外伝その53


――防衛作戦は『オペレーション・アテナ』と名付けられ、連合軍の稼働中の『新戦艦』の多くが動員された。だが、余裕が無い亡命リベリオン軍、タラント軍港空襲でその体をなさなくなったロマーニャ海軍の大半、国土復興が急務なのと、まともな海軍戦力がないガリア海軍が不参加に終わったため、少数のロマーニャ艦艇の他は全てが扶桑とブリタリア艦艇で占められていた。扶桑側は近代化改修を終えた艦艇の多くが動員されており、意気込みの凄さを感じさせていた。

「これは凄いな。大和に超甲巡、大型空母……超大和……しかもZ旗を掲揚しているじゃないか。気合入ってるな」

「本当だよな〜。ブリタリアもユニオンジャック掲げてるし、なんかもう、日英同盟万歳だな」

「なんで、今回は別の世界の旗を掲げてんだ?扶桑もブリタリアも」

「扶桑はイメージ刷新の名目で制定された海軍旗だし、ブリタリアはオブザーバーの……連邦側の趣味かもな」

「でもさ、わざわざ規定変えてまでやることか?あれ」

「向こうさんの趣味が入ってるなんてのは、暗黙の了解だからなぁ。扶桑は不祥事起こったし、軍閥の反乱がくすぶっているっていう大義名分があるが、ブリタリアは特にないし」

「やれやれ、趣味か……なんだかおかしな感じだな」

「それは下の連中も同じだろう。馴染みのない旗のもとでドンパチするなんざ、本意じゃないしな」

エイラの抱く想いは、地球連邦内部の地球至上主義者と融和主義者の対立が異世界に持ち込まれ、シッチャカメッチャカに振り回されている事への憤りが多分に含まれていた。だが、地球連邦軍とティターンズの介入が無ければ、全ての分野で科学が急激に発達することはなかったという事情、エクスウィッチの再戦力化が行えるようになったという人材面でのメリットをそれと引き換えに得たので、連合軍は現状を歓迎している。マルセイユもエイラと同じ思いのようだが、自分と轡を並べて戦える事を喜んでいる圭子の事を思うと、複雑なようだった。扶桑艦艇に翻る『大日本帝国海軍制式海軍旗』の旭日旗は、オブザーバーの地球連邦を事実上牛耳る旧・日本の思い入れを表している。


「あの旗にどんな意味があるんだ?」

「大日本帝国海軍のシンボルだった旗だ。向こうじゃ、一時は一部の反発を背景にした左派の圧力で封印されかけたそうだから、その反動が来てるそうだ」

「政治家って、なんでも反発するのかよ、全くなぁ」

「しゃーない。日本の政治家は敗北の反動で、自国よりも他国の機嫌取りしか能がない奴らが半数を超えた時代さえあったそうだ。吉田茂首相とかが聞いたら嘆いてた」

「だろなぁ。平和な時代の、しかも暗黙の了解で軍隊が有るのに、無いって言い張ってた時の政治家なんて、与党への反発しか能がない奴らだろうしな」



――この時代の国家中枢に位置していた明治中期から後期生まれの人間達から見れば、戦後日本の左派は『他国のご機嫌伺いしか出来ない輩』にしか思えないと『本人達』が回答した事で、旧・日本内部の伝統的な左派は決定的に衰退の道に入った事がそれとなく示唆された。政治家が軍事にも見解を持つ時代の人間から見れば、戦後の政治家に失望した感が否めないのは、エイラやマルセイユには容易に想像がついた。一応は士官学校卒の職業軍人である故、政治的見識もあるのが分かる。

「ん、前衛のブリタリア艦隊が交戦に入ったぞ。敵はやはり、亡命リベリオンよりも一世代後の機体を使っている。『A-1』スカイレイダーが艦爆と艦攻を兼任しているぞ!注意しろ!」

「スカイレイダー!?例の万能爆撃機かよ……場合によっては戦闘機になるっていう…!」

「ああ、あれは3130kgの搭載量で、B-17と同じ程度の爆弾を積んでも520km/hを出せる化け物で、2800馬力の賜物ってヤツだ」

「技術の発達は恐ろしいぜ!ったく」

「リベリアン、お前が言うか?」

「たりめーだ!こっちじゃ、まだ試作中の機体なんだぞ」

「と、いうことはやはり、制空任務はジェットを使用する可能性が高いな。各機はジェットに注意しつつ、スカイレイダーの撃退に向かうぞ!」

「了解!」

ウィッチ達はここで、第一の強敵と会敵する。米海軍史上最後にして、最強の単発レシプロ爆撃機『A-1』スカイレイダーである。艦隊上空に着くと、既に駆逐艦はその魚雷と爆撃網に絡め取られ、O級駆逐艦3隻が沈没、J級駆逐艦2隻が大破し、航行不能に追いやられていた。直ちに救援のために攻撃を開始したものの、2800馬力のハイパワーで軽快さを発揮するスカイレイダーの前に苦戦する。

「クソッ!!メチャメチャ硬てぇ!!」

M2重機関銃を放つシャーリー。だが、魔力により攻撃力を強化したとは言え、ネウロイのように強度が弱体化しない上に、20ミリ機関砲を弾くのを目的に造られたスカイレイダーの重装甲(設計時の仮想敵であった日本海軍の主兵装であった九九式二〇ミリ機銃を完璧に防ぐのが目的である)の前に苦戦する。追尾して、100発近くを叩き込む事で、やっと白煙を吹くので、思わず悪態を突く。と、思えば、全ての爆撃を終えて身軽になったもう一機が四門の機関砲で猛撃を加える。シャーリーは上昇して逃れようとするが、戦闘機に勝るとも劣らない空戦能力を発揮され、追従される。

「なっ!?う、嘘だろ!?爆撃機なのに、戦闘機紛いのことするんじゃねー!」

P-51は速度面では追いつかれる心配はないが、防弾性能については、ジェットも登場しつつある現状では不安しかない。特に、シールドを弱体化させるバダン製の弾頭がこちらに卸されていたという情報が、ビッグワン=番場壮吉から齎されたため、防弾性能に不安を持っていたシャーリーは回避を選択した。だが、そこに三機目が待ち構えており、機関砲を浴びせてくる。


「さ、三機目!?」

『イスパノ・スイザ HS.404』20ミリ機関砲四門を上方から浴びせられたシャーリーは被弾する。シールドで損傷は防いだものの、上空を抑えられたのは彼女のミスであった。

(ちくしょう……上を抑えられた。奴ら、手馴れてやがる!)

「シャーリーさん!」

「さ、サーニャ!?お前……!」

「離脱してください、私が援護します!」

「わ、悪ぃ!」

サーニャが九九式20ミリ機関砲を使って、スカイレイダーを散らす。サーニャは元々、ナイトウィッチであった都合上、昼間制空任務の機会はそんなに無かったものの、才覚は一級品で、匠にスカイレイダーを追い散らす。儚げな印象を持つサーニャだが。その高い技術に、シャーリーは改めて関心し、ほっと胸を撫で下ろした。




――前衛艦隊旗艦のキングジョージX世級戦艦『ハウ』は第一次大改装が間に合ったキングジョージX世級の一つである。防御バルジが増設され、全幅が拡大された他、司令部防御の強化、主砲は16インチへ、機銃はポムポム砲からボフォース40ミリ機銃へ換装された。ただし、直接防御は重量配分の都合で、さほどは強化されていないために『機関部などは16インチ防御だが、だいたいは元のまま』な防御配置である。アンソンは、より新式のライオン級三隻が(一隻を外貨獲得のために売却した)優先されたために遅延したとのこと。外観上はさほどの変化はないが、信頼性のある16インチ連装砲に換装されたため、主砲の故障率が低下しているのが用兵側に好評であった。


「我が軍の新鋭艦が扶桑の前衛に甘んじるとはな。ヤマトタイプを宛てにしすぎているのではないのかね」

前衛艦隊司令のルイス・マウントバッテン伯は少将として、ハウに座乗していた。ヴィクトリア女王の曾孫であり、40代半ばであった都合上、少将の任に就いていた。この人事に疑問点する声もあった(彼の手腕は実務ではなく、裏方などで発揮されていたため)

「ハッ。ですが、司令。我が海軍の戦艦は新式でも、どれも16インチでして……。ヤマトタイプは初期タイプの時点で18インチ砲登載ですので」

「フン。口径だけでかくとも、使えなくては意味は無いのだかね」

マウントバッテン伯は史実ほどは日本人への悪感情を持っていないものの、皮肉を部下の前で堂々と言うあたりは、『好きではない』事の証明であった。だが、ハウは改装後は元・ネルソン所属であった熟練将兵が優先して配置されたため、練度は高い。そのために艦歴が短い、主力部隊に配置された大和型4番艦『甲斐』を侮っていた。

「提督、敵打撃艦隊、接近してきます!」

「よし。ウィッチ達に上空直掩をさせろ。距離は?」

「距離、55000。この速度ですと、あと15分ほどで最大射程に到達します」

「敵の艦種は?」

「確認させます。」

「爆撃の第一波は凌いだ。当分は爆撃はないだろう。ここらで我が王立海軍の働きを見せてくれようぞ」

艦隊旗艦からの通信で、艦種を確認したハルトマンは思わず顔を曇らし、マルセイユにいう。確認された艦種の中に、強力な艦がいたからだ。それも……。


「ハンナ、不味いよ」

「どうした?」

「サウスダコタ級とデモイン級がいる。それぞれ二隻は居るよ」

「前衛艦隊じゃ撃退で精一杯な陣容だな……。サウスダコタ級はどうにかなっても、デモイン級は打撃戦だと無理だ」

「どうする?」

「私達が対艦攻撃を行う必要が有るぞ。全機、対艦用フリーガーハマーを構えろ。艦隊が交戦に入り次第、支援攻撃を行う!」

「了解!」

ここで、ウィッチ達が構えた『対艦用フリーガーハマー』とはなんであろうか。それを説明せねばならないだろう。フリーガーハマーはフリーガーファウストの発展型だが、それを対艦用に更に改良した仕様である。炸薬量を増大させ、主にMSの関節部や水上艦の電探や高射砲、測距儀などを破壊するために造られた試作品である。これは本来、ナイトウィッチ用に開発が進められていたフリーガーハマーの次期モデルを急遽、モビルスーツとの戦闘や、水上艦との戦闘機会が増えた事から転用・改造したのが始まりである。MSの防御に通用する威力を追求した結果、弾頭が大型化し、装弾数は3発減っているが、一発あたりの威力が大きくなっている。この装備はウィッチ達に敵の防空網への攻撃力を与える意味でも大成功で、今時作戦後に扶桑でも大量生産され、後継の赤外線誘導式携帯ミサイルが開発・普及する1953年までの大戦中の数年間に多用されたとの記録が残された。







――艦隊の前に現れたティターンズ打撃艦隊はサウスダコタ級戦艦二隻、デモイン級重巡洋艦二隻を基幹とする打撃艦隊であった。ウィッチ達は、艦に掲げられている旗がリベリオンのそれでは無く、未来資料で見た『アメリカ合衆国海軍旗』である事に気づく。

「クソ、奴らもご丁寧にアメリカ合衆国の海軍旗掲げてんぞ。これって何かのアレか?」

「いや……聞いた話だと、奴らの時代には長年の戦乱と、鉱物資源の枯渇とかで零落したらしいから、在りし日の世界の覇者としての姿への郷愁だろうよ。」

「世界の覇者、か。向こうは扶桑がアジアの覇者になるのが数百年遅れた代わりに、リベリオンがそれになったが、ものの数十年で陰りが見え始めたってのは本当かよ?」

「そうだ。太平洋戦争で日本を完膚無きまでに叩き潰したアメリカ合衆国は、共産主義国になったソ連邦と覇を競うようになり、没落したイギリスに代わる自由主義・資本主義諸国の盟主としての繁栄を謳歌した。だが、それもものの数十年で終止符が打たれた。自らの増長でな」

「どういうことだ?」

「1960年代に共産主義化しようとしたベトナムに介入したが、逆にそれが仇になった。大義名分もない、ジャングルに忍者みたいに連日連夜襲ってくるゲリラに米軍は疲弊し、どんな近代兵器を用いても屈服しないゲリラに恐怖するあまりに麻薬は蔓延するわ、神経症患者は続出と、いいところなし。それで10年経っても終わりがない戦争に嫌気がさしたアメリカ合衆国は遂に反戦運動を抑えきれなくなり、撤退という形の敗戦を初めて味わった。これ以降、ケチがついた米軍は外征先で度々、戦闘に勝っても政治的に勝てないことが続き、少しづつ衰退していったわけだ。だから未来世界の米大陸居住者達は、自らが最も繁栄していた1950年代を郷愁するらしい」

「なるほどなぁ〜それぞれの郷愁か……地球連邦政府の時代になっても、郷愁はあるんだな」

「特に長く続いた統合戦争は事実上の戦後世界の覇権争いみたいな戦争だったらしいし、日本が世界の盟主になるなんざ誰も思ってなかったし、米、中、伊、露、仏、蘭と言った旧秩序の有力国が軒並み零落するなんて考えられないことだったし、戦争と環境破壊で気候が熱帯になっちまったところも多いそうだ。」

「戦争か……なんか実感わかねーよ。人同士が殺し合ってた時代は、せいぜいナポレオン三世の戦争とかその辺なんだぜ?私らのばーちゃんかひーばーちゃんの世代だろ?」

――1920年代生まれが若年層を占めていたこの時代、ナポレオン三世が敗北し、老人らの間では、ガリア第二帝政が崩壊した記憶もまだ薄れていない頃である。だが、エイラや芳佳らの世代になると、『戦争は対ネウロイ戦線である』という常識が出来上がっていた。それを崩壊させ、『かくあるべく』姿へ戻したのはティターンズである。前年より、ウィッチ達に自主退役という名の逃亡や良心的兵役拒否が出始めたのも、この常識を背景にしている。エイラが『実感が沸かない』というのも無理かしらぬことだった。

「確かに、私達は殺し合いの訓練なんて受けたつもりはない。だが、誰かがやらなければ、この戦争は永久に続いてしまう。そのために私は敢えて銃を取る。誰かが止めないといけないのなら、な」

マルセイユはトブルクでの撤退後、自暴自棄になっていたが、この作戦に参加した以後はライーサ・ペットゲンの献身や、エーリカ・ハルトマン、仮面ライダーZX=村雨良の叱咤などで少しづつ覇気を取り戻してゆく。彼女は1948年には20歳を迎える身だが、ゲッター線に体を適応させた、若返ったなどの理由で以後も現役に留まり、1950年代においてはバルクホルン、ハルトマンらと共に実働部隊の長老として君臨する事になる。エイラに語ったこの時の言葉は芳佳の影響だが、マルセイユらは以後、この気持ちと気概で戦線に立ち続けたため、芳佳は間接的にマルセイユや三羽烏ら、先輩達に多大な影響を与えていたのだ。



――砲撃戦が開始され、艦隊は突撃隊形で迎え撃った。主砲が連装三基に換装されたハウは設計時の欠陥を戦闘時には感じさせない精強さを見せた。サウスダコタ級の砲撃に耐え、砲撃を行う姿は『かくあるべし』王立海軍の威厳を想起された。だが、元々が条約型戦艦の最たる例だった故、限界もあった。

「うおっ!」

「舷側装甲と第一主砲塔に被弾!電路切断されました!」

「再接続急げ!」

「敵巡洋艦の主砲弾、来ます!」

「伏せろ!」

轟音と共にデモイン級の放ったSHSが飛来し、ハウのポムポム砲を粉砕し、31mm+149mmの甲板装甲の内、31ミリ上甲板装甲を貫通し、火災を発生させる。これにはルイス・マウントバッテン伯も驚愕する。

「なんと!?バカな、巡洋艦ごときが戦艦の装甲を破壊できるとは!?」

「敵新型巡洋艦の新型重量砲弾による砲撃です!噂には聞いていましたが、ここまでとは!」

デモイン級はハウの護衛を務めていた軽巡(英国では巡洋艦の内、重巡洋艦はヨーク級重巡洋艦以後は整備していない)を蹴散らし、旗艦の支援砲撃に移っていた。自艦主砲の被弾に耐えられる装甲を存分に施された。デモイン級は英国巡洋艦を蹴散らし、ウィッチ達の対艦攻撃も『Mk33 3インチ砲』、『Mk12 5インチ砲』、『20mm機関砲』を駆使し、決定打を与えなかった。

「……くっ!弾幕が激しすぎる!これが新型重巡洋艦の威力……!」

サーニャもデモイン級の圧倒的弾幕に苦戦し、フリーガーハマーの射程に敵艦を入れられない。Mk33は当時最新のVT信管が効果的に使えるように開発されたので、従来よりも効果的に防空網を構築できる。フリーガーハマーの最も扱いに熟達した、サーニャをしてさえ激しいと言わしめる弾幕。フレッチャー級と合わせた艦隊防空網は、ウィッチ達をも容易に近づけさせない水準に達していた。サーニャはVT信管による破片への防御も気を使わなくてはならず、従来よりも疲労してしまう。

「そこっ!」

装填時に僅かに生じる隙を見計らって放つ。サーニャも流石に決定打になるとは思っていない。無誘導弾故の哀しさである。だが、威力は当たればだが、Mk12程度の砲塔ならば沈黙させられるほどの破壊力を見せる。歓声が上がるものの、離脱するサーニャの疲労が高い事に誰もが気づく。

「さ、サーニャ!大丈夫か!?」

「大丈夫よ……だけど、みんな気をつけて。あの巡洋艦の対空砲は命中率が今までよりも、グンと上がってるわ」

「VT信管か……!あれを実用化してたのか……」

「ああ。あれじゃ迂闊に近づけねーよ…!」

「あれを使われると、破片の防御も気を使わないとなぁ。参った」

その存在を知るマルセイユ、シャーリー、ハルトマンの顔色が一気に青ざめる。敵機が弾丸の15m以内を通るだけで爆発するVT信管は、当時の最新兵器であり、日本軍をして『通常攻撃を成功させられる事は奇跡に属する』と言わしめた逸話を持つからだ。無論、近接信管そのものはフリーガーハマーの弾頭にも使われているが、艦艇用砲弾に搭載されるほどの大量生産ラインは構築されておらず、扶桑が大急ぎで造っている(ミッドチルダ動乱で初使用)最中でしかない。それを先んじられては、ブリタリアやロマーニャの旧型機などは鎧袖一触で蹴散らされるのがオチであると悟ったのだ。

『司令部へ。こちらハンナ・マルセイユ!緊急報告!敵は近接信管を使用している!繰り返す!敵は近接信管を使用している!!』

マルセイユが緊急報告を艦隊司令部へ打電する。VT信管が如何に戦局に暗い影を落とすかが分かる一コマである。これを受けた艦隊司令部は旧式機主体の発艦を取りやめ、急遽、一部新鋭超大型空母に配備されていたジェット攻撃機『バッカニア』、『シミター』攻撃機の使用を決意。ここで遂に史上初のジェット攻撃機による攻撃が決断されたのだ。扶桑が用意した龍鶴型、ブリタリアが同じく、地球連邦より購入した超大型空母『オーディシャス』級では、同二機種のジェットエンジンの暖機運転による轟音が響き渡る。第一世代空対艦ミサイルを抱えた(両機種とも、翼下バイロンを強化した設計に改良されたため。バッカニアについては、この世界では小型核兵器が無いので、元設計の爆弾倉が廃止されている。)この両機種の配備は元設計の都合上、ブリタリアが優先購入権を主張し、認められた。扶桑はA-4を購入した都合上、より大型のバッカニアを購入はしたが、シミターは用途が被るために購入していない。両機種の護衛はF8Uとシービクセンである(シービクセンは、ブリタリアが見栄の問題で初期のシーホークなどをぶっ飛ばして購入したもの。計画を主導したチャーチルは1960年代の軍備削減で空母が全廃され、純然たる国産艦上機の歴史が途絶えたことに激怒しており、以後のブリタリアにはチャーチルの意志が反映され、史実と正反対に戦艦・空母戦力の維持に全力を尽くす事になる)。両機種の普及はこの時期から始まっており、この作戦にはF8Uが50機、シービクセンは35機が参加していた。ブリタリア連邦は、しばしの間、シービクセンを改善しつつ、さらなる後継のシーライトニングの開発まで使用することになる。この両戦闘機は、ブリタリアと扶桑のジェット時代到来のシンボルとしてプロパガンダされ、共同製作宣伝映画『音速戦闘機隊』(1947年公開)では、従軍撮影班により撮影されていた今次作戦の映像が多用され、人気を博したという。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.