外伝その265『イベリア半島攻防戦14』
――扶桑陸海軍航空部隊は結局、同年代の大日本帝国陸海軍の行いが災いし、扶桑にとっては理不尽な指令を連発され、古参と中堅の世代間対立を表面化させる事になった。また、本来なら教官にすべき人材を前線に集中させ、教育部隊教官の出征が強引に抑えられた事も、ウィッチ間の世代間対立を煽った。その結果、事変で初陣経験の世代は本土部隊から後輩らに追い出されたも同然であり、この事態を重く見た上層部も古参人員をRウィッチ化して前線に送り込む事で、若手との住み分けを狙うようになり、古参ほど後方配置されなくなった。その人員の殆どは64Fに集中配置された。陸海の出身を問わず、『精鋭』の八割以上が文字通りに集中され、501に供出している幹部級を除いても、殆どが飛行時間1000時間超えである。(新人・若手育成用部隊の極天隊の正式な発足はダイ・アナザー・デイの後で、この時、既に要員が厚木基地に集められてはいた)先に発足した実戦部隊が従軍していたわけだが、上級・中堅の幹部までが転生者の巣窟でもあるため、その彼女達が宇宙戦艦の運用を担っている。戦果の集中は技能が限界値まで成長しきった上、魔力値が絶頂期で固定された要員が当時の新鋭機、もしくは後世の第一線機を使用し、後世で確立されるはずの各種戦闘ノウハウを最高の状態で有することからすれば当然であり、同位国へのアピールとしても最適だった。その点からしても、まさに旧・ジオン公国軍のキマイラ隊と、旧ドイツ空軍の第44戦闘団の日本版とされた。ウィッチ兵科の近い招来の解消と引き換えに、大戦経験者の保全場、転生者管理部としての役目も担わされた形である。――
――そもそも、日本連邦で64の設立の引き合いに出された第44戦闘団はカールスラントにおいては、ゲーリングにガランドが更迭されなかった世界であったため、ジェットストライカーの試験運用部隊ではあっても、精鋭が集められた部隊とは言えない構成(ウルスラの提言もあり、ジェットストライカーに古参は逆に不味いとされていたため)であったが、ドイツの介入による『非ナチ化』政策の極端化が始まり、人員のリストラが数千から万規模で始まるため、ラルの人材温存策の器として、古参の逃げ場所として使用された。日本連邦の64Fの圧倒的な陣容(扶桑の撃墜王の八割以上)が逆にカールスラント空軍上層部を恐れさせ、撃墜スコア認定の厳格化によるマイナス査定での士気低下が見るに忍びないレベルであった事から、現場の士気を守るために、ガランドサーカスの名前はどうしても必要だった。リストラから古参を守るために44戦闘団配属、もしくは64Fの義勇航空隊枠で出向させるという方法が取られた点で言えば、なんとも皮肉な状況であった。また、空母愛鷹の放置(本国脱出後は半ば荒廃していた)による違約金と賠償金が高額だった事、怒り心頭の日本連邦が軍事援助の打ち切りを示唆した事を公に通告した事に恐怖したカールスラント軍はラルに全権を与え、太平洋戦争の軍事援助をほぼ無償で行うことで宥めすかす方法に死力を尽くす事になる――
――また、ウィッチの空母運用が縮小されていった背景には、空母搭載機を露天駐機してでも、艦載機数を稼ぜという至上命令、エレベーターを一基使うウィッチ装備が邪魔とされ、強制的に殆どの空母から外された(移動式簡易発進促進器の搭載で場しのぎは行われたが、そもそも、扶桑海軍にとっての空母は半ば、ウィッチコマンド母艦であり、航空機の母艦としての意義はあまり顧みられなくなっていた)からで、エセックス級相手に戦をするに、最低でも搭載数で72機はほしいと日本側が言い、ウィッチ運用装備は多くの艦から撤去された。また、大鳳型は史実より若干大きかったものの、量産が見送られたため、烈風/流星/彩雲の運用さえヒーヒーいう空母が多く、初代天城も一時復帰して数合わせが取られ、翔鶴から大鳳はジェット空母化された。それでもエセックス級20隻以上の軍団と戦うにはまだ足りないと言われたので、ヤケクソ気味に4隻のプロメテウスを段階を追って艦載機ごと購入したのだ。なんともヤケクソだが、その内の一隻は64Fとロンド・ベルの補給基地でもあり、501も自動的に使用権を得ていたりする――
――日本連邦軍の人材の一極集中は批判も大きかったが、史実の敗戦という結果を鑑みれば仕方がないことであり、政治的に『精鋭部隊』が必要とされたからでもある。武子がその長に収まったのは、彼女個人の功績だけでなく、同位体の経歴も考慮されたからだ。このような政治的な思惑も多分に含んでの設立であった64Fは『政治家の自己満足』と部内で揶揄もされたが、伊達や酔狂で撃墜王で固めた陣容ではなく、それに相応しいだけの戦果を叩き出した事も事実であり、プリキュア出身者が複数含まれているのも含め、扶桑軍が同位国である日本(日本には数知れないスーパーヒーローがいる上、未来世界ではスーパーロボットの巣窟である)に誇れる数少ないものであった。聖闘士+サムライトルーパーという、反則的な属性を有する黒江と智子の存在、何代かのプリキュアの中心的な戦士達の転生体が隊員にいる事もセールスポイントになった――
――戦場では、怪人部隊を率いていた怪人『ザンジオー』(深海魚モチーフの怪人。元々が強力怪人だったので、生前の自我を持つ)が智子、キュアドリーム、キュアピーチ、仮面ライダーV3に挑戦した。彼は生前の失敗からか、アポロガイストの下で鍛えたらしく、4人と互角に渡り合う意外な強さを見せた――
「はぁあああっ!」
剣を智子に一旦返し、得意の徒手格闘で臨んだドリームとピーチだが、ザンジオーは仁王立ちの姿勢で二人の拳や蹴りなどの打撃攻撃を尽く避けまくる。彼はその場に留まり、体の位置を変えるだけで二人の攻撃をいなすという巧者ぶりである。
「フハハ!どうした、小娘共!俺はここだぞ!」
「くぅううう!」
「舐めるなぁーっ!」
二人は途中からムキになり、同時にパンチのラッシュを浴びせるが、これも無意味であった。逆にザンジオーの反撃の蹴りを食らって吹っ飛ばされる。
「強い……!」
「わたしとピーチが同時に攻撃しても、全部避けられるなんて……こうなったら、技を使って…!」
「やめたほうがいい。今の反応速度を見たのなら、技も無意味に終わる。ここは私と智子ちゃんに任せろ」
V3が前に進み出る。ザンジオーの反応速度は生前より増している。ならば、自分がケリをつけるのみだと。
「ほう。貴様がダブルライダーの後継者か」
「仮面ライダーV3、只今参上!」
お馴染みのファイティングポーズを取り、いつもの戦闘態勢に入るV3。こうなると、智子はサポートに回る。V3は目立ちたがり屋でもあるからだ。改造人間同士の戦闘は漫画と違い、高位の改造人間は加速装置持ちである。その場合、最低でも超音速で行われる。こうなると、輝煌帝の鎧とセブンセンシズを持つ智子や圭子以外には介入不可能である。プリキュアの強化された視覚といえど、極超音速の戦闘は視認出来ない。素で視覚できるのは、デビルマンやキューティーハニーくらいなものだ。V3とザンジオーの拳や蹴りのぶつかり合いで衝撃波が散り、ザンジオーの火炎放射が宙を舞う。加速装置特有の残像のぶつかり合いも確認され、少なくとも、M3以上で戦っているらしい。
「うわっ!?わたし達と似たような事してるはずなのに、見えない……プリキュアに変身してるのに…?」
「たりめーだ。V3とヤローは極超音速に加速して、やり合ってるんだ。プリキュアに変身したって、マッハ3を超える速さが見えるたぁ限らないって奴だ。それに改造人間だから、通常の物理限界を超えてるんだよ」
「先輩は見えるんですか?」
「真ゲッターの力を使える以上はな。お、V3が優勢になってきてる」
圭子の言う通り、地力に勝るV3が次第に優勢になり、V3が必殺技の態勢に入る。
『V3フルキィ――ック!!』
V3の珍しいドロップキックが飛び蹴りの体勢から炸裂し、ザンジオーは地面にクレーターができるほどの速さで叩きつけられる。
「ふふ、さすがは本郷猛と一文字隼人が後を任せた事はあるな。勝負は預けるぞ」
形勢不利と見たザンジオーは配下に合図を送り、撤退する。V3は事もなさげに見得を切る。これがまたカッコよく、自分達が見ることが出来なかった数秒で何があったのか。どんな攻防があったのか。否応なしに実力差を思い知らされたドリームとピーチ。
「これが伝説の七人ライダーが一人、仮面ライダーV3……!」
V3のことを知っているピーチはV3の強さに息を呑むと同時に、羨望の眼差しを向けた。ドリームは中島錦がオーバーライド前に抱いていた強さへの渇望と、現状での最古参プリキュアとしての責任感とが相互に作用し、複雑な表情を浮かべる。それに気づいた智子が声を掛ける。
「そう暗い顔をしない。貴方はまだ転生して間もないヒヨッコ。こっちはもう何回もしてるベテラン。差ができて当たり前よ」
「先輩、ちょっと身の上話をしていいですか?」
「どうしたの、いきなり。いいけど」
「なんて言ったらいいんだろう。わたしは……前世で何をやっても人より遅くて……小学校の時は劣等生って裏で教師たちに言われた事もあった…。だから、プリキュアになった時、嬉しさがあったんです。それで友達や大切な人ができて……。同じ時間を生きて、命を預け合う。そんな関係は平穏な生活にはなかった…。もちろん、夢は叶えましたけど、現実は苦しかった。教師になっても、教育係に怒鳴られ、時代的にモンペアの理不尽なクレームにも何度も遭ったんです」
「まあ、あなたの前世、2010年代に就職したのなら、時代的に、ねぇ」
2010年代になると、モンスターペアレントの台頭が起こる。それはのび太の嫡子『ノビスケ』の時代以降は割に見る光景である。教師のサラリーマン化現象も起こって久しいため、新任教師の抱いた理想はほぼ必ず打ち砕かれる。その記憶があるからか、思い悩みが大きくなっているドリーム。
「定年退職する直前はサラリーマンみたいに、ただ授業をするだけ…。わたし、そんな自分が嫌でした…!だから、戻りたかったんです。14歳の頃の、まだ夢や希望もあって、ココやみんなと一緒に笑い合っていられた時代に!……先輩、わたしは嬉しかったんです。504基地で目覚めた時、あの時の姿に戻ってて、メタモルフォーゼができて…。……おかしいですよね?こんな事…」
のぞみは就職が2010年代後半になったため、理不尽なまでに多忙な上に、クレームとの戦いが待ち構えていた教諭という職の現実に打ちのめされ、定年退職直前には若き日の夢を半ば捨て、サラリーマンのように職務をこなすしかなかった自らを自己嫌悪したという。プリキュアに戻れた事を、心から喜んだと吐露したのぞみだあ、智子もかつて、自らも黒江の純粋な願いを自己保身に利用したという負い目を持っているため、『若き頃の日々が一番に幸せだった』と涙ながらに吐露したのぞみ/キュアドリームの気持ちを分かっている。成人後はプリキュアとして戦う事も無くなっていき、立場上、プリキュア5の皆が離れ離れになっていった事から、現役時代に強い郷愁を懐き、退職後の後半生は半ば、抜け殻のような生活を送ったらしく、現役時代の姿に戻って、往時同様に変身までできた事を『一番の幸せ』と表現する。ピーチはそんなドリームの悩みに気づけなかった事に愕然とした表情を見せる。のぞみは夢と希望が結局、就職とその後の生活という現実によって木っ端微塵に砕かれ、プリキュアとしての自分に戻る事も次第にできなくなった事から(色々な事情がある)、晩年期には虚無的な生活を送るしかなかった。取り戻せるのなら、取り戻したいと願い続けた『プリキュア5であった日々』と『仲間や、たった一人愛した人との絆』。それがのぞみの転生のキーであった。それは叶った。自身が何よりも望んでいた姿で、往時の力を取り戻した状態で転生したのである。穏やかな老後を送っていた桃園ラブ/キュアピーチには想像だもしないものだった。
「あたしも昔…、綾香の起こした事に乗じて、自己保身に走った事があってね。貴方の想いは傲慢じゃないわ。転生者なら誰でも懐き得る願いよ。特に何かかしらの不遇の時を過ごした経験があれば、ね」
智子は輝煌帝の兜を外し、脇に抱えた状態で答える。その顔は穏やかであり、大人としての包容力を漂わせた。智子はその点、黒江と別ベクトルで人気があるのだ。
「ごめん、気づいてあげられなくて…」
ピーチが言う。
「いいの。わたしが個人的に抱いていた願いだったから。わたし達は社会に出て成功はしたけれど、立場が違っていって、昔みたいに集まれなくなった。教師生活の理想と現実の差に打ちのめされてたわたしには……昔の思い出だけが輝いてたから……」
教師になるという夢を叶えたが、現実の非情さに打ちのめされたのぞみはいつしか、若き日の日々を郷愁するようになっていき、死を迎えた。その切実な願いを運命の女神達が叶えたことになる。なんとも哀しい経緯である。また、小学校時代に教諭達に劣等生と裏でなじられていた事をひょんなことから知ってしまった事から、プリキュアとして戦っていた時代に戻りたいという思いを強く抱いていた。夢を叶えた後の現実の非情さがそうさせたのだろう。その思いが転生先の肉体の元の持ち主の中島錦が『職業軍人』であっても、それを受け入れた理由なのだ。
「過去を振り返って、悲観に浸るのはここまでにしなさい。これからは前を見なくちゃ、ね。転生した以上は神に愛された、神に必要とされたってことだし、肉体的に老いる事はないわ。肉体は人間そのものだけど、存在自体はより高次元のモノに昇華しているから。戦っていれば、いつか他の子とも会える時があると思うから、顔向けできるように頑張りなさい?」
「せ、せんぱぁーい!」
智子は数度の転生で黒江の面倒を見るうちに、子供の面倒を見るのが上手くなった。黒江が転生を経るごとに10代の精神状態に戻っていったのを体験しているからか、智子は逆に大人びた精神状態になっている。また、今回においては派閥も有しているため、カリスマ性も会得している。男女問わず、智子は慕われるが、今回は黒江との経験がいい方向に作用し、プリキュア達を導く役目を果たしていた。また、のぞみも成人後は不遇の時代が続いたためか、誰かに縋りたい気持ちがある。プリキュア5時代はリーダーとして振る舞っていたのとは対照的に、縋れる存在に弱くなっていたのか、抱きつき率がグンと上がっていた。
「それに、後悔が無ければ転生なんてしないでしょ?」
「んだ。のび太も、リベリオン軍の指揮車をライフルでぶっ飛ばしてきたそうだ。V3も綾香に伝える事があるから、同行するそうだ」
「んじゃ、帰るとしますか」
――この後、リベリオン軍本隊も自衛隊の側面攻撃(機甲部隊と砲兵の同時攻撃)で打撃を被った事から、マドリード近郊から一時撤退していき、駐屯地の安全はひとまず確保された。また、この戦果はプリキュア出身者のお披露目にはピタリであり、圭子の主導で広報を兼ねた会見が行われ、現時点で4人のプリキュア出身者が501に勤務している事も公にされた。素体の関係上、キュアメロディが米国系の国の国籍を有する事は不満がられたという。(最も、圭子もレベッカ・リー名義でリベリオン国籍を有するが)黒江にV3/風見志郎が伝えた事は、一号が正式に再度の改造を行い、ネオ一号と言うべき形態になる能力を得た(前々から、三号に備えての再改造は示唆していた)事だった。ネオサイクロンはその姿で使用する事も、併せて伝えられた。会見に列席した風見志郎はこう言ってのけた。
『国籍なんて関係ない、共に戦う仲間、戦友なんだ。生まれじゃなくて本人の意思が重要なのだ。それに、そっちのフィクションが実際に有る世界だったって喜べば良いじゃないか』
で、ある。番場壮吉と見間違える、白ダブルスーツ姿で会見する風見志郎の痛烈なこの発言のインパクトはあり、2019年が明けた日本の新聞を賑わせたという。
――ちなみに、一号は黒井響一郎/3号に対抗するため、ネオ化を最終的に選んだのである。三号は『勝てば正義、負ければ悪』という苛烈な価値観を持ち、執拗に相手を痛めつけるファイトスタイルから、黒江に嫌悪されているが、その実力は本物だ。黒江が聖闘士の門戸を叩くきっかけを作った張本人である事もあり、本郷はネオ化を選択した。仮面ライダーは無敵であるという偶像崇拝にも似た願いを守るために。なんとも複雑だが、本郷は三号に対抗するために、自分を父のように慕う者のため、苦渋の選択で二度目の再改造を受けたのである――
――ひとまずの小康状態を得た事により、その間に隊員の錬成が図られ、プリキュアたちも強化フォームの自己制御を目指しつつ、主に黒江と智子によるシゴキが行われた。(シャーリーと芳佳は元の姿での出撃の合間に行った)数日後には風鳴翼の要請で模擬戦が行われた。模擬戦は立花響に自信を取り戻させるためでもあったが、響当人が格闘技を修行していたために、相手が手心を加える事を嫌ったため、全力戦闘制となった。模擬戦はお互いにできる範囲での自制はあるが、ほぼ全力での戦闘となった。身体能力はお互いに強化されているが、ギアの補正を考えると、総合力ではプリキュアに優位があった。破壊力はシンフォギア側に(宝具媒介の力であるので当然)優位であり、反応速度面はプリキュアという具合にトレードオフ関係であり、総合的にほぼ互角であった。
「概ね互角ってわけか。まぁ、向こうは宝具のポテンシャルを完全には引き出せているわけでもないから、総合的にゃこっちが優位だな」
「向こうのあの子の爆発力は侮れないね。脱落させないと負けそうだよ」
「あたしのラブサンシャインで牽制して、シューティングスターで決めるってのは?」
「ベタだけど、先輩達みたいにこっちを超える力は出せないみたいだし、やるかな?」
「来るぞ!」
人数の都合(調はその日、出撃ローテーションの日であり、模擬戦は欠席)もあるが、シンフォギア側が有利であった。整地の都合もあって、自制するように要請があったため、大技は使わなかったが、小型ミサイルは容赦なく使用されたため、火力面ではシンフォギア側に有利であった。そのため、かなりの無茶をしなければ、プリキュア側に勝機はない。マリアのアガートラームの刃をメロディが止め、翼をハッピーが『プリキュア・ハッピーシャワー』でノックアウトし、ピーチが得意の拳で切歌(子供)をノックアウトし、弾幕を張ったクリスの懐に飛び込んで引き付け、露払いを行う。
「今だよ、ドリーム!」
『うんっ!プリキュア・シューティングスター!!』
ドリームがシューティングスターを発動させ、飛行しながら突撃する。
復活なったガングニールを纏った響もそれに対抗し、シューティングスターの軸線上にスラスターを吹かしながら空中を飛び、拳をぶつける形で立ち塞がる形になった。響はスラスターを吹かし、インパクト時に通常のギアで出せる最大推力と、ジャッキアップしての拳で対抗した。インパクト時の衝撃で周囲に衝撃波が散るほどであった。両者のパワーは互角であったが故か、競り合いの末に技は相殺された。だが、響は通常時のほぼ全力を出した事もあり、ガングニールに負荷がかかったようで、籠手部分に負荷の大きさを示す紫電が散っていた。
「パワーは互角、だけど、勝負はこっちの勝ち……かな?」
「うん、最後でちょっと押されたし。あなたの名前、教えてくれるかな?」
「夢原のぞみだよ。この姿だと、キュアドリームって呼ばれてるよ。こう見えても一応、17だよ(素体になった中島錦が1945年で17歳なので)。出身はこことも別の地球だけど、訳あって、ここの世界の日本の軍人なんだ」
「えぇ!?私より上ぇ!?その姿で!」
「おい、あたしがいるのに、どーいう事だ?」
「いやあ、クリスちゃんは最初、年下に見えたし」
「ははっ、こいつか。黒江さんが愚痴ってた野郎ってのは」
「アンタは?」
「シャーロット・E・イェーガー。またの名を北条響。この姿だと、キュアメロディって呼んでくれ。あたしは前世が日本人、今はアメリカ人として生きてるから、複雑なんだ」
「ばーちゃん、こいつにかなり手こずってたからなぁ。あんたらみんな転生者なのか」
「基本的にな。まぁ、いい。でもよ、見た目通りの年齢だと思わない方が良いぜ?魔女だからな。あたしの場合は国籍が日本からアメリカに変わっただけだけど。ただ、お前らには一定のリミッターがかかってる状態なんだろ?」
「ああ。でも、あんたらもばーちゃんみたいにノイズに素で対抗できるんだろ?こいつが拗ねそうでなぁ」
「仕方がねぇさ。先史文明の兵器相手に遅れを取ってちゃ、プリキュアの名折れさ」
「プリキュアってのは、あんたらの?」
「ああ。元々は、いくつかの世界に跨って存在した伝説の戦士の名で、あたしらはその継承者だったのさ。転生で生前よりいくつかパワーアップした面もあるけどな」
「ばーちゃんたちに比べりゃ、まだマシか?」
「あの人達はナインセンシズに到達済みだしな。神を守るための存在(聖闘士)で、それが従神とは言え、神位になってるんだ。人の常識はゴルゴとのび太以外にゃ通じねぇよ」
異能生存体は命がかかる出来事では、どんな窮地でも生き残れるように事が運ぶ因果を持つ者であり、因果律兵器の効力も及ばない。その因子保有者で有名なのが、キリコ・ビューディー(装甲騎兵ボトムズ)、デューク東郷、のび太である。(マンガ史学者の間で『ギャグマンガの人物はバトル漫画の如何な能力もまったく効かないのではないか?』という形で、ドラえもん達の不死身の説明が試みられている)のび太は弱い方だが、ゲイ・ボルグで致命傷をけして負わない程度には、因子を持つ。
「なんだよ、そのナインセンシズだとか、セブンセンシズとかって」
「人間には六感があるとか言うだろ?聖闘士の最高位は六感を超えた第七感に到達しているんだよ。それを超えたのが阿頼耶識だが、あの二人はそれも超えて、神の領域に達したんだよ。その結果、神になったんだよ」
「なるほどな…。で、こいつのガングニールだけどよ、なんであたしらの世界でのポテンシャルが出せねーんだ?ばーちゃんに迷惑かけちまってよ」
「話は聞いてる。お前達の世界でのポテンシャルはそもそも、お前達の世界で『ガングニール=ロンギヌス』っていう結果によるものだろう?因果が繋がらない全く別の世界線じゃ成立し得ないもんだし、そもそもガングニールはグングニルの真名喪失と解釈されて、宝具本来の力を引き出せないんだよ。それに高位の宝具は因果律操作が可能なんだ。神代の神具そのもの相手じゃ、クラスが下がった模造品扱いの道具で立ち向かえるか?」
「こいつは自分のギアに…その、愛着といおうか、執着が凄くてな。ばーちゃん達の力が自分の知らない間に、戦いにカタつけてた事もあって、居場所が無くなるのを怖がってるんだよ」
「仕方ねぇさ。そもそも、お前らの世界での敵に、『より効率のいい対抗手段』があれば、そっちにみんな飛びつく。それに、お前の世界じゃ、『女性こそが男性の上位種』らしいが、科学的にゃ根拠はねーぜ?偶々に錬金術と相性が良いのが女の肉体だって事かもしんねぇ」
「あんた、中々キツイな」
「理屈も大事だけども、大事なのはよ、魂に火をつける事だろ?魂を燃やせりゃ、プリキュアも、聖闘士も、シンフォギア装者も関係ねえはずだぜ?」
「昔のバトル漫画みたいな事いうな?」
「ある意味じゃ、真理だろ?全部を合理主義でしてたら、絶望的な戦いがやれるかってんだ」
メロディは数度の転生で、あらゆる局面の戦いの経験があるからか、ある結論に達していたようだ。『いかにして大胆に、魂を燃やすか』。前世で『枢木スザク』(ナイトオブゼロ当時)にほぼ唯一、相打ちという形とは言え、土をつけた人物であったためでもあるのか、戦いにはポリシーを持つ事がわかる。(逆に言うと、北条響としての要素は、アクの強い『紅月カレン』の要素に押される形で薄いことが分かる。また、単独で変身(元々、スイートプリキュアは単独変身が追加戦士以外は出来ない仕様であった)出来ている事から、転生に伴うパワーアップと思われる。
「可愛い外見の割に、言うことはシビアだな」
「まー、色々経験してきたしな」
「ばーちゃんには苦労かけたよ。こいつらのおかげで」
切歌や立花響の行為に言及するクリス。
「誰も入れ替わりが起こるなんて思わねぇからなー。それに、まさか、シンフォギアを根本的に超えてるモノをリスク無しで使えるたぁ思わねぇだろ?」
「まーな。ところで、あんたら、モチーフになってる色は同じなんだな?」
「わたしからなんだ。中心になる戦士にピンクがモチーフに取り入れられてるの。スーパー戦隊とは違う形になってるんだよね、ちょうど」
「んじゃ、あんたはこの中じゃ一番の古株かよ」
「そういう事。わたしは三代目のプリキュア5のリーダーだったから」
「ふうん…。」
「実質、ここにいる皆が、昔は切り込み役だったのさ。素でお前達と渡り合える事はこれで分かったと思う」
「でも、良かった。綾香さん達みたいに、また手も足も出ないかと思って…」
黒江に常に圧倒されてきたため、ハラハラだったらしい響。なのはに心を折られたのもあり、戦々恐々だったらしい響。
「あの人達は聖闘士で、サムライトルーパーだよ。私も驚いたよ。素でプリキュアより強い人間がこの世にいるなんて」
「ステゴロはなんてったって、初代が一番だからな。あたしらはその後塵を拝するしかないからな」
そういうキュアメロディ。偉大なる初代の影に苦しみつつも、自己のアイデンティティを見出しそうと苦労しているのが歴代プリキュアである。なんだかんだで初代は偉大である事を示すのだった。
――扶桑皇国は艦艇の設計を攻撃重視から、防御・航続力重視に変えられたため、既存艦艇も可能な限りの改装が施された。その都合で参加艦艇を逐次投入にせざるを得なかった。その甲斐あり、ブリタニア艦隊より生存率は高かった。また、既存艦艇の払い下げの契約が反故にされた事に海援隊が反発したため、本来は海保用に建造されていた巡視船を割り当て、旧式の准弩級戦艦と前弩級戦艦の代替とした。しかし、安全保障条約を結ぶ日系国家である太平洋共和国が戦艦の不在を不安がったため、後に、この時期は退役予定で、後のクーデターに加担する紀伊型『近江』を海援隊に割り当てる事になる他、大和型戦艦の上部構造物を持つ41cm砲搭載高速戦艦が双方の共用艦艇として、新規に建造される事になる。ここで作戦に従事する連合艦隊の主要戦闘艦艇を挙げよう。
・『三笠型戦艦』×1(富士。サクヤというコールサインで呼称される。艦名が旧国名でない、実質の超弩級移動要塞。56cm砲搭載)
・『播磨型戦艦』×3(ネームシップから三番艦の美濃まで。史実超大和型戦艦最大案をベースに作られた大和型戦艦の上位艦種。51cm砲搭載。美濃は竣工と同時に投入)
・『改大和型戦艦』×2(大和など。第三次近代化改修途上であったため、現地で簡易的に主砲交換を行っているが、CICなどは新設済み)。
『超甲型巡洋艦』×5(大和型戦艦の護衛などを目的に設計された。空母機動部隊増設で廃案になっていたはずだが、伝えられたデモイン級重巡洋艦があまりにも高性能な事に怯えた用兵側が未来世界の援助を理由に計画を甦えらせた。想定用途上、戦艦との交戦は基本的に考慮されていないが、日本側の提言で、巡洋戦艦化が検討されており、主砲強化が検討され、試作砲のテスト段階であった)
これが当時に動員可能な大型戦闘艦艇であった。扶桑上層部が必死に大枚を叩いて揃えさせた次世代型大型戦闘艦艇の六割を動員させていたので、旧世代艦の一斉整理が叫ばれたのも事実だが、戦時中の人員の行き場の確保の意味合いもあり、紀伊型戦艦の残りの三隻、加賀型は維持された。紀伊型はこの時に二隻が受けた損傷もあり、航空戦艦化される。本土で予備艦であった加賀型戦艦は上陸支援艦に転用される。つまり、戦艦は大和型戦艦以降の世代で統一しようとする勢力の策動であった。これは紀伊型を容易く砲撃で撃沈したモンタナの高性能が呉の市民によって啓蒙されてしまい、扶桑国民が建艦運動を起こしてしまった影響で信濃型航空母艦が潰れた。雲龍型航空母艦の増産で代替しようとしたら、それも45000トン級中型空母(10万トン級が大型になった影響)のプランに変更されたため、空母改装用意中の伊吹型は計画が撤回、当初通りの重巡洋艦として建造される事になった。(鈴谷型でなく、高雄型の流れを汲む線図が引かれた)また、軽空母として完成した艦艇が一部、客船への差し戻しも決まるなどの混乱が生じた。これは航空機の母艦としての性能不足が理由にされたが、ウィッチ母艦としては、瑞鳳や祥鳳、千歳型航空母艦でも役目は果たせるはずであった事から、海軍ウィッチ達の反発を招いたのも事実だ。しかし、当時の制空ウィッチ達の倫理観的に、戦闘機を撃ち落とすのにあらゆる事をするという事はできないため、必然的に64に負担が行っていたのは覆しようはない。そのため、64は実質的に制空/対艦攻撃/偵察、要撃など、あらゆる任務を担わされていると言っても過言でなく、501も実質的には64の出張所的扱いになっており、両者は一体化して運用されている。また、赤ズボン隊の後送を補ってあまりあるプリキュア出身者の登場は連合軍には福音であった――
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