外伝その137『鋼鉄のDフォース2』
――ラ號の存在はシンフォギア装者も知っている。もちろん、黒江を迎えに来たからだが、それと同じ力を有する艦が第二次世界大戦中に作られていた事に驚愕する――
「なんだあれ!?戦艦が空に浮いてやがる!?」
「あれはモンタナ!!やっぱり完成していたんだ……!」
「ドリルが艦首についてるよ、調ちゃん!?」
「そういう戦艦だから、あれは」
「調停者の連絡で来てみたけど、なんか凄いことになってるね、これ」
「あ、貴方は確か……」
「シャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォ。只今参上〜」
「その体、誰を媒介に?」
「ボクに近しい存在である女の子が媒介になったのさ」
「あ、みんな。こちら、シャルルマーニュ十二勇士が一人、アストルフォさん。本当に」
「はぁ!?なんだよそれぇ!?」
「英霊の大安売りじゃないのよ、調……」
「そんな、スーパーのバーゲンセール扱いぃ!?これでもイングランド王の息子だったのにぃ。あ、今は女の子か」
『おま…ついに性転換しちまったのか……』
「あ、君がジャンヌの言っていた人かぁ。復活の依代になった子の性別を引き継いだみたいでね」
アストルフォは黒江からの通信に気楽に答えた。
「あ、ばーちゃん」
「言っとくが、アストルフォは元々は男だ」
「……はぁ?」
クリスは??という表情で黒江に返事した。正に信じられない光景である。
「これでシャルルマーニュが現界したら心置無く言い寄れるよ!」
「言ったよこの英霊!!」
調が黒江ゆずりのツッコミを入れるほど、衝撃な台詞である。魄からの観点から説明すれば、『理性を吹き飛ばした仲間を落ち着かせる為に女装していたが、魄の記憶に姿として残ったのがその間の姿であった』。英霊としては強くないが、今のアストルフォには、依代となったロボットガールズ『Vちゃん』(コン・バトラーV)としての力がある。得物をよく見てみると、コン・バトラーのツインランサーである。
「え、女の子も好きだよー?」
むにっと、クリスの頬を伸ばすアストルフォ。元・男性とは思えないほどに女性じみた仕草である。そのため、怪我がある低度落ち着いたマリアが復帰したのだ。
「マリア、翼先輩の怪我の具合は」
「RXさんが治療ナノマシンを入れてくれたけれど、後でちゃんとした治療は必要ね。……貴方が本当に、あのシャルルマーニュ十二勇士?」
「一応、ね。イングランド王の子でもあったけけど、フランスの騎士だよ」
アストルフォは今回、正真正銘の女性として現界したので、女子枠に入る。モードレッドと違い、正真正銘の男性だったはずだが、女装時の姿が刻まれていたため、その姿で現れた。騎士としては弱いのだが、ロボットガールズとしては強豪であるため、武器は豊富に取り揃えている。
「おっとっと、危ないよ。超電磁ヨーヨー!!」
片手で超電磁ヨーヨーを操り、怪人をまっ二つに屠る。依代となったVちゃんの力である。
「へへーんだ。今回は依代になった子の力もあるもんね〜。弱いとは言わせないよ!」
「あ、先手を取られた!!こうなったら私も!!」
「調、貴方、アームドギアは……」
「大丈夫、今の私ならこんな事もできる!!ライブラ!!」
なんと、天秤座を呼び出し、それを纏う。童虎/紫龍師弟の計らいであった。
「嘘……貴方も綾香と同じ力に覚醒めていたの!?」
「うん。私は聖闘士なんだ。私の一部が師匠に染まった証でもあるの」
本来、天秤座の聖衣は童虎の代からは厳しい着用制限があるが、黒江が五老峰で修行しており、天秤座を前史で纏っていた縁により、調も背中に聖獣が浮かぶようになっている。また、調も五老峰で聖闘士の修行をしているため、廬山系列の闘技を使える。その証がこれ。
「廬山龍飛翔!!」
超音速で駆け抜ける。龍の幻影と共に。龍の形の小宇宙を纏って相手を貫く技であるが、闘気のみをぶつける事も可能である。黒江も初期の接触時に使用する機会があった。そのため、かつての調当人とは比較にもならない力を有する。響はある意味、お株を奪われた形になった。
「あの子、シンフォギアをパージして、その上で纏ったの?」
「ああ。あれがありゃ、神様とも渡り合える力が出るらしいからな。シンフォギアが霞む力を持ってんのは確かだよ」
クリスがマリアに言う。聖衣の力はマリアや翼以上に実感しており、黒江がそうであったように、神とも渡り合える力を人に齎すものだと解説する。最上位の黄金聖衣でも、神相手では普通に損傷するが、黄金聖衣の破壊に必要な物理的破壊力を出すには、シンフォギアの最大出力以上の力が必要であり、響のガンニグールでもそれは不可能である。ガンニグール(グンニグル)は相手を必ず貫くという因果を発生させるが、それは多くの槍系宝具にありがちな因果律である。また、シンフォギア世界でのみ、『神殺し』の因果律を起こせるが、これはシンフォギア世界でのロンギヌスの槍の概念も内包した結果であり、全く別の平行世界では通用しない概念である。そのため、響は本来の世界でのフルポテンシャルは世界的な制約で封じられていると言っていい(ロンギヌスの槍とグンニグルは本来、別の槍であるので、当然だが)状態であるため、元の世界ほどはガンニグールに突破力は無い。そのため、絶対的な戦闘力では調に一歩譲る状態であった。
「でも、私のガンニグールの力なんですけど、気のせいか、落ちてるような気がするんです。なんとなくですけど」
「ああ、それは多分、キミの纏うアーマーの媒介になったグンニグルの力と因果から、明確にロンギヌスの槍の因果が分離してるためだよ。神殺しの因果を必ず起こす槍ではないしね、グンニグルは」
「な、なんでですか?」
「キミらの世界と、この世界との繋がりは本来ならあり得ないことだからさ。だから、グンニグルも相応の力に落ちているんだよ。神殺しの逸話はグンニグルにはあまりないはずのものだしね」
アストルフォは響に助言した。ガンニグール(グンニグル)から神殺しの属性が薄れた故に、響の思うようなポテンシャルが出せないのだと説明する。実際、響は元の世界のような常軌を逸するまでのポテンシャルは出せておらず、調に及ばない様子を見せている。ガンニグールも神殺し属性はあるのだが、『それは使い手次第』である。
「キミはキミなりに頑張ればいいさ。ガンニグールにも神殺しの属性がないわけじゃないしね」
アストルフォは奔放な態度である。自由奔放なのが『彼女』の本領で、元来は強い騎士ではないが、ロボットガールズとしての力を活用しているため、戦闘力は数段上がっている。英霊としては弱くとも、ロボットガールズとしては強者であるという、なんともいい難い事になっている。
『アトミックバーナー!!』
両腕を前に突き出し、そこから炎を打ち出す。これはロボットガールズであったVちゃんから得た能力の一端である。絶対的な一撃はないが、手数はかなり増えたため、『多芸』である。
「にゃはは、並の怪人なんて目じゃないね〜」
「んじゃ、俺もちっと本気出すとすっか。エレクトロウォーターフォール!!」
触発されたストロンガーがエレクトロウォーターフォールを発動させる。地面から雷を吹きあげ、多数を焼き尽くす。彼が7人中最高のポテンシャルを謳われる所以である。そこから電気を使った『加速』を敢行し、雷光の如き疾さを見せる。ストロンガーは再改造でポテンシャルが初期よりかなり引き上げられている上、城茂が元来から持っていた超能力が強化されたので、純粋戦闘力では初期と比べ物にならない。
「トウ!!」
時代かかった出で立ちだが、強さは本物であるストロンガー。徒手空拳でも、並の怪人は相手にならない。そして、彼らのところからでも、ラ號の急降下は目撃できた。
「あれを見ろ!」
一同はストロンガーに促される形で『それ』に注目する。波動エンジンの独特のエンジン音と共に、ラ號が急降下してくる。かなりの角度をつけての急降下である。モンタナのドリルとぶつかりあったのは、その数秒後。衝撃波で周囲の雲が散らされる。
「ここまで衝撃波が来るなんて!」
「500mくらいのもんが音速を超えたスピードでぶつかってみろ。これくらいで済んでるのが不思議なくらいだ!」
一同は凄まじい光景を目にした。ラ號とモンタナの衝角がぶつかりあったのだ。モンタナは衝撃で浮上しているところを海面に叩きつけられる。ラ號も弾かれ、沈没のように海へ消える。
「うわっ!……あれが鋼鉄の海獣かぁ。凄いね、ありゃ」
「で、でも、戦艦大和っぽいほうのは、完全に沈んでますよ!?」
「あれは完全に沈んでるわよ!?」
「落ち着け、ガキ共。アレぐらい亜光速航行中のデブリ当たるよりゃマシだ!」
「いやいや、なんだよそれぇ!?」
「そうデス!500mありそうなでっかいのがぶつかりあったんデスよ!?どうしてそんなに……」
パニックに陥るシンフォギア組。だが、すぐにラ號は姿を現し、海面から浮上してゆく。かの宇宙戦艦ヤマトを彷彿とさせる挙動で。
「みんな、宇宙戦艦が潜水出来ないとか思っちゃダメだよ」
「なっ!?」
「ほら来た」
「往年の宇宙戦艦ヤマトみたいな……」
「ああ、ヤマトの准同型艦ですよ、あの船」
「それでいて、前身は大和型戦艦五番艦、つまり大和の四番目の妹だからね、あれは」
RXと調がさらっと言う。ラ號がドリル部を除くと、戦艦大和の姿を持つ理由は一つ。大和と血を分けた姉妹だからだ。計画時はまほろばの姉妹艦とも目されたため、構造は大和型戦艦そのものでなく、改良された超大和型戦艦に準じている。主砲が強化された事で、当初の建造目的は満たした事になる。
「宇宙戦艦ヤマトあるんだ……本当に」
「色々変わってますけどね。モンタナはたかが16インチ砲防御、対するラ號は20インチ砲。どっちが強いかは、小学生でもわかりますよ」
「いや、わかんねーし!?なんだよ、16インチとか20インチって!?」
「何って、弾丸の直径だけど。 テレビの画面サイズがインチで対角線の長さだよ」
「戦艦は主砲の口径の大きさが全てだった。だからどんどんでかくなって、大艦巨砲、超弩級なんて言葉の語源になったほどだ」
「そーだね。帆船の頃から『大きけりゃ正義』だもんなー、船の戦。超弩級とか由来を知らない人の方が多そうだよなー」
「宇宙戦艦の時代まで、そういうの無縁だしなー」
「あんたら何話してんだよぉ!」
英雄達と普通に戦艦の必要な用語を交わしあう調に、クリスはつっこむ。
「んー、戦いで火力は正義?先輩だって、イチイバルをデンドロビウムみたいに……」
「だーから、訳わからねー……」
「あ、そこも説明しないといけないんだった。面倒だなー。確か、端末に初期型の映像があったはず……。あった。『RX-78/GP03D』。これです」
情報端末に映るGP03デンドロビウムの勇姿。速い、強い、でかい。この三つを兼ね備えた姿は化物である。中央部のガンダム部分が気になるが、小型の宇宙戦艦のように見える。イチイバルのエクスドライブ形態にとても似ている。
「今、これの第三世代型を航宙艦として作ってますよ、この映像の一人乗りから三人乗りに改造されてエンジン載せ変えたの」
「嘘だろ!?どうなってやがるんだよ、その世界」
「戦艦は火力と防御でナンボだからな。速度は二次的要素にすぎねぇ。速度云々は空母が出てきて、その弾除けに使うための方便だ」
「航空機出てきてからは速度は30kt(ノット)出れば良し、艦載機と電子妨害とミサイルで攻撃圏内に敵機やミサイルを入れないフイールドを作るのが基本だしね」
「アイオワとかが異常なだけで、モンタナも海上艦としては28ノットだっけ?」
「ええ」
「えーと?つまり?」
「火力がモノを言うことね?」
「そうだね」
一同の内、響とクリス、切歌を除く面々が頷き合うと同時に、モンタナとラ號が戦艦の常識では考えられないほどの至近距離で打ち合いを始める。しかも空中で。
「空中で打ち合い始めたぞ!?」
「ほえ〜、500mくらいのでも飛べるんだ」
「響さん、マクロスなんてキロ単位ですよ」
「本当!?」
「いや、ヱルトリウムなんて、70キロくらいだよ」
「……なんかすごすぎてピンと来ません……」
「宇宙時代だと、大型になるとキロ単位なんですよ、響さん。マクロスも800m級と400m級のダウンサイジング版ありますし」
「いや、それってダウンサイジングなのか?」
マクロス級やヱルトリウムなどの超大型宇宙戦艦になると、大きさが凄いことになるし、遥かな未来のゲッターエンペラーになると、太陽系丸ごとになるのだ。
「ヱルトリウムは中に横須賀港〜東京ビッグサイト間の二倍ですよ。内部の環状線が山手線三つ分くらいだったかな?それに比べれば、マクロスなんて可愛い方ですよ」
「おかしくね!?」
「宇宙は広いですから……」
「そうだな。一年でマゼラン星雲を往復できるしな、22世紀終わりで」
「なぁ!?おい、響……あたしはおかしくなりそうだ」
「私もだよ、クリスちゃん……」
「ワタシもデス…」
「まー、そんなに考え込まない〜。そういう時代なんだよ」
アストルフォの底抜けの明るさは場を和ませる効果がある。元々が男性であった事を考えても、肉体を作り変えて女性になった錬金術師よりも、女性らしい仕草を自然にできるのは凄いの一言だ。依代がロボットガールズのVちゃんなので、真に女性になったのだが、シンフォギア装者より仕草が女性らしいので、マリアは羨ましそうだ。
「マリア、アストルフォさんは元!男だからね?十二勇士の一人だから」
「ま、ボクは元・男だし、オナベ枠?」
「いやいや、オナベってそういう意味の単語だっけ?」
しょうのない会話である。アストルフォは自分が男という自覚はあるらしく、オナベと自分を評した。しかし今回、彼は生物学的には女性である。ある意味では、光明結社の二人の錬金術師と似ている。
「まー、ボクは男の娘だったしね」
「普通に女の子より可愛いって、どういうことよ!?」
「ボク、元々美形だもんねー」
マリアはすっかり、アストルフォのペースに乗せられている。英霊であるが、メンタルは自分達と変わるところはない。それがクスッときた響。
「おい、そっちに行ったのがいるぞ!」
モードレッドの注意喚起の声が響く。ショッカーの怪人が10数人ほど向かってきたが、アストルフォはツインランサーで突き、転がしていく。
「いくら、ボクが弱いったって、十二勇士の一人だよ?理性がない怪人くらいはね。ただ、困った事にボクって、槍じゃ殺せないんだよ。頼んだ〜」
「それじゃ、ライトニングフレイム!!」
調は黒江との同調が進み、この頃にはナインセンシズに到達し始めており、ライトニングフレイムを放てる。それは響にとっても、切歌にとっても、自分達が及ばない『高み』の存在の証明であり、切歌が聖闘士を目指すきっかけである。アーク放電でのライトニングプラズマ。それに炎属性を加えたもの。仮面ライダー達とアストルフォ以外は軌跡の視認で精一杯である。(光速すら超えているため)
「ひょえ〜。おっそろしい。あれが神の闘士の力かぁ」
「あなた、今の攻撃が……?」
「うん。ばっちし見えてるよ。英霊だしね。キミたちじゃ体が反応に追いつかないかも。あれはナインセンシズの産物だ。人の身の到達しえる最高点だよ。阿頼耶識すらも超えた領域だ」
「阿頼耶識……」
「うん。神の闘士達は生きたまま冥界へ行ける強さを持つのが数人現れる事があるんだ。神を討ち果たせるのには必要な技能さ。僕達、英霊の魂魄も本来はそこにあるんだ。オリンポス十二神の計らいで第二の生を与えられたけどね」
「無駄に壮大ね……」
「まぁ、どこかの世界よろしく、英霊同士で定期的に殺し合わされるよりよっぽどマシさ。お、次が来るよ〜」
「はぁぁ……!」
「あの構え、綾香が基本的だと言っていた……」
「基本的だけど、破壊力も無限大。それがあの技だよ。流星の如き乱打。その名も!」
「流星けぇぇん!!」
聖闘士の基本技『流星拳』。基本技故、それを神に打撃を与えられるまでに昇華させたのは、1990年代までには、星矢とその前世の天馬のみである。星矢以後の世代からは、その好例からか、流星拳を技のレパートリーに加える者は黒江達を始め、意外に多い。調もその一人。拳を強大な破壊力で相手にぶつけるというのは本来、響の専売特許だが、聖闘士への覚醒で、調がお株を奪った格好になる。
「なんか調ちゃん、綾香さんみたいですね、マリアさん」
「綾香が調を変えたのよ。他の世界ではあり得ない特徴を与えて、ね。綾香が言っていたわ。今のあの子が平行世界の自分自身と会ったとしたら、その自分を力づくで止めるって。あの子は覚醒めたのかもしれないわ。仁や義に」
マリアは調の変化を語る。黒江達がそうであるように、平行世界の自分自身と出会って、その自分が悪事に手を染めていたのなら、それを止めるという覚悟を。恐らく、フロンティア事変の際に黒江が介入しなければ、自分達は少なからずの悪人の咎を背負う者になっていた。調が言っていたが、古代ベルカでの戦争にて…。
『正義なんて…』
『それがお前の正義か』
『正義なんかじゃない!』
『お前が正しいと思ってなす事がお前の正義だ。 それとも正しくないと思っている事をやっているのか?』
という問答をした事をきっかけに正義について深く考えるようになり、オリヴィエの生き様に感化されたとも言っていた。調は古代ベルカで己の正義と生きる意味を見出したのだ。そして、黒江に弟子入りすることで真の意味での安らぎと強さを得た。それと、思考が機動六課の影響大であり、『大火力でねじ伏せる』辺りは、姉弟子のなのはとフェイトの教育の賜物だったりする。
「上じゃ大戦艦がドンパチしてるし、こっちじゃ聖闘士候補生と英霊の独擅場だ。ボク達はサポートに回るから、ライダーの皆さんよろしく〜、雑魚散らしや足留めは任せてー!」
アストルフォはこの調子である。自分も英霊ながら、基礎ポテンシャルが低いのを理解しており、シンフォギア組と共にサポートに回ると宣言する。ちゃっかりしているので、二人の仮面ライダーも『やれやれ』とため息をつき、RXは一対多に向く形態に変身する。
『俺は怒りの王子!!RX・バイオッ!!ライダー!!』
バイオライダーになったRXはバイオブレードを構え、ストロンガーはギアを更に上げる。
「さあて、ジャンジャンいこうか!!」
ストロンガーは先陣を切る。モードレッドが狼男と死闘を展開し、狼男のスタミナに負け、大きく吹き飛ばされたのを受け止めてやる。
「ガキンチョは下がってな。ここからは大人の時間だぜ、なあ、ゾル大佐よぉ」
「ちょうどいい。栄光の7人ライダーの切り込み役と名高い貴様と手合わせできるとはな。一文字隼人に復讐する前のいい肩慣らしになる」
「へっ、抜かしてろ。一文字さんが来んまで持つと良いな」
「貴様がな!」
電気の拳が狼の爪や牙とぶつかり合う。モードレッドはスタミナ切れと、改造人間の超パワーの前に、鎧を物理的に破壊され、騎士服だけになった姿を晒している。円卓の騎士とあろうものが負けそうになり、助けに入られた事は恥辱なはずだが、モードレッドはストロンガーに何かを感じたのか、どこか安心したような表情だった。それは黒江が彼に持つ感情にも似ているが、モードレッドの場合は『真に強き者』の背中を見た感触であった。黒江が純粋に憧れと見ているのに対し、円卓の騎士だったモードレッドにとっては『並び立ち、追い越すべき目標』として映った。彼らは言うならば『後代の英雄』。自分は英雄として『先達』であるはず。そう考えた彼女は、仮面ライダー達の背中を以後、追いかけてゆく事になる。黒江が憧れと見ているのとは違った方向で、モードレッドは仮面ライダー達を意識してゆく事になり、それが『親を超え、自分を認めてもらう』に代わる、彼女の生きる目的になっていくのだった。
(いつかあいつらに並んでやる。母上に認められた俺は誰にも負けられねぇんだ!たとえ、オリンポス十二神の闘士でもな!!)
モードレッドは決意を固め、依代になったペリーヌの肉体を鍛え上げる事にする。ペリーヌはモードレッドにより、その肉体を鍛え上げられてゆく事になる。ペリーヌ当人は剣術は淑女の嗜み程度の認識であり、本格的に鍛えるのを嫌がったが、肉体の主導権がモードレッドの手にあるので、否応なしに鍛え上げられる羽目になったという。
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