外伝その126『ギガントマキア』


――宇宙刑事達の参陣、そして乱舞するスーパーロボット軍団。彼らはその圧倒的な力を見せつけるが、ティターンズやネオ・ジオンはガンダムTR-6を投入した。しかもサイコガンダム系統の各部を取り付けた形態で。それにより、彼らに拮抗せんとしていた。

「ん、あれはTR-6だ!ジェガンじゃ対抗できん、下がれ!」

ガンダムTR-6は、その設計がネオ・ジオン軍に軍縮の際の混乱で流出し、そこからアナハイム社によって完成された。これは軍解体の噂に悲観した旧ティターンズ系将校らが意図的にネオ・ジオンに流したのが原因で、連邦軍再建時に問題視された事項の一つである。これにより、ティターンズが地球の守護のために計画していた兵器は、彼らの母体であったはずの地球連邦の打倒のための牙となるという、実に皮肉な光景を生み出した。連邦軍は、これにスーパーロボットをぶつける事で対処した。如何にTR-6の換装形態が強力であろうと、それは戦術の範囲での事。スーパーロボットは戦略に影響を及ぼすほどの強さ。今回はまさに怪獣大戦争、いやギガントマキアの様相を呈した。

『グレートスマッシャーパーンチ!!』

マジンエンペラーGの拳が唸りを上げ、ガンダムTR-6換装形態『サイコガンダムU』に炸裂する。いくら装甲が厚いと言えど、ガンダリウム合金では、超合金ゴッドZと合成鋼Gの複合装甲『G合金』の拳は受け止められない。G合金はゲッター系素材の柔軟性とモーフィング変形と、超合金Z系統の堅牢性を兼ね備えた新合金だが、精錬に手間がかかるのと、素材の一つとなる超合金の強度によって、性能に差が生じる。そのためにできるだけ上位の性能がある超合金が好ましく、ゴッドZが選ばれた。ゴッドZがZEROに破壊されない合金であること、比較的に入手難易度が低いからだった。その結果、ニューZα級の強度とゲッター合金の柔軟性を兼ね備える高性能素材となり、マジンエンペラーGの強さに繋がっていた。

『ムウン!』

エンペラーはその圧倒的なパワーで、サイコガンダムUを片腕で持ち上げる。30m級に大型化したとは言え、体格に差があったものの、見かけと違い、軽量なサイコガンダムUを持ち上げるのに何ら支障はない。そのまま放り投げ、相手が態勢を立て直そうとする一瞬を突く。

『エンペラーの炎で燃え尽きてもらう!グレートブラスタァァァ!!』

エンペラーの放熱板が光り輝き、形状が変形する。Gカイザーと違い、エンペラーはゲッター合金の特性を備えているため、Gブラスター使用の際、放熱板が目的に最適な形状に変形するため、射線はバーニングブラスターよりも広く、その影響を及ぼす範囲も大きい。動力源の出力の違いもあり、ZEROのブレストファイヤーに匹敵する。そのため、TR-6は瞬時に溶解する。


『なるほど、これがTRシリーズか。脆いな』

鉄也は、Gブラスターでドロドロに溶解したTR-6の頭部の残骸に冷たい視線を向ける。エンペラーはマジンガーZEROに対抗するためのマジンガーである。それを考えれば、たとえTR-6も『玩具』も同然なのだ。エンペラーオレオールをなびかせながら、エンペラーは征く。偉大な魔神皇帝として、ZEROに及ばなかった『偉大な皇』の分まで戦い抜くために。



『ブイ・ツゥ・トゥギャザー!!レェェツ!ボルト・インッ!』

7機のボルトマシンが合体し、ボルテスZに合体する。ボルテスXに追加合体を施す事で性能を底上げした合体で、本体に改良が加えられた事で、総合性能は向上している。天空剣も強化される。余談だが、それを前史の記憶で知る黒江が一度、強化型天空剣をシュルシャガナのギアの力と自己の能力で生成し、マリア・カデンツァヴナ・イヴをガンニグールの装者という呪縛から解き放つため、『天空剣・Vの字斬り』を放っている。黒江の介入でシンフォギア世界の歴史が変化したのだ。そのため、ボルテスZの天空剣を見た瞬間に装者たちが一斉に思い出した光景がある。


――シンフォギア世界にて――

「お前が世界に罪を背負っているのなら、その象徴の黒いガンニグールのギアから解き放ってやる!!天空ゥゥゥ剣!!」

黒江が両腕を天に掲げ、雷のようなエネルギーが迸る。すると。剣の柄と鍔が生成され、長大な刀身が迫り出す。アームドギアを生成する要領だが、自身に宿る聖剣の力も使用しての生成だった。そのため、風も渦巻く。

「私がいた世界の超電磁マシーンの誇る必殺大剣だ。これでお前を……斬る!」

「待ってください!その剣で何をするんですか!?」

「何って、剣は断ち切る物に決まってる!「ただし、切るのは物とは限らないんだぜ?」

黒江は構える。それを止めようとする響。本来の歴史の流れなら、この局面で響がマリアからギアの所有権を奪う形でガンニグールを再び纏うのだが、黒江の介入で流れに変化が生じたのか、それが起きなかった。マリアは黒江を止める響を制し、罪を清算するため、天空剣をその身に受けると告げる。ここで調が『いない』事で精神的に破綻しかけていた切歌が到着し、黒江に絶唱状態のイガリマを向け、襲いかかった。

「イガリマの絶唱は……魂を切り刻む鎌。お前が……調の身体をお前が乗っ取ってるのなら、魂を切り刻んで、『調を開放』するデス!!」

「切歌、待ちなさい!これは……!」

「無駄だ。あのガキは私がこの姿の元の持ち主から身体を乗っ取ったと思っている。イガリマ、たしかシュメール神話の武器だったな?なら問題はねぇ」

止めようとするマリアの言葉にも耳を貸さず、破綻しかけた精神状態の切歌。思い込みと精神的支柱を失った事で歯止めがかからなくなっていた。そしてイガリマを黒江へ振るう。だが、物理的防御が通じないとされるイガリマの刃は、天空剣を左に持ち替え、手刀の構えを取った右腕が受け止めていた。これは切歌のみならず、全員が驚愕した。

「イガリマが……手刀に……受け止められた……!?物理的防御を無視するはず……なんで!?」

「なるほど。それがイガリマか。だがな、私の右腕は聖剣『エクスカリバー』!持つものに勝利を約定する『伝説の剣』だッ!!」

黒江の右腕が黄金に輝く。エクスカリバーを発動させたのだ。因果律さえ操る聖剣の霊格を宿している事を示すかのように、黒江の右腕にエクスカリバーの伝説上の姿の幻影がオーバーラップする。

「勝利を約定せし聖剣!!エクス!!カリバ――ッ!!」

その瞬間、場に居合わせた『フロンティア事変』の元凶ともいえるウェル博士が腰を抜かしながら叫んだ。エクスカリバーはシンフォギア世界では現存すら不明の聖遺物だからだ。

「お前は何者だ!?容姿は月詠調だが、全てのパラメータが違う!おまけにエクスカリバーだとぉ!?あれは現存すらわからない伝説上の!!」

彼が叫んだ次の瞬間、黒江のエクスカリバーの衝撃波は切歌のアームドギアとギアのみを切り裂いていた。日本刀を抜くかのようなルーティンから大上段から振るわれた右腕。周囲は全員が呆気にとられ、何も言えない。瞬時にアームドギアがまっ二つに叩き切られ、切歌はギアを斬られる。彼女にかかるはずの絶唱の負荷がエクスカリバーで斬られた事で緑色の光とともに散り、緑の閃光となって消えていく。

『ここにあるエクスカリバーは“存在”だけの物、極限目指して鍛え上げた肉体に宿った剣の魂よ!』

黒江はそう言い放つ。右手を振りながら。ウェル博士はその言葉に信じられないと言わんばかりに、言葉を続ける。

「馬鹿な!?聖遺物と同等の力を生身の肉体に宿すなど……」

「できるんだよ、神と同じ力に目覚めばな!とっとと失せろ!このクソメガネ野郎!天神さまとか将門公とか人から神になった神柱(かみはしら)は一杯いるだろうが!」

黒江は聖闘士としての目をウェル博士に見せ、彼から抵抗の意思を喪失させる。『人を殺し慣れている戦士の凍てついた視線を見せる』事で。彼は無様にその場から逃げていく。だが、既に事は済ませていたらしく、ネフィリムが目覚めようとする胎動の振動が起き始めた。

「時間がない。痛みは一瞬だ。それと、お前の妹の形見は、私が能力で直しておいた」

「なっ!?どうやって!?」

「故障・欠損箇所を空中元素を固定させる事で直した。私はもう……普通の人間じゃないからな」

「空中元素の固定……!?それに普通の人間でないとは……?」

「私は肉体を持つが、神と同格の存在になってるんだよ。当たり前だが、元は普通の人間だったけど」

「あなたはいったい……?」

「元は、ある平行世界の日本陸軍軍人だったおばあちゃんさ、私は。この時代に生きてれば、94歳を超えているはずのな」

ここで、黒江は素性を明かした。日本陸軍軍人と言ったのは、帝国に空軍は無かった事を鑑みてのことだ。

「クリスちゃんが言ってたけど、まさか本当に!?」

「お前らの歴史で言えば、ノモンハン事件から太平洋戦争に従軍したガチガチの職業軍人だよ。これは本当さ」

「それでは、なぜ神に……」

「日本特有の事情さ。日露戦争の英雄の東郷平八郎だって神様になってんだろ?私にとってはそう遠くない昔の人だけどな」

「そう遠くない?」

「大正末期の生まれだしな。さて、行くぞー」

「待ってください、もっと話を……」

「終わったあとで話すよ。すごくややこしいし、山本五十六や東條英機の現物知ってるからな!」

山本五十六。日本海軍で有名な提督の一人であり、シンフォギア世界でも『開戦時の連合艦隊司令長官』として名が知られた大物である。黒江は山本とは源田実を介して知り合い、45年までは、彼の腹心として仕えている関係にあり、彼から『皇国の後事を託されるほどに』信頼を勝ち得ている。『現物を見ている』というのは、黒江の生年月日からすれば納得がいく。

「天空剣・Vの字斬りぃぃっ!」

振るわれた天空剣の持つエネルギーがVの字を象り、マリアとガンニグールの繋がりを断つ。解除されたギアそのものに損傷はない。それを響に渡し、マリアには自分の空中元素固定で直したアガートラームを手渡す。損傷部分は直っており、マリアの妹『セレナ』の残留思念もあり、起動に成功する。それがセレナが姉へ遺した最後の置き土産であろう。

「出来た……アガートラームを……!」

「お前の妹の残留思念が起動を助けたんだ。妹に感謝しろよ?」

「教えて下さい。あなたの本当の名を」

「黒江綾香。元・日本陸軍中将さ」

「さて、問題はこのガキだな……さて、正体明かしたし、これを着てる意義も無くなった」

ギアを解き、普段着姿に戻る。黒江らしいラフな格好である。これが黒江がフロンティア事変でサジタリアスの黄金聖衣を纏う直前までの出来事だ。黒江はその存在が神格に昇華しており、空中元素の固定すら意のままと言う能力を見せた。これが好みの武器を自由に生成できるカラクリだった。原理はかのキ○ーティーハニーと同一のもので、神格になった事で得た能力だった。また、黒江が成り代わっていた調にも、黒江がその存在に成り代わっていたフィードバックが起き、彼女が古代ベルカで得たスキルの補助という形で、その能力が発動状態にあった。黒江の記憶が共有される形でで受け継がれたので、黒江でなければ知らないはずのヒーローたちの事も知っており、ビッグワンの援護に駆けつけた『イナズマンF』のことも知っていた。




――戦場――

『超力招ぉぉ来!!』

「あ、あの声は!」

のび太が指差した方角に現れたのは、イナズマンFだった。マフラーに、稲妻を意匠化した黒いFのマークが描かれている事からも、デスパー軍団打倒後に行方をくらませていた渡五郎が変身したイナズマンである。かつて、共闘関係にあったビッグワンは彼を覚えており、渡五郎=イナズマンも、ビッグワンを覚えていた。

「お久しぶりです、ビッグワン」

「君も来ていたとは……。数百年の月日をどうやって?」

「協力者達の手で、サナギマンの状態で冬眠に入っていたのです。ですが、あなたも知るキカイダー兄弟が、私をこの時代に呼び覚ましてくれたのです」

1970年代からの悪の組織頻出期には、それのカウンターとなるヒーロー達も次々と誕生した。無論、ヒーローたちの中には目的は果たしたものの、埋め込まれた人工心臓の機能停止で死を迎え、功績も存在も忘れ去られた(鉄人タイガーセブン)者もいる。これは極端な例だが、中には二人の子供が合体したヒーロー(バロム・1)もいたし、忍者ヒーローでは早期に活動していた『忍者キャプター』などが知られている。それらヒーローの粗製濫造とも言うべき時代を生き抜いた上で、23世紀にまで名が残ったヒーローは少ない。イナズマンはその壮絶な死闘と、キカイダー兄弟と関係があったために、幸運にも23世紀まで存在が伝えられ、『ヒーロー』で有り続けている。コンドールマンやレインボーマンなど、後世での活動が確認できず、そもそも後継者すら分からない『キワモノ』に比べれば、忍者キャプターやキカイダー兄弟、イナズマンは幸運な例である。渡五郎はガイゼル総統を倒し、デスパー軍団を壊滅させた数年後、ジャッカー電撃隊がクライムを壊滅させたタイミングで眠りについたためか、現役時代とさほど変化のない若々しい姿であり、イナズマンとしても往時の勇姿そのままである。

「数百年ぶりにあれを使います、子供達を下がらせて下さい」

「分かった」

ビッグワンが子供達(ドラえもんズ含む)を下がらせるのを確認し、イナズマンは携帯電話ほどの大きさの道具を取り出し、手に掲げる。すると。雷が走る。天に持つ道具『ゼーバー』で能力を増幅し、雷を迸らせて攻撃を行う彼最大の攻撃『ゼーバーイナズマンフラッシュ』である。現れた兵士たちはこれで消炭となり、跡形もなく消滅した。

「さすがはゼーバーの威力。能力は衰えていないようだね」

ビッグワンが賞賛するほどの攻撃であるゼーバーでの必殺技。彼が往時の実力を保っている証であった。

(あの人が師匠の記憶にあるイナズマンF……。師匠って、本当にヒーロー好きなんだな……)

調は黒江と記憶を共有するようになったため、本来の自分の記憶と別に、黒江の記憶をいつでも参照できるようになったため、既視感を感じる事が多くなった。イナズマンからは子供扱いに膨れていたが、背丈的に『のび太達よりは高い程度であるが、特段高いとはいえない150cm台(156cmくらいには伸びていた)である事、21世紀以降では子供でも158cmより上だったりすることがザラである時代にいると自覚し、ちょっとしょげた。自分の容姿になっても、165cmと、比較的長身の姿である黒江が羨ましく思え、ため息をついた。

「調ちゃん、牛乳飲もう」

「のび太くん〜?」

「大人のぼく、綾香さんの本来の姿くらいになるしさ」

「ぐぬぬ……ずるいよそれぇ〜!」

よりによって、子供時代では、調より背丈の低いのび太に言われたのが聞いたらしく、ちょっと涙目の調。のび太は青年時、175cmの長身へ成長し、顔立ちもそこそこ整う事から、青年期は『イケメン環境官僚』として世間の注目を浴びた事もある。成長後の背丈を自慢されたのが悔しいのか、調は転移以前では見せなかっただろうコミカルな表情を見せた。これは黒江やオリヴィエからの影響だろう。

「あ、スネ夫からメールだ。量産型グレートが現れたから、マジンカイザーが起動しちゃって、さやかさんがカイザーパイルダーで制御して持って来るって」

「ZEROに反応しないで、なんで量産型グレートに?」

「うーん。ZEROはマジンガーZの派生であって、カイザーの兄弟って言えるからじゃ?」

調は、共有された記憶を得たせいか、自然とマジンガー関連の話もできていた。その共有された記憶は黒江の転移直前までの全てであり、同時にそれまでの黒江の抱いた感情や得ていた技能もフィードバックされたため、古代ベルカでの体験を加味して、かなり表情豊かになっていた。それが切歌の劣等感に繋がってもおり、功罪入り混じっていると言える。

「ビッグワンさん、イナズマンさん。僕達はマジンカイザーの出迎えしないとならなくなって」

「ああ、それなら、イナズマンに送ってもらえばいい。君達なら、7人は乗れるだろう」

ビッグワンの提案で、イナズマンのライジンゴーに7人が詰めて乗ることになり、高所恐怖症のドラ・ザ・キッドなどを除いた面々で、イナズマンに送ってもらうのだった。






――ガイアでは、アースにいる古代と別に存在する、『ガイアの古代進』が複雑な表情で中継を見ていた。彼はアースにいる古代進とは似て非なる存在であり、10代でヤマトに関わったアースとは異なり、初航海の時点で20歳であり、熱血漢であるアースと違い、ガイアでは落ち着いた態度を取る青年だった――

「アースにいるお前と同姓同名、いや、別次元のお前自身が気になるのか、古代」

「ああ。アースのヤマトは、俺達の乗るヤマトと別のテクノロジーで作られている……。イスカンダルからもたらされたテクノロジーも全く違う別系統のものだ……。これは別次元に俺たちの地球が落ち込んでいたせいなのか、島」

「俺に聞くなよ」

ガイアでのヤマトクルー達はそれぞれ、アースとは違う立場からヤマトに乗り込む。古代と島も例外ではない。ガイアでの宇宙戦艦ヤマトはアースと別のテクノロジーで構築されているため、アースのように『大日本帝国海軍の戦艦大和の改造後』ではない『二代目の戦艦大和』に等しい。そのため、アースのヤマトが戦艦大和から引き継いだとされる『加護』がない別個体と言える『ガイア・ヤマト』。姿はアースのヤマトと同一だが、竣工時の『アース・ヤマト』相当の性能である。ただし、波動エンジンがタキオン粒子を使用するエンジンではないなど、明らかにテクノロジーの違いがあり、アースのヤマトとは似て非なる存在である――


(後に、ガイアへそのテクノロジーを齎した別次元のイスカンダルからの使者であり、アースの知るイスカンダル王家には存在しない人物『ユリーシャ・イスカンダル』はアースの言う波動エンジンが、自分の知るそれと別種のテクノロジーの産物であると知らされると、驚愕を禁じ得なかったという)




――そのため、波動砲も全く異なるものであり、ガイアの知るイスカンダル人の懸念は的外れであるため、逆にアースのスターシャに鼻で笑われる光景が起こったという。そもそもアース側のイスカンダルは滅びを待つのみの存在であり、やがて地球人と同化していく定めの種族であるため、自身のテクノロジーを本当に無償で地球に提供していた。アースがイスカンダルと同じく、アケーリアス系文明の一つであり、しかもその正統後継者であったためもあるだろう。スターシャ(アース側の)は、別次元で生まれし妹へ辛辣な言葉を浴びせた。自身が古代進の義姉であり、守の妻である事もあり、アースを擁護したのだ。同じイスカンダルでも、ガイア側のイスカンダルは、アースが後に接触するシャルバートと似た経緯を辿ったが、アース側のイスカンダルは地球と接触する時点で死に絶える定めの星であり、そのテクノロジーを地球に託すのも目的の一つだった。かつて覇権国家だった『ガイア・イスカンダル』と『アース・イスカンダル』は全く別の国であり、アース・イスカンダルは『デスラーの悪行を誰でもいいから止めて欲しい』というのが波動テクノロジー提供の理由だ。ユリーシャは姉たちより若いためもあり、既に種族としての存続を諦めており、地球の歴史に名を残す事で『記憶で生き続ける』事を半ば選んでいたスターシャと渡り合うのは無理があった。また、古代守と婚姻関係にあるため、完全に心情はアース寄りであり、既に当時は守の子を成していた(サーシャ)事も、ユリーシャの予想外だった。(最も、スターシャ・イスカンダルというスターシャの同位体も、サーシャ相当の新しい命を宿しているが……)トドメはユリーシャが懸念した波動砲が、アースでは『タキオン粒子砲』であり、次元波動爆縮放射機ではないと告げられた事、多元宇宙論により、次元波動爆縮放射機を使用し、宇宙に穴を開けても、ポテンシャルのより低い別宇宙への道を開くだけだと明言された事だった。また、ガトランティスなど、波動砲すら無力化させる防御を持つ国家も存在したアースの労苦を伝え、例え、ガイアの波動砲をユリーシャらが規制したところで、アースの波動砲は別テクノロジーで生み出された『類似品』でしかないし、アースはガイアと同一政体でもない。むしろ銀河の覇権国家に成長し始めた国家だ。アースの成長こそがゲッターの意思である事も掴んでいたスターシャは、ゲッター線の存在をユリーシャへ告げた。地球人の闘争本能の強さの理由と、同胞同士での血みどろの戦いを飽きるほど見てきても、戦いを止めないアースの人間の凄まじい闘争本能の源。ガイアは『アンチゲッター線』が存在しており、そのためか、アースの人間に比べると穏やかな面が見られる。スターシャはその面を話すことで、別次元の自分の『妹』であるユリーシャを落としにかかった。



――アンチゲッター線は、正式には反ゲッター線と言い、正反対に闘争本能を抑える作用がある。これは果てない闘争本能で、創造した生命が早期に自滅するのを嫌がった大神ウラノスがゲッター線の対になるエネルギーとして創造したものである。そのバランスは危ういもので、理性が強すぎても、生存欲が失われ、闘争本能が強すぎても、同族殺しに歯止めがかからずに自滅する。それはガイアを過去に襲ったバーム星人は母星が失われる以前の古代は惑星間戦争を行っていたが、母星が失われる直前には単一惑星国家に零落していた事で証明されている。それを学んだアースはジオン残党やティターンズ残党に対し、融和策を打ち出し始めたが、もはや連邦への復讐が行動原理になっている彼らはそれらを受け入れなかった。その傾向はジオン残党に強く、サイド3の共和国過激派がまるごとネオ・ジオンに協力した事もあり、ティターンズのような『話せば分かる』精神状態ではなかった。シャアが父の理想を『アムロとの決着をつける事を、合法的にやるための方便』とする本心であった不幸もあり、ジオン残党はもはや復讐者の集団と化していた。これこそ、亡き早乙女博士の言葉で言うなら、ゲッター線の負の作用に堕ちた者達といえる。ロマーニャ侵攻作戦も、ティターンズは最初、実のところは政治的意義の小ささもあり、アレクセイ含め、あまり乗り気でなく、ネオ・ジオン側が説得して行わせたものであった。MSも元ティターンズ機より、ネオ・ジオン機のほうが多い。バダンはその仲介を行った関係で参戦している。ティターンズを動かしたのは『連邦への復讐』であるため、ネオ・ジオンとティターンズはバダンの口車にまんまと乗せられたのだ。元を辿れば、バダンもナチス・ドイツの残党であるため、ナチス・ドイツ残党がネオ・ジオンとティターンズを利用したと言える。


「俺達はアースの戦いに駆り出されるのか?」

「それは分からない。だが、同じ地球人だぞ、古代」

「確かに彼らは俺達と同じような文明だが、同じ名前を持つだけの別の星だ。あんな同族殺しで地球の総人口の半分を殺すような……」

ガイアの古代は、アースの地球人に嫌悪を垣間見せた。一年戦争の凄惨さに引いているのがわかる。彼はアースの古代のような『侵略者には死を!』と苛烈になる傾向が無く、その点では、ガミラス本星を壊滅させた彼とは一線を画している。これは遊星爆弾で両親が死ぬところを直接目にしたか、そうでないか(帰ってみたら吹き飛んでいたか、流星爆弾の三浦半島への直撃を目にしたか。元は虫も殺さないような性格だったアースの古代だが、両親の死が彼を『侵略者へは容赦しない』苛烈な男に変えたのも、遊星爆弾のせいだ)、幼少期の性格の違いだった。

「それに……向こうの俺は……苛烈すぎる。乗組員の8割を犠牲にしてでも勝つ事を優先した……。それは勝利と言えるのか?」

アースのヤマトの武功はガイアにも鳴り響いているが、艦長代理となった『自分』の選択が八割の乗組員を死地に追いやったと言う事実は、まだ一介の三尉(ヤマト乗艦後に一尉拝命予定)の彼には信じられないほど無慈悲に思えた。

「敵の意図を挫いたという意味では勝利だ、勝ち負けというのは何処に目標を置くかで変わるものだ。 かの艦の生き残りという点では戦術的敗北、戦略的にはギリギリの勝利とも言える」

「土方教官……」

「それに向こうでの俺は、連邦艦隊の司令として戦い、死んでおると言うしな」

古代と島のもとに現れたのは、彼らの教官であった土方竜。ガイアでは存命だが、アースではアンドロメダと共に壮絶な戦死を遂げている。それを聞いているためか、どこか自嘲気味でもあった。

「どういうことですか?」

「アースでのことだが、俺はアンドロメダ級戦略指揮戦艦の指揮を取り、戦死しておる。直接は関係ないが、我ながら、拡散波動砲を要塞に使用すべきではないと思ったものだ」

アースでは、白色彗星を取り柄る最良の手段で迎え撃ったが、『ヤマトよ!生きているなら聞いてくれ!……』と言い残し、壮絶な戦死を遂げた土方。その音声記録を聞いたらしい。

「たしかに、アースでのお前は乗組員に犠牲を強いたかも知れん。だが、それを決定づけたのは、向こうの俺の今際の際の『生きて最後まで戦え』という言葉だ。だから、お前は俺の命令に従っただけと言える」


土方は、アースではそれが最後の言葉となった。そのためか、古代は『断固として戦う!!』とズォーダーに啖呵を切っている。その責任を感じていたらしい。

「教官……」

「向こうのお前は、お前の可能性の一つだ。そう嫌うな。たどる運命も違うやも知れんのだからな。島、お前もだ」

「そうですかね?」

「うむ。俺はアンドロメダ艦長として死んだが、ここではどうなるか分からんしな」



土方も言う通り、アースではデザリアム、ボラー戦役を終えた後、ディンギル戦役で島大介は悲劇的な戦死を遂げる未来が存在した。黒江らは前史でその場に居合わせており、黒江は島の被弾に気づけなかった事を後悔し、古代と同じ位に号泣している。これが黒江が今回において『防衛本能が強い』理由の一つだ。黒江はこの時の光景が転生後のトラウマの一つであり、今際の際に『テレサ……君のもとへ……』と言い、テレサを愛していた事、雪に惚れていた事を告げて眠るように息を引き取る悲劇的な最期、古代と雪の悲痛な表情が黒江に強いトラウマと後悔を埋めつけた。続く、沖田十三の自決を止められなかったのもあり、黒江はギィンギル戦役で心に深い傷を負ってしまい、そのトラウマが転生後の行動の心理だった。智子と圭子は、そのトラウマが黒江の行動原理に影響を及ぼしている事に同情していた。転生後も、寝言で『古代さん……ごめんなさい…』と呟いた事があり、古代の一番の親友だった島を死なせたという罪悪感を引きずっているため、新見薫にもそれを伝えている。新見は「そのトラウマが原因の一つと言うのは、間違いないわ。防衛本能が暴走しやすい状態になっています。彼女の行動を否定しないように努めてください。何が何でもです」と、ある時に二人に告げている。黒江は安定しているように見えても、実際はボロボロに近いというのが判明し、調の姿を得たのも、精神の破綻を防ぐための手段である事を知り、今回はミーナをねじ伏せる方向に向かったし、仮面ライダー達が『俺達が勝つ事で、どうにかできるかも知れん』と買って出てくれ、7人ライダーが積極的に戦線に出ている理由に繋がっていた。本郷猛は作戦直前、変身した黒江の頭にポンと手を乗せて、『大丈夫だ。俺たち仮面ライダーは死なん。必ず勝って帰ってくる』と元気づけた事がある。その際、感極まって本郷に抱きつき、本郷は一文字に冷やかされている。本郷は見かけが野暮ったいが、始まりの男らしい威風堂々たる風格があり、黒江から絶大な信頼を寄せられており、仮面ライダーらでは最旧式のサイボーグながら、膨大な戦闘経験があるため、後輩らより苦戦率が下がっていく恐るべき男だ。


――このように、人の運命はどうなるか分からない。土方はアースで死んでいったが、ガイアでは健在である。また、山南修は名前以外の共通点が無く、沖田十三を始め、年嵩に見られる外見がアースの提督陣には多い。レビルも、実のところタイムスリップ後、一年戦争から多少歳を重ね、60に手がかかる程度と、見かけより若い。アースの古代も実はまだ20代前半である。(デザリアム戦役寸前で、23歳)そのため、歳相応の外見のガイア古代とはどこかが違う。

「お前達はガイアの誇りを示せ。アースのヤマトの影武者に留まるな。アースのヤマトは英雄だが、ガイアにはガイアの誇りがあることを忘れるな」

土方はアースがガイア・ヤマトを大ヤマトとGヤマトの影武者として扱うであろう予測を立てており、『ガイア・ヤマト』固有のアイデンティティを確立させろと発破をかけた。アースのヤマトはアースの象徴であり、失われる訳にはいかないので、偶然、ガイアが完成させたヤマトを、自分らのヤマトの影武者扱いする事が、ガイアでは当然ながら予測されていた。

「当然、アースが屈伏させたガミラスと、我々のガミラスも別の国家だ。アース側のガミラスはガルマン・ガミラスとして再建され、アースの同盟国に転じているそうだ」

「なっ!?」

「これはアースのデータベースを見たほうが早い事項だ。デスラーという国家元首が支配しているのは同じだが、ガルマン・ガミラスのデスラーは高潔な思想の持ち主らしく、お前の親友とのことだ」

「!?」

ガイア古代は困惑した表情を見せた。アースの自分はガミラスの国家元首と個人的親友であり、それはかつてのわだかまりを吹き飛ばすほどに篤いものである事が示唆されたからだ。

「教官、それは……」

「アースでは猫も杓子も知っとる事だそうだ。我々の知るガミラスを率いる男が、どういう男とは分からんが……それは頭に入れておけ」

「……」

困惑のガイア古代。彼らの知るガミラスは、ガルマン・ガミラスとは別の可能性を辿ったガミラス帝国であり、国号も『ガミラス帝国』と並行して『大ガミラス帝星』も使用されている。軍の階級制度はガルマン・ガミラスより細かく細分化されていて、ナチス・ドイツ軍を思わせる。そのため、アースを『第二テロン』、ガルマン・ガミラスを『マガイモノ』と呼んでおり、ガルマン・ガミラスとも戦争に突入している。そのためか、不幸な『同位国』同士の戦争に突入したと、ガルマン・ガミラスやアースは見ている。

「奴らはアース側の自分達にさえ、戦争を吹っかけているそうだ。奴らは何を考えているのか…」

土方が危惧するように、デザリアム戦役が間近のアースにガイア側のガミラスは戦争を仕掛けており、偶々にガルマン・ガミラス籍の使節団の乗る艦が巻き込まれた事から、アースと共同戦線を張ったガルマン・ガミラス。同位国同士の戦いともなってしまったわけだが、既に白色彗星帝国の技術をも手中に収めたガルマン・ガミラスと、30世紀からの技術提供で飛躍したアースの敵ではなかった『ガイア・ガミラス』。この日までにガイアが数百年落ち込んでいた次元からやってきた艦隊は、哀れにも、待ち構えていた艦隊の拡散波動砲の餌食となった。結果、これでガイア・ガミラスとアースは戦端を開いたが、ガイアと違い、アースは初っ端から優位に戦闘を展開している。ガイア・ガミラスはあまりの衝撃でパニック状態なのは想像に難くない。それを考える三人だった――







――タキオン粒子を主エネルギー源とする『真の波動機関』を有するアースとガルマン・ガミラスは軍事技術面で大きく優位に立っており、パニック状態に陥ったガイア側のガミラス帝国。(アースからは『エンパイア・オブ・ガミラス』と呼称がつけられ、ガルマン・ガミラスと区別された。)本星では、まざまざとガイアに見せていた性能差をそっくりそのまま返された事で、軍官僚たちがパニック状態に陥っていた。

「こぉれは、どういうことであるかぁ〜!?」

抑揚の大袈裟な言い回しをする高官。ヘルム・ゼーリック国家元帥。元々、ガミラスエンパイアの貴族の出で、純血主義者である。特徴的な声もあり、妙な存在感があった。彼らが問題になったのは、彼らが『テロン』(現地語で地球)の水雷戦隊と一戦を交えた際の映像だが、ガミラス側が『蹂躙に等しい差で粉砕される』ショッキングなもの。ヴェルテ・タラン(ガルマン・ガミラスのタランの同位体の一人で、二人兄弟の兄にあたる)は技術部解析の結果、『タキオン粒子』を主エネルギー源』とする機関を積む新型であると判明したと伝える。

「タキオン粒子だと……!?馬鹿な、テロンの技術ではその使用すら夢物語のはずだぞ」

ガル・ディッツ提督が驚きの声を上げる。タキオン粒子の利用はがガミラスといえども、理論上の話である事実があるため、地球人の技術レベルがそこまでというのはあり得ないと断言する。だが、ヴェルテ・タランの次の言葉は驚愕の事実だった。

「いえ、この艦隊は……ゾルを挟んでちょうど反対側に存在が確認された、第二のテロン――仮に『アーゼン』と呼びます――の所属であります」

彼らが仮に『アーゼン』と呼ぶその惑星こそが、ドラえもんらのいる地球―『アース』―だった。アースはガイアよりも遥かに軍事技術で突出しており、タキオン粒子を外宇宙進出のエネルギーの一つとして使用している。つまり彼らはガイアの艦隊を攻撃するつもりが、当時既に銀河連邦最強国家の一角として名を馳せ始めていたアースの『アースフリート』を攻撃したのだ。

「アーゼンとな?」

「アーゼンは元々、ゾルを挟んで正反対に位置していた惑星で、かの星系の真の第三惑星と判明いたしました」

彼らも信じがたいが、太陽を挟んで正反対の位置に同じような文明を持つ惑星が双子のように存在する。宇宙の神秘とも言うべき事実だった。

「何故、そのような事がわぁかったのだ?」

「推測ですが、テロンとアーゼンは元々、互いに対になる惑星として生まれたのでしょう。それがやがて人類が生まれ、同じような進化を遂げる。我が帝国領の状況からも、それは実証されています。二つの惑星の軌道にはあと四つの重力特異点があります。それで正反対の位置の同一軌道が成立しているのでしょう。下手をすれば、もう一、二個は同様の星が……」

タランの推測ではあるが、アースとガイアが対になるのなら、あと一、二個の惑星が同様にあり得ると。正反対の位置の軌道はズレが大きく、アースがガイアの観測に成功したのも偶然と技術発展の賜物で、理論上であるが、太陽系にあと二個は『地球』が存在して然るべきとした。最も、技術発展が進んだアースでさえも、ガイア以外は観測できておらず、その残るモノは謎だった。ガミラスエンパイアのその後の記録によれば、地球の7割の質量を持つ暗黒物質の塊、反物質で構成された惑星がその内の二つを占めていたため、地球型惑星であるのは残りの半分だったそうな。




――F-104Jの機内での通信――

「黒江大佐(昇進辞令が届いた)。あなたは何を考えて動いてるの?」

「自分の信じてるモノのためです。前史で聖戦を生きぬく内に、『正義とは正しいかどうかだけで、善でも邪でもない』って悟った私は、自分の信じたモノのために生きた。やらない善よりやる偽善とも悟った…。ミーナ大佐。貴方の言葉に重みがないのは、信念が無いからですよ。ドラえもん達のように、今生きてる鉄人兵団を否定して抹消してでも、『より良い世界を作ろうとする』ほどの信念が無いからだとは申しておきます」

ドラえもん達はメカトピアの歴史を一度、否定して抹消した。歴史の復元作用で23世紀にずれ込んだとは言え、20世紀に攻め込まれる歴史は抹消した。それを後悔せず、良い歴史のための善行としているのは、メカトピアの傲慢さを否定するため。のび太からして、ジャイ子との間に成した子供達を否定し、ノビスケ達を受け入れているので、確固たる信念で行う行為は、何かの犠牲を伴うのだと理解している。あののび太でさえ。

「歴史改変は犠牲が伴います。のび太でさえ、ジャイアンの妹との7人くらいのガキより、しずかとの間の一人息子を取った。つまり私らが活躍する事は、坂本や竹井の活躍を幾分か、吸い取っていることでもある」

「ああ。改変前の私の活躍をお前が食ったの多いしな」

「どういうこと?」

「扶桑海での私の見せ場が、いくつかこいつらに盗られてるんだよ、ハッハッハ。お前、割と早い内から動いてたからな」

「その代わり、リバウでスコア伸ばしたろ?改変前じゃ届かなかった領域に、今は届いたからな。お前と宮藤が担ったはずの役目を一部代行してるって自覚はあるさ。最も、宮藤は宮藤で、陸戦的意味で別方向に行っちまったが」

「あれなぁ」

「あれは予想外だった。マジで」

「アイツは今、宮藤芳佳と角谷杏のハイブリッドのような人間だからなぁ。空戦で武蔵のように強く、陸戦でも精密射撃の鬼、ときたもんだ」

「どういうことなの?」

「あいつは空軍だろうが、陸軍でもエースになれるような、ものすごい才能を持ったんだよ」

「な!?」

「転生というのは、時としてすごいのを生み出す。しかも医者だから、リベリオンなら浸透工作部隊グリーンベレーの隊員になれるぞ」

「目眩がしてきたわ……」

「私だって、ケイがまさかあんなになるとは……なぁ、坂本」

「ああ」

「?」

「あいつ、前史の途中から針が振り切れてな。バーサーカーなんだ」

圭子は黒江が霞む程の狂戦士となった。黒江が可愛いほどに血で血を洗う闘争を愉しいとする倫理観を隠し持っている。ティアナとなのはのルートで『魔砲使い』にもなっており、実のところ、ヤクザを潰すわ、青年期のび太と二人でデルタフォースを返り討ちにし、全員を再起不能にし、デルタフォースを10年単位で機能不全に陥らせたなど、武勇伝に事欠かない。その滾る闘争本能は、赤松をして『ケイの小僧は末恐ろしいぞい』と言わしめている。

「『一ついいこと教えてやる。銃ってのはな、撃てて当たりゃいいんだよ。』これがあいつの晩年期にかけてのキメ台詞だった。普段のあれは素の一端だけど、一皮抜くと…」

「あいつ、二丁拳銃を好むようになったからなー。のび太の奴、ブラックラ○ーンでも見せたんじゃなかろうか?」

「あるな。イースト○ッドとかジュ○アーノ・ジェンマの影響で、ポンチョ着てた事もあったろ?」

「あー、マカロニ・ウエスタンが流行ってた時期なー」

と、未来を知らないとチンプンカンプンな会話である。前史の記憶がないと、何が何だか分からないため、ミーナはちょっと羨ましそうだった。




――一年後、黒江は太平洋戦争の軍資金確保という名目で、スティーブ・マッ○イーンよろしく、仲間内でリベリオン本国の連邦準備銀行を襲撃し、映画宛らの大事件を引き起こす。その際に圭子の銃撃戦スキルが+に働いたのはいうまでもない。その際には本国軍からの追撃を受けたが、返り討ちにして逃げおおせ、重慶喪失対策に、その奪った金塊が使われたという。これは40年代当時の金本位制の兌換貨幣であったドルの盲点を突いた犯行であり、リベリオン本国は警察、軍を総動員して追うという、映画『ガントレット』さながらの状況ながらも、黒江達はそれを突破した。この事件はリベリオン本国最悪レベルの不祥事であったという。黒江は準備のため、46年の6月から調の容姿で潜入し、PTボートの入手などを本国軍内の協力者『ダグラス・マッカーサー』に依頼したり、地理の把握などに努め、7月に実行する。『LAGOON』。それが扶桑軍の戦争前最大の諜報活動だった――



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.