外伝その22


――さて、1945年のロマーニャ。そこには501に先立つ形で歴代戦隊と仮面ライダー達が極秘裏に集結しており、基地の改装が極秘裏に進められていた。



「オーライ、オーライ……」

地球連邦軍の整備兵らが誘導するは大戦隊ゴーグルファイブの母艦「ゴーグルシーザー」。基地は基本的に`正史`のそれと変わりはないもの、周辺の海底にメカを収容するための施設が建造され、そこに超メカ群は収容されていた。


「番場さん、大戦隊ゴーグルファイブ、只今到着しました」

「うむ、ご苦労だった」

基地の執務室で大戦隊ゴーグルファイブのリーダーの『ゴーグルレッド』こと、赤間健一(あかまけんいち)が番場壮吉へ報告する。501を守るかのように配置されるメカの格納庫には多種多様の超メカが既に多数到着しているが、ゴーグルファイブはおよそ5番目の到着である。既に超獣戦隊ライブマン、高速戦隊ターボレンジャー、電撃戦隊チェンジマン、太陽戦隊サンバルカンがそれぞれのメカを引っさげて到着しているからだが、これら戦隊はアカレンジャーに率いられる形でネウロイとの接触作戦(人型ネウロイとのコミュニケーション実験も兼ねる)に失敗した504の救援に赴き、救援作戦を成功させている。搬送先は未来設備が整ったここだ。

「君も既に知らされていると思うが、504が人型ネウロイとのコミュニケーション実験に失敗し、大打撃を受けた。これで連合国はネウロイへの欧州での戦争を再開せざるを得なくなった。我々の当面の目的は欧州での501の護衛とクライシス帝国の撃退にある。君達も今後に備えてくれ」

「はい」

番場は赤間に事の経緯を説明し、スーパー戦隊の目的を説明する。彼等スーパー戦隊は仮面ライダーでは対応の難しい巨大な敵にもメカを以ってすれば、対応可能である。ネウロイ戦では彼らがヒーロー達の主戦力を担っているのはそういう理由である。赤間が去った後、番場はアカレンジャーから「504のウィッチはほぼ全員が負傷している」との連絡を受け、顔を曇らせたという。





――このように、基地は着々と準備を整えつつあるもの、ウィッチの現有装備では迎撃困難なネウロイも続出しており、スーパー戦隊、仮面ライダー、地球連邦は連合に、史実の1970年代以降の技術をも与えて、ジェットストライカーの開発を促進させている。……が、それは困難な道である。この時代、ようやくレシプロ機の最終世代機が造られようとしている所に、いきなりレシプロ機の経験が生かせないジェットエンジンなどを造ろうというのは、技術的難易度が史実以上である事を各国に知らしめていた。ジェットストライカーの実戦試作機がロールアウトし、一部実戦に送り込んでいるのは四大国(カールスラント、ブリタニア、扶桑、リベリオン)のみであった。しかもその性能は史実の黎明期〜戦後第一世代相当程度であり、この時代の総合性能で最高性能機である『-86 セイバー』でさえも、その速度性能は亜音速に留まっているが、扶桑の火龍やMe262よりも高速であり、フッケバインと同等だ。これはカールスラントの研究成果により、「後退翼が亜音速〜超音速飛行に向いている」事が判明したためで、そのため推力はこの時代のジェットエンジンのレベルであるが、運動性はフッケバインと同等を誇る。そのため独自開発に行き詰った扶桑は1946年以降に設立予定の空軍(連邦軍の助言により)の主力機にF-86セイバーを選定し、航空先進技術研究も予てライセンス生産するとリベリオンに通達した。既に扶桑のエース達の一部には人脈を生かしてセイバーを独自入手したものもおり、その優秀性は彼女らを満足させるものであった。




――アフリカ 


「ふう。さすがはセイバーね。運動性は火龍よりもいいわね」

圭子であった。彼女は臨時で配下に収めたシャーリーに頼む形でF−86を余分に支給させ、その内の一機を扶桑の新識別標識(日の丸)に書き換えさせて使用していた。本国から送られた火龍よりも運動性に優れているため、最近は専らこちらを使用している。そのためパットン将軍も、『どうだね、我がリベリオンの航空技術は!』と視察の際に大笑いしていた。シャーリーは空軍に所属が変更となったのを、「なんか変な感じだなぁ」と言ったが、シャーリーでなくとも旧リベリオン陸軍航空軍軍人は全員、妙な気持ちを抱いたのである。
「ある日を境に別の軍にいたという事になる」というのはなかなか味わえるものではないが、変な感じはするのだ。

「ご苦労さん。でも、いいの?あんたがリベリオンの機体使って。本国が知ったら……」

「いいのいいの。私は一応扶桑海のトップエースだし、開発部にもコネがあるから」

圭子はシャーリーの心配を軽く流す。圭子は開発技術者の方面に、戦友の坂本や黒江などを通してコネがある。扶桑のジェットストライカー関連技術は未熟で、
アフリカなどの砂漠地帯や熱帯地域では故障が多いのは技術者も周知の事実だからだ。それに近々、陸軍航空隊と海軍の基地航空隊を統合して、空軍を設立する予定なので、圭子としてはセイバーがどういうものか知っておきたかったのだろう。

「でもセイバーの性能は予想以上よ、シャーリー。火龍より格段に航続距離もいいし、反応速度も速い」

「そりゃリベリオンが威信をかけて作ったからな。伊達じゃないぜ」

そう。F-86はジェットストライカーで後発となったリベリオンが1943年から計画していた。そこに地球連邦、スーパー戦隊、仮面ライダーなどからの技術援助で急速に実用化に成功したという側面はあるもの、ほぼ自力で実用化に成功した機体である。後退翼による速度性能、レシプロを超えるペイロードは使用ウィッチに好評であり、
圭子もその一人だ。シャーリーは若干誇らしげだ。

「ホ155-Uの反動にも耐えられるし、それでナイフとかも携帯できるってのはいいわねぇ本当」

「30ミリかぁ羨ましいよ。ウチらは12.7ミリまでしか持ってないし」

「大口径砲使ってみる?ホ5とか備蓄あるから」

「本当かよ!サンキュー〜!」

リベリオンのウィッチは機体の進歩こそ三大国に追いつき、一躍、世界最高水準に踊りでたもの、装備はまだまだであった。これは扶桑海事変で重爆撃機型ネウロイを迎撃する必要があった扶桑、欧州戦で大口径砲が必要となったカールスラントなどと違い、リベリオンはほぼ全ての状況にM2重機関銃で事足りたため、航空機関砲関連技術はややおざなりになっていた。だが、ネウロイの急速な進化、ジェット戦闘機との交戦によって`火力不足`が深刻となり、現地で大口径砲(20ミリ以上)を調達して対応するという事態があちらこちらで発生していた。シャーリーも例外でなく、扶桑の機銃を借り受けて使いたいのである。しかしながら信頼性と、一発あたりの威力が落ちるのが玉にキズだが(扶桑は軽量化のために、軽量弾を使う傾向がある)。

「昨日はF-104を取り逃がしたし、ここで挽回と行きますか!」

シャーリーもこの頃にはジェット戦闘機とも対峙しており、数機をそのスコアに加えていた。だが、最近は火力不足により取り逃がすことも多く、歯噛みして悔しがった(これは第二世代ジェット機以降の機体は基本、20ミリ砲にある程度耐えられる機体構造と装甲を持っていることも大きい)なので、大口径砲を欲していたシャーリーに圭子のこの言葉は渡りに船だった。意気揚々と射撃場へ向かうシャーリーであった。さて、ルッキーニはどうかというと……。



「あ、あんたまた人の胸を〜〜!!」

「うにゃ〜!ウェットに富んだリベリオンジョークだってば〜!!」

「あんたイタリア人でしょうが〜!!」

「そりゃそーだけどさ〜!!」

相変わらず胸を揉んでティアナに追い掛け回されていた。ティアナとしてはルッキーニの声に、元相棒のスバルを思い出すのか、何かとルッキーニを追い掛け回す事が多い。ちなみにフットワークについては、戦闘機人であるはずのスバルよりも軽いとの事で、スバルを追い掛け回す事に慣れているティアナもルッキーニには苦労している。まるで猿のようなフットワークの軽さでティアナから逃げるルッキーニ。こーいう時には何故か逃げ足が速い。

「おっ、またやってるな」

「ええ。もう風物詩になりましたね〜」

「二人とも見てないで捕まえて〜〜〜!!」

「よし、食後の運動代わりだ。やってやるか」

「そうですね」

マルセイユは昼食のチャーシュー麺を食い終え、真美は白米と卵焼きを食べ終わり、食後の運動代わりにルッキーニの追跡に加わる。これにルッキーニは涙目になった。

「にゃ、なんでなんで〜〜!?」
「食後の運動代わりだ、観念しろ〜!」

「うふ、ふふ〜〜」

「うにゃ――ッ!!」

マルセイユ達にまで追いかけ回される事は想定外だったのか、ルッキーニはいっそう逃げ足を加速させる。その途中、マルセイユはこの日の2日前にやってきたティアナの元上官であるフェイト・テスタロッサ・ハラオウンの事が気になったようで、ティアナに尋ねてみる。

「なあティアナ。この間来たお前の上官……えっと……」

「フェイトさんの事ですか?」

「そうそう。フェイトは今どこに?」

「今、付近を哨戒中ですよ。ちょうどマイルズ少佐から連絡入ったんで」

「あいつのスピードはジェットストライカー以上だからなぁ。いいよな〜」

「フェイトさんはスピードタイプですからねぇ」

フェイトのスピードは史実以上の成長を見せ、16歳以降はコスモタイガーやVFほどではないもの、音速は余裕で超えられる速度を持つに至り、黒江の影響によりバリアジャケットは子供時代の方向性を更に推し進めてしまい、より軽装になっていた。(これになのはは16歳当時に仰天してしまい、黒江に、『た、大尉〜!』と文句をつけたとか)ちなみに歴史が変化した影響で、フェイトもなのはに付き合う形で高校を卒業していた。本人曰く、「理数系は得意であったが、文系がいまいち残念」な学業成績であったそうだ。師の影響で剣道部員をしていたので、『保健体育は成績良かったんだけどなぁ』とも愚痴っている。体育会系な成長をした事が窺える。




――フェイトは付近の部隊(シャーロット・リューダーなどがいる部隊)からの連絡を受け、ネウロイ退治に向かっていた。


「連絡があったのはこのあたりなんだけど……あ、あれだ」

フェイトはシャーロットやフレデリカ・ポルシェ達の姿を視認し、着陸する。

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。連絡を受けてやって来ました」

フェイトは空軍式敬礼でフレデリカに挨拶する。フレデリカもそれに応え、状況を説明する。

「状況を説明します。我々はロンメル将軍の命を受けてハルファヤ峠の包囲のために向かっていましたが、敵に捕捉されてしまいました。
敵は航空型なので陸戦ウィッチでは手が出ません。そこであなたに」

「わかりました。制空権確保は私に任せてください」

フェイトはフレデリカに微笑むと、握手を交わす。笑みを浮かべ、単独での制空権確保に自信がある事をフレデリカに示す。実際、フェイトもなのは同様に正史とは違う成長を遂げており、バルディッシュ・アサルトのフォームも正史とは違いが出ていた。それまで総じて西洋のブロードソードなり、グレートソード、東洋の斬馬刀なりの刀身が太い西洋剣やそれ風の剣をしてきたバルディッシュだが、新フォームの形状は切れ味を重視したらしく、日本刀の如き形状をしていた。ザンバーに比べて重量も比較的軽く、取り回しも良い。このフォームはフェイト曰く、この時点では、便宜上「サーベルフォーム」と呼んでいるとの事。日本に長くいた上に日本軍人(扶桑軍人)たる師に教えを受けた末の産物であった。(後に正式に天羽々斬という名を与えられる事になる)飛び上がると敵ネウロイの姿が視認できた。ジェット機型で、スピード重視のタイプのようだ。

「あの形は……確か『MIG-15』!!スピードで突破しようって腹かっ!!」

その5機のネウロイは名機「MIG-15」(みぐじゅうご)をそのままネウロイにしたような形状であった。速度は時速換算で1070キロほどか。形状から言うとMIG-15の最終型に近い。フェイトは直ちに交戦に入り、その時期に誂えたばかりの新フォームの実験も兼ねて、使用した。



「さて……と。行くよ、バルディッシュ」

フェイトはカートリッジをロードし、そのフォームへ変形させる。刀身は日本刀そのままとも言えるほどに湾曲し、細い。その特徴は日本刀であるが、違うのは刀身が雷の如く黄色い輝きを放っているくらいだ。ただしサーベルの名のとおりに鍔などが西洋風になっている。(後に廃止されるが)そのため、この時の形状は大日本帝国陸軍で言えば明治年代の制式軍刀に近い(鍔などの形状はバルディッシュの変形機構の都合によるものもあるが)。



「うぉぉぉあああっ!!」

持ち前のスピードを以ってして、フェイトはMIG型ネウロイへ吶喊していった。巧みにビームの弾雨を潜り抜けていく様からは8年間の成長と努力が見て取れる。

――閃光。それが今のフェイトには相応しかった。ネウロイを電光一閃、コアごと両断する。次いで、持ち前の編隊を見事に追い散らせて見せる。親玉と思われる爆撃機型ネウロイが現れ、フェイトに攻撃を加える。

「あれが親玉か。地上のみんなの安全を確保しないと……!」

フェイトが攻撃を加えようとしたその時、ジェットエンジンの『キーン!!』という特有の轟音が響く。地球連邦軍製の戦闘機とは違うエンジン音で、バルディッシュから報告されるエネルギー量もコスモタイガーの更に倍以上あった。その主が姿を見せる。それはスーパー戦隊の新たな援軍として到着した『光戦隊マスクマン』の超メカ群であった。

「あ、あれは!?」

フェイトの驚きをよそに、戦車とヘリも加えた五機編隊が接近する。

『合体!ファイブクロス!!』

その編隊は集合し、合体し始めた。巨大ロボへだ。戦車を中心に、残りの機体が集まっていき、変形合体していく。その合体ぶりはまさしく、スーパーロボットだ。

『完成!グレートファイブ!!』

フェイトの前に現れたスーパーロボットはグレートファイブと名乗りを上げた。同時にスーパーバルカンベースより、フェイトに通信が入る。

「はい。こちら……わかりました」

フェイトに通達が行く。現れたスーパーロボットはスーパー戦隊の一つ『光戦隊マスクマン』のロボである事を。地上部隊にも同様に通達が行われる。だが、いくらスーパーロボットと言えど、ネウロイの発する瘴気は光子力やゲッター線などの超エネルギーを動力源にしていない限りは、防げないはずである。それ故に心配したが、それは杞憂であった。マスクマンは人間の体に眠る可能性を引き出す(オーラパワー)を用いる。そのオーラで瘴気を防ぎ、更には効果的なダメージを与えられる故、ネウロイに対しては、アースフォースを使うチェンジマンのチェンジロボと並んで、真っ向からの格闘戦で優位に立てるのだ。

『ジャイロカッター!!』

右腕のプロペラを外し、ブーメランとして投擲、外殻を削る。次いで、腰の銃であるグレートガンを取り出し、撃つ。これはエネルギー銃なので、ネウロイの装甲は無意味だ。再生しようとする隙を突く形で、グレートファイブはとどめに移る。

『光電子ライザー!!』

「あのロボから魔力みたいなのが出てる!?」

「いや、魔力は感知されてないわ。魔力以外に、ネウロイに対抗できる力がこの世にあるというの!?」

地上で見学になっているフレデリカやシャーロットが驚愕を顕にする。魔力以外に真っ向から対抗できる術がないとされるネウロイだが、人間の潜在能力を開放させる『気』がネウロイを押さえ込める新たな手段であると示された瞬間である。グレートファイブは光電子ライザーを中心にオーラを迸せ、ネウロイをこの一声とともに斬り裂く。

『ファイナルオーラバースト!!』

――その雄姿に誰もが唖然となる。これが光戦隊マスクマンのこの世界での巨大ロボ戦の初陣であった。



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