時期に、複数の試作機のパーツを組み立てたパッチワークの機体だ。最も完成率があったΣガンダムがベースらしい」

「なるほどね。でも、凄い子を拾ったわね。今度はジャンヌ・ダルク?」

「うむ。ペリーヌが聞いたら泣くなぁ。あいつ、プロパガンダで『現在のジャンヌ・ダルク』って持ち上げられてたし」

「現代の、でしょ?」

「おー、そだった。モードレッドってのが分かって、一端、体を返された時、ショックで寝込んだからなー、あいつ」

「まー、英国の円卓の騎士の裏切り者ってのが効いたんでしょう。で、シン。帰ったら結婚式でもやる?」

「うーん……。覚悟は決めました。よろしくお願いします」

「頼みましたよ、シン?」

「わ、分かってるさ、ルナ……いや、ジャンヌ?」

「どちらでもいいですよ。私はあの時、既に死んだ身ですから」

ジャンヌは、ルナマリアの体を依代として蘇った。一度死んでいるため、生前の事にはさほどこだわりはないようであった。黒江からジルドレの最期を教えられたためか、墓があれば墓参りをしたいし、大聖堂で鎮魂を祈りたい気持ちもある。ルナマリアがシンへ好意を抱いていたのが反映されているのもあり、ジャンヌはシンへ笑顔を向ける。

「身分はこの体の元の持ち主であるルナマリアさんの物を使っているので、手続きの方は何卒お願いいたします」

「わかったわ。でも、アナタが現世に舞い戻るとは。ド・ゴールが聞いたら狂喜乱舞するわね」

「私は、新たな役目を与えられたかもしれません。機神相討つ新たな神代に送り出された……。そう理解しています」

「でも、生前の甲冑と騎士服姿で、よく機動兵器動かせたわね」

「ルナマリアさんの技能が役立ちました。それと、彼女には迷惑をかけてしまいましたから」

ジャンヌはルナマリアに『オルタ』状態時含めて、迷惑をかけている。そのため、シンとの結婚は、体の元の持ち主であるルナマリアへの償いも兼ねているのだろう。

「なるほどね。で、切歌。マリアは?」

「今は休んでるデス。自分の力が時限式なのを気にした寝言を」

「その辺りはしょうがないわね。LINKERの用意はそうそう出来ないから、マリアには指揮官の教育を受けさせるのが当座の対策になるわ。切歌、貴方は調と一緒に、のび太くんの家に行きなさい。これで暫く、戦況に余裕ができるから、のび太くんの街で修行できるでしょう」

「し、修行デスカ!?」

「私がびっしり教育してやるぜ」

武子と黒江に修行を言い渡される切歌。切歌は覚醒めた以上、最低でもシンフォギア姿で生活できるようにしなければならない。それもあり、武子は修行を言い渡す。黒江はカシオペアにいるのび太に連絡を取り、行った日の午後に修行メンバーと、保護者役のジャンヌ(黒江は自衛隊の任務もあるので多忙)もつれていき、ジャンヌがシンとの結婚式を済ませたその日に西暦2000年に、運べる人数の都合、何往復かで戻った。



――西暦2000年――

「それじゃみんな、数週間くらいしたら戻るよ。ドラえもんのタイムマシンのオーバーホールもあるから、多めに時間を取るよ」

「分かった」(わ)

のび太はタイムマシンのオーバーホールのため、22世紀の序盤に行ったドラえもんに代わり、3人に連絡事項を伝え、解散させる。ちょうど、玉子が買い物から戻って来た時刻に戻ったようで、玉子が二階の賑わいが気になったらしく、上がってくる。しずか、ジャイアン、スネ夫が帰ってゆくので、挨拶を交わし、のび太の部屋の襖を開けたところで、ジャンヌと鉢合わせした。ジャンヌは未来で調達した私服に着替えておいたので、『普通の外国人』で通る幸運もあり、『フランスからの留学生』という事で通した。切歌は玉子の『礼儀さえ、きちんとしていれば宇宙人でももてなす』姿勢に唖然とした。

「凄い、のび太さんのママさん、ワタシがシンフォギア姿でもツッコまないデス……」

「ドラえもん君達のおかげで、妙な耐性があるんだ、この街。だから、気にしたら負けだよ、切ちゃん」

「私は普通の留学生で通るけれど、貴方達はそういかないはずだけど、凄いですね、あれは」

「まぁ、ウチのママ、こんな調子なんで。怒るのは僕の成績くらいですよ」

玉子はここ一年で慣れたらしく、シンフォギアであろうが、なんだろうが動じないというほどに耐性を強めていた。そのため、切歌と調がシンフォギア姿だろうがほぼ無反応である。「出っ張り引っ掛けない様に気を付けてね」としか言わなかった。

「さて、常駐組に連絡入れてっと」

のび太はタブレットで、買い物に出ている常駐組に連絡を入れておく。学園都市が野比家の異常な状況に気がつき、暗部部隊を送り込む危険があったからで、交代交代で数人が常駐している。この日はハインリーケ(アルトリア)、ペリーヌ(モードレッド)の円卓の騎士母娘と様子を見に来た坂本がいたらしく、帰ってきた。

「帰ってきたのか。のび太くん、黒江の奴は?」

「防大の寮に戻って行きました。この時期はまだ防大生なんで」

「そうか。入れ違いになったな。ペリーヌの奴が不安そうに話してたから、なんだと思って来てみたが、モードレッドに主導権取られることが多いとは。あのキャラでは仕方がないか」

「そのうち、分担が出来るんじゃないですかね」

「そうだな。入れ替わる瞬間を目にしたが、驚いたよ」

玄関口で話す二人。ペリーヌは性格面でモードレッドに押されがちであるということだが、モードレッドは騎士とは思えないほど粗野なため、ペリーヌは歯止めをかけようとしている。ただ、ペリーヌも戦闘面ではモードレッドに信を置いているらしく、モードレッドにかなりの自由を許している。そのため、ペリーヌはモードレッドの理性として振る舞っていると言えよう。

「帰ったぜ〜」

「お、帰ってきたな」

「少佐、後で鍛錬に付き合ってくんねーか?母上に断られてさ」

「私で良ければ」

モードレッドはダメージジーンズ姿と、レヴィに似た服装であった。言葉づかいも円卓の騎士とは思えぬほど現代ナイズされており、レヴィに似た印象である。

「母上にライディングプロテクターねだって買って貰ったんだけどよ、母上、何故か泣いてたな」

「あー、それは多分、買い食いしようと思ってたんじゃ」

のび太がツッコむ。アルトリアは食いしん坊であるため、買い食いに余念がなく、娘への償いとは言え、高い買い物だったのが容易に想像できる。出自が円卓の騎士であるのを考えると、実にシュールに思える。のび太と坂本はそう思い、同意したのだった。



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