短編『Fウィッチの誕生秘話』
(ドラえもん×多重クロス)
――太平洋戦争の準備期間はちょうど、未来世界でのデザリアム戦役の期間中に相当し、日本では2017年から19年までの期間に相当する。当時、日本では連邦化に伴い、自衛隊の若年定年制が実質無くなった。これは戦時に突入するためと、2000年代前半期までに入隊してきた扶桑軍出身者達の年長組が、書類上は40代に入り始めるからでもあった。平時の人員制度では、戦時には適合しないため、この二年間に自衛隊の人事体制も戦時色が色濃くなった。(最も、送り込まれている者達の大半が64F所属のGウィッチなので、肉体年齢そのものは若いままではあるが)顕著な影響としては、日本連邦軍全体の司令官として、元帥相当の将が創設された事が挙げられる。これは扶桑皇国軍には何人も元帥府に名を連ねる大将がおり、自衛隊の階級を当てはめると、統合幕僚長を以ても格落ち感がある事が問題視されたのが、動機の一つである。当初は統合幕僚長に『連邦軍総司令官』としての任務を与える方向だったが、連邦軍総司令官の任期などの制度の詳細が詰められる過程で、統合幕僚長は大将相当である事から、元帥らを束ねる根拠が無い事から、連邦軍総司令官には元帥相当の処遇が当てはめられる事になった。また、扶桑軍でも、元帥の階級が『将官が戦時に増加するだろうから、功が顕著な者は元帥にしよう』という事で、階級として復活した。(前史では、日本マスコミの無知から、『元帥なら〜』と元帥達の統率力を論う内容の社説が出され、問題視された事があり、その対策も兼ねた)
――日本 防衛省―
「扶桑軍が階級制度を改定し、元帥の階級を公式に復活させました。マスコミ対策だそうです」
「マスコミのうるささは彼らが一番に辛酸をなめている。当然のことだろう」
「我々もその昔に源田幕僚長がやった事ですが、彼らはマスコミにパパラッチされてるも同然ですし、准将の階級に若手を入れた事にも異論を挟んできたとのことですから…」
「扶桑軍の准将は実質、ウィッチ出身の若手で特に戦功がある軍人に向けての階級に等しいからな」
扶桑は特に戦功がある、レイブンズ以下の『扶桑海七勇士』メンバーなどの戦功がある士官達の待遇改善を急いでいた。これはRウィッチを始めとする新たな区分のウィッチ達がむしろ主力になり、戦功を立てるものだから、勲章などが追いつかなくなったことが理由だ。しかし、安易に高い階級を与えても、それに見合った働きができるかと言えば、そうでもない。ミーナも前史で年齢故のマイナス面を露呈してしまったし、今回においては501内部の対立という形で表れた。その事は自衛隊にも知れ渡っており、ロスマンなどは『教育ママ』と揶揄されるハメになった。(わざわざロスマンのために特務士官を新設したから、ロスマンはしばし、同期らの一部から睨まれたという。最も、ロスマンとしては、伝統ある階級制度を皇帝が変えるきっかけを作ってしまったのもあり、喧々諤々。いざ事が決着した時、ラルに『こんな大事になるなら、43年の時に任官しとけば良かった』と泣きついたのだが)
「そう言えば、幕僚長。見ました?かの連合軍内部の極秘通達」
「見たよ。ガランド大将の機関にG/Fウィッチらを集めるというものだろう。501内部の対立が原因らしいな」
「あの陣容で対立が起きるのですから、やはり通常部隊にG/F/Rウィッチを混ぜるのは危険と判断されたようです」
「それもそうだ。転生者、英霊が宿っている者と、普通の人生で、戦争が国家戦争である事の認識すら無い者とでは、水と油だ」
「なので、通常ウィッチとの混成部隊のテストケースは成功とはいい難い結果に終わったそうです」
真501は実のところ、Gウィッチによる専門部隊の創設を目指すガランドと、従来の統合戦闘航空団思想を墨守するミーナの対立の折衷案であった。それは書類に書かれている様子によれば、45年の初夏頃の事。
――連合軍総司令部 1945年初夏頃――
「閣下は何を考えているの」
「落ち着けって。ガランドは『G』による『G』のための運用部隊を目指してるだけだよ」
「でも、残っていた統合戦闘航空団を殆ど廃止するなんて」
「人材の集中だ。ティターンズ相手には、従来のやり方は通用せん。それはお前も、去年に体験しただろう」
「でも、私達が何年もかかって実現したのをいきなり……」
「お前の気持ちは分かるが、事態は統合戦闘航空団の再統合にまで発展しているのだ。断じて廃止ではない。閣下は既に手筈を整えておられる」
「そうそう。あ、その証拠がいた。おーい、アヤカにケイ〜」
「おう、なんだお前ら、ここにいたのか」
「あら、三人揃ってるじゃない。珍しい」
「エーリカ、この人達は?」
「ガランドが用意してる切り札の人たち。扶桑の大エースで、坂本少佐の先輩」
「美緒の!?」
「そうだ。件のGウィッチであり、『扶桑海七勇士』の筆頭格だった方々。お久しぶりです、中佐」
「おう。久しぶりだな、バルクホルン、それとエーリカ」
黒江とハルトマンはG仲間であり、バルクホルンもその途上である事から(完全覚醒は部隊配属後)、実質的には既にGである。その事から、ミーナを置いてけぼりにしている。黒江は珍しく、当時の陸軍軍服姿である。(圭子は普段の巫女装束姿)
「でも、今日はどうして、司令部にいるのさ?」
「閣下の要請だ。各地にいるGの把握のために呼ばれてな」
「なるほどね。トモコ大尉は?」
「今の時間軸だと、のび太んちに泊まってるな。今は菅野と黒田に連絡したばっかだし」
「あの二人はどう?」
「ああ。もうなってるよ。それと、ハインリーケ少佐知ってるか?」
「ああ、ナイトウィッチ二位の撃墜数の?
「そそ。そいつ、少々特殊なウィッチになったらしくて。エーリカ、バルクホルン。お前らついてきてくれんか?説明しづらいから、会ったほうが速い」
「私も同席を……」
「ミーナは駄目駄目。揉めたばっかなんだから、トラブれば、上に睨まれて降格になるよ?ここはあたしたちに任せなって」
「ハルトマンの言う通り、ここからは私達の領分だ。お前には後で知らせるから…」
「エーリカが本当に“フラウ(おばさん)”みたいな事言うようになるなんて思わなかったわ…」
「あいつは既に覚醒めている。だから、ある意味では本当に“フラウ(おばさん)”なのだ」
ミーナはこの瞬間、疎外感を感じた。二人、特にエーリカからは『子供扱い』されているような感覚を覚えたからだ。(ハルトマン達にとっては、情報の秘匿の必要があったためでもある)
「閣下、私です。入ります」
「入り給え」
一同がガランドの司令部内での執務室に入ると、ガランドと、その秘書である義理の娘の『クイント』。それと……白い騎士服を着た凛とした佇まいの少女が椅子に座っていた。黒江はその姿に見覚えがあった。その顔にも。思わず我が目を疑う。
「……閣下。なんで剣の騎士王が?」
「……うむ。私も驚いているよ。彼女は紛れもなく『セイバー』。しかもリリィの状態でこの場にいる」
「……その名は私の英霊としてのクラス名です、皆様方。ですので、私の名は『アルトリア・ペンドラゴン』になります」
「うおおおお……マジかよぉ〜!?」
驚天動地の黒江。他の一同も同様だ。つまり、ハインリーケは単なるGウィッチではなく、英霊の蘇りの依代となったのだ。そのため、元のハインリーケの原形はない。
「真名名乗って良いのか?」
「この世界なら真名を名乗っても名乗らなくても魔術的な意味は無いので」
「そ、そうか。ん?お前、元はブリテンの王だろ!依代になったハインリーケ少佐はたしかドイツ貴族だ。ややこしくねーか?」
「生まれ変わり、新たな土地に根を張るだけです。過去の生は記憶の中にだけ有る事で、今の生とは関係有りません。ですので、私が『彼女』の持っていた財産と権利を受け継ぐことになります。なので、閣下にお願いし、彼女の名前登録を変えてもらっているところです」
「うむ。幸か不幸か、ハインリーケ少佐の家族はティターンズのノイエカールスラントへの空襲の際に、殆どが消息不明となっている。生き残っているのは従姉妹達だけだ」
アルトリアは、ハインリーケと融合した事で、ハインリーケの持っていたモノの全てを受け継ぐのを明言した。ハインリーケはアルトリアに取り込まれる直前まで消息不明になった家族のことは知らぬままであった。それが不幸中の幸いと言えた。アルトリアはハインリーケの文字通りに全てを受け継ぐ。記憶も当然ながら入る。なので、『アルトリア・ハインリーケ・ペンドラゴン・ツー・ザイン・ウィトゲンシュタイン』が彼女の今後の公での名になる。そのため、カールスラント皇帝は気をよくし、ハルトマンの叙爵時に、ついでにハインリーケの爵位を上位にするかと検討している。これはハインリーケにカールスラントの王位継承権が元々あったからでもある。
「彼女はハインリーケ少佐の全てを受け継ぎ、公の場ではハインリーケ少佐として振る舞う事になる。それ故、混乱も予想されるので、君らを呼んだのだ」
「なるほど。ん?それじゃ宝具も?」
「持っています。エクスカリバーもカリバーンもアヴァロンも全て……。ゼウスが私に生前の宝具を与えてくれたのです」
本来、アルトリアの生前に失われたはずの宝具も、ゼウスが復元、元の数倍の力を持った状態で復元し、アルトリアへ与えていた。最高神の一人であるZ神の力で以て可能とした行いだ。
「にしし、私の勝ちだな。私は神剣エア持ってるし、エクスカリバーなら私も撃てるしな」
「貴方の噂は聞いています。アテナに仕えし黄金聖闘士、その一人『山羊座の綾香』。エクスカリバーも持つようですが、元祖は私ですので」
「エクスカリバーは普段使い、その上の神剣が有る余裕の話さ」
アルトリアは黒江に『エクスカリバーの元祖』は自分とアピールする。黒江はエクスカリバーを宿す者である。それ故、ライバル意識があるらしい。
「神剣……。貴方はいったい?」
「時代が時代なら、英霊になれたかも知れない軍人だよ。扶桑と日本には太閤殿下がいたしな。考えられる限り、成り上がりの成功例の最後だな」
「日本は戦いを捨てていた時期がある。それを勘案すると、英霊になれるかは」
「私達みたいなのは嫌われ者だしな、戦後は」
黒江は自衛隊で訴訟問題を抱えていたため、戦後の日本人らの軍人嫌いには嫌気が刺していた。その一方で、職業軍人気質の黒江は自衛隊で人気があり、若年定年制の撤廃の理由が黒江ではないかと訝しむ声もある。実際、自衛隊は黒江のシンパが在職の20年間でかなり増加しており、航空自衛隊は黒江の影響下に完全にある。海自にも旧軍提督らのおかげでシンパがおり、陸自には防大同期らが佐官になっている。黒江は三自衛隊に影響力を行使している。
「内部にはシンパ多いんだが、外に敵が多い。特に経歴が旧軍人だと、あっちよりの人達の個人攻撃食らうからなぁ」
黒江は旧軍人達や自衛隊には英雄視されているが、日本では訴訟を抱えていた事がある。旧軍人の経歴が個人攻撃の標的にされたのだ。見当違いも甚だしいが、黒江は同位体も仏印には赴任した経験はあるが、中国戦線には殆ど参加していないし、戦争後半は本土勤務だったのだ。黒江は『同位体からして、中国戦線には殆ど参加してないし、ソ連の戦闘機相手だったのに、それを非難される言われはないし、そもそも私自身ではない』と裁判の公開弁論で強弁を奮った。弁護を引き受けた隠居間近の老弁護士が旧軍人で、元47Fの在籍経験がある者という幸運もあった。(2006年当時で80超え)
「相当に溜まってませんか?」
「あー、黒江ちゃん。数年くらい訴訟捌いてたのよ。6、7件くらい抱えてたし」
「だから、容姿変えて遊ぶようになったのよね。貴方、ハインリーケ少佐の姿は?」
「任意に取れます。そういうことでしたか」
「そう言うこと」
融合したので、ハインリーケの姿はいつでも取れるが、実質的に別人なので、あまり使わないと、圭子に明言するアルトリア。
「その気になれば、彼女を演じられますが、あまり気は進みません。言葉づかいも調整する必要があるので」
「暫くはハインリーケの言葉づかいをしたほうがいいわよ?騒ぎになって、閣下の構想が潰れても困るし」
「分かりました。黒田中尉には既に知らせてあります。それと、いつまでそれを?」
「おおよそ、作戦が来るまでね。宝具は使っていいと思うけど、キャラはある一定のところまで演じてなさい。私らも調子を合わせるから」
「分かりました、感謝します」
――というわけで、公式にはアルトリアの覚醒は『ダイ・アナザー・デイ作戦の最中』とされた。モードレッドの覚醒も重なり、作戦直後のミーナはストレスで胃痛が尋常ではなく、コーヒーすら飲めないほどの痛みに襲われた。ペリーヌを依代にして覚醒めたのが、ペリーヌの性格と遠い性格の円卓の騎士であるモードレッドだったので、作戦後のハルトマンとの一戦のショックで寝込んだ。宝具をお構いなしに撃つわ、ペリーヌの『トネール』を『エクレール』として放つわの粗野さを発揮したため、ショックに耐えられなかったのだ。しかしながら、彼女にも変化が訪れた。宮藤芳佳が角谷杏の記憶と自我に覚醒めてしばらく経って、自室で寝込んでいる内に、西住まほと共鳴したのか、冷静さがでるようになり、何故か陸戦指揮のプロになっていた――
――1946年――
「でもさ、ミーナ、西住姉妹の姉の方に似てきてるよ、宮藤」
「共鳴でしょうね。あたしみたいに色々ややこしい関係じゃないのが救いかな」
「それとさ、後から聞いた話だけど、ジャンヌは『未来を知って動き、未来を知って動かない。私はそれは、人間ではないと思います』と言ったらしいけど、アヤカさんが『ほー?未来予測で望んでる未来を能力で出現させてる機神がいて、世界滅亡を目論んでるってのに、お前はそれを見過ごすのか?』って凄んだ事あるそうな。ジャンヌは調停者だったから、未来を知っていて、それを変える行為には嫌悪感があったんだ。だけど、二度目の生を得て、あの『坊や』に恋して、それを奪おうとした存在がいて、それが神レベルの敵だと言うことに気づいて、絶望しかけたそうな。でも、蘇った『射手座のアイオロス』、『双子座のサガ』の両巨頭に諭された。未来は決められたものでないこと、人の意志で変えられるモノだって」
ジャンヌは未来を知っていて変える行為を嫌悪していたが、マジンガーZEROの凶悪さ、オリンポス十二神の一柱『ハーデス』の邪悪さなどを知らされ、ルナマリアと一体化したことで抱いているシンへの恋心と、かつての使命とがぶつかり合い、絶望しかけた事があった。ジャンヌの純粋さ故の実直さを危惧していた善神『Z神』は、かつての黄金聖闘士であったサガとアイオロスの二名を蘇生させ、ジャンヌの元へ使者として派遣させた。彼らは最高神ゼウスの使者としてジャンヌの事を訪れ、『二度目の生を自分らしく生きよ、前世に囚われんがために、自らの愛する者を失えば、それは君を却って縛る事になる』と、アイオロスは諭した。かつて聖域の次期教皇と目された人徳と、その言葉は、英霊であるはずのジャンヌ以上の説得力を持っていた。更に、黒江が呼んできていた本郷猛もこう告げる。『未未視で見える未来はなにも行動しない結果の未来だからね。行動が歴史を作るのだから見えた結果に納得できなければ、行動で覆すのは生きるものの権利だ』と。
『私は……どうすれば良いのです?主が世界を滅ぼすと仰るのなら、それを受け入れるべきではないと?』
『希望を捨て、戦いを放棄した者には死あるのみ。そうであろう?ジャンヌ』
サガは教皇を演じていた時同様の超然とした振る舞いを見せた。双子座の聖衣を纏い、マントを翻すその姿は、英霊であるジャンヌすらも圧倒する。
『いえ、希望を捨てるなどとは……』
『それはお前自身が望んだはずだ。例え、原初の神々であろうと、世界を滅ぼす権利はありはしない。世界を守護し、救うのが、お前たち『英霊』と呼ばれし者の役目であったはずだ』
サガも教皇候補と目された男。相手が英霊であろうとも、むしろ圧倒する何かを持っていた。そして、彼自身、星矢が起こした奇跡の当事者。死してからは星矢達に助力しているのは、星矢の起こしてみせた奇跡に彼は魅せられていた。
『未来を見て、その通りに生きるなど、笑止。そんな生などに自分の意思は無く、その時点で死んでいるようなものだ。未来を見たのなら、その未来に抗い、望む未来を自らの手で勝ちとることこそが人の意思であり、奇跡だ。このサガもそれを見てきた』
サガの言葉に発奮したか、ジャンヌは立ち上がるが、言葉のパンチの衝撃に、戦闘時の甲冑姿ながら、足取りはヨロヨロしている。
『私の愛する者を奪うのは……例え、『主』でも許さない……。だけど、私は一度死んだ身。『死者』なのです!貴方方は私に二度目の生を生きろと、そう仰るのですか!?』
ジャンヌはここで、抑えていたシンへの愛情と、かつての使命とに揺れ、始めて個人としての感情を露にした。ルナマリアと融合したためか、制御できない生の怒気を孕んでいた。
「あああああッ!」
ジャンヌはシンへ抱く恋心とかつての使命、そして二度目の生を生きたいと思う人間としての本能とがせめぎ合い、無我夢中でサガへ『我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)』の穂先の槍の一撃を全力で加えた。だが、ジャンヌの攻撃はサガの片腕だけで受け止められていた。
『そんな攻撃では、このサガの薄皮一つ傷つけられはせぬ。……神殺しの闘士に神の力は通じぬ!!』
そう言い放ち、ジャンヌへお返しのギャラクシアンエクスプロージョンを食らわせた。サガ流の活である。ジャンヌはその場で大きく真上に吹き飛び、同じ場所に落下する。ギャラクシアンエクスプロージョンの奔流により、一瞬でズタボロである。
『そんな……私の力が……まるで通用……!?』
『我ら黄金聖闘士!神の護り手にして神すら討ち倒せし者!与えられた神の力でどうにかされるほど易くは無い!』
黄金聖闘士は神の守護戦士にして、神殺しの体現者。力の差は歴然だった。と、そこへ。
『待たれよ』
『フッ。お前も蘇っていたのか、乙女座のシャカよ』
座禅を組んだ態勢でテレポテーションしてきたのは、乙女座の黄金聖闘士であった乙女座のシャカだった。神々しさを感じさせるそ登場の仕方は劇的であった。
『ジャンヌ・ダルクよ、死など輪廻の一部に過ぎぬ、強くあれば生まれ変わって再びの生を生きるのも必定!』
輪廻転生の体現者である彼らの前には、ジャンヌも一人の人間でしかない。ジャンヌは彼らに言葉のボディブローを乱打され、打ちのめされた。彼らは死により、エイトセンシズの更なる先、ナインセンシズに覚醒しており、既に神すら屠れる強さに到達している。調停者であったジャンヌといえど、彼らから見れば、赤子同然の力の差があるのだ。
『教えて下さい、輪廻転生とは何なのです!』
『元は東洋の仏教の概念になる。強者は古の強者の魂を引き継ぐ者が多い、輪廻転生で生で技を磨き死後魂を研ぎ澄ます、その繰り返しこそ輪廻転生なのだ。そこにいる私ら世代の次の黄金聖闘士である『山羊座の綾香』は我らの先代の黄金聖闘士の一人『山羊座の以蔵』の魄を継ぎしになるのだ』
ここで、シャカの口から、黒江の魄は老師の世代の黄金聖闘士であった『山羊座の以蔵』のものであり、いずれにせよ、山羊座の黄金聖闘士になる宿命を背負っていたと語られた。これには黒江もびっくりで、『マジっすか!?』と腰を抜かしている。
『生まれ変わり、別人になろうとも、背負った宿命は変わらぬ。ジャンヌよ、お主は本来、二度目の生を、『別人』としてだが、約束されていたのだ。お主は『調停者』としての責務を果たし、神に尽くした。それ故の褒美と思わぬのか』
シャカの神々しさでトドメを刺され、ジャンヌは彼らにひれ伏した。そして、彼らに『自分なりに思いに決着をつける』と約束した。ジャンヌは言うなら、ルナマリアの魂がジャンヌの魄を取り込み、しかも互いの魄が混じるかギリギリの状態なのだ。それ故、調停者としてはあり得ない感情に走ったのだ。
「――ってわけ。この出来事から、Fウィッチ増えたから、多分」
「Z神の差し金ですね。面白くなってきたね〜」
この考えで行くと、ハインリーケは『アルトリア・ペンドラゴン』の魂魄を、ルナマリアは『ジャンヌ・ダルク』、黒江は『山羊座の以蔵』、智子は『水瓶座のミストリア』のそれを継ぎし者になる。その因子が覚醒め、黒江と智子も聖闘士らしい思考回路であるところを持つというのは分かる。それでは圭子は何であろう。彼女は『レベッカ・リー』の魂魄を受け継ぐ者なのだろうか?その謎も残されていた。
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