短編『高町なのはたちのありえたかもしれない未来』
(ドラえもん×多重クロス)


※「ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団」本編と話が繋がっております。


-なのは、高校一年生の夏のある日。

「本当、未来変わっちゃったよね」

「うん。前にスバルが言ってた未来だと、私達は中卒でミッドチルダに引っ越すはずだもんね」

「それが今じゃ高校生だもんね。世の中分からないよね」

なのはたちの未来はスバルが情報をもたらした事で多少の変化が生じ、なのは達は高校に進学した。高校ライフをなんだかんだで楽しんでいたが、相変わらず理数系にいささか傾いた学業成績である。そのため高校の担任からは、『お前ら文系をもう少しどーにかしろ!』と、至極当然なお叱りを受けたとか。だが、成績そのものは小学生・中学生時代よりはバランスは改善されており、例えば、社会科の成績はフェイトで中の下、なのはで中の上にまで改善されていた。これは受験生の頃に師から知識をある程度仕込まれたためだが、全ての科目は到底カバーできず、そこが入る科目で成績の平均を下げていた。しかし平均的にみれば、総じて中程度の出来ではある。……が、理数系の成績は、3人ともずば抜けていたために担任からは、理系偏重気味の頭脳を惜しまれてる節があった。

「フェイトちゃんはたしか三週間後くらいに市の剣道大会だよね?今日はその帰り?」

「うん。それと……」

一般人に聞かれるとまずい事なので、耳打ちしてフェイトはなのはに告げる。それは、仕事で赴いた並行時空の地球である剣術を知り、それを調べているのだと。念話を使わないのはご愛嬌である。

「仕事で別の世界の明治の初め頃に行ったんだ。そこでそこの世界特有の古剣術を見つけてね……」

「明治の初め……?」

「うん。名前は飛天御剣流。戦国時代だかに考えられて、代々、一子相伝みたいな形で伝えられてきたんだって」

フェイトは数多の地球の中でも、その世界にのみ存在が確認されたその剣術を研究しているようだった。その剣術はフェイトの調査によれば、会得できれば仮面ライダーやスーパー戦隊の戦士達のような超人的な強さを手にするが、ハイリスクな側面があり、体格に優れる・もしくは常人より遥かに筋肉量が多く、体が頑丈な人間でなければその剣術を永続的に扱えないという。その副産物もあり、使い手らは総じて20代ほどの若さを保っているとの事。


「ふぇ、そんな剣術あるんだ」

「うん。驚いたけど、実戦型の剣術なんだ。でも、とてもハイリスクなんだ。体格に優れた人以外にとってはね。」

フェイトは魔法を使わなくとも、自身にとんでもなく疾いと思わせるほどの剣術がこの世にあるという驚きと、それ故のハイリスクもまた存在し得る恐るべき剣術への興味が入り混じっているようだった。しかしなのはは、フェイトの体格が常人から見てもいささか線の細いとしか思えない体格であると、客観的に見ていたため、体格的にその剣術をフェイトに扱えるとは思えない。



――名前のセンス的には中二病クサいけど、フェイトちゃんにそう思わせるくらい凄い剣術か……。でも、フェイトちゃんの体格だと無理かも。

なのはは軍人、それも将校として現在でも任に就いているため、人を見る目は養われているほうだ。そのためフェイトが線の細い体をしている事を勘案すると、飛天御剣流を会得し、永続的な使用を行うのおそらくは不可能だと踏んでいた。ただ、自らやフェイトの師であるあの二人なら、見かけとは裏腹にがっちりした体をもっている。あの二人であれば習得できるかもしれないだろう。とは思っていた。





――その二人は、1944年12月、陸軍知覧飛行場にて、若手ウィッチの特別教官として招かれ、自らの後輩に当たる若手の育成に励んでいた。

「貴様ら何をやってるか!!隊から外れて死にたいのか!!」

……と、珍しく声を張り上げるは、なのは達の師でもある扶桑皇国陸軍飛行戦隊きっての名うて航空ウィッチの黒江綾香`ある。彼女は加藤隼戦闘隊と名高い`飛行第64戦隊`に属しており、彼女自身の世代は飛行時間は訓練期間でもかなりのものだったが、時勢の変化に飛行学校のカリキュラムが追いついておらず、扶桑皇国の航空関係者の早期大量育成は1944年時点でも不可能であった。そのため黒江はリベリオンから養成マニュアルを取り寄せ、自身の経験を反映させた独自のカリキュラムを課していた。

――はぁ……上は無理難題おっしゃる。こんなよちよち歩きのヒヨコ共を実戦に出せるようにしろだって……なのはやフェイトがいかに楽だったか思い知らされたよ……。

かれこれ2週間ほど飛行訓練をさせているが、
どうにもよちよち歩きの感が否めない。洋上航法もおぼつさない、空戦はやっとのこさのような練度では実戦には到底出せないのは見え見え。さらに若いヤツらは口ばかり達者なトーヘンボクも多いので、黒江は智子共々、手を焼いているというのが実情だった。

自室で黒江は今のこの苦労ぶりを思えばなのは達を育てるのは楽だったかを改めて思い知り、机に座り、ため息をついていた。



「あいつらはこうだと言えば、すぐにそれを実践できたっけ。巴戦、一撃離脱。その両方を高いレベルで。磨けばすぐに光った。しかしあいつらはなぁ……情けねえ。真っすぐも飛べんのか」

「新米の奴らのレベルがあたし達の頃よりだいぶ落ちてる。あれで実戦に出せるの?」

「私達の時代じゃ、まずあと300時間は飛ばせてから出すが、今は800時間足らずで実戦に出せと来てる。いくら世代交代の時期に来てるとは言え……」

戦中では短期促成が命である。史実での枢軸国の航空部隊の敗因の一つに、航空要員の新規育成に失敗したことが挙げられるが、黒江や智子のように、若返って戦うケースはこれまで引退したウィッチの内の三割に留まっているし、更に、『軍の前線で死まで奉仕できるようになった』のは、世界でも極稀な事例に過ぎず、ウィッチの世代交代という宿命を打破できるには至っていない。なので、黒江は訓練過程の変容を急がせるように、陸軍航空総監部に意見具申した。今までのままでは将来、予定されている、扶桑空軍の設立後の空中勤務者の教育にも苦労するのは目に見えているからだ。なのはやフェイト、芳佳のように元から才覚に優れる人間はそうそう出ない。自分たちが撃墜王として名を馳せたのは才覚に加えて、日頃の猛訓練の成果であった。が、今回の訓練生は時勢の急変の割には気が抜けている感が強い。いつ実戦に駆り出されてもおかしくないというのに。この辺は343空から横須賀空へ転任となった坂本が羨ましかった。しかしあの訓練生らを一人前にするのが今の自分らの上層部から課せられた任務だ。

「本当、あいつらを育ててた時は気楽にやれたなぁ。そう思わないか?」

「ええ。あの子たち育ててた時は気楽なもんだったわねぇ」

黒江と智子は前途多難な陸軍飛行戦隊のヒヨコ達の未来を憂いると同時に、なのはやフェイトはを育てていた時期が如何に天国だったかを改めて思い知り、泣きたくなった。



「お前はフェイトが送ってきた飛天御剣流っつー剣の資料漁ってるんだろう?……駄目だこりゃ」

「ちょっと綾香!それどーいう意味よ!?」

「私はカリキュラム考えるのに忙しいからやるんなら道場でやれよ〜」

「はいはい。ついでに武子にコンタックスのカメラを送って来るから遅くなるわよ〜」

親友の剣の修行に呆れつつも、ヒヨコどものためのカリキュラムを考案する黒江であった。智子は智子で、もう一人の親友へ欲しがっていたカメラを買って送るのも兼ねて、道場へ赴いた。


――話は戻って、なのははフェイトと別れて、自宅に戻ると家の敷地内にある道場に足を運んでいた。子供の頃は精神統一のために足を運んでいたが、今では剣の修行のために使っている。家に代々伝わる`御神流`は兄や姉が継ぐと考えており、父や兄にもそう公言してきたので、自分は別の流派でもやろうかと考えていた。その候補は黒江が心得があるという示現流か、実家のそれに近いという、飛天御剣流関連の資料に記されていた「御庭番式小太刀二刀流」という技にも興味はある。飛天御剣流とを合わせて三つの剣技になのはは興味を持っていた。だが、それら、特に飛天御剣流や御庭番式小太刀二刀流を修得する前提として、「高い身体能力」が必要なので、中1の終わり頃からゆっくりと鍛錬を行なっていた。第二の師とも言えるあの二人への憧れ、そしてフェイトと背中を合わせて戦いたいというなのは自身の願望がそうさせていた。


「はぁっ!!」

手にもつ太刀を縦一文字に振るい、竹を割る。この太刀は中学3年になる前に扶桑皇国に遊びに行った際に、かの有名な山本五十六元帥から下賜された姫鶴一文字で、ある意味重要文化財である。だが、ウィッチの世界では刀の生産量も史実以上であるので、現存数も多いために山本五十六曰く、「そんなに気にせんでいい」と大笑されたが、どうも気を使ってしまうために今まで大事にしまっていたのだ。

「太刀か……お前、そんなの持ってたなんて」

「あ、お兄ちゃん。帰ってたの」

「お盆が帰れそうにないから先に帰ってきたんだ。んな太刀、どこで手に入れたんだ?」

「去年にお師匠の所に呼ばれた時にちょっとね」

「ああ、あの旧軍の?」

「うん。もらった相手が誰だと思う?」

「誰だ?」

「驚かないでよ?山本五十六海軍大将だよ。向こうだと太平洋戦争起こってないから存命してるんだ」

「どひゃぁっ!!山本五十六って、あの有名な聯合艦隊の?」

「うん。向こうじゃもう海軍大臣なんだけどね」

なのはは早めに帰省した兄の恭也に自分の持つ太刀の出自を明かす。すると恭也はまじまじと太刀を見る。日本刀らしい美しい名刀はあの山本五十六から拝領賜ったという話に真実味を与えてくれる。実は兄にのみ、なのはは子供時代の戦争の全てを告白しており、秘密を共有していた。これは15歳の時になのはが極秘で私物の航空機関砲を整備していたのを恭也に目撃されてしまい、黙ってもらうために、恭也にだけは子供の頃にあった事の全てを話したのだ。



「父さんや母さんが聞いたら腰抜かすかもな。
四年後に父さんから一発ぶん殴られるのは覚悟してるか?」

「うん。子供の頃にも修正されたのは一度や二度じゃないからね。大丈夫だよ。むしろ後ろめたさがなくなるだけ気が楽になるよ」

なのはは子供の頃の軍隊生活で、上官から修正と称されるビンタを食らった事は一度や二度じゃないと告白する。軍隊というのはある意味、体育会系的なところがあるが、国連軍の後裔のはずの地球連邦軍に旧日本軍的文化が残っているのも変な話だ。




「せっかくだからお前に小太刀を使う相手との戦い方を教えとく」

「え、お兄ちゃんもう年なんだから無理しないほうが……」

「馬鹿、俺はまだ26だ」

「え、そうだっけ〜」

「お、お前なぁ……」

恭也は妹のこの無邪気な辛辣な発言に、がっくりと肩を落とす。なのはと恭也とは10歳離れている。姉の美由希とも6歳は離れていた。そのために世代的相違はかなりあり、子供の頃はそんなに自発的に話す話題は無かったが、
成長し、大人に一歩近づいた今は姉に高校生活の苦労を話したりしているし、兄ともこうして秘密を共有しあっている。こうして着々となのはは自分の肉体を少しづつ鍛え上げていった。







――はやては中学3年の時に初めて対面したなのはとフェイトの師である、黒江と智子の二人に対して、ある種の憧れを抱いていた。三人娘の中で最初から指揮官としての教育を受けているのははやてだけである。そのため指揮官・戦士の双方で優秀さを見せたあの二人への憧れは直接の弟子であるなのはとフェイトよりも大きかった。

「なのはちゃんと一緒にいたつー陸戦魔導師さんの話やと`私は直接のガチンコは未来でも苦手にしとる`って話やけど、なんで私の
事知ってたんやろか……」

これはなのはとフェイトがスバルの事をぼかして話を伝えたという事の表れであった。ヴィータも3人の意を汲んで、スバルの事は、はやてには全ては話していないという事だった。これはスバルが過去のなのは達に与えてしまった影響を鑑み、未来をそれ以上あまり変えないためにスバルが提案した事で、3人はそれを飲んだ。その結果、三人娘の中では、はやては蚊帳の外に置かれてしまった。それははやて自身、薄々と感づいており、なのはとフェイトが自分に隠している事がなんなのか調べていた。フェイトが上に提出したレポートや報告書の写しを取り寄せ、それを読み漁る事で、遅らせながらもなのはとフェイトが11歳の頃に遭遇した出来事のおおよそを知る事ができた。

――なのはちゃんとフェイトちゃんは私に何隠しとるん?あの時にあった出来事ってなんやろか?

はやては11歳の頃になのはとフェイトが遭遇した事件で蚊帳の外に置かれた感があり、なのはやフェイトが以前とは違う道を歩み始めていたのに焦りを感じていた。そしてそれは
15歳の頃にミッドチルダで行われた模擬戦でさらに大きくなった。




――この時、なのはは教導隊に配属となって2年目あたり。フェイトは正式に執務官に任命されて一年ほどが経過、はやては指揮官としてのキャリアを歩み出していた。この時の3人の階級は史実では、はやてが一番進級していたもの、この歴史においては一時、行方不明判定が出されていたため、なのはが二階級特進で一尉、即ち大尉に任じられていたために、高校一年の時点では、なのはが一番高い階級にいたりしているなどの、細かな違いが存在する。その違いが謙虚に現れたのはシグナムとなのはが戦技披露会に臨んだ時であった。


「どうしたなのは。その顔は」

シグナムはいつに無く嬉しそうな顔をするなのはに不思議そうな表情を見せた。模擬戦と言えど、本気で臨む自分をなのはは苦手としていたはずが、今回はあの事件の後では初めての模擬戦である。それ故、以前と姿勢が変わったのをシグナムは感じ取っていた。

「いえ、なんとなく嬉しいんですよ。あたしは。こうやってシグナムさんと戦れるのが」

「お前がそのような台詞を言うとはな……意外だ。あの方達の影響か?」

「ええ。あの人達からは色々教わりましたよ。それと……ね」

なのはは以前とは明らかに違う、言うなら`戦る時はきっきりと戦る`とも言うべき態度をシグナムに見せた。闇の書事件の時から徐々に見せ始めたこの傾向はロンド・ベル隊の一員として、地球連邦軍人として戦乱の世を生き残った事、直接の師が見敵必殺を是非とする扶桑皇国の将校であった事、仮面ライダーやスーパー戦隊などの数多のスーパーヒーロー達が命を懸けて戦いに臨むのを見てきた、などの要因により、強く表れるようになったというべきだろう。






――二人は戦った。後に機動六課内で、「伝説になった」と評される凄まじい戦いの幕があがった。最初の内は普通の戦時披露会だったのだが、徐々に二人のボルテージが上がっていくにつれてもはや別の何かへ変化していた。

「レイジングハート、アレ使うよ」

「しかし、マスター。あれは公の場での使用は控えていたはずでは?」

「構わないよ。いつかは使わないといけないモードだし、それにそう長く隠し通せるとも思えないからいっそのこと使ったほうがいい」



なのははこの時、初めて公の場で地球連邦軍によって魔改造を施されたレイジングハートを披露した。地球連邦の技術で近接格闘用モードを組み込まれ、年月を経ることで、よりなのはが扱いやすいように最適化された片手持ちの西洋剣形態となっていた。さしずめバージョン1.2とも言うべきだろうか……。その姿はなのはが教導隊入りする時に一瞬だけ見せたという、レイジングハートの姿が真であったという事実にさしものシグナムも目を丸くする。


「やはりあの時のアレは目の錯覚などでは無かった……か」

「ええ。これがあの世界、あの戦争で`あたしが得た力です」


そう言うとなのはは剣を構える。構え方は日本刀の名人であった智子や黒江、それと篠ノ之箒の影響が見て取れるものだ。シグナムのそれが西洋の騎士のものだとすれば、なのははは武士のそれである。



これに観客席のフェイトは『あちゃ〜!』と頭を抱えた。公の場であの魔改造モードをついに使ってしまったのだから、当然である。

「ああ〜!あのモード、まだ技術方の方に報告してないって言ってたのに〜!!」

甚だ困り果てるフェイトに隣の席にいるヴィータはポンと肩を叩く。

「諦めろテスタロッサ。アイツはあの事件からは熱くなる質だからな」

「ああ、どうやってマリエルさんに言い訳しよう……ねぇ、ヴィータ。私と一緒に考えてよ、言い訳」

「はぁ!?」

この時点では、フェイトの言葉遣いはまだ普通である。だが、高校二年を境に言葉遣いはガラッと変化し、同時に大阪の某縦縞球団のファンぶりが進行。同球団の黄金期再来と相まって、仕事中でも必ず試合を見に行くようになったという。そして、数年後には『鞘走らずにいられようかッ』や『アークインパルスッ!』と言うようになるのであった……。

フェイトはなのはがレイジングハートを地球連邦軍に魔改造されたせいで、ここ数年はデバイスを管理局の正規の整備に出していないというのを思い出し、肩を落とす。本局の技術部が今のレイジングハートを見たらぶったまげるのは間違いない。子供の頃から世話になっている技術者に対し、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。実際、レイジングハートは連邦軍が有する範囲内の技術で復元が行われた都合上、武器としての強度や魔力変換効率はこの時代の最新デバイスをも凌駕し、史実でこの時点から4年後に制作されるはずの、クロスミラージュなどの`次世代機`と同等のレベルの高性能を誇る。そのためスバルが持ち込んだ`新暦75年`のカートリッジを使用しても何ら問題は起きなかった。なのははそれをこの場に持ち込んでおり、切り札として使う腹づもりだった。


「はぁっ!!」

この戦いでなのはは師や戦友の影響が見て取れる剣筋を見せ、なんとかシグナムと渡り合っていた。元々、近接戦闘は苦手としていたためと剣を扱うようになったのはここ数年来の話である。多くの戦いをレヴァンティンと共に潜り抜けてきたシグナムとは、経験や勘において、気合だけでは埋めようが無い大きな差があった。

「お前をここまでに育てるとは……やはり智子中尉や、黒江大尉の教えは伊達ではないらしいな」

シグナムはニヤリと笑う。フェイトと違う、意外な相手と剣で勝負に臨めた事への嬉しさがにじみ出ている。なのはもこの戦いを愉しんでいるかのような表情で返す。これはこれまでには見せていない顔だ。

「時間もそうそうないし、いきますよ!」

「望むところだ!!」

この時の二人が見せた戦いはまさに凄まじいの一言。バリアジャケット、騎士甲冑の双方は互いに斬り合う内にボロボロとなっていき、ついにはお互いの胸や肌が露わになるほどのもので、なのはは破損がひどいバリアジャケット姿だが、次の一撃に全てを賭けるかのように、ただ一つの構えを見せる。

―これが今のあたしの全て。それをシグナムさんにぶつける!

この戦いで十八番の砲撃をなのはが見せなかったのは、「どうせシグナムには見切られているだろう」という戦士としてのカンもあるが、、智子らから仕込まれた今の自分がどこまで一流の剣士に通じるか試したいという気持ちがそうさせたのだろう。ちなみになのはが取った構えは抜刀術、居合と言われるもので、体力も持久力もシグナムに到底及ばないなのはにとっての一発逆転の秘策であった。



――たしかアレは居合、もしくは抜刀術と言われる日本の剣術……いいだろう。受けてやる!レヴァンティン!!

シグナムはレヴァンティンのカートリッジを全弾使用し、必殺技の態勢に入る。

―ーレイジングハート、お願いっ!!


なのはもレイジングハートに切り札の新暦75年製カートリッジをロードさせ、乾坤一擲の攻撃態勢に入る。そして互いの体と剣が交錯し……‥。



「あの時のなのはちゃんが見せた戦いは各方面を驚かせたのは言うまでも無い事や。せやけど、あの時、私はなんだかなのはちゃんやフェイトちゃんに置いて行かれてる感じがしてならなかった……」



この戦技披露会から一年が経過した16歳の夏、はやては親友が自分よりも一歩先に踏み出している現状に羨望と同時に焦りも感じ、その差を少しでも埋めようと、去年に黒江から貰っておいた連絡先に電話をかける。その連絡先はロンド・ベルの母港の一つである、サイド1に属するスペースコロニー『ロンデニオン』にあるブライト・ノア、アムロ・レイ、それぞれの自宅の電話番号。はやては黒江を通して、ロンド・ベルと接点を得、接触し、そこで研修することで指揮官としての勉強をしようとしていた。

「ブライト・ノア大佐ですか?私、高町なのはさんの時空管理局の同僚の八神はやて言います……今日はご相談があって電話しました」

はやても親友らに追いつこうと必死であった。少しでもなのは達に追いつこうと、未来世界のロンデニオンコロニーにいるブライト・ノアに相談を持ちかける。はやてははやてで、健気に頑張っていた。



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