外伝その112『回想と苦労』


――黒江は娘達が来ている事を知らされ、そのままの姿で二代目と顔を合わせた。ゴッドマーズの事は智子たちに任せ、娘達と対面した事になる。

「母さん、変身なされるのは良いとして、私達の前では解いてもいいんですよ?」

「翼。お前とは元から親族で、顔も声もよく似ている。変身してなかったら、遠目には分からんだろ」

「確かにそうですが……」

綾香と、黒江家のウィッチの二代目である翼は、大姪という元々の血縁関係により、互いの容姿や声が酷似している。少女期は二人で同じ髪型だったが、軍入隊後、翼は未だ、軍へ影響力を有する義母との見分けをつけるため、16歳以後はシニヨンヘアを通している。20歳を迎える頃には、スエズで顔に傷を負っているため、その傷の有無により、見分けしやすくはなったが、声が酷似している点は変わっていないので、それもあって、綾香は変身とギアを維持したままだ。

「お前、2006年にゃ、階級がこの時点の私に追いついてんだろ?それにカプリコーンはお前に譲ってるし、サジタリアスは麗子、お前が引き継いだろ?天秤座使うぜ」

「母さん、天秤座使うおつもりで?」

「その資格はあるからな。背中の朱雀は伊達じゃないぜ」

聖衣は基本的に次代の資格者を選ぶ。そのため、黒江は天秤座を呼び出すつもりだったが、そこに智子がやって来る。

「時間を渡ってるから 同じ聖衣が二つあっても問題ないわよ?」

「そいやそうだ。そうなると、聖衣が回しやすくなるな」

「フェイトおば様もレオとスコーピオン、アリエスを呼び出せるはず。母さん、スコーピオンは専門外でしたね?」

「蠍座は訓練してないからなー。双子、射手、獅子、天秤、水瓶が専門分野だよ」

綾香の聖闘士としての技のバリエーションはその五つの守護星座のものであり、その五つの守護星座の技を扱えるため、星矢世代が台頭した中でも黄金聖闘士であり続け、年月が経ち、星矢の世代が任から離れる者が出てきた時代でも、聖域で有数の戦闘能力を誇っている。星矢がサジタリアスから退く事を考え始め、指導者の道を歩みだした(星矢も壮年に差し替える年代になる頃)時代にサジタリアスの聖闘士になったのが、二代目スリーレイブンズの一角である麗子である。星矢はペガサス星座としての後継者を探す一方、サジタリアスについては難航していたが、数十年来の親友の氷河、同僚の智子の推薦で、麗子を紹介された。その数年間で麗子に後を託し、一線から退いた。その時、星矢は40代前。星矢は13歳からの青春の全てを神々との戦いで燃やし尽くした事になるが、神殺しと神に愛されし者の属性を持ったためか、容姿は青年期のままだ。戦う力は維持しているが、壮年に差し替える年齢になり、これ以上無茶を続けると肉体に一気にガタが来てしまう危険性を考えなければならぬ齢になったため、長らく不在の大司教に叙任され、それで空位となったサジタリアスを麗子が継いだ事になる。麗子は義母の智子と違い、幼少時の影響もあるのか、アトミックサンダーボルトとライトニングプラズマを得意とし、その威力は綾香を超える。綾香らの昇神後に生まれた世代の子なため、元から存在が半神であるからかもしれない。

「麗子、お前。私よりアトミックサンダーボルトやライトニングプラズマ得意だろ?適任だな」

「箒おばさんみたいに、ギャラクシアンエクスプロージョンは撃てないけどね」

「フォトンバーストできるくせに、それ言うか?」

「あら、綾香おばさんだって、ライトニングボイドできるじゃない」

「あれは体力いんの」

黒江の最終的な奥義が一つ。ライトニングボイド。ライトニング系の究極の一つで、ブラックホールや暗黒物質の原理を応用した技であり、並の黄金聖闘士のアテナエクスクラメーションと単独で拮抗できるほどの威力を持つ。ナインセンシズに目覚めた者の特権であるこの技、黒江は前史の記憶がはっきりした事により、自家薬籠中の物とし、対ZEROの切り札の一つにした。スリーレイブンズは二代で神域に達した事で、総合ポテンシャルは最終時の星矢に匹敵するか、やや劣るほどに達していると言えよう。星矢は最終的に『神殺しの聖闘士』と神々からも恐れられていたからで、レイブンズがこれほどの力を身に着けても、まだ彼に及ばないと、レイブンズの誰もが思っているあたり、如何に星矢が伝説であるかが分かる。

「ミーナさんが聞いたら泡吹くでしょうね。私ら二代目は生まれた時から半神で、元から期待されてたって」

「そりゃ、私らが神になった後の時間軸で生まれたのがお前らだしな。だから、お前らの代には家が子爵なんだし」

「そうですね。それはいいます?」

「叙爵は4年後の話だからなー。お前らが家督継いでるだろ、2006年にゃ」

「ええ。18歳で手続き上は相続しました」

「それは言っていいだろう。私らが華族になるのは本当だしな。お上たっての希望だし、断る理由はなかったし」

1949年以後、黒江らはノーブルウィッチーズの入隊資格を有することになるが、前史では同隊が活動再開する事はなかった。結局、ペリーヌがインドシナ独立戦争、アルジェリア戦争に駆り出されてしまい、それどころでなかったからだ。特にアルジェリア戦争では、顧問として招かれていた圭子と刃を交えてしまった。ペリーヌは前史でその事を嘆いており、二つの戦争の不毛さから、議会議員に転身していった。ペリーヌは今回、それを知り、その二つの戦争の阻止を画策しており、ド・ゴールと距離を取るようになっていた。

「それと、クロステルマン議員……この時点だと中尉か。……には?」

「言ったよ。憤慨して、『戦争を止める』と言っていた。それと、ノーブルの隊長を辞退した事を気に病んでいたよ。仕方がないけどな、あれは」

ノーブルウィッチーズは元来、『ノブレス・オブリージュ』を胸に戦うという意図で命名されていたが、ド・ゴールの政治的判断で、爵位継承者が重点的に選ばれる事になったのが真相である。そのため、政治的思惑に振り回され通しで、王党派の策謀で活動凍結→自然消滅の道を辿ってしまった。前史では、隊の編成を復活させたペリーヌもアルジェリア戦争とインドシナ独立戦争に駆り出され、その期間にあがりを迎えてしまった。その事をペリーヌに知らせたのだが、その経緯で、地位を押し付けた格好になったロザリーに対し、罪悪感を感じてしまった(彼女が506という国威発揚よりも、国土復興を選んだ事による混乱)。ペリーヌがロザリーに献身するようになる背景には、前史でのノーブルウィッチーズの混乱と消滅の経緯の主原因が自分にあると気に病んだからだった。

「ロザリー少佐に献身するだろうな、あの様子だと。結局、前史ではアルジェリアでケイと戦う羽目に陥った挙句、負けたから、ガリア国内から誹謗中傷されたんだよな…」

「当時の新聞は読んだ事ありますが、なんですか、あれ。『堕ちた青の一番』、『偶像の最期』とか……」

「ブンヤなんて連中はそんなもんだ。第一報をショッキングに書きゃ、部数が稼げると思ってやがる」

前史での坂本の騒動により、黒江は報道関係に思うところがあるらしく、どちらかというと好いてはいない素振りを見せた。義娘の翼らに見せた態度や表情からして、前史で坂本との友情を引き裂く引っ掛けの一つだった旭新聞を相当に恨んでいるのが丸わかりだった。(今回も旭にはキツく当たっている)






――スーパーロボット軍団は、マジンガーZEROとのスペック面での勝負をマジンガー/ゲッター/ダンクーガ/ゴッドマーズに任せ、その他は機体性能以外の性能で勝負する方向になり、その第一弾として、超電磁ロボ用の追加装備を建造し、配備した。それがバトルマシン6号機であり、ボルトマシン6号機、7号機であった。

「これが新マシンですか?」

「ああ。四ッ谷博士のおっちゃんが大枚叩いて作ってくれた新装備だぜ」

バトルマシンとボルトマシンの新型マシン。戦闘能力増強という名目で、ガイアとの共同プロジェクトで完成したマシンだが、実際は対ZEROの生存率向上が目的だった。ZEROは武装を使わずとも、超合金ZやニューZを容易く破壊せしめるため、それより遥かに脆い材質であるサーメット製のコンバトラーVやボルテスVの投入は憚れていた。そこで、超合金製の追加アーマーなどを纏わせる方向に開発されたのが今回のマシンだった。そのため、コンバトラーVは合体コードは『アーマード・コンバイン』という合図に変わり、ボルテスは『ボルテスZ』という名に変わった。また、ダイモスのパートナーになる『烈将フォボス』(ダイモスの基本設計を用いた二号機。女性的なフォルムを持つ)も搬入されている。それらの搬入で格納庫も手狭になっているが、壮観である。

「豹馬さん、前の戦争の時は何してたんですか?」

「メカトピアん時は、十三がザンスカール残党連中のテロで入院してたから、俺はちずると婚約して、孤児院めぐりしてたよ。元々、俺も鉄也さんと同じで、孤児だったし」

豹馬は南原ちずると婚約する傍ら、孤児院巡りをしていたと語り、孤児が自分の出自であると明かした。甲児の悪友の一人ながら、ゴールインは早かったようだ。智子は不思議そうに豹馬をまじまじと見つめ、唸る。

「智ちゃんはどうなんだ?」

「あ、あたしですか!?……わ、若い頃に思い切りアレな事があって……。それで姉さんの子どもを引き取ったんですよ」

「惚れたなんだより、傍に居てくれる安心感だよ、結婚って」

「一応、アタックしたい相手は居るけどお互い気持ちが片付いてないから…時間は有るからゆっくり、ね」

「ふーん。智ちゃんはBLACKRXの光太郎さんといい感じだって、噂で聞いたぜ、俺」

「だ、誰から!?」

「甲児だけど」

「こ〜じぃ〜!」

「あ、やっぱそうか♪」


智子は顔を真赤にし、湯気が出るほどオーバーヒートする。南光太郎に好意を持つのが思ったより広まっていたからだろう。智子は若い頃からレズビアン疑惑がささやかれており、光太郎への好意は自分でも嬉しいものだった。

「こ、こ、光太郎さんがまだ割り切れて無いから今アタックしてもうっとおしいでしょ?!」

「深呼吸、深呼吸。はい。水」

「なんでそんな用意いいのよ!?」

「さやかと甲児で慣れてるから、俺」

キレる智子だが、豹馬は軽く受け流した。甲児とさやかを見慣れているせいだろう。しかしながら、実際問題として、南光太郎への好意は智子にプラスの影響を与えており、改変前より人当たりが遥かに良くなり、黒江の面倒をよく見る『姉』としての面を見せるようになった。あーやが『ともこおねーちゃん』と呼んでいるのがその証拠である。

「お、そうか、あの子は智ちゃんの姉さんの?」

「正確には、姉さんの子『町子』の更に子供よ。あたしから見たら大姪に当たる子でね。サジタリアスを継げる才を持つわ」

「そうか。前髪の分け方が違うから分かったよ」

「あ、そこなの」

「顔と声が似てるけど、雰囲気とそこで判別できた。現在っ子的な軽い雰囲気だったしね」

智子と違い、麗子は性格が現代っ子で、どちらかというと黒江の普段とルッキーニを混ぜたような明るい雰囲気で、二代目レイブンズの中では最も活動的である。副業がファッションモデルであるので、髪型も一定せず、今回のように、智子と同じ髪型であることは珍しかった。これは偶々、智子関連のTV番組の中の再現ドラマを撮っていたためで、撮影用のマフラーも智子の黒歴史のマフラーを金庫から引き出してきた。それをこの時代にも持ち込んできたので、智子が大慌てになり、親の権限で回収したところだ。

「智ちゃん、あの子の事は?」

「麗子とか、お麗。姉さんがそう呼んでたから。それにしても、金庫に入れてたのに、あのマフラー!」

「ああ、あのミミズが這いずってるみたいな字の。もしかして、書き取りは丙?」

「し、小学校の成績、書き取りだけ丙だったんです!悪いぃ!?他は優だったわよぉ!ぐすっ……」

智子は総じて頭脳明晰だが、国語の成績だけは書き取りなどが足を引っ張り、丙を取った事があるとバラしてしまう。それを心配した姉が少年飛行兵を薦めたと歴史改変されているため、現在の智子は最初から陸士に入ったわけではなくなっている。麗子が出演して撮影しているドラマもそれが前提であるので、智子当人には覚えがない話も多い。

「もう、仕事で外出たら、少年飛行兵時代の戦友って子と出くわして、ごまかすの大変だったんですよ、こっち。連絡よこせと言われても、すぐには…。改変で生じたことだったし、その経歴」

「なるほどなぁ。お、そうだ。君らに伝言だけど、もうすぐ第二陣が来るって言うけど、その子たちの世界で何したんだよ」

「嫌だなぁ、暴れただけですよ。ほんの邪神を封じて、鉄也さんにも手伝ってもらっただけですって」

シンフォギア世界からの来援が来るにあたり、黒江と合流する際、鉄也に同行してもらい、ピンチのところで『偉大な勇者を超え、偉大な皇となる!』という名乗りを、鉄也がGカイザーで行う美味しい場面があったと、豹馬に語る智子。マジンガーZEROさえ絡むことがなければ、グレートマジンカイザーは『神をも超え、悪魔を倒す魔神皇帝』である。その登場は傾いたビルを足台にして、颯爽登場する美味しい登場の仕方であった。ゲイボルグで聖衣を連続で貫かれ、さすがの黒江もピンチに陥った際に、ゴッドサンダーと共に現れ、黒江のみならず、奏者らのど肝を抜いている。この時のGカイザーにはアテナの加護が与えられた状態であり、シンフォギア世界の摂理は通用しない。その事もあり、スペックをフルに発揮し、エリスすらも慄くパワーを見せつけている。その際、黒江は負傷した状態ながら、駆けつけた智子と共に神聖衣を発動させ、戦闘能力を失った奏者らに代わる形でエリスを封印し、エリスがその力で再構築していたシンフォギア世界の対界宝具が暴走したものの、カイザーソードが見事に断ち切った。帰りの際にはゲッター斬が使われた他、黒江のタイムマシンが調を見つけ出すのに使用され、今の状態となった。黒江はその時から、調の姿を取れるようになったのだ。

「……ってわけです」

「なるほど。その子達の世界から帰るついでに、自分達の枠組みに取り込んだわけね?やるねぇ」

「そういう事。ただ、あの子達は機動兵器と戦う類の力じゃないんで、ヒーローたちの補助になります」

「なるほど。まぁ、ZEROをぶっ飛ばしても、待ってるのはアメリカ海軍との一大艦隊決戦だし、それは俺達の仕事だもんな」

「アメリカ海軍とドンパチしますけど、イタリア軍は当てになりませんよ?」

「そりゃプラモとか作ってりゃ、幼稚園児でも知ってるよ。イタリア海軍が勝った戦、ここ数百年であるか?俺は覚えがないぜ」

「あたしも」

豹馬にさえ、ここまでけっちょんけっちょんに言われているイタリア海軍。実際、イタリアが海戦で勝利した戦はマイナーすぎて、智子も覚えがない。実際は兵器面はいいものもあるのだが、使う側がダメダメなので、今回も黒江は『リットリオにゃ悪いが、あいつら弾除けにしかならんもん……』と嘆息気味で、タラント空襲での大損害はもはや諦め気味だ。艦娘のリットリオとローマは秘めた実力があるのだが、今回の作戦には練度不足であり、金剛は『OH!スタミナ不足でダメデース!』、大淀に情報を伝えに来た長門も、『ありゃいかん。外洋航海は無理だ』と練度不足を指摘し、嘆いている。艦娘は既に多くが集結しているが、過半数は扶桑皇国の軍艦の艦娘であり、その中でビスマルク、アイオワ、グラーフ・ツェッペリン、ウォースパイトが今の所の他国艦である。また、本国側にも艦娘とは別の姿で現れたとの情報があり、錯綜している。

「陸の方は?」

「教育機関を戦闘態勢に移行させる案がポシャったから、その関係で混乱してて。外地部隊から高練度兵を呼び出して、参加させるから、ある方面なんて無血開城できるくらいに隙がありますよ」

「ん?そういうことできんの?」

「以前の軍令で『戦時には動員できるようにしておいた』んです。ところが、日本に特攻隊化と勘違いされて、教育機関の戦闘態勢が解かれちゃって、派遣予定だった人員の辞令も何も撤廃。船に乗ってた人員も強制的に帰還命令。それでてんやわんやで、今回の作戦に必要な人員を外地部隊から引き抜く有様でして」

明野の教導飛行師団の強引な解散と学校への復帰は日本の強引な介入で起こった。その煽りで、各戦線はパニックに陥り、インドシナ方面の戦線などは、高練度航空兵が根こそぎ欧州に持って行かれ、本国に苦情を入れる有様だった。

「あ、それなら、大人のぼくに連絡入れたから、自衛隊が埋め合わせするそうです」

「のび太」

「大人のぼく、綾香さんの関係で自衛隊とコネがあるんで、2015年くらいの自衛隊がどうにか埋め合わせするそうで。電話かけてるんで、出ます?」

「なんか凄く……タイムパラドックスだわね。…大人ののび太?」

「どうも。子どものぼくから話は?」

「聞いたわよ。自衛隊にどうにか?」

「ええ。明野の事は、2010年代の自衛隊が本土防空を手伝うからって事で、一部は賠償の一環で代行できるそうです」

子供ののび太がいる前で、大人ののび太と電話する。冷静に考えると、シュールな光景だ。豹馬ものび太(小)と顔を見合わせてそう考えたようだ。

「明野の教官級から、日本の介入であっさり折れた事に、航空総監部へ現地部隊からクレームの嵐が来たそうで、その兼ね合いで、教官級に限りの派遣が決定されます。たぶん、そちらの日が落ちるまでには決まるでしょう」

「で、どんな感じだったの?その、圧力」

「そうですね。防衛省に行った大学の同級生から聞いたんですが、野党がトンチンカンな事を喚いて、担当者の胃に穴を開けるほどのクレームの嵐だったそうで。総監部の責任者自らが『断じて特攻隊ではない』と説明してやっと場が収まったそうで」

「はぁ!?なによそれ」

「で、政権交代後の与党が自衛隊を追加派遣する事を決めました。韓国が黙ったんで、左派も反対しませんでした。そのニュースが今やってるので、ぼくの方をスピーカにします」

ニュースの音声は、自衛隊の派兵が反対無しで決定されたというもので、左派政権時代のちゃぶ台返しの尻ぬぐいを、保守政権が行う羽目になった事を説明する専門家のインタビューの音声も入ってきた。左派が扶桑の軍事戦略をちゃぶ台返ししたことを指摘する専門家と、左派政治家の罵り合いに発見しかけたところでCMに移行する。左派政治家の戦中日本に戦略などないという一言は、扶桑への辱である。日本左派政治家の軍事的無知にも関わらずの政治的権力の大きさに閉口した軍人は多い。結局、これらの埋め合わせを自衛隊が行う羽目になり、明野飛行学校教官を外地に派遣させるに当たっては自衛隊の輸送機が主に使われた。また、日本の介入で追放された者達の復権も始まったが、外務省の一部人員や東条英機などについては復権は許されないままで、特に東条英機は『全日本人への罪人』扱いであり、天皇陛下でさえも手が出せないほどに冷遇され、当人の復権は無かった。子孫らはその後に要職についた者もかなりいたが、当人は扶桑海での指導の失敗に加え、同位体の行いとしての皇国の破滅ときては、もはや復権の根は絶たれたと判断し、扶桑を捨ててバード星へ移住し、銀河連邦の事務官相談役に再就職したという。






――扶桑は、敵のモンタナ級戦艦の強化プランの有無は知っていたが、ラ級を省いた常識的なプランに則った場合の改良プランは以下のモノが有力とされた。

――45.7cm砲/連装四基八門、54口径12.7cm砲、連装一二基/二十四門――

当時の戦艦設計の常識として、モンタナを改造するなら、これが常識的なプランである。また、モンタナは船体装甲が完成時の大和に匹敵するため、相対的に見れば、火力が船体に見合うものになっただけとも言える。最も、パナマ運河通過考慮外なら、三連装三基のプランも現実味を帯びてくる。モンタナの改良という範囲で済ますなら。日本はアメリカ海軍製兵器を持ち上げるが、モンタナとて、艦隊決戦用に設計はされたが、十八インチ砲を防ぐのは想定外ではある。むしろ大和の火力が強すぎ、敵のほうが慌てている状態なのだ。大和は宇宙戦艦と同等の火器管制能力を得、更にパワーアップしているため、むしろ主敵はヒンデンブルク号である。超大和型戦艦に対抗するためにパワーアップした大和の威力はモンタナを確実に上回る。実質的に十八インチ砲世代最強格の座は揺るがない事を大々的にアピールした。更に、来る海戦で日本へお披露目となる『戦艦越後』の威力。前史より遥かに早いペースで登場に至った播磨型は今、レイブンズの予測すら超えるスピードで戦列に加わろうとしていた。――









――基地に集結しつつあるスーパーロボット軍団。その説明のため、黒江は一旦、元の姿に戻り、講義の中で説明を行う。一体一体が世界を滅ぼせる力を有する事、それに頼る事に反発が出る。しかしながら、自分達ではそれらは愚か、MSの相手すら覚束ない。ミーナから、圭子との一件のことで反発組全員に脅しが入っていたため、目立った反発はリーネのみだった。黒江は驚きの目でリーネを見る。リーネは西洋人に珍しく、性善説の倫理観を持つらしく、スーパーロボットの開発理由などに反発を見せる。マジンガーなどが『神にも悪魔にもなれる』という理由で造られたということを『そんな事は有り得ません!』と断じる程だった。黒江は一息つき、神道の神には善も悪も関係無いことから説明を始める。そして、スーパーロボットは操縦者の意志で『神にも悪魔にもなれる』という事を伝え、噛み砕いて教える。多くの対立を見てきた黒江らしく、のび太でも理解できるような言葉で伝える。また、自分が『そう』であると教えるため、皆の前で変身を見せた。

「姿が…変わった……?」

服装は変わらないが、容姿は別人のそれに変貌しており、声も変化していることから、黒江が人を超えた存在であることは否応なしに認識してゆく。伯爵はウズウズしているらしいが、気まずそうだ。

「姿はどうであれ、私は私だ。スーパーロボットにしてもそうだ。超常の力で神の座に至る。だが、それも敵対者からすれば悪魔にもなる。 力を得るとはそう言う事だ。それは皆に自覚してほしい。お前らの力だって、未来世界の過去の時代には異端審問/異端殲滅の対象にされていた。魔女狩りって奴だが、自分が生きてる環境に甘えるな。居場所を、存在意義を守りたいのなら、強くなれ!分かったか?」

『aye,ma'am!』

シャーリー、芳佳、ルッキーニを筆頭に、グランウィッチらが一斉に応え、敬礼する。遊び心も入っていたが、グランウィッチは心身共に軍人であるためもあり、ヤマト式敬礼で応える。続いて、近しい者達が続く、反発組も最後に行った。黒江の変身した姿は可愛いため、(外見上は成長した月詠調というべきもの)これ以後は隊内での人気が急激に高まる事になり、妙に話題となった。講義を終え、外に出ると、少年のび太がいた。

「あれ?いたのか?」

「智子さんが大人のぼくと話しこんでるんで。ガイちゃんが呼んでましたよ?」

「何?あいつが?」

「新造のミラクルドリルランスが届いたから、一個をくれるそうですよ」

「おー!ありがてぇ!エアの媒介に使えるぜ!」

と、気安く話しながら、そのままガイちゃんの部屋に向かう二人。智子が大人のび太と話しこんでいる中、圭子はあちらこちら駆けずり回り、お膳立てを整える仕事を始める。娘の澪に手伝わせて。そのためにコスモタイガーで扶桑の参謀本部へ向かうのを見送った赤松は、坂本の孫の百合香を出迎えるべく、こちらもロマーニャ国内の軍事基地に向かっていったのだった。




――ワレハフメツのチカラ!ワレコソガ唯一無二ノスーパーロボット!!スーパーロボットハワレナノダ!マガイモノドモメ、ミテオレ!百ノ残骸スラ残サンゾ――

ZEROが咆哮する。どこかのウィッチ世界を破滅させながら。それは自身を敗北に追いやったゴッドマジンガーへの呪詛でもあった。そして、ZEROの目の前では、スリーレイブンズの屍が無残にマグマが煮えたぎる大地に晒されていた。智子の折れた備前長船と、黒江の遺体に流れていた涙、上半身のみが遺された圭子、その遺体のそれぞれの苦悶と悲しみの表情の顔を見つめ、ゴッドマジンガーとの『再戦』に燃えるマジンガーZERO。腹いせのようにウィッチ世界の下位次元を次々と滅ぼしながら、A世界に迫っていた…。

――ZEROよ。全てを否定し続けるのか!それがうぬ自身の否定という事に何故気づかぬのだ!――

―ダマレ!!ワレノ半身でありながら、ナゼ、マガイモノドモの味方ヲスル!ゼウス!!イナ、ゼットマジンガーヨ!!――

ZEROは問う。自らの半身から派生し、善神として最高位にまで到達した機神『Zマジンガー』に。ZEROは破壊だが、Zマジンガーは創造の力を持つ。それが善神と言われ、オリンポスの長にまで登り詰めた理由。

――我らを創りあげたのは人間だ。その人の手による物は我らの遠い同胞ぞ!?それが何故分からぬ!――

Zマジンガーの姿は、頭部以外はグレートマジンガー以後のマジンガーの意匠である。それはZEROと対照的であり、カイザーへの歪んだ思いにより、ボディにカイザーの意匠があるZEROと対照的ながら、共通点がある。


――故に憎むに値せず、慈しむ価値がある――

――ダマレダマレダマレダマレダマレェエ!――




ZEROは子どものように地団駄を踏み、ヒステリックに元はウィッチ世界の一つだった惑星を破壊する。

――その破壊で貴様は貴様自身の価値を失っていくことに何故気が付かん!!――

Zマジンガーはその瞬間に三人の遺体を回収し、その無念の思いを読み取る。その記憶を三人が健在で、従神になっているA世界に送る。それがZマジンガー(ゼウス)なりの手向けだった。ZEROに『ゼウスブレード』で斬りかかり、癒えることのない傷を負わせる。これは遺体となった黒江の最後の願いを叶えたのだろう。

――ZEROよ、これが我の娘に忠心深い戦士たちの無念を晴らすための一撃ぞ!!――

ゼウスブレードでマジンガーZEROのボディに傷を入れる。Zマジンガーの武器を魔神パワー『吸収』で吸収せんとするが、何も起きない。再生も覚束ない。かつてのどこかの世界でグレートマジンガーに対して行った事を自分がZマジンガーにされたのだ。

――バカナ!?マタシテモ!?――

――それが貴様の運命ぞ。我の権能を与えし戦士に討たれる事もまた……!――

Zマジンガーはその意味を知らしめるため、ゴッドサンダーを放つ。


――そろそろ現界もしていられぬか。 その傷、貴様の在り方が変わらぬ限り消えぬものと知れ!――

この言葉を言い残して姿を眩ませる。ZEROはZマジンガーを追うべく、必死に魔神パワー『再生』を機能させるが、ゼウスブレードが魔神パワーの維持に必要なモノに傷を入れたらしく、魔神パワーの強化と変態の維持に支障を来たし、ZEROの姿を一時的に維持しきれなくなり、Zの姿に戻ってしまい、ジェットスクランダーに戻ったZEROスクランダーを変形させられず、ジェットとしてのノズルが火を拭き出すこともない。

――グオオオオオ……!キズが魔神パワーヲサマタゲテオルノカ……イヤ、コレはカブトコウジ、オマエノ意思ダトデモイウノカ……!?――

Zの姿に戻ったZEROは、取り込んだはずの兜甲児の同位体に抵抗され、力と体の制御に支障を来たしていた。そして、呻き声と共に、Zはのたうち回る。各部の変形が安定しないのだ。ZEROに戻ろうとするZEROの意思と甲児の同位体の意思が拮抗し、スクランダーなどの変形がZEROの意思に反する形になったりし、甲児の意志がZEROを押さえ込もうとし、ブレストファイヤーの放熱板が不規則に点灯する。その苦境からでも、ZEROはなんとかワームホールを形成し、転移してゆく。これがゼウスなりの黒江らへの恩返しであり、時間稼ぎだった。



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