外伝その187『大空中戦9』
―改造人間である仮面ライダー達とビッグワン、強化スーツであるアカレンジャーを除くと、比較的常人なのがのび太青年のみと、ある意味、もの凄い光景(他は魔法少女、英霊などの属性持ち)であった。スーパーロボ持ち戦隊のレッド達が巨大戦に打って出ているので、『等身大』の戦闘は彼等が担当した。相手は神の使徒と言える、改造魔人や半機械人達率いる怪人軍団。まさに死闘である――
「デルザー軍団め!生かして返さねぇぞ!」
黒江は相変わらず調の外見を保っているが、髪型はポニーテールに変えていたりするなど、一応は気を使っていた。背丈は元よりは低いが、今の調よりは高い166cm(元は173cm前後)。体格としては一応、この時代の日本人としては良いほうだ。アルトリアの生前が154cmほどで、調の元々の体格とほぼ同じ(転生後は素体になったハインリーケの体躯をそのまま引き継いだので、生前より長身である)で、現代の観点からすれば、武器のリーチなどに問題があった事を考えると、そこそこと言える体格にしてある。これは身軽さと、敵に当たり負けしないに足る背丈のバランスの計算によるものだ。また、元々が日本刀使いだった名残りで、エクスカリバーを斬る目的で奮っている。モードレッドやアルトリアは斬る事もあるが、突きも織り交ぜて剣を揮うので、東洋と西洋での剣への考えの違いが窺える。(イリヤは黒江に近い使い方だが、これは剣の教えを受けているわけではないことも関係している。ガイちゃんも同上)英霊を除くと、剣術の技能バランスで安定してるのが、仮面ライダー一号と二号、それと仮面ライダーXである。イリヤは元の『サーニャ』としては、剣術は音楽家であった父親が若い頃の趣味として、フェンシングをしていて、それを見た程度の知識しかない。そのため、クラスカードで得られた知識と身体能力頼りの状態と言え、そこが難点であった。
「イリヤ、もっと動け!的になるぞ!」
「は、はいっ!」
イリヤはクラスカードで反応速度その他は英霊の水準に引き上げているが、根本的な経験不足は否めなかった。戦場で動きを止めるな、と黒江からの叱咤が飛ぶ。マシーン大元帥が機関銃を乱射しており、その火線が仮面ライダーより防御力の低い彼女たちを狙っているからだ。アルトリアの切り札といえる、『全ては遠き理想郷』をイリヤは現時点では行使できないという事情もあった。イリヤの能力は借り物であるので、エクスカリバーは使えても、全ては遠き理想郷までは発動できない。その事情も、まだ対人戦闘でのカンに乏しいイリヤを黒江がカバーしている理由だ。もっとも、クラスカードの関係上、スタイルは生前のアルトリア同様に正統派の剣士ではあるが、思いっきりが足りない面もあり、それは当のアルトリアが苦笑いしているが。
「幸い、こいつらの大半は獣同然だ。トレーニングになる。ジェネラル・シャドウがストロンガーさん狙いでよかったよ、本当」
黒江はイリヤをこの戦いで速成したいようだ。剣術に関しては、この時のイリヤより、クロエ・フォン・アインツベルン(クロ。ルッキーニがその素体になっているので、たいそう身軽である)のほうが一歩先んじていたが、あいにく、黒田の護衛でいない。この技能レベルの違いは、前史の佐官昇進後に黒江が置き忘れていた、『入れかえロープ』でスバル・ナカジマとルッキーニが入れ替わってしまった事故があり、その時の名残りだ。また、同質の魂を持つ更識楯無との共鳴もあり、ルッキーニはこの時に更識楯無の持つ技能を得た。その関係もあり、クロの剣術技能はかなり高いレベルにあった。(同時に、スバルの技能も持ったので、かなり飛躍した)覚醒後は覚醒前のミーナの『抑止力』をハルトマンと共に担っていたので、今回における、ルッキーニの根本はクロエ・フォン・アインツベルンそのものだ。そのため、覚醒前のミーナは知らず知らずの内に配下の隊員の多くが『Gウィッチ』であったことになる。(ルッキーニは変身しなくとも、Gウィッチであったことになるが、サーニャは覚醒に変身を要する必要があったため、それに付き合ったことになる)
「そう言えば、ミーナ中佐、クロを入れると、周りの殆どが先に、Gになっていたことになりませんか?」
「そうだよな。気になったから、昨日の段階で坂本と竹井に調べさせたんだ。そうしたら、固定メンバーだけが段階を追うごとに覚醒していった事が分かった。お前は確か、第三次加入組だろ?」
「確か、転出した扶桑の誰かとの入れ替えだったとか聞いたなぁ。諏訪さんのお姉ちゃんだったような」
501の記録はトレヴァー・マロリー(ジョージ・マロリー卿の実弟)大将が記録を破棄したまま生死不明になった事もあり、その設立時のメンバーについては、今回の歴史においても不明な点が多いが、前史よりは明らかになった。前史での箝口令が存在しないため、バルクホルンやエーリカが語ったからだ。設立時のメンバーに、43年当時、そのキャリアの絶頂にあった、諏訪家の長子である『真寿々』(失踪当時に中尉。1945年時点では戦死扱いで少佐。智子と武子の後輩)がいた事が明らかになった。彼女の戦死(天姫は認めていないが、公式記録では、1943年前後に戦死)もあり、設立時のメンバーの事は歴史の闇に葬られた(生存した設立メンバーも、今の501の活躍に後ろめたい気持ちがあるのか、自分が元メンバーであった事を言わないためもあり、謎に包まれている)。そのため、軍の公式記録では、今回も『501は44年の設立』と誤魔化されている。イリヤ(サーニャ)はそのあたりの事情は知らない第三次加入組であるため、バルクホルンとエーリカの記憶頼りだ。
「ああ、諏訪真寿々だな。陸軍の欧州派遣第一号だったらしいが、二年前に戦死した。501から転出した直後だったらしい。これでもGの特権を使って強引に調べたらしいんだが、それ以上の事はわからんらしい。」
「縁起が悪いから、設立メンバーの多くが封印措置?」
「それもあるだろうが、宮藤がいなけりゃ、501は呉越同舟のごった煮部隊のままで解散になってたのがかなり濃厚だったからな。フェイトに調べさせたが、あいつが来なかった世界線では、人類が怪異に負ける事が確定するコースが6割くらいあったそうだ」
「嘘!?」
「まー、政治的策謀が入り乱れる部隊なんて、実戦だと使い物にならない事が多いからな」
芳佳がいなかった場合、501は解散し、バルクホルンは45年3月にテスト中の事故でウィッチ生命を喪失、ミーナは怪異に撃墜された際の空中爆発で名誉の戦死と、隊員の多くはかなりバッドエンドな道を辿るのが、フェイトの平行世界観測で明らかとなっている。そのため、この世界はティターンズの介入でかなり最悪に近い路線になったと言えるが、レイブンズのやり直しとその存在により、東西冷戦に持ち込む分、マシである。
「マジンガーZEROが星ごと文明を皆殺しにした世界、扶桑とリベリオンが戦争になって、リトルボーイとファットマンで降伏に追い込まれて、扶桑の支配領域が室町期に逆戻りした世界もあるからな…。この世界はマシなほうだ」
「マジンガーZEROはねぇ。マジンカイザーとマジンエンペラーGがいないと、すぐに世界を焼くんだから、あの駄々っ子マジンガー」
ウィッチ世界のいくつかはマジンガーZEROのファイナルブレストノヴァで星ごと焼き尽くされている。イリヤもその光景を幻視しているため、ZEROを嫌っている。そのため、ZEROの抑止力としての魔神皇帝を信頼しているのは、調と同様だ。
「まー、奴はゴッドマジンガーがシメてくれたが、二、三の平行世界は犠牲になってる。今度、ZEROの生まれ変わりである、Zちゃんに会ったら、エクスカリバーでもかませ」
「ゲイ・ボルグでいいですか?」
「いいぜ、やれ」
これである。Zちゃんになると、ギャグ補正でゲイ・ボルグに耐えられるので、仕返しに持ち出すらしい。イリヤがゲイ・ボルグの使用を躊躇わないあたり、かなりの反感をZEROは買っているのが分かる。
「あんにゃろう、平行世界じゃ、オラーシャごとブレストファイヤーで焼いてくれたから、ゲイ・ボルグどころか、乖離剣欲しいんですけど」
「王の財宝の許可は取ったから、それを使え」
「ありがとう〜!」
この頃になると、黒江は英雄王にかなり気に入られており、王の財宝の許可も得ていた。そのため、黒江は騎士王と英雄王の力を同時に行使可能になったことになる。
「さあて、イリヤ。エクスカリバーとバルムンクの二刀流で行け!
王の財宝からバルムンクを取り出した!」
「持ってたんですか、あの英雄王!」
「それと、シュルシャガナを調に渡せ!あいつのエクスカリバーと融合させれば、あいつのシュルシャガナは『万海灼き祓う暁の水平』としての力を完全に取り戻す!」
黒江はイリヤにバルムンクとシュルシャガナを託す。バルムンクが正統派の西洋の剣であるのに対し、シュルシャガナは中近東の地域で見られる刀身が湾曲した刀『シャルシール』だ。英雄王のコレクションにあったらしい。イガリマもあると思われるが、切歌がいないので、シュルシャガナのみを託した。イリヤは黒江の命を実行し、空中へ飛び上がり、調にシュルシャガナを投げ渡す。その投げでコウモリ男が死んだが、その屍から引き抜く形でシュルシャガナを引き抜き、構えると。
「わっ!?シンフォギアが勝手に展開された!?剣に破片が共鳴したの!?」
咄嗟にショルダースライサーの一対とシュルシャガナの剣を融合させ、シュルシャガナの真名を開放する。
「万海を焼き払う暁の地平、私に応えて!」
それはあるべき姿を取り戻したシュルシャガナそのものだった。龍の翼のような柄と護拳を持ち、灼熱を纏う湾曲した刀身。これこそが真なるシュルシャガナ。無論、その威力は英雄王の保証付きだ。
「なら、私も!同じ剣士属性なら、使えるはず!『邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至るッ!!』幻想大剣・天魔失墜!」
イリヤはアルトリアの力を使う状態のままで、同じ属性の英雄の武器という理由で、バルムンクを発動させる。まさに反則級の技だが、黒江が王の財宝の使用許可を得た事で実現した光景である。竜の因子を持つアルトリアの力を持つ状態で、竜殺しの逸話を持つ宝具を使う。なんとも皮肉な光景である。
「アヤカ、あれ、いいんですか……?」
「ああ、お前、竜の因子持ってたっけ?まー、細けえことはいいんだよ!」
「よくありませーん!」
アルトリアは竜の因子があるため、バルムンクとの相性は悪いと言える。イリヤがバルムンクを自分の甲冑姿で使うのは、なんとも複雑らしい。
「私が乖離剣を使える時点で察しろよな〜」
「いやいやいや!そういう問題ですか!?」
その瞬間、シュルシャガナの炎と、バルムンクの閃光が奔る。怪人軍団を屠り、道を切り開く一撃である。
「若いっていいですねぇ」
「ジャンヌ、お前だって、死んだのが17くらいだろ」
「それは無しで。これ、日本に中継されてますよね」
「ばっちり映ってるぜ」
「私も『我が神はここにありて』使おっかな……」
「軽いノリだな…」
「だって、今の私、フランス人じゃないし〜…」
「出たな、ルナマリア因子」
ルナマリアを素体に現界したため、ジャンヌは生前よりかなりノリがいい面が出ている。ルナマリアの要素が強く出ているのだろう。そのため、生前には見せなかったギャグ顔もできるようになっている。若い二人に刺激されたのだろう。
「ジル・ド・レが見たら、嬉しさのあまり、跳ね回るぞ?その発言」
「ジル・ド・レにとっては、私が全てですからね。死んだ後の事は同情できる面と、出来ない面はありますが…」
ジル・ド・レはジャンヌの死後、完全に狂ってしまったという哀れな後半生を送っているが、その時に行ったことは残虐非道そのもので、そこもジャンヌがジル・ド・レに完全には同情できない理由である。(理由が自分の死で正気と信仰を失ったからとは言え、多くの子供を手にかけていることは許されざる事と述べている)
「あいつは狂ったんだよ、お前の死でな。そこだけは分かってやれ。あいつも生前の前半期の行いで英霊には至ったろう。が、殺人鬼としての所業の業を抱え込んでるだろう。諸説あるが、1500人はヤッたともいうからな。もし、ガリアとフランスに行く機会があったら、あいつを弔ってやれ」
「……たとえ、悪鬼に堕ちたとしても、彼は戦友でした。いずれそうしますよ。それが私にできる弔いですから」
戦いつつ、ジル・ド・レのことでちょっとブルーになるジャンヌ。ジル・ド・レが自分の死後に闇に堕ち、多くの子供を猟奇的に手にかけたことを嘆き悲しんだ事があるのが分かる。だが、完全には彼を軽蔑しておらず、魂を鎮め、冥福を祈ることはすると明言するあたり、ジャンヌの優しさの証明である。
「生前は剣を抜かなかったけど、剣を使いたいです!」
「ジョワユーズでも使うか?」
「あるんですか!?」
「ゲート・オブ・バビロンは何でもござれだ、どこからか手に入れていたらしいぞ、英雄王」
ジョワユーズ。フランスの王剣ともされ、アストルフォの盟友が持っていたと伝わる名剣。英雄王のコレクションにあったらしい。つまり、フランス革命の混乱で紛失したのは、英雄王がその混乱に乗じて王室から掻っ払ったためで、後に帝位についたナポレオンが極秘にレプリカを作らせたというのは、想像に難くない。苦笑いしつつ、生前とは違う生を生きるため、ジャンヌはジョワユーズを抜く。元はシャルルマーニュのものであるため、アストルフォがそれに気づく。
「あー!その剣、シャルルマーニュのもんじゃーん!それ、十二勇士のぼくが使うべきだよ」
「貴方、剣技は得意ではないでしょう。私は生前と違って、今回は技能があるので、私が」
「そりゃそ〜だけどさ」
アストルフォは転生で性転換して、パワーが生前より下がっている上、生前の時点で武勇を誇るタイプではなかったので、ジョワユーズをジャンヌが使うのを、渋々ながらも了承する。ジャンヌはルナマリアとの融合で剣技技能を継承しているため、ジョワユーズを扱うのに何ら問題はない。また、生前に使わなかった武器を敢えて使用する事で、生前と別の生を生きる事を内外に示す意図も多分にある。最も、ぶーたれているアストルフォも素体になったロボットガールス『Vちゃん』の能力を引き継いだおかげで、コン・バトラーの力を行使できるので、総合的には強くなったと言えるが。
「ハァツ!」
ジョワユーズを奮うジャンヌ。怪人軍団相手に袈裟懸けにサラセミアンやゴースターといったショッカー怪人を斬り裂く。これはルナマリアから引き継いだ戦闘技能だ。ルナマリアがインパルス搭乗時の戦闘技能を適用しているため、シン・アスカの影響も垣間見られる大物狙いの剣士になっている。(生前の持ち物から、剣士の属性も持つ面は確かにあるが、ルナマリアの技能のおかげで、黒江達と比較しても見劣りしない動きを実現している。)相手が理性のない『器だけの存在である』幸運もあったが、ジャンヌとしては、ルナマリアから継承した戦闘技能を完全に自家薬籠中の物にするチャンスである。その事もあり、自分に抱かれているステレオタイプのイメージである、『少女騎士』の偶像にここは従う選択を取ったジャンヌ。自分より遥か後世の人間であるスーパーヒーロー達が誠に素晴らしい剣技を見せた(レッドファルコン、レッドターボ、バルイーグルは騎士王であるアルトリアも唸るほどの素晴らしい技である、ファルコンブレイク、GTクラッシュ、飛羽返しを見せた)事に英霊としての対抗心が大いに芽生えたのだろう。間合いのとり方を見ると、完全に接近戦に天賦の才があったルナマリアの動きになっているのが、インパルスの戦闘記録を見た事がある黒江にはわかる。
「おいおい、お前のもう一つの姿って言えばいいか?の時によくやってたツインブレードじゃねーんだ、間合いのとり方に気ぃつけろ!それと、私もよく言われるけど、剣での攻撃は受け流せよ!」
「分かりました!」
黒江は自分も本郷や一文字、それとバトルフィーバー隊の倉山鉄山将軍によく注意されるが、剣の一撃は上手く受け流すことに留意するよう、ジャンヌに促す。黒江も元々が示現流の免許皆伝(他世界では、他の古剣術を習っていたが、この世界では兄たちの関係で、示現流の免許皆伝に至っている)の身であり、よく『一撃必殺をかわされたらどう対処するか、考えてみるんだ』と叱咤される身である。それは比古清十郎や斎藤一も指摘しており、斎藤一は『示現流は最初の一撃さえ躱せばいい。ある種の法則さえ覚えれば、破りやすい流派だ』と断言しており、それも黒江が様々な流派の門戸を叩く要因となった。黒江は斎藤一からは薩摩犬が使い魔であることもあり、『薩摩の犬娘』と呼ばれている。今回の出会いにおいても、黒江は斎藤一に圧倒されており、彼は黒江に何気に大きな影響を与えた剣士となっている。(もちろん、悪・即・斬の信念も共感されている)剣技のテクニックそのものは剣の形状、東西を問わず、共通点は存在する。アルトリアも円卓の騎士の誰かの言葉を思い出したように、『受け止めるのではなく、受け流すこと』に留意する事。シンがアロンダイトでよく失敗していたことでもあり、デスティニーの設計コンセプトに鹵獲した地球連邦宇宙軍が疑問を呈した理由でもある。シンがMS戦でよく犯していたミスは『ビームサーベルを対艦刀で受け止めようとした』戦術ミスであるが、ジャンヌは、そのルナマリアが見ていたシン・アスカの戦術ミスを思い出しつつ、黒江に指摘されし事を守ろうとするのであった。
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