外伝2『太平洋戦争編』
六十二話『マジンエンペラーG!2』


――ウィッチB世界に伝えられたA世界の現況と戦争。ラルは唸った。介入者にあれこれ世界を弄くり回され、世界の秩序すら変容したことや、介入者が持ち込んだ兵器の中でも最高の力を誇る『スーパーロボット』の映像に唸っていた。

『サンダーブレーク!!』

グレートマジンガーの映像を見て、『科学の発達は、人の手で魔神を創造するに至ったのか……』と唸った。ロマーニャ決戦の際の死闘の映像はスーパーロボットの力を思い知らせるには十分なインパクトがあった。そしてゴッドマジンガーの『ゴッドサンダー』、グレンダイザーの『スペースサンダー』……。

「これがあちらへの介入者の最高の兵器なのですか?」

「そうだ。見ろ、この馬鹿げた破壊力を」

この時代の兵器を小馬鹿にするかのような『地形すら変える破壊力』。ラルの表情は硬い。

「しかも奴ら基準で上の下だって言う話だ」

「そんな……嘘でしょう?」

「それくらいは序の口だよ」

「ハルトマンか。どういう事だ?」

「もっと上の必殺技があるって事さ。これはその前のガリア解放時の映像なんだけど」

「!?」

それはA世界のガリア解放時、赤城と一体化したウォーロックを真ゲッターが粉砕する時の映像なのだが、ストナーサンシャインを形成する時の溜め、真ゲッター1の腕の中に収束してゆくゲッター線。形成されていく『太陽』……。正に神の所業である。最も、この光景は黒江が微妙に変化させて生んたものだが、ストナーサンシャインの破壊力を誇示するにはもってこいの映像だった。ウォーロック(赤城)を、ネウロイの巣をストナーサンシャインで吹き飛ばす様は、ラルとロスマンに恐怖すら抱かせた。

「しかもこれ、炉心の10分の1の出力での運転だからね」

「なんだと!?炉心出力を抑えてなお、このパワーだと!?」

「そだよ。全力なんてやったら、地球なんてかる〜く粉々さ」

「そんなマシンをどうして!?」

「そうでないと守れないからさ。向こうの世界の地球はね。異星人とドンパチ、宇宙怪獣ともドンパチの日々だしね」

――必然的に地球(ガイアと呼ばれる反地球との区別のため、アースと呼称される)の連邦軍はスーパーロボットをも軍事的に利用してでも敗北寸前だった過去がある。そのため、マジンエンペラーの建造やマジンカイザーのパワーアップ、ゲッター軍団の編成が行われていたり、ダンクーガや超電磁の兄弟の改造が行われている。ハルトマンの発言はそれを踏まえての事だ。ハルトマンAは立場的に戦略会議にも出席できるので、理知的な発言も多くなっている。

「それだけ脅威が多いって事さ。じゃなきゃこんな凄いパワーのマシンが規制されないわけないよ」

「それもそうね……。人間同士の戦争なら、間違い無しに規制条例が締結されるでしょうし」

「つまり戦艦のようなものか?」

「ちょっと違うね。戦艦ならこれが……」

「!?」

波動砲の初使用時の映像をハルトマンは見せた。オーストラリア大陸大の大きさの陸地が吹き飛ぶほどの破壊力の砲を戦艦に仕込んでいる。この事実に目玉が飛び出る勢いのショックを受けた二人。

「これで未調整状態で、このあと改良、強化されて地球型惑星なら貫通出来るはず、イスカンダル救援時には当たったらイスカンダルが崩壊する可能性が有ったらしいし。代表的な派生系に、散弾みたいに拡散させる対艦戦用の『拡散波動砲』、エネルギーを収束、拡大させる『拡大波動砲』とかの派生型も多いよ。これが地球の切り札『波動砲』さ。最新のは、惑星程度は軽く粉砕できる。戦艦に搭載して量産されてるけどね。で、それを最初に搭載したのが『宇宙戦艦ヤマト』。扶桑が最新鋭って誇ってるあれを宇宙戦艦に直して強化した代物だよ」

「は!?」

「なんでも、作った時には追い詰められてたから、ちょうど露出した大和の残骸をベースにした移民船を作るって話になって、それが宇宙戦艦に改定されて、宇宙戦艦として造られたのがヤマト。ややこしいんだけど、あれは大和の後身なんだよ」

ハルトマンAはラルB達に必要最低限の知識を仕込んでいくが、ヤマトが大和の後身であり、しかも残骸を直したという事は、戦争で撃沈されることを意味している。その様子も触れられる。多くの世界で『栄光の日本海軍が終焉を迎える象徴』とされている出来事。太平洋戦争最末期に起こった悲劇。大和がヤマトになるに当たっては必要な事だからだ。

――1945年の春。太平洋戦争は終わりを告げろうとしていた。連戦連敗の日本海軍は、稼動状態であった唯一の新鋭戦艦『大和』に沖縄救援を指令した。もはや衰退した日本海軍には空母も無く、一機の空中援護も無く、護衛艦10隻を従えて、日本海軍最後の艦隊として出撃していった――

……と、大和がどのように沈没したかの解説が入る。沖縄に猛攻を加える米軍に一矢報いるために突っ込んだ事、空中援護も無しに、敵の空母機動部隊と戦った事、大和一隻に、反復攻撃を入れ、1000機分の航空戦力を叩き込んだ事、その指揮官がマーク・ミッチャー提督ということに、眉をひそめるラル。(マーク・ミッチャー提督はA世界では、その事を日本人に咎められて大いに憤慨し、マスコミに当たり散らし、謹慎処分が下されていたりする。A世界では航空戦力が急速に台頭したとは言え、大抵の世界のように戦艦が消え去る事は無いのもあり、ミッチャー提督はその点から反論し、また、別の自分の命令違反に対しても第三者的視点から擁護した。『同位体とはいえ別人のやった事に責任は持てん、だが、他山の石とせず自らの行動を省みる指針として心に刻んでおこう』と。ミッチャーは航空閥だが、戦艦が消え去った世界が本当に実現し、核ミサイル搭載の潜水艦が抑止力になった事を疑問視し、戦艦の戦力的価値はさておき、『核ミサイルよりも地球に優しい』と戦艦の抑止力的価値を解いた。これが未来世界の過去に当たる21世紀での戦艦の復権の大義名分として、当の米海軍と海上自衛隊に使われたのだ。特に、アイオワ級をモスボールで保存していた米軍にとっては、意気込んで作ったズムウォルト級駆逐艦の失敗を政治的に誤魔化せるチャンスという事もあり、ズムウォルト級の大半をキャンセルして、アイオワ級の復帰に予算をぶっ込んだ。これは黒江の自衛官としての任官から間もない頃の話だ。ズムウォルトが21世紀世界で大失敗と断じられたのは、当初予定の機能が予算の都合で削られ続けた事、肝心の艦砲射撃も戦艦のほうが魅力的と判定されたためでもある。新兵器の尽くが価格の高騰化とトラブルで戦力化できない米軍の堪忍袋の尾が切れ、枯れた技術の方を信頼するようになったからでもあった。)


(そいや、21世紀の米軍、とりわけ空軍の戦力整備に悪影響与えたのって、あの人たちなんだっけ。やり過ぎなんだよね、あれ。旧世代機で新鋭機を撃墜判定するなんてさ。あれで国防総省の役人の何人か首飛んだんだっけ?)

ハルトマンが独白したその出来事は、黒江が自衛官として不遇を囲っていた時期の事。ちょうど学園都市が戦争を始める前でもあり、当時の革新政権が『旧軍人』の黒江達を『年齢を理由に排除出来ないこと』から、内務省系の甘言の通りに、一箇所に集めて監視する意図もあり、特別編成を名目に集められた。これは当時の総理大臣が旧軍人、特に陸軍青年将校へ偏見を持っており、『バラバラにしていたら、それぞれ自衛隊の他部隊をまとめ上げてしまう危険がある』と考え、防衛省に通達したからでもあった。これは旧軍人の気質が自衛官に持ち込まれるのを良しとしない内務閥が当時の総理大臣を唆して実現させた人事異動だった。その大義名分として利用されたのが、赤松の所属経験部隊が厚木空である事だったり、黒江の経歴が生え抜きの職業軍人で、太平洋戦争時の『若手』である事であった。その時に回ってきたのだ。共同演習の当番が。防衛大臣は報告が上がってきた時、『何かの間違いでは?』と部下に確認させたという。彼らが侮っていた者達は、米軍を苦しめた撃墜王達の同位体である事が広く知れ渡ったのもこの時期だ。撃墜王の中でも『20機以上を落としているトップクラスの者達』の同位体である事が判明したのは、米軍の抗議によるものという情けないもので、これが彼女らの不遇を米軍が救うという事件だった。結果、特別編成は、戦時への突入を理由にしばらく維持されたものの、政権交代で大義名分が失われたのもあり、解除された。また、扶桑への左派の過度の干渉が外交問題視された頃でもあり、扶桑からの報復を恐れた革新政権の担当者だった者は、この事をうやむやにして、誰も責任を取らなかった。この事が防衛省が当時の政権与党に不信を抱くきっかけとなる。また、彼らは自己弁護だけは一流で、自分が軍事に疎いのを逆手に取って、『226事件、515事件、宮城事件があった以上、旧軍人に警戒心を持つのは当然だ』と自己弁護を展開する者までいた。これが防衛省内の内務省閥の失墜にも繋がった他、扶桑との外交問題の解決のきっかけともなった。自衛官内部の扶桑皇国軍人閥の多数派化を恐れる勢力が尽く、有事と自らの過度な扶桑への干渉で失墜したのもあり、生え抜き自衛官達はとりあえずは安心して暮らせる世となった。2013年以後は『周辺諸国とのバランス調整』を理由に軍拡傾向となったという。

(まっ、それがきっかけで自衛官としての不遇が解消されて、大手を振って歩けるようになったって言うから、結果オーライだね)

「ハルトマン、それでどうなったんだ、統合戦闘航空団は」

「んー……。必要最低限の部隊に統廃合されて、今は殆ど現存していないよ。こっちだとね。敵側に加担した奴も出たから、殆どは解散状態さ」

「何故だ」

「そりゃ、敵側に機密情報流してたゴロプとかがいりゃね。アフリカが陥落した原因は、奴の情報だったもの。アヤカさんはかわいそうだよ。直属の上司が裏切ってたって事になるからね」

黒江は二度目においても、自身を裏切っているグレーテ・M・ゴロプを許せず、『スカーレットニードルで拷問してやる!』と息巻いている。一度目の時は怒りのままに、見せしめとして、家族の目の前でエクスカリバーを以て斬首し、ゴロプの妹達から生涯憎まれたという苦い経験からか、今回は拷問で精神的に殺したいという闇を抱えていた。今回も黒江が手にかけるのを恐れたハルトマンは、『今回』、一輝に鳳凰幻魔拳を使ってもらうように頼んでいたりする。

「それで、ウィッチ同士で疑心暗鬼になってね。アヤカさんが二人との繋がりに強く拘るようになったのも、上司に裏切られたショックからだし、あいつは罪人さ。それも罪深い」

ハルトマンはゴロプを罪深い罪人と断言し、同胞とは思わないとした。その強い調子はラルとロスマンを驚かせた。ゴロプがカールスラント連合帝国に帰ることが出来ず、バダンに殉ずる事になったのは、ハルトマンやラルが強い発言権を持ったからでもあった。彼女はバダンの幹部に登りつめたが、後に仮面ライダー達との戦いに敗北し、その場で居合わせた黒江へ詫びの一言を残し、拳銃で自決したという。これが黒江が彼女を『隊長』と呼んだ最後の機会であった。家族への誹謗中傷を鑑み、『最後までティターンズと勇敢に戦い、死んだ』とする内容の報告書が作成、公式記録とされるようになった。これがハルトマンなりの手向けであり、ラルも了承したので、剥奪された名誉は回復され、後世には『英雄』で有り続けた。一度目の時に黒江がしてしまった『見せしめ』は後味の悪い結末となったのもあり、ハルトマンはその光景の現出を恐れ、黒江、とりわけあーやのストッパーを自認していた。ハルトマンは『知っている』のだ。黒江達が二度目のやり直しを行っている最中であると。そして。黒江にはその事も有り、あーやである時に強く戒めている。主人格にも影響があるのを知っている故だ。ただし、黒江は『アレ(一度目)はやり過ぎたなぁとは思ってる。反省はするが後悔はしないぞ』といい、教え子の復讐を果たした事だけは後悔したくないと言っている。ハルトマンは落とし所を探っているのだ。双方の名誉が守られ、誰も『傷つかずに済む』落とし所を。

「ハルトマン、お前は元の世界で何をするつもりだ」

「何って、悲しい結末を迎えるってのが嫌なだけさ。フィクションの世界だけでたくさんだよ、ロミオとジュリエットみたいな悲劇は」

「あなた……」

「少佐なんて身分になると、部下に命令して死なせる事も出来るようになる。だけど、あたしは誰も死なせたくないだけだよ」

ロスマンにも言う。少佐となり、確固たる信念を持って動く姿は、カールスラント軍人の理想とする姿だ。バルクホルンが聞いたらむせび泣きは間違いなしだ。(実際には、驚きが先に来たが)

「と、いうわけで、どうだった?説明は」

「うむ。理解したよ。私達の手柄になるとは言え、実情が伴ってなくては意味がない。鍛えてくれ。管野がいないのが惜しいところだが、孝美含めて頼む」

「あー、カリブチか。こっちでも揉めてるよ。あいつ相当なシスコンだしな」

「そちらでもか」

「うん。こっちじゃ大御所まで引っ張りだして、説得に骨を折ったよ。妹を異常に可愛がるもんだから、相克になっちゃうからさ」

「あいつはシスコンの上、思い切り不器用だ。おまけにこちらではお前らが暴れてくれたもんだから、最近は凄く気まずそうだ」

「やっぱりな。スリーレイブンズを見る目がアレだしね」

孝美Bはスリーレイブンズが暴れたものだから、自分が妹を守るという意義が失われたせいもあり、意気消沈気味である。異常な戦闘能力もそうだが、立場的に逆らえないため、妹を戦闘に駆り出すのではないかという事に異常に怯えている。このあたりはA世界と共通だが、A世界の孝美が好意的であるのに対し、孝美Bは敵対的ですらあった。これはスリーレイブンズの事が完全に過去の遺物とされているか、そうでないかの違いもある。反発心があるのだ。いきなり来て『先輩風を吹かす』というのは、ウィッチ達が嫌うところで、孝美も模擬戦を挑んだのだが、連戦連敗だった。智子は物理的スピードで、圭子はパワーで、黒江は空戦テクニックと聖剣で圧倒している。特に圭子の『鉄拳オーラギャラクシー』の手刀で機銃をたたっ斬った事が精神的に来たらしく、心が折れてしまった。

「あいつらは確かに強い。三羽烏の伝説のとおりだが、黒江大佐はこちらではメンバーではないからか。侮っていたんだが……手刀で山を切ったもんだから、孝美、戦意喪失でな」

「エクスカリバーだもの。戦艦も魚みたいになます開きできるんだよ?そりゃ当然さ」

「エクスカリバー……たしかブリタニアの伝説の聖剣……。そんな力をどうして?」

「カリバーンから鍛えたから、伝説の通りだよ。正確に言うと、アテナに与えられたカリバーンをエクスカリバーに鍛えたっていうのがあれさ」

「うーむ……。はい……。ハルトマン、お前に電話だ」

「はいはい。こちら……え!?エンペラーを実戦テストする?はい、はい……了解」

「どうした?」

「こっちのスーパーロボットの新型、それも最上位級のが実戦テストで送られてくるよ。」

「随分急だな」

「完成したしね。実戦テストは必要だから、こっちに送られるとは聞いてたんだけど」

「最上位と言うと、アレより凄いのか?」

「うん。ぶっちゃけこの星が壊れるよ。そのくらいになると。例えば、標準になってる『マジンガーZ』っていう奴で、21世紀の頃の空母機動部隊まるごとに匹敵する戦力と謳われてるんだけど、それがおもちゃ扱いの凄いやつさ」

「階層があるんだな」

「まぁ、技術の進歩もあるんだけど、エネルギーの理解が進んで、その力を引き出せるようになったから、性能が飛躍したんだ。装甲もありえないほどに硬いから、あたしの固有魔法も通じないよ」

「なに!?」

「うん。突撃系の固有魔法持ちが行っても傷つかないよ。あたしのなんてそよ風みたいなもんさ」

「……そんなのが現実にあるのか……信じられん」

「それが現実さ。上には上がある」

「あなたほどの子がそんな……」

「先生、世の中には、あたしとハンナが束になってもまるで勝てない撃墜王がゴマンというんだよ?あたしなんて若輩者さ」

その人物とは、名だたる未来世界の撃墜王達の事である。アムロやカミーユ、ジュドー、シャアに比べれば、マルセイユもハルトマンも『未熟な若輩者』に入る。VF乗りを入れれば、イサム・ダイソンやジーナス夫妻がその代表格であり、ウィッチ世界最強の一角とされるマルセイユとハルトマンのペアでも、シミュレータ上のデータでさえまるで勝ててない。アムロとは実際に模擬戦をし、8対2の割合で負け越している。その事もハルトマンAが謙虚に振る舞う理由である。



――因みに、ハルトマンはその際、スカル隊のシンボルマークのスカル&クロスボーンマークの由来について、ロイ・フォッカーから聞いたことがあり、彼曰く、『統合戦争の半ば頃に飛んでた俺の親父がアメリカ海軍の第103戦闘攻撃飛行隊に属しててな。俺はかなり遅くの子だったのもあって、あまり記憶がないんだが、子供の頃、懐かしそうに話してたの覚えてるよ。親父がパイロットとして全盛の頃は、地球連邦が出来るって言っても数十年は先と言われててな。当時は旧各国軍の体裁が色濃く残っていた。親父は日米が敵対する前の時代がパイロットのキャリアの全盛で、ロシア軍、中国軍とかの旧東側諸国の討伐で戦功を挙げた。遅くに出来た長男の俺には、戦闘機パイロットを勧めていなかった。俺も若い頃は先史文明や考古学専攻で、パイロットになる要素は微塵もなかったんだがな、これが』

フォッカー曰く、自分の父親は『統合戦争の頃に活躍した撃墜王で、ロイ・フォッカー勲章の由来となった』との事。フォッカーは自分の家族についてはあまり語らないが、少なくとも撃墜王だった父親がいた事はハルトマンに告げた。父親はパイロットを辞した後、長男のロイ(Jrというべきか)に愛情を注いだものの、ロイが大学時代に没している。そのため、ロイ・フォッカー勲章は正確に言うと、彼の父親の功を讃えて設立され、後にVF乗りの最高の名誉に意味合いが変わった勲章である。(旧勲章時代に授与された例はそれほどなく、新勲章時代のほうが多い)

『俺には昔、好きだった初恋の人がいた。が、統合戦争最末期に死んじまった。おまけにその時に部下を一人、行方不明にしちまった……。俺は勲章に値するパイロットじゃね〜んだがな、本当は』

『大佐……』

『今、話題の歌姫のシェリル・ノームっているだろ?あれは俺が経験した事件の関係者『マオ・ノーム』博士の実の孫だろう』

『孫って……』

『マクロス級移民船団にいる人たちと地球圏にいる人たちとは時間のズレが有るんだ。大小でな。彼女の場合、アチラコチラを転々とする内に老年になって、孫が生まれたんだろう』


マオ・ノームは地球圏にいれば、まだまだ若年と言える年であったが、宇宙のアチラコチラを散策している内に老境に入ったのだろう。シェリル・ノームがマオの実の孫ということは一部の者しか知らないが、シェリル・ノームの容姿は、祖母よりも大伯母のサラ・ノームの要素が多めである。因みにバトル7の軍医『Dr.千葉』はマオの教え子に当たるというややこしい人間関係があり、フォッカーも頭の痛いところだ。

『それ、なんかややこしい関係ですね』

『一部しか知らない事だ。マヤン島事件はやっと機密が解除されたが、誰も『島にいた小さい子供がプロトカルチャー研究学の権威になって、その孫が銀河の歌姫』なんて思わんだろう。それが宇宙の神秘だ。リン・ミンメイを直接見てる身としちゃな、あの娘の歌はな……どうもパンチ力にかけるっつーか…』

フォッカーは伝説のリン・ミンメイが行方不明になる前、実物の彼女を見て知っているので、シェリルの歌はパンチ力不足と、ハルトマンに言った。(Dr.千葉曰く、シェリル単独でのチバソング値はリン・ミンメイ、熱気バサラ、ミレーヌ・ジーナスに劣るとの事である)フォッカーの思い出補正もかなり入っているが、リン・ミンメイが伝説の歌姫であるのは疑いようがない事実だ。戦争を歌で終わらせたのは、バサラとリン・ミンメイの二人のみだ。

――というわけである。哨戒中のニパとひかり(B)が怪異の一団と接触したという報が入ったが、その次の通信が変であった。

「何アレ……マントを羽織った……ロボット?」

「来たか!」

「ハルトマン、何が来たと言うんだ」

「エンペラー、マジンエンペラーG。『偉大な帝王』さ」

「大仰な諢名だな」

「そりゃエンペラーを冠するんだし、それくらいはね」

――ラルBへハルトマンはいう。ニパBとひかりBの前に現れたスーパーロボットこそ、グレートマジンガーのもう一つのパワーアップにして、後継機『マジンエンペラーG』である。その力は正に帝王の如き。マントのようなスクランダー『エンペラーオレオール』の形状、帝王であることを誇示するかのようなマジンカイザーと同型のフレームを持つ事を示すマッシブなボディ。グレートマジンガーの後継者であることを示す雷の力。

『サンダーボルトブレーカー!!』

ニパとひかりが対峙していた怪異を一撃で吹き飛ばす雷の力。サンダーブレークよりも遥かに強力無比な『圧縮した電気をビームの如き光芒として放ち、空間ごと爆破する』必殺技である。真ゲッターや真ドラゴン同様の『目に瞳がある』のもあり、強烈なインパクトを与えていた。

「あなたは何者なんですか……?」

『俺はエンペラー、マジンエンペラーG!!偉大な帝王だ!!』

と、鉄也がスピーカー越しで宣言する。Gカイザーが皇なら、エンペラーは帝王である。ひかりの問いかけに答えるエンペラーの姿は神々しく見えるほどの威圧感を感じさせる。全長28mはあろうかという巨体と金色の翼もアクセントとなり、説得力を与えている。これがマジンエンペラーGの初陣だった。



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