外伝その276『軍中央の混乱』


――日本による事実上の粛清人事は皇道派、統帥派と言った戦前の軍閥の一掃を狙ったものの、ダイ・アナザー・デイ中から強引に始めたため、東條英機というパトロンを失った海軍ウィッチらの混乱を招いた。

『これはあくまで机上の演習でありまして、戦というものは、 計画通りにはいかない。(この演習の結果は)意外裡の要素というものを考慮したものではないのであります』

東條英機は総力戦研究所の言うとおりに、太平洋戦争が推移した事に責任を感じ、母国を去ることを決意。ウィッチ世界では事変時に担ぎ出されてて、比較的早期に失脚していたものの、同位体の国への責任を背負うとし、妻共々にバード星へ移住していった。これに反発した者の多くがクーデターに加担する。これは転生者には『予定通り』の展開であり、流血を最小限度に抑えるため、今村均や山本五十六はGウィッチをウィッチの模範として、プロパガンダしていく。粛清人事の副作用として、参謀級の尉官や佐官が大量に中央から追放されたため、ダイ・アナザー・デイでは、一部のGウィッチが参謀職まで兼任している。東條英機の誤算は転生者の存在を信じなかった事、華族になりたいとする野心を持っていたと木戸幸一などに解釈されたほどの戦への姿勢そのものだったろう。また、英機当人は政治家を水商売と同列視して嫌っていたのを責められ、反論したことで木戸幸一も失脚したわけだが、東條は永田鉄山の死と共に引き継いだ軍閥に自らの手で終止符を打つ事になった。そこから扶桑皇国は混迷の時代に突入していく。軍閥の失墜とともに、改革派で作るY委員会の台頭は当然の流れであった。






――ウィッチ部隊はこの時、発達したMBTやジェット戦闘機と言った先進兵器に押され、戦場の主役の座から実質的に陥落していた。敵は怪異ではなく、人間という事実により、ウィッチ部隊のサボタージュも絶えず、Gウィッチだけが実質的にマドリード付近の制空権を維持する役目を担っていた。空戦と陸戦を両立させられる戦闘力を持っているウィッチは希少であり、黒江達は実質的にその第一号であった。戦闘の様相は誹謗中傷とは裏腹に、血みどろの死闘であり、のび太もその一翼を担っていた。青年期以降は敵には情け容赦ない側面が表れ、ハリー・キャ○ハンさながらのガンファイトをしていた――

「弾は少なめ、狙いは正確に」

クイックドロウでは、のび太はデューク東郷をも凌ぐ。プリキュア達の援護射撃にピカイチの精度を見せ、特製のマグナム弾を見舞う。元々、彼はクイックドロウで名を馳せていたため、兵士の無力化にはうってつけであった。プリキュアとして覚醒済みの者たちが徴兵されて士気の低い末端の兵士から倒し、のび太が指揮官の将校を倒す。徴兵制で召集された兵士は昔から士気が低い。それは好戦的風潮があるアメリカであっても同じである。とびっきり強い部隊を置くだけで、軍事的抑止力になり得る。上層部はそれを狙ったのである。また、通常の兵士に改造人間を混ぜる戦法もバダン仕込みで行われていたため、のび太の援護が必要不可欠であった。また、機械獣やベガ獣なども混じって襲ってくるので、それは各種スーパーロボットか、その力を持つロボットガールズが担当した。


「デスパーサイトぉ!!」

ガイちゃん・ザ・グレートのデスパーサイト(手刀)が炸裂し、機械獣を一刀両断する。ガイキングの平成版かつ最強形態の力を宿すため、機械獣程度はガラクタである。

「ふふーん。雑魚い機械獣なんてお呼びじゃないぜ!サーペントバスター!」

ガイちゃんは各形態の技を使い、プリキュア達を援護する。

「おーい、お前らー、突撃だ突撃ぃー!」

「は、はい!」

ガイちゃんは黒江の親友ポジションであるため、プリキュア達より上位の立場であり、公的に指示を出せる。基本は熱血漢だが、生まれたばかりのZちゃんよりは思慮深いためにこうした役回りも演じるのである。


「ルージュ、せっかく覚えたんだし、ダブルでいっちゃう?」

「アンタ、サッカーとかフットサルの経験ないでしょ?」

「わたしの世界だと、サッカー部の顧問やらされてた時期あってさ。それで」

「そっか、正確に言えば、アンタは別の世界の……つか、今は意味ないことね」

「うん。いくよ、ルージュ!」

「久しぶりに暴れてやる!」

『プリキュア!ダブルバァァニング・ストライィィク!』

プリキュア・ファイヤーストライクをダブルで放つ合体技。マジンガーZとグレートマジンガーのダブルバーニングファイヤーに肖ったらしい即興の技名である。その威力は機械獣軍団の隊列に風穴を開けるほどであった。

「まさか、アンタと合体技を撃てる日が来るなんてね」

「ルージュって、サニーかマーチと組むのがお約束だったよね」

「そこは一緒なのね?まったく、一つ以外は同じような道筋ってわけね。」

「そういう事〜。おっと!」

「雑魚は退いてろぉ!」

同時に二人の兵士を後ろ回し蹴りでぶっ飛ばす。元々、ドリームとルージュは幼馴染であり、組んだ場合には抜群のコンビネーションを発揮できる。プリキュアにとって、生身の兵士、職業軍人ならいざしらず、白兵戦の訓練密度の低い徴兵の兵士の場合、プリキュアの敵ではない。吹き飛ばして気絶に留めるが、後続の兵士を怯えさせるには充分だ。

「つーか、第二次世界大戦にあんな巨大ロボットを出してくるわけぇ!?反則よ、反則!!」

「敵は色々と絡んでるんだよ。だからこっちも相応にやんないとな!ボルトパライザー!」

ガイちゃんは必殺技を連発し、制空権を確保する。何気に背中のGウイングで高機動戦を披露しつつ。

「ミラクルドリルランス!」

グレートの状態でもドリルランスを召喚は可能であり、ドリルと剣と槍を兼任させての高機動戦闘を見せる。その速度はゲッターライガー以上であり、強者ぶりを見せつけるガイちゃん。これだけの強者達を揃えてなお、戦局に影響が中々出ないのが本気になったアメリカ系国家である。第二次世界大戦当時としては世界最大最強の国家とされたのは伊達ではない。他のウィッチ部隊が人同士の戦争でサボタージュした事もあり、64/501がほぼ一部隊でイベリア半島戦線を支えていた。しかも『政治的理由』で交代要員をあまり確保できなかったことは扶桑にとっては、内乱を決定づけるものだった。扶桑海軍にとっては災難だが、上層部の前世代の人員がレイブンズのかつての戦果を結果的に隠蔽した事が内乱に繋がったため、当時の時点で中佐だった江藤が一定の責任を負うのは当たり前であった。(武子は当時、まだ新米の少尉であり、責を問える立場ではないので、その分が佐官の江藤に行ったため、武子は生真面目である故に自責の念を持つようになったが、レイブンズと懇意にある将官と佐官級にとっては、内乱は既定路線である)こうした混乱はこの時期には当たり前であり、前線部隊のサボタージュが頻発したため、必然的に64/501に負担がかかるようになっていた。

「ところで、他の部隊がなんでこないんですか?」

「サボタージュだよ、サボタージュ。自分たちの領分じゃないからって、出動を拒否ってやがるんだよ」

呆れ気味のガイちゃん。ウィッチ部隊はマドリード付近にいくつも展開しているが、実働しているのは501/64のみという嫌がらせにも程があるもので、上層部も扱いに困っていた。『反逆者』として家族を摘発して、督戦する案も出されるほどである。日本にとっては、ウィッチ部隊という、わけがわからない代物よりも近代兵器に予算を回したいために人員削減の対象だったし、ジュネーブ条約違反と言われるのを恐れた一部勢力の策動もあった。ウィッチ部隊は『10代の内しか力を奮えず、20代間近になると衰えるのに、18歳からしか志願させないのは、どういう了見だ』という反発も含まれていた。しかし、欧州大陸が蹂躙されそうな時にサボタージュしている場合ではない。ましてやカールスラント本土は制圧状態、ガリアは荒廃していて、往時の面影は微塵もないのに、だ。金属資源を吸い尽くす怪異の特性を考えるに、21世紀前半には宇宙開発を未来世界の22世紀半ばの段階くらいに進めないとならなくなると見込まれている。そんな状況だからこそ、サボタージュが問題となるのだ。

「なんとかならないんですか」

「督戦させるわけにもいかないだろ、コミュニスト共の軍隊でもあるまいし」

「コミュニストぉ?」

「昔、ロシアがソ連邦だった時代、共産主義者はそう呼ばれてたんだよ。しょうがないから、上はあたしらを参戦させて日米英軍へ面目保とうとしてんだよ」

扶桑軍は連合軍の中心に登りつめたものの、前線ウィッチ部隊のサボタージュが顕著になり、連邦軍が厚意で派遣している『ロボットガールズ』や、黒江の人脈で集結したヒーロー達に仕事を押し付ける事態に陥っていた。扶桑は米英軍に『前線の統制が取れない』と揶揄されており、その事も64の肥大化に繋がる。サボタージュしている部隊から根こそぎ古参兵を引き抜き、64に回すのである。この時期には、部隊解散を脅しに使って。未来世界の技術で若返り処置が出来る様になったり、その影響で魔力減衰が起こらなくなった者が一般的定年まで働ける制度に改定されてはいたが、摂理を無理に捻じ曲げているとの反発が絶えなかった。結局、この数週間後、ウィッチについての基本方針として、『ネウロイの討伐要員としてなら義務教育終了の16歳から実働可能、国家間の戦争については日本連邦軍結成時点で軍籍に在る者は、『特例』として在籍を認める』ことでようやく決着するが、軍ウィッチ達の暴発は避けがたくなり、暴発に至るのだ。


「ん、ドイツ軍だ」

「ロンメルのおっさんが手を回したな?重戦車大隊なんて、南米に疎開した本国でもあまり編成されてないぞ?」


戦場へ、最近はセンチュリオンとコンカラーの配備で陳腐化した嫌いのあるカールスラントの戦車隊が一同の支援にやってきた。戦後世代の重戦車であるコンカラーには見劣りするが、時代相応の技術で見るなら、最強を謳われし重戦車『ケーニッヒティーガー』を要する重戦車大隊であった。ケーニッヒティーガーはドイツの技術援助で足回りが強化改善されたロットで、史実より遥かに良好な機動力を持つ。(ただし、いずれはレオパルト戦車に代替予定であり、最後の花道という体裁の強いものだが)ガイちゃんの言う通り、重戦車はウィッチ世界では本土防衛部隊としての配置が主で、生産数も希少であったが、ダイ・アナザー・デイの長期化を打破するために増産されていたが、横槍でややこしい事になり、カールスラントはレオパルト2戦車の提供で、扶桑は74式のライセンス正式化とチトの改良で手打ちとなった。チトを主力とする思惑は扶桑には無かったが、チリの主力化が頓挫したので、日本で詳細な設計が残っていたチトが次期主力となったのである。



――基地では――


「軍人で有るなら軍人として働け!軍は国家、国民を守るためにありとあらゆる“敵”と戦う為に有るんだ!!貴様ら、軍はなんのためにあるか言ってみろ!」

この日も黒江はサボタージュする部隊の現場責任者を怒鳴りつけていた。さすがの黒江も怒鳴りまくっていたので、疲労困憊である。不意に、電話口でボコッと景気のいい音が響く。

「申し訳ありません、先輩。私の監督不行き届きで…」

「なんだ、貴様が責任者か?斎藤」

電話口を分捕ったのは、黒江が47F在籍時の後輩だった。こうしたパターンが多かった。黒江の直接配下にいた新人・若手も、45年になると管理職になっていたため、黒江の部下が部隊司令に栄達したケースはごまんとあった。そのため、部隊責任者が自分の部下に失望し、一隊員として、64Fに転属するケースもかなりであった。

「ガキ共には呆れ果てたので、分隊長の部隊に転属します。もう転属願は出しました」

「一隊員としてしか扱えんが、いいのか」

「構いません。昔に戻るだけですから」

64の構成人員の階級に少尉以下がめったにいない理由はここにあった。古参がどんどん自然と集まったため、中尉〜少佐がもっとも多かった。ダイ・アナザー・デイ中の時点でも、サボタージュ中の部隊から隊員志願の古参が続出したため、その振り分けも大変であった。

「お前で15人目だぞ、これ。旧時代、47F時代合わせて、な」

「先輩の部下経験があるの多いですからねぇ。今の私くらいの年代」

「全くだ。今のガキ共は芯が入ってねえし、軍の任務を勘違いしてやがるんだからな」

黒江がこの時期の若手に辛辣であるのは、黒江は根っからの職業軍人であるが故で、危機が迫っている時にサボタージュを行う者たちは手段が目的化している時点で、軍の古参の面々の支持を失っていたと言える。

「とにかく、ウチの居所は分かってんな?宮藤を使いにやるから、合流しろ。以上だ」

黒江はため息をつく。予想以上に若手と古参の間に溝があるからだ。そして、ウィッチ世界にゲッター線が充満することでプリキュアや自分達に何をもたらすのか。未来世界で繭になって眠りについているゲッタードラゴンと車弁慶の復活にも絡んでいる。前史で巴武蔵がゲッターの使者として言った『ゲッターは…大いなる意思の戦いなのだ。それでなくては、宇宙に存在するゲッターの意味がないのだ!!』、ゲッターの意志の『生命は純粋になればなる程に、より強大な宇宙を求め、宇宙を喰ってゆくのだ!』という言葉がよぎる。

「これがゲッターとマジンガーの望む道なら、やってやるさ。ZERO、それと大首領ジュドめ。目に物見せてやるぜ」

黒江は独白する。自らの使命を果たすために。強大な敵との闘争の道。それにドラえもん達は敢えて、首を突っ込んでいるのだ。通りすがりの正義の味方として。忘れられがちだが、ドラえもんは度々、このフレーズを口にする。たとえ、自分達にメリットがなかろうと、遠い異星人達の政権転覆にも手を貸している以上、ドラえもん達は戦いには慣れっこなのだ。また、ドラえもんとのび太のみは魔界との戦いの経験がある。(魔界大冒険でのしずか、ジャイアン、スネ夫はあくまで、平行世界の彼らであった)ドラえもん達は一度誓った友情を裏切らない。それもあり、黒江と共に戦っているのである。今の黒江の第三者の立場からの最大の理解者は彼らなのだ。

「それが貴方の選んだ道、ですか。最後まで付き合いますよ。僕たちにはその資格がある。通りすがりの正義の味方として」

「なんだ、来てたのか。ドラえもん」

「僕たちと貴方の関係を道化とかいう連中がいるけど、僕たちは僕たちなりの流儀がある。通りすがりの正義の味方っていう、ね。最後まで付き合いますよ。僕たちには時間は意味がない概念ですから」

「そう言ってくれると助かるよ。誹謗中傷が毎日毎日寄せられるから、転生前なら、絶対に鬱病になってるぜ」

「のび太くんは言ってますよ、『結果的に英雄扱いされても僕は僕の心に正直にやっただけなんだ。だから記録に残らなくても誰かの記憶に残れば良いんだよ』と」

ドラえもんは普段の姿に戻っていたが、黒江の使命に最後まで付きあうとし、タイムマシンがある以上、時間は意味がない概念であるとも言ってシニカルな微笑を浮かべ、俗にいうSF短編集っぽい雰囲気を醸し出す。懐かしの大山の○代ボイスで言うので、どことなくアンバランスさも醸し出す。

「キュアフェリーチェ、いえ、はーちゃんは子供ののび太くんのところに送ります。のび太君の妹枠その2ですね」

「あいつ、一人っ子だったから、きょうだい欲しがってたからなぁ。はーちゃんの療養も兼ねて、2001年頃に送り込め。調も軍の教育を受講し始めたから、そう戻れんしな」

「了解。手配します」

黒江は、仮面ライダーディケイドが助けた魔法つかいプリキュアの生き残りであるキュアフェリーチェ/花海ことはを2001年の野比家に送り込むことをドラえもんに指示した。歴史的には、調、それとはーちゃんこと、花海ことはが野比家の常駐枠であった事となる。キュアフェリーチェは大地母神としての役目も担っていたが、ZEROには歯が立たなかった。また、自分の力が正面から通じない相手に精神的ショックを受け、しばらくプリキュア状態のままであった。現在は他の二人の蘇生措置が知らされたことで安定し、ことはの姿に戻っている。彼女は妖精から人間、そして神に到達したプリキュアだが、ZEROはそれをねじ伏せるということだ。

「はーちゃんには残酷な光景だったろう。だが、のぞみも仕事の理想と現実に打ちのめされた世界線の人格がメインで、りんも妹のことで打ちのめされた世界線から来た。だからこそかな?」

「残酷な光景は悲しいですけど、時として、強さを与えてくれます」

「のび太がおばあちゃんとの思い出を糧に子供時代を、大人になってからはお前との日々を拠り所にしてきたみたいに、か」

「ええ。一輝さんも言ってたように、『不死鳥は灰の中から羽ばたくんです。プリキュアのみんなには闇もあるけど、それを乗り越えないとならない。炎の中から鳳凰が羽ばたくようにね」

「鳳翼天翔でも覚えさせろ、ってか?」

「そこは任せますよ。撃てるんでしょ」

「見まくったからな、あれ。シャカには効かないらしいお約束だったな」

フェニックス一輝の必殺技『鳳翼天翔』。一輝の実力もあり、技の本質を見切っている乙女座のシャカしか見きれなかったことで有名で、一輝もシャカにだけは通じぬと言っている。ドラえもんは黒江が撃てることを知っており、口にする。苦笑いしつつも否定はしない黒江。

「あ、なんでプリキュアを正規軍人にしたのかって、どこかのお母さん方からクレームが」

「ウチはBPOじゃねぇぞ…軍にそんなクレーム送るなんて、どこのPTAだ」

「とりあえず答えないと、財務に突っ込まれますよ」

「銃後が強すぎても考えもんだな、こりゃ。海援隊がスカウトしにきてたけど。断った。21世紀の日本は民間軍事会社をならず者と思ってるしな」


――民間軍事会社。冷戦後の軍縮の時代に台頭した傭兵の発展型に位置する軍事サービスである。しかし、金儲けで動く傭兵と同一視され、評判はいいわけではない。実際、それが盛んになった23世紀でさえ、民間軍事会社の強大化に歯止めがかかり始めた。それは間接的に21世紀の日本の海上保安庁からの海援隊への敵視にも繋がった。時の海上保安庁長官はこの後の殴打未遂事件で更迭されるが、省庁からの風当たりは最悪レベルで、癒着とさえ批判された。誹謗中傷から海援隊を守るために『国営組織』にするなど、民間軍事会社には風当たりが強い風潮になりつつあるため、黒江はプリキュア達を正規の軍人にしたのだ。特に21世紀の日本は、民間軍事会社を金儲けの傭兵と解釈し、海援隊の解体を強行に迫る勢力がいたため、それから守るために第二海軍化が内定していたため、正規軍人にしたほうが政治的に安全だったのだ。23世紀でも正規軍が政治的に復権するに従い、民間軍事会社の人員を正規軍が逆に取り込む事例も確認されている。イサム・ダイソンがそれに当たる。せっかくS.M.Sに転職したのに、民間軍事会社を毛嫌いする正規軍の司令官が無理矢理に彼の軍籍を復活させ、『出向』扱いに変えさせる珍事の当事者になった程である。(アウトソーシングの行き過ぎを懸念したという大義名分はあるが、契約違反に当たるため、軍部は違約金を支払う羽目になった)これは21世紀の日本の政治家が自分の無知も関係しているが、23世紀の軍高官と扶桑軍高官に『傭兵連中にシーレーン防衛任務を代行させるなど、職業軍人の誇りはあるのかね』と軍へ苦言を呈したのも関係している。海援隊は数年後、第二海軍化によって国営組織になり、坂本/才谷家の手からは半ば離れていく。プリキュア達を全員、正規の軍人にしたのは、海援隊にスカウトされて傭兵と批判されるよりは、正規軍人として遇したほうが日本の一部勢力の批判を躱せると踏んだからだ。(海援隊にははた迷惑な話だが)実際、軍と海援隊の関係は癒着と批判されていたため、プロジェクトの一環として、軍部でプリキュアを抱え込んで、彼女たちに居場所を与え、守る事も目的であった。海援隊では、海上でしか活動出来ないので、フリーハンドで動かすには正規軍に入れる必要があるのだ。また、フィン・スタビライザーや八木・宇田アンテナの事で、見識の無さを理由に、海軍技官と提督の少なからずが人員削減対象になったため、人員と予算の削減を防ぐため、早期警戒管制機の導入(レドーム装備)、全艦艇への3次元レーダー搭載、対空火器のオートメーション化を急ぐのも計画に入る。(史実では、敵を前にして電波を出すなど、暗闇にちょうちんを灯して、自分の位置を知らせるも同然という意見が大半であったので、怪異という目に見える脅威があったおかげで、艦艇へのレーダーの普及が進んだ扶桑海軍にとっては『傍迷惑』であった。また、航空機への電探搭載はウィッチ部隊で代用可能とし、研究が遅れていた)急激に高度なオートメーション化を進めたため、艦艇の乗員は1000人単位で削減され、その分が空母に回された。また、護衛艦型に軽巡の特徴(一定の装甲防御)を取り入れた艦が駆逐艦/軽巡の代替として主流になり始めた事による在来型の駆逐が予想以上に迅速であったのが、海援隊と海軍の約束の有名無実化を進めてしまったのも否めない。こうした動きに焦った海援隊の運営責任を担う坂本/才谷家は、才谷の現当主が黒江の学生時代のクラスメイトというコネがあるのに気づき、黒江に接近を目論む。この頃には既に、繁栄の礎を築いた英傑・坂本龍馬は亡く、その孫の世代に突入していたので、政治への直接的影響力が減退したからでもあった。黒江はこの動きを利用する事を既に考えついていたが、当主が自分のクラスメイトだった事にはまだ気づいていなかった。数年後の同窓会でそれに気づき、関係を思い出したことで海援隊を味方につけることを実行するが、この頃はまだ海援隊の先代当主で、初老に差し掛かった才谷美樹のみが気づいていた段階であった。黒江当人の性格が当時の『深層の令嬢』っぽいものから、現在の『軍部を裏で牛耳る女傑』と言われるものと激しくかけ離れていたためだ。しかし、黒江は転生者なので、小学生当時は猫を三重くらいに被り、擬似的に当時の自分を再現していたためで、今回の地は普段の粗野な性格である。黒江は単に小学生時代を忘れていただけであり、同窓会で思い出していくのだ。なんとも間が抜けているが、黒江も人の子なのだ。



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