外伝2『太平洋戦争編』
六十一話『マジンエンペラーG!』


――スーパーロボットが代替わりで強力化する地球連邦軍。その筆頭がグレートの発展型『マジンエンペラーG』である。その完成が早まった事に驚く圭子と智子。エンペラーの建造に当たり、弓博士と兜博士に力を貸した『ライオネル博士』。時空学の権威とされる博士だが、実はZ神(ゼウス)の俗世での仮の姿である。ゼウスの生まれは、実は太古の別世界で昇神したマジンガーZの善姓が長い年月とビッグバンでオリンポス十二神の長となった存在であり、本来の姿は黄金色の甲冑を纏う、人間の顔を持つマジンガーZである。が、俗世では姿をいくらでも変えられるので、神話で知られるような壮年男性の姿を取り、地球文明の進化を促してきた。性格面は親バカ&浮気性であり、神話通りに浮気しまくる『悪い癖』がある。そのため、善神ではあるが、悪い癖も多いという評判を持った。娘のアテナに激甘であり、先代黄金聖闘士を自らの使いとしたり、聖域にシオンを送ったのも彼である。23世紀世界では『ライオネル』という人間の姿を取り、マジンエンペラーの建造を早めるべく、『時間の進み方が外と違う』工場を提供した。これはデビルマジンガーが第二のZEROになることを危惧していた故で、彼の思惑が当を得たタイミングで影響したのだ。

「ゼウスのおっさん、光子力研究所と科学要塞研究所に助け舟を出したわね。そうでなければ、エンペラーをこんなに早く造れるはずないわ」

「あのおっさん、大神なのに、人間に激甘ね」

「元々が何代も前の宇宙で生み出されたマジンガーZの自我の善の部分が昇神した存在だと、当人が言ってたわ。つまり、私らの知る彼から見ると、何代も前の『兜甲児』と一緒に戦ったマジンガーの成れの果てなのよ」

「甲児って存在が何人もいるの?」

「輪廻転生で、何度も兜甲児として生まれて、死んでいったなんてのがいいかも。たぶん、気の遠くなるような年月を繰り返していく内に蓄積された記憶がゼウスの善性に影響してるはずよ。その内に善性のシンボル的なグレートを創造した……。グレートに甲児が乗った世界線だってあるだろうし、グレートはたぶん、善性が生み出したZの兄であり、弟なのよ」

圭子の予測ではあるが、ゼウスは平行時空のマジンガーZが神化した存在なのは確かだ。そして、ゼウスは善性が先に立つマジンガーであるグレートマジンガーを創造し、Zに代わる後続機として甲児が使った世界も存在させた。ゼウスの思惑で生み出されたマジンガーこそがグレートマジンガーであり、それを認めない負の面がZEROであったのだ。言わば、やがて生まれ出たゴッドは『Zの半身であり、グレートの血統も受け継ぐ』存在である。同時にグレートの後継者も模索しており、弓教授と兜剣造博士をコントロールし、二つの魔神を生み出させた。それがGカイザーであり、マジンエンペラーGである。いずれも惑星程度は慣らし運転で滅ぼせられるほどのマシーンである。それに嫉妬する者もいた。ガイちゃんだ。マジンガーには『カイザーやエンペラー、ゴッド』といった超絶強化型があるのに、自分、即ちガイキングにはパワーアップ形態がないことに不満だったのだ。

「う〜!なんであたしにはパワーアップ形態がないんだ〜!クロガネ頭はゴッドとかエンペラーとかカイザーって、超絶かっちょいいパワーアップがあるのにぃ〜!」

これである。彼女はガイキングのもう一つの可能性たる世界の『ガイキング・ザ・グレート』の事は知らなかった。その力は圧倒的であり、マジンカイザーにも引けを取らない。が、その力は封印されており、ガイちゃんは全体的に手数で押す戦法を取らざるを得なくなっていた。数日後に刺客として送り込まれた神闘士の前にボロボロにされ、もはやこれまでと思われたが……。

「……何……この記憶……あたしの中に入り込んでくる……」

ガイちゃんはボロボロにされる事で、秘められた記憶の封印が解かれた。ボロボロにされることで燃やす命の炎がキーとなったのだ。その瞬間、変身が大空魔竜ガイキングから変化する。そして、虚空から出撃したパーツ群がガイちゃんの中の最強の巨人としての姿を呼び覚ました。

『ゴー!!ガイキング・ザ・グレェェェト!』

叫び、パーツを身に纏い、ガイちゃんが最強形態に目覚める。その名もガイキング・ザ・グレート。彼女に当てはめれば『ガイちゃん・ザ・グレート』だ。翼の形状も、アーマーの形状も全く違う新たなる姿。

『Gウィィング!』

ガイちゃんはこの姿になる事で、カイザーZちゃんに匹敵するスピードを持てる。が、姿の維持には負担がかかるので、長時間の維持は困難である短期決戦用のパワーアップだ。

『うおおおおおおっ!!』

ガイキング・ザ・グレート形態のガイちゃんは炎を纏い、突撃する。そのスピードは黄金聖闘士にも引けを取らない水準であり、炎を纏った拳を叩きつける事もあり、相手のゴッドローブにも一撃で半壊させる。

『吹っ飛べ!ボルトパラァイザァァ!!』

と、追い打ちの一撃を入れる。ガイキング・ザ・グレート化したガイちゃんのパワーは正に凄まじいが、精神的負担も大きい。その隙を突かれ、聖剣『グラム』の大技『パールドウ・オルカーン』を食らい、自身の炎を上回る炎でダメージを負ってしまう。

『ぐああああっ……そんな、ガイキング・ザ・グレートの炎を上回るなんて……!』

『生憎だが、俺のこのグラムはドラゴンスレイヤーの伝説を持つ聖剣だ。ゴッドローブを半壊させたパワーは中々だが、神闘士に俄仕込みの力など通用せん!』

と、彼はグラムを振るい、ガイキング・ザ・グレート化したガイちゃんをも斬撃の衝撃波で傷つけていく。ガイちゃんはまさかの展開に半ばパニックになる。

『うわぁぁっ!?そ、そんな!?あたしが、このザ・グレートになったあたしが手も足も出ないなんて……そんな馬鹿なことがあって……たまるかぁ!』

「フン。俄仕込みの力などに頼るからこうなる!哀れな奴め!」

ガイちゃん・ザ・グレートは、グラムを振るう『彼』にまるで歯が立たなかった。これはガイちゃん自体の経験不足と、神闘士の熟練された闘技がガイちゃんの力の拠り所である炎のパワーをも上回っていた証だった。

「終わりだ!!」

グラムがガイちゃんの首を狙ったその瞬間、間に割って入ったのは、天秤座の盾だった。

「なにィ、天秤座の盾だと!?」

黄金の盾。それが自分を守ったガイちゃんは、内なる力が目覚め、更なる姿になる。

『どうだ!ミラクルドリルッ!』

天秤の盾を持ち、ランスのようにミラクルドリルを召喚したガイちゃんは天秤の盾の加護により、新たな姿となる。

『どこの誰だかわからないけど、この盾の加護を借りる!天よ轟け、大地よ唸れ!ゴー!ガイキング・ザ・ナァァイィィトッ!!』

ガイキング・ザ・グレートから更なる姿を取るガイちゃん。

『ハァァッ!』

ミラクルドリルをランスのように扱い、グラムと鍔競り合いをする。ドリルの回転で体勢を崩させ、そこから二本目取り出して吹き飛ばす。が、技を放たれ、距離を取る。

『クソ、決定打が……ミラクルドリルに罅を入れるなんて…』

「勢いは最初だけか?」

『ミラクルドリルゥゥゥ!』

『甘いっ!!』

突き出されたミラクルドリルを彼は素手で掴んで回転を止め、そのまま腕力で一本のミラクルドリルの穂先を砕き、斬撃のエネルギーをガイちゃんに伝えてさらなる大ダメージを負わせる。ナイト化でさえも決定打がないという状況に打ちのめされるガイちゃん。

『ハイドロォォブレイザアァアァ!ギガバースト!!』

ハイドロブレイザー・ギガバースト。彼女の切り札に近い攻撃だが、これは躱される。光速で動ける彼らからすれば、ハイドロブレイザーギガバーストも『避けられない速さ』ではないからだ。

『なにィ!?く、クソぉ、フェェイスオープン・ザ・グレート!アブショックライッ!!』

目眩ましをし、その隙に離脱するが、大ダメージにより、ミラクルドリルの残り一本も自然崩壊する。打つ手の尽くがカウンターされ、諦めの色さえ見え隠れするガイちゃんだが……

『あ、あたしの炎じゃ……勝てないの…?そんな……、ザ・グレートになって、ナイトにもなったのに……』

と、ガイちゃんは理不尽に叩きつけられた現実に打ちのめされ、絶望しかけるが……。

――ボクの力を使うんだ!――

――え!?だ、誰!?――

――いいから!そいつを撃退するには、剣が必要なんだ!!ボクの言うコードを叫んで。エンペラーソードって!――

――わ、分かった!こうなったら一か八か!――

『エンペラァァァソォォォドッ!!』

脳裏に語りかけてきた謎の声に縋るように、ガイちゃんは叫んだ。そのコードを。叫びと共に招雷が起き、その雷と共に形成され、地面に突き刺さった大剣。その名もエンペラーソード。『炎』を超えるには『雷』しかないのだ。大剣を引き抜き、残る力を振り絞り、エンペラーソードを構える。

『誰だか知らないけど、託された雷鳴の力でお前をたたっ斬る!このエンペラーソードで!!』

誰かの導きを信じ、ガイちゃんはエンペラーソードを振るう。炎が通じないのなら、雷の力で。背中のマントと紅の翼のビジュアルもあり、まるでマジンガーを思わせる姿だった。

『光を超えて、あたしにあいつの反応速度を超えるスピードを与えてくれぇえええ!!』

ガイちゃんに与えられたエンペラーソードは、正に騎士の大剣そのものであり、超光速でエンペラーソードを振るう際、決め台詞として言ったのが…。

『雷刃一閃ッ!!』

……である。ウイングの限界速度さえ超えた『超光速』に加速し、何度も斬りつける。最後の攻撃を決めた瞬間、変身のタイムリミットが来て、エンペラーソードにもたれかかるように倒れ込むガイちゃん。天秤座の盾とエンペラーソードに感謝しながら意識を失う。変身も同時に解ける。無理を重ねた結果だ。彼女が意識を回復するのは、その5日後のことだった。

「五日も寝てたぁ!?」

「そうだ。ザ・グレートのフェイスオープンの後に、更にナイトへ変身するなんて無茶しすぎだぞ。かなりエネルギーを消耗したから、武器は当分使えんだろう」

「えぇ〜!」

「エンペラーソードを送ってくれた奴に感謝しろよ?当面はお前に預けとく。あと、ミラクルドリルは連邦軍がニューZαとエネルギー転換材で新造してくれるらしいぞ?シールドとセットで」


黒江はガイちゃんに割り当てられた部屋を出て行く。その剣こそ、マジンエンペラーGの切り札たる『皇帝の剣』である。黒江はその事を『知っている』。『ガイキングがマジンガーの武器を使う』という燃える展開は黒江の好物である。黒江はゲッター搭乗時、他のスーパーロボットの武器を即興で使うことが多く、ガイちゃんにはそれがマジンガーの武器であることを敢えて言わなかった。


(ありがとう。誰だか知らないけど、このソードを送ってくれた人。これであたしはまだ…戦えるんだ)

――ガイちゃんはこうして、何者かの応援でなんとか神闘士を撃退した。自分の力不足を恥じたのか、この日から、何者も斬り裂く聖剣『エクスカリバー』と『神剣エア』を持つ黒江に弟子入り志願をするのだった。――




――23世紀世界では、予定より早くマジンエンペラーGが完成していた。超合金ゴッドZのボディを持つグレートマジンガーの後継者の一つ。それを見届ける幼い少女の姿があった。グレートマジンガーの意思が肉体を持った『グレちゃん』だ。

「……ダルい。部屋でゲームしたい……」

グレちゃんはダウナー系の性格であり、ゲーマーであった。その点はパイロットの鉄也と正反対である。その一方、仲間思いなのは鉄也と同じで、ガイちゃんにエンペラーソードを送ったのは、彼女である。

「どうしたね?」

「なんでもない……。(ボクが直接行かなくても良いよね…ゲームの続きやんなきゃ…)」

と、剣造に返すグレちゃん。外見はミドルティーンの少女で、Zちゃんより幼い印象を受ける。グレちゃんは早速、副業でゲームショップを開業しており、その店長であるという特技を持つ。ゲーマー度は相当で、和ゲー、洋ゲーを問わずにプレイしている。鉄也の影響がないわけでもなく、スイーツ女子でもあり、ブログで食べ歩きブログを開設しているインドア系である。とはいうものの、グレートマジンガーの後継者であるマジンエンペラーGには興味はあるようで、工場で完成ホヤホヤの機体を観察している。


(あれがボクの後継ぎ、マジンエンペラーG……。通りで武器が使えたはずだ……。ボクだってパワーアップすれば、あのくらい……)

マジンエンペラーの力はグレちゃんにも備わっている。が、どうやって使うのかがわからない。それがグレちゃんの悩みだった。機体と違い、小柄なグレちゃんはリーチが短かったり、体力がなかったりと、機体のグレートと異なり、ハンデが大きい。そのため、サンダーブレークを主用している。だが、一度リミッターが外れると、Gカイザーやエンペラーの片鱗を垣間見せる。また、Gカイザーかエンペラーの片鱗により、声色が成長したものに変わる他、背丈が変身時のみ伸びるというモードが有る。また、性格も強気になるが、その時の口調などは忘れて欲しいとは本人の談。





――同じ頃、ネイサー基地でも、ゲッちゃんが誕生しており、お嬢様口調だが、キレると隼人のような情け容赦なさを見せたり、竜馬のような強者との戦いを望む闘争心を持っていた。また、服装は生誕時はゲッター1だったが、現在はゲッタードラゴンの姿である。

「どういう事ですの、ハヤト」

「お前らはしばらく、検査が目白押しという事だ。ゲッタードラゴン……いや、ゲッちゃんドラゴン、ライちゃん、ポンちゃん」

「野球の試合、見に行きたいんやけど……」

「お前、なんで関西弁だ!?」

「ウチに言われても!カー○の試合、見たいんや!」

「知るか!」

ポンちゃんはどういうわけか関西弁であり、広島東洋カ○プの大ファンである。そこは弁慶のパーソナリティが影響したらしいが、弁慶はジャ○アンツ、もしくはドラ○ンズファンであるので、これも違う。隼人の悩みどころだ。

「って、ノリツッコミはそこまでにしてもらいたいのですが」

「ライガ。お前はまともそうだな」

「それどういう意味ですの!?」

「オホン。お前らにはこれから数週間ほど検査を受けてもらう。ゲッターの化身なら、高濃度ゲッター線にも耐えられるだろうから、覚悟しとけ」

隼人の検査は苛烈であり、ゲッちゃんたちもげっそりするほどのものだった。が、即戦力を求める隼人としては仕方がない訓練であり、ある時には鹵獲していた『ゲッターロボ號』に乗せられたこともある。


『フルパワーチャージ・セットアップ!チェェェンジ!!ゲッタァァァァァ號!!』

ある意味では、ゲッタードラゴンがゲッター號を動かすシュールな構図である。なので、ゲッター線を使用せずともドラゴンと同レベルの戦闘能力を持つ同機の能力が際立つのである。

『……って、なんで私達がゲッター線を使用してないゲッターに乗せられてるんですの!?』

「操縦技能を純粋にチェックするためだ。ちゃんと様になってるじゃないか」

『〜〜!』

『次だ。Gアームライザーを呼んで、ソードトマホークを使って見ろ』

『……こうなったらヤケですわ!Gアァァムライザァァァ!!』

Gアームライザーを呼び出し、ソードトマホークを呼び出すゲッちゃん。

『磁甲剣ソォォォドトマホォォォク!!』

ソードトマホークを構える號。ゲッターの化身であるため、叫び、操縦技能共に合格である。

『次は私ですわね。チェェンジ・ゲッターオフ!チェーンジ・ゲッター翔!!』

プロテクターを解除し、分離し、ゲッター翔に変形させるライガ。彼女らはゲッターGの化身であるため、後発とは言え、非ゲッター線の號には不満があるらしい。このように、隼人は厳格な訓練と検査を平行し、数週間かけて初めて、実戦訓練を許可した。その際には自分達を全てで超越する真ゲッターやアークとの模擬戦までやらされたという。その時、真ゲッター(竜馬達操縦)のあまりの鬼さ加減に『鬼ぃ〜〜!!』と悲鳴を上げたという。


――また、最終日には、ゲッタードラゴンの進化たる真ゲッタードラゴンとも模擬戦をやらせられ、三人は涙目になったという。この時にゲッちゃんはシャインスパークを撃ったが、更に強力な上位技『真シャインスパーク』で迎撃され、大泣きしたという。竜馬曰く『基礎パワーが違うんだし、圧倒されるのは当たり前だ。それにお前らの手の内くらい読めてるぜ。わりぃな、俺達は目つぶってても合体できるんだ』との事で、経験の違いを強調しつつ、シャインスパークの使いどころを指南したという。彼女らは普通のゲッターロボGの化身なので、自らの完全上位互換の真ゲッタードラゴンの出現までは予想外であった。真ドラゴンには真シャインスパークがあるのは予想内だったが、それを自分のシャインスパークの迎撃に使われたのは完全に予想外だった。

『真!!シャイィィンスパァアアアク!!』

真ドラゴンの最強の一撃は空間すら揺るがし、ゲッちゃんドラゴンを吹き飛ばす。気がついた時には医務室だったロボットガールズチームG。真シャインスパークはウザーラすら滅ぼす一撃であるので、それで生きているのはさすがであった。失意のゲッちゃんドラゴンだったが、彼女がふと、上空を見上げると、一機のマジンガーが基地を通り抜けていく。グレちゃんがテストパイロットとして試運転するマジンエンペラーGだった。それがゲッちゃんとグレちゃんを結びつけるきっかけであった。デモンストレーション飛行は、新マジンガーであるマジンエンペラーGの存在を周辺市町村に誇示する狙いもあった。皇帝的な威厳を持って誇示するマジンエンペラーG。グレちゃんは嫌々ながらも、同機のテストをこなし、慣熟させる。そのあたりは剣鉄也に似た性質と言える。エンペラーソードをガイちゃんに送ったあたり、意外に仲間思いなのだろう。マジンエンペラーを操りながら、今、プレイしているゲームの攻略を思慮するグレちゃんだった。



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