外伝その119『偉大なる魔神皇帝のカタチ』
――作戦の最中、参戦が調以外、許可されなかったシンフォギア装者らはある事を思い出していた。それは邪神エリスがキャロル・マールス・ディーンハイムの大人化した肉体を乗っ取り、顕現した時のこと。もはや全ての手段を無くし、黒江でさえもゲイ・ボルグで負傷し、エリスの思うがままかと思われた。だが、そこに驚きの救援が現れた。
「あれは……あのマジンガーは……まさか!?」
負傷した黒江も驚きの援軍。それは。黒鉄のボディと金色のモールドを持ち、尚且つグレートマジンガーの意匠を引き継いだ者。
『偉大な勇者を超え、偉大な皇となる!!グレートッ!マジンカイザー!!』
グレートマジンガーの進化の一つの回答であるGカイザーは、マジンエンペラーGがゲッターロボとのハイブリッドであるのに対し、純粋なマジンガーと言える進化の形だった。装甲も超合金ニューZαであるため、マジンカイザーのもう一つの可能性と言える。
『喰らえ!バーニングブラスタァァ!』
「やべ、鉄也さん、やる気満々だ!伏せろ!!焼け死にたくなかったら頭を下げて、地面に伏せろ!」
バーニングブラスターはファイヤーブラスターの対となる攻撃であり、その威力は因果律を操れるマジンガーZEROでもない限りは、為す術もなく溶け落ちてゆくだけの一撃だ。その熱線の温度はもはやシンフォギア世界の機器では計測不能な数値だ。市街地で撃っていい一撃ではない。更に、シンフォギア世界の摂理を外れし魔神皇帝であるため、シンフォギア世界の摂理は一切合切通用しない。
「鉄也さん!いきなりバーニングブラスターはないって、殺す気ですか!?」
『スマンスマン、小手調べのつもりだったんだ。城戸沙織さんを連れてきてるんで、手加減なしでいいと言われてな』
「え!?沙織さん、来てんすか!?」
『エリスが復活したとあれば、私が動かないわけには参りません』
「さ、沙織さん!?んじゃ、VIPカリバーを動かしてるのは……」
『あたしよ。随分可愛い姿になってんのね、貴方』
「と、智子!?お前、私の居場所をどうやって!?」
『フェイトが貴方の転移に感づいてね。管理局を動かして、かなり広範囲の次元世界をサーチしてくれて、沙織さんにも協力を仰いだのよ。ドラえもんのタイムテレビも使ったら、発掘された古代ベルカのデバイスの残骸に、貴方の姿をした子の記録が残っててね。その子の意思があなたを、ここへ呼んだって事が分かったのよ』
『ええ。やがて、星矢に討伐されたはずのエリスが、この世界に流れ着いていると分かり、私が直接やって来たのです』
智子は機体を着陸させ、降り立つとすぐに水瓶座の黄金聖衣を纏う。負傷し、ゲイ・ボルグで黄金聖衣にも傷を負わせられた黒江に肩を貸し、沙織のもとに連れて来る。調の容姿と声になっていた黒江だが、沙織の前では臣下としての礼儀を忘れない。片膝をつき、畏まる。
「申し訳ありません……。私は自分の姿を喪失してしまい、そのせいでゲイ・ボルグの因果を断ち切れず…」
「仕方がありません。貴方が如何に昇神していようとも、他人の姿になっていれば、人としての因果に引きずられるものなのです。ですが、エリスを封印するには、むしろそのほうが適任かもしれません」
「神殺し、ですか?」
「そうです。あなた達に使命を託します。エリスを封印するという。天秤の武器の使用も許可します。それと、神である私にできるせめてのことです。」
「沙織さん、貴方、何を…」
「神の血を黄金聖衣に与えるのです。さすれば黄金聖衣も『最終黄金聖衣』となり、神聖衣の依代となるのです」
沙織は持ってきていた刃物で自分の腕に傷を入れ、その血をヒビが入った山羊座の黄金聖衣に注いだ。血を注がれた山羊座の黄金聖衣は、瞬く間に傷が直る。そして、神聖衣の依代となるべき力を得た。
「ありがとうございます、沙織さん……いや、アテナ。不肖、この黒江綾香。使命を果たしてご覧に入れましょう!」
と、沙織にその言葉を発すると、神聖衣を顕現させる。智子と共に。これがある意味では、黒江が望んだ光景であった。前史では起こることの無かった光景。智子は前史で先に死んだことへの償いの意味も込めて、水瓶座の黄金聖闘士になる選択を選んだのだ。
――そして、聖闘士としての究極にまで達した二人は黄金神聖衣と天秤の武器をを携えて、対峙する。グレートマジンカイザーのサポートを受けて。この時までに戦闘能力を失っていた奏者達は、次々と起こる光景に置いてけぼりをくらっていた。アルカ・ノイズを一掃し、尚且つ『摂理に反している』としか思えぬ力を持つ魔神、黒江が以前に纏って見せていた神聖衣。それを纏うもう一人の闘士。完全に戦いの主役は黒江らへ移行していた。もはや奏者らの手に負えぬ戦いとなり、Gカイザーは搭乗型兵器の限界を超越した幾何学的な機動を見せ、ドリルスマッシャーパンチを撃ち込む。皇帝の名を冠するマシーンである以上、その破壊力は『兵器』の区分を飛び越えた何かであり、その拳はドリルのように、全てを穿つ――
『ギガントミサイル!!』
続いて、腹からミサイルを生成し、エリスに撃ち込む。市街地にキノコ雲が立ち込める。それで生じた隙を突く形で、二人は光速を超えて攻撃を仕掛ける。光速であるため、映像モニター越しでは丸い光が移動しているようにしか見えないか、映像にほとんど映らない。
『槍にやられたんだ、槍で返させてもらうぜ!!』
黒江はそう宣言し、天秤の槍を持ち、エリスに突き立てる。エリスはキャロルを依代に顕現しているため、金髪の容姿であるが、エリスが所々で作り変えており、服装は完全にエリスの邪霊衣(リーフ。植物を操る能力を有する。)になっており、妖艶な雰囲気に一変していた。その為、歯牙にもかけない奏者らと黒江らを分断してみせる。エリスの容姿はキャロル・マールス・ディーンハイムの大人化した姿だが、髪形がロングストレートに変わっていたり、邪霊衣を纏っている影響か、化粧が濃くなったかのような風貌だった。神格であるため、壁代わりに生成した植物で、奏者達のどんな攻撃も通さない。たとえ、奏者全てのエネルギーを集めたガンニグールの篭手による突進であっても物ともしない。ガンニグールのほうが植物にぶつけ続ける衝撃と力に耐えられず、ヒビが入るほどの強度であった。
『これはお前らがどうにかできるレベルを超えた問題だ!ギアが自壊する前に、響の攻撃をやめさせろ!』
黒江は怒鳴るが、響は強引に突破し、一撃をかけようと跳躍する。が、ガンニグールにはエリスへは重大な弱点がある。それは所詮、グングニルの欠片でしかない事だ。完全なものであれば、神話の通りに『鋼の穂先にルーン文字を配することにより、その魔力で貫けない鎧はない』威力と因果を誇るのだが、欠片な上、響の腕そのものがアームドギアとなった都合、グングニルの力は完全には発揮されていない。その為、ゲイ・ボルグを要するエリスはゲイ・ボルグの因果で上回れてしまうのだ。
「小娘。その勇気は褒めてやろう。……が、このゲイ・ボルグの前ではグングニルの欠片ごときの力など!」
ゲイ・ボルグの因果はエクスカリバーであれば打ち消せるが、不完全なグングニルを依代にしたガンニグールのギアでは打ち消せない。直撃を逸らすのがせいぜいである。ゲイ・ボルグが投擲され、響はとっさに巨大化した篭手で打ち合わせるが、ゲイ・ボルグはその因果律兵器ぶりで、ぶつかった篭手を打ち砕いてゆく。これは響当人のみならず、装者全員には信じられない光景だった。ゲイ・ボルグは『対象を貫く』という因果を引き起こす神器であり、ギアでどうにかできる領域を超えている。本来であれば、ぶつかった瞬間にギアが破壊されていてもおかしくない。だが、響は父親と親友、仲間の祈りの力を媒介にオーバーブーストがかかっており、ゲイ・ボルグに抗ってみせた。直撃を逸らす程度であるが、貫かれても、致命傷は避けた。それを確認した黒江は、貫かれたショックで篭手部分が破損した響をお姫様抱っこで抱きかかえ、そのまま他の装者に託した。
「黒江女史、立花は……?」
「気絶しているだけだ。あとは任せる。アイツは私達が封印する。それが私らの使命だ」
「女史、教えて下さい。あ奴は一体なんなのです?それにあのロボットは……」
「おそらく、奴の体に埋め込まれていた種子が発芽し、邪神に乗っ取られたんだろう。いつそうなったのかは分からんが……」
「それでは我々側についたエルフナインは……。」
「大丈夫だ。あいつの生命力を活性化させる星命点を突いておいた。聖闘士に伝わるツボのようなものだが、生命力を活性化させたから、直に回復する。あのスーパーロボットは……うーむ。マジンガーZの遠い子孫?そうとしかお前には説明出来ん」
Gマジンカイザーについての説明はものすごくアバウトなものだが、間違ってもいないが、ややこしいものだ。マジンガーZはどこの世界でも、たとえ実物がない世界でも、アニメとして存在しているので、アニメに疎い翼でも分かるように努力した。グレートマジンガーはゲームをしてなければ、21世紀の若者には浸透していないので、マジンガーZの子孫と言ったのだろう。
「マジンガーZぉ?スーパーロボット大戦の常連の70年代ロボの?最近に派生作品が連載してる?」
「そそ。それだ。それの後継機の一つだよ」
「グレートマジンガーとかの?」
「そそ。グレート系だよ、あれは」
クリスはある程度は知っていたらしく、頭部が鋭角的なデザインで、放熱板がV字である事から、グレートマジンガーの系統であるとは分かったようだ。それに安堵する黒江。
「あ、やべ。ゴッドサンダーだ。お前ら耳を塞いで口開けろ!叫べ!鼓膜破れるぞ!」
「ま、マジかよ!?」
ややあって、鉄也の『ゴッドサンダー!!』の掛け声と共に、ゴッドサンダーが放たれ、ピンポイントで凄まじい落雷が引き起こされる。その電撃の威力は黒江のアークプラズマにも匹敵するほどのもので、エリスの周りにあった、崩れたビルが完全に消滅し、キャロルがエリスに乗っ取られる前に錬金術で形成していた『碧の獅子機』もエリスとなったキャロルを残し、完全に消滅していた。
「お、おい!ばーちゃん、なんだよ今のは!?」
「ゴッドサンダー。グレートマジンガーのサンダーブレ―クの発展形だ。サンダーブレークは私が撃って見せたが、ゴッドサンダーはその比ですらねぇ『神の雷』だ。奴もかなりのダメージは負っただろう。んじゃ、戻るわ」
「あ、お、おい!あたし達はどうすりゃいいんだよ!?」
「避難誘導とかをやってくれ。私達でどうにかする。オリンポス十二神の一人も来てくれているしな!」
「お、オリンポス十二神んー!?」
「そうだ。細かい説明は終わったら、する!とりあえず今はその暇がないんだよ」
――これが、黒江が自分を取り戻した戦いの大まかな状況だった。装者たちにはカルチャーショックの連続だった。それを思い出し、ため息のマリアと翼の年長組。彼女たちは作戦途中で空母『ミッドウェイ』(亡命リベリオン軍所属)に身柄を移され、作戦の模様をモニターで確認する事が続いた。その中で際立ったのが、海を疾駆する艨艟達の咆哮である。彼女たちにとっては遠い過去の遺物のはずの戦艦達の艦隊戦は別世界に見えるほど、のんびりとしたものだった。未来装備を持つ戦艦は限定的なものである上、陸上航空隊は空母よりも低コストなのが売りだが、当時、空母搭乗員の陸上への転用が咎められたため、他戦線の熟練者を転属させる事で作戦用人員を賄っていた。そのため、連合軍の主力となりつつあった扶桑軍は人材のやりくりに必死になっていて、陸軍の明野陸軍飛行学校は教官級の人員の動員を始めていたのも、その一環だった。日本の野党の横槍で戦時動員が強引に解除された上、明野教導飛行師団そのものが解散を通達され、大パニックだった。これは教育機関等(陸軍航空審査部を含む)を随時、防空戦闘体制に移行させる「東二号作戦」が発令日に遡って、無かった事にされてしまった事で、派遣予定人員が本国に強引に帰国させられたからで、前線からクレームの嵐だった。これの埋め合わせを迫られた日本政府は空自の戦闘機部隊を、ZEROの撃滅が確認されたのを名目に増派する事でなだめた。また、連邦のG級戦艦での強襲揚陸にその予定人員の動員がなされたので、自衛隊の増派を引き出すいい方便として使われた。ジェット機の教育に空自と米軍が一枚噛む事で、米軍に顧問団としての仕事を与え、その中には64Fに配属予定のウィッチが混じっており、彼女たちは表向き、『源田実の推薦で選ばれた精鋭』という事になっていた――
「あたし達だって、そこそこは戦えるはずだ。なのに、なんで待機なんだよ」
「老師が言われるように、我々は第六感を拡大させる事すらままならん。口惜しいが、ここで待機するしかないのだ」
「第一、この世界は第二次世界大戦が起こってた時代のはずだろ?いろんな世界がごちゃごちゃ介入してるせいで、わけわかんねー事になってねぇか?」
「仕方あるまい。様々な世界の思惑の舞台にされているのがこの世界だが、敵は我々の力ではどうにも出来ん強さだ。それにロボット兵器が跳梁跋扈しているのだぞ、雪音」
「ロボットがなんだよ。聖遺物と戦ってきてるってのに、ロボットくらいで…」
「あれを見ろ。我々の世界でのSFのロボットがそのままの姿、そのままの性能で実現しているのだぞ」
「す、すげえ。金色のがガンダムになったぞ!」
それはエイラが手懐けた『フェネクス』である。デストロイモードを発動させ、凄まじい機動を見せ、ティターンズのMSを圧倒する。エイラ自身のMS戦経験は未熟だが、フェネクスの超高性能と、予知能力がニュータイプ能力に昇華したおかげで、フェネクスを自由に操れる様になっていた。フェネクスは連邦軍強硬派が独自に組み上げていたが、途中で改革派が介入し、システムに設計変更を加えたものである。暴走事件後、偶々、未来世界に来ていたエイラとサーニャに拾われ、エイラがシステムをサーニャ愛で御し、その制御下に入ったのである。
――エイラはコクピットで、ビームマグナムの使い勝手に愚痴りつつも、威力については賞賛する。ビームマグナムはたとえ、ガンダリウムγ製のマラサイであろうと、ビームが掠めただけで戦闘不能にできるためだ。
「バズーカの方が良かったかなー? でも弾数少ないのはおなじだしなー。F91みたいなヴェスバーがないのは残念だけど、それと似たような威力だから、ゼータクだなー」
エイラはストライカーで培った機動を応用できるフェネクスを気に入っていた。24世紀以降の技術を入れたため、同機は飛行可能になっており、その点から言っても、エイラにはうってつけだった。また、ビームサーベルやトンファーで接近戦にも対応可能なため、扶桑の者達が刀剣を好む理由が分かる。
『サーニャを守るために、フェネクス!!私に力を貸せ!!』
と、どこぞのバナージ・リンクスが言いそうなセリフ回しをするあたり、ユニコーンガンダム乗りであるのを意識しているエイラだった。そして、ビームトンファーで立ち尽くすハイザックを一刀両断するのだった。
――次に場面が映したのは鉄也とマジンエンペラーGだった。Gカイザーと趣の違う綺羅びやかな黄金をアクセントに、マントのような翼を持ち、瞳を持つ魔神はGカイザーとはまた違う迫力だった。
『サンダーボルトブレーカー!!』
「あ、あの技は……女史が私に放った!!」
サンダーボルトブレーカーに、翼が反応を見せる。自身がその技を黒江にかけられたからだ。黒江が『バイトがあんだよ!』と半ギレで放った事一回、サンダーブレークからの繋ぎでも使われた事がある。アーク放電で放たれたので、数日の昏睡は毎度の事だった。その事を思い出したらしく、翼は悔しそうな顔を見せた。よほど苦い思い出らしい。
「どうした、翼」
「いや、黒江女史に、今の技をかけられた事があったのでな……。それと思い出しただけだ」
「その割には、額に怒りマークが出てますぜ、センパイ」
「雪音、私は怒ってはいない。怒っては……」
マリアとクリスにそう言いつつも、額には怒りマークが出ている翼。黒江に散々に翻弄され、勝てぬままであったためか、悔しさが残っているようだ。防人であらんとする彼女だが、意外に年相応のところもあるのだった。そして、一同が最も驚くのが。次の場面だった。それは調がエクスドライブ状態で法術を使い、龍王破山剣・逆鱗断を放つ際のものだった。そこも律儀にカバーする連邦軍と連合軍だった。
『雷火の顎よ、敵を討て!!龍王破山剣!!逆鱗だぁ――ん!!』
これに、装者達は例外なく茫然自失となった。全く結びつかない出来事だった。特に、家族同然であった切歌とマリアは、開いた口が塞がらないという様子が相応しく、響が目の前で手を振っても反応がないほど固まった。赤松が『一発で決める辺り、ボウズの弟子らしいな』という様子まで映っており、翼も『何だとッ!?つ、月詠が剣を!?』と、マリアは正気を取り戻すなり、『調、いったいどこであんな剣技を!?』とパニックに陥ったし、切歌は意外にも興奮気味になった。
(黒江綾香……。あなたは調に何を教えたのだ……。あのような剣技、剣の素人だったあの子が、たった数週間の訓練で、あんな技を放つ事が出来るようになるわけがない!それにあの剣の形状は確か中国に伝わる……。いったい何がどうなっている…?)
マリアは独白する。アガートラームの装者として、剣技に心得が有るため、龍王破山剣・逆鱗断が付け焼き刃の訓練で身につく難易度の技でない事を見抜いた。実際は、古代ベルカに転移していた頃に使用していたのが剣型デバイスだったり、ベルカ王家の教師に教えられたり、当時の戦争を戦ったおかげで、基礎面は身についており、黒江からのフィードバックで黒江の剣技の動きを得た事、黒江と老師・童虎が実践テクニックを教えこんだ事が幸いしたのだ。残心の際の決めポーズにも、示現流免許皆伝の黒江の影響がかなりあり、マリアと翼の両名はそれに気づき、唸ったのだった。この後、赤松からも戦闘術を教え込まれた事により、調は正式に、赤松〜北郷/江藤〜黒江の流れに組み込まれ、フェイト/芳佳/箒/なのは/菅野の更に妹弟子の位置づけとなり、赤松の曾孫弟子の一人として、ウィッチ世界に名前を残すのだった。赤松も示現流の心得があった事から、二代目レイブンズが意図的に、『殺魔御護女(さつまおごじょ)』という大仰な異名を坂本の同意で作戦途中の軍の官報やマスメディア向けの広報で発表した事から、以後、赤松/黒江/智子の系統のウィッチ/魔導師は『味方は喜ぶが、敵に知れると敵は一目散に逃げ出す最強の戦闘集団』として有名になってゆく。由来は二代目レイブンズの学生時代の根城が鹿屋であり、同市の学生ウィッチクラブのエースとして名を馳せ、軍入隊後も初代の威光に恥じない活動である事から、黒江一族の出身地である薩摩に引っ掛けて『殺魔御護女』と呼ばれるようになったのだが、それを聞いた坂本が、『よし。遡って、君らの母さんらにも与えよう』と提案した事で採用された。これは坂本のプロパガンダ術で、レイブンズを使い、予算をふんだくる算段であった。ミーナも予算確保に熱心なため、すぐに了承し、翌日の軍の官報、マスメディアの一面記事にその名が踊り、天皇陛下の目に留まり、黒江らへの叙爵が何故か、格段に早まったとか。
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