外伝その50
――統合戦闘航空団。それは政治的思惑が入り混じる部隊であった。司令部直属とは言え、司令部の気分しだいで解散も自由に行えるからだ。501統合戦闘航空団もそうであったが、地球連邦軍の後援が入り、更にスーパー戦隊らの支援も入った結果、東部戦線を守護する502、ロマーニャ戦線を守護しながらも敗北した504、更に敗残兵となったストームウィッチーズを取り込んで、ウィッチ部隊としては異例の大規模部隊と化した。これはアフリカ戦線を守りきれなかったストームウィッチーズを責める声から彼女らを守護するためもあり、そのため、最年長ウィッチが加東圭子になるなどの変化が起こった。また、当然ながら基地を間借りしているスーパー戦隊側が迎撃するのをウィッチが見学を兼ねて、観測する日もあり、この日は光戦隊マスクマンがギャラクシーロボでネウロイの迎撃に出、護衛という形で坂本と圭子が観測任務についていた。
『ギャラクシーチェンジ!』
ギャラクシーロボがランドギャラクシーというトラクター形態に変形し、更にオーラパワーによる光の道を生成し、ネウロイの攻撃が追いつかない高速で疾走する。
『オーラロードスパート!』
ネウロイの発する障気はオーラパワーにより無効化され、逃げようとするネウロイを拘束する。そして再度、ロボへ変形して手刀にオーラパワーを一点集中させる。これぞ光戦隊マスクマンの巨大ロボ戦における後半戦の決め手となった最強の必殺技。その名も。
『鉄拳オーラギャラクシー!!』
手刀でコアを外殻ごと両断し、消滅させる。決めポーズを取った後に合掌をするアクションも見せ、人間臭さを垣間見せる。
――ここで光戦隊マスクマンの二号ロボである、ギャラクシーロボを改めて説明する。ギャラクシーロボは俗にいう二号ロボに相当し、超新星フラッシュマンに次いで二例目だが、実際は一号ロボたる『グレートファイブ』と競作されたロボだ。しかし、コンペでグレートファイブの多彩な武装などに敗北(ギャラクシーロボも武装は装備されているが、少なかった)し、その後に行方不明となっていたが、その後にマスクマンらに回収され、オーラパワーを身に付けた。(ロボが生命力を持つというのも凄いが)その修業で身につけたオーラパワーにより、グレートファイブの欠点である『パイロットが1人欠員するだけでも大幅にパワーダウンする』事が無いため、それが最大の利点であった。折しも、激戦でグレートファイブの損傷が大きかった事もあり、後半戦はギャラクシーロボで戦い抜いたのだ。
「お、おい。加東……今の技、たしか昔……お前が使った……」
「ああ、そうだ。お前、私の事忘れてたのに、それは覚えてるのか?ややこしいんだけどなぁ。この説明……」
圭子は合流時に坂本が自分のことを殆ど忘れていた事にがっくりしているようだが、きちんと説明してやるあたりは優しいところを見せる。坂本は『長年の疑問が解けた』のを嬉しがった。歴史を変えた事によるタイムパラドックスを指摘する知的なところも見せ、圭子は坂本の成長を実感した。
「つまり、あの時は……昔の私を知っていて、わざとからかったな!?」
「ハハ、そう拗ねるな。未来のことを言ったところで、あの時のお前が信じるとは思わんかったし、江藤隊長達にすべてを納得させるのに黒江ちゃんが骨折ってるんだ。山本さんに恩売れたのが成果だが、その帳尻合わせで私達は少なからず参謀本部に疎んじられたからな。智子の出世が遅いのが、その証拠よ」
「そういえば、穴拭の奴はまだ大尉か少佐だったな。映画の撮影してた頃は、早くに佐官になるかと思ってたんだが」
「あいつは独断専行の毛があったからなぁ。元の状態に戻った後に、スオムス行きになった事で、すごくパニクったらしいからなぁ。まぁ……なんだかんだで概ね改変前と同じような経緯に落ち着いたから、よしとするか。私も欧州行けたし」
「前の時は行けなかったのか?」
「あの映画、智子が主役だろ?」
「ああ」
「トップエースは私だったから、主演になれると思っててね。それで式典の展示飛行で無茶したら、落っこちて死にかけたんだ。それで棒にふっちまったからな。あの時に18歳を超えてたし、入院中に20になっちゃったしね」
「そうか。それで改変して欧州に行くように?」
「そうだ。同じような目には遭いたくなかったし、欧州で現役ウィッチとして戦いたい願望もあったからな。映画は智子になる事は分かっているからな。あとはお前も知っての通りだ」
――圭子は改変時に『前回』の経験を活かし、欧州戦線に従軍する機会を得た。引退の時が多少伸びたが、釣り合い取りで従軍記者に再就職するまでの期間が短縮された。しかしながらストームウィッチーズの隊長になるという流れに影響は無かったという『釣り合い取り』が歴史の大河で取られた。大まかには変化はないが、圭子らの撃墜スコアが公式でも倍以上に膨れ上がっているという変化があった。
「映画じゃ未来兵器のこととかは削除されてるが、実際はあれ使わんと、皆死んでいたからな」
「ああ。あの時の黒江は半分、やけっぱちだったな。だけど、見ていて頼れる感じはしたぞ」
「あの時のあの子、もう破れかぶれで使ったもの。まぁ、私もオーラパワー使ったけどね」
圭子と坂本の会話からは、扶桑海事変の最終決戦の経緯がどんな様相であったかが窺えた。三羽烏がキャラを完全にかなぐり捨ててまで奮戦した事も。連合艦隊も大打撃を受けたというのが記録されていた。圭子はレッドマスク=タケルから習い、習得したオーラパワーを使用したと発言する。坂本もギャラクシーロボが使用した技を見て、長年の疑問が解けた故、納得した。
『ご苦労様』
「そちらもご苦労様です」
『俺達はギャラクシーロボをターボランジャーに収容して帰投する。君たちも送って行こうか?』
「それじゃお言葉に甘えて」
――圭子と坂本はマスクマンに母艦を呼んでもらい、そこに着艦して一息入れた。ブルーマスク=アキラが出迎えてくれ、ターボランジャーのブリーディングルームで休息を取った。
「ご苦労さん。ケイちゃん、ちゃんとランニングしてるかい?
「ええ。基地を30周。素振りを100回」
「あとでトンファーの実戦での使い方教えるから、俺達側のトレーニングルームに来てくれ」
「わかりました」
アキラは現役当時の姿で、高校生である。当時の人気アイドルにお熱なミーハー男子だが、剣術の達人である。その腕前は坂本を一瞬で負かせるほどで、個人技もレーザーマグナム・剣タイプの二刀流で敵を×字に切り裂く『マスキースラッシュ』である。圭子が接近戦に取り組み始めた際に、格闘術を教えこんだ一人である。
「加東。お前、未来行ってる間にどんなコネ作ったんだ?」
「まぁ、色々とね。このくらいで驚いてたら、他の戦隊についていけないぞ?ターボレンジャーは全員が高校生だし、ファイブマンなんて、小学校教諭だぞ?」
「嘘だろ…!?」
「俺たちの仲間は、プロの軍人が戰隊してるケースのほうが少ないからね。俺たちの一期後輩の超獣戦隊ライブマンは『腕っぷしがいい科学者』だし、先輩のゴーグルファイブなんて、民間人を選抜したしね。俺達もその口だけど」
「なんて事だ……恐るべしだな……」
「地球人、それもアジア系の血が入ってる人間は潜在的に高い戦闘能力を持つ場合が多い。これは多分、今のアジアに当たる地域に何かがあるせいだろうな」
――バトルフィーバー隊を除けば、スーパー戦隊のメンバーはアジア系の人間が大半を占める。唯一、ダイレンジャーのリンのように、日本在住の中国人の場合もある。これは悪の組織が寄ってたかって、いつも日本を集中打してくる都合上で生じた事だ。歴代戦隊の大半のメンバーが都合のいいように、アジア系の人間で固まっているのを疑問に思っていたアキラは、日本列島に地球のパワーか何かが宿っているせいではないかと推測する。そのパワーを自らのパワーに使用したのが電撃戦隊チェンジマンであるのは周知のとおりだ。
「でも、こんな母艦をどうやって作ってるんですか?」
「国連が博士たちに資材や人員を援助したりするケースもあるし、ライブマンとターボレンジャーのように、自分たちで用意するケース、デンジマンやバイオマン、フラッシュマンのように、宇宙から持ち込まれたメカもある。ライブマン以降はスーパー合体の機構が入るケースが多くなったから、ライブマンが最後のケースかな?」
「こんなのを作れる技術が40年後には確立していたのか……宇宙人のおかげだな」
「一般には秘匿されてたけどね。母艦を持つ戦隊は両手で数えられるほどだよ。90年代以降は三号ロボやスーパー合体とかが主流になったしね」
90年代以後のスーパー戦隊のメカの主流は、80年代後期までの母艦によるサポートから、80年代末の要塞ロボを経て、ライブマンで確立されたスーパー合体やサポートロボ、三号ロボ(中にはロボとは言い難い存在もいる)などの使い分けになっていったので、ライブマンを最後に、巨大母艦は建造されなくなった。そのため、501基地と繋がっているスーパーバルカンベースの母艦用格納庫は比較的コンパクトな作りの広さとなっている。むしろ、ロボ用格納庫のほうが広い状態だ。(スーパー合体などの都合上)
「メカにも主流ってあるんですね」
「流行り廃りはどの分野にもあるさ。テレビゲームだって、カセット式からディスク式へ変わるしね」
ここでアキラはTVゲームを引き合いに出した。彼の時代にはファミコンが栄華を誇っていたが、そろそろポストファミコンが出始める頃である。彼が言及したのは、自分たちの時代で出始めた『PCエンジン』である。PCエンジンは数年でCD-ROMをソフトメディアとして扱うようになる。その方式は大成功で、PCエンジンから数世代後に至っても採用されている。彼がその事を知っているのは、未来に呼ばれた際にそれらを買っていたからだ。
「そういうもんですか」
「そういうもんさ」
(そういえば、のび太やドラえもん達もやってたっけ。80年代以後の若者は皆、やってるんだなあ)
坂本はそのような分野との縁は薄い。部屋でハルトマンやシャーリーがやり込んでいるのは見た(ゲーマーであるドラえもんの影響)が、自分で触った事はない。黒江たちも非番の時はゲームの攻略法を、わざわざ国際電話でドラえもんに聞いていたりする(当然ながら、この時代にはインターネットはない)ので、気になってはいるが。
――基地では、非番のハルトマンやエイラ達がTVゲームに興じていた。やっているのはバイオハ◯ード3である。ホラー系のゲームでありながらアクション要素が高いこのシリーズ、シャーリーがハマっており、その関係でプレイしていた。
「お、おい!なんかスゲーの来たぞ!少佐」
「わかってるって!え〜と……」
ハルトマンはこの日までに特進で少佐になっていた。そのため、エイラから少佐と呼ばれている。ゲームプレイぶりにもセンスは発揮されており、プレイが最初の山場を迎えているこの日もネメシスから逃れる方法をすぐに見つけ、撤退に追い込む。
「いやったぁ!」
歓声を上げるハルトマン。彼女はコンティニュー回数がエイラに比較すると少なく、(エイラはホラー系が若干苦手らしい)クリアランクは上であるのが想像できる。TVゲームに興じる二人(サーニャはプレイの見学)のように、非番を楽しむ姿もあれば、幹部級人員らの半数はスーパーヒーロー側の基地の見学会を行っていた。隣接する海中に建設された秘密基地の規模の大きさ、そして、オーバーテクノロジーで固められた超メカ群に圧倒されていた。
――ロボ格納庫
ここでは、歴代スーパー戦隊の巨大ロボがマシーンの状態だったり、合体後の形態で整備を受けている。現在、この基地に配備されているのはチェンジロボ、ダイナロボ、ゴーグルロボ、サンバルカンロボ、グレートファイブなどで、まだ空きスペースもかなりある。各方面に出動しているロボや、まだ見ぬスーパー戦隊もいるためだ
「凄い……こんなにスーパーロボットが……」
「これでも全てではない。呼べないだろう戦隊や活動時期が限定されるスーパー戦隊もいてな。我々も呼び寄せるのに骨を折っているのだ」
バトルフィーバー隊の倉間鉄山将軍は、各時代の日本を守護していたスーパー戦隊を呼び寄せているが、『超新星フラッシュマン』のように、体質的問題で地球を去った戦隊や、『鳥人戦隊ジェットマン』がそうだが、メンバーの死亡により、活動時期が90年代前半期に限定されるような戦隊もいるために、一箇所に集結させるのは大変な苦労である。主に活動状況が記録されている戦隊を中心に呼び寄せているため、現在は80年代に活動していたスーパー戦隊が中心となっているのが現状である。90年代はダイレンジャーとカクレンジャーが応じてくれたが、ファイブマンやジェットマンは協議中(ジェットマンは例外的に現役期間真っ只中のため)、2000年代以降に至っては呼ばれていない。この頃になると、『正義』への価値観も変容している時代故、援軍要請を出していいものかと、鉄山将軍ら司令官達によって協議されているのである。
「どうしてです?」
「時が進むに連れ、正義という抽象的な目的のために戦うという事が薄れていってね。応じてくれるかという疑問が生じているのだ。中には警察組織が結成した戦隊もいるというので、軍事目的に等しいこの戦いに応じてくれるかという点もあるのだ」
鉄山は戦隊という組織の多様性の増加により、一つの目的にまとめ上げる事の困難さに直面し、悪戦苦闘していると話す。現役期間中に声をかけると、『んじゃ俺達の敵はどうするのよ!』と言われるケースもあり、正義のヒーロー達の意外な苦労が見え隠れする。
「大変なんですね。ヒーローにもヒーローなりに」
「そうだ。できればバダン打倒のために、すべての力を集結させたいが、交渉が難航している。」
――スーパー戦隊は仮面ライダー達のように、すぐに集まれるわけではない。設立目的、活動期間などはバラバラであり、敵も地球規模の大規模攻勢が可能な組織も多いために、『自分たちが地球の砦である』と自覚している戦隊も多く、戦場を一時でも離れる事に不安を覚える意見も生じる。そのために、交渉が思いのほか難航しており、鉄山将軍の苦労が忍ばれる。それでも彼の一声で5つ以上の戦隊が動員できる辺りは影響力の大きさが分かる。また、11人ライダーだけでは倒せないバダンの強大さも同時に示され、一同は息を呑む。これだけの陣容でもなお足りないことが明言され、クライシス帝国が可愛く思えるほどの規模である事を察し、身震いする。
「そんな……これでまだ足りないなんて」
「だからこそ俺達が戦うのさ」
「力君、ラガーファイターの収容が終わったのかね」
「ええ。今、こちらに収容しているところです」
やってきたのは、高速戦隊ターボレンジャーのリーダーである炎力=レッドターボであった。現役期間中の1989年当時で18歳と、歴代史上最も若い部位のレッドである。(他の戦隊のレッドは平均で20代前半から中盤である)
「あなたは?」
「俺は高速戦隊ターボレンジャーの炎力(ほのおりき)。レッドターボだ。よろしく」
一同に力は自己紹介する。赤いジャケットを着込んでいる事からも、彼のポジションが伺い知れる。単独での撃破数は歴代でも有数で、剣の使い手として歴代屈指である。
「アレクサンドラ・イワーノブナ・ポクルイーシキン少佐です。よろしく。あなた達が去年から東部戦線を支えてくれていると聞きました。ありがとうございます」
「何、アレくらいのこと軽いもんさ。君たちもこれから大変だと思うけど、俺達がバックアップするから、大船に乗ったつもりでいてくれ」
力はサーシャにそう明言する。彼らターボレンジャーの最高戦力にして、歴代スーパー合体メカ最強を謳われる『スーパーターボビルダー』の強大無比さの裏付けもあるが、何よりも彼の言葉からは不思議と安心できる何かを感じられた。サーシャはそんな安心感に、思わず笑みを浮かべたとか。」
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