外伝その168『Gウィッチ達の力2』


――ルッキーニはクロエ・フォン・アインツベルンとして変身を遂げた。それに伴い、精神年齢は前史での青年期以降に引き上げられ、声色もスバル・ナカジマや更識楯無に近いトーンとなった。が、性格の根は変わっておらず、その辺りはスバル・ナカジマに近くなっていた――

「黒田大尉。あたしを変身させたはいいけれど、どうするの?」

「そりゃお前、クラスカード使いなよ」

「いいのー?あれ使うと、子ども達に文句言われるわよー?」

「この時点だと、お前だって子供やん」

「それもそっかー、にゃはは」

「それに、アルトリアがおおっぴらに活動してるし、美遊は現在進行系で戦の最中だぞ?」

「まー、仮面ライダーとか来てるし、今更か」

「そそ。イナズマンも来てるし、そのうち、キカイダー兄弟も来るかもよ」

「あれが来たら、デンジエンドとブラストエンドで一発やん」

「だよなー。快傑ズバットとか来たらどうしよう」

と、思いっきりネタに走る二人。人造人間キカイダーは光戦隊マスクマンのタケルが少年期に憧れていたヒーローであるのも有名なロボットヒーローで、超人機メタルダーの技術で造られたが、メタルダーよりも不完全なところがあったのがキカイダー/ジローであるとされるが、キカイダー01/イチローは完全な良心回路を持つらしきメンタルであるので、そこが謎である。

「キカイダー兄弟って、どこを守ってたの?」

「ハワイらしーよ?90年代ごろに行って、それからは現地の守りについてたみたいで」

「ハワイかー。いいなー。」

「ヒーロー達って引退すると、外国行くんだよなー。本郷さんたちもだけど」

「でもさ、古くは仮面の忍者赤影がいたとかいうじゃん?」

「うーん。そこ謎なんだよなー」

「でもさ、今回はクニカ、剣術でも名を馳せてたわけじゃない?なんでなのー?」

「先輩から斬艦刀を借りてたからね。それで、506に声がかかるまではケイ先輩の護衛してたんだ。マルセイユには畏れられてるよ」

「そりゃそうでしょうねぇ。で、南洋諸島をドラえもんが増やしたって?」

「うん。ちょうど関東地方と静岡県の合計くらいの面積の島をポンと、ね。ドラえもんの道具なら、そこをすぐに整地して、開拓もできるから、そこが自由リベリオンのメインになるって」

「ずいぶんと気楽に増やすんだね」

「元々、南洋島はムー大陸の一部だったらしいって伝説もあるしね。沈没してたのを浮上させたから、面積を増やしただけらしいよ、実質」

「ムー大陸って確か、伝説だとどのくらいだっけ?」

「えーと、確か……太平洋に一個丸々、大陸があるのと同じ位だったな。日本じゃトンデモ説だけど、こっちだと、ガチで研究されてる分野なんだとさ」

「へー」

「次元を超えたアケーリアスの資源集積地の跡地じゃないかって説もある。実際、南洋島は面積の割に、あらゆる資源が取れるのは、地学的に可笑しいとか言うしね」

「本島は日本よりちょっとでかい程度なんだよね?」

「うん。そこに鉄鉱石からレアメタル、原油、ウラン……ありとあらゆる資源があって、しかも八八艦隊を養えるほど取れるってのは、地学者が可笑しいとか言うんだ」

「普通に考えると可笑しいけど、扶桑にとっては理想郷なのよね」

「うん」

「で、どうやってアメリカの協力を引き出したの、扶桑」

「地球連邦に頼んで、ホワイトハウスの真上にサイド5から移送中のコロニーの立体映像を写して、脅したんだと」

「宇宙戦艦でも飛来させたほうが」

「うんにゃ、日本から『あんまり次元が違いすぎると、ピンと来ない』とか意見があってね。陸戦ウィッチと空戦ウィッチの行進がソフトだから、そっちにしたほうがいいって意見出したんだけど、日本の連中が、『どうせ同位国にも同情するが、金は出せとか言うに決まってる』って言ってね…」

「で、どうなったの」

「双方の折衷案になったよ。アメリカを悲観的に見る官僚達が『脅したほうが効果的だ。どうせ利権とか欲しがるから』とか喚くからねぇ。行進とコロニーの映像を政権に見せる事に」

おおよそ2010年代に入った頃、自由リベリオンへの援助を求める扶桑皇国はアメリカ合衆国に対し、軍事的示威による砲艦外交を促進した。その過程でてんやわんやがあったようで、ミデアで乗り付けたウィッチ(近衛連隊の陸戦ウィッチと空戦ウィッチ)達の行進が行われ、コロニーの映像をホワイトハウスで当時の政権に見せる事が同時に行われた。日本での数年後の政権交代後、『ティターンズ傀儡と化したリベリオン合衆国によるウィッチ世界太平洋制圧によるゲートからの此方側への侵攻の可能性とティターンズの核恫喝に対する非難声明』と安全保障委員会での『自由リベリオン独立国への支援決議案』が日本から提出された。これは中国やロシアなどは難色を示したが、最終的に折れる。韓国が軍事制裁で無力化された事や、ウィッチ世界には中国そのものが無い事が判明した事により、中国・韓国人のテロ行為が非難の対象になるのを恐れたためとも。実際、2016年までに、来日した扶桑の要人たちを狙ったテロ行為が幾度となく起き、中国や韓国系の人物が実行犯なり、主犯格であったからだ。大和の演説で中国が明代で絶えたことは既に周知が図られていたものの、日本帝国への怨恨からのテロ行為が後を絶たず、ウィッチや艦娘の護衛を必須とせねばならならなくなったからである。(翔鶴がそれで、鳩山一郎めがけて突っ込んできた車を片腕で止める事もあった)また、扶桑の李家氏等の高麗系渡来人系の家系の遺伝子と現代朝鮮系とでは遺伝的共通性が殆ど無い事が判明したのも大きい。(現代朝鮮系のエベンキ系の遺伝がウィッチ世界では無い)その為、中国も表立った暗殺を避けるようになった(艦娘は歩兵が携行できる、どんな火器にも耐えられる)。特に、李氏朝鮮系の人々や明国の末裔が南洋に逃れていた事が開示され、南洋にその子孫が多いのが、中国に非合法的行為を控えさせる要因にもなった。決議は2013年ごろに行われたが、アメリカは扶桑へ相応の見返りを求めたため、扶桑は軍隊への米国製兵器の導入を約束し、アメリカはその兵器を自由リベリオンにも提供する事を条件に、扶桑の求める技術を開示した(ブラックボックスにしていた箇所もあるが、地球連邦軍がそれを除いた正式な設計図を与えたりして補完した)。扶桑がダイ・アナザー・デイまでに製造した米国系兵器は、この時の国連の決議に則って提供された設計図やライセンスで生産されたモノである。米国の政権交代が起こった後は、大統領の性格的に『御しやすい』とされ、兵器ライセンス提供が大々的になされる事になる。その為、扶桑は自衛隊と米軍系兵器へ徐々に更新し始める。米国はこれでウィッチ世界に『利権』を得た事になり、結果的に、自由リベリオンへの面目を保った事になる。

「リベリオンには、これでアメリカは面目保ったよ。ニミッツやアイゼンハワーがいるのに、援助を渋ってたら、軍人から反発くらうしね」

「で、そういう経緯で援助が決まって、扶桑に兵器が渡ったわけね?」

「そゆ事。それに時間かかかったから、ブリタニアの空母も数合わせに駆り出しただけ。シーフューリーや機銃載せたシービクセンを与えて、ね」

「空母によく載ったわね」

「緊急改造だよ。シーフューリーはともかく、シービクセンはジェットだし」

「ブリタニア、ろくな空母なかったような」

「イギリスみたいな空母量産計画がポシャって、その資源が戦艦に回されてたしね。そのかわりに比較的大型の空母があるのは、場繋ぎにいいんだけどね」

ブリタニアはセントジョージ級やクイーン・エリザベスU級戦艦に資源をつぎ込んだ影響で、オーディシャス級航空母艦を早期に整備した一方、コロッサス級の整備は見送られ、バルバス・バウの採用に改善されたジブラルタル級航空母艦の建造に集中するなど、空母の取捨て選択をかなり厳格に行った。その為、現役稼働の空母部隊はかなり割を食っていた。その為、現存する最も有力な空母をフル動員し、わざわざ、ウィッチ装備を外す必要まで出たほどだ。(扶桑も現存軽空母が尽く、『使い物にならなく』なり、空母としての改造を終えた艦は練習空母や輸送艦と化していたが)最も、ブリタニアにとっては、海軍航空ウィッチはエースウィッチが不在であるので、空母は空軍ウィッチの海上拠点としての存在意義しか見出されておらず、史実と同じような『空母機動部隊』運用はダイ・アナザー・デイが史上初という有様であるが。扶桑もM動乱でノウハウを得、日本軍将兵だった義勇兵らのおかげで空母機動部隊に加われた雲龍型など、空母機動部隊をまともに運用しようとする苦労が忍ばれた。実際、扶桑でさえ、史実南雲機動部隊や第一機動艦隊のような『空母機動部隊』へは疑念が多く、義勇兵らがウィッチ閥を抑え込んで、雲龍型を補助空母の名目で実戦参加させた経緯がある。(古参ウィッチを、元日本軍大尉だった義勇兵が挨拶代わりに殴ったという話もある)実際、旧・日本海軍のシゴキ文化は地球連邦軍に属したGウィッチ達も地味に継承しており、地球連邦軍流のシゴキを行っている。Gウィッチ達や義勇兵は、こうした手段で現役世代のウィッチの統制を図っていた。こうした文化は軍隊では割によく見るが、ウィッチ社会では異端とされ、それが智子と黒江へのいじめに繋がった。Gウィッチは軍退役後の一般社会で生きた記憶もあるので、上手いシゴキの仕方を経験で得、実行しているが、普通のウィッチからの反発は当然だった。そのため、覚醒前のミーナが、レイブンズを教官としてしか扱わなかったのは、シゴキへの懲罰のつもりだった(逆に、自分の立場が危うくなったが)という。ミーナも覚醒後は経験から、シゴキを容認した(西住流でのシゴキの記憶からか)。

「で、ブリタニアはどうするの?」

「この戦で、空母機動部隊のノウハウを得て、その上で、新戦艦の二艦級の整備の大義を得るつもりだって。ラ級の借用の交渉も入ってるそうな」

「ずいぶんと欲張りね」

「仕方ないさ。ブリタニアはコモンウェルスを今後、一個は失陥するだろうし、グランドフリートの戦艦は古臭いのばかりだもの。威信も何もあったもんじゃないよ」

「戦艦、ねぇ。日本であれだけ揉めたのに?」

「オーストラリアかどこかの学者が、戦艦の必要性を書いた途端、日本の批判は収まったよ。全く、外国に盲従しかできないんだから」

戦艦は21世紀、空母機動部隊の維持費が大国でさえヒーヒー言うほど高額化し、政治的活用にさえ事欠く時代、装甲の重要性の再定義と共に必要性が論じられ始めていた。日本は扶桑との連合を組む過程で、扶桑の連合艦隊の戦艦群を得たものの、大艦巨砲主義全開の大きさなどから、『こっちじゃ廃れた物が残ってるからって最終的には空母と航空機にコスト面で負けるに決まってる』と高を括っていた。だが、空母機動部隊の年々のコスト増から、他国のほうが戦艦の復権に肯定的になっていた。特に、ミサイルなどは日本でさえ、『一発で一軒家が建てられる』と揶揄されるほど、値段が高騰しているので、見栄えも良く、威圧感もある戦艦群は戦後日本が成し得なかった砲艦外交に使えるという意見が出始めた。但し、紀伊型戦艦以前の戦艦は戦艦12隻以上の維持費捻出が不可能に近いことから、多くは退役した。長門は記念艦になり、伊勢型は解体された。紀伊型戦艦は航空戦艦のテストに回され、加賀型戦艦は上陸支援艦として、戦時に使用後、退役の予定が立てられたので、三河が造船されたのは、戦艦戦力の最低限の維持が目的である。播磨や三笠、敷島の整備は多分に、世代交代が意識されている。大和ファミリーで戦艦を統一する事は以前から意識されていたが、地球連邦軍の介入で思ったよりも経費がかからずに、大和型と超大和型を揃えられているのは僥倖だった。八八艦隊以来の懸案を運用コストの大幅ダウンの恩恵で実現せしめたのだ、(第三次改装後の大和を例にすると、900人程度である。これはガイアの宇宙戦艦ヤマトと同等程度だ)

「で、運用コストの大幅ダウンで、護衛艦とあまり変わらない人数で運用できるように改造されたってわかると、震えてたよ、背広組」

「たしか数百人程度だっけ?」

「うん。主砲周りや機関要員が大幅に減ったり、機銃要員がバッサリ減ったから、900人程度は護衛艦三隻分と同じ程度だし、居住空間は護衛艦より広いし、憧れるの多いってさ」

「未来技術で居住環境は護衛艦より良い上、酒保は下手なスーパーより広いもんね」

「三笠や敷島は、街が一個まるごと浮いてるみたいなものだけどね」

「未来にあるヱルトリウムやマクロス級よりは可愛いもんだよ」

未来世界の宇宙戦艦を見ると、その最上位にあるヱルトリウム級は70キロもあり、下手なコロニーより長いため、居住区も下手な市街地が数個入りかねないほど広い。

「あれは自治体扱いじゃないですかー」

「そうなんだよ。中に電車通ってるし。残ってるスーパーエクセリヲン級でも30キロ。だから上を見るとキリがないよー、本当」

「官僚連中はアホですね」

「アホだけど、野党の議員共よりはマシさ。大和以外の廃艦を言ってきたときは正気を疑ったけど。記録に有るのは、イスカンダル救援の時に遭遇した自動戦闘人工惑星ゴルバの長径600kmかな」

「ああ、前史で見たあれ」

「あれ、波動カートリッジ弾あれば楽に倒せるけど、普通にやると手強いよ。ショックカノン弾くからね」

「そりゃそうでしょうよ、装甲厚が推定7~40mとかどう足掻いても絶望しかないでしょう?」

「だから波動カートリッジ弾が造られたんだよ。プラズマショックカノンやパルサーカノンはまだ夢物語だし」

「ショックカノンがプラズマ化するの、24世紀くらいだったはずですよ?セイレーンと100年戦争やりだす時期のはずだし」

「だよなぁ。ハーロックさんに頼んで、前倒ししてもらうか?」

「どうせなら、パルサーカノンもらいましょうよ」

「コンピュータの処理能力追いつかないよ。23世紀のコンピュータじゃ、波動砲用の演算回路でやっとくらいのはず」

30世紀に最強の艦砲として君臨している『パルサーカノン』はGウィッチ垂涎の逸品だった。ヤマトのショックカノンのおおよそ10倍を超える貫通力と効果範囲を誇り、30世紀では最強クラスの戦艦の必需品であり、Gヤマトも搭載している。その使用には膨大な処理能力が必要であり、23世紀の技術レベルでは手に余り、プラズマショックカノンでアップアップである。


「あらー…」

「波動カートリッジ弾で当分は凌げるよ。宇宙人の船はたいてい、実弾装備の使用は想定外だしさ」

「どうしてです?」

「ガミラスやガトランティスはショックカノンとかのビーム系に耐えるようにしてたけど、ライフル弾とかに意外に弱い造りでね。グレートマジンガーのアトミックパンチ一発で、大戦艦が沈んだことあるって」

「なら、ターボスマッシャーパンチとか食らうと?」

「デスラー艦が沈む試算出てるってさ」

「脆っ!」

「仕方ないさ。奴さんは実体弾を『原始的な武器』とか言ってたから、ブラックタイガーやコスモタイガーが無双できたんだよ。とりわけ、アンドロメダ銀河までの宇宙人は実体弾ノウハウないよ。失われてる」

地球連邦軍が30世紀に至るまで、実体弾を愛用し続けている理由は『宇宙人は実体弾を捨て、ビーム兵器偏重の艦砲ばかりをしている』からである。

「でも、21世紀のアメリカって、なんでVFの技術を軽視して、デストロイドを欲しがったんです?」

「まー、アレは日本的発想だしね」

この時に21世紀アメリカが得た技術はデストロイド開発に費やされ、VFは自衛隊が熱心に研究していくのと対照的に、アメリカは地球連邦の結成後になる統合戦争最末期のSV-51の登場まで、可変戦闘機を顧みなかった。これはアメリカが『VFの防御力に懐疑的で、なおかつ細かい整備の出来る人員揃えるの面倒』という、武人の蛮用の観点からで、旧・ロシアがSV-51を投入した後で手のひらを返すという、情けない有様だった。

「記録見ると、SV-51が暴れた後、日本がVF-0を試作してるって聞いて、日米戦争に負けた後だから、尻馬に乗ったとか」

「なんですか、その有様」

「まー、統合戦争が最終盤を迎えた頃なんて、そんなもんだよ。当初の目的なんて戦勝国も敗戦国も覚えてないし」

「100年戦争みたいですね」

「まー、戦争が長く続いちゃうと、指導層も最初の目的忘れてるのよね。今のジオンみたいな?」

「ジオンは指導層変わったからじゃ?」

「今はダイクン派だけど、始めたのはザビ家だしね」

邦佳とクロエが言及する通り、何十年も戦争をし続けると、最初の目的は忘れ去るものである。ジオンを例に取っても、幾度かの離散集合を経て、目的がすっかり変わった上、内部の派閥抗争も激しい。特に旧ギレン派は若いネオ・ジオン軍人を見下している節がある。ティターンズ残党も、ティターンズの結成当初の理想は捨て去り、今では『一旗揚げて死のう』的な破滅的な思想に取り憑かれている。

「アムロさんが言ってるけど、手段が目的化した組織はいずれ滅ぶそうな。旧ドイツ軍、日本軍しかり」

「ジオンはなんでそれを?」

「スペースノイドの不満の捌け口がジオンだからだって」

「まったく、自分達でコロニーを落としといて、何がささやかな欲求よ」

「エギーユ・デラーズの言ってた事なんて、ガチガチのギレン派だから、気にすると負けだよ、クロエ」

クロエは未来世界でジオンの歴代指導層が掲げた大義名分を吐き捨てるように酷評した。実際、地球連邦がティターンズを一時でも存在を許したのは、『過去の世界遺産さえもゴミ扱いのジオン軍への制裁』の意識があったからだ。

「まー、ティターンズのした事は許される事じゃないけど、ジオンだってオーストラリアの大地をシドニーとキャンベラ分、まるごと削り取って、地球の自転を早めて、太平洋に甚大な被害出たんだし、ティターンズと似たりよったりだと思うよ」

シドニーとキャンベラはコロニー落としで大陸の地殻ごと削り取られ、コスモリバースシステムを以ても再生できなかった傷である。そのため、23世紀以降のオセアニア地区の首都は奇跡的に免れたニュージーランドに置かれている(他にもパリが吹き飛び、周りにヌーボパリが置かれているなど、23世紀では相当に地図に変化がある)。極東地区は日本の東京に一極集中が進み、過剰にメガロポリス化している面もある。そのため、極東はニューホンコン(ネオホンコンとも)が第二首都として再開発されている。ヨーロッパはダブリンの壊滅後はロンドンの再開発やエジンバラの再開発が行われるなど、どうにも後手後手の再開発であった。そのため、フォン・ブラウンが全体の首都になった。空気の購入は環境技術の発展でその必要が無くなったため、連邦軍の経費削減にも役に立った。

「技術の発展で宇宙にいる将兵の給料から『空気代』が差っ引かれなくなったから、経費削減になってるとか、連邦の財務官僚が大喜びだって言うし、結果的にはいいけれど」

「21世紀の連中にはわかんないですよ、それ」

「宇宙開発が停滞してる時代だしね。ドラえもんの時代が一番個人の宇宙旅行が華やかだったっていうけど」

「どうして?」

「光子推進と反重力推進のロケットが普及してたらしいんだ、ドラえもんの時代。そこから逆行して、技術体系がフォールド機関と波動機関に様変わりしてるから、一般庶民には手が出ないよ」

――ドラえもんがいた時代は光子推進/反重力推進の混合形式のロケットの最盛期であったが、統合戦争後にフォールド機関と波動機関が取って代わると、個人の宇宙旅行はまたも高嶺の花となり、払い下げの可変戦闘機にフォールドブースターをつけてフォールドしたりする方法が一番安上がりの旅行になっている――

「反重力推進は宇宙戦艦の大気圏内の姿勢保持で現役だけど、推進器としては速度が足りないからね」

「光子推進は?」

「その後継がミノフスキー・ドライブらしいんだ。新しい技術だから、民生用途は無理だよ、まだ」

「これからどうなっていくんですか?」

「ZEROはゴッドが倒したけれど、デビルが残ってる。あれが甲児さん曰く、この時代の宿敵だそうな」

「デビルマジンガーねぇ」

「ドクターヘルの成れの果てにして、悪のマジンガーの究極。ZEROがあくまで、Zの邪が大きくなったに過ぎないのに対して、アレは悪の究極。ミケーネ最強の敵だよ。闇の帝王は黒幕ぶってるしね」

「百鬼帝国は?」

「真ゲッタードラゴンが目覚めりゃ、ウザーラなんて敵じゃないさ。あれはバグと戦うために目覚めるから」

「スケールがインフレしてるなぁ」

「まー、サイコフレームの奇跡も大概さ」

これから起きるだろう出来事をメタ的に語る二人。実際問題、進化を重ねたマジンガーやゲッターがフルパワーで暴れたら、地球がいくつあっても足りないほどのパワーが飛び交うのだ。マジンカイザーやマジンエンペラーはグレンダイザー以前のマジンガーを超越した究極の魔神の一つと言える。

「で、これから次元震が起こりますよね?その時になったらどうします?」

「お前、その姿で『ルッキーニ』に会ってやれば〜?」

「うーん。それはそれで、向こうが泣きそうだなぁ」

「お前はまだいい。リーネは美遊になった自分と会うんだよ?」

「あー、そっかぁ」

「こっちはリネット・ビショップとして踏ん切りがつかなかったから、美遊・エーデルフェルトになったんだ。向こうの自分自身に理解されるかどうか、だな」

「あそこまで違うと、同一人物で説明するの無理ですよ?」

「別人という事にするさ。芳佳も大洗の生徒会長っぽい性格や振る舞いになってるしね」

「いや、モードレッドさんみたいな別人格のほうがいいんじゃ?一応、変身だし」

「うーん。そうだよなぁ。そこは先輩に任せよう」

「黒江さんも苦労したそうじゃない?あの翠の鎌持ってる子で」

「思いっきり愚痴ってたよ。エクスカリバーとか石破天驚拳かましてやった事あるそうな」

「まー、姿がシラベのものになってれば、見分けは無理ですよ。おまけに冷静じゃなければ」

「それに、響にも手を焼いたとか言うなぁ。だから、なのはに命令したんだろうが、なのはの奴、不器用だからなぁ」

「あたしも遊んでやろうかしら、翠の子と」

「あいつ、エクスカリバー見ると、ブルるそうな。先輩が手刀のエクスカリバーでイガリマを弾いて、調がエンペラーソード媒介ので切り裂いたのがトラウマになってるみたいで」

「斬山剣の持ち主なら、引け目を感じる事ないと思うけど」

「だから、なのはは『管理局の悪魔』改め、『教導魔王』に二つ名変更だって」

「だろうなぁ。今回の一件で昇進は遅れるだろうけど、響って子の行き過ぎは抑止されただろうし」

「翠の子、先輩がそれを最初に指摘したら、発狂に近いくらいのトチ狂いぶりだったらしくて、石破天驚拳でぶっ飛ばしたんだってさ。後で聞いたら、鎌は調との絆の象徴とか言うから、調当人も引いてた」

「まぁ、客観的に見るとねぇ」

切歌の百合具合は黒江がさんざ苦労し、成り代わり前期ではとにかくぶっ飛ばし、後期もなるべく距離を置いていたほどである。そのため、調もフィードバックで愛が幻滅へ変わり、のび太のもとへ走り、野比家に関わる事になったが、切歌はこの時点では、のび太への調の親愛がまだ納得できていない。調が騎士としての矜持を口にするようになり、黒江、のび太やなのはに仕えるようになっている現実が受け入れられていない面がある。

「おい、あの青狸達はどこに行った?」

「なんだ、クリスか。ドラえもんが怒るよ」

「あいつ、どこからどう見ても狸だろ!……で、あいつらは?」

「別の仕事が入って、今は別の時間軸のノビタが面倒見てるわよ、クリス」

「ん、お前、新顔か?」

「私は……そうね。私は『クロエ・フォン・アインツベルン』。黒江さんの知り合いのドイツ軍の中尉よ」

そう名乗り、ルッキーニは『クロエ』としての活動を開始する。精神年齢が上がっているため、元の姿よりずいぶんと大人じみた口調になっている。

「この世界、お前みたいなガキが軍隊で地位持てんのかよ」

「あら、生年月日的には、貴方の祖母と言っていいと思うけど?」

「その手の話は綾香ばーちゃんで充分だよッ!」

クリスは生年月日が自分の祖母くらいの年代のウィッチ達に目が回りそうになったため、その点はウンザリなようだ。

「お前、レヴィさんにブルって漏らしたそうだけど、ちゃんと洗ったか?」

「る、るせー!なんで知ってんだよコノヤロウ!!」

「そりゃ副官だし」

黒田に遊ばれる雪音クリス。クリスは完全に子供扱いである。

「く、クソぉ!!バカにしやがって!アタシのイチイバルをなめるんじゃねぇぞ!」

「やめなさい。斬艦刀使いと畏れられた黒田さんに喧嘩売って、勝てると思う?」

「ばーちゃんもそうだけど、あんたらどっかおかしーって!ネジ外れてる!」

「まー、英霊の資格得てるからね。あたし達」

「そうそう」

「つーか、あんたら『聖遺物』をポンポン使いすぎだぁ!エルフナインが目ぇ回してたぞ」

「私はハリボテしか造れないけど、貴方のアームドギアは止められるわよ?」

クロエがニヤリと微笑う。更に黒田も続く。

「イチイの弓なんざ、和弓に比べたら二級品じゃない。素直すぎて誰でも当たるのは、兵器としては優秀だけど伝説には遠い、使い手の腕が伝説になってるタイプの宝具なんだよね」

「くそぉ、帰ったら弓道部入ってやるー!」

「良ければ、ウチで基礎教えるよ?ウチのお抱えに弓道の達人いるし」

「本当かよ!」

「あたし、一応、軍隊に入る時、分家の末端だけど、華族の出だから、弓道は教えられてるんだ。それに没落した那須家から弓を買い取ってたような記憶が」

「華族って、昔の貴族階級だったっていうアレだろ?アンタ、見かけによらずお嬢様?」

「分家の末端だから、本当はそんな柄でもなかったけど、継承するから、侯爵になるね、一応。与一の弓なら、写し作れるよ」

「ぐぬぬ…くそぉ、最近はこんな役ばっかだ――!って、いいよ、カーボン弓使うから」

「良い弓はカーボンみたいに安定はしないけどツボにはまると気持ち良く射てるよ?」

「あ、復帰したのか、このガキ」

「お、シャーリーか」

「援護に向かえって、箒から言われてさ」

クリスと二人の間に割って入る形で着陸したシャーリー。IS姿なので、クリスより重装甲を纏う姿に見える。

「あ?なんだ、そのロボットみてーな装甲服は」

「ああ、これかー?説明がややこしいな」

自衛隊からは好評である、シャーリーのIS。既に第二形態移行を起こしており、デザインモチーフの最終到達点と同じような姿へ進化している。ウイングも『エナジーウイング』の形状に変化しており、完成時より数段上の速度を叩き出せる。そのため、自衛隊から好評であり、シャーリーもそれを意識している戦闘法を取っている。

「これの戦闘力、並のMSより疾くて強いぞー。惚れ惚れするぜ」

「真田さんがシャーリー用にデザインしたっていうけど、凄いなぁ。ここまでなるとは」

「あたしだって、ここまでなるなんて思わなかったよ。おかげで空自の連中からは『輻射波動のねーちん』って呼ばれたよ」

「パンダナでも巻けば〜?」

「今度のコミケにはそれで行こうかなー。黒江さんに声かけられたし」

「ちょっと待て!なんだよ、そのふつーの会話!」

「お前も来るかー?」

「いや、だから、なんでそうなるんだよ!?」

と、ツッコミが追いつかないクリス。黒江はアルトリアを2014年からコミケに動員し、小遣い稼ぎをしており、シャーリーにも声をかけたらしい。

「普通の会話くらい出来ないと余裕が無さすぎて落とされかねないぜー?」

「あーもう!あんたら凄すぎて、笑いも出ねーよ…」

「その姿で売り子やる?」

「いやいやいや!?いいのかよ!?」

「調なんて、シュルシャガナのギアをコスプレで押し通して、2016年位にネットで話題になってたぜ」

「嘘だろ!?」

「お前、イチイバルのそのギア、けっこう人気あるぞー?」

「……エルフナインや先輩が聞いたら泡吹くぞ、それ」

「幸い、お前のギア、突起物少ないし、行けるって」

「……先輩が聞いたら、あんたらに斬りかかるぞー?」

「問題ない。真っ向両断するし」

「輻射波動で弾けさすし―」

これである。黒田は真っ向両断、シャーリーは輻射波動で弾けさすと断言し、風鳴翼には遅れは取らないと断言する。実際、黒江は成り代わり時の初期、牙突やらの実験材に風鳴翼を選び、彼女にやたら対抗心を持たれた時期もあるので、それと同等の戦闘力がある者達なら、イグナイトモジュールを用いて互角になれるかどうかだろう。実際、調が龍王破山剣・逆鱗断を放った時、風鳴翼は対抗心を燃やしているような素振りを見せていた。

「なんだったら、計都羅喉剣・五黄殺でも見せようか」

「あんたら、よくまぁ、ゲームの技をポンポン真似できんな?」

「先輩達が始めたけど、今じゃ調もやってるぜー」

「あのばーちゃん達、妙にノリいいなぁ」

「調からメール。今の打ったら『あんなネタ技に思いきり食い付いて来るとは思わなかったなぁ…』って」

「先輩がご機嫌斜めだぞ?アイデンティティが脅かされてるかんな。」

「まー、それは真似できるだけの力持ってる者の特権ってことで」

「まー、前に後輩の前で『計都羅喉剣・五黄殺』やったら、後輩からめっちゃ憧れの目で見られたしなぁ」

黒田は斬艦刀で『計都羅喉剣・五黄殺』を披露した事がアフリカ時代にあり、マルセイユには畏敬され、真美からは『姐様、素敵です!』と憧れの目で見られた事がある。その事が黒江の正統後継者という評判を立てられた理由の一つで、黒江がかつて愛用した斬艦刀を用いていたこともあり、プロパガンダされた。当人の復帰でそうとは呼ばれなくなったが、凍結前の506では『バトルジャンキー』と畏れられていたとも語る。そこが他世界との違いであり、黒江との絆を示すファクターである。アルトリアに最初に『選定の剣の騎士王』としての礼を見せたのも彼女であり、506隊員の多くに行き場を与えた功績もある。黒田は潤滑油としての才覚があり、それはアルトリアに信を置かれるほどの確かなものだ。個人戦闘力でレイブンズに信を置かれ、潤滑油としての役目を十二分に果たせる。そこがシャルル・ド・ゴールの目に止まったのも事実だ。アフリカ時代はレヴィの護衛を勤め、未来世界では黒江の護衛を、アルトリアのバディとして。その類稀な才能で大尉に登りつめた俊英。しかも、45年でまだ芳佳と同年代の若さ。しかも今回の歴史では、坂本と竹井より先任で、竹井が敬語を使う立場にある。赤ズボン隊のフェルがタメ口を聞いたら、竹井が怒ったほどに尊敬されている。坂本Bが後に、『なんだかやりにくい』と関係の違いをぼやくのは、このメンコの違いだったりする。扶桑軍は基本、メンコの数が多いほど偉いという文化があり、坂本Bが驚いたのは、当時は軍が違うはずの黒田と自分が同じ部隊の先輩後輩の間柄で、自分が一年後輩である(Aは公の場以外ではいつものタメ口だったが)事で、竹井に尊敬されている点でもある。竹井はフランクな坂本と違い、先輩後輩関係には厳しいという、軍人一家の出らしい硬さがあり、部下が黒江達にタメ口を聞こうなら、怒ってるとあからさまに分かる、ドス黒いオーラを出し、智子に諌められるなど、硬さを見せている。智子曰く、『アンタ、相変わらず堅物ねぇ』との事。実際、黒江達はクロウズより遥かに先任である。覚醒前のミーナが扱いあぐねていた点である。覚醒後はそういう事は無くなったものの、覚醒前においては、バルクホルンやハルトマンの胃を痛める案件で、自分達が率先して敬意を払うことで、他部隊出身者の不満を抑えていたとは、バルクホルンが愚痴った点だ。ハルトマンがさんづけで呼ぶ事を意識し、他部隊出身者に示しをつけるなど、レイブンズへの敬意を見せる一方、江藤への恨み節を吐いているなど、江藤は意外に迷惑をかけていた。江藤は後に、赤松からハルトマンとバルクホルンの気苦労を聞かされ、気まずくなり、二人へ詫びる羽目になり、赤松の発案で自分の店自慢のコーヒー豆を二人へ献上する事になったとか。(若松が激昂し、危うく殺しかけた際に、泣きながら『未確認戦果が実数の半分くらいは戦闘詳報には付けて有りますから!そうでないと部隊戦果にしても辻褄が合わなくなってしまう状況でしたよ、教官〜!』と新人時代の口調に戻って泣きわめいており、若松が『童、言い訳はそれだけか!』と拳を振り上げようとした時に赤松が『辞めんか、若!』と止めている)若松のキレっぷりは赤松が『こんなんだから、ボウズになつかれないんだ』と呆れるほどのことで、若松ご執心の黒江が彼女になつかない要因を突いている。怒った理由は『人物記録には確定戦果しか載らないから嘗められた!』と黒江にぼやかれたことなので、黒江も気まずくなったという。赤松に『若さん、なんでそんなに怒ったの、まっつぁん』と真顔で聞いている。赤松は着任時に『ボウズのことが可愛いんじゃよ、若は。ワシになついてるといったら恨めしそうな顔されての』と答えている。ハルトマンとバルクホルンも『参謀は余計なことしてくれた』と赤松に愚痴り、二人が相当に気苦労していた事が健康診断で『胃炎』と診断されたことで証明されている。(黒江達の戦果確定が通達された際には二度の査問が行われており、若手達の人事評価にこの事は多少なりとも響いたらしい)



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