外伝その160『ビバ、大艦巨砲主義!!』
――扶桑が相当にドック用の土地を負担してまで揃えし軍艦群は、もはや23世紀時点の造艦技術の粋を集めし化物であり、真っ向から対抗し得るのは、バダンの誇るヒンデンブルク号のみであった。その化け物たちが生まれる事になったのは、日本連邦が生まれる前の時間軸で起こったM動乱の時に始まった交流の際の日本側の一言が原因であり、そのため、扶桑皇国は空母を地球連邦から買い取る方法で調達し、自身は『突き抜けた大艦巨砲主義』へ突き進んだ。そのため、三笠型は500mを有に超えるバケモノ戦艦と化した。その廉価版が播磨型に当たる。廉価版と言っても、日本が戦中に完成させた最後の戦艦である『まほろば』とほぼ同規模を誇り、大和型よりはかなり大型化している。それはM動乱でH級にかなりの苦戦を強いられた事から、51cm砲を積み込んだためであった――
――ダイ・アナザー・デイ作戦の最中の連合艦隊――
「日本の連中は驚いているかね」
「ハッ。この富士の勇姿はもはや日本の計画で言えば、50万トン級戦艦に相当します。日本の連中は『金田中佐の50万トンだ』と騒いでおります」
「フフフ。だが、この富士はそのような前時代の代物ではない。45口径56cm速射砲を積んだ、実体弾式の限界を極めし戦艦だ。核兵器すら効かぬ装甲を持つのだ。その違いをヤンキーと田舎海軍共に見せてやれ」
「アイ・サー」
富士は日本人の執念か、大和型をそのまま数倍に拡大したような威容を誇る。これは日本戦艦の究極が大和型であったためであるが、逆に言えば、日本戦艦は大和型の血統が最終到達点である証明である。大和型のネガをどう潰すかが焦点になった事もあり、大型化は避けられなかった。そのため、扶桑の造艦関係の人々は、自分らが志向していた『コンパクトな艦』が日本の戦史で否定されたため、23世紀の手を借りての大型化にシフトし、熱核融合弾に耐えられる船をコンセプトに、一度は頓挫した超大和の計画を予算対策の意味も込めて復活させた。これが三笠型と播磨型の始まりである。こうして、M動乱が最高潮の頃に投入され、戦果を挙げた三笠型だが、扶桑の既存インフラに収まるサイズを思いっきり超えていたので、港湾設備を新規のものに取り替える必要などに駆られた。播磨型は『扱いやすいサイズで三笠型の攻撃力を持たせる』小型化と量産を前提に設計された艦なのだ。三笠型の存在を伏せ、播磨を日本へ宣伝していたのは、『常識外れの三笠型を秘匿する』という防諜上の目的があったからだ。(その割に、実際に完成するのが4隻に留まったのは、ラ級の量産が最重要事項になったからだ)最も、日本連邦が扶桑の外交上の目的になったのは、M動乱直後で、如何にして日本を味方に引きずり込んで、前史での妨害行為を減らすかが連邦を組んだ真の目的であった。つまり、日本にいる左派勢力の扶桑への妨害工作やテロを日本に取り締まりをさせるのが目的の一つだったと言える。
「日本に見せつけてやれ。大艦巨砲を突き詰めると、核兵器であろうとも怖くないと」
「ハッ」
砲術関係の士官は兵にそう指示を飛ばす。実際、富士の主砲は実弾で実現可能な艦砲の限界を極めた大きさを誇り、大和よりも10cmも大きい。その威力は榴弾が当たっただけで重巡が炎上し、徹甲弾であれば、リベリオンの如何な船のキールをも歪ませる。56cm砲弾の重量は3トン近い。それがマッハ3以上の速さでかっ飛ぶのだ。(ちなみに、まほろばに採用されていた51cm砲弾の重量は1950kgであったらしい)その威力はこの時点では、間違いないなく最強である。そのため、リベリオン艦は三笠型『富士』の前では、モンタナ級やアイオワ級戦艦でさえも『ガラクタ』に過ぎない。その証明が今まさにされている。富士の咆哮がアイオワ級のどれかを『魚の棲み家』へ変えたのである。
「今のはサウスダコタ級か?」
「いえ、アイオワのどれかです。榴弾が両用砲を破壊しながら爆発した模様」
「さすがは56cm砲。ここまでとは」
「砲弾の重量も、大和よりよほど重いですからな」
「ガレオンから続く船の大型化の極限と言えるこの富士、アイオワやモンタナなど敵ではないわ。思い知らせてやれ!」
砲術士官の自信は、富士の圧倒的な実力に裏付けられたものだ。海戦はヒンデンブルク号に叩きのめされたブリタニア艦隊が後退し、今、戦場にいるのは扶桑連合艦隊の主力だけだ。主力はいずれも大和型とその後継の艦達。これは21世紀日本には夢のような光景である。特に、元・艦政本部の旧軍人ならば、造船会社に行った旧軍人が存命ならば、この光景に涙するだろう。日本側で造られた大和型が巡洋艦に見える巨艦が大海原を征くのだ。播磨でさえ、まほろば型に匹敵する排水量を誇るが、三笠はそれすら遥かに超える。日本側の報道関係は一様に富士の勇姿を報じている。米国の原子力空母も小さく見えるほどの大きさの三笠型を。
――21世紀 日本の国家安全保障会議――
「これが扶桑が秘匿していた、連合艦隊旗艦なのかね?」
「先方からの通達によれば、最新鋭の戦艦で、名前は三笠型だそうです」
「信じられんな。大和と武蔵と艦橋周りは変わらないように見えるというのに、最新鋭艦と遜色ない武装やレーダーが見える」
「扶桑の秘密兵器故、我々と別のところから武器は揃えたのでしょう。ニミッツ級航空母艦すら小さく見えるサイズと言うのは予想外でしたが…」
「信じられん。当時の日本はおろか、どこの国にもこれだけの大きな船を作れる設備は…」
「別のところと言っただろう。先方は我々だけに兵器の輸入を頼っちゃいねぇからな」
「副総理、それは…?」
「先方がトップシークレットにしてることだが、学園都市も問題外の技術があるところだと。そのトップシークレットに通じる超文明との細い糸を我が日本も握っちゃ居るんだが色々あって技術的支援はあまり受けられないんだがな」
「こんな戦艦を持つだけの資本や能力があるのなら、何故、こちら側と同じような空母しか持ってなかったのだ?」
「先方は空母をウィッチ専用艦と考える、ウィッチ派閥が幅を効かせていましたし、ゼロ戦が最新鋭と言われていましたから、ミッドウェーで沈んだ飛龍程度で必要充分だったのです」
「第一、ジェット機はようやくドイツで実用試験段階に入ったばかりで、ジェット機の空母艦載機なんぞ、夢のまた夢みたいな話だったそうだ。そんな時代なんだよ、先方は」
「我々やその超文明の介入で、ゼロ戦の後継だった烈風、紫電改を実用化させましたが、マスコミが役に立たないと煽るので、アメリカのツテで、F-8戦闘機やF-4、はたまたF-14と18を購入したそうです」
「マスコミはこちら側の記録で叩くからな。烈風も紫電改も、時速680キロから690キロの速度が出、高度12000まで短時間で上がれるし、無線も通じるそうだよ」
「総理の言う通り、先方の実用化した紫電改や烈風は、こちら側での機体より全ての点で相当に上回ります。雷電も生産されているそうです」
「海軍の機体しか無いようだが?」
「陸軍の機体は、こちらのテコ入れ前に疾風が実用化されていたのですが、航続距離が長い代わりに、搭載される弾薬がこちら側の半分以下の『ウィッチ支援』特化でして。メーカー側は航続距離が落ちるが、いいのか?と。それに、マスコミは陸軍の航空機をほとんど知らないから、海軍機に注目するんですよ。それで、先方に五式戦闘機を実用化させるように伝えました。陸軍機だと、そうですな。三式戦闘機が比較的良い稼働率で飛んでいたり、五式にしても、エンジンがパワーアップしてる上に、ニックネームまで付いていたりしますな。百舌鳥だそうで。四式はこちら側からみた欠点の是正で、こちら側と似たような性能で落ち着くでしょうが、あまり量産はされんでしょう」
疾風は航続距離を切り詰め、搭載弾数を大きく増やし、防弾をより強固にしたため、史実と代わり映えがそれほどしない機体になると見積もられたため、扶桑軍ではあまり当てにされていない。これは海軍の試作ジェット機『橘花』、陸軍の『火龍』も同じであるが。
「先方はジェット機のネーミングで、こちらに抗議をしています。こちらでの『花』を冠した名前は特攻機でしたが、先方では『ジャンルの開花を願う』意味だったのです」
「それで?」
「ジェット機は特殊だからと言って、特殊機と言っていたのを、こちらのマスコミが鬼の首を取ったように騒ぎ立てたものですから、航空開発でトラブルが頻発しています」
扶桑の航空開発はこの時点では大きく混乱しており、ジェット機はレシプロに取って代わるモノとしての将来性を見ていないと批判された横須賀航空隊や陸軍航空審査部はその活動が自粛されていた。その際に起こるのが震電の焼却事件、明るみになった不祥事は航空審査部での黒江へのいじめ事件である。前者は一からの再設計で性能がむしろ上がるので、それほど大事にはならなかったし、それほど問題視されなかった。しかし、日本でも当時、既に広告塔のような役目を担っていた黒江への陰湿極まりないじめは大問題化した。黒江は今や、扶桑最大の英雄の一人に返り咲き、自衛隊でも最高位に登り詰めた俊英にして、昭和天皇のお気に入り。そのウィッチが21世紀で言えば、中学生や高校生がクラスの誰かをハブにし、タカったり、『可愛いがり』のような陰湿極まりないいじめを受けていた過去を持つというのは、扶桑にとっては不祥事そのものである。昭和天皇も、過去に自分の裁可で解決した事件を日本にほじくり返される事を憂慮したが、昭和天皇の予想を超えて早く、事態は進展してしまった。当時に在籍していたテストパイロットの多くはいじめに加担していたため、事件に昭和天皇が介入した後、その責任を取る形で、軍を去っている。この問題は、黒江の在籍当時に駆け出しで、先輩に言われるままに黒江へのいじめに加担せざるを得なかった、1945年では審査部の古参になるテストウィッチが懺悔した事が始まりだった。これは退役前に懺悔したい事ということで、退役間近の彼女なりの黒江への懺悔のつもりであった。だが、いじめの被害者が黒江だったことのインパクトから、日本マスコミがここぞとばかりに叩いたのである。不幸なことだが、黒江へのいじめに纏わる事件は扶桑陸軍航空の機密扱いにされていた(黒江が現役復帰し、かつての神通力を取り戻して英雄に返り咲いた事で、再指定された)事も日本マスコミが叩きまくった原因である。黒江が事変最大の英雄集団『七勇士』の一人であることが、後輩世代に完全に知れ渡ったのは皮肉にも、この騒動が理由だった。また、体面上の都合で、これまで扶桑の一般国民には伏せられていたのも、騒動が小規模で終わらなかった原因だった。吉田茂の休憩に伴い、大命降下が降った小泉純也の最初の仕事は、この騒動の収拾であった。小泉純也が総理に就任した頃になると、黒江をいじめていた過去を持つ元ウィッチへ、マスコミの煽りに乗っかった日本/扶桑の一般国民達が暴動を起こし、元ウィッチが再就職先をやめざるを得なかったり、家族にまで迷惑をかけるケースが相次いだ。小泉純也は21世紀にいる子や孫の仲介で、安倍シンゾーと会談し、談話を出すことから始めた。
――1945年のある日、読継新聞が報じた新内閣の談話は以下の通り――
『本人の懺悔は兎も角、公的な処罰は終わっており、それを事実として伝える以上の事は私刑に他ならない』。また、『御上の裁下により処断の成された件であり、これ以上の責めを問うなら、御上への侮辱とも取れるが、如何であろう?』と続けた。2018年冬の安倍シンゾーの談話も『他所で終った、手打ちもした、とされている事を関係者の反省の発言を言質に連合相手とはいえ他国の内政的な話に干渉するのはどうかと考える』で、歩調を合わせた談話が出された。黒江へのいじめ問題はこの談話でひとまず収束に向かったが、今度は戦争が現実味を帯びてきた事で、横須賀航空隊の『乙戦への無理解』を叩く方向に日本マスコミは批判の矛先を変え、小泉純也はその対応に四苦八苦することになる。横須賀航空隊が震電の焼却事件を起こしたのはクーデターの鎮圧後だが、この乙戦の報道を横須賀航空隊のウィッチが苦にしていたという情報も囁かれている。実際、扶桑ではドクトリン的に乙戦の必要性は薄かったという事情があり、一応、派遣先の地上基地の防空に必要な最低限は生産していたのだが、日本側が史実本土空襲の写真や映像で鬼の首を取ったような勢いで責め立てたものなので、扶桑軍は恐慌状態に陥った。そこにスウェーデンは付け込んだわけだ。ドラケンが採用されたのは、整備が遅れていた高射砲などの防空網の整備の時間をジェット機で稼ぐためであった。今回においては、日本連邦がB-29に届く迎撃機を早期に求めていることを聞きつけたスウェーデンが売り込んでの採用だった。
「スウェーデンからの通達ですが、扶桑は月光や雷電の後継に『ドラケン』戦闘機を選び、生産を始めたようです。また、アメリカからはF-104戦闘機のライセンスを」
「マスコミ対策かね?」
「ええ。海軍向けにはF-14と18、空軍向けに『F-15』までのライセンスを」
「性急ではないのかね?現用機ではないか」
「やることなすことにいちいち野党やマスコミが騒ぐから、現用機までのライセンスをいっぺんに買ったんだろうよ。現用機を持ってれば、あいつらは黙るもんさ」
麻生タローのいう通り、扶桑はこの後、急速に作戦機を更新し、戦争中に日本の現用機水準に到達してしまう。これは日本の軍事に無関心でありながら叩きたがる野党の行動が招来させた光景であった。また、扶桑はダイ・アナザー・デイ作戦の段階でVFや可変MSの購入も進めており、戦争準備で足りないのは、新型戦車と輸送艦、インフラなどであった。航空兵器はリベリオンがどんなに頑張ろうと埋められない差があった事になる。岸信介や池田勇人がTVで『戦備不足』と言ったのは、陸の装備が理由なのである。
「統合幕僚長、扶桑とリベリオン本国の衝突があとどのくらいで起きるか、防衛省で試算しておるね?」
「今回の海戦で消耗する海軍水上打撃艦隊の再建を考えますと、扶桑での1946年の終わりから47年のはじめには戦端が開かれると私共は試算しております」
「早いね」
「アメリカの生産力が世界最高を誇っていた時代ですので、月刊正規空母、季刊戦艦を考慮に入れると、一年半もあれば元の規模に戻ります」
「そんなにかね」
「ハッ。一日で潜水艦や航空機、戦車が出来上がると言われているので、こちらが12隻戦艦を撃沈しようと、半年で半分は補充されてしまうでしょう。攻勢をかけるにも、一年以内にワシントンDCを陥落させる勢いで仕掛けなければ。基本占領より敵軍の破断、政府機能の破壊、指導者たるティターンズの排除が戦略目標となるでしょう」
「その生産力の差を埋めるために、扶桑はこのような軍艦を?」
「この映像の艦は大和でいうところの武蔵だそうです」
「つまり姉妹艦だと…?」
「本土で待機しているネームシップがいるそうです」
それに議場がざわめくが、統合幕僚長は続ける。
「扶桑は既に超文明側に、この艦の上位互換となる戦艦を発注したとのことです。大艦巨砲主義の宿命でもあります」
それは三笠の更なる上位艦種である『敷島型』の事だ。全長800m、長砲身56cm砲(61cm砲は没った)をまほろば以上の門数で持つ予定で、航空運用能力すら持つ艦が予定されている。
「どうしてそこまで追求するのだ?意味がわからないのだが」
「超文明は人型に変形する宇宙戦艦、70キロメートルの大きさを誇る要塞のような宇宙戦艦を有しております。それを思えば、800m級などはプラモデル感覚ですよ」
「なんだか、SFだね」
「銀河連邦がいる以上、我々はそれを現実に知る。宇宙刑事ギャバン達がそれを証明していますよ。それと、連合艦隊をこの作戦の後に解散させ、任務部隊制に移行させると言ってきております。米国の任務部隊制に影響を受けたのでしょう」
「そう上手く行くかね?」
「国土交通大臣、貴方の管轄にある海保が連合艦隊の今の体制に異議を唱え、海援隊と揉めたそうですな?」
「私の管理不届きであり、それについては現地の海援隊に詫びを入れましたよ、幕僚長」
海保はこの頃に着任し、後に更迭される海保長官が海軍へ敵対意識を露骨に出し始めており、国土交通大臣は更迭の機会を窺っていた。この時に着任した長官は世代的に、初期の海自と海保の派閥抗争を引きずっていないと思われたが、彼の生い立ちと、彼の祖父が予備士官だった関係で、日本海軍に敵対意識を持っていたのである。彼が扶桑海軍にも同じ名前であった規則『軍令承行令』を問題化した張本人であり、扶桑海軍に混乱を引き起こした。日本のそれが『軍医中将が砲術、水雷等担当の兵科少尉候補生に服従せねばならない、』『下士官兵から叩き上げの特務大尉が兵学校出の少尉に服従せねばならない』という、言い伝えで誇張されたにしろ、時代に即していない制度であったのに対し、扶桑では単なる指揮権の大まかな序列を定めたものであった。また、ウィッチが存在するため、不文律で特務士官が強力な権限を持っている。これは航空科でも、士官学校出の黒江が特務士官である赤松に最終的な裁可を仰いでいることが証明になる。(つまり、扶桑は『叩き上げの特務士官は士官学校出の経験の浅い将校を指導する』文化が強固にあったのだ。つまり、赤松は扶桑特務士官ウィッチでありながら、ウィッチ元帥のような立場にいると言える)扶桑で作戦後に起こるクーデター事件は不文律を問題にさせたことでの海軍ウィッチの暴発に近かったのだ。(日本側が不祥事起こすほど、特務士官の兵科将校と指揮権継承順の同列の明記にこだわり、反対派を尽く網走刑務所かアリューシャンに島流ししたので、開戦後に明記された。その影響で海軍航空が死に体になったからだ)
――そして、レイブンズ主導で推し進められる『ジェット化やRウィッチの普遍化』への反発がクーデターの背景にあったのは事実だ。しかし、太平洋戦争の敗北の主原因が航空隊の弱体化であることが既に日本によって、軍内に広まった事もあり、時代はもはや海軍ウィッチの求める軽戦闘脚の時代でも、ましてや重戦闘脚の時代すら過ぎ去りつつあったのが1945年である。この頃は介入者の軍備により、ジェット機の優位性が否応なしに示され、ウィッチの存在意義へ急速に疑問符をつけられていった時代でもある。また、ジェット機でありながら、極限までポストストールマニューバ(失速後機動)」の向上を重視したVF-19系列の存在もあり、扶桑はジェット機の制空戦闘機としての後継としての開発と配備を推進させる。(これは連邦軍や自衛隊の格闘戦重視ドクトリンが大いに影響した運用法だが)特に、黒江がVF-19/A2でウィッチを模擬戦で圧倒してみせた結果はウィッチ世界の航空技術者を唖然とさせた。重戦としか思えない機体が信じられないほどの小回りをみせ、ストライカーユニットを圧倒したのだ。しかもその圧倒されたウィッチは、カールスラントの撃墜王であるライーサ・ペットゲンである。(因みに、ペットネームがエクスカリバーである事から、観戦していたアルトリアはご機嫌だったとのこと)その際に、黒江は『ケイからポストストールマニューバを聞いとかなかったのか?大気圏内でこいつに勝てるのは、後継のYF-29だけだ』とライーサに教えている。実際、19の空戦ポテンシャルはコスモタイガーを上回り、YF-29の登場までは地球連邦軍最強を誇った。黒江は作戦の合間にそんな事を行っているので、超過労働時間がすごいことになったのだ。また、コスモタイガー、バルキリー、Z系と言った名だたる飛行メカを色々な容姿で乗り回す事から、『ミスティ』という渾名が空自であり、それをTACネームにしている。その点も航空審査部の高官が恨み節を吐く原因となっている。最近は調を二、三歳は成長させたような容姿を使用しているが、本人と見分けがつくように、ポニーテールに変えている。空中元素固定能力で容姿は自由に変えられるため、箒がインフルエンザにかかり、土壇場で行けなくなった時は箒の姿と声を使用し、アガートラームを持ち込み、IS学園で使用している前歴もある。(今回は潜入の段階で、千冬にはいきなりバレた。しかし、事情を説明し、軍隊で大佐の階級である事もあり、千冬は敬語を使って接し(千冬はドイツ軍でラウラを教えていた頃は中佐待遇だった)、事後の一夏の非礼を侘びている。その際に普段の口調で『ダチによく似た声だよ、お前』と千冬に述べている。また、ケイがレヴィとして、IS学園を訪れた際には、一夏は『あの人、千冬姉に声が似てるからか、悪寒が走るぜ…』と述べている)
――前線――
「お、箒か。そっちはどうだ?」
「こちらはヒンデンブルクと富士が一進一退の攻防をしています。それと、サーニャをラー・カイラムに着艦させ、邦佳さんがイリヤに変身させたところです」
「黒田に、えんどう豆は出してやると伝えてやれ。それと、赤ズボン隊は回収したか?」
「ええ。皆、腕か足の一本が欠損していまして、復元手術に送りました。目覚めるのはおおよそ数ヶ月後でしょうね」
「相手がユダシステム状態のゴーストだったのが不幸だな。これでロマーニャ公から不興買うから、お前、その時は擁護してやれ」
「了解です」
艦隊の直掩についている箒から連絡があった。赤ズボン隊を回収した事を伝える箒。僚機は連邦製IS『武天八極式』を駆るシャーリーだ。シャーリーの機体は今の赤椿と同じく、人サイズに小型化されはしたが、ISである。また、そのデザインモチーフが『どこからどう見ても、どこかのロボットアニメ』であることから、三自衛隊からは思いっきりネタにされている。シャーリーは最近、歌唱トレーニングを受け、歌唱力も一級になったが、戦闘面でも本懐を遂げる機会はきっちり得ている。得たISは元ネタの通り、数回の進化を遂げており、弐式→可翔式→聖天八極式相当の進化を既に起こしている。通常のISで言うところの第二形態移行が聖天八極式相当の進化にあたる。
「オジロワシリードより各機、赤いシオマネキが上がって来たぞ、範囲攻撃に気を付けろ、送れ」
「ベティ、了解」
「輻射波動っすね、キャロル、了解」
「 お、見えた、デヴィ、了解」
空自の艦隊への空中援護機のF-4EJ改のパイロット達はシャーリーの機体のデザインモチーフに気づいたか、声が笑っている。シャーリーは何回かの使用でISが急速に進化し、ついには変質した赤椿と同等の機動力に達している事にご満悦である。
「F-4EJ改かよ。あんたら、まだそんな古い機種まだ使ってんの?」
「本当は35に更新してからって話だったんだけどさ、ここに派遣されることが決まった時に野党が反対したから、こいつのままで代表者が送られることになったのさ」
「馴染んだ機体だから無理も効くんだな、これが!」
二機目のパイロットはバレルロールをしつつ、複数のP-80をロックオン、一気に始末する。彼はこれで自衛隊初の撃墜王の名誉に預かれるだろう。
「来る前にちょっと、統括官に目標捕捉アルゴリズムに手を入れて貰ったしな。P-80なんて、巴戦以前の問題さ」
「あれ、そっちってさ、エースの名誉はともかく、在官中に勲章もらえなくね?」
「統括官が来てるから、扶桑の金鵄勲章を外国勲章って言い訳でもらえるようになったよ。本当は瑞宝章になるはずだったらしいんだが、人数が多すぎて、財務省が泡吹いたらしいから」
「それと瑞宝章は民間の官僚への勲章だからって事も影響したらしんだがね。統括官がジャラジャラとメダルやリボンつけて観閲式に出たのがきっかけでね」
黒江がカミングアウトするタイミングで、当時の総理大臣の要請もあり、扶桑の勲章や従軍記章などのリボンをジャラジャラ付けて観閲式に出たのは、日本連邦への布石だった。結果として、黒江はカミングアウトからしばらくの間、ノイジーマイノリティによる訴訟の嵐に悩まされることになったが、日本連邦構想の公表には大いに役に立った。また、この頃から『連邦を組んだ場合、扶桑の勲章を授与された自衛官は勲章をつけていいのか?』という議論も巻き起こした。黒江達は『留学生扱いなので、例外とする』措置が取られていたが、反対論はあった。旧軍の勲章そのものだからだ。しかし、2000年代半ばになると、外国勲章を授与される自衛官も増えてきていたのと、当時は外国扱いであったので、外国勲章で押し通していたわけだが、某国の抗議への言い訳としても留学生扱いは公的に使用されている。その後の政権交代で黒江は幕僚長への道を閉ざされたが、黒江が予想を超えて迅速に将官へ昇任したので、政権再交代期に差し掛かる頃には統括官が約束されていた。扶桑でトントン拍子に出世したので、自衛官としても信じられない速度で将官となった。2003年前後に任官、10年未満で一佐(一)にまで登り詰め、2011年前後に将官になったのは、旧軍の軍歴がない生えぬき自衛官としては初だった。政権交代前、日本連邦軍創設の暁には、黒江の航空幕僚長と引き換えに自衛隊将官の空軍か陸軍の参謀長としての送り込みを画策していた制服組だが、鳩山ユキヲが吹き飛ばし、警察官僚らの介入で幕僚長への道を閉ざしたが、左派政権の3人目の総理大臣が就任した頃には、黒江は将補でありながらブルーインパルスから離れた後、一応は『統括準備室長』という名の役職は得ているが、事実上の無役だった。これが防衛省内部で問題になり、政権再交代で統括官のポストが正式に宛てがわれ、その後にウィッチ総監も兼任することとなり、空将に昇任を引き受ける事になった。これで今度は扶桑が困惑し、結局、黒江は扶桑軍で『中将勤務の准将』という、実にややこしい地位になった。これは陸軍参謀本部史上最後の大恥として、後世に言い伝えられているが、真・501の幹部らは黒江が裏方として、未来の時間軸から呼び寄せた『二代目レイブンズ』から聞かされており、天皇陛下へ言ってしまった手前、引っ込みがつかずに、陸自のアイデア(幕僚長の副官である二佐のアイデア、天皇陛下への上奏は幕僚長自身が行った)頼りの扶桑陸軍参謀本部に溜息であった。最も、黒江が戦功を立てて大佐に特進したため、防衛省の内部でも黒江の『勤務階級のすり合せ』を革新政権時に幾度か試みたが、警察官僚達の介入と入れ知恵で頓挫していた。しかし、空自と扶桑軍で階級が違うのは流石に不味いと判断したか、昇任速度を早めていたが。(2008年時点で二佐で、ブルーインパルス離任直後に一佐、2011年前後に将補との記録が扶桑に渡されている)本当は扶桑で将官昇進の内定が伝えられていたので、一日で将官にすることが現実視されていたが、警察系の防衛官僚の猛反対により、昇任速度を早めることで調整する選択を革新政権が取ったものの、扶桑軍人出身者への生え抜き自衛官達の反発もあったため、黒江が将補になれたのは2011年のブルーインパルス離任後であった。黒江はそれ以上の昇任は断りたかったが、二人の天皇陛下の要請(日本の天皇陛下の意向は間接的に伝えられた)で引き受けたのと、書類仕事が日本連邦樹立確定により、副官に丸投げできる事になったからである。これに伴い、日本連邦樹立以前に自衛官になっていない圭子、智子も日本連邦の始動で自衛官としての身分を自動的に得、黒江と同等の空将相当の地位が宛てがわれた。これは扶桑軍人は日本では、便宜的に自衛官として扱われるからだ。こうして、『初代レイブンズ』の三人は航空自衛官としての最高位が宛てがわれたが、これは事変の終結の立役者というポジション、23世紀での戦功が考慮されたためだ。三人は現場の人間であるので、将官の地位を与えられても飛ぶので、生え抜きの空自隊員からは『源田幕僚長の子飼いらしいや』との評を三人へ与えている。渾名はそれぞれあり、圭子は銃撃狂である事から『ガンスモーク』、智子はハルカを抱えている事と、『同志が部隊規模』な事から、冗談めかして『同志隊長殿』、黒江は引き続き、『ミスティ』である。圭子達の自衛官としての勤務は事務処理の終わる2019年度からになるが、空自は労せずに大量のエースパイロットを得たことになるので、人材豊富になるのだった。(機材はともかく)また、空自がウィッチ達を得るのに合わせ、海自も艦娘の編入を海保の反対論をねじ伏せ、ラ號の使用権交渉と併せて実行した。また、黒江と智子が現役で黄金聖闘士であることにより、星矢達のサインをねだられる事も増えたとか。(聖域がかなりの窮状であることもあり、沙織や老師の裁可がいると言って、断ってはいる)
――こうした、軍隊の円滑な上部組織設立と対照的に、扶桑警察と日本警察の統合組織設立がならなかったのは、時代や風土の違いだけでなく、扶桑と日本の法律の違いも大きかった。日本警察では厳しい銃刀法などの影響で警棒を用いられているが、扶桑ではエクスウィッチの再就職先の一つであるのと、日本と違い、銃器が普通に買えるためか、明治期の名残りでサーベルが普通に警棒のポジションにあった。(警棒も訓練の必要上、必要であるが、軍出身の者達はサーベルを好んで帯刀しているなど、風土的には戦前戦後が入り混じっている状態)警察組織が軍隊と違って統合に失敗したのは、扶桑では内務省の組織であり、日本は警察庁の管轄であるからという、組織の違い、扶桑ではアメリカさながらの撃ち合いも日常茶飯事である事もあり、警察官であっても重武装であるが、日本の戦後の警察官は軽武装に入るという意識の差も大きかった。日本から特殊警棒とトンファー、ヌンチャクなどを輸入して、警察の装備を日本基準に合わせる案が出されているが、古参の警察幹部が不安を顕にした事もあり、検討は低調である。(日本はSMGなどを機動隊に配備し、そこそこの重武装化も果たしているが、日本警察側が扶桑警察へ手の内を明かさなかった事も不信感を煽った)その為、連絡組織が置かれるに留まった。(海保も扶桑の水上警察や海援隊の編入を目論んだものの、水上警察より扶桑国民が軍隊を根本的に信頼している不信による扶桑国民の反対、海援隊はそもそも民間軍事会社である事で、連絡組織の設立に留まった)その為、円滑な統合が叶った日本連邦最初の組織が軍事組織という状況となった。(ただし。軍隊とて、扶桑側にかなりの混乱があり、ダイ・アナザー・デイ作戦時には憲兵の警務隊への編入とリストラと任務縮小、近衛師団の連隊への縮小、危険思想者と見なした者の軍籍抹消か剥奪などを行った結果、海軍ウィッチ達によるクーデターが起こってしまうのだ)大艦巨砲主義の宴の裏では、『秋か冬』を目指してのクーデターが計画されているのだ。ウィッチ世界では、元々、海軍が活躍する機会がそれほどない上、ウィッチから『浮き砲台』扱いされ、見下される事に不満を持つ戦艦乗組員も多かった。その風潮を利用したのが、海軍に事変中からいた反レイブンズのウィッチ達であった。
「シャーリーくん、小沢だ。本土にいる陸奥から緊急電が発せられた。コンディション・オレンジ。状況が開始されるのは時間の問題だと」
「前史より早いっすね…」
「日本の性急な要請のしわ寄せだよ。こちらへいっぺんに要求しおった。それに雲龍の建造を止めて、フォレスタル相当の空母を作れとも」
「確か、あれってもう何個あるのさ」
「参謀の話だと、試運転中のが5隻、訓練中のが5隻、実戦部隊にいるのが初期の10隻だそうだ。どの道、あれは5年使えれば元取れるような戦時型にすぎんのだがね」
その情報は齟齬があり、ドックに戻っている艦が四隻はあった。これは各部簡略化で不具合が出たからだ。艦上機が急速に代替わりした事で、雲龍型の大きさでは運用に制限がかかってしまった事もあり、コア・ファイター運用が内定している『雲龍』から『葛城』以外の艦は早くも予備艦隊入りか海援隊への払い下げが検討されていた。地球連邦軍はそれを見越し、龍鶴という名でプロメテウス級空母を貸与していた。時代が洋上空母から宇宙空母の時代に移ったことで、海軍の規模が縮小されたために余剰になっていた船を貸与したのが始まりである。
「地球連邦軍がプロメテウスをもう数隻くれるそうだ。儂の代わりに山口君が乗りそうだがね」
「そっか、おっちゃん、あれが起こったら」
「うむ。連合艦隊司令長官を辞さねばなるまい。後は山口君がどうにかするだろうから、安心だがね」
小沢治三郎はM動乱での戦功でクーデターの失点が帳消しになり、進退伺いを提出した後、後任に山口多聞を推薦して、連合艦隊司令長官を辞する事になる。(山口多聞は小沢治三郎の三期後輩にあたる海兵40期であるので、小沢治三郎の後任と目されている何人もの先任をぶっ飛ばした事になる)その人事はレイブンズが山本五十六のラインで上奏し、既に昭和天皇の裁可が得られているものである。扶桑海軍としては、抜擢人事の二例目である。山口多聞の連合艦隊司令長官(海軍司令長官に改称されたものの、戦中に扶桑国民の嘆願で連合艦隊司令長官に戻される)就任内定にレイブンズが関わっている事は、海軍ウィッチの急進的な派閥には面白くない出来事でしかない。結果が自分らに利するとしても。
「全く、反レイブンズの連中の頭はどうかしとるよ。儂に続いて、山口君が就任すれば立場はむしろ安定するというのに」
「そいつら、目先の利益しか見えてないんだよ、たぶん」
「やれやれ。大和型の立場を確立させ、それに続く戦艦の生まれるきっかけもレイブンズだというのに」
レイブンズは結果が海軍に利する事もかなり行っている。代表的なのが、大和型の存在を公にする事で、大和型が量産される素地づくりを行ったりした事だ。また、井上成美の行う海軍空軍化を諌め、空軍に誘うなど、『海軍が海軍である』事を念頭に置いている。これは海軍が肝心の空戦と海戦で無残な敗北を喫したマリアナ沖海戦の事を意識しての事だ。これは史実太平洋戦争での経緯が伝わることで海軍に居場所を無くすであろう井上成美の保護も兼ねていた。彼を比叡が慕っている事を知っている黒江達は、井上成美にマリアナ沖海戦や島嶼戦の数々を教え、空軍に誘うことで誹謗中傷から保護する目的を果たした。その際に、後世の批判を知らされた井上は、渋い顔を見せ、こういったという。『私や山本さんは軍政家で戦術家ではないから、結果として起こった作戦の運用を言われてもな……。私が戦下手なのは知ってるだろう?』と。
「作戦運用は小沢や山口君達のほうが上手いよ。小沢は私の同期では一番だ。宇垣や大西はいかんよ」
と、いうのが井上の自己評価だ。宇垣は山口の同期だが、山本五十六の下で参謀長をしていたものの、特に実績はない。大西も航空分野の大家だが、ここ最近は政治的に疎んじられている。日本の一部から排斥運動が起き、その被害者になったのに、空軍高官への就任はよくないという意見が日本から多く出ていた。大西は零戦の防弾タンク装備の意見を『零戦の特性である空戦性能、航続距離が失われるので高速性、戦闘性を活かし活動し効果を発揮するべき』という技術士官の意見を引用して、黙殺した事や特攻の父という悪評により、空軍の中枢部の高官からは排除されてしまう。その代替が源田実の空軍司令官への就任である。
「大西は特攻や零戦の防弾タンクの事で私刑にあい、軍病院のベットから起きれんそうだ。その為に、今度できる空軍の司令官は日本の空自の幕僚長に就任した経歴がある源田くんに決まった。日本は内務省の官僚を推していたそうだがね」
それは上村健太郎公安警察部長を添える人事案だった。史実通りではあるが、扶桑では不可能な人事である。その為、日本は佐薙毅大佐を添える人事乙案を出している。源田の我の強さを懸念したからだ。だが、レイブンズを抑えられる者という条件に合致するのが源田実しかいないことが決定打になった。つまり、源田を添える人事案は、レイブンズの手綱を引くことが期待されての推薦であったと言える。
「あのおっちゃん、空自の幕僚長になってんのに、なんで反対論あるんだよ」
「自衛隊の制服の規則を変えたから、だそうだ。それで我が強いと警戒されているのだよ。だが、源田くんほど向いている者は海軍出身者にはおらんよ」
小沢の言う通り、源田ほど航空戦力に見識を持つ海軍の佐官級将校はいない。レイブンズが尊敬している数少ない海軍士官の一人であり、ブルーインパルスの生みの親。この箔以上は海軍にはない。パイロット出身の参謀である事も考えると、源田が最適な人事だ。
「日本人は、出る杭は打たれるを地で行くなぁ。あのおっちゃんは空軍には最適な人材だよ?」
源田がレイブンズの後援をしている事は周知の事実で、既に源田の名は自由リベリオンにも鳴り響いていた。源田には人としての魅力、カリスマ性があり、それがレイブンズが『源田の部下』のポジションに収まる理由でもある。この時点で、海軍はかなり得をするはずなのだ。
「日本は過去の記録でしか判斷のしようがないから、まだ理解できる。だが、今度の連中は日本での記録にある2.26の連中と何ら変わらんよ。傲慢不遜という奴だ。今回は坂本君が源田君の人事に賛成してくれたのが良かったよ」
「まーな。少佐は戦前の戦闘機無用論から主張を変えたみたいに映る、343空や64の復活の主導を毛嫌いしただけだしな。真意が分かれば、強い味方だよ」
坂本は転生で源田実の真意を知ったため、今回は343空に深く関与し、志賀が異動の形で飛行長を辞すと、その後任として復帰している。戦の間に交わす会話にしては、えらく政治的だが、それはクーデターという大事件を控え、フィクサー組織として活動を開始する予定のY委員会員としては仕方がなかった。
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