外伝その235『フューチャーヒーロー6』
――日本への実況中継は扶桑の苦闘を示すのには十分な効果を見せていた。また、皮肉なことだが、旧343空/64Fの方向性の正しさが義勇兵により示された。一定のベテランを集中運用し、任務に供することで、一定の戦果を出せるからだ。また、日本の驚きは旧式になっていたはずのキ43-Vであったり、零戦二二型なのは驚きを持って迎えられた。また、日本には、旧式になっていたはずのキ43-Vであったり、零戦二二型が活躍するのは驚きを持って迎えられた。
――日本のあるニュース番組――
「何故、ベテランパイロットが乗るだけでゼロ戦が米軍の高性能機に伍することができるのか?」
「一つは的確な空中指揮管制、百戦錬磨の義勇兵がゼロ戦や隼を動かしてるのですよ?得意なテリトリーであれば、両者は強いですよ」
日本の人々は驚いているが、扶桑で作られた零戦は史実の性能値より多少なりとも良好な性能値が出ており、二二型の時点で史実五二型より数km速い程度であるが、突っ込みがいいのだ。更に個体によるが、リベリオンのエンジンに現地で改造されたものもごく少数であるが、存在する。主翼に補強材を入れる改造も施されており、現地改造は多岐に渡る。実際に機銃換装、複座化などの改造は当たり前であった。補強パッチで層流翼っぽい形に造し、翼端の折り畳み部分外してウイングレット付けて速度と運動性と安定性の調整を行った個体も存在する。そのため、日本の記録には存在しないバリエーションも多い。また、日本でも例があったが、エース専用、あるいは隻腕者用改造も存在する。その内の隻腕者用のボタン式引き金は多少ながら形を変えて採用されている。時代の流れと史実の敗戦という事実が軍部を動かしたのである。他の理由は『射撃の直感性の無さによる低命中率』である。これは主に海軍機対象の改修であり、陸軍機は元からボタン式なので、小改良程度に留まったという。
「それで、何故、新鋭機ではなく、それらが第一線を張っているのか」
「新鋭機はそれなりに配備されてます。ですが、現地のパイロットの育成が追いつかず、それで義勇兵らに搭乗経験のある機体を宛てたというのが真相のようです」
「義勇兵と言っても、どのくらいの層がいるのです?」
「扶桑では、こちらの8、90年代から極秘裏に義勇兵を我が国から募っていたそうなので、最年長では日中戦争からのベテラン、最年少が航空自衛隊経験者だそうです」
扶桑は通常パイロットの増員の一手段として、日本軍〜航空自衛隊の経験者を黒江が個人所有するタイムマシンを用いてスカウトする手段を講じていた。細かい部分に違いはあれど、基本的に日本軍のそれとほぼ同じコックピット配置であるため、義勇兵たちは技能回復訓練を若返りの後に受けて部隊配属されていた。扶桑空母は日本と違い、元々、油圧式カタパルトが普及途上にあったので、義勇兵たちはまず、それに耐える訓練を受けている。火薬式カタパルトは史実と違い、旧型空母についていたが、一部は油圧式に変えられていた。折しも当時、ブリタニアが蒸気式カタパルトの開発に成功し、それを購入しようかという時に、電磁式カタパルトのノウハウが伝わった。以後は艦により、蒸気式と電磁式カタパルトを使い分ける方針に転換した。これは電磁式カタパルトの有効性は確認できたが、ブリタニア(後に、キングス・ユニオン)への義理立てもあってのことだ。また、電磁式カタパルトは優先的に既存の空母では規模に余裕のある、新鋭正規空母に割り振られていたため、それの対象から外れた艦が蒸気式、油圧式だったり、火薬式であった。建造年度が新しいが、機関出力で蒸気式カタパルトの多用に耐え得ないと判断された雲龍型は油圧式のままであった。史実の状況に比すればマシで、橘花の運用が可能と見込まれていたのも、RATOとの併用が予定されていたからだ。しかし、米軍や地球連邦軍の協力で作戦数ヶ月前に電磁式カタパルトに転換、一部の艦は試験運用も兼ねて実戦参加している。
「再訓練の必要はありますが、現地の新兵を育てるのには年単位の時間と労力を費やしますが、経験者なら一定期間の訓練さえ受ければ、思い出します」
「自転車のようなものだと?」
「そうです。自転車も一度乗れたら死ぬまで乗れるでしょう?そういうものです」
自衛隊式(ひいては地球連邦軍も受け継いでいる)育成及び、再訓練が施された者は三ヶ月前後の訓練でダイ・アナザー・デイに投入された。義勇兵の活躍は、義勇兵自身の練度、的確な空中指揮管制、敵が低練度だった事が作用した結果である。
「元々、太平洋戦争に実戦参加経験がある方達は厳しい環境で生き残ってきたという事なので、現地の要望にピタリだったのですよ」
――青春を賭けた場へ戻れる。義勇兵の中には青春時代への郷愁、周りがチヤホヤしてくれていた時代に戻りたい。それらが義勇兵の志願理由であった。元々、家庭で居場所を半ば無くした者も多いのも義勇兵の元の年齢による苦労であり、居場所がない家庭よりは戦場で死にたい。そんな心理も少なからず持っている。従軍経験がある老人たちの働く場になることもあり、日本も公に認めた。2012年頃のことだ――
ニュース番組内のこのコーナーとは別に、報道もなされた。扶桑艦隊の艦隊戦の模様だ。扶桑艦隊の参加戦艦はどれも大和型の系譜であり、その威容は兼ねてからの注目の的だった。また、かの超合金ニューZをどこに使用しているのか、も注目された。扶桑艦を作り変えられるほどのふんだんなジャパニウムが確保できるのか(富士山麗に資源が眠っているというのは21世紀頃にはすでにあり、兜十蔵が壮年期に発見した)?その謎が21世紀のタブロイド紙を賑わしていたが、実際には硬化テクタイト板との複合装甲で、第二層部がニューZで、ちょうど挟まれる位置にある。また、大和型戦艦は本来、船底がリベットで繋がれていたが、作り変えで現代艦艇に準じた作り変えが行われている。武装はM動乱中に逐次強化されているので、この時点では主砲は50口径化され、更に現地で60口径化も始まっている。これは部品の空輸が可能になったからで、大和は第二次海戦までに現地で改造されている。21世紀向けの公表はまだされていないが、主砲はこの時には宇宙戦艦ヤマトの技術で作られたものにされ、換装は容易だった。23世紀の手で51cm45口径への強化が俎上に乗った名残で、主砲砲身換装で70口径まで対応可能な風に設計されている。
「戦艦大和は度重なる改装で長砲身化が二度行われており、その破壊力は…」
それが日本で報じられた大まかな強化判明時の模様だ。砲を適宜、換装することは軍艦の改造ではポピュラーである。元々、大和型戦艦は46cm砲に最適化された艦型であることから、地球連邦軍によるテストで51cm砲には不適であると判明した後は長砲身化するのが最適とされた。砲身命数の多さが心配されたが、未来世界製である事からあまり心配されていない。武蔵で実験したところ、斉発の衝撃が65000トンの船体をも動揺させるものであり、バーベットのローラーを歪めた事から、『20インチ砲は発展型に積むべき』とする知見がもたらされ、ついに56cmに達した。次は61cm砲にステップアップする声もあり、敷島型の計画でまたも俎上に乗った。三笠型がそうであったように、あまりに大口径砲にしすぎると連射速度などが実用に耐え得なくなるため、船での限界は56cmと判明した。これは地球連邦軍も実弾式の限界は56cmと見込んでいて、扶桑で実際にやってみた結果、判明した。ちなみに、三笠のライバルのヒンデンブルクは48cm、改ラ級『フリードリヒ・デア・グロッセ』は53cmで、ドイツ系は自身の冶金技術に自信があったり、炸薬などの独自性が強いなどの理由で小口径なのだ。
「では、大和のライバルと目されていた各国の戦艦は…」
砲撃戦という概念が既に絶えていた21世紀では、ある種の見世物扱いであったが、古典的海戦の模様を知れる機会ではある。大国同士の戦闘が起き得るものとはされなくなった時代、大型戦闘艦の戦闘も見れなくなって久しかったので、一種の見世物扱いであったが、戦艦は見栄えがいい事もあり、報道で注目されやすかった。また、観艦式で姿を見せていた八八艦隊型に代わる主力が大和の系譜というのも、造艦史のイフを垣間見れる事から、陸自/陸軍より報道されやすかった。特に、大和型戦艦は既存の全艦が近代化済み、その仕様での新造が一隻追加されており、旧式艦数隻は大和型戦艦一隻と同等の戦力価値と見なされている。大和型戦艦は近代化の素案では砲をホーミングレーザー化する案もあったが、無難なショックカノン仕様砲塔に落ち着いている。実体弾と併用するためと、地球連邦軍との一定の規格統一の必要性によるものだ。ヒンデンブルクは実質、三笠型よりは格下だが、次元転移機能があるため、三笠型に伍する硬さを持つ。そのため、46cm砲弾を有に20発、56cm砲も5発食らっているが、ピンピンしている。相対的に脆い米軍系艦艇は体たらくぶりで、アイオワなど、56cmが艦首に当たればもぎ取られる有様で、戦力外通告も同然だ。
――現地 富士のCIC――
「おっちゃん、アイオワをさっきから何隻落伍させた?」
「既に史実の建造分は落伍させておる。増産されているだろう。10隻単位で」
アイオワも大艦だが、この世界では分裂の影響で戦艦が増産された模様であり、アイオワ級が10隻単位で確認されている。駆逐艦が史実ほど作られず、その分が戦艦に回されたのか、アイオワは日本連邦からしたら『強めの雑兵』扱いになりつつあった。それでいて、ノースカロライナ、サウスダコタもいるので、空母は少なめと目されている。
「黒江くん、これが敵の陣容だが、敵はドイツ艦を先頭に、米軍系の艦や鹵獲したアルザスを持ち出しておる。米系の軍艦は友軍と挟み撃ちにしたことで多くを落伍させている」
「参謀長、友軍の被害は」
「旧式ではウォースパイトのみが健在、多くは何かかしらの損害を被っとる。新型はピンピンしている」
クイーン・エリザベスU級は当然ながら、戦闘能力は健在である。しかし、ライオン級以前の艦は多くが何かかしらの損害を被っている。イタリア半島を背に、お互いに海戦に入って数時間は有に経っていたが、ブリタニア艦隊は流れ弾も含め、かなり被弾しており、ライオンも二番砲塔が被弾し、使用不能であるなど、ズタボロである。しかし、旧式艦のみしか沈没艦がないという意地を見せつけ、ブリタニア海軍、未だ健在のアピールにはなっている。イギリス海軍の実働艦艇数が大きく目減りしていた21世紀からすれば、大英帝国の体裁を保っていた頃の威容は夢物語だか、イギリスの自尊心を大いに満たしている。特にヴァンガードなどというリサイクル戦艦ではない『第一線級の性能がある新鋭戦艦』はイギリスを湧きさせた。特にライオン級やクイーン・エリザベスUはブリタニア独自の艦容であり、報道でも多く扱われている。基本ベースはキングジョージXながら、そこから発達した艦容であるためもあり、イギリスでも注目を浴びている。特に『コンカラー』という予想名が出されていたクイーン・エリザベスU級は艦首形状などに新基軸が見られるため、保守的なイギリス系海軍にしてはかなりの冒険をしている。
「日本の報道、見た?」
「ブリタニアの連中が憤慨していたが、日本やイギリスにとっては我々の戦術は教本の中のものだったり、映画の中のものだからな」
今はお互いに18000mまで接近して撃ち合っており、第二次世界大戦型戦艦の戦闘距離としては近めである。アメリカ式の戦艦、特にアイオワ級戦艦は大和、それを超える規模の戦艦がいる場では打たれ弱さを露呈し、司令部が撃ち抜かれて機能が麻痺したところに対艦ミサイルが命中した不幸な艦もいる。
「モンタナ級の4番艦の砲撃、大和に命中も、弾きました!」
「よーし。近代化の効果は表れている。だが、モンタナ級はアイオワより格上だ。侮るなよ」
モンタナは完成時の大和に匹敵する装甲厚を持つため、扶桑も一目置いている。何よりも、『紀伊ショック』の張本人がこのモンタナ級だからだ。紀伊をワークホース代わりする構想が潰えた張本人がモンタナであり、扶桑がヤマトショックを与えたように、モンタナも扶桑世論を戦艦の建艦に傾かせた。信濃以降の戦艦は紀伊の爆沈が呉で起こったからこそ具現化したのである。お互いにライバルであると言えるが、扶桑はM動乱以降はドイツ帝国海軍が平行世界で生み出した大戦艦を仮想敵にしており、モンタナ級のみが米軍系の艦艇で好敵手と見なされている。航空兵器の介在が殆ど無い戦というのも『久しぶり』であり、戦艦の主砲の存在意義のいい証明と言えた。また、ミサイルが決定打に成りえないほど頑丈な作りの船にミサイルを撃ちまくるのも不経済であるので、砲弾はコストパフォマンス云々以前に重宝されている。奇しくも、ミサイルが砲弾を海の戦からほぼ駆逐した軍事史からすれば、皮肉な光景である。また、『艦隊決戦はコストパフォマンスが悪い』という風評も、ある一定の国力の国々の海軍であれば有効な選択肢になるという証明の前には叩きのめされた。また、視覚的にわかりやすい軍事力の激突であり、核戦争よりはよほど地球にやさしい。21世紀では想像しかできないが、兵器というのは戦争の場では消耗品である。搭乗員や乗員を大事にしても、兵器は国力によるが、一応は換えが効く。小沢治三郎がマリアナ沖海戦の指揮を責められるのは、搭乗員のことを考えずに机上の理論で作戦を練ったが故だ。理論家であるが、指揮能力が伴わないという評さえあるが、扶桑では能力がやや実務寄りであり、航空分野の大家である揺るぎない評価を受けている。そのため、日本の彼が持っていた傲慢さは無く、むしろ山本五十六から『東郷元帥の再来は小沢くんだ』と賞賛されている。しかし、クーデターが起これば、その辞任は確実視されていたため、山口多聞が後任に推挙されている。日本側も山口多聞であれば文句は言わない(空母機動部隊出身であるため)からだ。また、空母機動部隊は角田覚治に任せるのが有力であり、山口多聞体制への布石はできつつある。
「他の戦場はどうなっておるか」
「ヒスパニアが陸と空の主戦場になりつつあります。既に空軍と陸軍の主力はヒスパニアに集結しつつあります」
「敵機動兵器の展開はどうか」
「ハッ、モビルスーツ、機械獣、百鬼メカ、ガイアにいるハニワ幻人、円盤獣が確認されております」
「なりふり構わぬ呉越同舟か」
共通の敵がいるため、彼らも呉越同舟で手を組んでいるらしく、所属がてんでバラバラである。無駄に数が多いため、地球連邦軍も通常部隊では手に負えないため、主力はスーパーロボットである。
――ヒスパニア――
主戦場となりつつあるヒスパニア。フランコ政権の崩壊で軍隊が機能不全に陥ったため、結果として、一部のGウィッチやスーパーロボットなどが主力の転戦まで戦線を張ることになった。その中にはロボットガールズも含まれており、英霊も含めたその強さは当時のウィッチ世界の軍隊の下手な軍団規模の部隊を超えるものであった。
「ハイドロブレイザー・ギガバースト!!」
ガイちゃん・ザ・グレートがハイドロブレイザーを放ち、敵を屠る。ヒスパニアはヒスパニア軍がフランコ政権の崩壊に伴う機能不全を起こしており、部隊がほぼ動けない(指揮系統が混乱している)ため、ブリタニアと扶桑軍が事実上の主力となるが、機甲師団の転戦には時間がかかるため、実質的には特機頼りであった。また、ゲッター軍団の第一陣である、初代の増産改修機が出始めていたのもこの頃だが、戦闘力は落ちるのは仕方がなかった。この頃には既にドラゴンであっても、型落ちという認識があったが、初代を改修することで、シャインスパークがない初期のGに並ぶ程度の能力は得た。そのため、初代ゲッターロボのミリタリーモデルということで、『ゲッターロボM』と呼ばれるようになったという。(名付け親は號)。なお、当時は平行世界のドラゴンを基にしてのドラゴン量産計画も進んでいた。鹵獲機はカラーリングはオリジナルとは異なり簡略化されている他、炉心性能は多少落ちる。ただし、シャインスパークもあるため、攻撃面では同等だ。それを基に、オリジナルのGの設計を使い、性能を調整したモノが『ゲッターロボG/量産型』だ。(オリジナルのドラゴンそのものはその後、長い年月で真ドラゴン↓聖ドラゴンを経て、ゲッターエンペラーとなるのである)この量産型ドラゴンはスペックはオリジナルの最終時と同等となったが、パワーがある分、パイロットの確保難度が上がったという欠点もある。なお、教習用は胸に教習機であることを示す黄色の縦帯が入っているが、実戦仕様はオリジナルと同様のカラーリングで、体形がマッシブ気味になっており、ゲッター1はそれが特に顕著であった。
「何だあれは!初代ゲッターだと!?」
名もない百鬼帝国の鬼やベガ兵はその姿に怯える。初代ゲッターロボが徒党を組んで現れたのだ。しかもパワーはドラゴンレベルのが。また、パイロット達は隼人の教育で『目だ!鼻だ!次に耳!』を地でいくバイオレンスにしつけられたため、どっちが鬼かわからぬ戦いを見せる。
「何だこいつら、どっちが鬼だ!?」
トマホークで円盤獣の首は跳ねる、ビームでハニワ幻人を焼き殺すなど、百鬼帝国の鬼が怯えるレベルのバイオレンスアクションを見せる。號たちがあくまで、正統派ヒーローロボの系譜のアクションであるのに対して、彼らはルール無用である。その模様を映すモニターを見、一人、ネイサー基地で微笑んでいる神隼人。当時は20代前半になっていたが、気苦労も多いのか、雰囲気は30代前半を思わせる。
「これがお前の選択か?ハヤト」
「リョウ、田舎で空手道場の主に収まってる男では無いよ、お前はな」
竜馬はこの頃、新早乙女研究所がゲッタードラゴンのメルトダウン事故で封鎖され、ゲッターパイロットを辞していたが、ゲッター線の導きにより、隼人に呼び寄せられていた。また、地下のドラゴンの意思が竜馬に前史の記憶を呼び覚ましたためか、二人はこの時点の年齢に見合わぬ落ち着きを身につけていた。
「お前も見たのか?」
「ああ……。ベンケイは言っていた。Gは真ドラゴンに生まれ変わると。ベンケイは戻ってくる、必ずな」
「ゲッターは何のために進化するんだ」
「ベンケイが地の底で眠りにつく寸前、俺に言った。『生命は純粋になるほど、宇宙を目指していく』と。ゲッターは宇宙を制覇するために進化する。見ただろう。聖ドラゴン、ゲッターアーク、エンペラーを」
「まさかお前、別世界の俺の倅が乗ってた機体を?」
「博士だ。真ゲッターが完成して数ヶ月後、アークも完成させていた」
隼人は竜馬をネイサー基地の第7格納庫に案内する。そこに鎮座していた機体こそ、早乙女博士最後の遺産『ゲッターロボアーク』である。
「よく短期間で真ゲッターと同程度のポテンシャルを持つゲッターを作れたな?」
「おそらく、博士は自分の最後の役目として、アークを予てから作っていたんだろう。真ゲッターロボの兄弟機としてな」
「で、エンペラーは何のために生まれるんだ」
「エンペラーは宇宙の終焉を食い止めるために生まれるんだ、リョウ」
「宇宙の終焉…だと?」
「前史でイルミダスが辿り着いていたが、この宇宙にも終りが来る。時天空の打倒も目的の一つだが、宇宙空間というのは実の所、ひどく不安定とも言える点がある」
「不安定?」
「21世紀から言われ続けてるが、宇宙はビッグバンの反対の現象をどこかで起こして火の玉時代に逆戻りしていく説、無限に広がり続けて物質が全て引き裂かれていく最期、時間的死を迎えるなどと言われている。」
「高校ン時からそういうの苦手でよ…」
「前史のイルミダスは宇宙がビックリップ、つまり宇宙が拡散する現象を支配領域のどこかで観測した。だから、焦ってゲッターの技術を持つ地球に攻め込んだ」
「ビジョンで見た、前触れもなく、地球型惑星や恒星が裂けるように死んでいくのがそうか?」
「そうだ。その空域の宇宙が裂けるんだ。恒星であろうと消えるしかない」
宇宙が裂ける現象は宇宙の終焉の前触れともされ、次元間技術を得ていたアケーリアスはその存在を知っていた。そのため、多元宇宙論を実証し、いざとなれば、別の宇宙に退避する目的で宇宙技術を発達させていた。そして、時空管理局との接触は地球連邦軍に多元宇宙を実証した。
「昔、人間が住んでた宇宙は別の宇宙の中に生きる青虫の中のインナースペースだった、なんて漫画もあったが、そんな宇宙も存在し得る」
次元世界は広い。中には突然変異現象で、その身に小さな宇宙を宿す生命もいるかもしれない。また、テレサのように反物質世界の住人もいたのだから、次元世界は宇宙に代わる新たな世界単位といえる。
「んじゃ、あいつらの世界も遠い未来には?」
「別の終焉があるかもしれん」」
宇宙もいずれは死ぬ。それから逃れるため、アケーリアスは波動文明を後世に残した。隼人は『ゲッターロボはマジンガーと共に、終焉を阻止するために進化するロボではないか?』とする仮説を立て、そのためにエンペラーは生まれし存在であると推測する。
「別の世界での宇宙征服はどうなんだ?」
「エンペラーは宇宙の終焉を阻止しようとした。しかし、何かの要因で前史では達成できなかったと考えられる。そして、今、ドラゴンは驚異的な速さで真ドラゴンになろうとしている。これもエンペラーの意志だ」
「エンペラーは俺達に何をさせようってんだ」
「甲児が言ってただろう?神をも超え、悪魔を倒すことだと。宇宙の終焉が神の意志であるのなら、エンペラーはそれに抗う。そのために俺たちはゲッターにさらなる進化をさせなくてはならん」
「宇宙の摂理が終わりを選ぶなら、それも超えろと?」
「そうだ。他の世界では20年以上、俺が壮年から老年に差し掛かるまで時間がかかった進化をこの世界だと、数年もしないで成し遂げている。見ろ。地下を調査したが、急激なゲッター核融合反応が起こっていて、ドラゴンが眠る繭が成熟し始めている」
「ベンケイは戻ってくるのか?」
「おそらく。それが武蔵と博士の、いや、エンペラーの意思だろうな。今まで見えなかった中から見えるんだよ、ドラゴンの影が」
「何!?」
「……これだ。明らかに進化していると分かる影だろう」
「よく撮影できたな」
「旧ゲッター2の限界点ギリギリに沈下してるから、一苦労だがな」
写真では、繭の中で溶けきっていた物が形を取りつつあり、それがドラゴンの影になりつつある事がはっきりと写っている。
「まさか、もう」
「そうだ。真ドラゴンになりつつあるんだ」
繭が成熟しつつあるのが分かるが、ゲッター2の機器に影響を与えるほど強いゲッターエネルギーが発しられており、繭を割れるほどではないのが分かる。しかし、中のドラゴンが中で真ゲッターロボすら凌駕するゲッターロボになりつつあるのは確かである。
「馬鹿な、前より早いぞ」
「おそらく、ブライが平行世界から奪取した巨大なウザーラもどきのドラゴンに反応しているんだろう」
「ああ、あしゅら男爵が手を回して手に入れた『ウザーラもどき』か。それに反応しているのか?」
「あれもゲッタードラゴンの一つの可能性だ。だが、炉心構造がデリケートだろうということは分かる」
「何故だ」
「過負荷をかければ、シャインスパークが使えなくなるからだ。ビジョンで見えたはずだ。あの真ドラゴンはシャインスパークを肝心な時に撃てなくなっていた」
「大技使ったからだろ?」
「数千の炉心のどれか一つでも機能不全が起これば、ゲッターシャインもままならなくなる。特にあれだけの巨体だ。量産型の炉心では負荷に耐えられん」
「つまりオリジナルのドラゴンの進化した個体は負荷が軽いのか?」
「いくら千体を超えるGの炉心で動いても、キロ単位の巨体を動かすには相当な負担になるだろうしな」
巨大真ドラゴンはゲッターチェンジも変形の範疇に収まる規模であり、分離機能はない。オリジナルの進化した個体は余剰出力がサイズの関係で凄まじく、それも戦闘力差になっている。それは前史で『真ストナーサンシャイン』を撃てていたことで判明している。隼人はゲッタードラゴンが真ゲッタードラゴンとして復活する日は近いと言うことを予期していた。ゲッタードラゴンはエンペラーの母体となるゲッターロボであるため、進化も急激に起こし得る。その事を隼人は悟っていた。竜は天に登り、皇帝になる。中国の伝説にありそうな下りだが、それがゲッターロボの究極点『ゲッターエンペラー』の起源である。そして、量産型ゲッターロボの開発を推し進めている隼人はその過程でイルミダスなどの異星人をゲッターの大義の犠牲にする覚悟もあった。
「隼人、これからゲッターは俺たちに何をさせようってんだ?」
「宇宙を神々の意思から守護するためだ。ウラノスやカオスに批判的な神々も多いからな。イルミダスは戦う意思をむしり取る、それでは宇宙の破滅を遅らせられても回避できん。生きとし生ける物全てが世界の終焉に抗う覚悟を決められるくらいのエネルギーが必要だから活性を押さえ込むのは逆効果なんだ」
「で、俺を呼んだのは、そんな講釈を垂れるためか?」
「なら、電話で済ます。お前を呼んだのは、こいつが完成したと敷島博士から連絡が入ったからだ」
「何、完成したのか」
「変形機構は省いたが、お前の好みに合わせてある。パワーはドラゴンと同程度。お前用に俺が調整しておいた」
「これで甲児達の加勢にいけってか。用意のいい奴だぜ」
ゲッターロボの別個体をゲッターロボGや真ゲッターロボの電装品や装甲などで改修し、変形機構を犠牲に、ポテンシャルをドラゴンと同レベルに上げた改造機。ブラックゲッターだ。竜馬は着の身着の野伏姿のまま、久しぶりにゲッターに乗り込んで隼人のナビで次元転移ゲートへ向かっていった。
――そんな竜馬の前線復帰はまだ前線には伝わってはいないものの、ゲッター軍団に加え、量産型グレート軍団までも加わり、敵側がパニックであった。地球連邦軍はとうとうスーパーロボットまで量産に入った。その凶報は各地のジオン残党も震撼させるほどだった。量産型グレートはスクランブルダッシュのない初期仕様が使われていたものの、ハイザックやマラサイの武器では傷一つつかないため、士気は瞬く間に崩壊していった。円盤獣や機械獣がすぐにカバーに入り、ティターンズMSの撤退を支援する。その様子を目の当たりにしたヨハンナ・ウィーゼは絶句する。
「ヨハンナ、どうだい、これが彼らの切り札ってわけ」
「伯爵、こ、これは」
「転属早々にショッキングだろうけど、これがスーパーロボットの破壊力ってわけ。あれ一機一機で海軍空母戦闘群一個分の戦力だそうだよ」
「嘘!?」
「ボクもまだ詳しく知らないけど、ラル元隊長に聞いてくれ。詳しいよ」
「あれだけ私達が苦戦した装甲を一瞬で…」
ニーインパルスキックでハイザックが吹き飛び、ブレストバーンで溶解していくマラサイ。量産型とはいえ、腐っても偉大な勇者と渾名され、『マジンガーを超えるマジンガー』とされたグレート。Z以上の破壊力を奮う。
「あのパンチ一発が戦艦の全速体当たりくらいのエネルギーなんだとか」
「正に化物ね……」
「いや、もっとすごい上位機種がいるから。ほらあそこの竜巻。そいつが起こしたんだ」
「あのケープを羽織ってるようなロボットは?」
「グレートマジンガーの後継機『マジンエンペラーG』さ」
マジンエンペラーG。グレートマジンガーの後継機にして、俗にいう『マジンカイザーと並びだつグレート』という位置づけで開発された最新鋭のマジンガーである。グレートマジンカイザーがあくまで『カイザー化したグレート』なのに対し、こちらはマジンカイザーの兄弟機の体裁が強い。
『光子力を炎に変える!!』
エンペラーのV字放熱板がせり出し、面積を広げると、高度で数千mほど離れているはずの二人が暑いと思うほどの高熱を発する。それでいて、その高熱は制御されているものなので、炸裂しない限りは周囲に強い高熱を発しない。
『グレートブラスタァァ!』
V時射線のブラスターが放射され、エンペラーの周囲に展開していた円盤獣、機械獣は為す術もなく溶けていく。その圧倒的な光景はヨハンナに強烈な衝撃を与えた。
「伯爵、これがスーパーロボット……なのね」
「そう。その中でも五本の指に間違い無しに入る魔神。魔神皇帝。その一体さ!」
魔神皇帝。全てのマジンガーの中でも『神』(ゴッド)に次ぐ能力を誇る上位カテゴリ。ZEROが倒すことに固執した程のネームバリュー。マジンエンペラーGはその勇姿を二人に誇示するかのように佇む。
『何だ、君か。ヴァルトルートちゃん』
「できれば、伯爵と呼んでもらいたいですよ、鉄也さん」
『君は別に貴族ではないだろう』
『いや、本当になるかも…。戦功で』
実際に黒江たちが叙爵されたので、クルピンスキーもその線が濃厚だ。当時、ドイツ連邦共和国の要請でかなり皇室親衛隊にガサ入れが入り、貴族の数が減少していたカールスラントは新貴族を求めていた。その過程でバルクホルン家もハルトマン家も貴族に叙任されていたため、彼女もその候補だった。それがサーシャの追放の一助になってしまったのも事実だ。
『それに名前が有るのに肩書きでしか呼ばないのは仕事関係でも無い限り失礼ってもんだ』
「でも、ボクは一介の中尉ですよ」
『いや、君の階級だが、アレクサンドラ大尉の懲罰措置が取り消されたようで、大尉に戻っているようだよ』
「本当?」
『本当だ。今、ケイちゃんに確認させた。大尉への懲罰は相当に重いそうだ。それに、連邦のシナプス少将がドイツ側に、ナチの無い世界でナチの事を言っても意味が無い。鉄血宰相の国体が維持された世界に、ナチが成立した世界の理屈を持ち出して批判しても的外れである、と言って、ドイツ側の介入を押さえつけたようだしな。敵として来れば、別だが』
ナチスの成立した世界で起こり得ることは、ドイツ第二帝政が瓦解した事が前提条件である。それが起こっていない世界であるが、帝政に郷愁があまりないドイツ人は領邦連邦に留まった。日本連邦の名の下に介入をあちらこちらで起こした日本と好対照だが、日本も最後の幕府が徳川でなく、織田であり、外征に積極的で、傭兵で外貨を稼いだ歴史に困惑した。また、南洋島は徳川と豊臣を中心に開拓した『固有の領土』であるという歴史に困惑する日本野党。それが2012年からの野党の失態の一つであり、扶桑陸軍がが外征能力を欲する理由なのだ。
『日本に比べればマシさ、君らの国は。日本の野党はトンチンカンな事を言って、扶桑を呆れさせてるし、兵器を変に自衛隊式に統一したがるお役所仕事さ』
お役所仕事。鉄也も呆れるように、三八式歩兵銃の時代の兵士にいきなり89式小銃を持たせても豚に真珠だ。チトやチリが大きすぎると不評を囲っていたところに74式や10式戦車を持ち出された機甲科も同様だ。機甲科も茫然自失であったが、マウス重戦車の装甲も貫通可能な105ミリ砲弾と120ミリ砲は当時からすれば、超兵器だ。これは自衛隊がパットン戦車を警戒して送り込んだ戦力であったが、10式や90式以外の戦車は基本的に待ち伏せで真価を見せる車両である。最も、平均レベルが第二次世界大戦中期の43年の水準であるので、74式でお釣りが返ってくる。チャレンジャー戦車やチーフテン戦車などは第二次世界大戦の戦車相手では、一両で四両を相手取れるともされる。当時は傾斜、垂直を問わず、100ミリの装甲さえあれば無敵を気取れる時代なので、それを超える装甲厚は想定外である。21世紀では無いよりはいいとされる74式の『水平弾道に対する厚さが上部装甲板で189mm相当』の避弾経始式装甲は充分な厚さだ。21世紀では旧式の避弾経始装甲も、第二次世界大戦では最新技術なのだ。
『お、そうだ。君たちのこの時代では、もうジェットは飛んでるか?』
「プロトタイプが飛んでる。おっと、紹介します。ボクの二個前の所属部隊の同僚だったヨハンナ・ウィーゼ大尉。異名はクバンの獅子」
『こちらの記録にある、ヨハネス・ウィーゼ少佐の同位体か』
「そっちでもいたんですか」
『ああ。ただ、マルセイユはハルトマンが台頭する頃には戦死していたがね』
「同位体の運命、か。ボクなんて大佐の同位体に巻き込まれて早期退役に追い込まれてるしねぇ」
『綾ちゃんの同位体の空将補みたいに、釣りで死ぬよりはいいだろう』
黒江が釣りを控え、その代わりにオートバイに傾倒しだしたのは、同位体の運命が影響していることはこれで確実となった。また、クルピンスキーもルーデルとの腐れ縁が今後も続くことに諦めている。ハルトマンは歯に衣着せぬ言動で戦後のドイツ空軍で同位体が持て余されていた事を知ると、げんなりしつつも、自制するようになっている。また、圭子に至っては同位体は戦闘でなく、事故で死んだことを前史の内に知り、そのこともキャラを『二丁拳銃』で通すことを決意した理由らしい。
『ケイちゃんは大人しめのキャラだったが、今では二丁拳銃だからな。振り切れ過ぎだ』
「事故で同位体が死に、その運命に自分も引っ張られかけたと分かれば、ねぇ」
圭子は元々の母性を持つ性格をほとんどかなぐり捨て、今回の転生では『戦闘狂』『銃キチガイ』、『扶桑陸軍の狂気』、『血塗れの処刑人』、『二丁拳銃』と振り切れた異名で知られる。また、言動も本来の温厚な口調は猫かぶりとされ、蓋を開ければ粗暴な口調の荒くれ者というのが圭子の今回の転生での姿だ。覚醒前の武子がその粗暴さに恐怖を感じると同時に、『貴方は何を求めてるの?』と問いかけ、『力、さ。神よりゃよほど役に立つ』と答えるほどに表現もストレートになっている。その粗暴と受け取られる口調に裏付けられた戦い方。また、自前でベレッタ系列の拳銃をこさえるなど、将校としてのステータスをウィッチで最初に全て満たした一人とされる。
「こっちじゃ、僕達よりも上の代の連中の間でレイブンズの伝説は轟いてたよ。僕達が入る頃からは御伽扱いだったけど」
「ええ。レイブンズが冷遇されてるって事はこっちの上の代でかなり問題になっていたわよね」
『扶桑で今、それがクーデターって話になってるそうだ。何分、海軍はクロウズの時代が終わる頃からエースというのを誇らない風潮を作ろうとしたらしくてな』
扶桑のクーデターは勃発が確実視されており、混乱を最小限に抑える、日本からの介入を如何にして抑えるかを命題に各方面が動いている。鉄也の言う通り、扶桑海軍はクロウズが『高齢化』する時代を迎えた後、部内での驕りを戒める意図のもと、部内で撃墜王と誇るのを自粛せよという通達を出した。しかし、ミーナが統合戦闘航空団思想を打ち出したことで海軍は対外的面子もあり、欧州派遣組のみは自己申告スコアを公認するという措置を取った。この措置は場当たり的なものであったが、既にレイブンズを輩出したことで名を馳せた陸軍飛行戦隊と違い、公に撃墜王がクロウズくらいしかいなかった当時の海軍の沽券に関わるための措置である。無論、下原、孝美、菅野らの台頭もあったが、そのすぐ上の代が押さえつけようとした。しかし、もはや統合戦闘航空団の時代を迎えており、結果論で言うなら、時代の犠牲にされた代が志賀の世代なのだ。志賀は『頭では分かっていても、気持ちの整理がつかない』故に黒江と結果的に対立したが、海軍の美風が陸軍に侵食されることを恐れただけの一海軍軍人だった。
「対外的にあれだけ宣伝しといて、部内ではダメなのかい?」
『ある世代が反発してるのさ。ちょうど19歳から17くらいの高年齢層が』
当時に次期トップエースと目されていたウィッチやその予備軍とされた手練の少なからずは反G派であった。これは自分達に約束されたはずの地位を渡さないことへの反発もあったが、レイブンズの強さが本物である事が示され、黒江に至っては未来兵器を平然と乗りこなすことへの恐怖もあった。未来兵器はコックピットのレイアウトに多少の変化はあるが、この時代と大して変わりはしない。と、いうより、基本がこの時代で確立されていたのだ。黒江もそれを理解し、戦車、MS、戦闘機、VF、特機に至るまでの免許を持つ。思い込みで萎縮した面も大きく、シャーリーも乗ってみたら基本が変わっていないことに驚きつつ、VFの免許を取得したという。また、特機に至っては『地形を変え、天変地異を起こせる』とは考えていなかったため、その威力への嫉妬もあった。巣も一撃で破壊し得るということはウィッチを駆り出す必要が無くなるのではという危惧も大きい。しかし、スーパーロボットが強すぎるだけで、怪異も進化速度は遅くなってはいたが、巣の中核を担う怪異はストライカーに異常を起こさせ、更にデュアルコア化したりしている。そのため、レイブンズは次世代機を非合法に入手していたのだ。
「あなた方が暴れると、私達の存在意義は見いだせるの?」
『そのことなら、未来にいる綾ちゃんの養子が来てるから、安心しろ。安易に俺達に頼るなという論調は生き続けるしな」
「つまり、ウィッチはこれからも生き続けるということさ。軍隊と猟友会で分かれるにしろ」
この頃に台頭していたMATは猟友会の延長線に位置する組織と認識されており、怪異が害獣扱いにされ、戦争行為と認識されなくなる事への恐怖はどこの国でもあった。だが、ウィッチ兵科の特殊性を考えれば、ある意味では恒常的な維持に必然性がそれほど見いだせない兵科である。怪異は史実の戦争が起きる段階で都合の良いように現れたが、今後は人同士の殺し合いが頻繁に起きるであろうことをティターンズが撒いた『種』が証明しており、怪異という共通の敵が減れば、必然的にあるべき姿に戻ることは二代目レイブンズの存在が示している。
『そうだ。だが、俺達のようなロボット兵器が造れる様になるには、普通にいくと2000年はかかる。宇宙のオーバーテクノロジーのブーストを何回かかけてでも、22世紀後半までかかったからな』
宇宙のオーバーテクノロジーが度々もたらされた世界でも、人型兵器が戦場の主役に君臨するには、22世紀後半まで待つ(オーバーテクノロジーを使用したものは純粋な地球産とは言えないため)必要があったように、ウィッチ世界がそこに辿り着くには1000年単位の時間を必要とするだろう。機械工学、電子工学などがある一定のレベルに達しなければならないからだ。ウィッチが戦場の主役であったこの世界では基礎技術が遅れ気味なので、いつまでかかるかは未知数だ。
『人間が、いや、生きとし生ける物が物理法則に囚われた生き物で有る限り戦いと縁は切れない、弱肉強食、力もて生きる糧を奪い続けなければならない、それが生きる事の原罪なのさ…。ん、ちょっと下がってろ、雷雲を呼ぶ!』
マジンエンペラーGが雷雲を呼び、その中心の雷を右腕に集束させる。すると、雷のエネルギーが凝縮された光が奔り、雷槌が走る音が響く。それが開放され、一つの閃光となる。
『サンダーボルトブレーカー!』
サンダーブレークの発展型武装だが、その威力は桁違いで、空間ごと爆破することも可能である。また、当たれば電流だけで相手の電子部品を焼き切れる。機械でありながら、黒江のライトニングテリオス(アーク放電のライトニングボルト)と並ぶ破壊力を叩き出しているあたり、スーパーロボットの面目躍如である。空中で多くの円盤や円盤獣、百鬼メカを屠るマジンエンペラーG。アースフリート(地球連邦軍・太陽系連合艦隊)の希望のシンボルであり、ある意味では、アケーリアスの後継者である事を示すのが、人型兵器の実用化であるのだろう。
『これが魔神皇帝の力だ!』
「魔神の皇帝……」
「王の中の王って触れ込みらしいよ、魔神皇帝は」
『戦局を動かす鍵になるのは確かさ。それと、あれを見てみろ」
「?」
ヨハンナがエンペラーの指さした方向に振り向くと、黒江の直弟子の中では一番の新参者である調がF-15J越しに、石破天驚拳を放とうとするのが見えた。この当時のストライカーからすれば重装備だが、自由に駆動する脚部があり、甲冑で包み込む分、物理的防御力もある。黒江と出会った際のフィードバックの際に撃てるようになっており、それが帰還直後の訓練で響や翼を驚かせた理由だ。また、黒江も、成り代わりの際に切歌を黙らせるために一回撃った事があり、これで響に絡まれる理由を自分で作ってしまったりする。黒江は前史でドモンや圭子を通し、流派東方不敗の心得を得ており、その技能を維持して転生した状態で転移していたため、我流の中国武術を使う響相手に素で優位であったのだ。気が素で可視化するほど練れるため、纏っていたシンフォギアのスペックに左右されない格闘能力を持つ。黒江との魂レベルの感応を起こした調は、帰還直後の時点でも戦闘能力は以前の比ではなくなっており、戸隠流忍法や聖闘士としての修行を経たこの時点では安定戦闘力は相当なものとなっていた。
「あの子は?」
「黒江閣下が最近連れてきた若い子だよ。まだ士官候補生なんだけどね。統括官の弟子、いや、娘みたいなものかな」
実際は魂の姉妹(ソウルシスター)に近い関係であるが、年齢が実際には祖父母以上に離れているため、クルピンスキーはそう表現した。(調は2000年代、黒江は1920年代の生まれであり、曾祖父母と言っていいほどの差)
「僕たちもいいとこ見せないといけないよ、ヨハンナ。地球連邦軍は異名持ちのエースを何人も送り込んでるし、統括官は子孫に命じて、未来から次世代機も持ち込ませてるんだ。年長者として気張らないと」
「それは反則ね…。だけど、こんな相手には反則手段を講じないといけないのかしら」
『そういうこった!』」
「わっ!?お、斧!?」
それはゲッタートマホークである。ややあって、矢のように急降下しつつその斧を投げた張本人が地響きを響かせながら着地した。それは初代ゲッターロボによく似た姿だが、全身が黒に彩られ、ボロボロのマントをはためさせ、腕にはナックルスパイクを持つ『荒くれ者』な姿のスーパーロボットであった。
「黒いゲッターロボ……?」
『完成したのか、ブラックゲッター!ということはパイロットは君か、リョウ君!』
『よう。久しぶりだな。隼人の野郎が宇宙のゲートを指定しやがってな。そのまま降りてきた』
竜馬はブラックゲッターを瞬時に動かし、ブランクがあるのに関わらず、円盤獣をトマホークで一刀両断し、もう片腕の『ゲッターマグナム』で円盤を撃墜する。
『さすが、初代ゲッターチームのリーダーは伊達じゃないな。カンは鈍ってないようだな』
『ハッ、あたりめーよ』
なんだかんだで血が騒ぐのか、竜馬はブラックゲッターを縦横無尽に操り、ゲッターウイングで機体を包み、ゲッタービームを拡散させ、螺旋状に撃つことで強行突破戦術を行う。ゲッターロボとしてはかなり荒いが、機体強度が上がっている分、戦法も荒くなる。また、ナックルスパイクとゲッターレザーで相手をしこたま殴り斬り裂くと言った肉弾戦も行い、竜馬個人の殺人空手が反映されている。また、ゲッターマグナムでMSとも撃ち合い、粘着榴弾で相手のチタン合金セラミック複合材の装甲を破壊したり、フレシェット徹甲弾で円盤獣や機械獣の頭部を柘榴のように崩す。流石に百戦錬磨なだけあり、40m級のゲッターロボがMS張りにしなやかに動く。
『敷島のジジィめ!なんつーもんをっ!フレシェットは流れ弾がエレェ事になんじゃねぇか!!』
『まーた敷島博士か』
鉄也もこのコメントだ。敷島博士、最近は自分を改造したという危ない噂でもちきりのマッドサイエンティストの良い見本。黒江たちも『あの爺さん、スゲエの作るんだけど、ネジが飛んでやがる』と呆れつつも尊敬する兵器開発のスペシャリスト。早乙女を青年時から知る貴重な人間で、早乙女博士の弟子であり、翔の実父『橘博士』に目をかけていたなど、意外な一面もある。兵器開発のスペシャリストなだけあり、真田志郎をして『次元世界広しと言えど、彼の右に出る兵器開発のスペシャリストはいない』と言わしめる。彼の先祖は日本軍で水爆やコバルト爆弾の研究をしていた技師であるとの事で、筋金入りだ。黒江たちが未来ストライカー用の武器を依頼しているらしく、後で大道剴が取りに行き、黒江たちに支給したという。
「あれもゲッターロボの一種なんですか?」
『本来は合体変形が売りだが、一番汎用性がある飛行能力がある形態に固定して、基礎戦闘能力を固定させる案も実行に移されていてな。その試作機の一つだ』
ゲッターロボは初代で38m、Gで50m、真で60mと大型化しており、パイロットが三人必要であり、自動操縦ではパワーが落ちる欠点があり、それを改善するため、一人乗りに改造されたのがブラックゲッターだ。
「ロボットが武器を使うのは変な感じね」
「まあ、人が動かす兵器だし、人型だから、固定武装に頼らないですむんだよ、ヨハンナ」
クルピンスキーの言う通り、マジンガーなどは固定武装が充実しているが、MSは基本的に手持ち武装のほうが多い。連邦系は頭部バルカンとビーム・サーベル以外は手持ち武装が多い。ティターンズもティターンズ結成後のMSの他に、戦間期型の正規軍の旧式機をも使っており、90mmブルパップ・マシンガンや旧式のビームガンを撃つジム・コマンドやジム改の姿まであった。それに応戦するジェガン部隊。ジェガンは型落ち扱いされだしてしばらく経っているはずのデザリアム戦役直前の時点でもまだ現役であった。しかし、ティターンズの大半の機体よりは新式である。ブラックゲッターの側面援護に打って出たらしい。型落ち扱いされて久しいジェガンだが、ティターンズの持つ更に旧式機よりは高性能であり、一年戦争時は恐れられたジム・コマンドのビームガンをシールドで防ぎ切り、ショートバレルのビームライフルで撃ち返し、シールドごとぶち抜く。当時の残置されているジェガンは皆がR型であり、指揮官は更に改造されたモデルに乗っている。スタークジェガンの素体もM型へ変更されて久しいため、ジェガンはその戦歴の末期に差し掛かる機体と言っていい。スペックは設計の限界から、小型機にとても及ぶものでは無いが、標準サイズである故の堅牢さや保守のしやすさから、ジャベリン/ガンブラスター/ジェイブスの三機種よりまだ多い。特に、この頃はガンブラスターと同等以上のスペックを持つジェイブスの製造コストの高等の問題が持ち上がった頃かつ、大統領選でユング・フロイトが大統領になるか否かの頃。ジェイブスの配備は停滞しており、それも後に、フリーダムと名付けられる改修機が生み出される要因となる。ダイ・アナザー・デイでは自衛隊に『標準的やられ役のジェガンさん』と揶揄されていたが、ロンド・ベル所属機、第三艦隊所属機などの複数の塗装のジェガンが確認され、意外な使役馬ぶりから、ジムに代わる連邦軍のワークホースという認識を広めさせたという。また、アニメとは異なり、パイロット次第では小型機とも渡り合えることも判明し、実際に作ると、ガンダムでも無い限りは大型と小型で顕著に差が出ないというところだ。また、小型になると装甲と関係ない強度が低下しがちである事から、特務は大型機を好む傾向があり、ジェスタを作ったことがわかると、アニメと違う開発史であることに関心する声が多かったという。
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