外伝その149『21世紀の思惑、ウィッチ世界の困惑』


――21世紀世界は結果的にだが、ウィッチ世界に多大なる政治的混乱を引き起こした。帝政カールスラントの軍備制限を条約化し、核開発の実質的な規制、国際連合の名のもとに、一部の大国に力と資本を集中させる事は欧州を中心に猛反発があったが、既にカールスラントは実質的に南リベリオンに資本を移転させていた事、7年近く資源を貪り食われたガリア地域に金属資源が残っているか疑わしい事、帝政カールスラントが共産主義者の日本人を中心に、中国共産党などの援助で革命が起き、鎮圧されたものの、次々と国が分裂し、ロマノフ王朝は風前の灯火と化した事、中東地域は殆どがティターンズの支配下にある事、ファラウェイランドはケベック問題を抱えており、そこを突かれたら政権の命が無くなるため、ブリタニアのコモンウェルスながら、裏切りを警戒しなくてはならないなど、実質的にブリタニア連邦は弱体化していた。ブリタニアがキングス・ユニオンとなるのに拘ったのは、ファラウェイランドとアウストラリス連邦などは軍事的に当てににならないと、21世紀世界から提言された事も大きかった。これはリベリオンの一師団>ファラウェイランド軍とアウストラリス連邦軍と見られていた事、ファラウェイランドはケベック問題を抱えており、それを利用されれば、リベリオンへつく可能性のほうが大きいと見做された事で、21世紀世界の軍事資本は武扶自リ加の四カ国に注ぎ込まれた。その結果、ダイ・アナザー・デイ作戦時には、連邦化で特に資本が注ぎ込まれていた扶桑とブリタニア本国に顕著に現れた。――







――ヒスパニア戦線――

「ブリタニアの新鋭戦車とは?」

「センチュリオン巡航戦車だそうだが?」

「キングス・ユニオン化の恩恵で、いきなり最終型のMk.13相当で生産されてるそうだぞ、モンティ」

「オーバーだな。敵は所詮、M4が大半で、後は戦車駆逐車だけだよ、ロンメル」

モントゴメリーは本国から空輸されてきたセンチュリオン戦車の軍団を見るなり、オーバーと言った。赤外線暗視装置、105ミリ戦車砲搭載の当時としては『時代を超えた』性能を誇るので、時代を完全無視である。M4相手なら、初期型の同車やコメット、更には分裂前に改造していた『ファイアフライ』でもいいくらいだとするモンティ。しかしながら、戦線では、当時のカールスラント最新鋭中戦車のパンターの側面装甲がM36ジャクソンにぶち抜かれ、撃破される例が続出。これは90ミリ砲を持つ同戦車駆逐車の不意打ちや集中砲火が原因であるので、ロンメルも慌てている。特に、M36には当時最新の砲弾『APDS』が配備されていた事もあり、パンターの側面装甲は一撃で貫けるし、W号以前であれば、増加装甲ごと砲塔を貫ける。

「しかしだ、こちらも困っているのだ。W号以前はM36に出逢えばイチコロだし、パンターやティーガーも、下手すれば正面装甲を抜かれてしまう。前線ではシェルショックが出始めている。センチュリオンを急がせたのは、そのためだ」

「戦車駆逐車を駆逐するのに、わざわざ次世代の戦車を?」

「兵たちの士気を保つためには多少の出費は我慢しろ、モンティ。こちらはティーガーUを作っても『APFSDS』が出てきたら無意味だと言われて、慌ててドイツからレオパルト2を買うところなんだぞ」

「何、21世紀での現用戦車をか?」

「日本やドイツは『APFSDS』の登場には悲観的に考えていてな。現用戦車を近いうちに、生産ライン維持の目的もあって、こっちに回すそうだ。そうなったら、こちらが圧倒的に優位になるんだがね」

「向こうは何を考えているのかね」

「ティターンズがいるから、技術が加速されると怯えてるのさ。実際はウィッチの発言力が下がらないと無理なんだがね」

ロンメルは日本がトラウマ的に持つ『技術加速への怯え』を揶揄する。日本は『希望的観測はするな!』と、自衛隊の現用兵器で軍備を統一しようとする動きが強い。自衛隊の第一世代の装備で充分に圧倒出来る大戦型装備の軍隊を、21世紀最新鋭の装備で蹂躙するなど、屈強な大人が幼児へ暴力を振るうようなものだ。

「日本はどうしてこう、自分達の基準で考えるのかね?」

「ウィッチを当てにしていねぇためだろうさ。それに、日本は俺達の同位国に滅ぼされたも同然の状態で降伏した歴史がある。しかも、自分達が信じた兵器や思考を、欧州で徹底的に鍛えられ、近代化された兵器の火力が木っ端微塵に誇りごと打ち砕いた。自衛隊の現用装備を売り付けるのは自衛隊装備の単価下落を狙って、小銃と車両は潤沢に供給するつもりなんだろうが、案の定、野党が妨害してくるそうだぜ」

パットンが話に加わる。日本連邦は軍備の統一に躍起になる割に、野党が妨害してくるので、実際のところ、新式装備は精鋭部隊にしか行き渡らず、近衛師団の解体で揉めている有様であると。皇宮警察を拡充したほうが、クーデターの温床になる近衛師団より役に立つとは、日本警察庁の言い分だ。この権力闘争は結局、近衛師団のウィッチが勇敢に戦った功績、予め地球連邦軍が危険思想者を排除していた事が分かったためと、扶桑の新憲法で師団規模の近衛戦力が置けなくなった事による近衛師団の規模縮小で決着がつく。これは近衛師団の教育などが史実のプロイセン式ではなく、ブリタニア式であった事が好意的に見られたからでもある。(扶桑海の前は、プロイセン式にしようとしていたが)これは史実と違い、プロイセンよりもブリタニアの影響が強かったためでもあり、戦車戦力は軽視していないが、インフラの限界に阻まれていたために、チトやチリの普及が遅れていただけである。それが一気に戦後型戦車前提のインフラに更新し、尚且つ一般への福利厚生も高レベルで行なえと言うのだから、日本はかなりの無茶を強いている。扶桑はこの財政負担により、軍備更新が開戦までに間に合わず、戦備不十分な状態で太平洋戦争の開戦に遭遇し、時代相応の兵器の急な生産中止も重なり、数年の塹壕戦に引きずり込まれてしまう。それが解消されるには更なる時間が必要とされ、太平洋戦争は結局、史実通りに長期戦となってしまう。しかも、リベリオンの国民性から、ハワイのみならず、本土をある程度制圧しなければ、条件付き降伏は愚か、和平交渉にも応じないという予測から、『戦争の終着点』を見出すのにさえ、そこから更に数年もかかる事になる。その間に戦場の兵器はすっかり戦後型が主役となり、戦争を経て洗練された扶桑軍はアルジェリアやインドシナの独立を阻止しようとしたガリア軍を文字通りに蹂躙し、ガリアは植民地を無様に喪失し、国として衰退の道を辿る事になるのだった。ブリタニアも戦後は『緩やかな衰退』に入ったため、日本連邦となった扶桑皇国は相対的に世界の盟主の座が転がり込み、冷戦時代の西側諸国の盟主として振る舞うようになるなど、国家として中興してゆくのだった。


「やれやれ。アイクの日本の首相との会談と声明がなければ、自衛隊の派遣も上手くいかなかっただろうな」

「日本という国は、国の変革に自分達では抗えない『外圧』が必要なのだろう。いずれの場合にしろ、だ。我々の同位国が日本の軍備を禁止したのなら、その封印を解くのが、その時の施政者の同位体である我々の役目だろう。自衛隊を作ったのは、『我々の都合』なのだからな」

三将軍は日本国自衛隊に長年課せられていた枷を、自分達の都合もあるとは言え、外す事に助力した事を言い合う。日本が大国に戻りきれず、各国の『ATM』状態に陥っていたのは、軍隊がきちんと法に明記されていない状態なので、そこをなんとかするのだが、日本国民は非戦の名の下、扶桑への軍事的援助すら露骨に渋る世論もまた存在したため、わざわざ日本連邦軍という上部組織を組織し、自衛隊を日本連邦軍の『固有部隊』と位置づける事で、法的再軍備を果たすという回りくどいやり方をせざるを得なかった。そのため、攻撃的軍備は扶桑に用意させるという奥の手で、日本連邦軍の体裁を整え始める。三笠型も駆り出された『第一回日本連邦海軍観艦式』では、近代化された旧・連合艦隊艦艇と自衛隊の現用艦艇の共演が本格的に成され、これを『ジャパニーズグランドフリートの再興である』と見る海軍関係者は多く、21世紀世界での東アジアは『中興を迎えた日本が本来、大国として台頭するはずであった中国と対峙する』構図が出来上がってゆく。また、既存の核兵器が無力である三笠型を潜水艦閥の発言力維持のために、どうにかしようとして核兵器を強くする研究が後に、第一世代の反応兵器として結実するという帳尻合わせも起こる。

「日本の野党は困ったことに、南洋や太平洋共和国の存在も知らないと来てる。特に鳩山一郎氏のお孫さんだ。あれは卿の頭痛の種だ」

「ああ、あの脳天気な御仁か。卿が病気になるのも無理ない」

「あの御仁は第一次で南洋も大陸も得たと思っていた。だから、卿が叱責したら投げ出した。あれは典型的お坊ちゃんだよ」

パットンは鳩山ユキヲを『お坊ちゃん気質』と評し、総理で歴代随一の『日和見主義かつ、楽観主義者』と断ずる。おかげで一郎が総理大臣の椅子を逃し、日本は吉田の後継に池田を強行に推す始末だった。

「鳩は鳩でも風見鶏、か」

「そういうことだ、モンティ。日本は吉田公の右腕の池田勇人君を後継にすることを強行に薦めるが、彼はまだ若すぎる。扶桑は軍人出身者を添えたいらしいが…」

扶桑は高齢の吉田茂に代わる総理大臣を模索していたが、ユキヲのせいで一郎が病に倒れると、それに相応しい人物が見出だせなかった。米内光政はもはや総理大臣に再登板出来る身では無く、再登板のもう一人の候補である鈴木貫太郎はあまりに高齢(岡田啓介ほどでもないが)、岡田啓介も同上、小磯国昭は史実でA級戦犯である事もあり、除外。かと言って、ウィッチ世界では総理にまだなっていない近衛文麿はこれまた論外である。東條は絶対に不可能であるし、かと言って宇垣は今更過ぎた。そのため、史実同様、吉田茂を長期政権にする案が出されたが、吉田が『70になるんだし、そろそろ数年ほど休ませてくれ』とボヤいた事により、池田勇人が相応に育つまでの場繋ぎの総理大臣が必要となったので、吉田の再登板までの場繋ぎに、小泉又次郎の娘婿『小泉純也』に白羽の矢が立った。任期は1945年秋頃から1947年頃までで、吉田茂の休養期間の総理大臣としては若く、当時の池田勇人よりもむしろ若かった(当時、41歳)。史実で防衛庁長官の経験があるので、『堅実な選択』と日本で報じられた。あくまで吉田茂の休養期間の代打と当人は思ってはいたが、政治的手腕は義父や21世紀に総理になる子息と較べると、堅実さを感じさせた。また、戦艦三河の建造予算を承認したのも、彼の在任中である。史実通り、彼は防衛閥に属する議員であるため、扶桑の軍備の増強が多少成功したのは、彼の功績だった。ただし、エース制度の設立に関しては彼の在任中には果たされず、次代の再登板吉田内閣の時に空軍主体で実現する。(設立後の叙勲対象者がしばらくの間は九割が陸軍出身者であった理由は、1943年からは軍令部が機密保持と称して個人戦闘記録を一部の派遣者除いて破棄していたため、撃墜数が正確に分からなかった上、設立時には、エースと名のれるウィッチが海軍にほとんど残されていなかった事が理由。そのため、海軍にエース制度の対象者が殆どいない事での海軍の体面と、海軍整備兵などの要望から、太平洋戦争中に防衛記念章を逆輸入して『功労表彰章』が制定された。これは防衛記念章の逆輸入であり、ある一定の功労があれば、整備兵でも授与資格があるとされた。防衛功労章も扶桑に輸入され、生え抜き海軍ウィッチを納得させるための栄典作りがなされた)また、撃墜王としての名誉を完全に確立させるため、兼ねてからの『技能特優』章も正式に定められた。当時は撃墜王の割合と、レイブンズ以下の64Fの存在により、授与資格者の八割が空軍在籍者という状況であったが、概ね、1948年には一通りの褒章と栄典が定まったという。






――ティターンズはこの戦闘の最中でも、プロパガンダはきちんと行っており、バルトランド(スウェーデンとノルウェー相当)で過去にハンス・アクセル・フォン・フェルセン(日本で『フェルゼン伯』として有名)が扇動された民衆に撲殺された事を混乱を煽る形で利用、バルトランドが『フェルセン伯の名誉は今や回復されていて……』緊急声明を出す羽目になった。軍人が観光に来ていた日本人(ある年代より上)の女性に後ろ指を指されるように非難される事への火消しを慌てて行った。バルトランド王室はその後に勃興した王朝に代替わりしていたからで、バルトランドにとっては、とんだイメージダウンとなってしまったし、ガリアも斜陽になっていたとは言え、革命で否定したはずの『貴族』や『王族』や、かつての英霊に国のアイデンティティの維持を頼る事が21世紀世界から暗に非難された結果、ノーブルウィッチーズのポスト権を結果として喪失するなど、いいところなしだった。カールスラントはキングス・ユニオンやロマーニャ、ベルギカなどの欧州諸国が『過度の軍事大国化』をバダンとの交戦経験から恐れ、国際条約を利用して『合法的に軍備を制限する』という枷を嵌められてしまうが、史実アルゼンチン相当の国土と、アマゾネス(ブラジル)がリベリオンに抗しきれないと踏んだところを付け込み、リオ・デ・ジャネイロ相当の街とサンパウロ相当の港の租借権は得たが、海軍は排水量制限は無いものの、規模でブリタニアの七割という枷を嵌められた結果、史実と同じく、潜水艦大国への道を辿る。その一方で、バダンからの鹵獲戦艦を修復して使用するなどのせせこましい努力から、なんだかんだで世界トップ5の海軍国家になっていく。ブリタニアはキングス・ユニオン化で衰退速度は緩められたが、国として『穏やかな衰退』に入った事は避けようが無く、世界の盟主の座はやがて、強大化した扶桑に譲るものの、欧州諸国が尽く大打撃を被った幸運により、世界の盟主の座は明け渡しても、欧州一の軍事力は維持する事に成功、バックス・ジャポニカ時代での生き方を模索していく。リベリオンは分裂時に生じた分断に未来永劫苦しむという烙印を押され、史実東西ドイツの役どころを演ずる事になり、以前より進歩的な考えに至った自由リベリオンとその影響下の州、南北戦争時の連合国さながらの保守的な考えに回帰した州とで太平洋戦争が激しくなる頃には内戦状態となり、それが一段落した後も、長らく再統一はならなかった運命を与えられた点でも、ティターンズと地球連邦軍などにより、東西ドイツの役回りを与えられたと言えるだろう。オラーシャは『ソ連』への新生が失敗した事もあり、前身時代と大して変わらない程度の国土に落ち込み、貴族や高級軍人の八割が亡命してしまうわ、ウィッチが民衆に虐殺された結果、軍に残ったウィッチは以前の二割に満たない数に落ち込むわ、同位国のロシア連邦は冷淡であるわ、正に踏んだり蹴ったりであった。サーシャがヒステリックになったのも、サーニャと共に国を立て直したかったからだろうが、サーニャは親友の死で祖国へ愛想が尽きていたのも不幸であった。

「サーシャ大尉のことだが、レヴィから報告があった。作戦終了後は謹慎処分にするべきだな」

「ああ。サーニャ中尉の生き方に口出しするのは言語道断。降格処分にするか?」

「レヴィからのレポートによれば、反省の色は見せているようだし、始末書と減俸でいいだろう。ノイマンを中佐へ下げたら現場が萎縮したからな」

エディタ・ノイマン。マルセイユの上官の経験者だったが、デロス島の遺跡の破壊を前提にした怪異撃退作戦を立てたのが運の尽き、21世紀のギリシアやユネスコから猛抗議をくらい、当時に就いていたポストを追われ、大佐から降格、数ヶ月の飛行禁止、50%の減俸という見せしめ的な懲罰が課された。当人は精神的ショックを受け、軍病院に入院してしまったが、これでもロンメル、マルセイユが庇って軽くなった方で、尉官への降格すら俎上に載せられていたのだ。ロンメルが擁護した事で一階級の降格処分で済んだが、ガランドの後継候補からは外され、グンドュラが指名される流れを決定づける。

「ガランド君の後継はグンドュラ君しかいない。ハルトマンには固辞されたそうだし、この作戦の事後処理が終わり次第、皇帝陛下に承認してもらう」

「大胆だな」

「ミーナ君に人事的失点がついてしまってる以上、彼女しかいなくてな。消去法だが、なってもらうさ。ヒスパニア戦線は山あり谷ありの地形で、装甲師団の運用は工夫がいるが、幸い、こちらに地の利があるし、敵も中々、こちらに攻めて来られん。航空戦力の優位さえ取れれば、この戦は勝てる」

「お前は兵站が苦手だからな。私がなんとかしよう」

「腹減っては戦は出来ぬ。マミが教えてくれた扶桑の諺だそうだ。兵站の確立ができれば、味方の援軍までは持ちこたえられる」

「ここは海軍と空軍頼みだな」

「自衛隊がボヤいてるそうだぞ、大規模な作戦会議ができんと」

「前線で指揮を取るところを兵に見せなければ、兵の人望は勝ち取れんさ。奴さんにはそれを学んで貰おう。実際の戦場は後方で地図やコンピュータ相手ににらめっこするのとは訳が違う」

ロンメルは戦時の英雄ではあるが、平時には出世しにくいタイプであるのを示す一例である。戦時ではロンメルのようなタイプが兵士たちの人望を集める。ロンメルは欠点として、兵站などの裏方に疎いという点があり、それをモントゴメリーがカバーし、パットンが補助する役割分担が成されている。また、ロンメルは皇室親衛隊志望の嫡男を持つが、息子に『軍に行くなら、陸軍に行け』と言うなど、皇室とは一定の距離を保っている。その事と、史実での悲劇的な最後もあり、21世紀世界でも高い人気と人望がある。また、ウィッチ世界では、真美や圭子のおかげで、史実よりひょうきんな性格となっていて、心労が無いことの影響か、この時。エルヴィン・ロンメル、53歳。当時の基準で言うなら『老境』に差し掛かりつつあったが、史実より目測で6歳前後ほどは若々しく、壮年期の精悍な端正な顔立ちを保っていた。その彼がセンチュリオンで構成される戦車部隊を配下に収めると言うのは、不思議なめぐり合わせであった。

「さて、この巡航戦車がこれまでのブリタニア戦車みたいな変な代物でないことを祈るよ、モンティ」

「我が国がイギリスに経済援助した見返りに得た戦後型戦車だよ、ロンメル。下手にタイガー戦車を持ち出すよりはよほど、当てになる」

「あれは攻勢向きでない戦車なんだがな。本来は防御戦での火消し用に造られたし。攻勢に持ち出すのはポルシェも言っていたが、無茶だよ」

「しかし、向こうの世界ではしばしば攻勢にも使われた。それが世界の違いなんだろう。センチュリオンもティーガーの影響が無いわけでは無いが、主砲をいきなり105ミリに強化したもんだから、ティーガーを陳腐化させてしまったな」

「ああ。今後、ドイツからレオパルト2戦車を供与してもらい、すべての重戦車とパンターUの代替として配備する予定らしいが、この戦いの次の時待ちだな。だが、センチュリオンが来たのは僥倖だ。これでM26も怖くない」

いきなり105ミリ戦車砲、赤外線暗視装置付きの最終型相当で量産されたセンチュリオン。二代後の後継であるチャレンジャー2の供与も打診されているが、センチュリオンは当時としては最高水準の戦車である事から、最終型相当で生産すれば、5年は戦時でも更新の必要はないと見たブリタニア陸軍の思惑から、従来の車両よりも遥かに高コストながら、20ポンド砲用の砲塔の砲身を変えれば載せられる利点から、早期に大量生産され、配備が完了している。扶桑にも一部が輸出されているなど、セールスも好調なことも、ブリタニア戦車の評判の改善の理由だった。M26は装甲と火力に機動性が伴わない旧来型の重戦車であり、M4を信仰するリベリオン陸軍管理本部の意向もあり、改良型のM46共々、少数配備。そこにMBT第一世代のセンチュリオンがかかれば勝てる。残酷だが、M4では、76ミリ砲を以てしても、センチュリオン最終型は一撃では撃破できないのである。ロンメルはそこに勝機を見出していた。



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