短編『プリキュアの転生と顛末』
(ドラえもん×多重クロス)



――続々と確認されていく歴代のプリキュア戦士たち。初代とSplash Starが現れていない事が疑問であったが、『かつて、プリキュアであった者が転生後に職業軍人になっていた』ケースが複数に上った。これは海藤みなみ/キュアマーメイドが扶桑の軍人一家に転生し、その息女かつ、エースパイロットになっていたり、北条響/キュアメロディが転生後にレーサーから職業軍人へ転じていたり、夢原のぞみ/キュアドリームは陸士卒の生え抜きパイロットコースであるなど、意外に数が多い。因子持ち候補も挙げると、ペリーヌ・クロステルマンが個人として持っていると目されており、有力な撃墜王がプリキュアであったケースが多い。英霊とプリキュア双方にまたがる存在(アストルフォ/調辺アコ/キュアミューズ)も確認されており、アストルフォの後世がキュアミューズであると推測されている。日本はこの事実で世論が割れた。過去にプリキュアであった者が平和な暮らしをしていると思いきや、多くが転生後に職業軍人になっていて、ほぼ全員が少尉以上の将校であったからだ――

――平成からの改元を終えた後の日本――

平成時代が終わり、次の時代を迎えた日本。ル・マン24時間レースが行われる夏至が近づきつつあった時期の日本の国会は『プリキュア問題』で揺れていた。扶桑軍人にプリキュアが数人程度確認され、しかも『パイロットとして名を馳せている』者が主役級のプリキュアで、しかも、ウィッチ世界の鍵であるはずの宮藤芳佳までもがプリキュアの転生者という『チート級の反則』は議論を起こした。また、芳佳の今の気質が『角谷杏』の狸じみた駆け引き上手なものである事も、双方のファンの議論を起こした。芳佳本来の人同士の争いを嫌う性質とも、星空みゆきとしての底抜けの明るさとも違う異質のもので、護身用の武器も携帯しているからだ。また、普段は宮藤芳佳として過ごしつつ、プリキュア仲間の間では、星空みゆきとして扱われるという状況も議論を加速させたのは事実だ。彼女は日本の国会に証人喚問されたのだが、その時には士官になっているので、扶桑海軍のセーラー服は着るわけにも行かず、かと言って、内々に空軍に移籍見込みであるので、海軍士官の軍服も着れない。かと言って、空自の制服はまだ無理であるため、自分の気質の変化を示すために、大洗女子学園の制服で赴いた。当人曰く、どうせ変身するつもりだし、これでいいっしょ』とのこと――


――国会で証人喚問を受けた芳佳は自分がアニメで描かれている人物像とは異なる存在であり、宮藤芳佳という木から生えている枝の一つのようなものである事、アニメと違い、既に中尉にまで登りつめている事を公にした。更に、自分が宮藤芳佳本来の人物像と明確に異なる存在である事を示すため、質問への答えという形で『プリキュア・スマイルチャージ』を実行。キュアハッピーとなった。のぞみと同じく、気合で変身した形であり、生前より基礎能力が上がっている証であった。

『キラキラ輝く、未来の光!キュアハッピー!!』

おそらく、全国ネットでの国会中継で変身した最初のプリキュアとなるだろうキュアハッピー。スマイルプリキュア!が放映されていた時代からは、既に5年以上の年月が経過していたため、彼女を知らない子供も出てきているだろう。だが、彼女は確かにプリキュアである。某ネット掲示板とSNSが瞬く間に盛り上がる。それでいて、アニメのようなアホの子ぶりは見せず、角谷杏としての駆け引き上手な側面を見せることもSNSと掲示板を盛り上げた。

『戦って平和を勝ち得ても、人の競争心が有る限り何処かで争いは起きるのは生き物として自然な事。束の間の平和で繁栄して次の争いに備える事で大きな争いを出来るだけ遠ざける、プリキュアの闘いも、ウィッチとしての戦いも、軍人の戦いすら安寧を犯す相手を打ち払う争いなのは変わらないし、必要な力を持っている者が先頭に立ち、戦いを支えるのは当然の事じゃないかねぇ?皆さん方』

キュアハッピーとして戦い、更に宮藤芳佳としての怪異との戦闘実績がここでモノを言った。ウィッチ世界のキーとなる人物である宮藤芳佳が星空みゆき/キュアハッピーの過去生を持つ。声色が角谷杏としての飄々とした雰囲気をまとうものであるのも、アニメとの違いを際立たせた。この時に、リバウ三羽烏の竹井醇子がキュアマーメイドの転生、自分達と別ラインでキュアフェリーチェが現れいるとも明言する。そこでキュアハッピーは防衛省と内々に打ち合わせしていた、戦線の中継映像を見せた。留守番担当のキュアピーチ/桃園ラブがティターンズの繰り出した世界忍者の後継者らと死闘を展開する映像だ。ティターンズは元は連邦軍の特殊部隊だったため、隊員に世界忍者の系統の末裔がいても不思議ではない。火遁や水遁の術などを駆使する忍者がプリキュアを圧すというのも、中々にインパクトがある映像だった。

『プリキュア!ラブサンシャイィィン!フレーッシュ!』

キュアピーチは必殺技兼浄化技を放つが、相手の世界忍者は忍者刀でそのエネルギーを切り払い、ピーチを驚愕させた隙に、炎を纏った苦無をキュアピーチの肩に命中させる。印を結び、炎が走り、キュアピーチを炎で焼く。さすがのプリキュアも日本の忍術の類には耐性がないようで、炎が収まると同時にキュアピーチはロッドを持つ方の肩を抑える。変身していても、炎によるダメージは入るらしい。

「フハハ…、どうだ。風魔の秘術は」

「風魔!?江戸時代までに全滅したはずじゃ…。」

「わが先祖はそれをうまく乗り切ったのだ。明治以降は陸軍諜報部にいた家系だ。先祖の秘術、特と味わってもらう」

風魔忍者の末裔と自称する世界忍者。彼はティターンズの幹部ながら、高い戦闘能力を誇っており、キュアピーチ相手にむしろ圧すほどの身のこなしを見せつける。彼は先祖伝来という鉤爪に風魔の秘術『鎌鼬』の風を纏わせ、キュアピーチをいたぶる。プリキュアの服も防御を超えて引き裂くほどの鉤爪はキュアピーチを確実に追い詰めていく。実際の戦闘のスプラッタぶりと、プリキュアに素で対応できる忍者の存在が明らかとなる。鮮血が飛び、悲鳴が響く。実際の戦闘はアニメとは違い、血生臭いのだ。

「次はその首をもらい受ける!」

彼が首を掻っ切ろうとしたその時、キュアピーチには天の救いとなるヒーローが現れ、危機を救う。

『ジライバスター!』

「何奴!」

『戸隠流正統、磁雷矢!』

キュアピーチが痛みに顔をしかめつつ振り返ると、建物の屋上で牽制用の光線銃『ジライバスター』を瞬時にしまい、代わりに磁光真空剣を構えた状態で見得を切る磁雷矢の姿があった。磁雷矢は忍者であるので、こうした遊撃行動を取っている。既に目元を覆うバイザーがある第二装着状態なのは、23世紀にいる戸隠流当主ではなく、青年期の山地闘破が加勢しているからだ。これはヒーローとしての磁雷矢の活動をしていたのは、歴代の当主でも彼と彼の後継者のみだったからだろう。また、彼の参戦は黒江と調が入門したのが、山地闘破が当主であった頃の武神館だった関係によるもので、23世紀の磁雷矢は別にいる。ただし、磁雷矢の真骨頂とも言える武器・磁光真空剣は彼が持っているため、歴代のスーパーヒーローと並び立つ資格を持つのは彼である。山地闘破はその能力の絶頂期にあった1991年前後の時間軸からの参戦なので、昔年そのままの冴えを維持している。闘破は磁光真空剣の関係もあり、歴代でも剣術に長けた磁雷矢である。黒江と調が忍者としての憧れとするほどの円熟した戦術で風魔忍者と戦った。

『許さんッ!――磁光真空剣ッ!』

闘破は磁光真空剣を鞘から改めて抜き、構える。その際に周囲に炎が舞い、刀身に光が奔る。印を結び、キュアピーチを守る形で剣戟を展開する。相手の剛剣を闘破は身の軽さと篭手、つば競り合いなどの対応で見事に受け流す。

「すごい、これが忍者同士の戦いなの…!?」

息を呑むキュアピーチ。術などという小細工無しで死闘を展開する磁雷矢。相手の苦無を磁光真空剣ではたき落とし、鎖鎌にも対応してみせる。また、スピードは互角なので、相手がどんな暗器を持っているかにも、勝負は左右される。如何に磁雷矢であろうと、だ。剣が奔り、空気を震わせる。相手の暗器である、江戸期のものと思われる握り鉄砲も対応し、回避する磁雷矢。忍者は日本でのスパイなので、実際にはこのような暗殺が主流であった。磁雷矢のように、正面戦でも強い者は稀だ。

『横一閃!』

磁雷矢が相手の隙を突いて、磁光真空剣・横一閃を極めた。相手の忍び装束をバッサリと斬り裂く。磁光真空剣は忍者刀の定義が出来る前の飛鳥時代、奈良時代以前に造られたので、ほとんど反りがないが、完全にないわけではない。最終型の蕨手刀が時代ごとに改修され、磨かれたとも考えられるが、謎の多い武器である。20世紀末の時点では元の原型がないと思われる、打刀に近い形で伝承していたため、戦国期あたりで手が入れられたと思われる形状である。磁光真空剣はその時代に、現在の姿となったという。また、隕石(パコが宿っていた)で造られた『流星刀』の側面もある事もあり、全容は23世紀でもわからない。ともかくも、レーザー刀としての力で相手の世界忍者を撃退する磁雷矢。磁光真空剣を鞘に収め、残心を決める姿はとてもかっこよく、また忍者が世界に誤解されそうなカットだが、磁雷矢は戸隠流の継承者であり、れっきとした忍者であるので、嘘ではない。

「大丈夫かい」

「あ、ありがとうございました〜。貴方がのぞみちゃんや響ちゃんの言ってた――」

「ああ。戸隠流35代宗家、山地闘破、磁雷矢だ。よろしく」

ジライヤスーツから道着に早着替えする山地闘破。1990年代当時の若々しい姿である。18歳の頃に世界忍者戦を戦い抜いて、成長した後の姿である。時と世界を超えて、磁光真空剣が調のもとへ飛来し、彼女が一時的に使った後に、闘破へ返還された経緯がある。調は山地一族の血統を先祖がどこかで受け継いでいたのか、磁光真空剣のレーザー刀機能を使用できた。本人の出自は宮司の一族であると噂されているが、どこかで山地一族の血が入ったとしか考えられないのが磁光真空剣のフル活用が可能な点である。本人もビックリであり、風鳴翼が嫉妬するのも無理はない。彼としては、目を輝かせているキュアピーチに誤解されても困ると感じたらしく、一応の注釈を入れての講釈を垂れた。

「忍者と忍術は別の物だよ。忍術を継承しても、技術の継承を行う彼らは忍術家、我々の様に潜入や戦闘の下準備を行うのが忍者と別れている様にね。それに忍術を使えない忍者の方が主流派だからね、特に俺なんか、例外の中の例外だから、忍者が皆こうだって思われても困るな」

「え、そうなんですか」

「忍術はよく考えると怪しいものまであるからね。俺の義父も、よく入門者に言ってるよ」

彼の義父の山地哲山は入婿で、闘破から数えて、先々代の娘と結婚した関係で忍者になった。元は最末期の日本陸軍に軍属として雇用されていたともされる。彼の嫡男の学はその妻との子だ。ただし、哲山自身が既に、バブル全盛期で高齢であった事、学を儲けたのが遅くであった都合で、先々代の一族から養子をもらって、後継とした。それが闘破の家庭環境だ。第一子のケイが女子であったり、学が幼年である事もあり、闘破が継ぐ以前に、養子を後継に立てるのは決められていた。

「戸隠流は実子が継ぐとは決まって無くてね。俺も養子なんだ。元々は戦闘要員のはずが、父の子供達が継がなくてね。俺が本当に頭領になったんだ。これは予想外だったよ」

苦笑交じりの闘破。義父の実子のケイと学が結局は家を継がなかったため、自分が頭領にならざるを得なかったと。しかし、1990年時点での戸隠流最強の現役忍者であるのが彼だ。継承の理由に磁光真空剣の使い手が入っているが、隠居を1989年で決め込んだ哲山にとって、彼こそが後継だった。闘破は山地家の記録によれば、彼が壮年期を超えつつあった2015年、養子の青年『天城闘真』の才覚を見出し、磁光真空剣と磁雷矢の名を継承させたとある。つまり、山地闘破も2000年代前半には養子をもらい、40を過ぎた後は、義父と同じ道を辿ったという事だ。この映像はプリキュアの死闘と、素でプリキュアと戦える存在の実在の証明ともなったが、プリキュアを正規の軍人にしている事への批判が飛んだ。正確に言えば、『プリキュアの過去生を持つ各国の軍人が力を取り戻した』だけだが、トンチンカンな批判が飛んだのも事実だ。そのため、ため息のキュアハッピーだった。

(やれやれ。脊髄反射的に喚くだけしか出来ない連中だねぇ、政治屋は。東條英機に嫌われるはずだよ)

キュアハッピーは扶桑から事実上の追放となった東條英機に同情したくなったらしい。東條英機はやったことは失策の連続だが、事務管理の長としては一流であったので、政治家を嫌う傾向が強かった。政治家を水商売と同列視していたのもあり、彼は日本の不興で、事実上の国外追放となったが、彼を慕うウィッチも多かった事が最大の誤算となったのも事実だ。そのため、キュアハッピーはキュアマーメイドが竹井醇子として進める融和策に悲観的で、そこは角谷杏を経ていた星空みゆきよりも、海藤みなみのほうがウィッチ同士の繋がりに純粋であったためだろう。




――そのニュースを日本の野比家の留守を任されたシャルロット・デュノア(IS世界より、鈴と交代で送り込まれた)と、ラウラ・ボーデヴィッヒ、いや、緑川なお/キュアマーチが共にTVで見ていた。シャルは改修されたISを展開しており、稼働テストも兼ねているらしい――

「すまんな、シャル。私の過去生の因縁にお前を巻き込んでしまって」

「でもさ、ラウラ。プリキュアになると、両目の色が統一されるんだね」

「変身している恩恵だろうな。既に黒江閣下には知らせてある」

「でも、どうして急に覚醒めたのさ」

「私もわからん。だが、一夏には黙っていてくれ。あいつが絡むとややこしくなると、教官も嘆いておいでだったからな」

キュアマーチに変身していると、ラウラとしての特徴がなくなるが、目の色のみは任意で戻せる。しかし、折角の機会なので、キュアマーチとしてのものにしている。ただし、ISを展開したり、同時に使う場合はオッドアイに戻る。ラウラ・ボーデヴィッヒとしての自我を保って、改めてキュアマーチになったので、どちらかというと、シャーリーと同じタイプの覚醒だろう。

「ラウラ。私のこと、シャルって言ったよね?」

「ああ、緑川なおとしての特徴が出ただけだ。一方の特徴が出ないのはないからな。私の場合はサッカーが上手くなった。前世では、夏木りんと組むことが多かったしな。あいつはフットサルだったが」

「ラウラ、本当にプリキュアになってるんだね」

「だから、一夏には黙っててくれよ?あいつ、自分が『コーディネーター』みたいな出自という事は記憶がないし、教官も閣下に促されて、やっと漏らしたからな。そこに私がプリキュアになった、なんて言ってみろ。泡ふくぞ」

二人は留守番を仰せつかっている。ノビスケが出木杉家に預けられたのは、二人が留守を守る事になったからであるが、改造されたIS(ほとんどボディーアーマーに近いほど外装が小型化されており、箒から送られたデータで改修されたのがわかる)とプリキュアで守るというのも、大げさではある。セシリアが対抗心を燃やしているが、北条響(シャーリー)から緑川なお(ラウラ・ボーデヴィッヒ)宛てに、キュアホワイト/雪城ほのかはまた、別の世界にいるだろうから、セシリアをマークする必要はないと言われているので、セシリアのことは意に介していない。だが、一夏が謹慎中の際に、キュアマーチ/緑川なおとしての記憶が覚醒めたラウラは、『プリキュア・マーチシュート』で無人ISを撃破しており、それで派遣の第二陣に選ばれた経緯がある。今の野比家に泥棒が入っても撃退は容易だ。たとえ、学園都市の旧暗部部隊残党が来ようが、問題は殆ど無い。はーちゃんの加護により、一方通行のベクトル操作すら無効化できるからだ。

「箒のもたらしたデータと、地球連邦軍の技術で改良されたけど、ここまでコンパクトにできるなんて思わなかった」

「未来世界はパワードスーツ技術も進んでいる。それに彼らは篠ノ之束を手中に収め、制御に成功している。いくらでも改造してくれるさ」

「箒はよく姉さんを抑えられたね」

「あいつは私とは違う方向で強くなっている。シンフォギア装者かつ、黄金聖闘士だ。彼女がオーバースペックだろうと、セブンセンシズに覚醒めた者にはシックス・センスも扱えぬ者などは赤子同然さ」

篠ノ之束はダイ・アナザー・デイまでに軟禁から脱走せんと目論んだが、サガ、シャカなどの先代黄金聖闘士達に心をその度にへし折られるという徒労に終わる行為を繰り返していた。時には箒がアトミックサンダーボルトで制裁を加えるため、立場はすっかり逆転している。また、彼女の義娘『クロエ・クロニクル』は彼らが預かっており、実質的な人質である。またある時は、なのはの八つ当たりの標的にされた事もある。。

『貴方のせいで、あたしが迷惑してるのー!何が黒兎じゃー!』

スターライトブレイカーをぶちこまれる事もあるため、最近はすっかり大人しくなった束。五感剥奪を普通に行える実力者たちが監視についていると、束も逃げられないのだ。

「あの方は何するかわからんからな。彼女以上の実力者たちに監視させないと、逃げる可能性が大だ。睡眠薬が効かない体質だと言うし」

「織斑先生はなんて?」

「閣下に最近は顎で使われるのを愚痴っておいでだ。ドイツ軍にいた時、教官は中佐待遇だったが、閣下は帝国陸軍の将官だぞ?軍隊と言うものは年功序列だからな。博士を監視できるのはいいことだが、閣下におもちゃにされてるからな」

見かけは年下にしか見えない黒江に顎で使われている千冬。時代は違うが、軍隊階級に差があるため、さしもの千冬も、箒に変身していたところを見抜いて以降は敬語である。圭子に声が似ている事もあり、遊ばれていて、最近はもっぱら中間管理職の様相を呈し気苦労で目に隈が出来たという。弟の起こした不祥事の後始末も大変だったが、圭子にも遊ばれているのが最近の気苦労らしい。一夏は圭子を『千冬姉に声似てる、銃使いのおっそろしい人』と見ているとのこと。

「あの人、箒に変身して、こっちにきた時、すぐに一夏にもバレたけど、なんで?」

「ああ、それは…、模擬戦で箒が言わない英単語を言ってしまったからさ。『My TURN!』って。箒は武道かぶれだ。剣を使う時に英単語は言わんだろう」

「ああ。凡ミスだって言ってたね。あれは箒と同じ魂魄を持つ『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』って人の口癖だって」

キュアマーチの言う通り、黒江は一度、インフルエンザで寝込んだ箒の代理でIS世界に来ている。黒江は何かかしらの凡ミスを起こすが、今回は箒とマリアがごっちゃになっていたらしい。そこから一夏に身バレしたのだが、赤椿をデータ確認のために千冬に渡した後の不測の事態には、シンフォギア『アガートラーム』で対応。シンフォギアでも強者であると証明している。(箒の姿で纏った)

「セシリアがムキーってなってたし、あの後、一夏がやられてたっけ」

「ああ。いくら箒の姿を使っていたとは言え、無謀な事を。箒がインフルエンザで寝込んでいたからなんだがな。あいつはイノシシみたいな奴だな」

お互いに麦茶を飲みほしつつ、国会の場でも飄々と振る舞うキュアハッピーの姿に安心したような表情のキュアマーチ。ラウラ・ボーデヴィッヒとしてではなく、緑川なおとしての気持ちが表れていた。

「ラウラ。プリキュアって何人くらいだっけ?」

「過去生の記憶ですまんが、覚えている限りでも、50人は超えるはずだ。私が属していた『スマイルプリキュア』はまだまだ新参さ。初代は2004年くらいには活動していたしな」

「ご、五十人!?」

「出る時には出るのだ。初代で三人、次は二人、そのまた次で五人という具合で増えていった」

「ラウラは何代目のチームに属してたの?」

「七代目だな。これは正規のプリキュアチームでの通算だがな。各プリキュアの先代を入れると、100いくかもしれん。ただし、活動中のプリキュアとしては50人台だ。既に先輩達には連絡を入れている。TVに出ているキュアハッピーは同じプリキュアの仲間だ」

「同じチームだったの?」

「そうだ。少々アホだったが、今は違うようだ」

現役時のリーダー格であったキュアハッピーはアホの子であったので、目一杯オブラートに包んでいる。生前は同好の士という事で、キュアルージュと組む事が多かったキュアマーチ。今回はどのような連携プレイを見せるのであろう。

「おっと、もうすぐお昼か。シャル、買い物でもいくか?」

「鈴から聞いたけど、この町の周辺20キロ圏内は出歩いてもいいらしいね」

「閣下が綾波レイのプラグスーツ姿で出歩いても、普通に応対するからな。私達が出歩いても問題はない」

のび太の住む『ススキヶ原』はドラえもんが長期に渡って滞在したために、怪しい出来事に耐性が出来てしまっており、プリキュアが買い物しようが、ISが飛ぼうと問題が起きない。その恩恵で、のぞみもキュアドリームの姿で買い物しているし、はーちゃんもフェリーチェの姿で出歩いている。学園都市のおかげですっかり『リアリティロスト(現実感喪失)』が起こったのもあるだろうが、その中でも飛び抜けた耐性があるのがススキヶ原町だ。そのため、改良型ISのシャル、キュアマーチがそのまま外を出歩こうが問題はない。むしろ道行くオバちゃんに、『あら、めずらしい。プリキュアの一人?娘がTV見てるわ」なんて声をかけられ、普通にキュアマーチが応対すらしている。すっかり、プリキュアもヒロインとして定着した証だが、はーちゃんがみらいとリコの事を気にしている事はのぞみから電話で伝えられており、はーちゃん/フェリーチェの扱いが妹分で固定されているのがわかる。

「あれ?あの丘、どこかで見たような」

「学校の裏山だ。地主の代替わりで、土地をホテルに売ったんだが、地主の息子だか孫が、町内会で目の敵にされて、杉が生えてた場所に供養の社を立てる事になってたけど、都の保護木の指定が先に出たんで、敷地内に移植された。なんでも、ホテルの敷地の南西角に西日避けとして移されたとか」

「つまり、あの大きいホテルは千年杉の跡地に?」

「確か、2010年代の再開発での結果と聞いた」

「へー。そりゃ1000年も杉が生えてた場所で、東京に残ってた貴重な自然を潰したから、目の敵にされるわけだね」

「で、立ったホテルは立地がいいから、100年くらいは持ったそうだが、統合戦争で経営破綻して、建物も空襲で燃えた後は放置されてたが、コスモリバースシステムでのび太氏の少年時代の姿に戻ったそうだ」

23世紀以降はコスモリバースシステムで自然の姿に戻ったのを期に、都立公園に指定されたので、ホテルの再建は無くなった。のび太の少年時代の思い出の場は23世紀に至って、往年の姿に戻ったわけだ。そのため、2010年代からの100年のほうが珍しいと言える『一時の夢のような光景』であった。ちなみに、ドラえもんとのび太が再建に力を貸した事もある『つづれ屋ホテル』は23世紀でも健在で、24エモンの子『25エモン』が2201年時点でちょうど、かつての21エモンほどの年頃という。ちなみにつづれ屋は21エモンが世を去り、23エモンの青年期頃にまたしても経営危機に見舞われ、その子の24エモンが野比家からの出資で再建させ、ほそぼそと営業中だ。なんだかんだで21エモンが異端児であったのがよくわかる。それらは野比家も入る『ニューヒルトップマンション』内にある。21世紀時点では、19エモンが風来坊時代のツテでホテルの再建に着手し始めた段階なので、まだマンション内に入居はしていない。19エモンは18エモンが抱えていた借金返済に奔走した挙句の果てに、2030年代に40代の若さで病を患い、幼い20エモンを残して、無念のうちに死去してしまうのである。それが20エモンが家に執着する根源であったという。

「ねえ、あのオンボロホテルは?」

「21エモンを知ってるか?その一家のホテルだよ。この時代だと、その曽祖父と祖父の代らしい」

この時代の野比家は駅前に移転済みであるため、当時のオンボロ状態のつづれ屋の前を通りかかった二人。当時は裏山のマウンテントップホテルに、21エモンの代にはギャラクシーホテルに圧倒され通しのオンボロホテルである。ただし、この頃は経営破綻の危機から脱しようと、隠居した18エモンから当主を継いだ19エモンが奔走しだす頃なので、ある意味では『黄金期』と言える。シャルとキュアマーチがホテルの前を通りかかると、ドラえもんが残していった『カムカムキャット』(この頃はまだカムカムキャットの機能が生きていた)の効果で引き寄せられる。この事が、つづれ屋が23世紀にまで存続するきっかけ(30世紀でも生き残った模様)となるのであった。



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