外伝その80『巨人達の決戦兵器』


――ティターンズもスーパーロボットの存在を知らないわけでもなく、ジオン軍の巨大MAに影響を受けた(一年戦争中のグロムリンなどのペーパープランなど)兵器でグリプス戦役の打開を目論んでいた。その影響を受けて、ティターンズが構想していたのが、『ガンダムTR-6』の決戦仕様『ガンダム・インレ』である。当初の主力機統一計画から逸脱した大型で大艦巨砲主義然としたプランの本機は、ティターンズにとっての『決戦兵器』と言えたが、当時のティターンズにそれを完成させられる余力はもはや無かった。が、流出したデータからネオ・ジオンが建造に成功し、それをティターンズ残党へ提供。それがティターンズの隠し玉であった。

――ティターンズ残党が転移時から持つ資源衛星――

「閣下のご指令だ。こいつの降下準備を進めろ。グレートマジンガーもゲッターロボGも、グレンダイザーもこいつであれば倒せる。急げ!」

「ハッ!」

ティターンズ残党の決戦兵器「インレ」は、MSであったモノとは思えないほどのバケモノである。その力はサイコガンダムmk-Uをも遥かに凌ぎ、マジンガーZをも破壊可能と目されていた。ネオ・ジオンによるブラッシュアップもあり、後継機のグレートマジンガーであろうとも倒せるというのは、あながち嘘ではない。大気圏内でも運用可能な機動兵器という観点で言えば、グリプス戦役当時では『最強』と言える。ジオンのモビルアーマー群を薙ぎ倒したガンダム伝説の信仰者の連邦の系譜に属していたはずのティターンズが、大型決戦兵器にすがる『ジオン的発想』に辿りついたのは、運命の皮肉であろう。

「協力者からバーザムも大量に入った。これで、我らはまだまだ戦える」

ティターンズ残党は二年間の正規軍との戦いで、固有の機動兵器を消耗していた。ハイザックとマラサイが特に消耗が激しく、この時点の残存数は当初の半数以下であった。ジェガンやジャベリンと言った、『第二世代RGMシリーズ』との性能差が響いたのだ。そこで、ティターンズ残党は23世紀地球圏に潜むシンパらに機体補充を依頼し、そこで選定されたのが、『バージム』への改装を控えていたが、予算の都合で大量に保管されたままのバーザムであった。バーザムは元々、ティターンズ次期主力機を予定されていた機種であり、奇抜な外見とは裏腹の『mk-U由来の素直さ』から、意外に多くが使われ、残存数も多い。戦後直後まで工廠で生産されていたりして、保管されていたりした個体群が彼らに渡ったのだ。

「バーザムがまだ保管されていたとは」

「エゥーゴ共の機種は生産性に難があるZ系やリックディアス系が主体だ。ネモにしても、実質はジム系じゃない。次世代のジェガンやジムVの生産ライン立ち上げに時間がかかっていたから、廃棄してなかったんだろう。それに、宇宙人共の攻撃で、兵器の破棄という考えに否定的な世論が生まれたから、取り扱いに困っていたって聞いている」

――ガトランティスの本土爆撃以後の地球圏の人々は『兵器の破棄』という選択を忌み嫌うようになり、廃棄予定の多くの旧型兵器が宙に浮いた状態に置かれていた。ピースクラスト政権当時、旧OZ系の兵器は殆ど廃棄されていたが、旧ティターンズ系は軍存続が決議され、政権交代の時期にバッティングした事もあり、少なくない数の機体が本土決戦に駆り出されている。それを経ても、ティターンズ系を好む部隊(グリプス当時にティターンズ寄りだった地域など)が使用を望むケースもあり、ティターンズ系兵器は意外と多くが残された。旧エゥーゴが主体の現政権はジェガン以降の機種で代替をするつもりであったが、度重なる戦乱と、アナハイム・エレクトロニクスがジェガン後継機開発に数回も失敗する体たらくであった事、ジャベリンやジェイブスもジェガン比で高コストであったのが響いていた。そのため、ジェガンの個体数は再生機含めると、23世紀初頭当時の連邦宇宙軍の保有MS数の過半数になる。戦乱で多くが失われてもこの数であるので、短期間で膨大な数が生産されたかが分かる。なので、ジェガンベースの特務型が作られたり、改装による後継機が考案されるのだ。(後継機はフリーダムという形で結実した)


「奴さんはなんで、ジェガンをアホみたいに作りまくったんだ?」

「本土決戦兵器という名目で大量に作ったんだと。当時の正規軍にはジム・コマンドやジム改すら大量に残っていたから、それも代替しうる制式機を欲しがったんだと思うぜ」

ティターンズ兵たちの言う通り、旧エゥーゴが連邦軍に取り込まれた時、エゥーゴの新鋭機は高コスト機が多く、連邦軍全体に行き渡らせるには金食い虫でありすぎた。一年戦争時の機種も大量に残っていた正規軍(最新機材はティターンズに持って行かれていたので)は、ジムU以前の全ジム系とハイザックを代替する機種として、mk-Uの純然たる量産機という触れ込みで『ジェダ』を作っていた。しかし、ジェダは折しも軍縮の時勢に完成したこともあり、プロジェクトが中止されてしまい、ガトランティスの脅威に対抗せざるを得なくなった時に、各部をコストダウンし、数を揃える簡易量産機という名目で完成したのが、ジェガンだ。第二次ネオ・ジオン戦争を皮切りに、ガトランティスとの本土決戦からは全軍の主力機として運用され、そこから装甲強化などのマイナーチェンジが重ねられたのが、現時点の最終型だ。生産こそ終わっているが、以前の連邦軍系MSの兵装も使用可能という点から、狙撃仕様にした部隊、スタークジェガンの追加ブースターを常用し、高機動仕様にした部隊、ストライカー仕様にした部隊もある。そのせいもあり、小型機規格のジャベリンが好まれず、同じ小型機でも、ビームバズーカが兵装にあるガンブラスターを好む風潮すらある。ジャベリンも使用可能だが、元来の兵装ではない。その発展型のジェイブスはF91の特徴と言えるヴェスバーを取り込んだが、これのせいで高コスト化したのは言うまでもない。ミッションパックがほぼ専用設計であった事もあり、ティターンズ残党も同情するほどに生産されておらず、未だ、ロンド・ベルなどで評価試験中であり、初期作戦能力獲得にも至っていない。

「エゥーゴも苦労してるそうだ。色々と新しい武器は使われたんだが、識別の都合とか、一年戦争以来の古参の提言もあって、後継機へ機種転換が進んでいない。だから、Z系とかが増産されてるそうだぞ」

「奴さんも、量産機が機種転換進まない分を、高級機で補うやり繰りか。大変だなあ」

連邦軍がガンダムタイプを積極運用に切り替えた背景には、ジェガンから機種転換が上手く行かない用兵上の泣き所によるところがある。本来は少数生産で終わるはずの高級機が増産されていくのも、ジェガンの数が多すぎるのが問題になっているためだ。現場ではZ系が好まれ、プルトニウスやプロンプトという新型が登場し、ZZ系のジークフリートが定期的に新造されている。これは週刊誌の記事にもなる周知の事実である。主に宇宙軍の問題であるが、宇宙軍が空挺降下任務も担う都合、ジェガンを使い続けるわけにもいかない。可変機が再生産され始めたものの、既存機には老朽化の問題も生じた。そこでプロンプトが開発され、プルトニウスが自主開発機の名目で完成したのだ。

「エゥーゴだって、俺らとの戦いの時に作った可変機を使うにしたって、科学は日進月歩だから、性能的陳腐化は起こる。それとジェガンとの規格統一の都合も伸し掛かった。だから、メタスとジェガンの間の子みたいなのが造られたんだと思う」

彼らはリゼルを、メタスとジェガンの規格統一的量産機と見込んでいた。彼らは『ZU』を知らないので、アーガマ隊が使用していた『メタス』の利点をジェガンに取り入れた量産機と判断するのは当然の判断だった。そのため、彼らの識別表に記されたリゼルへの分析は『ジェガン+メタス系の可変量産機?』というものである。的確な分析である。鹵獲機を分析しての分析なので、リゼルがZ系の血を引くことまでは分析できなかったのが分かる。(彼らにとってのZ系は、Zのような複雑なウェイブライダーへ変形する機体を指す)

「あれは意外に強敵だと聞くぞ?」

「ズームアンドダイブ戦法をやるからな。マラサイやハイザックでは対応が困難だし、こちらの可変機はアッシマーやギャプランで、アッシマーでは変形時間が長いし、ギャプランは航続距離がなさすぎる」

ティターンズのTMSは基本的に、Zより前に造られた機種である。ハンブラビやバウンドドックは試作品であるので、本格生産された機種は、正規軍から接収し、増加生産させたアッシマー、独自開発のギャプランに絞られる。ギャプランは、正規軍から未だに恐れられている機種だが、迎撃用なので、如何せん制空戦闘には向かない。アッシマーは大型機で、正確には『TMA』(可変モビルアーマー)であり、性能は申し分ないが、Z系に比して旧式感が否めない。ティターンズがリゼルの存在に悩んでいるのはそのためだ。彼らには安価な可変MSがないからで、VFを急遽、調達すほどの窮状だ。


「インレの調整、終わりました!」

「よし、発進だ!」

ティターンズの決戦兵器『インレ』は、ガンダムタイプを複数抱えた大型モビルアーマーでもある。そのため、グリプス当時の水準での『最強』であり、現時点においても、スーパーロボットを除けば最高水準の力がある。それを発進させ、戦場へ降下させたのだ。ラ號の高性能レーダーがその反応を捉え、あの神宮寺大佐をして驚愕させた。


――ラ號 艦橋――

「艦長、大気圏外の資源衛星より巨大な反応、……信じられません、これはガンダムTR-6【インレ】です!!」

「完成させていたというのか、インレを……!?」

神宮寺大佐をして、そう言わしめたインレは、大気圏に突入し、戦場に降臨する。怪異かと思うほどの『異形』の姿で。

「な、なんじゃあれは!?怪異か!?」

「いえ、怪異の反応はありません……」

「それでは、奴等の兵器だと言うのか!?」

ハインリーケは、空母の甲板上で探知魔法を使用し、確かめたサーニャからの報告に耳を疑う。禍々しさすら感じる風体の機体だが、『人が作った兵器』であるという事が示されたからだ。しかも、100m超えの図体でありながら、あり得ないほどの機敏さを見せつけた。


――轟音と共に、そのモビルアーマーは図体に似合わぬ高機動戦闘を見せ、戸惑う連邦軍・連合軍に痛撃を与える。思わぬバケモノの登場は、ウィッチたちにも当然ながら衝撃を与えた――



――富士 CIC

「なんなの、あのバケモノは!?」

「ガンダムインレ……噂に聞いていたけど、ペーパープランだったはずじゃ?」

「いや、グリプスの時に、一機は完成していたらしいが、良心派が壊したって聞いている。まさか無傷なのが残っていたとは……。エーリカ少佐、各部隊に指令、『生き残る事』を優先させろ!あれを抑えられるのは、スーパーロボットだけだ!!」

「り、了解!」

富士から指示が飛ぶ。その『バケモノ』はビーム兵器に対しては無敵と言える防御力と、大型機とは思えないほどの機敏さを見せ、艦隊を圧倒する。それを空母の甲板から目の当たりにした坂本は、自身の魔力の減衰と枯渇を恨むかのような一言を発する。

「クソ……私に昔年の……『クロウズ』と謳われていた頃の力さえあれば……あのような怪異紛いのバケモノなどは……」

インレがガンダムタイプである事は、コアユニットにそれらしいモノが見えるので、それでようやく認識出来る程度のものだ。坂本は怪異を思わせる異形から、そう毒づいた。科学兵器が、技術発展で、異形の怪異を思わせる姿を取ると言うのは、何とも言えない気持ちにさせる。怪異ではなく、『兵器』である以上、自分達ウィッチには対抗手段が無いに等しい。ウィッチがガンダリウム合金を破壊する手段は、黒江や智子、芳佳のような『刀による一気呵成の両断』しか方法はないが、その三人はソビエツキー・ソユーズ艦上にいる、一人の男との戦闘で手一杯であり、若本と西沢も、空域の維持でてんやわんやである。そのため、その使い手の一人のはずの自分が何もできない現状に歯噛みする。その『バケモノ』に立ち向かっていくグレートマジンガー、ゲッターロボG、グレンダイザーの三大スーパーロボットの姿を見上げ、若返り、11歳当時の姿と精神に戻っている竹井の手を握りながら、悔しそうな表情を見せるのであった。





――グレートマジンガー、ゲッターロボG(ライガーにシャーリーが飛び乗った)、グレンダイザーの三機は、インレを抑えにかかり、必殺技を見舞う――

『サンダーブレーク!!』

『スペースサンダー!!』

『サイクロンビーム!!』

『ゲッターァァビィィィム!!』

三機は一斉に攻撃をかけるが、なんとサイクロンビームはIフィールドで弾かれ、ゲッタービームとサンダーブレーク、スペースサンダーを喰らっても揺らぎもしない事から、物理的耐性も強化されたのが窺える。そのため、三機は『物理的に解体』しようとするが、スペック上は大気圏内での限界速度を極めた三機を以てしても、容易に捕捉できぬほどの速度と機敏さを見せ、甲児、鉄也、デューク(大介)、圭子を唸らせる。

『クソ!奴め、あの図体の割に速いぞ!』

『ティターンズの技術の粋を集めていた兵器なのなら、この程度は当然だ。俺たちがいることを承知で出したのんだからな』

『大介さん、感心してる場合かよ、俺たちで補足できないんなら、他の誰でも抑えらんねーぜ!』

『来るわよ!』

『散開しろ!』

三機は散開し、インレの攻撃を避けるが、インレの火力は艦艇を破壊できるレベルであり、さしもの超合金ニューZとや宇宙合金グレン言えど、無傷ではすまない。最も装甲の薄いWスペイザーの主翼部の一部が溶解し、甲児は驚く。

『なにィ、超合金ニューZを溶かす威力のメガ粒子砲だって!?』

インレの膨大なジェネレーター出力を背景にしたメガ粒子砲の威力は、ダブルスペイザーの装甲厚程度の超合金をも破壊できる事が判明する。

『甲児、セパレーションゴーして分離しろ!もう一撃食らったらお終いだ!』

圭子の警告に、甲児は頷き、ダブルスペイザーをグレンダイザーから分離させる。デュークはすぐにスペイザーとスペイザークロスし、飛行態勢を維持し、甲児はすぐに手近の空母に着艦し、格納庫に置いてあったマシンンパイルダー(アイアンZの操縦機となるバイク)に跨る。

「アイアンZででも行くのか!?自殺行為だぞ!」

「ちっちっち、違うんだな。……ゴッドファルコン!!」

甲児がそう叫ぶと、ワイヤーフレーム状に、ゴッドマジンガーのパイルダーたる『ゴッドファルコン』の形が現れ、実体化する。ゴッドファルコンはマシンパイルダーを操縦機にし、実体化し、そのまま空母から発艦し、お馴染みの『マジーンゴー!』でゴッド本体を召喚し、そのままドッキングする。この時はまだゴッド本体に特別な改修はされておらず、完成時のスペックを維持していたため、便宜上、この際の仕様は後々の実戦仕様と区別するため、『初期仕様』に分類される。まだディバインウイングなどへの改修はされていないので、通常のスクランブルダッシュで飛行する。


――この時のゴッドマジンガーの投入は伏せられ、記録上はマジンカイザーを投入したということにされた。これはゴッドマジンガーへのテロを警戒しての事であった。実際に、コン・バトラーVとボルテスVに対し、テロが起こったため、ゴッドにも同様の事をされるのを警戒したのだ。ゴッドマジンガーの事は言わば、公然の秘密という奴だ。その姿を目撃した者は少なく、目撃した者も、戦いの後にスリーレイブンズと坂本から、孫世代の参戦も含めて、緘口令(元から芳佳は知らないが)が敷かれ、それに従ったため、口外する者はいなかった。ティターンズのガンダムTR-6【インレ】投入のインパクトが大きく、ゴッドを目撃した人数がそれほどでもなく、連邦軍兵や士官らも、ゴッドを『マジンカイザー』と認識したほうが多かったからだ――


――戦場に強大なインパクトをもたらした、ガンダム・インレ。ティターンズ最強最後の超兵器はグレートマジンガーらの追撃を受けながらも、艦隊を圧倒し、ウィッチらを追い散らす。二回目の旋回でのメガ粒子砲の射撃で、ブリタニア空母が3隻ほど射線軸にいたおかげで溶解し、その絶大な力を否応なしに示す。

「なんて威力のビームですの……!?」

ペリーヌは絶句する。空母を3隻まとめて溶解させて破壊する火力など見たこともないからだ。その間にも、ロマーニャウィッチ達が果敢に挑むが、グレートマジンガー達ですら手こずる相手では、無謀としか言いようがない。メガ粒子砲を撃たれ、防御の間なく消滅する。二機のモビルアーマーがさらに結合した機体のビームなど、芳佳でもないと防げない。敵は超音速飛行を航空力学ガン無視な形状なのにやらかし、スーパーロボットの推進力でも容易に捕捉されない機敏さを持つ。100mを超えているのに、だ。

「いったいなんですの、あのバケモノは!?」

『ティターンズが戦争末期に考えてたバケモノさ、ペリーヌ。あいつはテツヤ達に任せたほうがいい。ISでも持ってないと、死ねるからね、あれ』

「何を悠長なことを!今、空母が3隻沈んで、ウィッチ隊が餌食に……」

『それは分かってる!いいか、よく聞けよ、ペリーヌ。戦場にああいうバケモノは出るわ、黒江中佐達がソビエツキー・ソユーズの甲板で光速戦闘やらかしてる以上、あたし達に出来ることは現状維持だ。怪異はともかく、モビルアーマーに対抗する術は、ISでも保有してない限りはないよ』

ハルトマンが、事を真面目に言っているため、事の重大さを悟ったペリーヌは頷く。グレートマジンガー達を相手にしながら、尚も艦隊を翻弄できる力を持つマシーンがこの世にある事を。

「ハルトマン少佐、教えて下さい。あのバケモノはいったい何者なのですの……!?」

『ガンダムTR-6【インレ】。二機のモビルアーマーを合体させて、中に何機ものガンダムを抱えている、ティターンズの正真正銘、最終兵器だよ。あたしも今、教えられたけど、その気になれば、中のガンダムを展開する事も出来るっていう、とんでもない代物らしい。もし、それをやられたらヤバイよ。中のガンダムごと破壊しないと……』

『なっ!?どういう思想を……』

『移動要塞だな。あれだけで普通のガンダムが何体も入るらしいし、小型可変型ガンダムが子機だ。それを使ってないのは、スーパーロボット相手からなのか、それとも……』

『……バケモノですわね』

『氷山空母とか考えてるブリタニアとかも大概だよ。まぁ、あれに比べりゃ、氷山空母なんて可愛いもんだ』

『……』

――ガンダム・インレは正しく、スーパーロボットという存在を省いた、通常兵器の枠で言えば、充分なバケモノである。ペリーヌからすれば、ウォーロックのような『超兵器』に頼るよりも、兵に行き渡らせる兵器の質を上げる事が重要であるので、連邦軍の持つガンダム信仰やスーパーロボット信仰へ冷ややかである。『一点物のワンオフモデルに金をかけるよりも、強くて安価な兵器を作るべき』。これはペリーヌの持論となり、後のインドシナ戦争で扶桑の影響下のインドシナ防衛隊(後のベトナム軍)に大敗した後のガリア三軍の軍備整備の際に、こう提言する。インレやスーパーロボットという、贅を尽くした超兵器を目の当たりにした彼女だが、彼女は軍全体での質を重視したため、戦後のガリアでは、しばし異端扱いを受けることになる。連邦軍の超兵器が戦局を変える様を目にしたペリーヌだが、あくまでパイロットの素養に左右される『超兵器』へ疑念を抱くようになる。50年代に、パイロットが一級でなければ、その真価を発揮できない兵器など『レーシングカーも同然』という提言を出す彼女だが、量産品の質の向上には熱心であり、50年代以後のガリア主力機『ミラージュ』シリーズの成熟に関わる事となるが、それはいささか未来の話――。



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