外伝その263『イベリア半島攻防戦12』
――扶桑軍の解体(自衛隊への組み込みとリストラ)を目指す勢力の誤算は、扶桑のパイロットの練度が史実の1945年での『死ぬために飛ぶ』状況と違い、1941年の『大空の覇者』のままであった事、陸戦ウィッチの機動力と火力がSATの想定を超越していたため、自分達と違い、迅速に行動できるという点であり、扶桑の南洋島とシベリア獲得が安土時代であるなど、古くからの外地である事実であり、三軍で1000万人近い(海援隊含め)人数が在籍しているのにも関わらず、史実以上の規模の陸海空軍を維持できるという財政が日本の左翼勢力を困惑させた。更に極東ロシアが丸ごと日本の統治下(中国が抗議したが、アメリカが抑え込んだ)になるという戦争の結果が彼らを次第に追い込んだ。更に、アナーキストの生き残り、コミュニストの生き残りがわざわざ渡航してまで煽った、オラーシャ革命の頓挫、共和国であるはずのガリアが『ノブレス・オブリージュ』を前提にした部隊の設立(霧散)を目指していたり、扶桑の皇族軍人もお飾りではない(皇族からウィッチが出る事もあるため)事が判明したため、日本も否応なしに対応を迫られた。扶桑警察が大量に扶桑滞在の日本人を騒乱罪で逮捕する事態にもなったためだ――
――日本の左翼勢力と反戦運動が扶桑にもたらした弊害は大きかった。批判に晒されたウィッチの優遇の事項は連合軍全体の問題になる。フェミニスト達は逆差別と騒いだが、ウィッチは俗にいう魔女のような永続的な力ではないという事実の判明にも関わず、その後の優遇無しをゴリ押しした。その事への不安が内乱を後押ししたのは否めない。(あくまで、Gウィッチは神に愛された者か、プリキュアを含めた英傑の転生に伴う特別な存在)Gウィッチはあくまで、極少数の英雄達が生前の功績で転生して得られた『特権』を行使する存在なのだ。彼女達はそのあまりの強さ故に迫害された過去がある(誤解で左遷された例もある)。黒江がその最たる例で、嫉妬も多分に絡んでいたが、黒江本人の精神的問題も重なり、上層部が一時は志向したはずの後方配置がタブーになってしまったのがその証明だ。武子が悩んでいたのは、智子を風雲急を告げるスオムスに戦略的見地と、編隊空戦の習得の意図で送り込んだら、転生者であり、既にウィッチとしての能力値は限界まで成長しきっていたという事実に顔面蒼白になったからだ。武子はとにかく懺悔したいが、赤松が止めている。公に懺悔すれば、武子は軍を追われ、Gとそうでない者の内乱が大規模化してしまう危険性が大きかったからだ。黒江の過去の審査部でのいじめ問題がほじくり返され、元加害者たちが海援隊からも追放され、日本でセンセーショナルに報じられた結果、路頭に迷ったことの教訓である。赤松は身内で詫びることに抑えることで、問題の表面化を避けたかったのだ。既に、キングス・ユニオン軍では当時の参謀と責任者であるモントゴメリーが裁かれたからだ。
「加藤。この事は他言無用じゃ。身内だけの秘密にしろ。キングス・ユニオンを見ろ。既にいらん子中隊の功績を機密指定をモンティに具申した参謀連中は裁かれ、最前線送りじゃからな」
「え!?」
「当たり前ですよ。うちのプロトタイプになった部隊を黙殺したんだ。モンティだって、大佐に降格させるのが日本から出たほどなんですよ?人事案」
「それじゃ、ただの見せしめよ!」
「必要なのじゃ。誰かの大きなミスを上に押し付けるためには。モンティの三階級格下げが実現しなかっただけでも御の字じゃ」
「ええ。ウチの国よりはマシですよ。ロンメルだって、同位体が総統のお気に入りだったからって、一時は退役を迫られたんですからね」
ドイツ領邦連邦はこの後、悪循環に陥った上に、新京条約による軍備制限でカールスラントの兵力を大きく削ってしまう事となるので、ミーナは太平洋戦争には義勇兵として参加する事がラルから内示されている。後の世、この大幅な人員削減は『血の日曜日事件』と形容されるほど急進的だったと批判される事になる。帝室の存廃問題にも踏み込んでしまったからだろう。
「カールスラントは確か…」
「ええ。これから軍事的に衰退期に入ります。そして、数十年後には『昔の名前で出ています』的な状態に落ち込みます。オストマルクを吸収したところで、これから強引な軍縮がされますから、無意味になりましたし」
日本連邦は黒江達のメタ情報で、この事件による混乱でカールスラントが軍事的に衰退した事を他山の石とし、扶桑軍の管理は扶桑に任せつつ、外地の警備に使う事にしたのだ。自衛隊の拡張ができない以上、国家総力戦前提の有り余る兵力(陸軍だけで、21世紀の先進国の陸軍数個分を誇る)を持つ扶桑陸軍はうってつけだったからだ。元・極東ロシア地域の警備には、自衛隊は人数が足りなさすぎるからだ。軍事評論家には『現代歩兵を第二次世界大戦時代の戦場に送り込む事は、コストパフォマンスに欠けるので、やめるべきだ』という声すらあるほど、扶桑への派遣に反対論は燻っている。空軍(空自)の供出は野党が問題化させたので、老朽化したF-4から、F-35への交代がままならないという珍事まで起こっている。黒江が機材を自己調達し、F-35どころでない高性能機を揃えてしまい、野党は批判に晒されていた。何せ、VF-1とセイバーフィッシュであるのだから、当然である。それらからすれば、F-35など複葉機のようなものだからだ。
「黒江閣下も大変ですよ。空自の機材が老朽化したファントムでヒーヒー言ってたので、連邦軍に掛け合って、セイバーフィッシュとバルキリーをもらってきたんですから」
「21世紀の空自の手に余らない?」
「セイバーフィッシュや初代バルキリーであれば、それほど変わりないので大丈夫だとか」
「ボウズが教えとるし、あれらなら自衛隊でも整備できる。おかげで野党が口を閉ざしたわい」
「歴史的には閣下の行為が、日本にVFの可能性を認識させるきっかけになるそうです」
「だろうな。そうでなければ、いきなりVF-0を作れまい」
「?」
「いいか?いくらオーバーテクノロジーが齎されたと言っても、三段変形する戦闘機など、普通は作ろうとは思わんだろう。現に、米軍はデストロイドに傾倒した。この時に有用性を確認したからこそ、VF-0を作り、VF-1に至ったのだ」
結果を見るなら、この時の黒江の行為で可変戦闘機の有用性を確認した空自系の地球連邦軍がVFの量産化を推し進めたので、予定調和ではある。当時は色々と言われていたが、デストロイドはVFに総合力で劣るとされ、戦後はあまり重視されない傾向にあるが、VFはその時々に応じて高性能化されてきた。(一時はオートマチック化に傾いたが、ガトランティスが全てを変えた)その根源がこの戦いにあるというのは、地球連邦軍とGウィッチくらいしか分からないだろう。また、プリキュアの力を戦争に用いる事に批判も生じている。偉大なる『初代』、二代目の『Splash Star』の不在は連合軍も首を傾げている。最古で三代目の『プリキュア5』というのも『なんとも微妙な…』という、日本の一部マニアの落胆を招いたが、とにかく、初代とSplash Starはいない。素体になった人間の都合も多分に含まれるため、この場にいるのはプリキュア5以降のプリキュアのみだ。
「日本のマニア連中の相手は、後で宮藤にやらせます。素体になった人間の都合もあるし、そのままの転生はピーチが初ですし」
「掲示板書き込みでもするのか?」
「会見でもどうです?プリキュアとして」
「うーむ。まずは会見かのぉ」
話題がどんどん逸れる二人。それについていけない武子。なんとも言えないが、武子は堅物であったので、こうしたウィットに富んだ会話に入れないのだ。
「あの、大先輩?」
「おお、お前を忘れておった。ジョークの勉強くらいせんか」
「は、はぁ」
すっかり会話から置いてけぼりを食らった武子だが、堅物であるが、涙もろいため、軍人向きの気質では本来ないが、亡くなった長姉の代わりである以上、仕方ないのかもしれない。また、その気質故に黒江の遊び心についていけないところがあるのは転生後もある。
『人生に息抜きは必要だぞ?』
『息抜きの合間に戦ってる人生おくってる人に言われたく無いわよ』
と、黒江の遊び心に付き合わないというのもあり、黒江に『時間厳守・堅物隊長』と評されている。その一方で、カメラ小僧な一面も持つため、なのはのバイトの撮影役を引き受けたりする程度には付き合いはいい。また、黒江が簡単なデジカメを買おうとしたら、わざわざ高価なコンパクトカメラを薦めるなど、趣味の世界に入ると、オタクな面もある。また、フルーツ好きの面もあり、圭子を使いっ走りに、惑星エデン特産のフルーツを買い占めるところもある。
「お〜い、お武さん宛に惑星エデンから冷凍が来てるよ」
「なんじゃ、ハルトマンか」
「エデンの特産品よ。わざわざ頼んでおいたのよ」
「現地で食えばいいんじゃ」
「忙しいし、妹と弟達が心配でね、遠出は避けてるのよ」
「そう言えば、兄弟多いんだっけ」
「私の家は北海道の農家でね。上の姉さんが早くに亡くなったから、私が食わせるしかなくてね」
この時期、武子はまだ年少の兄弟姉妹を養うために仕送りをしており、意外に私生活で贅沢はしていない。上の姉は陸士を恩賜の成績で卒業した俊英で、赤松/若松の同期であったが、結核で夭折し、その代わりが次女の彼女だったのだ。黒江や智子と違い、責任感が強いのは、姉の無念を晴らせと教育されたことによる。また、姉の結核の発症の原因が、帰省時にハイカラな服装をしていたのを駐在が勘違いして牢屋に入れた事であることから、内務省嫌いであったりする。
「まあ、今は下の弟が小学校入ったんでしょ?心配しすぎだよ。まるで左○豊作だよ?」
武子は左○豊作の如き苦労人である。姉の代わりを両親から義務付けられた事もあって、ジョークのセンスがまるでないなど、欠点も多く出てきていた。ハルトマンに欠点を指摘され、図星な顔をする武子。彼女の悲劇は姉の代わりをせざるを得ない状況であり、それに乗るしかなかったところだっただろう。
――プリキュアの参戦は、ファンの多い自衛隊を歓喜させた一方で、彼女達を戦線に駆り出す必要があるのか?という疑問が呈されている。彼女達は扶桑/リベリオン軍の軍籍があるので、人事的には何ら問題はないはずだが、それにも関わず、批判が出ている。(もっとも、キュアメロディは北条響としての要素よりも紅月カレンとしての要素が強いが…)
――戦場――
「あ、参ったね。まっつぁんがそのまま会見に出ろだって」
「マジかよ!なんていりゃいいんだよ。あたしは正確に言えば、北条響じゃねぇんだぞ。つか、日本人ですらねぇ」
「ありのままをいうしかないねぇ」
「あー!もう!こうなればヤケクソだぁ!『プリキュア・ミュージック・ロンド』!!」
細かい掛け声などを省略して、必殺技を放つメロディ。戦闘がスイートプリキュア本来の浄化目的ではないため、エネルギーをそのまま爆発エネルギーに変えて爆破する。気質も北条響と言うよりは、敵と判断すれば容赦ない紅月カレンの要素のほうが強いのと、元々のシャーロット・E・イェーガーとしては、音楽への興味が薄かったためか、ヤケクソである。
「いいの、それ」
「お前と違って、こちとらプリキュア要素は薄いんだぁ!なんかこう…しっくりこねぇ。ロボとかをガシャガシャ動かしてるほうが落ち着くんだよぉ!」
「ナイトメアフレーム乗りすぎ。アルビオンと相打ちだったやん、前世で」
「るせぇ!スペックじゃ勝ってたし!それにギアス使ってるあいつが悪いー!」
と、一応は勝ったが、機能停止に追い込まれて相打ちの形になっているためか、未だに根に持っているらしい。
「つか、スザクにかけられたギアス考えると、互角に持ち込めた事自体が奇跡じゃないの?」
「弐式の頃はランスロットの翼付きに大ダメージ食らったし、ルルーシュはとんだギアスかけてくれて…」
「あ、根に持ってる」
「あの馬鹿にもし会えたら、プリキュア・ミラクルハート・アルペジオ(最強技)ぶっこんでやる!あたしを除け者にして、二人で計画を勝手に立ててさ!]
「まー、終わったことだし、死人に鞭打つような真似だよ」
「あたしらも似たようなもんじゃーん!くそぉ、あのスカシヤロー、どこかで会ったら仮面破壊するパンチしてやる!」
と、キュアメロディは紅月カレンとしての愚痴をぶちまけ、キュアハッピーの苦笑を買う。キュアメロディが最も、プリキュアとしての要素が薄いためだろう。だが、技がワン・パターンだと、元ガンダムファイターが多いこの世界では、すぐに見切られるという危険も多い。そのため、技のバリエーションを否応なく増やす必要に迫られたキュアドリームに至っては、仲間の技を再現するアイデアをピーチから提案され、それを実行してみる。」
「ゴメン、りんちゃん!技、借りるよ!!『プリキュア・ファイヤーストライク!!』」
空中で火球を生成し、それをサッカーボールのように蹴るドリーム。これは本来、キュアルージュ/夏木りんの技である。元々、転生の素体になった錦がサッカーをそこそこ嗜んでいたので、それを引き継いだのぞみも可能になった。この場にルージュはいないが、一応、断りは口にする。火球は進軍中のM4中戦車の大隊に命中、大隊ごと鉄の棺桶にしてみせる。
「やったね、ドリーム!」
「うん。でも、ルージュいたら絶対、お笑い芸人さながらのツッコミされると思うんだ」
「あー……ありそう。あの子、ああいう性格だし」
技を借りることは、プリキュアではまずないため、もし、いたら強烈にツッコまれる事を予想し、ため息のドリーム。なんとも言えない光景だが、火は智子が扱える事を知っているため、知れば、智子もやりたがる事を悟り、なんとも言えない気持ちになる。
「あ、また来るよ!」
「今度は……『プリキュア・サファイア・アロー』!!」
とっさに思い浮かんだか、かつての戦友達の技を連続で借りるドリーム。錦が弓道も嗜んでいたが故に、自然と矢を射るポーズも和弓のそれになっていた。水の矢というのはありがちなものだが、ともかく様になっている。
「あれ?ドリーム、弓道してないよね?」
「大人になって、引率で見た事はあっても、してなかったよ。私、文系だったし…大学まで」
「でも、今のポーズ、様になってたよ?」
「うーん。『この子』の持ってる記憶かなあ。意識しないで構えられたし」
「そっか、ドリームはこの世界に生きてた子の体を乗っ取っちゃったんだっけ」
「うん。なんだか悪くて。この体の元の持ち主の子に」
錦の肉体は夢原のぞみの魂の新たな器となっているため、錦本来の人格は上書きされてしまっている。だが、体が覚えた技能はそのままであるため、のぞみは生前に持っていない技能を得た。運動神経などは錦のそれが適応されているため、職業軍人として優秀なほうだ。記憶も引き継がれているため、錦の姉妹たちを姉妹と認識している。この当時はそれが起こって間もないため、錦の容姿に戻る術がわからなかったが、数年後までには錦の容姿とを使い分けるようになり、時と場合によって変身するようになっていた。また、錦本来の一人称である俺にも次第に慣れ、のぞみは表向き、錦として生きつつ、事情を知る部隊内では夢原のぞみに戻る生活になっていく。
「先輩は切り替えスイッチを認識できれば、この子本来の容姿に戻れるとかいうけど、どうにもわかんないんだよねぇ。それに、俺っていうの、どうも慣れなくてねぇ」
「ああ、わかるよ、それ」
「でしょ?参ったなぁ。この戦いの内はプリキュアでいるしか無いかなぁ」
「先輩の言うように、パワーアップの自己制御の特訓しないといけないかなぁ?」
「大丈夫!仮面ライダークウガだって、伝説を超えたわけだし」
「だーかーら、仮面ライダーを引き合いに出さないでよぉ!落ち込むからー!」
仮面ライダークウガ/五代雄介は伝説の『凄まじき戦士=アルティメットフォーム』の制御に至っている。ピーチはそれを知っていたので、引き合いに出したが、ドリームとしては、まだ並び立つに値しないと考えているからか、ギャグ顔でツッコミを入れる。ピーチはサムズアップもあり、知識量は仕事で覚えたにしては詳しすぎると感づく。クウガのアルティメットフォームの自己制御形態が赤目である事を知っているからだろう。
「あのさ、ピーチ、詳しすぎだよね。仮面ライダークウガなんて、リアルタイムで見たかあやしいもーん!年代的に」
「うっ…な、なんでそれを!」
「だって、私達が生まれたの、90年代の真ん中あたりだよ?クウガって2000年じゃんー!」
ドリームこと夢原のぞみ、ピーチこと、桃園ラブは90年代半ばから後半に入る時代の生まれであったので、普通に考えると2000年放映の仮面ライダークウガを覚えているとは考えにくいのは事実だ。アギト、龍騎、555あたりなら見ていた年代にぶち当たると思われるのだが。
「おとーさんとかの影響でしょー、それ!」
「な、なんでそれを!?」
「だいたい想像つくもーん!」
『バッキャローー!何、呑気にヒーロー談義してやがるんだ、ダホ!!』
「わぁ!?先輩、怒鳴んないでくださいー!」
「テメェら、気合入れろ、気合!」
「あー!なんですかー、その格好!」
「ゲッターモードだ!あたしはゲッター線の使者でもあるんだぞ」
圭子はこの時、服装がゲッタードラゴン風のモノに変化していた。肩にはアーマーが出現しており、ダブルトマホークを持って現れ、マッハウイングがマントのようにヒラヒラ舞っている。
「俗に言う、ゲッタードラゴンモードですか?」
「そーだ。ダブルトマホークとマッハウイング。マッハ4で飛べるぞ」
「えー!?」
「ゲッターアークとかになると、綾香に匹敵するポテンシャルになる。サンダーボンバーなら、このあたり一帯は焼けるぜ」
「真ゲッターロボは?」
「なれるぜ」
圭子はゲッター線の使者であるので、歴代ゲッターの力を生身で行使できる。ゲッタードラゴンで極超音速、真ゲッターで光速に達する。そのため、黒江とポテンシャルに差は実質はない。
「まぁ、この辺の敵なら『マジカールレヴィたん』でも楽勝なんだけど見た目がなぁ」
「せーんぱーい…、ヘストンワールドにお帰りください、どうぞ」
「わーってるじゃねぇか。40点くれてやる。武子は付き合い悪いからなー。だーから、姉御に怒られんだ」
「わわ、来ますよー!」
「狼狽えんな。よく見てろ」
圭子は腕の篭手と装甲部に出現したスピンカッターを作動させ、それで相手の首などを掻っ切りながら突進する。ひどい場合はマッハウイングで相手の顔を覆い、正拳突きで顔を潰したり、バイオレンスである。そして。
「ゲッタァァビィームッ!」
ウイングで体を覆い、そこから拡散ゲッタービームを撃つ『スパイラルゲッタービーム』。竜馬が初代ゲッターでやっていた戦法だ。そして、それを運良くくぐり抜けた者はダブルトマホークを一閃、胴体から一刀両断する。その時の微笑は圭子の処刑人の異名の確かさを裏付けるものだ。流竜馬のような戦いっぷりである。
「あ、危な――…」
「よっと」
右のスピンカッターを真ゲッターレザーに変形させ、不意打ちした兵士を串刺しにし、そこから大切断を見舞う。このバイオレンス路線の戦闘が今回における圭子の本領であり、マルセイユが大人しくなった理由。ピーチもドリームも息を呑む。」
「あらよっと!」:
更にゲッターマシンガンである。圭子はこんなバイオレンスな戦闘を今回は1942年度はアフリカでやらかし、黒田がしばしの間、紅海から引き抜かれて護衛についていたのだ。
「なんだ、こんくらいでションベンでも垂らしたか、ガキ共」
「あのぉ……いくらなんでもそれは…。あたし達は、ぷ、プリキュアですよ!?」
「語尾が震えてんぞ、えーと、ピーチだっけか」
「〜〜!こう見えても、色んな敵と戦ってきたんですよ。ビビってなんてないですって」
「足がガクガクしてんぞ」
プリキュアの戦闘と違い、スプラッタ全開なドワォ要素満載戦闘であるため、キュアピーチは怖気づいたらしい。大切断の人間を真っ二つが効いたらしい。
「先輩、もうちょい穏やかにしてくださいよ。ピーチがビビっちゃったじゃないですかぁ!」
「こんくらいで吐くなよなー」
「大切断は初見には無理ですよぉ」
「ったく、後輩をしっかり面倒見とけよ、ドリーム。しかたねぇ……よし!帰ったらスパゲッティ奢ってやるから泣くな、ゆっくり慣れりゃ良いから」
「うぇ〜ん!」
ピーチも歴戦の経験はあるが、流石に圭子のドワォ戦闘は吐き気を催すほどの衝撃だったらしい。ドリームが介抱する。
『「荒事の後にトマト料理は出来れば遠慮したいなぁ。ケイさん』
『のび太、どうした?』
『本郷さんから連絡です。そっちに風見さんを行かせたと』
『何、風見さんが?』
爆音が響き、大排気量オートバイ(スズキ・Vストローム)をかっ飛ばし、風見志郎が現れた。噂をすれば影である。
「風見さん、どうしてここに!」
「な〜に、君たちだけを戦わせたら、本郷さんと一文字さんに会わせる顔が無いんでね。……ムゥン!」
風見はオートバイを走らせながら立ち上がり、変身を行う。この立ち変身が風見志郎の見せ場である。ピーチも吐き終わって、息も絶え絶えな状態ながら、彼の姿を見るなり、顔がパァッと明るくなる。彼こそは。
『変んん身ッ!!ブイスリャァ!!』
ベルトがその掛け声と共にダブルタイフーンになり、機構が作動し、彼を第三の仮面ライダーに変異させる。彼こそ、一号と二号の後継者にして、仮面ライダーの代表格の一人。
「くぅ〜。まさか、本物に会えるなんて〜!」
「ピーチ、あの人が!?」
「そうだよ。栄光の七人ライダーが一人!仮面ライダー三号!仮面ライダーV3だよっ!」
キュアピーチはV3を知っていた。その方面の知識が意外と豊富らしい。もっとも、V3は最も著名な仮面ライダーの一人であるが。変形した愛車『ハリケーン号』をかっ飛ばし、颯爽登場のV3。
「ここからは私も共に戦おう!」
バシッと決めるV3。ムードもりあげ楽団がこの場にあるなら、『V3アクション』か『仮面ライダー讃歌』は確実にバックミュージックだろう。あるいは『不死身の男』か。
『仮面ライダーV3ァ!!』
ハリケーンをスライディングストップさせ、降りて改めて名乗りを上げるV3。日本のスーパーヒーローのしきたりだ。V3はリベリオン兵士に紛れ、隠れていた再生組織の戦闘員と怪人の出現を確認すると、先陣を切って突撃し、かつて体操界のホープとされた風見の身体能力を応用した戦闘を披露する。元々、高スペックであるが、ダブルライダーからレクチャーを受けずじまいだったので、基礎能力を向上させていくことで戦い抜いた。そして、彼独特の掛け声『トイヤ!』も存在感バッチリで、目立ちまくりである。
「すごい……、あの人。複数の相手を上手くいなしてるし、まるでヒョウみたいに身軽…」
「それが風見志郎、仮面ライダーV3だ。歴代の組織との激戦を戦い抜いた経験もそうだが、攻撃のタイミングを分かってる。いいか、お前ら。彼の戦い方をよーく目に焼き付けておけ」
圭子が解説役に回るほど、V3の戦いは円熟したものである。プリキュア達も、この思わぬ援軍に目を奪われる。彼のことを知っていたキュアピーチは子供のように無邪気な顔で彼の戦いに見惚れ、キュアドリームは三代目というところにシンパシーを感じ、また、中島錦の名残りによる対抗心と、マジンガーZEROを意識したか、拳をギュッと握りしめる。
「仮面ライダーV3……。先輩、わたしは強くなりたい。前世で一緒に戦ったみんなのために、守った世界に、三代目の名に恥じないように…、先輩達のように……、彼のように…ッ」
「熱り立っても、今すぐに強くはなれねーぞ。ま、お前が今の所は最古参だから、責任感じるのは分かるけど」
「でも、先輩ッ!」
「いいから落ち着け。綾香も何度か挫けそうになったが、聖闘士にたどり着いた。お前なりに道を見つけな」
「!?」
「お前に一つ、良いもんを見せてやる」
圭子は前史で習得した必殺技をドリームに見せる。標的は再生怪人『スノーマン』。かつての強豪怪人だ。
「メディテーション!」
九字護身法を組み、オーラパワーを発動させる。そしてそこから、正拳突きの態勢に入り、オーラパワーを拳に一点集中させる。この攻撃こそが日本空手界で幻とされた必殺技にして、一種の禁じ手。その名も
『ゴッドハンド!!』
次の瞬間、圭子の拳はライダーキックに耐えうるはずのスノーマンの装甲をぶち抜いていた。拳の一発でスノーマンは絶命する。圭子は拳を引き抜き、スノーマンが爆発してから合掌する。これぞ、光戦隊マスクマンがリーダー、レッドマスク/タケルが授けた必殺の拳、ゴッドハンド。
「人の体には未知のパワーがあるんだよ。小宇宙も、オーラパワーもその一つにすぎねぇ。初代プリキュアの連中を意識するな、とは言わねぇが、初代は偉大な存在だ。無理に並び立とうと背伸びするな。お前はそのままのお前で強くなれ。この世界に転生した事自体が戦いなんだからな」
「……せ、先輩〜!」
「どわぁ!わーった、わーった!ひっつくな!」
ドリーム/のぞみは成長と共に、親しい仲間達との別離を否応なしに経験してきていたらしく、無意識の内に、寂しがり屋になっていた。抱きつき魔と渾名されそうなほどに抱きつきたがるのは、愛した人、プリキュアとして共に戦った仲間との何らかの理由による別離、教師生活での抱え込んでしまった悩み、夢が叶うとは限らない現実を自分の人生、教え子達の人生で思い知らされた故の泣きたい気持ちなどがあるからで、その点は黒江によく似ている。本質的には14歳当時とそれほど変わりない心は、彼女の拠り所であると同時に弱さである。三代目プリキュアとしての強い責任感を持つ一方、本質的には現役時代の思い出を拠り所に生きてきた存在である。圭子は面倒見は良いため、異名と裏腹に優しい目を向ける。本来の温厚さが残っている証明だ。
「へ〜、ドリームもそういうところあるんだ…」
「ぴ、ピーチ!」
「ハハハ、ケイちゃん、中々面白い子らを見つけたようだね」
「茶化さないでくれよ、V3さん」
「いいじゃないか。好きなようにさせてやれ。綾ちゃんも茂によくやってることだ。君らは俺たち以上に理解者に恵まれん環境だからな」
黒江も誹謗中傷に苦しみ、城茂に悩みを打ち明け、その話に憤怒した茂が誹謗中傷した部隊に怒鳴り込んだ事も一度や二度ではない。その対策も、プロパガンダで再び祭り上げる目的である。その対策はプリキュアのプロパガンダも兼ねるようになり、広報部の責務と認識されるに至る。武子や江藤の最大の誤算は、世代交代した後で、伝説が忘れ去られ、レイブンズの復帰後に世代間抗争に発達してしまった事の一点だろう。世代間抗争の到来はウィッチ兵科の存亡に関わるため、それから世間の目を逸らせる存在として、プリキュアが利用されるのである。なんとも政治的で、大人の事情が絡んでいくが、キュアドリーム、キュアピーチ、キュアメロディ、キュアハッピーの四名はこれから、扶桑皇国の広報戦略の最前線に立たされていくのである。
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