短編『16歳なのはの奮闘記+α』
(ドラえもん×多重クロス)



 なのはは十六歳を迎えた時点でフェイトを通して、別世界の明治時代の初頭へ赴き、そこで触りの部分だけであるが、飛天御剣流と呼ばれし流派の技の心得を得た。奥義までは習得しなかったのは、飛天御剣流の正当継承者である、十三代・比古清十郎の意向によるものであり、なのはも、比古になのはを紹介したフェイトもそれを了承した。だが、触りの部分だけとはいえ、超人的な戦闘能力を与える飛天御剣流を習得したことによる副作用は肉体にすぐに作用した。肉体の若々しさが加速され、直後である、16歳時点でさえも中学2年生と言っても通用する外見となった。







――高校一年の冬 期末テストの最終日帰り

「なのは、最近剣を始めたんだって?フェイトから聞いたわよ」

この日は久しぶりになのは、アリサ、すずかの三人で帰宅の途についていた。フェイトは剣道部の稽古が再開するので、学校に残った。はやては管理局の指揮官研修のために早退。そのためこの組み合わせとなったのだ。

「うん。中学2年のころから体鍛えといて正解だったよ。ここのところ管理局の仕事もデスクワーク多くなってたからね……鍛え直せたよ、にゃははは」

「飛天御剣流だっけ……まるで漫画みたいな名前の流派だね」」

「うん。技の多くもなんていうか……漫画とかゲームみたいな超人技だからね。よく撃てるなぁって思ったよ。名前なんて中二病臭いし」

すずかからのこの一言になのはは頷く。何せ飛天御剣流の技名は現在のセンスからいえば、中二病と言われても仕方がないもので、最初は叫ぶのに躊躇してしまったとの事。

「でもいざ使えるようになったら極道の人や自衛隊員なんて目じゃないんでしょう?いいじゃない」

「いや、アメリカ海兵隊でも勝てると思うよ。代々の継承者の戦闘力は帝国陸軍の一個大隊以上の戦闘力だからね……」

そう。飛天御剣流の使い手は当時の人間らに陸の黒船と称されるほどの超絶的戦闘能力を発揮する。正当継承者らは近代陸軍の大隊や師団以上とも称される一騎当千の力を持つ。そうでないなのはは彼らより格段に劣るもの、確実に小隊や中隊以上の戦闘力は持ったと思うと返す。

「確か明治初期のころの小隊は歩兵が数十人だったからそれくらいの戦闘力っていったら現在じゃ破格じゃないの」

「うん。今はとにかく火力で物言わせるのが主流だからね。歩兵数十人ならなら白兵戦に持ち込めれば軽いと思うよ」

「それってある意味恐ろしいよ、なのはちゃん」

「まぁね。でもさ世の中にゃ三人で軍隊より強い戦隊とか仮面ライダーとかいるし、驚くことはないよ」


「確かに」

この頃にはなのはの友人たちは別の世界で地球を守護する、歴代のスーパー戦隊や仮面ライダーらの存在を認知しており、そのうちの何人かにも対面していた。そのため、男子が憧れるヒーローへの理解が増したとの事。

「それはそれで変だけどね」

「それいっちゃあいけないって」

と、ある意味では年頃の女子高生の普通の会話とは思えない会話が繰り広げられた。数十分後、家に帰ってしばし休憩をとる。期末直後なので、午前中に帰れたのは何とも気分がいいものだとくつろぐ。



――この時のなのは部屋を見てみると、子供時代にロンド・ベルの仲間と撮った写真や、16歳の春に三度目の新調をした地球連邦宇宙軍の軍服(ロンド・ベル仕様)、ロンド・ベルが保有している各種機動兵器の一部の模型が机に飾られているなど、以前とは趣が異なってきている。机の引き出しの一つには、未来世界から持ち込んだ、連邦軍制式拳銃とその弾丸のセット一式が隠してある。道場には山本五十六より賜りし姫鶴一文字と、高校入学祝いに送られた雷切という、国宝級の業物が置かれている事も勘案すると、何とも恐ろしい事になっている。また、なのは自身の体躯も飛天御剣流を扱うためか、史実より遥かに頑健であり、その筋肉量も多い。これは軍隊の訓練と実戦を経験し、その後も鍛錬を続けた賜物で、華奢な見かけとは裏腹の引き締まった体である。



「教導隊の任務も忙しいし、正月休みくらいとっても罰は当たらないよね……去年は忙しかったし、今年は今年で大変だし、来年こそは穏やかに行きたいけど……そうは問屋がおろさないんだろな……ナチ公どもの動きも気になるし……フェイトちゃんが追ってるけど奴らはそう簡単に尻尾は出さない。何か悪いことおきないといいんだけど」

彼女は一等空尉として、何度目かの年を迎えようとしていた。昨年の空港事故は歴史の釣り合い取りのためか、昔、スバルが話した通りに進行し、少女時代のスバルと対面した。これでおおよその歴史の釣り合いは取れているはずだが、問題はバダンを始めとする、各次元世界に散らばっていると、仮面ライダーたちから聞いた「ヒトラードイツ」の残党の存在である。各スーパーヒーロー達は次元を股にかけた、アドルフ・ヒトラーの意志を継ぐ者達の暗躍を懸念していた。第二次世界大戦に敗北してもなお、地球征服の野望を燃やす彼らがどこの世界でその野望を再燃させるのか。フェイトがここ数年、追っている仕事の題目の一つだが、思ったよりは成果は上げていない。それが今のなのはの最大懸念材料であり、歯がゆいところなのだ。携帯で有給休暇の真性を出し、しばしミッドチルダに買った自宅で試験休みの期間を利用してのバカンスをすることにした。













―― その数日後 ミッドチルダ

「こらぁ〜!待ちなさい〜〜!!」

期末テスト後から一週間ほど休暇を取っていた彼女はフェイトと買い物途中、逃走を始める銀行強盗に出くわして、その強盗を追っていた。銀行強盗は足に自信があるらしく、走って逃走した。なのはは荷物をほとんどフェイトに押し付けて、その強盗を追っていた。


「あの女……噂のエースオブエースか!だが、如何に空でエースでも、陸ではどうかな?こう見えても走りは陸上競技で入賞してる!」

彼は振り返って、追ってくるなのはを一瞥して、こう豪語した。30代中盤ほどの中くらいの背丈、若き日に陸上選手だった名残からか、引き締まっている肉体の持ち主。それ故、追手が管理局の有名な人物だと知っても、挑発する余裕さえ見せた。が、それが激務に体を鳴らしている途中のなのはの闘争心に火をつけた。

「……へぇ……。言ってくれるじゃないの。こう見えてもあたし、そう言われると黙っちゃあいられないのよねッ!」

子供時代の生活と、御坂美琴などからの影響にによるものか、負けず嫌いな側面が見え隠れするようになっていたため、強盗の挑発にまんまと乗る形で走るスピードを上げる。その姿からは小学生頃の“体育赤点”と言われた運動音痴な姿は完全に見いだせなかった。むしろ傍から見れば「運動神経抜群」とも取られるであろう動きであった。後天的な訓練とは言え、運動神経がここまで改善されたのはやはり、父親の家系の血が現れたためであろうか……。


――あれ?中学までの頃が嘘みたいな速さだ……これも飛天御剣流の心得を得たおかげなのかな?

飛天御剣流の心得を得た、この時期以降のなのはの足の速さは中学時代までと隔絶したものである。正当継承者である緋村剣心や十三代・比古清十郎と比べれば劣速であるが、常人のそれに比べれば遥かに速い。そのためにアスリートを自負している彼に突き放される事なくついてこれるのだ。

「野郎ッ、この俺についてこれるとは!ならば!」

大通りを外れて、裏の込み入った路地へ入る。だが、それは空間認識能力に優れるなのはの思う壺だった。路地の複雑な道は初めて通るものには鬼門と言える。なのははその点をうまく利用した。

「路地ならこっちのもの!もらったぁ!」

ゆっくりと、しかし確実に強盗を追い詰めるなのは。その腕には既に剣形態のレイジングハート・エクセリオン改が握られている。バリアジャケットは敢えて展開はしていない。一撃で勝負はつく。そう睨んでいるからだ。

「しまった!」

彼が行き止まりの路地で足を止めたその時だった。なのはは路地に置いてあった建材のブロックを足場にして、跳躍。そこから習った剣技の一つを放つ。

「飛天御剣流……“龍槌閃”!!」

相手の頭上から非殺傷設定の剣を見舞う。そもそも飛天御剣流は逆刃刀と呼ばれる特殊な刀を使わない場合、殺傷力抜群の技が揃っている。そして筋肉量を増やす方向で体鍛えていなければ体に重大な損傷を生じ、技が使えなくなるリスクがある。本当の成長より頑健かつ幾分か大柄(166cmほどか)な体躯、多い筋肉量と身体強化魔法でその条件をクリアして放ったそれは正当継承者のそれと比べても遜色ない威力を発揮した。

「バ…カな……」

直撃を受けた強盗はこの一言を残して昏倒。後の処理は後からやってきたフェイトに押し付け、自身はトンズラした。休暇中だったので面倒な事務処理をしたくなかったのだろう。無論、本人確認の必要性から、後日やるハメになり、フェイトに怒られたのは言うまでもない。そういうところはいい加減になってしまったらしい。これにはヴィータやシグナムもため息を付いたとの事。なのはのこの武勇伝はドラえもんとのび太の耳にも入り、のび太に「ハハッ、なのはちゃんも随分変わったねぇ」と評されたとの事である。











――後日、なのは宅

「さあて……今日はこいつの整備でもするかな」

なのはとフェイトはVF-19SとVF-22を前大戦時に貰い受けていた。整備はしばらく管理局の知り合いに任せておいたのだが、14歳の頃に、固定翼機に不慣れな管理局のメカニックでは整備しきれないと音を上げられたので、自分の手で整備するため、久しぶりに23世紀に赴いて整備講習を受けて整備士の資格を得て、ここ二年は自分で定期的に整備を行なっている。潤滑オイルなどは独自に高品質のものをインタビュー本の印税や給料で買い、使っている。この日はなのはは一人なのと、暇だったので定期整備を行うことにした。



「エンジン、OK。アビオニクス異常なし……コントロール異常なし」

コックピットに座って、愛機――というもの、実戦で使ったのは後期からだが……――の調子を見る。ミッドチルダでは質量兵器を私的に持つことは、拳銃レベルであれば届け出を出せば認められるが、さすがに戦闘機やモビルスーツなどの兵器は厳禁である。なのは達はその禁を敢えて犯し、こうして可変戦闘機を隠し持っている。彼女は軍人となった故に、ミッドチルダに未だ燻る、旧時代の勢力残党や反管理局組織のテロ行為などの戦禍の篝火、そして少女時代にスバルから聞かされた、ジェイル・スカリエッティの事件とナチス・ドイツ残党……ナチスがあらゆる方法で次元世界に逃げ延びていたのなら、次元世界を我が物にせんとその覇権国家であるミッドチルダを制圧して、労せず次元世界の主導権を握ろうとするのは考えられる事である。

「結局、ミッドチルダの取ってる政策も誰でも受け入れてるわけじゃないし、ナチスのメンバーが一人や二人侵入したり、住人にナチのシンパがいても不思議じゃないんだよね。それにジェイル・スカリエッティがあんなに凄い装備……“前の歴史”であたしを落としたっていうガジェットドローン……ゆりかご……旧ベルカの遺産。もしスカリエッティを動かしていたのが管理局そのものだとしたら……?」

不気味な想像だが、的外れではないように思える。管理局の最高上層部には提督レベルでも知らない、いや知ることのできない秘密がある。もしそれがスカリエッティを作り出したとすれば……不祥事どころの話ではなくなる。なのははそれが外れてくれることをひたすら祈った。が、いざ事が起これば先頭に立って戦う覚悟はある。そのために軍人になったり、剣を習ったのだから。



















――西暦1999年 晩夏

「へぇ。なのはちゃんも飛天御剣流を?」

「そーなんだ。比古さんに制限付きである程度の剣の心得は教わったみたいでさ」

「そりゃ面白いですね」

「ああ。ところで……お前の子孫の事だが……気を落とすなよ」

「ええ。薄々とは分かってましたけど、いざ聞いてみると来ますね……」

のび太と電話しているのは、未来世界に滞在中の黒江である。黒江は未来で、のび太の子孫の一族に会った事を報告すべく電話してきた。黒江によれば、「一年戦争の時にオーストラリアにいた親族が死亡していると説明を受けた」との事で、一年戦争に始まる戦乱ではのび太達の一族も決して無縁では無かった事を教えられた。黒江が日本で連邦軍に従軍している、のび太の孫の孫の孫である人物、つまりは野比セワシの孫(セワシの長男の第一子)の20代後半の人物と話し、セワシは老齢を迎えても元気に暮らしているとの事だが、次男一家を亡くしたショックでここ10年はふさぎこんでいるらしいと説明を受けた。のび太の記憶が正しければ、2115年生まれのセワシは2199年には84歳を迎えているはずであり、現在(1999年)からみてもかなりの長寿を保っているが、70代の頃に子の内の一人を家庭ごと失ってしまったのを期に精気を失ってしまったという事に、ジオンが一年戦争開戦劈頭に行ったブリティッシュ作戦の光景が頭を過る。



「セワシの子、ブリティッシュ作戦の爆心地にいたんだろうな……つまりはシドニー……」

「任務でトリントン基地に行く途中の跡地、見たよ。直結500キロ、人類史上稀にみる破壊の後……何も残っちゃいない。あるのは海だけだった。信じられねーよ。あれを同じ人間がしちまうんだから」

「今のオーストラリア人に言っても信じないでしょーね。シドニーは200年に満たない未来に消滅するなんて……」

「だからアースノイドにジオンって嫌われんだよなぁ。やり方強引だったって聞くし」


そう。黒江の滞在する2200年ではオーストラリア大陸は16%が海底に沈み、かつてのシドニーとキャンベラは消滅し、その地殻ごと海底に沈んだ。そのためオーストラリア行政府の首都はアレデートになっている。これを1990年代のオーストラリア人に言っても信じはしないだろう。ジオンが戦争で引き起こした破壊はその後のアースノイドの対ジオン感情を決定づけ、ティターンズが生まれる土壌を作りだした。ジオンの思想がたとえ“スペースノイドの自治権獲得の魁”という美辞麗句を振りかざしたものだとしても、行った事がアースノイド・スペースノイド問わずの大虐殺では、アースノイドの逆鱗に触れ、一部のスペースノイドからも支持されなかったのが分かる。その証拠に、シャアの新ネオ・ジオンを含めてジオンの名を持つ軍隊はいずれにせよ地球連邦政府と歴代のガンダムに敗れ去っている。

「僕以外のジャイアン、スネ夫の一族はどうです」

のび太はここでジャイアンとスネ夫の一族の詳しい消息を黒江に聞いた。大まかには分かっていたが、詳しい事は未だに不明だったからだ。しずかの一族のことを聞かなかったのは、嫡流の子であったしずかが野比家に嫁入りしたからだ。

「ジャイアンの家系は元気にスーパーマーケット経営してるよ。あいつの代から代々、個人経営で頑張ってるそうだ。アナハイムのスーパーマーケット部門より地域での売上いいそうな。ただ、グリプス戦役の時に当時の経営者の長男が戦災で半身不随になっちまったから、今は三男坊が経営引き継いだそうな。そこで買い物もしたけど、あいつの一族、商才あるなぁ。釣り用品が大手より安いぞ」

そう。ジャイアンの一族は武門・商売にひたすら縁がある家系である。ジャイアン当人にしても、大学あたりで経済と経営学を修めたらしく、実家とは別にスーパーマーケットを開業して一儲けした上に、子も設けてそれなりに幸福な人生を送った。剛田家は代々、武門か商売で生計を立てる一族であるが、ジャイアン以降、商家になったそうである。黒江は並みいる大手チェーン店よりも剛田家経営のスーパーで買ったほうが釣り用品一式を安く買い揃えられるという点にご満悦なようだ。

「ジャイアンのかーちゃんからして商売上手ですから。スネ夫の方は?」

「あいつの方は商社で生き残ってた。上手くアナハイム・エレクトロニクスの台頭を乗り切って、今じゃそこそこの老舗商社だぞ」

骨川家も上手く激動の時代を乗り切ったらしく、アナハイム・エレクトロニクス社に飲み込まれることもなく、21世紀・22世紀を乗り切ったと報告される。最も、戦国時代の頃からその場その場を乗り切ってきた骨川家がアナハイム・エレクトロニクス社如きに飲み込まれるなど思っていなかったので、のび太は当然と黒江に返す。

「戦いってなんで起こると思います、少佐」

「そうだな……戦争ばかり起こってると、逆に平和っていうのが想像できなくなっちまうってのを聞いたことがある。お前の時代の日本が他の国の戦争を“他人事”と見て、他の国や学園都市から“平和ボケ”なんて揶揄されてるちょうど逆だ。戦いってのは国家に限定しないでもいくらでも起こってる。受験戦争や会社の面接とかだって見方によっては戦いだ。だけどな。こういう考えがある。こりゃあるお偉い人がちょっと前に言ってたことらしいが……“平和は誰かから与えられるものではなく、自分自身の力で勝ち取るもの”だそうだ。平和は勝ち取ってこそナンボ、大国からとか与えられた平和に意味はないってのが地球連邦の考えだ」


「平和は勝ち取るものか……だから人って戦うんですね」

「かもな。戦争なんてのはどっちも正義の大義名分を作って戦うみたいなもんだ。ジオンもティターンズもザンスカール帝国も、OZもホワイトファングもな」

それらは過去の地球圏にそれぞれ争いを起こし、自らの大義の名の下に戦った軍隊なり、組織である。それらの起こした争いを止めるために歴代のガンダムたちは生まれてきた。人は戦う姿勢を持つことこそ意義ある存在足りえるのだろうか。のび太はオール0点連発の頭脳ながら実に哲学的なテーマを議論していた。



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