外伝その184『大空中戦6』
――クスィーガンダム。多くの次元では、マフティー・ナビーユ・エリン(ハサウェイ・ノア)の愛機として、閃光の如き生涯を辿ったガンダムである。しかし、未来世界においては、ハサウェイ・ノアは植物学を専攻し、第二次ネオ・ジオン戦争で罹患した鬱病に改善の兆しが見えたため、パイロットとの縁が薄くなったため、彼用に用意されたわけではない。クスィーガンダムの開発目的そのものが『小型機にはない堅牢性を持つ大型飛行MSの開発』であったからだ。元から、アナハイムガンダムの枠組みでの『νガンダムの実質的後継機種』というプロジェクトでの開発であった――
「あのガンダムはどうして、人型であんな速さが出せるの?」
「あれは大気圏内を飛べる宇宙戦艦のエンジンを小型化した核融合炉(正確には、ペガサス級に搭載されていたミノフスキークラフト内蔵式のものを小型化した型。俗称は『ミノフスキーエンジン』)を積んでるからです。確か、空気抵抗軽減用のビームバリアを併用すれば、昨今の小型機の大半が出せないマッハ2.5を叩き出せます」
「マッハ2.5……。戦闘機でも中々見ない速さではないか」
「実際の空戦では、そこまでの速さは必要ないんですが、推力に余裕があると、機動に幅が出ますからね、ジェットの時代は。この時代では反則に近いですが、物量に対抗するための手段です」
「レシプロからジェットへの過渡期の時代じゃ、ガンダムって時点でオーバーよ。」
マリアのいう通り、1945年の技術レベルでは、戦艦の主砲でも当てない限り、ガンダリウム合金に傷をつける事は極めて難しい。ザクUでも、軽巡洋艦の主砲級の火砲を弾ける正面装甲であるため、それより素材強度がケタ違いのガンダリウム合金の重装甲は1945年では、戦艦の主砲でなければ損傷すらしない。ガンダムの装甲はたいてい、量産機より高品質のガンダリウム系のマテリアルで構成されるため、比較的装甲が薄めのZガンダムでも、ガンダムmk-Uよりよほど堅牢である。(mk-Uは量産が予定されていたため、当初はチタン合金セラミック複合材製の装甲であった)ジオン系と異なり、連邦系は基本的に重装甲を求める傾向があり、たとえ装甲が同じ素材になっても、そこで生存率を左右する事が多い。
「コアファイターでも、レシプロ戦闘機10機の価値があるとか、戦線で言われてますから」
「あれ、アニメで見たことあるけど、超小型機じゃない?」
「脱出装置に戦闘力を持たせたような機体ですから」
レシプロ戦闘機ほどしかない大きさのコアファイターだが、初期のRX系に採用されていた『FF-X7』は払い下げが行われており、大改造がなされた一部の雲龍型で運用されている。これは連邦系MSでコアブロック方式が量産機では採用されなかったため、生産ラインが結果として遊ぶことになり、追い打ちをかけるように、その後に地球連邦軍が戦闘機も、より高性能なコスモタイガーなどに更新した事で大量に状態の良い稼働機が余ったからだ。その数は、扶桑に200機あまりを供与しても余りあるほどであった。
「大きさ的にゼロ戦と大差ないし、昔のハリアーと同じ方式の着陸ができるんで、今すぐに大型空母が造れない、ここの日本には福音です」
「私達の見知ってる大きさの戦闘機を運用できる空母は、最低でも戦艦大和より大きくないと無理だものね」
「いや、待て。核融合ジェットの噴射熱をどうやって耐えるのだ。日本式空母は木甲板のはずだ」
「核融合ジェットの噴射熱はあまり高くないですよ。それに、この時代、日本軍は橘花を戦闘機に改造して、葛城に積もうと目論んでたんですよ?STOL発艦なら飛行甲板前方の金属部分で出来るから問題無いです」
「ミリタリーオタクの間じゃ眉唾ものとか言われてる話だけど、本当なの?」
「実際、この世界も高級将校は補助ロケットを使えば、橘花の空母運用はできると考えてたんです。まぁ、当初は爆撃機としてですけど」
橘花の当時の使用予定は『高速爆撃機』である。これは戦闘機としての機動性が低いとされたからだが、地球連邦軍/日本からのメタ情報と、日本の横槍で戦闘機転用を無理に言われ、その結果、頓挫した。翼下ポッド式の設計では、原型機同様の運用しかできないからであるし、爆撃機としても『B-29より遅いじゃないか』と揚げ油を取られたからだ。これは当時の扶桑の有した艦上爆撃機の巡航速度が、最新だった流星でも、せいぜい400キロ台であった扶桑にとっては充分な速さであった。しかし、初期のジェットに爆撃機役はペイロード的に荷が重いし、カールスラント最新鋭のAr234のような性能は、メッサーシュミットMe262の劣化コピーである橘花には望めない。その残酷なまでの指摘に空技廠はパニックになり、慌てて戦闘機への転用を進めたが、現状のネ20では日本側を納得させられず、橘花は試作で終わってしまった。(そのため、保管されていた震電を次期ジェットの素体にする案で空技廠は起死回生を狙っていたが…。)
「でも、橘花はドイツの劣化コピーで限界が見えてたんで、推進式戦闘機だった震電を転用してジェット化する事で、空技廠……この時代の日本海軍の航空機開発部は起死回生を狙っていたんです」
「狙っていた?何故、過去形なの」
「日本空軍ができることになって、陸上戦闘機の権利が空軍に移るからですよ」
「どういう事」
「日本は戦中、陸海が別々に陸の航空隊を持ってたんです。それを一つにすればいいんです。震電は武装の配置の有利さと、エンジンの機体重心に寄せた方が運動性に有利なことで好意的に見られていて、選ばれたんですが、テスト部署の一部の連中がヒステリー起こしたみたいで、引き渡しを拒んでるんです」
美遊が戦場への道中、説明したこの事は、数年後まで扶桑空軍の頭痛の種となる。震電を『最後の扶桑純正ジェットの素体』にしたいのだが、ストライカー/機体ともに、横須賀航空隊の一部若手が『ふざけるな!!』と怒り、引き渡しを拒んでおり、それが同隊に異動した志賀を悩ませていた。美遊は前史では上手くいった震電の引き渡しがごたついている理由を早くも見抜いていた。横須賀航空隊の若手が日本側の横槍で『橘花』、『梅花』、『天雷』などの開発が中止にされ、自衛隊機(元はアメリカ機)のコピーを命じられた空技廠の方針転換に猛反発していたからだ。(ただし、天雷はナイトストライカーとしての開発が優先されていた。他用途から転用されていた月光が旧式化したからだ)若手ウィッチを主導する黒幕の中堅世代は日本の開発現場への介入を『いらんお世話』と侮蔑しており、それに協力的なレイブンズを憎悪している。その影響も震電焼却事件に繋がるのだ。事件の発覚直後、源田実や小園大佐(後、空軍中将)は激怒し、小園大佐に至っては関わったウィッチを激しく殴打したという。設計図も燃やされたため、マ43ル特の復元は絶望視されたからだ。これは紫電改のチューンが限界に達した宮藤芳佳の繋ぎの機体としての使用を小園大佐が考えていたからであった。そのため、見かねた赤松が宥め、代わりに叱責したが、帰ってくるのは呆れる一言だけで、止められなかった志賀を呼びつけて、若松と共に厳しく叱責している。この時の叱責での罪悪感が志賀の軍生活の後半を運命づける事になる。志賀はその後、震電改二の開発の成功を『黒江先輩と宮藤への禊だ』と公言し、それに邁進し、見届けた後は太平洋戦争の終戦で退役、しばしの間、実業家に転身した。美遊はそんな志賀の運命を予見していたらしく、黒江に『志賀少佐を許してやるべき』と諭し、結果としては黒江と志賀の戦後における和解の立役者となるのだ。(後のベトナム戦争で志賀は坂本の要請により、傭兵部隊の長としてRウィッチ化し、安南(扶桑でのベトナムの言い伝えられた古い地名)派遣を経て、国際部隊への組入れで軍籍が復活し、派遣された64Fの飛行長に『復帰』。その時は多忙な坂本に代わり、飛行長の任を10数年越しに果たし、坂本の薦めもあり、復帰後は軍籍を残すこととなる)
「いました、この世界の米軍です」
「1945年当時の米軍兵、か。見るからに時代がかっているな」
「一人あたり大隊くらいで行きましょう。陸軍の歩兵戦闘群なら、シンフォギアとこの力でおつりが来ますから」
「おつりがくる、か。武力制圧はあまり経験がないのだが、やるしかないか」
「改造人間相手に血みどろの死闘するよりはよっぽど『公園の散歩』ですよ」
「気休めにはなるが、やはり悔しいものだな」
「貴方は病み上がりですから、まずは肩慣らしと思えば」
三人は地上で、リベリオン陸軍の歩兵戦闘群と戦闘開始した。三人のうち、最も戦闘力が安定しているのが、アルトリアの力を借りる事で、基礎能力を向上させている美遊(リーネ)なのはクラスカードの効果と言えた。実際、エクスカリバーを用いた美遊の剣術は元々、リネット・ビショップとして、剣術にあまり興味がなかったが、前史で芳佳に触発されて、護身術程度には修めたという経験のアドバンテージもあったが、基礎能力が向上している事もあり、リベリオン軍一般兵士相手であれば、無敵である。それと、リベリオン軍もこの頃は徴兵された兵士が主力であったため、リベリオン軍のM1942銃剣では、エクスカリバーと打ち合えるはずはなく、銃剣の槍としての扱いに難儀する兵士も多く、M1ガーランド、M1カービンの弾幕を物ともしない三人はバケモノ扱いされた。
「まさか、第二次世界大戦の兵隊を制圧する任務を仰せつかるとは」
「私達は調のように、聖剣の力を直接行使できるわけじゃないわ。切歌も調の事で焦っている。私達も今、できる事をしましょう」
翼とマリアは弾幕を物ともせず、兵士達の無力化を行う。黒江と圭子から『出来れば、足の関節を念入りに砕いてくれると助かる、復帰率が落ちるから』というえげつないオーダーが入っていたが、翼はどうにも倫理観が邪魔し、足の腱を切る程度に留めていた。マリアはその点、元々の教育と、一度は死を覚悟していたため、きちんと行っている。美遊はバッサバッサと情け容赦なく斬り捨てているので、ある意味、マリアと翼に向かったほうがまだ生存できる。
「翼さん、腱を切っちゃ、敵も痛みが凄くて、後が面倒だから、膝を砕いてください」
美遊の指摘に、翼は悩むような顔を見せる。得物的に切ったほうが楽らしい。美遊は手本と言わんばかりに、甲冑の装甲に包まれ、重量を増している足で、倒れこんだ兵士の膝を全力で踏みつける。踏みつけられた敵兵士はみっともないまでの悲鳴をあげて気絶する。可愛い顔をしているが、敵には情け容赦がないという点では、薄ら恐ろしさを感じられると、翼は思う。
「これで、もう、戦場に、戻って、こなくて、良いんだよ!」
言葉に区切りをつけるのと同時に、骨が砕かれるような音が鳴り響く。一筋の涙に翼はその行為の真意に気が付く。本質的には優しいのだ。
――実は戦場に戻ってこなくて済むようにきっちり怪我をコントロールする事で戦死するリスクを下げるという、レイブンズなりの優しさだったりする。美遊はそれを知っているので実行している――
「くそ!誰か火炎放射器もってこい!銃が効かんなら、焼き払え!」
指揮官の命令が飛び、M1/M2火炎放射器を担いだ数人の兵士が火炎放射を行う。念入りに三人で行う。気づいた翼が天羽々斬で防御しようとするが、美遊は制止し、エクスカリバーを持つ者として、エクスカリバーの特性を活用した技で返した。
「そう来るなら……風王鉄槌!!」
火炎放射を暴風でかき消し、火炎放射を行う兵士自身に引火させ、引火した火炎放射器諸共に三人の兵士は消し炭になる。この戦闘が火炎放射戦車の登場を促す事になる。しかし、介入している陸上自衛隊が先読みし、『パンツァーファウスト3』対戦車弾を配備するように扶桑に促したため、これは徒花となる。実際、『火炎放射器兵を狙撃させられ、小隊が吹き飛んだ』などの事例が多いことからの開発だったが、いざ使用する段階だと、陸自が流したパンツァーファウスト3が既に行き渡っていたりする。こうして、扶桑は戦車のみならず、歩兵の対戦車戦闘能力も陸自の助力で遥かに向上させ、陸自も第二次世界大戦型軍隊相手だが、自らの能力証明になるため、防衛名目で戦闘に積極的に参加していく。そんな中でも、三人の活躍は陸自の注目の的の一つであった。
「調……上手くやってるかしら」
「黒江女史のもとで鍛えられたというが、野比のび太に入れ込むのは何故だろうな」
「あの子、姿を消した後、野比のび太の家に居候してるみたいなのよ。黒江綾香から知らされた時は驚いたわ」
戦いつつ、翼とマリアは調の変わりようと、のび太への深い親愛の理由への疑問を口にする。そして、隠れていた火炎放射器兵の最後の生き残りが不意打ちをかけたが、これはのび太青年の遠距離狙撃で阻止される。ガス缶だけを吹き飛ばして、ガスの気化で足が氷ってダウンしたのだ。
「な、なんだ!?」
「のび太君の狙撃ですよ」
「あの子、そんな腕が!?」
「正確には、今は大人の彼自身にバトンタッチしてるから、バレットM99使ったのかも」
「嘘……主戦場からは3キロはあるのよ!?」
「かの有名なゴルゴ13は5キロ先から飛行機のコックピットにいるハイジャック犯をぶち抜いてますから、のび太君には狙いやすい距離です」
「なんだとッ……!?」
「私も2キロ先ならスナイプできますから、狙撃のイロハは知ってますので、分かります」
美遊も、リネット・ビショップとしては狙撃で鳴らしていたため、狙撃のイロハは知っており、青年のび太のスナイピングは自分を超える精度と認めている。それも超える精度なのがデューク東郷であり、かのデイブ・マッカートニーとの出会いとなった事件、FBIやCIAの残した記録に『AT PIN-HOLE!』という項目があるが、当時のオリンピックメダリストが尻込みした距離の狙撃をデイブ・マッカートニーに作らせた銃で行い、成功させた栄えある栄光の記録で、その時、ゴルゴ13は5200mという超遠距離狙撃を成功させたのだ。これは圭子やリーネ、のび太すら超える距離の狙撃である。そのため、ゴルゴ13はGウィッチでも『敵に回したくない』と言わしめた男である。青年のび太をして『Mr.東郷は狙撃では僕より凄いよ』と言わしめた。また、ゴルゴ13はのび太に『Mr.東郷』と呼ばれるのを許しており、のび太は彼とそれなりに関係を持てた稀有な男である。ゴルゴ13が公的な関係者で友と言える関係であったのが、冷戦時代の初期から中期にかけて、世界の情報機関の実権を握っていた『ビック4』と呼ばれる、第二次世界大戦の生き証人たちである。別名でベスト4とも言い、第二次世界大戦でナチス亡き後のドイツの処遇を話し合った当時の長であり、戦後しばらくまで実権を握っていた男達だ。その中で最もゴルゴ13が個人として付き合いが長く、ゴルゴ13も友情に報いたのがMI6の冷戦時代初期から中期の頃の長であった『ヒューム卿』だ。ヒューム卿は歴代のMI6関係者の中では一番にゴルゴとの関係が深く、ルールを違反しても咎めなかったほどの仲だ。第二次世界大戦を生き延び、1979年の王室関係者を爆殺するテロ事件に憤慨し、ゴルゴ13に生涯最後の仕事を依頼したのが最晩年の記録となる。これが確認できる『初代ゴルゴ13』の記録の中では最も新しいものの一つだ。二代目ゴルゴ13を育成し、90年代までに世代交代を行い、二代目も2010年代に三代目を育成し始める。二代目はガランドのG機関と関係を持っており、のび太と関係を持ったのは、冷戦時代に生きた初代の後継者にして、メモリークローンの二代目であり、彼も三代目を育成し始める年代に差し掛かる頃だ。ゴルゴ13の活動が長い理由は『定期的な世代交代』を挟んでいたからだ。初代ゴルゴ13の遺体は二代目の手で、ガランドの機関に引き渡され、G機関本部の奥深くで厳重に保管されている。また、遺伝性質の劣化防止と称し、初代ゴルゴ13が手を付けた女性の子孫の遺伝子を融合させており、三代目はその結果、若々しい頃の初代ゴルゴ13の顔つきを受け継いだ。遺伝子強化で二代目以前と比較し、体格は大きくなっており、180cm前半の二代目と比較すると、185cmほどとなり、体格が僅かながら長身である。基礎能力でも、二代目以前をわずかに上回る。そのため、二代目ゴルゴ13は記憶の引き継ぎを三代目に行わせており、近い内の引退を示唆してもいた。2020年代には彼も肉体に衰えが見え始める40代を迎えるからで、おおよそ、彼の活動期間は1995年(同年、初代ゴルゴ13が死去している)から2020年までとなる。デイブ・マッカートニーも冷戦時代の末期に30代に入るか否かなので、二代目の活動期間の末期には50代後半を迎えている。そのため、青年のび太が世話になる頃には『白髪交じりの初老男性』だが、少年期の頃は壮年であった。デイブ・マッカートニーは通算で二代のゴルゴ13と関係を持ち、いずれも重宝されている。特に晩年は寡黙になった初代が礼を言った数少ない人物でもある。
「ゴルゴ13……半世紀くらい続いてる漫画であったけど、未来世界だと実在したの?」
「ええ。ただし、ゴルゴ13と呼ばれた人物は時代ごとに代替わりしていましたけど」
「どういう事?」
「Mr.デューク東郷は元々、東郷平八郎元帥閣下の係累であります。一説には東郷閣下が死ぬまでにお手つきした誰かの子孫であり、東郷家に認知されていたとも言われてます」
東郷平八郎は未来世界の過去では、女遊びをそれなりにしており、その女性の誰かが生んだ子の子供(東郷から見て孫)がデューク東郷ではないかとされる。ロシア系の血が入っているともされる事から、旧ロマノフ朝皇族の生き残りの血を継いでいたのでは(一説には、アナスタシアの子供とされる)とも噂される。別の説では、日本軍が東郷家の男系子孫と清朝王族の末裔の誰かを政略結婚させて生み出した赤ん坊とも、はたまた毛沢東が今際の歳に執着した『毛沢東に拾われ、共産党の申し子』として育てられた東郷平八郎の末裔説まである。その多くが東郷家の分家の末裔という説である。いずれにしろ、旧KGBが調べた説での有力な説は『彼の父親は2・26事件の首謀者の一人であった将校。事件後暇乞いに訪れた実家の父親から、自分が純粋な日本人ではないことを知らされ、日本を離れることを勧められる。父親は自宅に放火して自殺。軍はその焼死体が将校であるとして事件をうやむやにした。彼はシベリアに渡り、、そこで亡命貴族の娘との間に子供が生まれ、それがゴルゴ13ではないか』という説である。ゴルゴ13はいずれの説でもロマノフ朝と日本軍との縁がある。日本側で推測される初代ゴルゴ13の出自は『東郷家の血を持つ日本軍将校の子息であり、自らも太平洋戦争末期は少年兵として従軍していた』というものである。ゴルゴ13自身が欺瞞のために流した話もあるが、少なからずは嘘とも言いきれない面も存在する。
「まぁ、Mr.東郷は20年か30年ごとに代替わりしているけど、記憶や姿は同一です」
「どういう事だ?転生していると」
「メモリークローンです。元は敵が作っていたクローンを奪取して、後継者として育成したのがのび太君と付き合いがある彼です」
「どういう事?」
「要は、体を新しい物に引き継いで老いた方が引退してるんですよ。スイーパーはいいところ50半ばが限界ですから」
美遊はデューク東郷の実情を暴露した。ゴルゴ13の超人ぶりから、デイブ・マッカートニーでも、デューク東郷が二代目になっていることは気づいていないし、詮索しない。記憶が完璧に引き継がれている故に、齟齬がないからだ。
「彼はいつの時代も最高のスナイパーであり続けている。その実情がこれです」
ゴルゴ13の性格そのものは初代ゴルゴ13が『ウサギのように臆病』と述べている。それは一般に想像される『鉄のような男』と相容れないようだが、スナイピングには臆病さも必要とされるので、これは一流の条件である。
「私達は彼らに並び立つために、転生したようなものです。弱さを受け入れ『強さにする』ために」
トラウマを乗り越え、不死者としての心の強さを身につける事を目指しているのがGウィッチ全体の目標であった。既に直接的な強さは常人を超えているが、黒江のように、精神的不安定さも抱えている者もいる。(アルトリアにしても、『生前に臣下を導くことはしても、救わなかった』事でトラウマを抱えている)
「弱さを受け入れる。アルトリア王にしても、円卓を崩壊させたこと、ブリタニアを崩壊させたことにトラウマがあるけど、それを受け入れて、新しい生と向き合おうとしてる。前回の生き方に縛られる事はないけど、転生者としての義務は果たさないといけない。そのためもあるんです」
転生したウィッチを一つに纏め、Gウィッチに居場所を作ることが初期に転生している彼女たちの役目であるが、それが扶桑のクーデター事件を引き起こすのは皮肉であるとしか言えない。そして、美遊達の上空をクスィーガンダムが華麗に飛翔する。時代を無視した勇姿だが、魔神皇帝や真ゲッターロボに比べれば、遥かにマシな光景である。地形を容易に変えられるスーパーロボット達に比べれば、リアルロボットである『モビルスーツ』は充分にマシだが、敵にとっては悪夢でしかない。レシプロ戦闘機では体当たりしても逆に落ちるのは自分。爆弾でも傷つかない装甲を持つバケモノが空を支配する。まさに大空の支配者だ。更に、高度の上限が事実上ない『宇宙戦闘機』がB-29を蹂躙する。日本側の無茶な命令と傲慢が招いた光景であったが、敵には『如何な戦闘機も蹂躙される恐怖』を植え付けた。また、扶桑軍にも『圧倒的技術格差での蹂躙の恐怖』を教え込むことに成功した。これにより、旧来の『防弾板がついとったが、わしはあんなもの恥ずかしいと思って、取っ払ってしまった』、『落下傘はどうせ使わんから、座席に敷いておった』という古い価値観は海軍基地航空が陸軍に飲み込まれる事が確定し、更に米軍の影響下にある空自が組織づくりに協力したことなどで、扶桑実戦航空隊から一掃されることになるが、前史での坂本のように、パイロット/ウィッチの『粗製乱造』に反対する海軍軍人は多く、それを太平洋戦争敗戦という可能性を突きつけたりし、関係者の心を完膚なきまでに砕く形で押し黙らせていく親Gウィッチ閥に反対する声は大きかったが、クーデター頓挫後の日本側が音頭をとっての『徹底した粛清人事』で海軍航空隊は遂に形骸化。空軍部隊を空母に載せるための言い訳のような隠れ蓑と化してしまう。そこまで落ちぶれるに至り、空軍に追従しての組織風土改革に動き出すも、出遅れの感は否めなかった。ダイ・アナザー・デイで、『既に過去の人間』と見なされていたはずのレイブンズが『往年の神通力、未だ健在』とアピールしてゆく事は、上層部受けは良くとも、レイブンズの直接的影響下にない海軍の後輩世代の反感を買い、それが逆に粛清人事の徹底に繋がり、結果として、太平洋戦争は『Gウィッチとそのシンパ達が、その強大なる政治的発言力を決定づける』戦となるのである。また、新規志願ウィッチ確保難度の飛躍的向上も、『Gウィッチ依存』と生え抜き海軍ウィッチに揶揄されるウィッチ組織と化した理由で、太平洋戦争開戦時の航空ウィッチの構成は『一握りの一騎当千のGウィッチがそれに従う古参兵を束ねるに等しい』ほどバランスが歪となっていて、構成バランスが改善されだすのは、ウィッチ覚醒休眠期が終わった1950年代だが、その頃の志願であると、戦中に現場に出れた層と、訓練課程在籍中に終戦、次代の事変で投入される層に分かれ、さらなる数年後の第二次扶桑海事変では、空軍はこの世代差による意見の相違をどうまとめ上げるか、ということに腐心していくことになる。
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