短編『501対マフィア』
(ドラえもん×多重クロス)
――地球連邦軍とティターンズ。祖を同じくしながら、別の世界を巻き込んでの大戦争を行う両者。両者の骨肉の争いに嫌気が指し、軍を抜けるウィッチも続出した。リーネが太平洋戦争終戦まで軍にいたのは、ひとえに芳佳への献身と、責任、仁義に尽きる。実質的に軍務についていたのは、501での活動時期プラスαの期間であり、後半は軍人としてではなく、ペリーヌのお供をしている期間が大半であるが。一方で、黒江達のように、軍人としての時間の大半を前線勤務に費やした『戦士』も多い。特に、黒江達スリーレイブンズと深いかかわりを持った者達はススキヶ原でバダンと戦うわ、学園都市の尖兵と戦うわ、在日米軍とやりあうわ、どういうわけか、米マフィアと戦うわの波乱万丈ぶりであった。特に不可解なのが、バダンと何らかのかかわりを持っていたのか、米のマフィアの尖兵が501基地を襲って来た事であった。
「おいおいおい!いつからロマーニャは米マフィアの傘下になったんだ!?おかしいだろ!それも公然と軍基地を襲うなんて、よほどの戦闘マニアかよッ!ロマーニャマフィアがレジスタンスで手一杯なのを狙ったか!?」
どういうわけか、米のギャング共がアサルトライフルなどを持って襲い掛かってくる。異常な光景である。しかも、RPOロケットランチャーという強力な武器まで備えているなど、明らかに、バダンが裏で手を曳いている。
「バダンめ、米のマフィアとかなり太いパイプを持ってやがるぜ……それも使い捨てのギャング気取りの青二才共を動員してくるなんて。しかも、シャブッてるか、ハッパ吸ってるのか、ヤクでも打ってるのか、ちょっとやそっとじゃ倒れねえ!」
これは大決戦前に起きた出来事であるが、この時に否応なく、対人戦をせねばならなかった新501。真っ先に黒江の私室が狙われ、夜中にいきなりロケットランチャーで壁が吹き飛び、その次は無数のマシンガンを撃たれた。慌ててすぐに廊下に出て、緊急警報装置のボタンを押すが、反応はない。
「電気系統がやられたか!ええいクソ、とりあえずヒガシの部屋までいくっちゃねー!」
圭子の部屋まで走る。ドアを叩くが、いびきが聞こえるだけである。しょうがないので、手に持つ44マグナムを天井に向けて撃つ。
「は、はえ!?な、な、何!?」
「おい、ヒガシ!私だ!緊急事態だ!!」
「何よ、直枝が喧嘩でも初め……って!わあああああ!?」
「おわああああっ!?」
半分夢うつつの圭子が応対するが、部屋にいきなり、7.92ミリ弾の雨あられが打ち込まれる。黒江はとっさに部屋に飛び込む。圭子は愛用のカメラが置いてある机の回りに、いきなり銃弾が雨あられのように打ち込まれたので、びっくり仰天だ。
「ど、どうしたのよいったい!?」
「分からん!この間、バダンの北海道支部をぶっ潰したろ!?たぶん、その関係で取引先だったロシアだか米のマフィアが鉄砲玉送り込んで来やがったと思う!」
「そんなのあ、あ、あーーーーーーーーーーー!!ライカがァッァァァァ!!」
「ライカがイカれたくらいでガタガタぬかすなよ!」
「こ、こ、これ、昔にアニキが誕生日に買ってくれたやつで、生産終わってるモデルだったのよぉぉぉ!?あーーーメモまで吹き飛ばしてくれちゃって!」
圭子のこの世の終わりのような悲鳴は、すぐに烈火の如き怒りへ変化した。
『怒る!!』
「どこの超人機だ、お前は〜!」
圭子はライカを壊された怒りにより、怒りが頂点に達し、ゲッター線憑依モードになる。徐ろに、机に置いてあったゲッターマシンガンを徐ろに持ち……乱射した。しかも、纏うオーラが高エネルギー状態のゲッタービーム同様に赤く、ブラックゲッターのゲッタービーム乱射を纏っているような状態になったので、黒江は本気で戦慄する。
(怖っ!!ブチ切れてやがる……よほどライカが大事だったんだなぁ。つーか、ゲッターマシンガン持ち出すほどのことかよ。大型怪異だってぶっ飛ぶ『劣化ゲッター線弾頭』なんだぜ……?)
対人には威力過剰なゲッターマシンガンを部屋から出るなり、叫び声と共に乱射する。そのため、異常を察知して敏感な何人かが起きる。
「先輩〜〜!」
「おお、黒田!見てくれ、ヒガシの奴。ライカがやられたんで、理性ぶっ飛んでやがるんだ」
「急に気温が上がったから、飛び起きたんですけど、先輩の仕業だったんですねぇ。さて、あたしも一働きするかぁ!この十文字槍で!」
「お、おい!なんつーもん持ち出してきた!つーか、お前んちと関係ないだろー、それー!!」
「本物なんて、怖くて使えませんよ。コピーに決まってるじゃないですか」
「お、おう。しかしだ、真田幸村の槍じゃんかよ、それ!どこがどうして、お前が使うんだよ!」
「うちのは大身槍で、室内戦向けじゃないですか!それで同期に真田家の子孫がいたんで、借りたんですよ」
「いいのかよ!?」
「さて、行くとするか!」
黒田は、別の次元の彼女とはちょっとだけ違う面がある。それは歴代仮面ライダーらに感銘を受けたため、『皆の笑顔を守るために、あらゆる敵を倒す』という側面が加わり、積極的に敵を斬るという戦闘性が強まった。そのため、506の仲間からは驚かれたという、
「やれやれ、こうなりゃヤケクソだ!」
黒江は本来、流派的に長巻のほうが向いているとも言えるが、至近距離での格闘戦を好むようになった都合と、飛天御剣流、戸隠流、隠流の心得を活かすため、『太刀』か『小太刀』を選んでいる。そのため、ここ最近は歴史改変当時からの付き合いである雷切を使った。と、そこで。更に援軍も到着する。ハルトマンだ。
「ったく、人の睡眠時間を邪魔してくれちゃって!もう手加減なしだ!」
ハルトマンも切れているようで、一振りで、何人も斬り倒す。寝間着姿と、いささかカッコ悪いが、戦闘術は本物で、飛天御剣流・龍槌閃・惨、龍巣閃、双龍閃・雷、牙突を駆使し、銃弾をものともしない。ただ、龍槌閃・斬は完全な殺人技であるため、当てる場所を工夫しないと確実に殺すので、足に当てたりして死なせないように努力はしているが、それでも死者は出る。
「数が多い、ハルトマン、どけ!私が数を減らす!『勝利を約束せし聖剣!!』エクスカリバー―――ッ!」
エクスカリバーを雷切に載せて放つ。雷の属性と風もセットなので、轟音を発し、雷と風を纏う。衝撃波が発生する。そのため、音を聞きつけた504出身のドミニカとジェーンがやって来た。竹井も一緒だ。
「お、竹井!それと、ドミニカ、ジェーン!」
「あ、あの。黒江さん、これはいったいどういう状況なんです?」
「向こうでバダンぶちのめしたら、マフィアが報復戦争仕掛けてきやがったんだよ。それで防戦中だ。武器は私の部屋から適当に取れ!」
「わかりました……あ、あの、加東さんはどうしたんです?あの時みたいに獣に…」
「趣味の恨みだ殺らせておけ……」
「ライカがやられたんですか?」
「ああ。しかもお兄さんからのプレゼントみたいだったみたいでさ、完全にキレやがった……目を合わせるなよ、殺されるぞ」
「は、はふぃ!?」
目がイッている圭子。それに竹井は怯える。
「私に話しかけんな!!ド頭ぶっ飛ばれたいか!?あぁん?!」
「は、はぃぃぃ……」
圭子はブチ切れているため、口がいつもの倍は荒くなっている。そのため、ドミニカでさえ引くレベルになっている。
「し、少佐。なんか、あんたが怯えてるなんて、新鮮だぞ……」
「こちとら、テンパってんだよぉぉ〜!!見ろよ、ヒガシの奴、キレすぎて口が荒いぞ……竹井がションベンもらしそうなレベルだ」
圭子の切れぶりは、もはや竹井やドミニカですら語尾を震わせ、黒江が完全に怯えるレベルだった。
「あー……、詰んだか、アレ止めるのか?面倒だから殺らせておこう?な!」
「あなたが怯えてどうするんですか!」
竹井は起こるが、黒江が完全に怯えているので、ため息だ。
「下手に止めると被害増えて基地無くなるよ?」
ハルトマンが諦めたような口ぶりで言う。
「だから詰んだって…」
「ヒャハハハァ――ッ!」
狂気に一歩踏み込んだ、圭子の叫び声が響き渡り、他のウィッチ達も続々と駆けつけたのだが……。
「あのぉ……何してるんですか?」
「おお、宮藤!いいところに来た!穴拭とフェイト連れてこい!大至急だ!!」
「ほ、ほえ!?」
「ヒガシがブチ切れたと言え!このままいくと、基地がぶっ飛ぶし、相手を皆殺しにしかねん!」
「わ、分かりました!」
その瞬間、圭子は右腕を前方に差し出す。すると、ゲッタービームを撃ち出す。しかも拡散タイプであり、ブラックゲッターの戦法そのままだ。
「うおおおおおおっ!?ゲッタービームだとぉぉぉ!?」
悲鳴をあげる黒江。壁は盛大に破壊され、胸ぐらつかみあげたギャングの顔をアイアンクローで締め上げ、ギャングの絶叫が響き渡る。
「おい、菅野!タイムふろしきで、ヒガシのライカを修復してこい!」
「な、なんで俺が!?」
「お前が一番近い位置にいるんだよ!早くしろ!このままじゃ誤魔化しが効かなくなる!中佐にヒステリー起こされると困るんだよ!」
「知るかよぉぉ〜!」
「行け!お前なら見つかっても避けられるから!エーリカと私、それと黒田は敵の確保で忙しいしよ!」
「わーったよ!あとで姉様へのプレゼント考えてくれよ!」
「なんだよ、お前の姉さん、誕生日か?」
「今年はまだプレゼント送ってなかったんだよ」
「わーったわーった!買ってやるから、いけ!」
「はいよ!タイムふろしきはどこだ!」
「私の部屋にある!使い方は知ってるな!」
「青いほうが上だっけ!?」
「逆だ逆!赤いほうが過去に戻すから、それが表になるように残骸を包み込め!」
「分かった!」
菅野は走っていく。それから数分ほどして……。
「話は聞いた!圭子の馬鹿を止めりゃいいのね!?」
「おう!」
「やれやれ、ケイさん。ああなると歯止め効かんからな。さて、荒っぽいが……スターダストレボリューション!!」
フェイトはため息をつきながら、スターダストレボリューションを叩き込む。ゲッター線のオーラを突破するには、最低でも黄金聖闘士の闘技を必要とする。
「スクリューキィィィク!この馬鹿、何してんのよ!」
智子がスクリューキックを続けてぶち込む。変身した状態での一撃だが、圭子は暴走していたため、智子を敵とみなし、ジャイアントスイングをしようとする。智子はそれを躱し、顎に強烈な技を叩き込む。
「廬山昇龍覇!!」
これは黒江の日頃の修行に付き合わされている内に、身についた技で、威力面は紫龍とほぼ同じレベルに達している。これは黒江に廬山昇龍覇、廬山百龍覇の実験材にされた末に、体が覚えてしまったからだ。
「ふう。覚えちゃったのよね、これ。おかげで、私まで小宇宙燃やせるようになっちゃったじゃないの!」
「いいじゃん。強くなれるんだし」
「あんたねぇ。昇龍覇を一日、1000回もやられたら、常人ならパンチドランカー間違い無しだからね!?」
「あのぉー。あれでパンチドランカーで済むならタフですって。普通は粉々ですから」
「そうか?」
キョトンとする黒江に、ため息の智子と芳佳。
「智子さんの次はっ!ライトニングボルト!」
追撃でライトニングボルトを叩き込むフェイト。だが、圭子はますます暴走する。
「止まらない!」
「クソ、今回は四役満だからな!兄さんの思い出破壊、ライカ破壊、寝起き、襲撃!麻雀なら大儲け間違い無しだ!仕方ねえ!!老師、紫龍!技を借りまっせ!廬山!!百龍覇―――ッ!!」
律儀に断りを入れ、廬山百龍覇を放つ黒江。これに芳佳は唖然とする。百龍が圭子をマシンガンのように貫くように見えたからだ。
「おーい、カメラを新品にしたぞ〜!」
「直枝、でかした!先輩達〜ライカ、治ったそうです!」
「おお!よくやった!あとで焼肉おごってやる!廬山龍飛翔!!」
「私も何か買ってやるぞ、直枝!ライトニングファング!!」
「あんがと。だけど、やりすぎじゃね?」
黒田が、菅野がカメラを直したと伝え、菅野は見事にご褒美にありつける事になった。
――この時に圭子に叩き込まれた破壊力は、有に基地全体を吹き飛ばせるほどのものだった。それでいて、圭子が無事でいるのが不思議なほどだった。圭子が正気に戻ったのは、愛しのライカと添えられていたメモが直った事が知らされての事で、圭子は暴走した事が知らされると、赤面したという。結果、ギャング共はおおよそ、40人ほどのうち、10人が死亡、15人が重傷、5人が軽傷、10人が尋問に耐えうる状況となった。処理はミーナが起きない内に行われ、立ち会った全員に緘口令が下された。それと別に、坂本には知らされ、尋問に立ち会った。
「ぐあああああっ……。
「このスカーレットニードルは、針の穴ほどの傷だが、中枢神経を破壊し、全身の激痛をもたらす。例え、麻薬でも打ち消せないほどのな。完全な廃人になる前に吐いたほうが楽だぞ?私は慈悲深いからな」
エグいやり方で尋問するフェイト。戦士であれば訓練如何で、痛みに耐えられるが、ギャングの鉄砲玉如きにそんなものは無理だ。情けない悲鳴があがり、『なんでも吐くから許してくれぇ〜!』と懇願する。
「……エグいやり方だな。まるで中世の異端審問だぞ?」
「あいつらがバダンとの関係をそう簡単に吐くかよ。荒っぽいが、手っ取り早い」
ため息をつく坂本。
「あいつらはきちんとした捕虜じゃねえ。ゲリラだ。廃人にしたって合法だ。傷は小さいし、誤魔化しも効く」
「だからって、完全防音の部屋で拷問か?」
「この世界には、ハーグ陸戦条約も無いんだぞ?敵に捕まったらどんな事をされると思う?それを思えば、まだ人道的だぜ」
「ミーナに知らせなくていいのか?」
「あの人はマジモンの戦争を知らん。ましてやゲリラに正規軍同士の戦争の常識は通用しないって事はよくわかっていない。知れば烈火の如く怒って、こいつらを開放させるだろうし。あの人は戦争の考えが近世で止まってるし、こういう残酷な決断ができないほど青いからな」
黒江はミーナを『青二才』と見ているらしき発言をする。坂本は黒江の合理性を重んじる性格を知っているため、同意する。
「たしかに、あいつは優しすぎる。武士にはこういう事も必要だからな。お前は捨て肝を行った薩摩の出だからいいが、ミーナは元は音楽家の家系だしな」
坂本は黒江に理解を示す。そこが元から軍人として育った二人と、音楽家が本分であったミーナの差だった。拷問を見届けた後、昼食時の事。
「ねぇ、二人共。昨日何があったの?」
「何もありませんよ、平和な夜でしたよ、なぁ坂本」
「ああ。とてもよく眠れたぞ、ミーナ」
二人は結託し、ミーナを誤魔化す。ミーナはロンメル、パットンの訪問後、スリーレイブンズ、とりわけ黒江に対する態度が緩和した。圭子の口添えも大きな役割を果たしたのは言うまでもない。黒江が過去に教え子たちを大量に失い、そのショックがもとで、現在の性格になっていった事を話し、ミーナに衝撃を与えた。その時には坂本の事でヒステリックに『じゃ、どうしようっていうのよ!』という一幕もあった。
「決戦は近いわ。訓練の様子は?」
「全員に基地を六週のランニング、射撃訓練を、志願者にのみですが、軍事関連の座学を教えています」
「そうなの。一度、視察していいかしら?」
「構いませんよ。今日は私の担当なので」
その日の午後一時からの90分間、ミーナは黒江の講義を視察した。意外にもハルトマン、それに付き合って、バルクホルン、ライバル意識からマルセイユといったカールスラント組、芳佳、リーネ、ペリーヌの三人組、シャーリー、菅野、ドミニカとジェーン、下原、竹井と結構な大人数であり、内容は連邦軍士官学校などに準じたもので、その中の航空コースに添っていた。
「……!」
ミーナは、黒江の教えている内容に驚いた。航空先進国を自負するカールスラントの目から見ても高度かつ先進的なもので、空戦でのセオリーは23世紀でもカールスラントが確立させたものを基本に発展させたもので、22世紀以降に考え出されたマニューバーも交えて説明し、連邦軍の有する機種についてのレクチャーも、プリントと映像を交えて行われた。
「連邦軍の使用した機種について説明する。先日、加東中佐がVF-0とその完成形のVF-1についてを説明したが、今日はその次世代に当たるこいつらを説明する」
連邦軍の第二世代VFである『VF-4』と『VF-5000』の説明がされる。この世代はVF-1からの根本的な進化はしていない派生機とも言えるが、連邦軍の運用ドクトリンが窺える。
「大気圏内用と外用で分けたんですの?」
「いや、開発順序はVF-4のほうが先だ。VF-4の宇宙戦特化に等しい設計では、大気圏内の性能が前型に劣る面が出たから、VF-3000/5000が大気圏内用に造られたんだ。VF-5000は3000の後継生産型で、20世紀の後半に確立されたブレンデッドウィングボディ形状造られている。こいつは宇宙でも使えないことはないが、ポテンシャルをフルに出せるのは大気圏内と考えていい」
「なるほど」
「連邦軍はその2機種をしばらく使うが、割と早い内に次期主力可変戦闘機を具体化させる。ここからは現用機だ。耳をかっぽじて聞けよー」
黒江の説明は簡潔であるが、ビジュアルも交えて説明するのでわかりやすく、プリントでも細かく説明してあるので、生徒の飲み込みは早かった。
「さっきの二つを平行運用してきた連邦軍だが、やがて連邦が本格的な外宇宙移民時代を迎えると、根本的な次世代機が必要になったんだ。一つで汎用的に使える戦闘機を、な。それが連邦軍が現在、使用している中では古参の位置づけの『VF-11』だ」
VF-11。23世紀初頭時点では引退しつつある『ロートル』だが、就役当時は『高性能可変戦闘機』として扱われ、連邦軍の『顔』をガトランティス戦役まで努めた。性能面はトータルバランスに優れ、前世代機より格段に性能も良かった。
「お前らも知ってると思うが、ガトランティス戦役や数度のジオンとの戦争の時には大量に投入され、戦果を挙げたこいつだが、技術の進歩は早いもんで、ガトランティス戦役中には、『次』が計画された。ハルトマンとシャーリー、その計画の名は?」
「『スーパーノヴァ計画』、別の言い方でいえば、AVF計画だろ(でしょ)」
「そう。スーパーノヴァ計画。熱核バーストエンジンの登場、アビオニクスとアクティブステルスの進化で生まれたのがVF-19と22だ。この計画の時に起こったシャロン・アップル事件で、連邦軍の上層部に『無人機を採用しようとする阿呆共に、有人機の価値を叩き付けた』事件だ。その時の映像が――」
連邦軍視点での、マクロスシティでの空中戦の模様が映し出される。凄まじい速さで展開される空中戦、無人機と戦うYF-21、マクロス級の対空砲火を単騎でぶち抜いたYF-19。
「いいか?いくら機械が発達しようが、最後には人間ってのは奇跡を起こせる。ゴーストが逃げに徹するほどのな。だから連邦軍も人の限界を超えた機械を人の手で制御する方向性に最終的にたどり着いた。怪異がなんだ、無人機がなんだ、人間の限界?んなのは超えてみせろ!」
『はいっ!』
黒江は、その当事者であったイサム・ダイソンから、VFでの高度な戦闘のイロハを叩き込まれた。そのため、彼のように高性能機をねじ伏せる事を好むようになり、VF-19系に乗り換えて以降は機種ごとの最高グレードの機体を好む。空を気ままに飛ぶイサムに憧れたらしく、戦闘機乗りとしては、イサムのような度胸を持ちたいと周囲に漏らしている。その気持ちが滲み出ていた。
「さて、そろそろ時間だ。AVFについて、1200文字のレポートの課題を出す。次の月曜までに私か、加東中佐に出すように」
と、講義を締めくくる。ミーナも講義の内容に納得で、拍手を送る。ハルトマンまでもが真面目に聴講するほど、飽きさせない内容。未来世界の実際の戦争映像も交えて説明するとは思わなかったようだ。
(やれやれ。これでやっと信頼を得られたかな)
大決戦までそれほど日数はないが、この時、黒江はミーナから真に信頼を勝ち得た。着任から一ヶ月もたった日の事だった。
――マフィアは、バダン帝国の息がかかった者が送り込んだ尖兵であった。しかもクライシスへの牽制の意味がある事もわかり、悪の組織同士の潰し合いもある事に、皆は呆れ果て、黒田に至っては、『悪の組織も金が必要なんですね』と言い、笑いを誘った。ビューリングの処遇についてはこの日から2日に司令部からの正式な辞令が出、新生501はロマーニャの決戦後も1947年度中まで編成が維持されるのである。また、編成時に黒江とビューリングとで、智子のバディ合戦が勃発するのだが、それはまた別の話。
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