外伝その277『果てなき希望』
――青年のび太から件の連絡を受けた少年のび太ははーちゃんを受け入れる準備を始めつつ、自身は中学校に進学した。2001年はのび太が中学校に進学した年であり、この頃の学業はまだ地を這うままである。ちなみに黒江は2001年時点では防大三年目で、二年後に三尉で任官された。黒江は各時代をタイムマシンで行き交っていたので、時系列の意味は薄れていたが、ダイ・アナザー・デイ中は統括官任命後の時間軸に滞在している。2001年に滞在している時は防大生として活動しているという風に、時代の立場に合わせている。黒江は2000年代後半では、職業軍人の立場を明らかにしたことでの法廷抗争に明け暮れていたので、基本的にその時代であまり活動していない。2009年以降はブルーインパルスに在籍したりするなど、傍からすれば華々しい扱いだが、内規が作られて幕僚長への道は閉ざされたことでもある。ただし、その頃は革新政権の不祥事が頻発するため、黒江は何かと多忙であるために、比較的情勢が穏やかで、のび太もまだ若い2001年に、はーちゃんを送り込んだのである。若いといっても、当時の年齢は中学校入学程度だが、精神的に成長し始めた頃でもある。
「大人のぼくも色々大変だなあ。こっちはまだ中学校だけど、向こうは子持ちだしなぁ」
13歳ののび太。中学一年ながら、背丈は160cm前半に達し、成長期に入っていた。生活態度は小学校時代からあまり変わっていないが、変声期に入り、声のトーンが下がり始めていたし、肉体的には少年から青年に成長し始めていた。スネ夫が私立の中学に行き、徐々にのび太の生活も変質し始めていた時代で、この頃から街の再開発事業の話も出始めていた。また、調はダイ・アナザー・デイ中ながら、休暇をとり、はーちゃんを紹介するのも兼ねて、2001年に一旦戻った。
「君がはーちゃんだね?事情は大人のボクと調ちゃんから聞いてる」
「花海ことはです、その、あの、よ、よろしくお願いします」
フェリーチェの状態で長くいた影響か、元の姿になっても、敬語を使うはーちゃん。そのあたりは長時間の変身の影響だろう。ちなみに2001年は初代プリキュアの二人もまだ11歳だった時代で、プリキュアが活躍する時代より前の頃だったりする。
「2001年へようこそ。君がいた時代からは20年近く前の頃だから、まだインターネット回線も遅いし、ゲームも古いし、携帯電話すら普及途上だけど、不便ではない時代だよ」
「本当だ〜。どこか昭和レトロっぽい」
「レトロってほどじゃないな。90年代の名残りが残ってる頃だし」
「あれ、ノートパソコンあるんだ」
「2010年代に比べれば、こんなのおもちゃさ。本体のメモリがギガに届いてるか怪しい頃だし」
少年のび太の言う通り、青年のび太が持つPCと少年期に流通していたノートパソコンは天と地ほどの性能差がある。2001年上半期ではメモリ容量は500メガバイトあればいいとされたが、2018年では、高性能マシンでテラバイトに達する。また、TVゲームもHDDがつくようになる革新が待ち構えている。
「これでも授業で必要だからってんで、パパに買ってもらったいいヤツなんだ。まあ、半年もすれば古くなるけど」
「そっか、2010年代になると、PCってメモリ容量が増えるとか、安定性が上がるくらいしか変化がないって聞いたっけ」
2000年代はPC技術が上がっていく時代であるため、2006年の高級ノートが2012年には骨董品とされるくらいの性能向上が起こった頃でもある。学園都市では2001年の時点で外の世界の2016年相当のものが流通していたので、その点が学園都市の当時における技術的優位であった。この時代は学園都市の技術が圧倒的とされていた時代の後期に入った頃であり、アングラな世界ではそれが使用されていた頃である。外の世界が2001年の学園都市に追いついたのが2015年なので、上条当麻と御坂美琴が現れる時代まで、学園都市の繁栄は続くのである。
「そういう事。裏の世界じゃ、16年後くらい相当の性能と安定性のモノが流通してるけど、政府は公にはしてない。政府が世界を変えうる力を日本に持たせたくなかったし、貿易摩擦を恐れたしね」
しかしながら、ここから10年後くらいに学園都市は戦争を始め、ロシアを蹂躙する。その時になり、学園都市への抑止力に黒江と赤松らを使い始め、時の政権は扶桑出身者への冷遇を終えていくのである。革新政権の致命的ミスはロシアとの戦争を単独で行える力を学園都市が持つと考えなかった楽観的憶測だろう。また、のび太が持つノートPCは青年のび太により、管理局の技術での改造がなされており、次元間通信機能と時空通信機能が追加されている。青年の自分やダイ・アナザー・デイに従軍するドラえもんとの連絡用である。23世紀の次元間携帯電話と接続可能なように改造されているが、2001年の技術者は気づかないように細工がされている。そのあたりは青年のび太が手配した。ダイ・アナザー・デイでバトンタッチする際のお土産である。
「まあ、大人のボクに改造してもらったから、未来世界のネットにつなげるし、買い物もできるんだけどね」
この頃から、のび太は両親が絶対に自分の望むモノを買い与えてくれないことを悟っていたので、独自のルート(代金は青年の自分やノビスケ持ち)で嗜好品を揃えていた。未来から嗜好品を買い揃えるというもので、ひみつ道具の使用を避けたいというのび太自身の考えもあり、実行している。この頃には地球連邦軍からの慰労金がこの時代の国連を通して支給されており、のび太の懐具合は改善し始めていたためでもある。玉子ものび太が13歳になり、小遣いを2500円に上げていたが、相変わらずの『子供に大金は持たせない』主義であるため、のび太は口座の存在を秘匿し、妹分の調の名義にしている。のび太自身の名では玉子が凍結させかねないからだろう。(ひょんな偶然から、のび太の貯金を生活費と勘違いした事もあるため、それを危惧したために調に頼み込んで、彼女名義で口座を作ったのだろう。のび太が自分名義の口座を持つのは、2004年の高校入学後のことだ)
「のび太君、今月分の慰労金」
「ああ、ありがとう、調ちゃん。今回の休暇は何日くらいいられる?」
「プリキュアのみなさんが入ってくれて、長めに取れたから二週間はいられるよ」
「初代プリキュアの二人も、この時代じゃまだ小学生だけどね。あの二人の活躍はボクが中三になった頃からだし」
「え、そうなの?」
「うん。初代の活動時期は2003年くらいからだしね」
正確に言うと、2004年から2005年がなぎさ、ほのか、ひかりの活動時期である。その次がスプラッシュスターの咲と舞の時代、そのまた翌年からの二年がのぞみたちの時代だ。そのため、魔法つかいプリキュアとプリキュア5以前の古参のプリキュアとは、お互いの年齢がそれなりに離れている事になる。
「え?で、でも何度か会った事あるけど、私達と同じくらいの…」
「次元を超えて呼びだされると、そういうことはあるさ。特に、プリキュアは平行世界に跨ってるんだ。実際は年が離れてるのはよくある」
「オールスターズだと、現役時代からそれほど経ってない頃からみんな集まってるっぽいしねぇ。貴方がいた時代だと、初代は28歳になってる計算だよ」
「嘘ぉ!?」
「ま、平行世界のお約束だから、そういうのは気にしないでよろしい。僕なんて、君の元いた時間軸だと子持ちの年代だしね」
「師匠なんて、2001年の時点で80歳だしなぁ」
「えー!?あの人が!?」
「言っとくけど、師匠、貴方の知ってる魔法と別ベクトルの魔法の使い手で、一応、神に選ばれた戦士」
「うん。あの人は特殊でね。君が大地母神なら、戦神に仕える下っ端の神に当たる新米の神。君と同じで、肉体は維持してるが、物理限界を超えてるよ」
黒江と智子は聖闘士として、通常の物理限界を超越した状態で神格に登りつめたため、生身でクロックアップ(ハイパークロックアップ)も想いのままに可能である。動きが超光速となった故の副産物だが、プリキュアを超えていると言われるのは、超光速の拳が全力で奮われた場合、スーパープリキュアであろうと手も足も出ないのが容易に想像できるからだ。実際、黒江はドリームとルージュを同時に相手取って余裕の一言であった。
「つまり、あの人が本気を出せば?」
「初代の二人くらいじゃないかなあ。素で対抗できそうなプリキュア」
「確かに、あの人強そうだったけど」
「まあ、神になった以上、普通のプリキュアじゃねぇ」
苦笑交じりの調。歴戦の勇士であるキュアドリームとキュアルージュを相手どって余裕であったのが黄金聖闘士たる所以であった。黒江はその気になれば、歴代プリキュアが束になろうと、一瞬で殆どを一撃で気絶させられるのだ。
「ん、未来のしずかちゃんからだ。何々、ラ號が2019年で公にされたのか」
ここでのび太のPCに28歳のしずか(結婚後)から一つの連絡が入った。ラ號の事が2019年の日本で地球連邦軍の艦艇という形で公にされたというニュースだ。その記事をのび太はネットのニュースを閲覧してみる。
――元・大日本帝国海軍ラ級戦艦であり、大和型戦艦797号艦の後身たる、『ラ號』の勇姿が公にされたのは2019年のことだった。ラ號は元々、昭和15年にナチスから提供された重力炉を組み込んだ海底軍艦として計画され、大和型戦艦の五番目の姉妹『797号』艦をベースに、超大和と計画を統合して、超大和規格で建造された艦で、まほろばと違い、軍部の公的な極秘計画であった。計画が具体化したのは、あ号作戦の失敗で絶対国防圏崩壊が時間の問題とされた44年の6月。神宮寺八郎予備役大佐を長とした外郭団体『轟天振武隊』が建造の責任を負う形で進んだ。東條英機がオーバーテクノロジーとウィッチで起死回生を目論んでいた時期に相当するため、東條英機が首班であった時期に認可したと言える。起死回生のオーバーテクノロジーと古の奇跡を調査、使用する『轟天計画』。一説によれば、鉄人28号も研究されたとされる。しかし、連合艦隊が急速に衰えていく戦争終盤の戦況では、それらは焼け石に水であった。通常兵器の新型の開発にさえ行き詰まり、せっかくの51cm砲もまほろばに回されて、ラ號に積めなくなり、余り物の信濃用の部品を組み込む有様であった。まほろばが坊ノ岬沖海戦に間に合ったが、存在が第二艦隊司令部にも知らされなかったので、大和は航空機の餌食となって天一号作戦は失敗に終わり、鈴木貫太郎は本土決戦を避けるべく、轟天計画を葬り去る事にし、終戦の前日に零部隊、まほろば、ラ號の関連書類を焼却し、闇に葬った。しかし、それに反発した神宮寺八郎は終戦直後にラ號のパーツと図面を、1944年に完成していた秘密基地に運び込ませ、そこで1960年代に完成させたのである。影山コンツェルンに残っている記録によると、1963年に竣工らしい。鈴木貫太郎は神宮寺大佐の説得に骨が折れたらしく、『あの男は宇垣君や大西くんよりピュアな男だ。帝国海軍は無敵という、東郷元帥の幻影に取り憑かれておる。連合艦隊は敗れたのだ。大和の沈没でな』と米内光政に愚痴ったという。皮肉にも、神宮寺八郎は帝国海軍の中興を拠り所に、自身が老境に達する時代までコツコツとラ號を作り続け、ついには完成させていた。そして、1970年代、イナズマンがイナズマンFとして戦っていた頃に一度だけ、当初の武装でイナズマンの敵であるデスパー軍団を迎え撃つために出撃、その帰路で昭和天皇がラ號を目撃している。それからはまた秘匿され続け、1990年代には近代化で砲塔がレールガン化され、メーサー兵器も積まれたという。22世紀、宇宙戦艦ヤマトの時代の頃に、ヤマトの僚艦という形で宇宙戦艦に改造され、それ以降は軍艦に立ち帰った立場である。また、メカトピア戦役が終わった後に再度の近代化がされている。外見は21世紀当時と大差ないが、主砲が日本海軍の当初の計画通りの45口径51cm三連装砲(ショックカノン)三基に換装されており、装甲も相応に強化され、対空火器は23世紀基準のパルスレーザーや煙突ミサイルに換装済みであった。日本海軍の秘匿され通した最終兵器が『23世紀の最強戦艦たる、かの宇宙戦艦ヤマトと同等レベルの改装で地球連邦軍のシンボルと化している』。これは全くの予想外の展開であり、国連をも困惑させた――
「何々、〜〜党党首の〜氏は『日本海軍が隠し通していた戦艦なら、影山コンツェルンはその存在を明らかにすべきだった。そもそもGHQ指令で日本軍の残存兵器は接収すると指令が〜』?馬鹿だなあ」
ラ號はそもそも、民間企業が軍へ献納するという形式で海軍の航空派の目を誤魔化して建造が予定されていたため、敗戦で献納がキャンセルされた以上、企業の持ち物のままだし、企業の持ち物を接収する権利は国連にもない。少年のび太は2019年になっても、トンチンカンな事しか言わない政治家に呆れる。
「2019年になっても、政治家がこれじゃ、日本の国会は思いやられるよ。僕たちがポータブル国会で決めたほうがマシだね」
「日本って、いつの時代も野党が国防に口挟むからねぇ」
「まったく、ラ號を解体したいなら、ストレートに言えばいいのに。大和の最後の生き残りだから、選挙に負けるのに怯えてるのが見え見えなんだよな」
のび太はこの頃には、青年の自分自身とやり取りしているため、2019年の日本で起こっているラ號の処遇の議論には冷ややかである。ラ號は大日本帝国海軍の忘れ形見かつ、大日本帝国の亡霊。革新系政党は当初、大日本帝国の亡霊と批判したが、扶桑の大和型戦艦を運用する立場にある与党から非難が飛ぶという自己矛盾に反論できずに防戦一方であった。記事のコメント欄には『扶桑からレンタルせずに、ラ號を使えばいい』趣旨のコメントが多かったが、結局はラ號は22世紀まで隠され続けるのである。野党への説明を防衛省が渋ったり、ラ號の運用に必要な人員の見積もりが出来なかったため、ジェット戦闘機時代での空中戦艦の有効性などの疑問があったからだ。(その疑問も、イギリスもフォークランド紛争で出せなくなった一因であるため)結局、ラ號は21世紀日本の手では運用されず、宇宙戦艦ヤマトの時代になって初めて、本来の軍艦としての本懐を遂げるのだ。その事を23世紀の最終形態・ラ號は妙実に表しており、海上自衛隊と航空自衛隊の管轄なのかという問題もあり、ラ號の運用の夢は21世紀では検討のみで終わるのである。
「これってどうなったんだっけ?」
「大人のぼくによると、空自と海自のどっちに引き渡すのかっていう問題、機動性の疑問とかで引き渡しは白紙に戻って、波動エンジンが入ってきて、連邦宇宙軍の艦艇って形で落ち着くまで100年以上かかったんだよ」
「100年?そこまでよく保管できたね」
「影山コンツェルンが代々、保守作業続けてたし、時代時代でオーバーホールをしていたからね。元々がモジュール化されてたから、組み換えで内部構造もいじれるのが幸いしたんだって」
「それで、23世紀には熱線兵器、メーサー兵器やら、ミサイルにカドミウム弾頭が?」
「カドミウムは核反応抑制用に、自衛隊が2011年の事故の教訓で研究していたものらしいけどね」
「自衛隊、もしかしてスーパーXを…?」
「そう。元々は移動式核シェルターっていう名目で作ってた兵器だよ。ゴジラ関係なしに、東西冷戦時代は核戦争の危険が囁かれてたし」
スーパーX。東西冷戦時代、学園都市の技術を部分的に手に入れた防衛庁(当時)が試作していた(移動式要人用核シェルターが大義名分で、けして対怪獣王用ではない)移動要塞で、陸自の記録によれば、『首都防衛戦闘機』という名目で配備されていた兵器だ。スーパーX2の後は日本の経済の落ち込みで予算がつかず、(某怪獣王がいるわけでないのもあり)後継機種が長らく開発されずにいたが、2011年の震災で予算がつき、2019年には『スーパーXV』が配備される見通しであった。23世紀には、旧地域国家時代の原子力発電所の跡地の後始末などで、21世紀に自衛隊が開発した『カドミウム弾』が使用されている。
「2019年で久しぶりに新型が作られるんだって聞いたよ、スーパーX。2011年の震災の教訓で開発されたそうな。伝統的に陸自の管轄だから、空自はやっかんでるらしいけど」
学園都市の技術は本土に流れていないわけではなく、メーサー兵器、スーパーXなどの超兵器を実は自衛隊は保有していたのだ。スーパー戦隊のオーバーテクノロジーもあり、自衛隊も相応に強化されており、学園都市も驚きの発展を遂げた兵器体系を誇る。
「でも、なんで革新政権には知らされなかったの?」
「門外不出のパワードスーツの技術が学園都市に流されて警察庁も防衛省も怒り心頭だったらしいよ。正木俊介さんもその頃には退官してるし」
「政権が元に戻った後に、日本連邦として公表を?」
「うん。メカゴジラだかMOGERAを本当に作っちゃった部署があるそうだし、地球連邦のスーパーロボの始祖的存在かもね」
「…見栄?」
「23世紀の地球連邦軍がこれ見よがしに、量産グレートやゲッターを量産してたから、革新政権時代に開発が終わっていて、秘匿していたものを出したんだろうね。沽券に関わるとかいってそうだし、自衛隊」
「オーパーツだよねぇ」
「学園都市の技術で作ったそうだし、スーパーロボのご先祖様にあたるんだろうね。名目上は対学園都市用らしいし」
自衛隊も革新政権に隠し通していた超兵器を一気に公表したことが記事には添えられており、これで扶桑との軍事バランスを均衡に持っていくつもりなのだろう。23世紀でも色褪せない超兵器を隠していた事は問題だが、ウインスペクターからエクシードラフトまでの技術の流出の前科があるので、それを防衛省が恐れたのはもっともである。学園都市の兵器に比べれば、幾分かクリーンな兵器ではある。
「日本本土で怪獣映画級なら、学園都市はもっとすごいのを?」
「能力者メインだから、慢心気味でね。巨大ロボットとかは考えつかないのさ」
少年のび太の言う通り、後々に一方通行が現れるものの、彼も上条当麻にはボコボコにされたし、その後の経緯も鑑みると、彼もけして無敵ではない。御坂美琴とて、一方通行に立ち向かうには、グンドュラ・ラルから得た魔法の力を用いるしかないという難点を抱えている。学園都市は慢心したゆえに、歴代のヒーローに危険視され、更に、2010年代にアレイスター・クロウリーが何らかのことを上条当麻にされたかして、学園都市が急速に衰退し始める。2001年の少年のび太はそれを青年の自分から聞かされていたらしく、当時は繁栄を謳歌するはずの学園都市に冷ややかであり、調を感心させる。はーちゃんは完全に置いてけぼりである。
「おっと、君を忘れてたよ。とりあえず、なんか用意してくるよ」
「あ、ママさん、買い置きがあるとか…」
のび太ははーちゃんの存在を思い出し、ジュースを取りに行く。調もついていく。服装はいつものシンフォギア姿(必要性はないが、修行のためである)である。はーちゃんはこうした光景に、自分が別の世界に来たという事を実感すると同時に、蘇生措置が取られたとはいえ、みらいとリコが自分を庇って、敵にやられたことへの罪悪感や無力感に囚われており、表情は曇っていた。大地母神でありながら、大事な誰かを守れなかったというショックを引きずっているのが分かる。
(みらい、リコ……、私は二人を守れなかった…。のぞみさんや響さん達に頼ってちゃダメだけど、今の私は……)
この独白から、はーちゃんが、のぞみや北条響と面識を持っていることが分かる。のぞみと響が先輩格のプリキュアとして、みらいとリコの仇討ちに燃えているが、はーちゃんは大地母神に近い存在に昇華していたのにも関わず、仮面ライダーディケイドが来なければ倒されていた。その恐怖心も見え隠れしていた。その無力感と向き合い、強くならなければならないのだ。のぞみがはーちゃんのことを想うが故に、古参としての責任を強く感じ、黒田に特訓を頼んだのも、はーちゃんがショックを受けているのを気にしていたからでもある。のぞみとりん、響、ラブの古参組が戦いに精を出す理由は、バダンとマジンガーZEROが『はーちゃんを泣かせた』からであり、先輩格のプリキュアから妹分と思われているのが分かる。ドラえもんと黒江がはーちゃん(ことは)を少年のび太のもとに送り込んだのは、悲しみを癒やす事の他に、彼女に生きる力と希望を与えたかったからだった。つまり、のび太の優しさが彼女に『果てなき希望』を見せるのに期待したのだ…。
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