外伝2『太平洋戦争編』
五十四話『聖闘士と神』


――この戦争はいつしか、各勢力の思惑が入り交じる政争の場にもなった。その過程で消えていったモノも多数ある。1943年までに試作の俎上に載せられていた扶桑製レシプロ機群もその一つ。史実同様、閃電・陣風・電光を始めとした試作機が既に生産されていて、正式量産も間近とされたモノもあった。2つの未来人もストップギャップとコンコルド錯誤の要領で出現を止められず、戦闘機のみが生産された幸運な機種は烈風だった。出現を促進された雷電・紫電改・疾風、ジェットの素体に流用された震電と景雲という例もあるが、烈風と震電は戦闘機は量産されたものの、ストライカーは試作段階で中止され、閃電はゴーストファイターにされた。


――1948年 ある日の統合参謀本部

「こいつもお役御免か。どうするんです?」

「博物館行きだとさ。この試製閃電も、せめて半年早ければなぁ」

統合参謀本部のプロパガンダに使用されていたレシプロ戦闘機の試製閃電。15機の試作段階で中止された悲運の機体だ。閃電は双ブーム式で、戦闘機がストライカーに先行されて試作される異例の体制で造られた。15機の試作機で実用化目前だったが、未来人の介入により、『閃電は見込み無し。実測時速600キロ台に過ぎないので、震電に集中させる』と無慈悲な決定が下された。これはベアキャットの実用化やコルセアの性能向上を見越しての决定であり、当時のレシプロ戦闘機の性能が700キロの大台に乗りつつあった時勢に適っていた。が、彼らにしてみれば理不尽でしかなく、閃電の装備予定部隊の手で、15機の内の5機が45年のクーデター事件で使われたものの、F-86と遭遇、全機が未帰還に終わっている。この事はレシプロ戦闘機の時代の終焉を示す事例の一つとされている。

「でも、あっという間に奮進式が主流になって、ピストンエンジン型が奈落に追いやられるとは思わんだ」

「仕方がないさ。早晩、ピストンエンジン機はプロペラの推進効率の限界点に達する。それはピストンエンジン機の性能限界に直結するんだ。対して、奮進式は音の壁も軽く超えられるんだ、主流になるのは当たり前さ」

彼らは技術士官だったので、ジェット機を『奮進式』と呼んでいる。この表現は、戦前からの在籍者に多い。また、ジェット機をタービンロケット機と呼ぶのも、1930年代からの在職者の特徴だった。黒江も未来行き以前はそう呼んでいたが、今ではジェットと普通に言っている。

「で、奮進式が主流になったから、ピストン機は用済みか?」

「滞空時間が長いから、支援機としての使用が主になるそうだ。訓練機とか空中管制機とか、給油機とか」

引退した機種も全てが放出されたわけではなく、零式の状態がいいものは練習機になり、『中等練習機』に供された。引き継き、九五式一型練習機、九三式中間練習機が初等訓練に使われ、一線を退いた戦闘機で中等訓練を、高等訓練をT-1ジェット機で行うというカリキュラムも作成された。空軍は九五式の方を多く保有していたが、さすがに複葉機では旧態依然すぎるため、練習機の交換を求めていた。そこで、21世紀の各国のメーカーに練習機を公募した。多くの応募があったが、候補はピタラスとメンターに絞られた。選考の結果、自衛隊との交流の都合もあり、メンターが採用された。これは自衛隊からも推薦文が寄せられた事もあっての事で、パイロット育成を扶桑に一部委託できないかと、当時の防衛大臣が探った結果である。一部、日本側の思惑に乗せられた形だが、扶桑としては日本の援助を早急に必要としていたので、話はまとまった。空軍は現在、陸海軍航空隊からの転科者で人材を回しているが、生え抜きを育てる必要もあったためだ。転科者の間での問題は、元々の在籍軍に由来する対抗意識で、64Fが司令部直轄でこき使われている背景には、海軍出身者と陸軍出身者の相克があったりするからだ。64Fは優秀な人員の配置に優先権を持つが、その代わりに司令部直轄の即応部隊として、海兵隊代わりにこき使われているのである。

「俺はこれから練習機のコンペに行くが、お前はどうする?」

「おりゃ南洋だよ。64のジェット機のデータ集計だそうだ。夜に発つ」

「そうか。んじゃ一杯やるか」

「そうだな」






この頃の技術士官達は多忙だった。その原因の一つが、矢継ぎに投入される新型ジェット機により、機種が安定しないことだった。最近はF-4Eに到達したので、繁忙さは軽減されたものの、敵が次々と繰り出すので、技術士官らはその解析に追われ、パニック状態だった。また、現場で横行していた防弾板外しがミサイルとバルカン、リボルバーカノンの登場で落ち着いた(海軍出身者に特に多く、未来人によるリンチのもと)のはよかった。1944年から45年始めまでの旧型機は防弾を外せば性能が上がった機体が多く、零戦52型などでは横行していた。が、接触した未来兵器との戦闘で防弾が再認識されたり、未来世界の一般人に誹謗中傷されて、ノイローゼになった飛行隊長、リンチされ、自分達の武士道を否定された挙句に海へ突き落とされ、殺害された者は海軍航空隊に多く、これが紫電改と烈風のターボプロップエンジン搭載を促すきっかけとなった。殺害はさすがに行き過ぎであったが、日本の左翼系評論家の中は「海軍精神注入棒でしごいて、合法的に殺した事さえあるんだし、いい薬だ」とさえ発言し、大問題になった。扶桑海軍にとっては貴重な熟練パイロットを複数失ってしまったからだ。特に空母着艦可能な古参をやられた事で、空母パイロットの教練に大いに支障を来たしたからだ。これは後に『大戦の遺族に偽装した中国工作員の仕業』という事が判明し、大問題となった。だが、自分達が無茶な命令で、多くの若者を無為に死なせた事に後ろめたい気持ちになった者は提督/パイロット問わず多く、以後の扶桑海軍は『生き残る事』をマニュアルに書くことになる。が、この事件の代償は大きく、熟練将兵の少なからずの離脱により、扶桑海軍は自前の将兵による単独航空作戦が戦争のほぼ全期間で不可能となってしまった。この事件に中国が関わっていた事により、中国は49年の扶韓戦争に介入せず、扶桑に同調する動きを見せる事になる。それに至るまでの極めつけが48年8月15日に起こった『航空隊隊舎、空母天城、『空母瑞鳳連続爆破事件』の黒幕が中国の工作員だったことだった。各地の航空隊隊舎、退役間近の瑞鳳、退役式典が開かれていた天城が爆破テロに逢い、瑞鳳は轟沈、天城もスクラップ寸前の状態に爆破されてしまう。その惨事に巻き込まれつつも、生還した宇垣纏中将の衝撃が全てを繋げ、中国は多額の賠償金と、背後にいるアメリカとの戦争を恐れ、シラを切りつつ、物的資源の援助で逃げた。その事件の報を聞いた黒江は『休暇がぁぁぁぁぁ〜〜!』と、この世の終わりのような悲鳴を挙げたという。結果、技術士官も、実働部隊も大いに迷惑を被ったのがこの事件である。その事件もあり、第一線機は完全にジェット機の時代となり、当時の空はまさにジェット機のオールスター状態で、P-80からF-4Eまでの米軍系のほぼ全てが同じ空を敵味方に分かれて飛ぶという、未来人から見れば珍妙な事態が起こっていた。


――64F 鹵獲機収容庫

「うわぁ、凄くゴチャゴチャしてません?」

「これまでに鹵獲した敵機のオールスター状態だよ、ここはこれが一番強力な部類に入るかな?」

なのはは出撃準備が、Gカイザーの光子力反応炉の調整の難航で伸びたため、新人達への教育を引き続き行っていた。ひかりや静夏を筆頭とするAクラスの面々に鹵獲機を見せていた。その鹵獲機は、ティターンズが生産したF-11改の鹵獲機であった。雑多な機種を生産し、運用テストでもしているのか、ティターンズの主力機はどれか分からない状況が続いている。特に、F-11を生産したかと思えば、フューリーを使用したり、ファントムをユナイテッド・ステーツに載せるという珍妙な状況は、扶桑/連邦/日本/アメリカを困惑させていた。その理由はなんなのか。4カ国の軍隊は本気でその理由を調査していた。

「なんでこんなにバラバラなんですか?」

「うーむ。それがわからんのだ。時代も、元々の所属軍がバラバラだから、どれがどれだか…」

なのはもわからないのが、どこがどうなって、どれを選んだのか。ティターンズは攪乱作戦でもしているのではないか?という話まで持ち上がっていた。戦車については答えが分かっているので、史実同様だが、戦闘機に関しては不明だった。

「戦闘機は私達は素人ですから、わからないのは当然ですけど、三佐が分からないというのは?」

「確かに自分はプロだが、順番がこちら側の記録と一致せんのだ。順番がな、服部」

「順番?」

「そうだ。史実の開発順で言えば、この機体は隣のフューリーよりかなり後になるはずでな、世代も違う」

なのはも首を傾げる状況だが、実のところは、かなり切実なティターンズの事情があった。連邦正規軍と異なり、工作機械の導入は不可能故、当時の工業水準で安定して作れる機体を求めているだけであった。それ故、年代がバラバラであり、史実の採用・不採用を問わなかったのだ。

「この機体が何故、未来で不採用になったかというと……」

講義を行うなのは。部隊の目的が新人教育も兼ねているため、新人が実働部隊員として、そのまま同隊内で異動になる事は稀である。新人として配属の場合は研修、中堅以上での配属がエースの証であるので、後者のほうが喜ばれる。無論、新人の中にも、そのまま実働部隊に回される『才ある若者』もおり、ひかりと静夏がそれにあたり、既にひかりは奇兵隊で、静夏は新撰組と極天隊で実戦を経験している。この二人は他の新人と異なる『残留組』だ。新人達は篩分けされ、一番出来が悪いクラスは田舎に送られ、中間点が各地の補充要員、もっともできが良いクラスは244、50、47の3つに分散されて送り込まれる。今期は50Fが損耗補充のため、多めに予約を取っており、ひかりと静夏以外のクラスメートの多くは50へ配属になる。64Fの実働は実戦部隊の練度が高い者で構成される分、メンバーの変動は少ないが、戦死による減少もないわけではなく、この年までに三人ほどが壮烈な戦死を遂げている。それが幹部たるスリーレイブンズの力を覚醒させてゆく引き金ともなっている。その内の一人の死は、智子に神の一柱としての力の片鱗を蘇らせるきっかけともなっており、黒江よりも精度が高いオーロラエクスキューションを無我夢中で放っている。その際には、黒江も驚愕するほどの強力な小宇宙を発しており、黒江は『水瓶座を着込めばよくね?』と発言している。この時に神の一柱に目覚め始めたのか、小宇宙は次第に強大化しており、作戦前には、既に白銀聖闘士の粋に達していた。そこから黄金の域に達し始めるのも時間の問題と見ていた黒江は、智子にダイヤモンドダスト、フリージングコフィンを教え、凍気の扱いを教えた。なので、炎を操りつつ、凍気も同時に扱えるという、中二病患者興奮ものの状態に成長していた。



――作戦空域――

『何者も凍りつかす絶対零度の輝き!!ダイヤモンドォォォダストオオオ!!」

炎を纏う状態だが、撃っているのは絶対零度に近い凍気という面白い状況な智子。黒江が更に手を加えた結果であるが、神としての本来の力に近づいている証拠でもある。続いてやってきたウィッチ隊にダイヤモンドダストを放ち、火器を凍結させて戦闘力を奪うと言った芸当を見せる。エグいのが、フリーガーハマーをトリガーを引いた瞬間に凍結させ、自爆させて、相手の腕を奪うというもので、そこをフリージングコフィンで凍結させる。

「フフン、どうよ、この闘技!」

「お前、水瓶座は予約入ってるぞ」

「たしか、カミュの弟子の氷河だっけ?」

「そうそう。私は後任がいないからねじ込めたけど、繋ぎでできるかどうか。」

「んじゃ一気に雑魚を蹴散らしましょう。オーロラエクスキューション!」

「エクスカリバー!!」

二人は背中を向け合いながら奥義を放つ。その破壊力は黄金聖闘士と同等であり、智子も黄金聖闘士級の小宇宙に達しつつあるのだ。その破壊力は敵ウィッチには悪魔以外の何者でもないのだが。

「バケモノめぇえええ!?」

「侵略者には死、あるのみ!でりゃあ!!」

斬りかかってきた扶桑出身のティターンズウィッチを、右腕のエクスカリバーの手刀で一刀両断にする。敵のウィッチは思い思いの武器で二人を集中攻撃するが、銃弾は当たらず、斬られるか、受け止められるか、銃を凍らせられる、剣はエクスカリバーに刀身を斬られる、刀はダイヤモンドダストで折られるなど、蹂躙に近い状況だった。

「あ〜あ、黄金聖闘士の黒江さんにてぇ出すなんざ、アホのやることだっつーの。あいつらは本物のアホだぜ」

菅野は嘆息する。黒江が黄金聖闘士であること、智子が神の一柱に目覚めつつある事を知っている故、敵に同情すら見せた

「国ごと消滅させられないのが奇跡だな…」

「ですね。あれじゃ敵のみなさんがかわいそうですよ」

「子犬とTレックスが戦うもんだ、結果は見えてる」

と、芳佳と言いあう。Tレックスという例えが自然と出るあたり、完全に現在ナイズされているのが分かる。

「あの〜直枝、Tレックスって?」

「……あ、ああ〜……そこからか、お前には」

菅野の脳内で閑古鳥が鳴いた。当然の事だが、孝美は未来には行ったが、あまり知識は得ていないからだ。(なお、ここでB世界との違いが出た。A世界では、菅野は雁渕と同期で同階級であるので、元から対等に口を利き、孝美も名前で呼ぶ)Tレックスは90年代以降にティラノサウルスの個体名として、一気に広まった名前であるため、孝美は知らなかった。未来に在住経験があるのに、その当時の最新情報を仕入れていないのだ。

「お前なぁ、未来の情報くらい仕入れておけよなあ。留学になったらどーするんだよ」

「ううぅ……」

涙目になる孝美。菅野は説明してやる。元々は本好きであるので、意外に解説役に向いている。意外だが、菅野は幼いころは大人しい文学少女であり、入隊時に今の荒くれ者に変貌している。その頃の名残りは、姉と兄を『姉さま』、『お兄ちゃん』と呼ぶところに残っており、黒江と似た者同士であり、二人は同盟関係にある。その関係により、この頃から、黒江の懐刀の地位になってゆき、坂本の逆行前最大のミスをした際にも居合わせ、坂本を殴打している。菅野は元々、警察署長の令嬢であったが、兄を大学に行かすため、ウィッチになったと同時に兵学校を志願したほど、兄弟思いである。それは自分と似た境遇の黒江への共感に繋がり、今では『黒江さんのパシリその一』を自認している。その関係もあり、黒江は自分の護衛に菅野/芳佳ペアを指名するほど可愛がっている。

「……と、いうわけだ。お前、未来の情報にアレルギー起こすなよ。別の世界だしな、厳密に言えば」

「は、はい」

「んなこと言ったら、黒江さんが聖闘士になんてなるかよ。よく考えろっての」

菅野はそういいつつ、流星拳を打つ。黒江が黄金聖闘士になったのを期に、黒江の知り合いや友はいつしか聖域への人材供給源の一つになっていた。ルッキーニがこの時期に仔馬星座の青銅聖闘士に任命された事もあり、裏付けられている。。その事もあり、菅野も聖闘士を狙っていたりする。これは聖闘士の80%が聖戦で死に、ゼウスの力で、幾人かが復活したと言っても人材不足は解消されていないからで、特に黄金、白銀の不足は壊滅的で、黄金に黒江たちを充てがうほどである。当初は、黒江を白銀聖闘士に充てがおうという話もあったが、その努力と才覚で一気に黄金に至ってしまったので、流れたという。黄金は元々、星矢たちで補填するのが内定していたので、火急に欲しい人材ではなかったが、三人が黄金になったので、3人は少なくとも任についている状態になった。……が、実は黄金で今すぐに欲しい人材は牡羊座だったりする。兵站も担う職責だったからだ。聖衣の修復は現在科学では限界があるので、復活したシオンが行う羽目になっている(元々が牡羊座だったので)。いずれ後継になるであろう貴鬼は幼齢であり、ムウが聖戦で戦死したため、シオンは孫弟子を育てなくてはならず、教皇でないのに多忙であった。(ゼウスに与えられた肉体が10代だったのが幸いだった)また、箒がいずれ双子座になる運命の暗示もこの時にあり、姉の束が箒にちょっかいをだしに来たので……。


『ギャラクシアンエクスプロージョン!』

ギャラクシアンエクスプロージョンで吹き飛ばす。箒は姉には手加減無しで撃つので、束にはアンドロメダ銀河が吹き飛ぶほどのエネルギーが浴びせられる。が、束は『細胞単位で規格外』を自称しているので、ギャラクシアンエクスプロージョンになんとか耐える。

「何の用ですか、姉さん?ネオ・ジオンに手を貸したって言うなら、幻朧魔皇拳ぶっこみますよ?」

箒は以前と違い、黄金聖闘士になった事で、姉を完全に平服させる事に成功している。そのため、強気な態度で接している。束は並大抵の薬は効かないので、精神的にもかなり傍若無人であると思われ、それが気になる箒は、尋問のため、一輝に鳳凰幻魔拳をかけてもらった事がある。そうしたら、『あ〜ん、箒ちゃんにかまってほしいんだもん〜!』と泣き出し、一輝を呆れさせた。

「もう一発、止めにアトミックサンダーボルトでも……」

「ひぃぃ、ごべんなざぁぁい!赤椿やそれを調べに来たんだってばぁ〜!」

「……」

「し、信用してないでしょ、その目!」

「今までが今までなので。姉さん、一夏から伝言は?」

「いっくん、そーとーにちーちゃんにしぼられてるよ」

――織斑一夏は『口は災いの元』の格言通り、千冬にその無礼を咎められ、制裁を受けている。一輝からは『小僧』呼ばわりされ、ヒーロー達には無礼な口を聞くなどの行為が不味かったのだ。最近では、一輝が報告も兼ねて、IS学園にやってきた際に、『箒の居場所を聞き出そう』と、無謀にも戦いを挑み、白式第二形態『雪羅』を鳳翼天翔で強制解除させられている。一夏は奮戦はしたものの、銀河粉砕級のエネルギーを浴び慣れたために、並大抵のエネルギーに耐性がある一輝には通じず、鳳翼天翔は零落白夜のキャパシティを越えているなどの実力差を見せつけられている。更に、こともなげに『お前には戦う相手の見極めが無い。 自分の力と相手の力を見極められる様になってから、かかってこい』と言い放たれたのが相当に堪えた。更に『小僧』と言われ、まともに相手にされていないのも屈辱だった。実際、聖闘士、それも青銅聖闘士最強を誇る一輝の実力ならば、例え、更識楯無であろうとも圧倒でき、本気の千冬とも対等に渡り合える。むしろ、束と千冬が素で並の青銅聖闘士を凌ぐほうがおかしいのである。流石にシャイナや魔鈴には及ばないため、二人は白銀聖闘士の中位に相当する身体能力を持つと判定されている。(なお、箒に軍事的知識を授けているラウラ・ボーデヴィッヒは、箒に乞われ、度々、電話で軍隊用語などを教えている。職業軍人であるので、軍隊の事はお手の物である。箒に銃の扱いなどを教えている)――


「でしょうね」

「赤椿はもらっていくよ。こっちでオリハルコンの組成とか調べたいし」

「わかりました、はい」

「ありがとう〜。でさ、なんでここの海軍、自前の航空兵力で作戦しないの〜?」

「実は、空軍に実力者が根こそぎ持ってかれた上に、パイロットが誹謗中傷でノイローゼになったりして辞めちゃったり、テロで死んだりしたそうです」

「ああ〜、所謂、『破壊活動』ね。あたしも前によくやってたから、分かるけど、あの手のは工作員が煽るもんさ」

「……姉さん」

「い、嫌だなあ。一般論だって、一般論。あたしは一人でやるし」

「ラウラの姉さんみたいなのいるじゃないですか」

「くーちゃんはむ、娘だし……。それにくーちゃんには側面支援しかたのんでないし?」
「なぜ疑問系?……で、どういう事です?」

「そういうのは、憎悪を煽るんだよ。増悪ってのを。この時代の政府や軍隊のお偉方、古参兵とかって、若手とか、当時生きてた人達にかなり恨みを買ってるだろうしね。まぁ、21世紀まで存命してれば、当時の若手もヨイヨイになってるし、遺族だって代替わりしてるから、手は下さないよ」

「それもそうだ」

「そのテロ事件は中国、あるいは韓国の工作員が起こしたんじゃないかな?どっちもこの時代の日本を恨んでるし、容易に人員も確保出来るしね」

「そんなものですか?」

「うん。特にあの二つの国は、日本の戦前の体制を打ち倒したって、馬鹿な自信あるんだよね。アメリカに負けたんであって、中国には負けてないし、韓国なんて日本の一部で、それもかなりの投資を受けてたんだけどね」

束は中国を完全にこき下ろしており、共産党が戦中は弱小だった事を指摘し、韓国が大日本帝国時代、かなりの投資を受けていた事も指摘した。その経緯から、束は二カ国を見下しており、扶桑に同情する趣旨の発言をした。

「この世界はあの二カ国にとっては都合が悪い世界なんだよ、箒ちゃん。漢民族がアジアの覇権国だった事は忘却の彼方、朝鮮民族は高麗人と繋がりがない。だから、腹いせにテロったのさ」

「身勝手ですね」

「あの二カ国のお家芸さ。孫やひ孫の代にまで、先祖が侵した罪を背負わせて、原罪にしたいんだよ。それをやるんなら、二度も元凶になったドイツでしょ」

束は21世紀日本人にしては高い愛国心があるようで、日本が太平洋戦争で侵したとされる罪を、孫やひ孫に代替わりしても言われ続けている事に反感を持っている。意外な一面である。それでいて、ドイツのほうが罪深いというあたり、白騎士事件を引き起こした割には愛国心旺盛らしい。

「姉さん、なんですか、その愛国心旺盛みたいな台詞は」

「あたしは日本好きだよ?外国が嫌いなだけさ」

「それじゃ、私は戻ります」

「うん。仕事、頑張ってね」

すっかり姉妹関係が逆転した一幕だった。その予測通り、爆破された現場から採取された『モノ』は中国製のものであり、扶桑は中国へ抗議する運びになるのだった。







――作戦は順調であったものの、遂に躓きが生ずる。水雷戦隊の先行突入が失敗に終わってしまったのだ。手すきの乙巡、一部の甲巡が配置されていたが、殆どは大正期建艦の旧式艦だったのが災いし、待ち受けていたウースター級軽巡洋艦、デモイン級と言った新世代艦のアウトレンジ攻撃を受け、突入艦は相次いで撃沈、正式な退役前のご奉公と言わんばかりに駆り出された旗艦『鳥海』もデモイン級にバイタルパートをぶち抜かれ、炎上し、転進する羽目になっていた。これが大和に連絡された。

「水雷戦隊は負けたそうだ」

「そうですか。我々の誇る水雷戦隊も終わりですかな?」

「もはや5500トン級の時代に非ずでしょうな。デモインとウースターは最新式の速射砲と重装甲だからな。嫌な予感はしておったよ」

豊田は嫌な予感がしていたと言い、水雷戦隊の敗北を予期していた。そのために本隊に超甲巡を回したのだともいう。

「栗田くん、この戦いは葬式かもしれんよ。我々の誇った水雷戦隊という分野の、な……」」

「豊田長官……」

「たとえ、水雷戦隊の名は残ってもミサイルに主武器はかわっていくだろうな……。せめての敵を我が隊で取るぞ。制空権はこちらのものだ。ブリタニアの増援も来る。目に物見せてくれる。全艦、突撃隊形!砲撃・雷撃戦に備え!」

大和と信濃は突撃していく。歴史で類を見ない『玉砕覚悟の突撃戦』。ブリタニア艦隊は、その扶桑艦隊の真反対から攻撃をかける形となり、扶桑に先行して、敵主力戦艦に遭遇していた。セントジョージ級の防御力にモノを言わせ、サウスダコタ級を撃退するブリタニア。航空戦力より、戦艦戦力でどうにかする思考は大艦巨砲主義的であるが、この場では良い方向に働いた。扶桑が航空戦力を減らしたおかげで、ブリタニア艦隊はリベリオンの背中を突くことに成功した。水雷戦隊がなし得なかった事を、ブリタニア東洋艦隊が行った事になる。そのため、扶桑艦隊への連絡を怠るという凡ミスをするのだが。


「撃て!!本艦の真価をみせろ!」

セントジョージ級は先頭に立ち、サウスダコタ級に猛攻を迎える。46cm防御というカタログスペックを、重要部の装甲厚を大和より厚くした事で達成したので、基準排水量は完成時の大和を上回る。様式はブリタニア伝統のものだが、技術向上でライオン以上の水中防御を誇る。同艦は最新電子装備の賜物、ライオン級三隻に相当する戦力を発揮、サウスダコタ級を撃退し、アイオワ級に狙いを定める。後に、スーパーヤマトタイプの嚆矢とも後に言われる同艦級の初陣は華々しいものであった。その様子が連邦軍を通し、64Fへようやく伝えられ、主力小隊が向かう。すると、突撃してくるブリタニア艦隊と、それを迎え撃つリベリオン艦隊が艦隊戦を行う戦場だった。


「おいおい、連絡を受けて来たら、すげえ事になってやがる!」

黒江も唸る、ブリタニアの戦闘術。ネルソンの正統後継者である事を示す、突撃体形。東洋艦隊の評判を覆す威風堂々たる光景だ。

「ブリタニア艦隊を援護するぞ!」

「了解!」

各員は散り、ブリタニア艦隊を援護する。

「エクスカリバー!!」

エクスカリバーを振るい、ファーゴ級の高射砲と機銃を薙ぎ払う黒江。更に直接、船体へ振るい、同艦をなます斬りにする。

「オーロラエクスキューション!!」

智子は凍気をモノにし、艦ごとオーロラエクスキューションで氷結させる。一瞬にして、だ。

「ふむ。おい、智子、敵艦、新鋭が多めだ」

「でも、あたしらにはカンケーないわ。破壊するか、永遠に氷結かのどっちか、よ」

「お前、空手習えよ」

「あたしにどこぞのダイモスさんの真似を?柄じゃないんだけど」

「もったいないぜ、凍気と炎を操れるんだしよ」

「うーん……」

と、考える智子。考えてみると、闘将ダイモスも、空手で戦うスーパーロボだ。未来世界には存在しないものの、次元世界のどこかにはいるだろう。それで何かいい想像でもしたらしく、顔がにやける。

「おし、空手習おうかな」

と、一言言う。何か決意したらしい。

「その前に、お前にいい見本を見せてやる。『聞け、獅子の咆哮を!』」

「あんたがそれ撃つ?」

「オーソドックスだし、これくらいは黄金がなら、あのアジャパーさん……もとい、デスマスクでもできたぜ!ライトニングプラズマ!!」

山羊座の黄金聖闘士でありながら、開いているほうの腕でライトニングプラズマを放つ。光速といっても、個々の実力差があり、黒江はフェイト/アイオリアとほぼ同等の速度で放てる。アイオリアはそれを極限まで鍛えたが、黒江も日頃の鍛錬の賜物、ほぼ同等の早さのライトニングプラズマを撃てた。ライトニングプラズマそのものはオーソドックスな光速拳であるので、その気になれば、デスマスクやアフロディーテもできる。が、精度というものはある。星矢の流星拳が同種の闘技を使う者達と違い、黄金聖闘士にも通じるように、だ。アイオリア/フェイトと比較すると、光が走る速度が若干遅いが、それでも、鉄でできている軍艦を穴だらけにするには充分な威力だった。

「先輩、なんでもありじゃないですか」

「これがセブンセンシズだ。シックスセンスまでなら、誰でも可能性がある。が、このセブンセンシズは才能がないとダメだ。が、彗星拳でも巡洋艦位はへし折れるぞ? 普通の人間でも鍛え方次第で行けるぞ。ここに実例がいるからな」

黒江は厳しい修行でセブンセンシズに目覚め、黄金聖闘士に登りつめた。その事を示すことは、劣等感が覆いつつあった孝美の光になる。その光が彼女に一筋の光明をもたらすが、それはまだ先のこと。


――ウースター級巡洋艦、デモイン級の一団が激しい対空砲火を浴びせる。VT信管付きの砲弾で、だ。が、彼女らには当たらない。対空砲火を潜り抜けて、エクスカリバーなり、ダイヤモンドダストをぶちかます黒江と智子。菅野が彗星拳をぶつける。それをサポートする芳佳と孝美。孝美は芳佳の一所懸命さを間近で見ることで、自らが体験する事のなかった『一途な思い』を感じ取る。ここで泊地に展開しているMS部隊が出現するが、それは駆けつけたドモン・カッシュのゴッドガンダムが対処した――


『こいつらは任せろ!』

「ドモンさん!」

ハイパーモードになったゴッドガンダムがゴッドスラッシュを持ち、その勢いで、編隊に立ち塞がろうとしたハイザックを一刀両断する。ゴッドガンダムは見事な立ち回りで、MF(モビルファイター)より一回り以上大きいMS達を圧倒する。

「うへぇ。流石にドモンさん。すげえ立ち回り」

「どういうことです?」

「あのガンダム、普通のと違ってな。信じらんね〜と思うが、『競技用』なんだよ」

「なぁ!?」

「あれ、中の人間の動きをそのままトレースするシステムだから、MS系の技術じゃ最高峰の技術の塊なのよね」

「モビルトレースシステムってな。モビルスーツと基本は同じだけど、あれのほうが高度な技術を要求されるんだよ。だから、造るコロニーの技術がモロに出る。あれはコロニーの中でも特に高い技術を持つ『ネオジャパン』の最高技術で造られたから、並のガンダムより強い」

「下手なコロニーだと、強豪コロニーのガンダムのパンチ一発で壊れる程度の強度しかなかったりするから、基本的に昔の先進国のコロニーほど強い傾向にあるわね」

――ガンダムファイトでの強豪は、基本的に旧先進国のコロニーである。ネオジャパン、ネオアメリカ、ネオフランス、ネオチャイナ、ネオロシア、ネオドイツなどが強豪として知られる。シャッフル同盟の代々のメンバーはこの内の5つから輩出される傾向がある事から、五強ともされる。当時はいずれでも第14大会用の機体が開発され始めた頃であり、基本的には前大会で活躍した機体の後継機である。ネオジャパンはゴッドガンダムの後継機といった具合である。ドモンとしては出場するかどうかはまだ考えておらず、ゴッドガンダムのポテンシャルの高さなどから、当面はゴッドガンダムを使用するらしい。実際、ゴッドガンダムのポテンシャルは出場機体中最強のもので、シャイニングガンダムに倍するポテンシャルを元々有している。そして、キング・オブ・ハートのドモン・カッシュの補正もあり、ゴッドガンダムは『軍用機も含めた歴代ガンダムで最強の格闘用』という評判を得ている。

「競技用がなんで軍用より強いんです?」

「ぶっちゃけ、代理戦争とは良く言ったもんで、コロニー国家間の全面戦争を回避するために連邦のとある教授が提唱した『オリンピック』みたいな体裁の大会なんだ。一応は」

「一応はって」

「代理戦争だから、地球で暴れるわけだし、結構嫌う人も多い。で、ジオンとかからは『コロニーの連携を乱す偽善』とか言われてるしな」

ガンダムファイトは未来世界では、『ネオコロニーの代表となる連邦議会議員の選出も兼ねた』大会である。ネオ・ジオン寄りのコロニーからは忌み嫌われている。戦乱期への突入もあり、第14回大会の予定は未定である。シャア・アズナブルも『コロニー間の団結を乱し、コロニーの独立を妨げる悪しき風習』と批判しており、ガンダムファイトには批判的である。だが、一年戦争の事がコロニーの人々の頭にあるので、ガンダムファイトは大半が肯定的である。

「でも、そりゃネオ・ジオンと、ネオ・ジオン寄りのとこだけだ。一年戦争の事もあるから、基本的には歓迎されてる制度だ」

「で、それに勝つために、その国最強の武道家がパイロット――ガンダムファイター――に選ばれる。で、ドモンさんはその一番最近の大会の優勝者ってわけ」

ゴッドガンダムはティターンズのMS相手に『無双』と言える働きを見せるが、その理由を説明する。

「で、ドモンさん、素で私に追いつけるから、人間超えてるんだ、これが。『ガンダムは拘束具』なんてジョークも流行ってるぞ。で、マイナーリーグの『アッガイファイト』もあるとかないとか」

『ああ、あれか。俺も見学兼ねて模範演舞したことあるが、アッガイファイトは機体が頑丈で安いからモビルファイターの入門クラスで人気なんだ。野球やサッカーの二軍みたいなもんだ。元はある奴が、ジオンの水陸両用機が払い下げされた時に考えたみたいだが』

アッガイはジオンの地球方面軍解体時や工廠の残置機が戦後、大量に払い下げされたため、その内にガンダムファイトを真似た野良試合が行われたのを期に、公式化したのがアッガイファイトだ。

「ドモンさん、MSは?」

「だいたいは沈黙させたよ。問題は船だ。あれを倒すのは、俺の役目ではないな」

「そうですね。あ、うちの艦隊も来たようですよ」

『お前ら、一旦、離れるぞ。古風な戦艦のファイトに機動戦力は無粋だ』

「ですね」

23世紀では、機動戦力の介在があるため、純粋な艦隊戦は起きにくい。ガンダムファイトの文化もあり、戦艦の純粋な砲撃戦を尊重する傾向がある。艦隊戦への郷愁が少なからず23世紀にはある証拠だろう。これは航空戦力が万能と謳われた21世紀初頭あたりでは考えられない事だ。


――基地に軟禁状態のZちゃんだが、仲間の存在が明らかになった。グレートマジンガーの光子力エンジンから生まれた『グレちゃん』、修復されたゲッター1から回収された繭から生まれたゲッちゃん、グレンダイザーの『グレンダさん』など。多くはマジンガーやゲッター関係であるが、例外があった。

「えーと……き、君は……大空魔竜ガイキングの?」

「そそ。Zちゃんを迎えに来たのさ〜。あたしのことはガイちゃんと呼んでいいよ」

「す、すまん。大空魔竜ガイキングは見てないからわからないんだ」

「ナニ――!?」

なのはの一言に腰を抜かす『大空魔竜ガイキング』の力を持つ『ガイちゃん』。元になったスーパーロボット『大空魔竜ガイキング』はどちらかと言うとマイナーなロボットアニメである。なのはが長じた頃には、そのリメイク版すら終わっていたので、なのはは知らなかった。

「んな馬鹿な、リメイク版あったじゃん!」

「あいにく、そのときにゃ小学生だったもんで」

「うぅ〜……頼まれて来たらこれだよ〜」

彼女がどこから来たのかは定かではない。そもそも23世紀世界には、彼女の力の元になった『大空魔竜ガイキング』は一切合切が存在しないのもあり、謎であった。

「そもそも、ガイキング強かったっけ?」

「ムッキーーー!」

なのはの反応がアレであるのが来ているガイちゃんだが、まがいなりにもスーパーロボットの力を持つので、下手なリアル系ロボットより強大である。

「証拠見せてやる、ハイドロォォォブレイザァアア!!」

腹部の龍の頭のような意匠のレリーフから高熱球体を作り出し、それを野球のピッチャーの要領でぶん投げた。運悪く、ハイドロブレイザーは偶々に基地にやってきて、着陸態勢に入っていたニパに直撃してしまった。

「うわあああ〜!」

「あ、やっちまったぁ〜!」

ニパが履いていたストライカーは消滅し、空中で放り出され、気絶して倒れている。お約束といった不運ぶりだ。

「カウンターパンチにしとくんだったぁ〜!」

「嘆いとる場合か、おい、誰か担架だ担架!」

と、ガイちゃんの引き起こしたトラブルにより、なのは達はまたも出撃が遅れてしまう。以後、ガイちゃん達を『ロボットガールズ』と呼ぶ事になるが、それはまた別の機会。Zちゃんを呼び水に、次々と現れる『スーパーロボットの力を持つ』存在は、スーパーロボットも思いがあれば、魂や自我が元の機体と独立し、別個の存在になり得る事実だった。



――医務室

「あれがこの世界のニパかよ」

「そうだ。不運ぶりは変わらんようだな?」

「それがニパだからな。でも、なんだよあの魔球は?」

「あたしの力で作った高熱光球さ。沢○栄治真っ青の魔球だ〜!」

「はぁ!?魔球じゃ勝負になってねーし!」

管野(クダ)はガイちゃんと精神年齢が似たようなものなので、同等に言い合っている。なのはは呆れるが、ガイキングが現れた以上、勇者ライディーン、コンバトラーV、ボルテスVなども現れる可能性は極めて高い。

(なんかものすごい事になってきた。でも、アス○ロ球団の殺人魔球とか、ミラクルジャイ○ンツ童夢くんとかのレインボーボールくらいじゃないとね)

なのはは独白するが、クダは当時から人気球団のジャ○アンツに熱をあげており、この世界に来ても、ジャ○アンツの試合は必ず見に行っていた。そのため、スガにねだり、チケット確保やサインボールをもらったりしている。実のところ、なのはも魔球は投げられるので、連邦軍の草野球大会では、周囲の土肝を抜いている。

「クダ、ニパを頼むぞ」

「お、おいっ!人を別のニパと二人きりにするのかよ!?」

「別人だが、ニパには変わりないだろ?」

「そ、そりゃそうだけど」

「おし、行くぞお前ら!」

「お、おい〜!」

と、クダは途方に暮れるのだった。



――格納庫

「あれがマジンガーの最新型?」

「と、いうよりはグレートが進化した個体だ。ゲッター線をビーッと浴びせて」

「うへえ。あたしもなにかできないかなぁ」


格納庫で出撃準備を整え始めるGカイザーが羨ましいらしいガイちゃん。実は彼女も、隠された能力として、『リメイク版におけるグレート合体』の姿になれるのだが、今はまだ知る由もない。

「つーか、お前以外にいるのか?仲間」

「超人戦隊バラタックとか、惑星ロボダンガードAとか、マグネロボガ・キーンとか」

「ま、マニアックゥ……バラダックなんて、誰も覚えてないだろ」

「本人達いたら泣くなーそれ」

「UFOロボダイアポロンとか、空爆ロボグロイザーXよりマシだと思うんだけど」

「いやいやいや!わかんないから!」

「ビデオ戦士レザリオンなんて、『ビデオテープ』がもうないんだよー!」

「んな事言うなら、伝説のダイラガーをだな」

「戦国魔神ゴーショーグンは!?」

「あれはメジャーだろ!」

しょーもない会話を繰り広げる二人。そこに

「おーっと待ったぁ!あたしを差し置いて、お前が行くなんざ、マジンガーの名前がぁ廃る!」

「あー、来たな、クロガネ頭!今更、Zが来ても意味ね〜つーの!」

「ぬなにをぉ!」

いきなり喧嘩を始めるZちゃんとガイちゃん。仕方がないが、元祖スーパーロボットのZは後発に比べると、相対的に破壊力に劣る。Zちゃんが気にしている点だ。

「喧嘩してる場合かよ」

「あー、甲児!」

「君にこいつを預けとく」

「これは?」

「カイザーパイルダーのキーだ。『パイルダーオーン』って叫んでみろ」

「う、うん!パイルダーぁああオーン!」

ZちゃんはマジンガーZを模した服装だが、カイザーパイルダーのキーを媒介にする事で、マジンカイザーへ二段変身出来る。手順は、『パイルダー!ゴー!!』と言いながら、キーをキャノピーに挿す。そうすると、パイルダー部が一旦離脱にし、カイザーパイルダーになり、パイルダーオンで再度ドッキングする。同時に服の各部がZからカイザーへ変化し、胸にはZのエンブレムと、ファイヤーブラスターの放熱板を模した意匠になり、頭の被り物も魔神皇帝に変化し、服の強度も更に上る。肩のデザインもカイザーのそれに変わり、カイザーブレードが使えるようになる。

「カイザァアア、ゼェエエット!」

その姿はZちゃんにマジンカイザーの意匠を落としこんだものである。

「おー!こ、これは!」

「魔神皇帝、マジンカイザーの力を持つ姿だ。名付けて、『カイザーZちゃん』!」

「ノリノリですね、甲児さん」

この姿では、当然、カイザーの全武装が撃てるので、グレンダさん以上のパワーを持つようになり、グレちゃんのお株を奪う『トールハンマーブレイカー』も撃てる。

「おっしゃあ!!行くぞぉぉ!」

意気込むZちゃん。魔神皇帝となった彼女の力はどんなものであろうか?そして、元になったスーパーロボットが存在しないため、立場が危ういガイちゃんの明日はどっちであろう?そして、ネーサー基地、新科学要塞研究所の地下で胎動を始める二人のロボットガールズとは…?

『よし、行くぞ!!マジーンゴー!』

ゴッドマジンガー、Gマジンカイザー、なのは、ガイちゃん、カイザー化したZちゃんが出撃する。ある意味では夢の共演と言える光景である。

「今度、のび太くんに頼んで、子供の姿になろうかなあ?今の姿だと、なんとなく……」

大人の姿では、自分が年増であるような感覚を覚えるのか、子供の頃の姿に戻って、ストレス発散をしたいらしい。それは後に半分ほど叶うが、別の話。



――ロボットガールズの参陣、Gマジンカイザーとゴッドマジンガーの存在などがクローズアップされつつも、一同が通りすぎた休憩室のTVでは、『聖闘士になった黒江』がプロパガンダされていた。が、その黒江をも凌駕しうる素養に目覚めつつある智子。智子が座すべき領域は神であるのだ。それを知るは、黒江のみだ――



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