外伝その70
――グレートマジンガーとG-Xの激闘は続く。これはウィッチ達の多くを唖然とさせた。通常兵器を見下していた者が多かったからだ。特に急遽、欧州各地から緊急で集められ、参陣した者達に見られた。彼女らの認識を無に帰すほど、高機動戦闘を二機はしていた。
『バックスピンキック!!』
グレートはマッハ3の高速からのバックスピンキックをかます。足を振り回す速さが高速なので、空気が震える。それをG-Xは華麗に躱す。それは艦隊の上空で繰り広げられている。
「あれがグレートマジンガー……」
ミーナは初めて、グレートマジンガーの勇姿を目の当たりにした。平均的なMSを上回る25mの巨体が唸りを上げて、回し蹴りをする光景は、彼女を唖然とさせた。だが、よく見れ見ると、装甲は傷だらけで、ひび割れがあちらこちらにあった。そして、マジンガーブレードの一本がG-Xの蹴りで折られ、折られた刀身が宙に舞った。
「ああっ!?」
グレートのそんな姿に青ざめた者がいた。ハルトマンだ。補給を済ませ、空母の甲板上にいたが、グレートが次第にボロボロになっていく光景に青ざめる。
「テツヤ!?」
ハルトマンの悲鳴が上がる。ここまで青ざめた表情のハルトマンを、ミーナは見た事がなかった。そして、二機の高度が下がり、艦隊のすぐ近くで死闘は続けられる。
『ぐあっ!』
G-Xの追加武装である、ミサイルポッドのミサイルの雨がグレートの胸部装甲の一部に集中され、その被弾により、ひび割れていた箇所の最終装甲版が剥がれ、内部構造が顕になる。その際に回路破損のショックがコックピットにも及び、コンツールの一部が火を噴く。
(ブレストバーンの冷凍回路がイカれたか!ネーブルミサイルも発射装置が不調、パンチ、通常のブレストバーンとキックは無事だが、ブレードはあと一本……どうするか)
鉄也はG-Xの猛攻を凌ぐが、G-Xのポテンシャルの前に苦戦、武装の多くを封じられつつある。
『グレートタイフーン!』
グレートタイフーンを放ち、距離を取る。そして、予備のブレードを取り出す。
『このグレートにここまでの手傷を負わせるとは……!やるな!』
『ふふふ。伊達にガンダムを名乗っていないないというだ、剣鉄也よ。さて、こちらも切らせてもらおう。ジョーカーをな』
『……ガッハ…ッ!ジョーカーだと?』
その瞬間、内部の伝達系の一部が破損したか、血のように、潤滑油をスリットから吐き出すグレート。同時に操縦者の鉄也も吐血する。怪我した状態で高機動戦闘をやらかしたため、体が悲鳴をあげたのだ。
『そうだ。この、龍殺しの剣『アスカロン』でな!!』
『アスカロンだと!?』
G-Xが鞘から引き抜いた大剣。巨体が小さく見える程の刀身を持つその剣。本来は旧ジオン軍で、ドム・グロウスバイル用のオプション兵器として造られた大型ヒートソードである。ドム系のそれと違い、グフ系が用いたのと似た西洋剣タイプだが、形はグレートソードとも、単なるロングソードとも取れる太さであった。鍔には宝石の如く輝くエネルギーインジケータがついていて、それが眩いばかりに光り輝く。
『行くぞ!!』
G-Xはアスカロンを振るう。発熱させなくとも、その質量だけでグレートに傷をつけるには十分な威力があり、グレートは腹部側面からアスカロンを食らわせられ、吹き飛ばされる。鉄也は空母にぶつかる寸前で態勢を立て直すも、アスカロンによる猛攻は続く。
「ミーナ、アスカロンって……?」
「伝説で、聖ジョージ、ラテン語でいうゲオルギウス……が竜退治に使ったとされる剣よ。どうやら、未来人もその伝説に肖ったらしいわね」
ミーナはハルトマンからの通信に答えるが、二機の激闘の前には自分達は無力に等しい。それがたまらず拳を握りしめるミーナだった。
『終わりだ!』
チャンスと見、アスカロンを渾身の力で打ち込むG-V、ブレードで受けるグレート、その瞬間、脱落するひび割れたV字型放熱板。
「これで終わりだ!」
だが、脱落したと思われた放熱板は鉄也自ら切り離していたもので、左手で受けとめる。
「何!?」
『うおおおおおっ!』
鍔迫り合い中のG-Vの背中にブーメランブレードとして叩き込んだ。ブーメラン故のリーチの長さが活きたのだ。バックパックを一部破壊し、機動力を奪う。
『ふん。たかがバックパックをやったところで!アスカロン、完全起動!』
アスカロンが完全起動し、超高熱を発する。すると、マジンガーブレードの刀身が溶け始める。
『仮説とはいえ、バイオセンサーを機体に積んだ甲斐があったよ。これで終わりだ!魔神よ!!』
G-Xの機体から、彼の執念が形となったオーラが発しられる。そして、アスカロンの出力が飛躍的に増幅され、ブレードの刀身を溶かす形で吹き飛ばし、グレートを空母の甲板に叩きつける。すぐには動けないほどのダメージを追ったか、グレートは倒れ伏したままだ。
「やめてぇ―――っ!」
ハルトマンは思わず悲鳴を上げ、そのまま甲板を走り、グレートの元へ走り寄る。必死に。これが、ハルトマンが初めて見せた、鉄也への感情の発露とも言えた。G-Xはアスカロンを突き立てようとするが、そこでグレートに救世主が現れる。グレートブースターUだ。
『聞こえるか、鉄也くん!グレートブースターUを射出した!なんとかドッキングするんだ!』
『しかし、この状況では……!』
「あたしが時間を稼ぐよ。一分は稼げるはずだよ」
『……30秒もあれば十分さ』
「よぉし!決まったね」
はにかむハルトマン。微笑む鉄也。腹は決まったようだ。
『シュトゥルム!!』
ハルトマンは一世一代の大舞台とばかりに、それを使用した。だが、今回は秘めた思いが、ハルトマンの力を芳佳やなのはの水準に高めたらしく、通常時は自分の周囲に薄い風をまとわせ、敵の攻撃を逸らしたり、特殊な飛行を容易にしたりする『シュトゥルム』を、大気を乱すほどの暴風に変えた。これは奇跡と言ってよかった。
『うおっ!』
G-Xはバランスを保つだけで精一杯なほどに押さえつけられる。ミーナは、ハルトマンが死をも覚悟した表情で魔法を使っている事を悟り、悲鳴を上げる。
『やめて、エーリカ!!このままそれを続ければ、貴方の体が、命が!!』
シュトゥルムの暴風は諸刃の剣のように、発動させているハルトマンの体をも傷つけていく。軍服は風で破れていき、顔にも鎌鼬に斬られたかのように傷ができる。ハルトマンはこの時、ミーナがクルトを守りたい気持ちを理解し、こう応えた。
『分かったよ、ミーナ。あの時、なんでクルトの元に行きたがった理由を!……私に『戦うことの意味』を教えてくれた人のためなら、命だって惜しくない!!』
「エーリカぁああああ!!」
と。ミーナの悲鳴を他所に、ハルトマンがここまで熱い想いを見せた事はこれまでなかった。だが、都合のいい事ばかりではない。ハルトマンの元々の魔力量と体力の関係で、その状態は20秒しか維持できなかった。糸の切れた操り人形のように倒れ伏すハルトマン。全ての魔力と気力を使い果たし、甲板に倒れ伏す。だが、それで十分だった。
『よく頑張ったな。後は任せろ!』
グレートブースターUとドッキングしたグレートが仁王立ちしていた。そして、その瞬間にグレートの装甲がまるで、さなぎが成虫になる時の殻のように弾け飛ぶ。通報を受け、急いで駆けつけた智子は、その様子に思わずこう言った。
「ぐ、グレートマジンガーが……『キャストオフ』ぅ!?」
智子はその光景に覚えがあった。それはRXらとは違う平行世界にいる『アナザーライダー』、俗に言う『平成ライダー』の内の一人、『仮面ライダーカブト』が重装甲のマスクドフォームからライダーフォームになる時。それが頭に浮かんだのだ。
――新生グレートマジンガーの最後の切り札。それはマジンパワーの開放で新たな装甲を形成し、損傷をチャラにするという、俗に言う『キャストオフ』だった。この際に損傷した回路はブースターUのナノマテリアルで修復される。黒を基調としたカラーリングだったグレートだが、キャストオフ後は青みがかったカラーリングの外装となり、印象をガラッと変えた。キャノピーも金属系の物質へ変化している。
『ブースターソード!!』
グレートブースターUに格納されている大剣を振りかぶるかのようなモーションで取り出し、構える。
『さあ、反撃の狼煙をあげるとするか!!』
グレートが反撃を開始する。そして、発しられた光子力エネルギーに引き寄せられたか、怪異が現れる。
「穴拭大尉、怪異が接近中よ!」
「分かってます。二機の対決に無粋な乱入はさせるつもりはありませんよ。エーリカが命をかけたのなら、私も『本気』を見せないと」
「本気?」
「ハァアアアアア……アアアッ!」
智子は、どこぞのバトル漫画の要領で自身の魔力と気を高める。ストライカーはこの時に破裂する。今や新たな固有魔法技能となったそれを発動させたのだ。気のオーラは魔力のそれと融合し、炎となり、青白い輝きを発しつつ、智子を包み込む。そして――。
「銀の瞳と……青い炎……?」
炎のオーラを纏い、青髪と銀の瞳を持つ、凛とした姿へ『変身』する。これは智子が『リウィッチ』となった後に得た技能。ミーナの前で披露したのはこの時が初めてだった。怒りなどで感情が昂ぶった状態でなると、炎の色が赤くなり、純粋な炎髪と金の瞳の姿となり、青のオーラを纏う時より理性が薄れ、攻撃性が高まるという弱点がある(佐々木勇子との対面の時がそれである)。智子が味方側に自ら披露する意思を持って変身したのは、この時が最初だった。そして、首にぶら下げたペンダントから光が発しられ、それが剣として具現化する。同時に、グレートのスクランブルダッシュを思わせる形状の炎の翼も出現する。
「さあ、行くわよ!!」
(……まさか、扶桑海事変のカールスラント側の記録映像に写っていた、扶桑側の青い髪の士官は……穴拭大尉!?)
ここで、ミーナの頭の中で全てが繋がった。改変後の扶桑海事変のカールスラント側から見た映像を、ミーナは若き日の教育期間中に見ていたのだ。智子が扶桑海事変の際に目撃された『青髪の士官』と同一人物であると分かり、驚愕のあまりに呆然としてしまう。
『穴拭先輩!』
『那佳?どうしたの?』
『今、無線で事情を話して、旧506のみんなを呼び寄せました!ハインリーケ少佐が一番最初に着きました〜!』
『でかしたわ!迎えは任せる!』
『了解!』
黒田はこの時、発信する電波が最も強い、連邦軍の情報収集艦に立ち寄り、その装備で連合軍司令部に連絡を取ったのだ。応対したのは山本五十六であり、五十六は源田実に下令し、ある策略を実行した。それは……。
――連合軍司令部
「ハインリーケさん?私よ。今、軍司令部より要請が下ったわ。旧506統合戦闘航空団はA部隊、B部隊を問わず、501統合戦闘航空団の支援に向かわれたし。……以上よ」
「黒田中尉が今おる部隊じゃな?分かった、すぐに仕度する!妾が向かうまで持たせろと伝えてくれ!」
と、通信が切れる。元・506統合戦闘航空団戦闘隊長の『ハインリーケ・P・Z・ザイン・ウィトゲンシュタイン』少佐と話していたのは、彼女の元上官であり、旧506統合戦闘航空団の名誉隊長のロザリー・ド・エムリコート・ド・グリュンネ少佐ではなかった。彼女とよく似た声を持つ艦娘の翔鶴型航空母艦一番艦『翔鶴』が無線でハインリーケに話をしたのだ。勿論、これは退役寸前のロザリーの知るところではなく、山本五十六と源田実の『騙してでも、状況に巻き込む』策略である。
「いいんですか、提督」
「アカデミー賞ものだぞ、翔鶴。今の状況では、どうせ現地部隊はウィッチを出し惜しみするだけだ。あるのに使わないのはもったいないしな」
「ロザリー少佐が聞いたら、腰抜かしますよ?」
「オッズが傾いたときこそ、ぶっ込み時だからな」
「ん、もう〜」
翔鶴はロザリーと喋りかたもよく似ていたため、山本は翔鶴を巻き込み、旧506隊員を欧州最前線に向かわせた。
「さあ、次はB部隊のジーナ・プレディ中佐だ」
と、山本の指示に従い、翔鶴はロザリーを演じ、506隊員を順次、戦線に向かわせた。黒田へは源田からその旨が伝えられた。
「いいんですか、親父さん。思い切り嘘ついて」
「山本大臣のご判断だ。上手く口裏を合わせろ。ロザリー少佐には事後に事情を説明しておく。それに発信元が地球連邦軍の艦艇からだからウチの責任にはならん」
「わかりました。だけど、なんとなく、バツが悪いなぁ」
「お前の実家にあんみつとがねを一年分贈ろう。それと、お前の来月の給料を増やしてやる。これでどうだ」
「分かりました!頑張ります!!」
と、お菓子と金ですぐ落ちる黒田。源田は黒田の守銭奴で甘党な性格に安堵した。こうして、山本の策略で506統合戦闘航空団は事実上の再結成を果たすのだった。
――智子は、変身した姿をミーナに見せ、大暴れだった。カイザーブレードで怪異を膾切りにするわ、イナズマキックで打ち抜くわのやりたい放題である。
「あれが穴拭大尉の……本気なの?ユニットも箒も必要としないなんて、まるでフェイトさんみたいだわ」
と、感想を述べる。智子の『無双』ぶりは、映像の真実性を頷けるのに十分だからだ。
「今の私は、あの子と似たようなもんですよ。あの子は『雷』、私は『炎』で、属性は違いますが。さあ、ジャンジャン行くわよ!!」
もう一つの固有魔法となった『加速』を使う。その際のルーティンは、平行時空の仮面ライダーの一人『仮面ライダー555=乾巧』がアクセルフォームを使用して、攻撃をかける際のアイドリング動作と同様の同様の動きである。そこから加速し、攻撃をかけるので、見る人が見れば分かる。加速で動きが早くなったため、怪異は瞬く間に蹴散らされる。そして、『魔力のちょっとした応用』で、最後の怪異を拘束し、その魔力を乗せる形で飛び蹴りを食らわせる。
「と、まぁ。こんなものね」
この一連の動作が、智子の最近のお気入りの決めの攻撃方法なのだが、『アクセルフォーム』と『クリムゾンスマッシュ』そのままであるので、黒江には、腹が捩れるほど大笑いされていたりする。
「………あなたが何故、扶桑海で勇名を馳せたが、分かりました。ウィッチ個人単位で最強クラスの力を持っていたんですね……」
ミーナはここに至り、智子とのウィッチとしての実力差を痛感した。三次元空間把握能力は有用だが、部隊単位で力を発揮するもので、智子のように、単騎での戦術単位で無敵を誇るまでではない。坂本の存在で、扶桑ウィッチにある種の達観と言おうか、諦感を抱いていた彼女だが、智子の大暴れぶりで、それは悟りの領域となってしまった。青髪を炎と共になびかせ、佇む智子。それはミーナに、坂本がかつて言っていた事と、ガランドが『あの三人は貴官の味方だ』と告げていた意味を思い知らせる事であり、ハルトマンの鉄也への想いと併せて、心の整理がつかないミーナだった。
――カールスラント内で『扶桑の青い髪の騎士』(得物が西洋剣であるカイザーブレードであったため)と噂があった士官が智子であったのが知れ渡る事になったため、戦場に駆けつけた『ハインリーケ・P・Z・ザイン・ウィトゲンシュタイン』少佐は、思わず膨れる。
「黒田中尉、何なのじゃ!!あれは!」
「私の先輩の『穴拭智子』大尉ですよ、ハインリーケさん。先輩の固有魔法なんで、突っ込まないほうが」
「どこの世界に、容姿があそこまで変わる覚醒系の魔法があるのじゃ!?信じられんわ!」
と、膨れるハインリーケ。彼女は人類最強クラスのナイトウィッチであったが、ここ数年はM粒子の効果で探知魔法に悪影響が生じた事、使用機材の陳腐化も重なり、スコアは伸びていない。
「まぁまぁ。コンビ組むの久しぶりだし、暴れてやりましょうよ」
「う、うむ。ここのところはジェット機に追い回されるわ、ミサイルでヒヤヒヤさせられるわ、いいところなしだったのじゃ。久しぶりに暴れてくれるわ」
ハインリーケは息巻いていた。使用機材の陳腐化もあり、最近はいいところなしな上、506の事実上の解散以降は持て余されている感があったため、今回は最新鋭の機材と最新鋭の装備を以て出撃していった。
――亡命リベリオンに合流した元506統合戦闘航空団・B部隊隊長のジーナ・プレディ中佐は、リベリオン人の性か、戦場で活躍する日本のヒーローである仮面ライダーらをライバル視するという、歳相応の側面を見せた。この時代のリベリオンコミックスは『キャプテン・リベリオン』、『スー○―マン』で、まだ『ス○イダーマン』はない。
「ぬぬぬ……扶桑人め。ヒーローは元々、我が国が最初に生み出したものなんだぞ!クソ、なんで向こうのアメリカにはヒーローいないんだ!?」
と、普段は冷静に振る舞うジーナも、殊更、スーパーヒーローについてはうるさいらしく、膨れている。意外な一面だ。実はバトルフィーバーJに『ミスアメリカ』がいるが、彼女はそれを知らなかった。
「珍し〜、隊長が膨れるなんて」
「お前らだって、コミックスを……その、よ、読んだ事あるだろ?だったら、ヒーローに憧れた事あるだろ?」
カーラ・J・ルクシックの指摘に、恥ずかしそうなジーナ。未来の扶桑(日本)には、代々、スーパーヒーローがいて、地球を守ってきた事を知らされ、幼い頃にリベリオンコミックスのヒーローに憧れた時分としては、嬉しくもあるが、複雑であった。
「私もヒーローに憧れたクチっすから。でも、扶桑にだけいるってのはおかしーすよ!」
そう。扶桑(日本)初のヒーローが全世界で活躍している事は、スーパーヒーローの国を自認するリベリオン人には我慢ならないのだ。
「ジェニファー……元気でやってるかな……」
カーラは元・同僚のジェニファー・J・デ・ブランクの事が気がかりだった。彼女はガリア諜報部強硬派の陰謀に手を貸す形になってしまい、その内に良心の呵責に耐え切れなくなり、黒田の元に戻ろうとしたが、邪魔者となった彼女を始末しようとしたガリア諜報部強硬派の凶弾に倒れた。黒田を庇ったのだ。黒田はパニックに陥ると同時に、慟哭した。黒田の嗚咽混じりの声。黒田に向けられた機関銃の銃身。カーラの呼びかけにも応じられないほどに呆然自失となった彼女を救ったのは、ロボライダーだった。
『俺は炎の王子!!RX・ロボライダー!!』
その後はロボライダーの大活躍があったのは言うまでもない。黒田は事が終わった後、光太郎にすがりついて大泣きし、光太郎とカーラが慰めた。ジェニファーは軍法会議にかけられ、懲役10年の刑に処された。本来なら銃殺刑ものだが、完全には裏切らなかった事、良心の呵責に耐え切れなかった事を被告である当人が涙ながらに告白し、弁護側証人である黒田、それと光太郎の弁護もあり、死刑を免れた。彼女はその直後、軍籍は亡命リベリオンに移されたので、亡命リベリオン軍人と扱われ、ほぼ10年後にカールスラント開放の恩赦で釈放されたという。
「あいつは……私たちにコンプレックスを持っていた。それがあんな事に繋がってしまったんだろう。…私は自分が情けない」
ジーナは、ジェニファーの一件を引きずっていた。カーラも、マリアン・E・カールもだ。
「隊長……」
「行くぞ。あいつが命をかけて守ったモノのためにも、この戦い、負けられん」
「了解!」
マリアンは親交があった竹井の援護に向かったので、この場にはいない。だが、想いは同じ。ジェニファーのためにも、旧506最後の戦になるやもしれぬ、この戦いを勝利で飾り、獄中のジェニファーに報告するために。
――501、旧502、504、506。4つの統合戦闘航空団のウィッチが戦場に集結する。三羽烏、ビューリングを入れれば、人類最強クラスの過半数が一箇所に集められた事になる。だが、戦いは激しさを増す。4つの統合戦闘航空団のウィッチ達を以ても対抗しきれない事態に備え、スーパーバルカンベースは、アフリカで戦っている二大宇宙刑事に連絡を取り、なおかつ、後方支援に回っていた四大スーパー戦隊に前線進出を指令する。超次元戦斗母艦の勇姿は彼女らの福音となるのだろうか――
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m