外伝その134『連邦軍の残党狩り4』


――合流したのび太と一同。のび太はマカロニ・ウェスタン姿で銃を使いこなし、すぐに抜群の存在感を見せる。彼らしい登場の仕方であった――



「僕は男だけど先頭切って戦うのに向いてないから援護くらいしか出来なくて悪いね」

「のび太くんの援護が有るときは、後ろを気にしなくても良いのがホントに助かるんだよ!」

初弾必殺ののび太の腕は、モードレッドから見ても一流と言えるものだ。切歌が嫉妬するのも無理からぬ事だ。モードレッドは年長として、三人を率い、二人の仮面ライダーと共に進撃してゆく。調が絶賛するのは、のび太の確かな援護の手腕と、銃の腕。クリスとは別の方向性の技なので、一概には比べられないが、調は野比家で暮らす数ヶ月の内に、すっかりと全幅の信頼を寄せるまでになっていた。

「調、さっきの魔球、どこで覚えたのデス?」

「師匠の記憶やガイちゃんに習ったんだ。今の私なら投げられるし」

「うぅ、うらやま!しい!!!!デス!!」

「今、羨んでも始まんねーだろ、緑のガキンチョ」

「ガキンチョじゃないデス!ワタシは暁切歌デス!」

「オレの足を引っ張るんじゃねーぞ」

「ワタシはシンフォギア装者デス!大昔の甲冑着てるだけのアナタに……」

「あいにく、オレは英霊なんでな」

モードレッドは素で装者を上回る力を持つ。中のペリーヌがモードレッドを受け入れ、体の親和性が良くなったため、違和感は消えている。

「じゃ、ちょっと攪乱してくる!待ってろ」

兜が出現し、周囲から気配を消して吶喊してゆくモードレッド。騎士が一騎当千であれば、戦争に勝てた時代の人間である事の証明であった。


「なんで見えなくなるデスか!?」

「元々は正体を隠す宝具だったんだけど、正体を隠す必要が無くなったら存在を隠す様に変質したみたい」

「石ころぼうしみたいなものさ」


「お、すげえ。怪人も形無しだなこりゃ」

「どうします?先輩」

「怪人軍団の中に大物がいた。見ろ、黄金狼男だ」

「ゾル大佐が?」

「そうだ。どさくさ紛れで大物入れてきたな。死神博士の策略か?」

RXとストロンガーがその存在に気がついた幹部怪人『黄金狼男』。ゾル大佐の変身体である。ゾル大佐はショッカー大幹部の一人にして、元ドイツ国防陸軍大佐。モードレッドが斬りかかったのに『気づき』、王剣を白刃取りしてみせた。

「フハハハ……この俺には不意討ちは通じんぞ、小娘」

「何ぃ!?テメー、ただの雑魚じゃなさそうだな?」

「その通り。俺は狼男。して、その実態は『バカラシン・イイノデビッチ・ゾル』。ドイツ国防陸軍大佐よ。そこらの怪人共とは一味違うぞ」

黄金狼男、いや、ゾル大佐は高笑いして見せた。都合、二度目の黄泉がえりだからか、生前よりもパワーアップしたらしく、モードレッドの力にも動じない。

「てめぇ、どうしてオレの存在に気づいた?」

「匂いだよ。存在を消しても、匂いまでは隠せんからな。ましてや俺は改造人間。動物よりも鼻が利くのだ」

ご丁寧に説明する狼男。実際、匂いは有力な索敵手段であり、ドラえもんの石ころ帽子でさえ、魔界の動物の鼻には誤魔化せず、尽くが捕虜にされた事もある。ゾル大佐は魔界の動物よりも鼻が利くため、モードレッドの僅かな匂い、犬でも気づかないようなものでも感知できたのだ。

「喰らえ!」

片腕の指から超小型マシンガンの弾丸が放たれ、モードレッドはその不意討ちで吹き飛ばされる。甲冑のダメージは少ないが、跳弾で兜の破損が起き、モードレッドは兜を収納する。すると、額から血を流していた。

「野郎、妙なところにマシンガン仕込みやがって。額を切っちまったぞ、オイ。オレの兜を破損させたのは褒めてやるぜ?ゲルマン野郎」

「フッ。食事がクソのように不味い貴様の国と違い、我が組織の科学は優れているのでな」

「ハン、テメーの国だって、ジャガイモとビールしか能ねーだろ?」

モードレッドはゾル大佐とやり取りを交わす。ペリーヌから得た現代知識で物を言うため、ドイツ人の主食を揶揄してみせた。最も、モードレッドの『母』であるアルトリアは、生前の時代基準でも『雑』な食事で済ませていたので、そこの辺りはアルトリアがいたらグサリと突き刺さるであろう事項であるが。そのため、野比家ではアルトリアがくしゃみしていたとか。

「さて、勝負といこうじゃねーか!」

「フッ。俺の能力は弾丸だけではない」

「!」

「伊達に狼の改造人間ではないのだよ!」

黄金狼男は生前よりパワーアップし、より狼の特性を得たらしく、スピードでモードレッドすら上回り、それでいて2号ライダーと互角のパワーを以って、腹を殴り、吹き飛ばす。すぐに態勢を立て直し、斬りかかる。

「フランスも美食にはしりすぎてもろくなもんじゃねぇけどな!」

「同感だ!」

狼男はスウェーを使い、剣を避け、モードレッドにコーススクリューパンチを見舞おうとするが、モードレッドはパンチを避けて、懐に潜り込んで、掌底での一打を加えた。類い稀な戦闘センスを有する英霊らしいその戦いぶりは、モードレッドの才覚を示していた。

「見ろ、アレが戦闘ってもんだ」

「あたしたちのはガキのお遊びだってのか、兄ちゃん!」

「お前らは異形の怪物とのドンパチ主体で、純粋な人との経験は僅かだろう?だから、あいつにも遊ばれるんだ」

ストロンガーはクリスにズバリと言う。響も頷く。実際、シンフォギア装者は対人戦闘になるケースが極僅かであるため、黒江に終始弄ばれていたし、どう戦術を組み立てるのか?という点でも、のび太以下であると示す。

「こいつだってガキンチョじゃねーか!」

「あの、先輩。のび太君は2000年でこの年齡ですからね?私達の時代だと、28歳行ってます」

調は重大な事を告げる。のび太の生年月日を。のび太は装者全員より年上の昭和63年8月生まれなのだと。

「なぁ!?昭和って……もう30年近く昔の……」

「そうだな。俺は改造人間だから22歳の外見のままだが、お前らの時代だと、もうジイさんだぜ?昭和20年代生まれだったしな」

「それ、言い出すとやたら面倒なんで、今の年齢で考えといてください!」

「だよなぁ。本郷さんと一文字さんなんて、昭和20年の生まれだったし」

のび太の言うとおりだが、茂も実は改造人間なので、歳を取らなくなったが、本当の生年月日は昭和20年代なので、装者達の時代では高齢になる。本郷と一文字に至っては、終戦の年の生まれであり、のび太の時代で55歳になっており、調の時代では70歳に届く高齢だ。

「錬金術師と違って、あんたらは現代の延長線上の科学で改造されてるんだろ?そこんとこもわかんねー!」

「そこはな。お前のとこの解析班に俺たちの体見せたら驚くだろうさ」

ストロンガーは、自分達の体は改造当時の科学力を超越した水準の科学で改造されていると明言した。後に驚かれるが、改造当時では製造できないはずの水準の極小集積回路が使われていたのが、彼らの持つ驚異のメカニズムである。組織から脱走した技術者達が外の世界の技術発展を促したのも皮肉な話である。実際、2100年代からの20年ほどがその頂点であったが、その超技術は失われ、代わりに『兵器』としてのロボット技術が長足の進歩を遂げた。医療関係技術でも、ガンすら治すオールマイティーワクチンの製造技術も失われたが、それを人は良しとした。ドラえもんの登場で、オールマイティーワクチンの再製造案が決議されたが、それに反対するのは、スペースノイド、とりわけサイド3とスィートウォーター居住者である。そのため、今や、ジオンはスペースノイド間でも『異端者』、『のけ者』扱いになりつつある。皮肉な事だが、地球連邦がスペースノイドに融和策を講じた事で、今度はコロニー間の格差が生じ、今度はコロニー間の戦争の火種が生じるという、ジオンにとって皮肉でしかない状況も、デザリアム戦役の直前に醸成されていた。つまるところ、ティターンズもジオンも、23世紀の星間連邦樹立後の政治状況下では『時代に取り残された者達』の烙印を押されつつあるのだ。それ故、互いに利用しあう関係であるものの、平行世界に干渉してまで、生存権の確立を図っていたのだ。そうした中、装者と二人のライダー、のび太らと怪人軍団の戦闘がヒートアップするが、別の戦場もヒートアップしていた。




――別の戦場――

『Gスマッシャーパーンチ!!』

「おっ、その声は!」

『すまんな。ちょっと別働隊を叩いていて、遅くなった』

「鉄也さん。ジャンヌの事は?」

『ケイちゃんから話は聞いた。英霊に現在の勇者はどういうものか、見せてやろう」

自信満々の剣鉄也。乗機のマジンエンペラーGは現時点最新最強の魔神の一つ。エンペラーブレードを両手に持ち、MSをバラバラにする。

『さて、あのアレキサンドリアの改良型を落としてみせよう!』

マジンエンペラーが右腕を天に掲げると、空が曇天になり、雷が走り、マジンエンペラーに降り注ぎ、そのエネルギーが圧縮され、エンペラーの拳を包み込む。ジャンヌは驚く。雷を自在に操れるのは、英霊でもそうそうない所業だからだ。

『超必殺パワー!!サンダーボルトブレーカー!』

グレートマジンガーやグレンダイザーのサンダーも児戯に見えるような超高圧電撃を発射する。もはや光線といえるほどの極太のものを。サンダーボルトブレーカーの光芒が空間を歪め、そこにアレキサンドリア級のミノフスキークラフト搭載型がすっぽり入り込む。エンペラーが拳を握り締め、空間ごと爆破する。雷の力をここまで制御できるのは、英霊でも中々いない。

「雷の力をあそこまで制御できるなんて……それも機械の力で……」

「エンペラー、ゲッター線入れたから、もう単なる機械じゃねーよ。ありゃ魔神皇帝だ、ジャンヌ」

エンペラーは従来のマジンガーよりもゲッターロボに近い特性である。そのため、マジンガーの名を持つグレート系譜のマシーンで唯一無二、マジンガーZEROと互角に戦える機体であった。そのため、光子力とゲッター線のハイブリッド動力を持つため、ゲッター線の緑の光も纏う。

「魔神皇帝……」

「そうだ。Zを、Gを超え、宇宙の王者をも超えるスーパーロボット。科学の力が生み出した機神(デウス・マキナ)だ!」

魔神皇帝。その名を持つ魔神は三体いるが、ZEROはその内の二体を超えてしまった。それを抑えるために、ゼウスが急がせた魔神がマジンエンペラーなのだ。つまり、マジンエンペラーは鉄也がゴッドと並び立つために、ゼウスが鉄也のために用意させた魔神であるのだ。それは鉄也が命を落として地球を守っても、グレンダイザーが地球文明を滅亡させてしまう世界線があるために、甲児と融合した存在であるZ神が用意した、鉄也への償いだったのだろう。

「デウス・マキナ……。あれが……」

「因果すら捻じ曲げるからな、あれくらいだと。お前の宝具の因果であってもな。デウス・マキナが敵になるんなら、それ以上のそれで対抗するしかない。大艦巨砲主義も間違いじゃないって事さ」

スーパーロボットはある意味、『大艦巨砲主義』を謎るように、加速度的に強大になっている。MSやVFとスーパーロボットの境界線も曖昧になってきている昨今、ZEROの存在がカイザー級の増加を招いたのだが、グレートの性能では対抗しきれないMSも出てきているので、その事は歓迎されている。生真面目なジャンヌだが、機神が普通に戦争で使われる事には、ルナマリアの持っていたデストロイガンダムの記憶からか、投入も仕方がないと思っており、意外にも反対しなかった。

「ん?意外だな。お前のことだから、エンペラーに反対するかと思ったぜ」

黒江に言われ、ジャンヌはこう返した。

「デストロイの記憶があるので、その辺りは割り切ってます。あれはこちらのサイコガンダム系統に相当しますが、災厄をもたらしましたから。シンの心にも」

「ああ、ステラの事か。シンはフリーダムにステラが殺された後の世界線の住人だったから、カミーユさんも説明に苦労したとか聞いたな」

「ええ。私が完全覚醒する前、オルタだった頃にシンがそのような事を言っていたのをおぼろげにですが、覚えています」

ジャンヌはオルタであった時期の記憶はおぼろげである。言動が荒かったのだけは覚えており、シンがステラのことで半信半疑だった時期の記憶は殆ど覚えていない。そのためのコメントだ。

『ティターンズの残党共はここを主戦場にし始めたようだ。MS部隊と陸上戦艦部隊が移動を開始している。奴ら、スペインのバルセロナあたりから上陸したか?』

「いえ、あそこはこちらの制海権下のはず。ポルトガル側からでは?」

『ポルトガルに軍港あったか?』

「いくつかは。近代では小国に転落しているので、私もルナマリアさんの記憶を含めても、数回しか見てませんが…」

ジャンヌの時代、ポルトガル海軍は絶頂を迎えつつあったが、生前は微塵もポルトガルには関わっていない事、ルナマリアとしても、地上の地理に疎かったのが重なり、ポルトガルには殆ど無知であった。

「いや、マラガじゃね?陸上戦艦って一年戦争の時のビックトレーやヘビーフォーク級でしょ?航続距離に、ブリタニアとの衝突があるから、ジブラルタルは避けるはずっすよ、鉄也さん」

『しかし、アフリカからイベリア半島までは200キロ以上だ。それに、陸上戦艦の大移動をジブラルタルのブリタニア軍が見逃すか?』

「ヘビーフォークの砲撃は下手な旧式水上戦艦なら、一撃ですよ。H部隊、今じゃ強力な新造艦置かれてなかったはずだし」

H部隊。ブリタニアが戦前からジブラルタルに置く艦隊だが、その戦力は旧態依然としており、旧式戦艦を鏡面世界に入れ替えた際にも置く始末だった。これについて、小沢治三郎は呆れたという。

「戦略的要所なのに、なぜそんな編成の部隊のままに?」

「アフリカ戦線に負けた後、国境警備部隊のようになってたから、グランドフリートの強化一辺倒になってたんだろう。しかし、編成表出してみたが、こりゃ古いぞ。レナウン級巡洋戦艦、空母イーグル、戦艦ヴァリアント……。一次大戦式のポンコツだ」

『いや、年式が新しくとも、初期トラブルを出しきらないと前線には出せないし、要所には古参の多く乗る艦を置いておくと役に立つ。ブリタニアは古い艦に古参が多いから、軽視とはいえんな』

ブリタニアは本国艦隊を強化し、ダイ・アナザー・デイ作戦に臨んでいる一方、旧式艦の複数をジブラルタル守備に回している。ブリタニア海軍の1945年当時の編成は『本国艦隊』(グランドフリート)、『地中海艦隊』、『東洋艦隊』などがあり、H部隊はその内の一つであった。今回の作戦においてはグランドフリートが主戦力と見なされ、多くの新鋭艦が配属された一方、H部隊は旧式艦主体であるため、黒江やジャンヌが訝しむのも無理はない。ジブラルタルの守備が目的なので、ティターンズの陸上戦艦と一戦交える意味合いも薄い。合理的判断ではある。

「ジブラルタルに手を出させない目的は達してるけどなぁ……どうも」

『マラガ辺りに拠点を築くのは想定内なんだろう。ジブラルタルを取られたら大事だからな。マラガとポルトガルに拠点を築いて、そこを叩く算段だろうな。ここは鏡面世界だ。世界遺産に気を配る必要もないし、住民の反発もない。ここは戦闘には良い世界と言える』

「確かに鏡面世界だから、被害は気を配んなくていいのは分かるんだけど、気が引けるなぁ」

「逆に言えば、彼らも流石に世界遺産を吹き飛ばすような状況の戦闘は避けたとも言えます。ジオンが散々に行っていたからこそ、でしょうが」

「奴らの地球至上主義が今回はいい方向に作用したってか」

「そうかもしれません。これがジオンならお構いなしですよ、たぶん」

「あいつら、オペラハウスとか、北京の紫禁城壊すのも躊躇なかったからな。だから、ティターンズみてーな連中を生むし、マイッツァー・ロナに馬鹿にされてたんだよな。まぁ、結局はブッホ・コンツェルンもザビ家と同じ穴の狢だったって話だけど、ジオンはやったのが宇宙戦争で霞んだとは言え、同じスペースノイドの同胞を億単位で虐殺だもんなー。んなことしたから、異端者だとか、過激派のレッテルを貼られるんだよな、スィートウォーターやサイド3のジオニスト連中」

『お喋りはここまでだ。敵機だぞ』

「レシプロ戦闘機のよう……ですね?」

「MSと特機(スーパーロボット)相手に、いくら400機近いとは言っても、レシプロ戦闘機だぁ?ハエがたかりにくる気分ですぜ、鉄也さん」

『やるしかあるまい。あいつら相手に下手な武器はオーバーだ。なるべく弾薬とエネルギーは節約して戦え』

「了解っす。はぁ。まさか、F6FとコルセアをMSでやるたぁな。これならVFで出たほうが良かったかも」

「でも、これ、いい対航空機戦の特訓にはなりますよ?何事も精進です」

「……そっか?これじゃ、ルーチンワークになりそうだぜ」

黒江はレシプロ戦闘機相手の戦闘だと、ルーチンワークになりかねない点を考え、プルトニウスのコックピットでため息を付く。敵はまだまだ来る。今度はリベリオン軍の戦闘機だ。時代相応のレシプロ戦闘機でMSとスーパーロボットに挑むのは、ある意味では哀れを通り越して、滑稽ですらある。

『俺達のマシーンに、レシプロ戦闘機で挑むのは、ある意味では勇気のいることだ。蚊の大軍が人間に群がる光景を想像してみろ。昔から、窮鼠猫を噛むという諺も存在する。いくぞ!』


だが、彼らの奮った勇気に敬意を評し、F6Fヘルキャット、F4Uコルセアの混成編隊、合計300機ほどの大編隊に剣で立ち向かう三人であった。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.