外伝2『太平洋戦争編』
三十三話『加賀の新生!』


――太平洋戦争で扶桑が処理に追われたのが、双子国・日本の茶々である。三院制で落ち着いた制度、形上は『天皇が総理大臣に委任する』という事で成立した文民統制、大規模(陸海空軍)外征型軍隊、教育制度、華族の存続などの全てにいちゃもんがつけられた。だが、扶桑からしてみれば、23世紀の『お前らの子孫が公認した制度なんだけど』と言いたくなった。地球連邦の存在を知った日本政府は『内政干渉しない』と声明を発表したが、政権交代後にその政権との間で軋轢が生じた。政権交代後の彼らは自衛隊と扶桑軍の交流事業を縮小させたのだ。同時に彼らは政権交代前に潜り込んでいた扶桑軍人出身自衛官を問題視した。だが、既に自衛隊でも相応の地位におり、更に防衛省が軍人出身の彼女らを重宝していると分かったため、退職させる事はいくらなんでも無理であった。しかも、旧軍人でも60年代頃からは自衛隊の中枢につけるようになっていた『歴史的事実』が、扶桑出身自衛官の排除を不可能にしていた。そのため、彼らが出来ることは、背広組を使っての左遷のみだった。運悪く、学園都市が戦争を起こしてしまい、彼女達を一箇所に集めた事が、扶桑軍人達の重要性を彼らに認識させることになった。その時に黒江は空自の一佐の地位にあり、F-15でロシア戦闘機をのして『遊んでいた』。太平洋戦争が激戦期を迎えつつある中でも自衛官としての仕事はこなしており、自衛官としての休暇の時間に、本国で戦争するという生活が常態化していた。そのため、黒江を慕う自衛官らは出向という形で、扶桑空軍に力を貸し、扶桑軍では手に余るターボファンエンジンや第4世代以降のアビオニクス整備を手伝っていた。そのため、第4世代機の導入数も増やしており、F-2とF-15Jの機数も一個大隊規模に増加し、自衛官でもある者達の専用機になっていた――


「大分、第4世代も増えて来たな」

「遅かれ早かれ、第三世代くらいは戦場に出てくるでしょうから、第四世代を用意しといて正解ですよ、一佐。あ、ここでは『中佐』でしたな」

「どっちでも構わんさ。第二世代までは自製を始めているが、第三世代はノックダウン生産でな。海軍も採用し始めているが、海軍が航空優勢を持てるか?」

「第二世代までの米海軍機は殆どがクソのような機体ですから、ファントムを出してくるまでは優勢でしょう。出されると、蜂かトム猫を買うことになるでしょうけど」

「トム猫が優勢と聞いたぞ、私は」

「ボムキャットにすれば、蜂より航続距離ありますから、有利ですしね。ファントムまでなら、クルセイダーとの併用で抑えられますが、グリペンやラファールとかの世代を出してきたら終わりです」

――この1948年の初夏の段階では、13号型巡洋戦艦改装扱いの『皇海型航空母艦』の竣工があと一年程度と見積もられていた事から、ファントムE型改(艦載機仕様)の配備が始まっていて、レシプロ機が空母から降ろされ始めていた。烈風と紫電改は第一線空母から、二線級の雲龍型航空母艦の残存艦へ移動され始め、F-4E系が翔鶴型以後の大型(現在は中型に分類されている)空母へ着々と配備されている。余剰となったF-8は偵察機への改装も受けた個体がいる。彩雲の代替だ――

「そのために、ミッドウェー相当の空母の調達を、スーパーキャリア追加導入の場繋ぎでするってよ。戦艦改装だけど」

「大和型を?」

「いや、13号型の放置されてた組み立て途中の竜骨とかを使ったほぼ新造艦だ。戦艦改装はあくまで、予算上の話だそうだ」

皇海型はミッドウェイ級を参考にされているが、船体設計などは独自の趣向を凝らしたモノである。そのために小型化したキティホークとも言える艦容であり、ライノ(スーパーホーネット)までの搭載が想定されている。

「しかし、スーパーキャリアまでの場繋ぎが45000トン級とは、贅沢ですね」

「しゃーない。大戦型空母は翔鶴や大鳳型でもないと、ジェットは載せられんしな。天城を酷使させるわけにもいかんし、土佐を空母にするにも、時間が2年はかかるしな」

当時、前大和型戦艦で唯一、予備艦扱いで海軍籍に残っていたのが加賀型戦艦である。しかし、加賀型戦艦は戦艦としては『二線級』と言わざるを得ないほど相対的旧式化しており、母港で予備艦扱いで保存される扱いに甘んじていた。大量建造の雲龍型航空母艦が旧式化で『航空輸送艦』、『対潜空母』、『強襲揚陸艦』、『ヘリ空母』に転じていくため、統合参謀本部では、遊ばせていた加賀型戦艦の空母改装を検討していた。これは加賀型戦艦の船体規模では、大和型戦艦規格の46cm砲の反動に耐えられない事、八八艦隊最終型式の紀伊型戦艦も旧式化が明らかになっていた事もあり、戦艦としての第一線運用は諦められていたためだ。だが、ここで自衛隊と米軍ルートからの提案があった。『火力支援能力を持つ揚陸指揮支援艦』に改装すると言うアイデアが出されたのだ。これは米軍も実際にアイオワ級で構想していた案だが、当時の米軍には、戦艦にその役目を担わせるほどの余裕はなく、頓挫した経緯がある。そのため、加賀型戦艦の改装案は一種の実証実験とも言えた。16インチ砲搭載艦としては有力な艦であった加賀も、18インチ砲時代に入りつつある中では『旧式』である。そのため、加賀型戦艦は純粋な戦艦としては役目を終え、今では別々の場所で係留されている。長門型より遅くに完成したため、経年劣化も少ないため、予備艦にされていた。


――戦艦として完成した『加賀』と『土佐』は、長門の面影を色濃く残しており、パゴダマストの艦橋は、1920年代型戦艦という風情を感じさせた。かつては連合艦隊旗艦も拝命した艦であるが、大和型戦艦の高性能ぶりは、同艦の旧式化をも意味し、扶桑海事変に参戦せぬまま、第一線から引退する羽目となった。要因の一つは水雷防御力の不足で、13号に新型徹甲弾を試射したところ、水中弾が見事に貫通、加賀型の旧式化を自ら証明する形となった。そのため、早期に大和型戦艦の整備に切り替えられ、紀伊型戦艦の建造も行われたので、近代化の予算がつかなかったのもある。そのため、連合艦隊旗艦を拝命した期間は極めて短い。そのため、この世界における加賀型戦艦は『八八艦隊型から大和型へ移行する過渡期の戦艦』として低評価されていた。同時に、史実通りに空母化する案も出されていたが、史実の難点から、『微妙』と難色を示す者も多い。また、航空機が大型化している時勢に、加賀型を完全に空母化しても、耐用年数が保証できないという点が指摘されていた。そのため、戦艦としての能力を一部残しての揚陸指揮支援艦としての改装は願ったり叶ったりだったが、ウィッチ閥から『天城に代わるウィッチ専用艦に!』との案も出されており、内部軍閥の争いの種となっていた。――

――そのため、加賀は揚陸指揮支援艦とされ、土佐については空母化の予定が立てられたが、大型のF-4E系が艦載機になった事により、結局は双方が揚陸指揮支援艦に落ち着いた。上部構造物は大和型戦艦以降のデザインの塔型艦橋を中心にしたモノへ入れ替えられ、砲塔も後部主砲塔を全基取っ払い、飛行甲板とされ、ウィッチ用設備も整えられた。また、この時に水中防御力も強化され、大戦が激しさをます1950年の元旦に竣工する。その際、その艦の護衛部隊にいたのが艦娘の加賀で、特に土佐に対する想いは強く、なんと自ら前部主砲の指揮を取ったことさえあった。加賀は意外に自身の『妹』へ強い想いを持っていて、土佐の守護を自らに課していた――

――1948年のある日の夜――


「おい、加賀。風邪引くぞ?……やれやれ、土佐が生まれた世界線があったのが嬉しかったみたいだぞ。見てみろ、赤城」

「あらあら、加賀ったら」

64戦隊に在泊していた、艦娘の第一航空艦隊の面々だが、いつの間にか疲れて寝てしまったのか、机に突っ伏して寝息を立てている加賀の姿があった。黒江と赤城が見てみると、土佐の模型を制作し終え、自身に『妹がいたら?』という空想にふけっていたらしき痕跡があった。寝ぼけて寝言を言っている時の加賀は、声色が微妙に高くなっており、冷泉麻子やインデックス、同じ艦娘で言えば五十鈴や竜田を思わせる。

『〜だよ……グゥ』

「赤城、ツッコんでいいか?どこの禁書目録だ、こいつ」

「多分、普段が大人ぶってるし、加賀が深海棲艦から浄化されたのなら、『忘れ去られたくない』、『仲間とともにいたい』気持ちが強いんでしょう。MI作戦のトラウマを隠したいけど、隠しきれない。そこがあの子の弱さかも知れません、黒江中佐」

「加賀なぁ。海鷲の焼き鳥製造機って渾名持ってんの気にしてんからなー。この間、日本の観光客にそれ言われて、ガチで落ち込んでたし、意外にナイーブだな、こいつ」

「そんなの私のせいではありません〜……」

「あ、やっぱり」

加賀は空母としては出来が良くない(ただし、用兵側としては最高の空母との事)事を気にしていたが、黒江が21世紀で、旧軍中佐としての身分を明かした上で、生存していた加賀乗務経験者に話を聞いたところ、意外に提督クラスなどからは評判のいい空母であることが分かった。

「こいつはこうだが、提督クラスに話を聞けた士官級や特務士官の生き残りと21世紀で話したんだが、『翔鶴型より安心して着艦出来る空母』だったって言ってたぞ?中佐としての身分を明かしたら、すぐに話してくれたよ」

「どうでした?」

「最初は冗談かと思ってたらしいが、陸軍の軍服を見せて、中佐の階級章見せたら驚いてたぜ。まぁ、普通はそうだろう」

「なぜ陸軍の軍服を?」

「日本は独立空軍がなかったし、私は陸軍出身だしな」

「なるほど。それで?」

「源田の親父の部隊にいるって言ったら、343空か?なんて言われたよ。それで新撰組にいると言ったら尊敬されたよ」

末期の海軍航空隊に取って、343空は一目置かれた部隊だった。生き残りにとって、紫電改を擁した防空部隊の343空は羨望の的である。末期の防空戦を経験していれば、特攻せずに済み、しかも最新鋭機を乗りこなすエリート扱いされる343空への配属は夢だった。全軍特攻化された後の海軍航空隊では、343空のように『真っ当に戦える場』を提供できる部隊はごく限られていた。最も、343空へ嫉妬しており、『源田のせいで、前線が弱まった』と嫉妬する者もいた。強引な手段で撃墜王を集めたという非難もあった。また、MI作戦の失敗と、戦前の戦闘機無用論から、批判も多かった。だが、当人曰く、MI作戦の時は肺炎で寝込んでおったとの事だし、当人を連れて来て弁明させたくなったと、黒江は言う。

「戦闘機無用論だって、熱心だったの56のおっちゃんと大西瀧治郎中将だよ。親父さんは戦闘爆撃論に入る。そこがなぁ」

山本五十六の失敗は戦闘機無用論の際の言動であり、21世紀からはそこをつつかれる事が多く、山本が急激に病に冒された要因はそれではないかと邪推していた。

「山本長官のご容態は?」

「ビョーキが重くてな。持ってあと、二ヶ月だそうだ」

「そんなに……」

「ああ。お前も入ってくれるか?Y委員会に」

「Y委員会?」

「おっちゃんの遺言を実行し、後世に至るまで軍を監視・裏で統制するための委員会だ。井上さん、小沢さんや多聞丸のおっちゃんも名を連ねてるよ」

「分かりました、委員会に入ります」


――黒江が口にしたY委員会。史実では海軍再建のための委員会だが、ここでは、23世紀英国の円卓会議に当たる『裏で扶桑軍・扶桑国家を統制する』委員会であった。そのため、吉田茂と山本五十六が発起人であり、三軍の開明的な軍人、財界の大物、当時の尊皇的かつ親欧米派の大物政治家が名を連ねている。赤城は山本が艦長だった関係で、山本がメンバー入りを望んでいた。その事もあり、赤城はY委員会創立メンバーに名を連ねるのだった。Y委員会は軍人枠において、死、もしくは引退時に自身に縁があった艦娘に議席を継承させる事が増える。瑞鶴も小沢治三郎が60年代に亡くなった事に伴って、委員会の議席を受け継ぎ、井上成美の隠居に伴い、比叡が継承するなどの交代が入りながら、扶桑軍をコントロールしていく。後の空軍第三代司令『三輪』の空軍からの追放事件で初めて、世に知られるY委員会。その際に『山本五十六の遺志を受け継ぐ者達が軍を裏で実質的に統制している』と大々的に報じられる。扶桑軍にシビリアンコントロールを根付かせるためには、委員会の統制が必要だったのだ。報道後は謎のY委員会への反発が若手中心に生じた。60年代頃には『総理大臣の諮問機関』として表舞台にあったものの、20年近くもY委員会の意向で人事が決められていた事に反発するが、高松宮殿下が顧問であると公表され、収束する。また、三度の戦の英雄であったスリーレイブンズが名を連ねていた事も、正当性のアピールとなった。――

Y委員会が実際に手を下した事例は、軍に議会制民主主義に於ける軍隊観が根付いていない昭和20年代に多かった。吉田茂のワンマンぶりに反発する軍人が多く、吉田の暗殺騒ぎも多かったし、4度もクーデターが起こった。また、カールスラントの劣化コピーとさえ称された陸軍の風土を自衛隊化させるのに大きな役目を果たし、実質的に1960年代には『旧軍の軍服を着た陸上自衛隊』となる。一方で、明治以来の精神性は多少残ったため、『戦後米軍と自衛隊のノウハウと兵器を持つ戦前日本軍』とも言われる。四度のクーデター(ウィッチ閥含む)は、国民に陸軍への不信感を抱かせ、太平洋戦争中は空軍に陸戦をさせればいいとまで揄された。その弊害は48年から顕現した。

「――はい。こちら。なんだ親父さん?どうしたんだよ……え〜!?あ、あのさ、親父さん。私達は空軍だぜ?」

「仕方がない。陸さんが短期間で四回も不埒事件起こしてくれたから、住民が反発して、戦車部隊の展開に支障が出たのだ。お前達が行って、殲滅しろ」

「了解。ったく、面倒い事になったな」

――時は変わり、Zプルトニウスのコックピットで愚痴る黒江。

「――って事があって」

「それは災難だったな」

「クーデターのせいで、空軍の私達が陸戦までやるはめになったんすよ?まったく」

「たしかに、四回もクーデターやれば嫌気も指すだろう。陸軍の自業自得だな、これは」

「だから、降下猟兵まがいのことまでやらされちゃって……」

「まぁ、MSでいつもやっている事だろう?生身でやるのが予想外なだけだ」

「それはそうですけどー」

ぶーたれる黒江。アムロに愚痴るあたり、本来は畑違いな空挺降下をやらされたのが不満ならしい。

「俺自身、ア・バオア・クーでシャアとフェンシングで決闘したからね。君の気持ちは分かるよ。シャアのジオングは手ごわかったからな」

「機体失って生身で戦うなら、覚悟決めるけど、出撃がいきなり空挺戦車がわりとか勘弁してほしいやwww」

「君は聖闘士だろう?それくらいで愚痴を言うな。俺なんて、グリプス戦役やネオ・ジオン戦争の時にも生身でドンパチしてるんだからな」

「カラバとロンド・ベルが人手不足なだけじゃ…」

「それをいっちゃお終いだ。さあ、訓練空域までもう少しだ……二人共、火器管制を実弾に切り替えておけ。敵が第二次攻勢を開始した」

――ティターンズのイオウジマ作戦の開始だった。このイオウジマ作戦は、ティターンズが初めて戦略的にミスを犯したと言える、攻勢作戦であった。ティターンズに従うリベリオン軍部隊は多いが、ウィッチ閥の部隊はティターンズへの反発があり、一枚岩ではなかった。それがティターンズによる統制の限界であり、彼女らの突出が扶桑陸軍と空軍に付け入る隙を与えることになった。アムロ達がちょうど遭遇したのは、その彼女らとM26パーシング戦車が編成を組んだ部隊であり、彼女達は凄まじい戦力差を以て、蹂躙された。相手がガンダムタイプ三機という、言わば『肉食恐竜』では、90ミリ砲戦車とウィッチなど、恐竜に対してのダニかノミだ。

「いいんすか、戦車とウィッチ相手に、本気出して」

「実弾で対応するんだ。頭部バルカンでも60ミリだ。戦車の天蓋装甲なんぞぶち抜けるから、ウィッチは追い散らすだけでいい。彼女たちの武器では、俺達のガンダリウムには傷もつけられん」

一年戦争当時のガンダリウムαでさえ、ザクの120ミリマシンガンを受け付けない装甲強度であるので、より物理強度の増したガンダリウムγ、その更に新世代精錬型ともなれば、90ミリ砲など寄せ付けない。センサー、関節、カメラを狙うしか方法がないので、ウィッチの75ミリ砲に至っては、『蚊に刺された程度』だ。そのため、降り立ったEx-S、HI-ν、プルトニウスに慌てて放たれる砲撃は効かないのだ。

『さぁて、そこの連中、死にたくなければとっとと失せなさい。じゃないと……』

圭子はSガンダムのバルカンを斉射し、地上に弾痕を残すように威嚇する。ゼロ戦の三倍の口径の弾丸をあられのように撃ちまくるので、当然ながら、ウィッチ達には絶大な心理的効果を見せる。

「後ろからならっ!」

熟練者達はMSも陸戦兵器の通例に漏れないのなら、背面装甲が薄いという点を突こうとした。実際に、一年戦争当時、ジオンの闇夜のフェンリル隊や、マドロックのエイガー少尉(RX-78-6のパイロット)が行った戦法であるが、当然、対策はされている。テールスタビレーター内臓のバルカン砲が火を吹く。

『ふふ〜ん、甘い!テールスタビライザーにもバルカンあるのよ、Sガンダムはね!』

ウィッチ達はなんとか回避するが、一人が被弾し、ユニットを破棄せざるを得なくなったらしい。60ミリバルカンを喰らい、見事にキャタピラが破損している。ユニットを強制排除し、無傷な者に運ばれていく。その援護にパーシング隊が援護砲撃するが、プルトニウスが前に出て、フィールドを使った上で、腕を突き出して受け止める。その間にアムロがニューハイパーバズーカを戦車隊の隊列の中央の隙間に打ち込み、その爆風で戦車を横転させる。MSの手持ちバズーカ砲は戦艦の主砲と同等以上の口径の大砲が打ち込まれたのと同義であるので、爆風だけで横転し、履帯が破損した個体も表れた。戦車を一撃でガラクタにする兵器に畏怖し、銃を捨てるものも現れるが、ウィッチ隊は果敢に立ち向かう。

「よし、綾香くん。相手してやれ。一瞬でケリをつけろ」

「りょーかい!」

黒江は着の身着のままハッチを空けて飛び出し、そのままアトミックサンダーボルトを放って、陸戦ウィッチを制圧する。その間、一ミリ秒だ。その所業を見、ウィッチ達はティターンズの指令で戦うのに嫌気が差していたらしく、あっさり投降した。隊長はアトミックサンダーボルトで伸びているが、副官が投降の意を伝えた。戦車隊の兵士たちも同様の気持ちらしい。彼女たちは連邦空軍のミデア輸送機隊が装備ごと運んで行き、後に亡命軍へつくことになり、この際にイオウジマ作戦の概要が伝えられた事も、連邦と連合軍に僥倖だった。




――連邦軍はその情報と、監視衛星やラ號の観測データを基に反抗作戦を立てる。これが3年前の『アテナ』作戦に続く反抗作戦『バグラチオン作戦』の伏線となる。これは連邦空軍の将軍がロシア系だったことに名の由来があり、独ソ戦のソ連反攻になぞらえ、つけられた。ティターンズの攻勢限界点が近い事を悟った連邦軍は、南洋島中央部に重MS部隊を集結させ、ロンド・ベルもアムロや鉄也とGカイザーの派遣で協力し、64戦隊にコウ・ウラキが出向する事になる。また、作戦に合わせ、貴重な74式戦車などを始めとする自衛隊式兵器も集積され、実戦投入準備が進められる。ハルトマンとハインリーケの到着などを待って、作戦開始と決定された。その反抗作戦を担うのが、新生なった加賀型だった……――



――この作戦は扶桑軍にとっては、2年もの雌伏の後の春の目覚めである。だが、それを良しとしない双子国・日本の左派の妨害工作が活発化する。彼らは扶桑の領域を『自分達同様に、支配区域を日本列島周辺に限定させたい』という手前勝手な理由でティターンズに手を貸す。自分達が忌み嫌う手段に躊躇なく打って出る集団に、である。それが日本の左派の最大の失点であり、リベリオン本国政権の実権を握っているのが『ティターンズ』であることが分かると、彼らは『ティターンズなどという極悪非道の集団が双子国を滅ぼしてもいいのか!』という若者達からの批判に晒される。ティターンズが極悪非道を平然と行う集団であることなど、アニメに詳しい若者達の間では常識であり、それを知る若手議員がいる右派政党からは『エゥーゴに肩入れするべきだ!』という真っ当な案も出されるが、彼ら左派政権を担う者達は、『それはアニメの話でしょう!』と意に介さなかった。だが、本当にティターンズが虐殺上等、毒ガス戦上等な残虐行為を行うに至り、方針を翻すが、時既に遅しだった――



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