外伝その192『アルトリアの覚醒め2』


――アルトリアは覚醒したての頃、ガリア王党派と対峙した。ブリタニアの元・王がガリア王党派から仲間を救うために戦うというのも、なんともスパイスの効いた光景である――


「君があの伝説の王の転生だと?どの道、我々はガリアだ。君の国とは関係ないはずだが。たとえ、君がブリタニアの王であったとしても、だ」

「確かに、貴方の先祖が仕えていたのはブルボン王朝、私は下手したら、ブリタニアの古代の王で、関連性もない。それに、『元』ですよ、今さら王位奪還とか生まれ変わった場所も時代も正統性を示してませんから、失った王権の復活なんて、馬鹿馬鹿しいとは思いませんか?」

「君はブリタニアが統一される遥か以前の在位で、確かに、存在が言い伝えである以上、今のウインザー朝に取って代われはしない。だが、ブリタニアにとって、君は英霊である事には変わりない。ヒスパニア第一次継承戦争でエンリケ二世に敗れたペドロ一世のように」

「結果として、ペドロ一世はアルカサルを遺し、エンリケ二世は結果として、トラスタマラ朝の開祖になったでしょう?不名誉な『庶子王』の称号はあれど。私は円卓をまとめる事ができず、息子に殺された。それでも英霊になっているのですから、陰謀でひっくり返る王朝や政府なんて無くなった方が良いのです」

自虐的だが、ヒスパニア第一次継承戦争の頃、ペドロ一世は正統な継承権を持つ身でありながら、エンリケ二世に疎まれ、その結果、敗北した。エンリケの子のホアン一世の頃に名誉回復された歴史がヒスパニアにはあるため、ブリタニア王であったアルトリアはその歴史を知ったためか、王位にこだわる姿勢は半ば捨てている。自分が円卓をまとめられず、自分の子に叛逆された事がトラウマになっていた証だろう。

「自虐的だな。だが、君の言い伝えられる生涯からすれば、同情に値する。円卓の騎士はどいつもこいつも君に依存していた節があるし、君自身も彼等を導こうとはしなかった。聖人君子でも気取っていたのかね」

「そのつもりはありませんでしたよ。私の生きた時代は王位が持つ意味が立憲君主とは意味合いが違うし、絶対王政のような絶対君主でもない。そんな曖昧な代物です。それに、王の選定とかいいかげんなのが良く解った、確りと足場を固めて地道に組織を大きくしないと末端までトップの意志が伝わらず、末端からのフィードバックも無いまま気が付いたら崩壊寸前だったのは参ったが、いかに自分が王に向いていないか、身に沁みたのです」

教授とのやり取りで、アルトリアは自分は王に適任ではなかったと告白し、王位という幻想に翻弄された生涯だったと自虐的に語る。アルトリアは20世紀までに確立された『立憲君主』のシステムを王位を飾りでも保つためのいいシステムだと考えていた。

「扶桑の天皇制が2000年の永きに渡って維持されてきたように、現代の立憲君主こそが、王のあるべき姿なのでしょうね?」

「極東の田舎者達が保ってきたシステムか。あれは我々、欧州の風習には必ずしも適応せんよ。極東の連中は分家の者が後を継ごうとも、カウントするからな」

欧州や新大陸の人間達が天皇制についての理解が足りない証拠であった。ブリタニアが300年近く同盟国として接する事でようやく理解したように、天皇制は中国の皇帝と違い、時代に適応してきたシステムだ。元々、王位が不安定な代物だった欧州と違い、扶桑(後に、日本)では、如何にして天皇を使い、自らの政権の正当性を示すか。扶桑では、織田家が信長在世時から大政奉還まで腐心した事項だ。日本も武家政権がお約束と言わんばかりに腐心し、江戸末期の頃、皇女和宮を将軍の妻に迎える事で求心力を取り戻そうとした出来事も知られている。

「扶桑の天皇のように、政治に関わらない時代もあれば、立憲君主として現代で影響力を行使する時代もあるし、政治的象徴として置かれている時代もある。時代時代で存在を柔軟に考えていける君主こそが正しい形だと思いますよ。たとえ、在り方は変わっても変わらず在り続ける、王者として理想的ではないですか」

よく言われているのが、天皇の存在が大和民族そのもののアイデンティティに深く関係している点で、ダグラス・マッカーサーは日本滞在経験があるため、それを理解していた。マッカーサーは昭和天皇の退位を思い留ませたが、日本人は『退位するだろう』と考えた者も一定数いたため、それも昭和天皇の後世での評価に少なからず影を落としている。つマッカーサーに利用されたと考える者が出たからである。また、日本連邦結成交渉の段階で、扶桑の昭和天皇が自ら裁可を行った事柄が多いのが日本側から苦言を呈されたように、元老達亡き後の皇国は政治的に不安定である証ともされる。扶桑はかつての元老達がヴィクトリア時代のブリタニアを参考に近代化したため、天皇大権は強大であった。仕方ないが、扶桑では明確に国家元首としての性格が与えられていたためと、昭和天皇の治世に限って、軍部のクーデターや華族お家騒動が起こった上、扶桑海事変の失敗で東条英機が失脚したことから、昭和天皇は自分で裁可を下すしかなくなった事が何回もある。その過程で下心なく自らに忠誠を見せるレイブンズに入れ込むのも当然の成り行きで、黒江の事件の際は、パニックになった陸軍航空関係者が『不敬罪で処刑されちゃう!あいつを前線で死なせろ!』と考えるほどであった。これも黒江が疎まれていた理由だ。天皇の寵愛が逆に仇となったのだ。また、ダイ・アナザー・デイ中に『何故、黒江を少将にしてはいけないのか、その理由は如何なるものか?』と、参謀本部の関係者を強い調子で問い詰めるなど、かなり入れ込んでいる。参謀本部は天皇の寵愛ぶりにパニックになり、陸士と海兵教官らの大量罷免も口にした天皇に反論すら覚束なかった。事態を憂慮した陸自幕僚長が『陛下、准将を創設なされては如何ですか』と助け舟を出した。(参謀本部はこの時、日本側に責任を押し付ける文面で体面を取り繕ったので、それがウィッチのクーデターに繋がる)しかし、参謀本部がよりによって、日本側に責任を押し付ける文章を残し、それで血気に逸る海軍中堅ウィッチたちのクーデターを煽ってしまう。このように、扶桑は政変でも、天皇の権威が先に来るという点で、世界でも稀に見る特異性を持つ。この民族性は世界的に珍しい事で、アルトリアも関心している。

「あの国はアイデンティティそのものが特異なのだ。ブリタニアより、ある意味では変わっているよ。最も、ブリタニアのクソのような食事よりは遥かにマシだがね」

教授はガリア人の典型のような例えをした。ブリタニアは飯が不味すぎると。

「貴方の国も、最近は美味い食事にこだわり過ぎている。そんなだから、カールスラントに負けたのですよ」

カールスラントとガリアの戦争が『最後の人類同士の戦争』とされていたため、アルトリアもそれに合わせての返しをする。ガリアは戦争でも美味いものを求めていった末に、缶詰のアイデアを最初に考えた。現在の形にしたのはブリタニアだが、アイデアはナポレオン時代にはあったのだ。

「君がブリタニアの元・王であるなら、ここでワーテルローとトラファルガーの借りをいっぺんに返せるというものだな」

彼の先祖は、ガリアがブリタニアに敢え無く敗れたその二つの戦に参加していたのか、その二つの借りという言葉を口にした。トラファルガー、ワーテルロー。いずれもナポレオン配下の軍隊がネルソン提督、初代ウェリントン公である『ウェリントン将軍』にガリアが無残に敗れた事例であるが、アルトリアにとっては関係ない。

「そんなもんは知らん!貸した覚えの無いものを返されても迷惑だ!!それに、ワーテルローの借りを返すなら、ウェリントン公でも狙え!」

流石にトラファルガーとワーテルローのことまで言われても、自分は関係ないので、半ギレしたアルトリア。

「あ、半ギレだ」

「ワーテルローとトラファルガーは、私とはカンケーないじゃないですかー!」

黒田のツッコミが冴える。ブリタニアという国の括りなら関係はあるが、円卓の騎士に遥か後世の戦のことを問われても無理な相談であるし、コメントのしようがない。まさに理不尽である。

「国単位ならカンケーあるけど、円卓の騎士にトラファルガーとワーテルローのことを言うの、間違ってるぜ、アンタ」

カーラも呆れたようだ。

「お喋りはここまでにしよう、淑女の諸君」

「あ、言うことに詰まったね。なら、教授。元ガリアの五輪代表だった貴方に見せてあげるよ。なんであたしが七勇士に数えられたかを、ね」

「何……」

「幸い、ここは屋外だ。先輩から継承したとっておきを見せてあげる」

「とっておきだと?」

黒田は片腕を天に掲げる。すると、雲一面なかったはずが、急に曇天に渦を巻く天気になり、落雷が黒田の天に掲げた片腕に落ち、その電気エネルギーを凝縮し、ピンと立てた指に一点集中させる。

「そう!これこそが先輩から継承した、雷神にして大神ゼウスの権能が一つにして、とある世界で人が作った機械仕掛けの神の持つ力!」

『サンダーブレェェェク!』

黒田のとっておき。、それは黒江が前史で得意技とし、そして今回でも多用する『サンダーブレーク』だった。300万ボルトの電圧で30万アンペアの流量を叩き込む大技。これがマジンガーZEROの恐怖の根源でもあったほどの威圧感である。つまり、人間などひとたまりもない。MSでも、耐核処理が施されたザクやサイサリスでなければ、機能停止を起こす威力なのだから。ちなみに仮面ライダーストロンガーの電キックが5万アンペアの流量で5万ボルトなので、グレートマジンガーはそれを遥かに凌ぐダイナモを持つ事になる。教授はとっさに絶縁体で造られた盾を構えたが、それでも全身に火傷を負うほどの余波を起こした。

「用意がいいこと。絶縁体で作られてる盾を持ってたなんて」

「私は個人的にスタンガンの開発を行っていてね。その研究から、絶縁体のことは当然知っていたのだよ…。ここまでのものとは思わなかったが…」

「900ギガワットのパワーだ。よく消し炭にならずに済んだね」

「この盾には魔力処理も念には念を入れて施していたのだよ。それが功を奏した。一回きりでダメになる程度の処理だがね」

「それとアースさせてたね?」

「私の従姉妹が偶然から、アースして落雷から生還できた事があってね。そこから得た知見だよ」

彼は絶縁体のシールド表面に金属枠を填めてチェーンで接地して避雷針にする事で、サンダーブレークから生還した。それでも盾は一発でお釈迦であり、彼も火傷を負っている。

「教授、こちらへ」

「うむ」

「あ、待て!」

三人は逃亡する教授達を追う。三人は教授を乗せた車をバイクで追う。海岸まで来ると、なんとカールスラント海軍に潜り込ませていたシンパが艦長のUボートが控えていた。

「あー!Uボートで逃げるつもりだ!」

「なんともベタな選択ですね」

「つーか、アンタ、その格好でバイクをよく転がせられたなー」

「私はこう見えても、乗り物は得意なほうですよ?」

「アンタの前世の頃は馬しかなかったじゃん」

「まぁ、それはそれで」

「ん、あれってZ型じゃないですか?44年なのに、あんな古い型を?」

「あれより新型のUボートは計画段階で今の所は差止められてますから、あれが最新鋭ですが?」

「えー!それじゃデーニッツがお冠じゃん」

「IX型すら妨害されてますからね、ウィッチ閥に」

「追います?」

「いえ、ブリタニアの艦隊に追跡要請を出しましたので、泳がせましょう」

「Uボートで逃げるなんて、どこぞの総統がしそうな逃げ方ですねぇ」

「総統ってなんだ?」

「あ、いえ、こっちの話です」

黒田の例えはカーラにはわからないので、はぐらかすが、アドルフ・ヒトラーが生き延びた世界線では、残党を率いて南極に逃れているし、宇宙時代では、デスラーがデスラー戦闘空母が用意されるまで、ガミラス帝国で最高機密であった次元潜航艇に乗っていた。それを踏まえた例えである。実際、時空管理局がボラー連邦の台頭があってから、次元潜航艇による通商破壊に悩み、地球の同盟国であるガルマン・ガミラスに護衛を依頼する事態に陥る。ボラー連邦とガルマン・ガミラスは次元潜航艇を有し、時空管理局の管轄にある民間船舶もボラー連邦の通商破壊にあうという、銀河大戦のとばっちりを食らったので、もう一方のガルマン・ガミラスがパトロールを依頼されたのである。地球は『次元ソナー開発済み、ガイアから空間ソノブイもライセンス購入済み』の利点を活かし、駆逐艦の改修を進めていくものの、艦隊に余裕がないことから、ガルマン・ガミラスと共同で行う事になる。これについては、ガトランティスの潜宙艦が単なるステルス頼りの船であったのと比べ、遥かに潜水艦らしい船をボラー連邦、ガルマン・ガミラスは作ったと言える。後に地球連邦艦艇に標準装備される波動爆雷は、ヤマトの試験装備としての試作から始まるので、ガルマン・ガミラスとボラー連邦は宇宙戦艦の強敵と言える潜水艦のポジションを確立させたと言える。(地球側でも、海軍の潜水艦乗りの多くが次元潜航艇の登場と同時に宇宙軍に引き抜かれる)地球は次元潜航艇の実用化が遅れたが、潜宙艦を想定していたためのアプローチの相違が遅れに繋がったと言える。

「連絡はしてあるので、引き上げましょう。これでアジトに逃げ込めば、完璧です」

「あれ、ヘッジホッグありましたっけ」

「年式が新しい艦なら積んでるかと」


当時、ヘッジホッグは年式の新しい駆逐艦にはあるが、旧式にはついていない配備途上の新兵器だが、ウィッチ閥からは小馬鹿にされている兵器であった。当時、対潜戦闘そのものが机上の空論と馬鹿にされていたからだが、翌年の対バダン戦線やティターンズ戦線での必要性から、一気に花形となる。扶桑はヘッジホッグの供与の打診があったが、翌年には対潜魚雷であるアスロックが日本から大量に供与されたため、ヘッジホッグは海援隊へ供与されたのである。初期は日本の廃品が再利用されたが、やがて日本連邦ができると、一線兵器の統一化が強引に推し進められた事もあり、アスロックもその一環で供与される。この強引な統一化は、リベリオンウィッチ部隊にいきなり大打撃を与えた理由である。開戦劈頭、虱潰しに潜水艦狩りが行われ、犠牲になった潜水艦の多くがウィッチ輸送艦だったからだ。これでリベリオンはウィッチ中心の作戦が数年は立てられないほどの大打撃を受け、日本の悲観的憶測と異なり、塹壕戦になった理由だ。つまり、ダイ・アナザー・デイの敗北を理由にウィッチ装備が増産されたら、開戦劈頭の潜水艦狩りでその殆どが失われ、ウィッチの立場が失墜してしまう負のスパイラルに陥ったのだ。リベリオンが通常兵器主体に切り替える頃には、扶桑は世代の進んだ兵器と熟練ウィッチで逆襲を始める。つまり、リベリオンはダイ・アナザー・デイで味わう敗北の捉え方を誤り、太平洋戦争で不利となる状況を招いてしまったのだ。これも日本の予想外の出来事であった。つまり、日本は兵器の世代差を甘く見たのである。第二次世界大戦型装備の軍隊は、戦後第二世代以降の装備を持つ軍隊には脆弱なのだ。

「おい、敵がパンツァーシュレックを撃ってきたぞ!?」

「なーんだパンツァーシュレックか。あの弾速なら、迎撃出来ます」

「うそぉ!?」

黒田は敵が撤退する前に最後っ屁で撃ったパンツァーシュレックをグロックの抜き打ちで迎撃して撃ち落とし、パンツァーシュレックを撃ってきた王党派の男へ向かって、黒田はなんと空中元素固定で、21世紀の武器であるRPG-7を作り、反撃した。当然、当時としてはハイカラな作りであるし、一年後には扶桑軍がこの種の兵器は陸自との共用で大々的に使用し始める(前史)はずなので、あながち見ない兵器というわけでもない。

「た〜まや〜」

当然、パンツァーシュレックと世代が違う兵器であるので、RPG-7は見たこともない兵器である。パンツァーファウストの後継者の派生系の一つであり、作りが当時からすれば斬新である。

「黒田中尉、パンツァーシュレックにRPG-7で反撃するのはやりすぎかと。世代が違いすぎますよ」

「パンツァーシュレックとは作りが違いますって、これは。二世代くらいだけど」

「クニカ、なんだそれ!扶桑の新兵器か〜?」

「110mm個人携帯対戦車弾。たぶん来年くらいには制式採用される扶桑とカールスラントの新兵器ですよ」

元の設計はドイツ発なので、それらしいことを言い繕う黒田。本当は『ロケット・プロパルサー・グレネード』というが、日本はRPGもパンツァーファウスト3も同じ括りにされるためにそういう。本当に翌年、日本やドイツ、ロシア、米国が大量に供与するため、一年後には本当に出回る。これがカールスラント機甲師団を悩ませる問題にある意味では直結する(戦車防御力の陳腐化)。これがカールスラント陸軍がレオパルト2戦車を購入し、扶桑が10式戦車を輸入して、試験を始める理由になる。こうして、在来式戦車を陳腐化させる後世兵器が出回る一方、戦地では在来式兵器も必要とされるため、その需要と供給の兼ね合いに困る日本やドイツ。そして、金鵄勲章の授与をなんとか戦時に行わない方向に舵を切ろうとする日本の左派と、金鵄勲章は軍人への戦時栄典であるとする扶桑で揉め、与党がその中間を取り、『戦争が終わる前にまとめて授与する。戦中の戦功には、二階級特進(将官も)か武功章授与でとりあえず対応し、功労賞も創設する』という方向で日本連邦としての方針を固め、これに反発した海軍ウィッチ達は粛清人事という混乱を味わい、更に空母機動部隊の形骸化という屈辱に塗れる。また、海軍がようやく設けた技能特優章をつけられるウィッチが尽く、空軍へ引き抜かれたために空軍の海軍出身者に同章を授与するしかなくなり、海軍高官は空母機動部隊に錬成途上の部隊を配置していたことを悔いたという。また、日本の左派は一兵卒にも金鵄勲章は授与資格があるのを知らなかったため、そこも赤っ恥を晒す要因で、45年は戦争の長期化で授与資格者は階級を問わず、既に100万人を超えていたからだ。そのため、扶桑の旧大蔵省は年金を停止し、その代替制度として、一時金制に変更する事を提案したが、反対にあって潰えている。黒江たちも一時金制度は戦後に国家の鶴の一声で廃止されてしまう不利益の大きさ(日本では、金鵄勲章の国債は紙切れと見なされ、20年後に一時金が出ただけで、その名誉回復は86年である)から、年金の維持を提言している。レイブンズの提言はその頃(45年以降)には天皇すら動かせるほどの影響力を持つため、大蔵省は渋々ながら、年金を維持した。これは日本を訪れた吉田茂が第7回連邦評議会でこのような理由を述べた。

――2019年 第七回連邦評議会――

「金鵄勲章の制度につきましては、下手に制度をいじくり回し、現場の不満を貯めるよりも、そのままにしておいたほうが良いのです。下手すれば、陸軍ウィッチがここを占領しかねませんよ」

「ハッ、近代兵器で防護されるこの東京を?馬鹿も休み休みですよ、吉田老」

「ウィッチはそちらの東條大将が本土決戦の切り札にしようとしたほど強力ですよ。個人にもよりますが、相応の武器を持てば、戦車の火力、装甲車の機動力を持つ機械化歩兵となります。警察がいくら頑張っても対抗できますまい?」

「対戦車ミサイルでもぶち込めばいいじゃないか」

「緊急時に自衛隊を出動させるのも閣議や国会で決議が必要なのに、小数ウィッチの電撃戦に対応出来ますか?」

「我が警察が小娘共に遅れを取ると?吉田老」

「正規の軍事訓練を組んでいる上、常人より遥かに強いウィッチは狙撃にも反応出来ます。下手したら、そちらのSATは壊滅でしょうな。ウィッチのシールドは小銃程度弾きますぞ」

「なんですと!」

「自衛隊には対応出来る実力は有っても運用するトップに対応力が足りないんだよ。おじいさんの言う通り、この国は有事法制すらつい最近までタブー視されてたんだぜ」

麻生タローの痛烈な返しが警察庁長官になされる。血は争えないというべきか。

「タローが申している通り、この国では有事法制をこうして話し合える事そのものが奇跡に近い。思考停止して、『戦争は良くない』と唱えても、ベトナム戦争は起こったし、湾岸戦争も起こったでしょう」

吉田茂は第二次世界大戦の指導層にいる世代である。そのため、一般的には非戦派と言われているが、再軍備そのものには反対しておらず、晩年には自衛隊の再編による昇格を唱え、左派から『二枚舌』、『変節した』と罵られていた経緯もあるように、実際はリアリストである。そのため、岸信介の孫である安倍シンゾーの自衛隊明記案を公然と後援し、左派から批判されている。この頃には憲法改正そのものは成されたが、左派が無効の訴訟を起こしまくっていた事もあり、安倍シンゾーは苦境にあった。吉田茂が自衛隊擁護の演説を何度かしたように、自衛隊もかなり苦しい立場であった。戦死者や負傷者が生じていたからだ。左派は『第二次世界大戦の時代の兵器にどうして遅れを取るのか』とする、実情を顧みない批判しかせず、扶桑軍を兵器・システム面で苦しめる割に、21世紀兵器は第二次世界大戦の兵器に無敵であるとする幻想を抱いている。イージス艦も無敵の船というイメージがついているが、実際は秋月型駆逐艦の遠い子孫のような関係であり、重巡洋艦や戦艦と戦うことなど想定していない。(海自は戦術で対抗してみせたが、危険とされて禁止されてしまった)

「貴方方は我々の時代の兵器を役立たずと言うが、戦艦をミサイルで戦闘力は喪失できても、撃沈そのものはできないという実験結果は出たでしょう?」

「核を撃ち込まれたら…」

「リトル・ボーイやファットマンしかない時代に、CIWSや対空ミサイル満載の現代装備の戦艦へ使うとお思いか?B-29がいくらあっても割に合わない」

吉田茂は続ける。

「それこそ、野球の経験が皆無の華道部や茶道部がV9時代絶頂期のジャイ○ンツに挑むようなものですよ」

モノの例えとしてはピントがずれているが、概ねそのようなものだ。絶頂期のジャイア○ツは文字通りの常勝軍団であったためと、世代的にその頃に子供だったり青年だった世代もいるため、分かりやすい。サッカーはプロ化が1990年代であったので、もっと若い世代でなければわからない。

「紫電改や疾風で充分に落とせるものにトムキャットやイーグルをぶつけるのもどうかと思うがね」

これも付け加えた。B-29は紫電改や疾風で対抗可能な兵器であると。

「圧倒できるに越した事はありませんか。B29は紫電改も疾風も相当数を返り討ちにしてきた」

「それに、ミサイルならアウトレンジ攻撃が可能ではありませんか」

「それもそうだが、我々の時代のパイロット全員がジェットに適合できるとは限らないのは理解してくれたまえ。苦情も出ておるのでね」

「だいたいは想像できます。どうせエアブレーキでの制動や加速力の無さでしょう?我々の初期の頃の記録にありますので」

「その通りだ。ウィッチも同様だが、これも中堅が多くてね」

「中堅ほど厄介な人種はおりませんぞ、翁。古参のほうがまだ対応できる」

ウチ(空自)の訓練も初期はレシプロやターボプロップのプロペラ機だし、 文句言うヤツはそも向いてないんじゃないですかね?篩にかけるチャンスと思いましょう」

「うむ。本来は君らの増員が欲しいところだがね」

「それについてはご期待に沿えかねますので、ご容赦ください」

ダイ・アナザー・デイ中にこの評議会は行われていたが、空自は12機を出すのが政治的限界であり、国民の理解も得られないと判断されたため、空自部隊派遣の増加は不可能であった。

「その代わりにジェットに転換する訓練を一部引き受けましょう、そこに義勇兵も混ぜられますし」

「頼む。現場では特殊機と言えない事に不満も噴出してきているので、こちらではなんとすれば」

「制空機、多用途戦闘機、邀撃機、攻撃機に分けた上で、奮進式と但書が必要になりますな。」

ダイ・アナザー・デイの時期になると、扶桑でジェットを特殊戦闘機/爆撃機と呼べなくなり、橘花運用予定部隊が解散させられた事で不満が溜まっていた。当時、扶桑ではジェットは高速爆撃機として使われる予定だったが、メッサーが戦果を挙げたため、戦闘爆撃機として再調整(ストライカーも)されていた。しかし、実機は戦闘爆撃機型が純粋な戦闘機としての本分を日本側に要求されて不採用、爆撃機型も不採用に終わってしまう。つつかれた箇所は設計の殆どで、『メッサーシュミットの劣化コピーのおもちゃ』と蔑みを受けてしまう事になった。しかし、橘花は処女作であるため、酷ではあった。元々、初期設計を提供され、そこから派生した機体である上、より熟成された設計をベースにした火龍が別個にあったための対抗心もあった。

「現場からは『陸軍と海軍でまとめてライセンスが買えなかったし、海軍のほうが早く買っただけなのに、なんで鬼の首を取ったように言われるのさ!』と苦情が矢のように出ている。おかげで、空技廠のある技師は精神病院行きになったそうだ」

当時、扶桑の軍技術者の多くは日本側に理不尽に叩かれ、多くが心療内科に通うという、前代未聞の事態に陥っていた。それは戦車、航空機、艦艇、小銃に至るまでの多岐に渡る分野であり、空技廠系の技術者の少なからずは心療内科に通う日々となっていた。これでとばっちりを受けたのがカールスラントで、メッサーシュミット(設計当時はシャルフだったが、未来世界のメッサーシュミット社に本当に取り込まれたため、改名)Me262のライセンスを不当にふんだくったとして、当時、地球連邦の協力で設立されたばかりの世界貿易機関に提訴されてしまったのだ。これに顔面蒼白になったカールスラントだが、ドイツ連邦共和国の救いの手が差し伸べられ、EADSがライセンスを発行し、メッサーシュミットの商標をウィッチ世界へ譲渡し、ウィッチ世界のメッサーシュミット社そのものがダイムラークライスラーグループ傘下となり、合弁会社を新京に設置し、生産協定を結ぶ事、飛燕のエンジンやメッサーシュミットMe262の設計ライセンス料は合弁会社が相場より安い値段にすることで落ち着き、世界貿易機関からの制裁は免れた。愛鷹の一件で違約金と復帰工事費負担で、軍事予算が削られるところに追い打ちがかけられるのだけは止められた。カールスラントは当初、Uボートのノウハウを扶桑に提供する事で宥めようとしたが、その頃には、日本がそうりゅう型潜水艦を生産設備ごと提供してしまっていた事も誤算であった。そのため、ドイツの仲介で、どうにかライセンス料の解決と雇用の創出がなった事に胸を撫で下ろしつつ、日本からゆうしお型潜水艦の設計の提供を受ける事で手打ちとしたのだった。(ちなみに、メッサーシュミットMe262ライセンス料をふっかけた際の軍の担当者は、責任を問われた末に、降格された挙句の果てに『僻地』に左遷されたという)この一件を受けて、その頃にカールスラント空軍総監になっていたグンドュラ・ラルは『日本連邦をとにかく怒らせるな!あらゆる手段で逆襲されるぞ!』と訓令を出したという。実際、ラルは知っている。追い詰めると、レアアースを必要としない技術を作り、未来では『無敵の宇宙戦艦ヤマト』に至ってしまった事を。ラルは日本連邦を敵に回すなと口を酸っぱくして触れ回ったが、それは日本人の滅びの美学の極致とも言える、ガトランティス戦役で宇宙戦艦ヤマトがその身を呈してまでズォーダーを葬り去ろうとした『死なば諸共!』の思考回路を恐れたからでもある。

「それと、海軍が言ってほしいと言うことだ。戦艦についてだが、艦政本部が愚痴っていたそうだ。29ノット出るのに、なんで遅いんだと」

扶桑の大和は機関出力が史実より相当強力で、210000馬力で29ノット(最大。過負荷、31ノット)という高速を誇っていた。これは史実より5万馬力も強力であり、扶桑の標準的空母の直掩は余裕でこなせる速度である。

「アイオワは過負荷で33ノット出ますよ。それに、大和の船体で29ノット出せる機関をどうやって積んだんです?まさか島風型のエンジンでも積んだのですか」

「ドイツの高圧タービン技術を使ったそうだが?」

「地球連邦がガスタービンにしたのは正解ですな」

「どういうことだね」

「ビスマルクがそうでしたが、ドイツの高圧タービンは信頼性がないんですよ。地球連邦軍がガスタービン……正確に言えば、CODAGに換装したのは正解ですよ。元のままなら、機関が故障してドック入りですよ」

実際、高圧タービンはバダンもH級では採用しておらず、ビスマルクだけの徒花となっているのが確認されているため、扶桑の大和は危うく、機関の故障で戦局に寄与しないところであった。

「こちらが聞きたいのは、大和でなぜ、50口径砲を積めたのです?こちらでは排水量を1万トンは増やして、バーベットをもっと大きくしなければ載らないと…」

「こちらでは、元々、45口径50cm砲への換装が念頭に置かれていたからだよ」

「こちらと同じ排水量のままでよく積めましたね」

「言ったろう?戦艦は主砲の換装は元から考えられている。大和も例外ではない」

「しかし……」

「それに、23世紀の技術で作ったそうだから、機関重量が相当に軽くなったから可能になったそうだ。何なら、要塞に使う予定だった元々の砲塔を提供しておくから、博物館にでも展示すればどうかね」

「良いのですか?」

「23世紀の砲塔にしたから、信濃用までのワンセット分が余っていてね。良ければ、武蔵用のワンセット分を横須賀か長崎に置こうか」

「いい観光資源になります、では横須賀と長崎に話を通しましょう」

この時に提供された武蔵の砲塔は横須賀と長崎が招致を争い、横須賀には信濃用の砲身が、砲塔は長崎が勝ち取った。ちなみに、当時、既に日本駐留艦隊の旗艦であった大和型五番艦『三河』は予定艦名の候補に『飛騨』があり、昭和天皇の決定で三河になった経緯が紹介され、話題を呼んだ。三河は2019年(扶桑では46年になろうかという頃)の段階ではCIWSをパルスレーザーに強化改装する改装が控えており、扶桑に帰港予定であり、代わりにそれを済ませている『甲斐』が第二代旗艦になると公表されている。ダイ・アナザー・デイを乗り切った後、扶桑は軍の近代化を進めるが、色々な不確定要素で開戦には間に合わず、黒江は『塹壕戦覚悟だな…』とぼやき、自分たちが多忙になることを予期したという。ダイ・アナザー・デイの前後は評議会が多めに行われたが、日本が巻き込まれる可能性が大きくなるからでもあったのだ。その流れで、育成に対しての費用対効果が高いGウィッチたちの優遇が既定路線になったのも事実である。そのため、現役ウィッチの失敗は『それまでの摂理にこだわりすぎるあまり、Gウィッチの境遇に理解を示そうとしないのに、戦果を挙げられない』事で、それも現役ウィッチの肩身が狭くなった理由だった。現役ウィッチはむしろ、黒江たちと世代が離れる世代ほど、レイブンズをニュートラルな目で見れるため、戦争で活躍した主な現役世代は宮藤芳佳以降の新世代になったのだった。(45年当時の中堅はレイブンズの第一次時代の最末期に初陣であり、対抗心を煽る教育をされていたため、レイブンズには懐疑的で、クロウズも『下原や菅野の代は扱いにくい連中が多い』と呆れていた。下原や菅野はGウィッチであるのと、レイブンズに直接仕えているために同世代の敵も多い。それは雁渕孝美も同じだ)




――ウィッチ世界は伊号400潜のような『潜水空母』が好まれているため、Uボートのような本来の想定用途の潜水艦は隠密輸送艦のような扱いであった。カールスラントがUボートの更新を翌年まで控えていたのは、そういう事情が大きかった。だが、44年の秋頃から45年春までのM動乱で扶桑海軍水雷戦隊をバダンのXXT型潜水艦が散々に翻弄し、扶桑海軍を苦しめてみせた事を好機と考えたデーニッツはここぞとばかりに、設計は完了済みのXXT型を量産しまくる。また、未来人が潜水艦の運用を史実通りに固定させた事も、各国ウィッチ閥の憤激を招く事になる。潜水空母は日本にとっては『弾道ミサイル潜水艦の母体になったに過ぎない過渡期のアイデア』扱いであったが、当時のウィッチ世界にとっては最先端の兵法だった。そのため、当時建造中の\型は潜水空母装備で建造されていたが、それが撤廃された事でカールスラントでも問題になるが、ウィッチの軍事的価値の低下が皮肉にも、Uボートを本来の目的に回帰させた。また、リベリオンの対潜網の最先端ぶりが日本人の手で各国に発信されたのも、カールスラント海軍をXXT型に傾倒させる理由だ。M動乱でバダンから鹵獲艦が大量に得られた事も、エーリヒ・レーダー引退後のデーニッツの迷采配に繋がる。彼の迷采配はバダンの鹵獲艦が大量に得られた事で『当分、新造艦いらないな』と考えたこと、宙に浮いていたペーター・シュトラッサーを扶桑へ返還する事で、潜水艦を作る予算が得られると踏んでのことだった。しかし、ペーター・シュトラッサーの10年の放置は相応の代価があり、扶桑海軍が激怒するのも無理はないほどのものだった。ペーター・シュトラッサーはずっと繋留されていたので、荒廃ぶりは扶桑海軍が猛抗議を入れたほどだが、回航程度の航行は可能ではあった。同型艦のグラーフ・ツェッペリンが撤退戦の際に撃沈された事、カールスラントに空母着艦可能なウィッチがいない事を理由に10年(1946年前後)も放置していたツケは大きく、扶桑海軍が復帰工事費として要求した金額はビスマルク級とUボートが同時に造れるほどの金額であったという。違約金も別個に要求されたし、管理責任者は『田舎海軍ごときが玩具を欲しがるとこうなるのだ!』と馬鹿にされるのに耐えるしかなかった。しかし、先帝時代に海軍は大幅軍縮がなされたとは言え、一度は大洋艦隊を誇った国であり、空母を買ったのは1920年代終わりくらいの事。当時の関係者は『1940年代までに空母の運用を目指す』曖昧な目標で始めたし、当時はカールスラントのほうが海軍大国だったのだ。しかし、カールスラント海軍の過度な強大化を恐れる声が後押しし、一部の軍人のバダンへの合流に合法的に歯止めをかけるためもあり、『新京条約』が結ばれたことで、カールスラントの大洋艦隊再建の夢は潰える。つまり、別世界のドイツ軍の幻影にカールスラントは苦しめられ、扶桑海軍は大日本帝国海軍の影に怯える事になるのだ。これは日本やドイツの『同位国の矯正』を信じる勢力、現地の情勢に無知なハト派の招いた暴走と言える。扶桑軍の戦備不足や、カールスラント軍の太平洋戦争への参戦ができなくなる理由でもあるため、結果としては日独のウィッチ世界宥和派が尻ぬぐいをする羽目になるが。国連のショー・ザ・フラッグ派が支援に回るものの、カールスラント軍と扶桑軍は混乱を長く強いられ、ハト派が気がつく頃には、現用兵器が使われていたりする。これは扶桑軍の更新速度があまりにも性急すぎた事も理由で、戦車のハイローミックスの『ローを揃えること』さえも四苦八苦する事になる。扶桑は75ミリ砲弾の備蓄処理も意図していたので、チトの再製造は『口径は変えないでくれ』と注文をつけたが、三菱重工業の設計陣が『財務省に没にされないように』90ミリ砲を選んだ事により、黒江が破砕砲の開発を依頼する手間がかかる出来事が起こる。黒江はこれを『日本的グダグダ』と愚痴った。扶桑の戦車工場のJIS規格化の指導で宮菱に三菱の社員が派遣され、設計や工程管理を握っていた為に生産が入れ換えられていたからで、扶桑軍は「在庫整理のためなのよ」と泣いたが、『75ミリじゃウォーカー・ブルドック程度の火力やんけ』とツッコまれたという。実際、75ミリ砲は史実の進歩スピードなら45年に火力不足とされていたが、ウィッチ世界では最高峰に近い火力と目されていた。その見解の総意が混乱を招いた。扶桑はその混乱もあり、ハイで105ミリ砲、ローで90ミリと、カールスラントも真っ青な火力の飛躍を起こす。また、日本は120ミリ砲戦車の配備も目論んでいたのか、10式のサンプルまで与えていたという。元々、扶桑は中戦車を砲戦車で支援するドクトリンだったが、MBTの登場でそのドクトリンが陳腐化してしまった事になる。また、120ミリ砲を近代化すると、どうしても現用戦車と代わり映えしない火力でしかないため、榴弾砲に転用される砲戦車が続出する。つまり、砲戦車の役目は終わり、代わりに必要とされた大口径自走榴弾砲へ設計の類似性から転用されるのだ。元々、火力支援を目的に考えられた砲戦車は中戦車の強大化で存在意義が潰え、自走砲に統合されていく事になる。そのため、元々が機甲科への配備目的で作られた日本独自のカテゴライズだった事もあり、自走砲に自然と統一されていく。歩兵科への火力投射支援は機動戦闘車が担うことも予定された事もあり、砲戦車の一部は自走榴弾砲に次第に転用されていく。これは旧軍砲戦車の頑丈な車体に155ミリ榴弾砲が載らないかと模索する動きに併せての立案であった。(自衛隊式自走榴弾砲はアルミ合金製で、ベトナム戦争がそうであるように、アルミ合金製の戦闘車両は脆いと指摘があり、五式砲戦車の資材で自走榴弾砲を作る案が採用された流れでそうなった)ただし、やはりアルミ合金製でなければ砲が載らないため、扶桑の前線の要望で、従来型五式砲戦車用に榴弾などが新規で製造されてゆく。こうした混乱が待ち受けているのである。



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