外伝その101『ユア・アイズ・オンリー3』


――ウィッチ世界は対マジンガーZERO作戦に主眼を起きつつ、黒江達のメタ情報をもとに、軍備の近代化と体制の立憲君主制への改革を急いだ。その筆頭たる扶桑は、軍のシビリアンコントロールの明確化と、憲法そのものの改正を取り急いだ。具体的には、旧式化した兵器を日本へ売却し、その資金で新兵器導入の資金とするなどの努力を行い、クーデターを予測し、ウィッチ界の重鎮に動いてもらうなどの防止策も行われた。江藤敏子は伏見宮と赤松が説得した。(赤松の物理的も含む)その時に江藤に赤松が忠告した内容はこちら。

「江藤、ボウズ達のスコアを本来のモノにしてやれ。ボウズ達もいい歳になった。お前とて、もう四捨五入で三十路だろう?」

「大先輩、たしかにそうですが……」

「『前史』では、伝説と乖離した『公式スコア』のおかげで、ガキ共と軋轢が生じ、あいつらとガキ共との間に対立を産んだ。今時は200機撃墜の輩が出てきているからな。あの頃とは時代は変わった。あいつらの年長だった加東は、もうじき26だ。あいつらの伝説の威光も薄れている。そろそろだと思うぞ」

「何故、今なのですか?」

「事変から年月が経ち、あいつらを直接知らん世代のガキ共が実働戦力の大半を占めるようになった。今だからこそなのだ。あいつらには、北郷の事で恩義があるだろう?」

「し、しかし、大先輩。軍の威信が……。あの戦いを左右したのが個人などと知れたら」

「未確定戦果の確定、公認としておけば、あいつらにまつわる噂と、公認スコアの解離の理由になるだろう?それにお前は復帰から間もないから知らんだろうが、ウィッチ万能論の拠り所はボウズ達なんだぞ?」

「なっ!?」

「考えてみろ。最終決戦で見せた数々の闘技、個人で一騎当千を体現した活躍。あれを目の当たりにしたら、ウィッチを万能と信じ込む者は大勢出る。実際はウィッチ由来のものでなくとも、だ」

「あれの出処を知っておいでなのですか!?」

「後で知ったがな。オリンポスの神々を知っているか?それらを守る使命を帯びた闘士の闘技なのだよ、あれらは」

「オリンポス十二神が実在していると言うのですか!?」

「そうだ。儂も今では、オリンポスの神々に忠誠を誓っておる」

赤松は明言した。黒江達の力の出処はオリンポスの神々に由来すると。そして、それらに自らも忠誠を誓ったと。次の瞬間、江藤に披露した。自らが孔雀星座を守護星座に頂く闘士である事を。

『孔雀座、パーヴォの貞子!』

孔雀星座は、代々の女性聖闘士で最強の座にあった者が纏うものとされてきた(黒江らが黄金に叙任された事で打ち破られたが)聖衣。聖戦の折に前任者が戦死したため、空位となっていたのを、黒江らを除いた者らで最強の実力を持つ赤松が、黒江と智子の推薦で叙任された経緯がある。元々、素の状態で『扶桑で右に出る者はいない』と謳われた程の実力であった赤松が聖闘士になったので、その実力は黄金聖闘士に匹敵する。赤松が叙任されたのは白銀聖闘士だが、階級的に中ほどである事、星矢たちが彼らを尽く倒した経緯から、雑魚と見られがちだが、特に実力が高い者であれば、黄金聖闘士に匹敵する実力を備える。赤松もその一人である。

「と、いうわけだ。これがボウズの力の出処であり、私が新たに得た力だ」

「では、あの時、既に……」

「ボウズは加護を受けておったという事だ。あの戦いにはアテナとゼウスの親子が介入しておったのだよ」

「オリンポス十二神に忠誠を誓ってまで、貴方方は何をしたいのです!?大先輩!」

「それはボウズに聞け。あのボウズが引っ張っているのだ、我ら……『転生者』をな」

「黒江……。あいつは何をしようとしているのです!?」

「第一は、この先に現れるであろう破壊神を倒し、こことは違う道を辿った自分自身の仇討ち。第二は、『戦を嫌う戦女神だから、忠誠を誓い、平和に暮らす民草のために戦う決意を持つ者』、それが我ら『聖闘士』の使命だ」

「後者は分かりましたが、前者は……?」

「お前、パラレルワールドというのを知っているな?ある世界で機械仕掛けの神が生み出された。だが、創造主の意志を歪んだ解釈で受け取ったそれは、邪神に堕ちた。その暴走した機械仕掛けの神に、我らの全員、いや、世界そのものが滅ぼされた」

マジンガーZEROの正確に故郷と言える世界がどこであるか。おおよそは判明している。ある世界で、マッドサイエンティストから孫思いの老化学者へと変貌し、家族愛に目覚めた十蔵が、愛する孫の甲児を如何な敵からも守れる魔神『真マジンガー』として構想していたものが発祥であった。そのアイデアを受信し。歪んだ解釈で具現化させた『別の兜十蔵』が完成させたのが、ZEROの最初の個体である。ZEROは当初、『超強力なマジンガーZ』の範疇を出ない機体だったが、平行世界を渡る能力を手に入れ、後継機種のグレートマジンガーやマジンカイザーがZを上回る英雄扱いされるのに憤激し、グレートを、カイザーも超える力を欲した。やがて、因果律兵器の力がそれを可能とした。だが、カウンターはZEROにも存在する。グレートマジンガーの系譜はその象徴であった。ZEROはZを超える者の象徴たる『雷光』を恐れる思考を持つ。これには理由があり、顕現したてホヤホヤの頃、ZEROが使えないZ神の権能である雷光を操り、Zを超えると自称したグレートに叩きのめされ、敗北した記憶があるからだった。やがて、グレートマジンガーを凌駕し、マジンカイザーをも倒せる領域の『邪神』と化したZEROだが、マジンカイザーをも超え、Z神の依代になれる力を持つ魔神『ゴッドマジンガー』、カイザーをも超える帝王『マジンエンペラーG』には勝てない。Z神の依代になれる力を持つ魔神には『ZEROも及ばない』。ZEROはゴッドマジンガーに対抗せんと、いくつもの平行世界を滅ぼし、経験を積んだ。その過程で倒してきたのが、平行世界の自分たちウィッチであると、赤松は言った。

「平行世界の私達が、その機械仕掛け神に世界ごと滅ぼされたと!?」

「そうだ。黒江はその光景を幻視している。絶望の光景をな。だから、聖闘士になることで、その因果を断ち切ったのだ」

「因果を操れるほどの力を、そいつは……」

「そうだ。だが、完全ではない。それに対抗できるカウンターのスーパーロボットがおるのでな。今、若いのがかかってるシェルショックはゼウスのあにさんが気を利かせたつもりで、滅ぼされた世界のボウズ共の記憶の一部を見せたせいらしい、済まんとは言っていたが、日本には逃げられてしまった。倒せば戻って来ると思うが」

「倒せるのですか……?」

「そうだ。そのための『偉大な帝王』だ」

――偉大なる帝王。マジンエンペラーGの諢名の一つである。これはマジンカイザーとは別の『王』である事を示すための区別であると同時に、マジンカイザーをも凌ぐ『王』である事を示す称号。魔神皇帝では、マジンカイザーと被るためだ。ZEROに太刀打ち出来るため、元祖皇帝のマジンカイザーが霞むため、未来世界では区別も兼ねて、『偉大なる帝王』が主に使用されている。

「偉大な帝王……?」

「そうだ。それを伝えるのも兼ねて、江藤、儂の着任に随行しろ。儂が最古参と言っても、軍隊階級は海軍特務少尉に過ぎんが、お前は正規の陸士卒だからな」

赤松は皆から慕われているが、『兵隊やくざ』であり、『特務士官』にすぎない。扶桑海軍の風習では、特務士官は将校と見なされない。そこを徹底的に罵倒され、軍令部の人事部の首がまとめて跳ばされそうになったため、待遇改善を日本主導で進めた経緯がある。その結果、海軍に歪みが生じ、数回のクーデターの温床になる。日本が力で強引に変えた(23世紀連邦は緩やかな改革を指向していたが、記憶が鮮明である日本側は兵学校卒者を嫌う傾向があったため、23世紀が止めるほどに強引に推し進め、デマを流してでも邪魔者を排除した)事は多く、内務省で検討されていた『敵性語運動』を考案した官僚を懲戒免職処分にするように圧力をかける、国家総動員体制の否定など、扶桑にとってははた迷惑な事が多かった。例えば、敵性語運動は民間が行ったにすぎないのに、『内務大臣と陸海軍大臣は責任取れ』とまでデモされるのはお門違いである。軍部が規制した事実は無いし、むしろそれを真に受けたら対米戦争の遂行は出来ない。その声明を陸軍大臣が発表する羽目になっていた。こうした日本の左派勢力が独善で行った行為は、扶桑の戦争遂行に重大な齟齬をもたらし、兵/ウィッチの志願数の目も当てられないほどの減少と、軍全体のサボタージュ増加の原因であった。結果、戦う対象が人へ変化した事に対応出来なかったウィッチ閥は、45年を境に、急激に失墜し始める。扶桑の空軍ウィッチ部隊が発足時、わずか4つであったのがその証明であり、最精鋭の64の陣容が現役世代よりもリウィッチ/グランウィッチが過半数であった事もあり、ウィッチ本来の意義にこだわった者達は居場所を失ってゆく。

「今は前半期の撃墜王達が上りを迎えていく頃だが、今後の世界情勢を鑑みるに、そんな事は言ってられん。北郷やお前にも場合によれば戦線で戦ってもらうやも知れん。それほど切迫しているのだよ、情勢は」

このまま干渉が続くと、海軍の軍令承行令が有無を言わさずに廃止させられてしまうため、海軍のみならず、陸軍(空軍)も指揮権の序列の固定化という名目で、本来は海軍の人事令である軍令承行令の抜本的改革が行われ、軍医であろうがなんだろうが、部隊指揮権を引き継ぐという風に改正が行われた。これは扶桑海軍が第二海上自衛隊と化してしまうことを恐れた軍令部の恐れを最大限に利用してのもので、その結果、扶桑軍組織のリベリオン化が急激に進む事になる。その過程で、ウィッチは軍医であろうとも戦闘訓練が必須になる(芳佳のように、戦闘の才能と医学の才能が両立した者が出たため)。芳佳は軍医と言うより、航空歩兵科としての本分のほうが有名であるように、本来の職を問わずに駆り出される事は充分にあり得る。赤松が言うのはそれだ。

「破壊神や機神がでしゃばるような時勢に、私のような者の力が今更ですか?」

「江藤よ、要は志だ。ボウズ達はそれを求めている。破壊神相手であろうが、戦って、破壊に抗う意志がある事をな。殿下もそれを望まれておられる。機神と共に戦う勇気を持つ者こそ、この世界を守るに値する『戦士』。儂はそう思う」

孔雀座の白銀聖衣を纏った姿で言う。その志こそが黒江が望んだモノであり、光景であると。赤松は例え、未来人や転生者の動きによって、ウィッチという存在が変質したとしても『嘆きの声にその手を差し伸べるべき』立場であると。強大無比な相手にも退かない事を求められるからこそ、ウィッチは苦しい立場に置かれているのだともいう。

「ウィッチは苦しい立場だ。高度10000mでまともに戦えるストライカーはまだそれほどない上、ジェット機には連戦連敗、B29すらまともに落とせん。そこに機神と破壊神が来るのだぞ?通常のウィッチでは眼中にない。ボウズ達でようやく戦える程度だ。そんな相手なのだぞ、破壊神は」

「その破壊神の名は?」

「マジンガーZERO。そう呼ばれている。ややこしいから、時系列などをまとめたノートを渡す。勉強しておけよ」

「は、はぁ……」

赤松はお膳立てを整えてゆく。未来世界人らがマジンガーZERO撃破後にも続けるであろう『力による改革』は歪みを生み出す。それが五回に及ぶクーデター事件に繋がるのだ。『陸海軍の伝統を無視し、戦場の実情を無視した後学の知識を押し付ける』という意識が存在する軍人は多い。それが五回に及ぶクーデターを生み出すが、それを更なる巨大な力で叩き潰す事も5回は起きる。その過程で、大戦初期実用化のレシプロ機の戦場からの引退、大戦後期相当の機種のターボプロップエンジン化、ジェット機の量産配備などが急ピッチで行われていく。また、レシプロ機の性能向上策などは陸軍系の計画が採用され、戦闘機分野でのハード面では、海軍色はほぼ排除される(機種は海軍色が濃かったりするが)のだった。



――赤松の言う通り、扶桑軍はパニックの渦中にあった。当時既に生産が開始されていた『銀河』は100機が完成した段階で採用中止、その代わりに『飛龍』が増産され、廉価な戦略爆撃機に『連山』が選ばれるなど、極めて厳しい選定が行われた。その過程で性能不足とされた現有機種の多くは前線で改造されたり、日本に博物館の展示物として売り払われたモノが多い。零戦/隼は艦上/基地から下げられたモノが練習機に転用されたり、日本に映画撮影用のスタント機として売り払われたモノが多数に登り、三式戦闘機も五式の素体に出来る二型以外の内地の機体は売却方針となったが、外地部隊が強固に反対した。だが、その意見が通達されたときには、キ61関連の生産ラインがストライカーも含めて全て閉じられた後だったため、慌てた外地部隊が緊急策として、ライセンス元のメッサーシャルフのエンジンを積んだ改造仕様が、外地部隊で使用され、相当数が存在した。ジェットの普及で陳腐化する1949年まで使用されたというから、意外に多くが出回っていたかが分かる。なお、キ44/84系列は紫電改やキ100に押される形で減産予定だったが、試験的にターボプロップエンジンに換装された機が高性能を発揮したので、急遽、『キ84T』(当初はキ117というキ番号が新規に割り振られる予定だったが、根本的に84の強化型である事、空軍設立後はキ番号が使われなくなるための措置)として量産配備されるに至る。国交成立で、米やスウェーデンから高性能ジェット機のライセンスが流れた事もあり、第一線機はジェット化が急速に進むが、日本が『償い』も兼ねて送り込んだ元・帝国陸海軍将兵である『義勇兵』らがそれらレシプロ機改造のターボプロップエンジン機を好み、日本帝国陸海軍時代の雪辱を晴らす事例もやがて出現してゆく。その中で好評だったのがキ100と紫電改のターボプロップ型であったあたり、烈風の不遇に拍車が掛かったという――。









――黒江が手に入れた『月詠調』の姿には、『オリジナル』と差異がある。オリジナルの調が152cmと、21世紀の日本人としては小柄であるのに対し、黒江が事後に得た変身能力では、それより8cmほども長身である。これは黒江の変身能力の限界でもあるが、その背丈である事によるメリットが多いので、黒江はその背丈で通している。その為、調当人が『成長したらこうなるだろう』という仮想の姿と言っても過言ではない。

「――という訳だ。どーだ?」

「主役より目立ってません?これがTV番組だったら、聖闘士星矢の外伝になってそうですよ」

「そりゃそうなんだが、私の全力はギアじゃなくて小宇宙だし、必然的になぁ」

「確かに。で、次の時も自重しなかったんですよね?」

「智子と一緒に、神聖衣でエリスに立ち向かったから、あいつらは蚊帳の外でなぁ。沙織さんにもご足労頂いて、説明をしてもらって、この姿のオリジナルを見つけて、元に戻った。その後に得たのがこれだ。なのはのガキを守護するのとバーターで、許してもらえた。そいつが跳ばされた世界ってのが、古代ベルカでな。そこで聖王『オリヴィエ』に拾われていたらしく、臣下になっていたんだ。それで私と会って、本当の姿に戻っても、その思考に『ベルカの騎士』が入ってて、ヴィヴィオに臣下の礼をしたよ。それがあいつなりの、オリヴィエへの最後の忠義なんだろうな」

黒江は、調がヴィヴィオに臣下の騎士としての誓いを立て、ミッドチルダにも顔を出している事を告げる。彼女は黒江からのフィードバックにより、聖剣『エクスカリバー』と『ジャンピングストーン』を身につけ、更に古代ベルカの魔法とデバイスも得ている事から、10年ほどを古代ベルカで過ごしたに恥じない戦闘力を手に入れている。『エクスカリバー』。これが黒江が彼女に渡したモノである。ある意味では、調はギアよりも凄いモノをもらった事になる。互いに姿が入れ替わっていた縁から、調は黒江と交友関係になり、全ての事態が早まっているこの時点では、黒江の携帯電話にアドレスが既に登録されている。調は元来、大切な者を守るためには、自身の命をも厭わない面があり、それが黒江から受け継いた聖剣の発現を促した。

『私の大切な人達を守るために……!邪悪を切り裂け、聖剣『エクスカリバー』!!』

調に渡ったエクスカリバーは、やがて、調の道を切り開くための剣となってゆく。聖剣そのものではなく、聖剣の力を与えるものであるため、調の10年の精神的成長により発現したのだ。黒江はそれを知っていた。黒江と出会い、互いの姿が『あるべき姿』に戻る過程で、黒江がマリアと切歌を守ってくれた事に感謝すると同時に、黒江の聖剣の力が調にも分け与えられた。その為、同時代に『聖剣』の使い手が三人もいる異例の事態ともなった。違うのは、調と紫龍のそれは両刃剣がイメージとして浮かび上がるのに対し、黒江はシュラの先代『山羊座の以蔵』と同様に日本刀のイメージが浮かび上がる。同じ剣でも、イメージが違うのは、武士道を持つ者が聖剣を持つと『日本刀』、騎士道は『両刃剣』である故だろう。

「で、ヴィヴィオちゃんの事を教えたのとバーターでその姿を許してもらったんですね?」

「そうだ。もっとも、色々やっちまったから、その後始末を押し付けちまったからな、私」

「バイトの後始末でしょ?その子、どういう顔してたんですか?」

「なんかこう、微妙そうな…」

「だいたい分かりました」

調はその後、黒江が行った事の後始末を『押し付けられる』格好になり、コスプレ喫茶のバイトをギアを着て行う羽目になった(黒江から聖剣の力を与えられたおかげで、ギアの展開時間に制限がなくなったので、やれる)という。また、黒江が誤魔化しも兼ねて、宿った記憶の中の調の口調を意識して演じていたりした事と、黒江の存在が『神格』であったため、存在の代替が発生したか、何故か違和感無く溶け込め、彼女のおこづかい源になったという。

「で、それもそうですね?」

「ああ。本来なら、そいつが魔法少女事変で纏う形態のギアをフロンティア事変ん時に纏っていたからな。通常時のギアでの戦闘力は一、二番だったぜ」

のび太に自慢する黒江。黒江が纏っているギアは、調当人がシンフォギア世界第三の騒乱『魔法少女事変』の際に纏ったはずの『初期状態よりロックが解除された』白とピンクを基調にしたカラーリングのものだ。これは黒江の『正義』と『仁義』を意識していた心象や、存在が聖遺物と最高の相性であった事に由来する。昇神済みの黒江にとっては『普段着』と同じ感覚であり、全力ではないリミッターモードである。

「ま、着たところで普段と変わらねーし。護身に使えるけど」

「鋸が護身用ってどうなんですかね?ジェ○ソンみたいな…」

「ありゃナタだろー!」

と、すっかり息のあった漫才ぶりの二人。話している内に、シャーリー達がやってくる。居合わせたマリア王女から勲章をもらえたらしい。

「勲章もらっちったー!」

「おお、良かったな。補給物資は?」

「ルッキーニが頼み込んで、たんまり送ってもらうようにしてもらったよ。対ZERO作戦用っていったところか」

「作戦のコードネームは?」

「イアン・フレミングから連絡があった。奴さん肝いりの『ダイ・アナザー・デイ』だそうだ」

「なんじゃそりゃ?ありゃ奴さんが死んで久しい時代の作品だぜ?」

「フレミングが防諜も兼ねて提案したそうだ。あいつ、すっかり小説家転身に乗り気だぜ」

「確かに原作者当人の提案だし、ティターンズもジオンも、クライシスもバダンも、あからさますぎて逆に気づかないだろう点を突いたのか??」

黒江は大いに首を傾げる。ダイ・アナザー・デイというのは、シリーズ20作目のタイトルであり、黒江はまだ見ていない。映画としては有名すぎるので、常識的に考えてないだろうと考えるのか?黒江は一応、作戦方面の知識もあるため、余計に考え込んだ。分かるのは、フレミングが引退の暁には、同位体の仕事を引き継いで小説家デビューする野望くらいだろう。フレミング自身は、自身の小説を映画化しているプロダクションに『諜報部員が中型拳銃を使ってどうする!』と注文をつけ、プロダクションを困惑させたとか。また、扶桑での公開の際の配給権は黒田の息がかかった映画会社が持ち、黒田はそれで儲けたとか。また、黒田自身、経営者としてフレミングに頼み込んで、『二度死ぬ』でのボ○ド・ガールのモデルにしてもらったという。



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