外伝2『太平洋戦争編』
六十四話『見敵必殺』
――マジンエンペラーの力は強大無比であり、その力の是非を巡って、孝美BとハルトマンAが揉め、ハルトマンAが黙らせた。鉄也に好意があるため、マジンガーを侮辱する者には高圧的に出る。そのため、気当てを行い、その冷たい『人殺しの目』もあり、孝美Bはへたり込んでしまった。みっともないほど怯えている。
「……ひっ……」
「何、甘いこと言ってるのさ、カリブチ。戦争だよ?生か死か。求められるのは見敵必殺。分かる?」
「は、はい……」
足がガクガク小刻みに震え、失禁寸前である孝美。ハルトマンAの冷たい視線も効果絶大で、更に、刀の鞘に手をかけた瞬間、みっともない悲鳴を挙げる。原初の恐怖を感じたのだろう。
「や〜めた。抜くまでもないね」
「気にするな。言わせておけばいい」
鉄也はハルトマンが自分を庇う言動と共に行動を起こしたのが嬉しいのか、そっけない言葉とは裏柄に、嬉しそうにハルトマンの頭に手をのせてかいぐりかいぐりする。B側の同席者はいなくなっており、孝美は恐怖に塗りつぶされた顔でハルトマンと鉄也を見る。完全に哀れみを寄せられている事に気づいたのか、孝美は泣いている。
「いいか、孝美ちゃん。こっちの君もそうだったが、力を持つことの問題は力の大きさではなく、力を振るう者の意志の持ち様なんだ。力の大きさを恐れては前に進めないからね。君の妹は力を持とうと努力しようとしていたが、君はその芽を摘もうとした。こっちでも、ここでもだ。素養の問題じゃない。意思なんだ。人の意志は奇跡を呼ぶ。君だって、志願したての頃は妹のひかりと同じような立場だったはずだ」
「……!」
鉄也の一言に、自らの矛盾に気づいた孝美は大泣きし始める。
「わ、私は……どうするべきだったんですか!?あの子には私のような強い魔力はなかった!これは努力でどうにもできない!だから、あの子には戦ってほしくなかっただけ、なかっただけなのに……どうして、どうしてこうなってしまったの……どうして!?」
孝美はどこの世界でも、妹に過保護に接している。B世界ではマジンエンペラーの来訪で、その矛盾が表面化した。それは東方不敗マスターアジアが死ぬ間際にドモンに発した『お前と新宿で出会わなければ、お前がガンダムファイターになどならなければ……こんな事にはならなんだ……』との嘆きと、孝美の涙はとてもよく似ていた。妹には『平和な世界で生きていて欲しい』という願い、『お姉ちゃんと一緒に飛びたい』という気持ちで努力を重ねる妹を否定してしまう事への罪悪感が入り交じる心境から発した言葉だったが、それをひかりに聞かれてしまった。
「あたしはお姉ちゃんのお荷物だったの!?あたしがウィッチになった事、そんな風に思ってたの!?」
「ひ、ひかり……違うの、これは……」
「お姉ちゃんのバカァ!!」
と、ショックのあまりにひかりは絶望と怒りが入り交じった顔で、姉を軽蔑するような視線を向け、部屋を出ていってしまう。孝美は二重のショックでもはや精神崩壊寸前に追い詰められ、卒倒してしまう。このことはラルBの頭痛の種となり、孝美が卒倒している間に、スリーレイブンズと相談した。
――ラルの執務室――
「少佐、事態は深刻だぞ」
「ええ。あの姉妹は不器用にすぎる。まさか最悪の形で相克が表面化するとは……」
「今、ケイがひかりを慰めに行ったけど、あの子、ヒステリー起こしてたそうよ。慕ってた姉にこれまでを否定されれば、ねぇ」
「綾香、孝美のほうは?」
「ダメだ。ショックがでかすぎて、まだ気絶してるよ。うわ言で必死に弁明しようとしてるらしき言葉をつぶやいてる。こりゃそう簡単にいかんぞ。マルセイユ、お前にも協力してもらう。二人が落ち着いたら、模擬戦をけしかけてやれ。お前は現在進行系で有名なウィッチだ。元の世界と違って、私らじゃ出来ん仕事だ」
「分かった。お安い御用さ」
マルセイユはサムズアップしながら頷く。立場的に孝美の不安を取り除くには、世界4強を謳われるマルセイユが、ひかりの腕に太鼓判を押すしかない。それが決まった矢先、敵襲が起こる。
「なに、ニパが階段からずっこけて、骨を折ったぁ!?それも脇腹だと……こんな時に!」
兵からの報告に頭を抱えるラル。
「こうなれば私が出る。ユニットを用意しろ!」
と、指令を飛ばす。運の悪いことに、伯爵とロスマンのストライカーは大規模整備を始めたばかり、ニパと孝美は出撃不能だった。
「隊長!雁斑ひかりが出撃を!」
「あいつめ、先走ったか!誰でもいい、追いかけろ!」
「ここは私とクスィーガンダムに任せてもらおう」
「ハンナ、今からで間に合うのか!?」
「クスィーは超音速で巡航飛行出来るマシーンだ。あいつのユニットの速度はせいぜい、時速540キロ。超音速で飛ばせば、余裕で追いつける」
マルセイユはすぐに格納庫に行き、クスィーガンダムを起動させる。
『ミノフスキーエンジン、作動良好。ビームバリア展開。行くぞ!』
クスィーガンダムが光に包まれ、離陸する。全長30mの巨体を宙に浮かせ、超音速で飛翔させる技術。どれをとってもオーバーテクノロジーだ。
「あれがあっちの世界のハンナの得たロボット……いや、モビルスーツって言うんだっけ?超音速で飛べるなんて……ずるいなぁ」
見送った伯爵は残念がる。
「あー、もうじき補給で超音速ストライカーが回されてくるけど、ニパにまず回さないように言っといて。初陣で壊しかねないし」
「辛辣だねぇ、エーリカ」
「ジョゼとシモハラは練度不足気味だから、鍛えないといかんけど、ニパはすぐに使えるだろうけど、荒いしな」
「エーリカ、あのモビルスーツはどういう奴なんだ?」
「第5世代MSさ。単独で飛行可能なのが条件なんだけど、コストかかるから、量産ベースには乗ってない代物さ。ガンダム系はスーパーカーかレーシングカーみたいに腕も要求されるしね」
「コスト、か。コストパフォーマンスって奴?」
「強力なだけの兵器は後が続かないしね。そのバランスが取れてて、量産機を圧倒出来る性能を持つのが『ガンダム』って機種なのさ。マジンエンペラーみたいなのは一点ものの特別な奴だけど、あれは一応は『兵器』だしね」
そのハルトマンの言通り、クスィーガンダムは閃光の如き機動で怪異を圧倒しながら、ひかりを救出する。
『カリブチ、下がれ!あとは私が引き受ける!』
肩部メガ粒子砲を放ち、ひかりを狙おうとした怪異を粉砕する。ミノフスキークラフトを全開にし、機動戦闘を展開するクスィーガンダム。ビームライフル、ファンネルミサイルも存分に使用し、サーベルを使うまでもなく、怪異を圧倒する。この世界の怪異は、クスィーガンダムを捉えられるほど優秀な機動が出来たり、変形で特性を変えるモノはおらず、正に天下無敵と言ってもいい強さだった。基地のレーダーにもはっきりと、クスィーガンダム一機の働きで怪異の編隊は散り散りになり、もはや抵抗する怪異はあと一機だけである。
「あ、あたしにやらせてください。」
『よし、コアは露出させてあるし、再生の阻害のためにファンネルを爆発させずに刺してある。やってみせろ』
「は、はい!」
ひかりは怪異の必死の弾幕を潜り抜ける。それは実戦で鍛えられたAと比べても遜色のないもので、マルセイユはその才覚を感じ取った。
(潜在能力は同じようだ。『主人公属性』って奴だな。ヨシカと同じ立ち位置にいるのは確かなようだ)
『主人公属性』。俗に言う『物事の中心にいる立場におり、中心的な役割を果たす』者の持つ属性である。ウィッチ世界で先天的に持つのが圭子や智子、後天的に会得した黒江の例がある。芳佳とひかりはその中でも特異点とも言うべき位置づけにおり、マジンガーZEROがC〜E世界を滅ぼした時も、最後まで抗ったウィッチに食い込んでいる。ニュータイプに目覚めたマルセイユは、ひかりと芳佳とにある意外な繋がりに気づいたのだろう。
――基地では、クスィーガンダムの出撃で結局、暇になったラルがスリーレイブンズの二人にマジンエンペラーの事を聞いていた。エンペラーは元々、平行世界をも滅ぼす『最悪の魔神』へのカウンターも兼ねて計画されたが、その魔神が思いの外、楽に倒せたので、建造速度は緩められたという経緯があるが、本来よりは早い。世界を滅ぼした最悪の魔神とはZEROの事だが、ZEROがゴッドマジンガーにだけは相性が悪かったのもあり、ビッグバンパンチからのファーストライトで滅んだ。が、少なくとも、二つ以上の地球は滅ぼした事は確かだ。その事は黒江達は幻視しており、しかもその内の一回は自分達が直接、なにかかしらの武器で殺されていることから、Zちゃんの事を強く警戒している。ガイちゃんとは、Zちゃんと誕生した経緯が違うことから、フレンドリーだが、ZちゃんだけはZEROへの恨みから、特に黒江がぶーたれている――
――これは、ZEROに智子を目の前でサザンクロスナイフで串刺しにされて殺害されたC世界での光景を幻視したためで、黒江は年甲斐もなくZちゃんに突っかかっている。その点が智子に『お子ちゃまねぇ』と言われてしまう点であり、精神年齢はZちゃんやガイちゃんといい勝負である。智子が昇神で精神的に成長したのとは対照的で、二人の立場逆転の理由でもある。これは黒江の精神の再構築の過程で、ヒーロー達と出会うことで、『ガキでも良い、まっすぐ生きたいんだ』という気持ちが芽生え、そのように振る舞う内に定着した事、再成長中も、永遠の童心持ちののび太たちと交わる事で、少女の純粋さを持ったまま青年になったためである。その点はのび太らの影響であり、きちんと大人としての責務を果たすところは本郷猛や城茂の影響だ。黒江に生じた純朴なところとして、二度目のやり直しでも行っているのが『クリスマスイブに靴下を寝床に吊るす』事だった。これは戦時中でも行っていて、艦娘の川内や那珂が気を利かせてプレゼントを入れてくれるという粋な計らいをしている。このギャップが黒江の人気の一因だ。ここ三年間は圭子が二人にクリスマス前に連絡してプレゼントを枕もとに置くなり、靴下に入れてもらうという事を頼んでおり、47年度は『欲しがっていた釣りゲームソフトと本』だったりする。47年度以後は人格があーやの時期に聞き出しておいて、11月から12月に川内と那珂に頼んでおくという手法を用いる。47年度からは隊の者たちがなにかかしら噛んでいて、この48年度に備え、ネットワークを構築している。普段は照れ隠しをするので、人格が入れ替わる時間帯に聞き出すのが最善。そのネットワークは圭子の合図一つで動く。扶桑最大手の百貨店も一枚噛んでいるので、実のところ、黒江の『愛すべきところ』と、当人には言わないだけで、隊のほぼ全員が知っている。圭子は『変態と書いて紳士の集まりね』と言うことで、携帯のアドレス帳に『変態軍団』と登録している。その関係で、圭子は武子を巻き込み、隊の運用経費捻出のため、裏でマルセイユ、智子、黒江の非公式ブロマイドを将軍/提督/士官らへ売りさばいている。これが64Fの資金源の一つであると同時に、将軍/提督との裏取引に使用している。智子達のあれやこれやの場面を上手く捉えているので、将軍/提督の間のコレクターズアイテムとなっており、後の子供の世界の仮面ライダーカードの如き人気があった。武子は後ろめたい気持ちがあるので、当初は気が引けていたが、捷二号作戦以後は休暇を取りたいがために関与を強める。この時期にアフリカ三将軍が、上官としての職権乱用で手に入れたアルバムはその第一弾で、武子が関与して装丁させた初のものであった。手探りで装丁したので、出来はいいとは言えないが、コレクターズアイテムであった。これは公式ブロマイドがスリーレイブンズの復活そのものが想定外だった事とトラブルで写真が殆ど残っていない(クーデターでクーデター軍に写真が焼かれたこともある)ため、再販がほぼ不可能とされた割に、スリーレイブンズの英雄扱いは続いているのを利用しての策だった。最も、公式ブロマイドの再販は、扶桑軍の損害補填のためにも必要とされたが、第一次現役当時の写真の原版が数回のクーデターの折に、クーデター軍に処分されたりした影響で現存していないことが分かり、統合参謀本部は顔色を失った。が、幸いにも、『扶桑海の閃光』用の宣伝写真は現存しており、それを焼き増ししてブロマイドに流用する事で、発売に成功した。そのため、智子は恥ずかしい思いをしたとのこと。なお、同じ部隊に配属されれば、智子のファッションが拝めるので、配属志願者は多く、智子の人気はまだまだ健在であった。裏ブロマイドはマル秘写真も多いことから、戦時中は流通が続き、戦後にパットンの息子『ジョージ・パットン4世』が父の遺品からこれを発見。扶桑のお宝鑑定番組に出品したところ、高値がついたとか。――
――502統合戦闘航空団は前線への進出を指令されたものの、その前線がどこなのかの具体的な指示はなかった。スリーレイブンズが巣を蹴散らしたりしたせいで、戦線から怪異の姿は消え、連合軍は無人の凍土を進撃していったからで、その快進撃は扶桑にいる坂本Bを、ベルギカのミーナBをも疑心暗鬼にさせた。これは単純に怪異が強大な小宇宙や光子力を感じ取り、本能的に撤退していったからだ。それだけ怪異が黄金聖闘士とマジンエンペラーを恐れたからだ。
「怪異が塩を引くように各地から撤退している。貴方方のおかけ、というべきかな」
「いやぁ〜やりすぎた」
「それにしても、怪異は何を恐れたのでしょう」
「光のエネルギーかもしれん。あのマジンエンペラーもそうだが、太神ゼウスの加護があるからな。私らはその子のアテナの配下だ。もしかしたら、全てを原子に打ち砕くゼウスの加護を恐れたのか?」
「あるいはゲッター線、という事も考えられるわ」
「そうか、ゲッター線もあり得る。あれは全てのモノの進化を促す。無機物であろうと。だが、怪異はゲッター線に弱い!」
「間違いないわね」
「ゲッター線とは?」
「宇宙から降り注ぐ宇宙線の一種で、その中でもとびっきりのトンデモなものだ。生物だろーが、機械だろうが、何でもかんでも進化させられる効能がある」
「そのゲッター線を使用したスーパーロボットをゲッターロボと言って、あたしの愛機の一つでもあるわ。あいにく、現物はないけどね」
圭子はゲッター乗りでもある。いつもしているマフラーも、ゲッター線の影響により、竜馬のそれと同じようなモノに変貌している。また、既にゲッター線の使いになっているためか、口調が微妙に好戦的である。
「加東大佐、あなたは伝え聞く人物像より好戦的ですね」
「色々あってね。アフリカはこちらだと陥落しちゃったから。最も、彼らと別の介入者のせいだけど」
「その介入者とは?」
「味方側との内戦に敗れた軍閥の生き残りよ。名をティターンズ。元はエリート特殊部隊だった連中よ。憲兵崩れ、って言うのかしらね。元は治安回復のための部隊だったから。その残党のかなりの規模の部隊が1943年の終わりに事故みたいなものでやって来て、44年の段階で行動を起こした。人型機動兵器を始めとする超兵器の前に、連合軍は連戦連敗、505、503は事実上の消滅。綾香はその生き残りよ」
「それでは……」
「ええ。あの子はその時に心に大きなキズを負ってね。そのトラウマが今でもあるわ。多重人格という形で」
「多重人格……」
「理性を司る普段の人格と別に、子供のような『本能を司る人格』が出来てしまって、その影響で、子供っぽいところが出来てね。互いを認知して任意に入れ替われるから問題はないけどね」
「なるほど。あなた方はスリーレイブンズと自称しておられますが、三羽烏としての武勇伝はこちらの記録と同じと判断してよろしいですかな」
「いえ、もっとよ。戦況を最悪にしなかった『伝説』になってるわ、あたしらの事は。ウラジオストクの防衛に成功してるし、迂回しての洋上決戦になったわ」
「その時に暴れたのもあって、英雄だよ。で、その時の智子が……」
「こんな感じに変身して、暴れてやったわ」
「絶対魔眼?」
「魔眼じゃないわ。覚醒の最上位『変身』よ。リスクもないし、ストライカー無しでも飛べるし、良いこと尽くめよ」
「なんと……その翼は……悪魔……」
「んなこと言ってたら、変身できるかつーの。第一、デビルマンに怒られるわよ」
と、憤慨する智子。マジンカイザーのカイザースクランダーのような炎の翼を見せたら、悪魔と言われたので、お冠だ。
「ったく、世の中には、悪魔と人間が合体して、人間が勝って、悪魔人間になって、人間側について戦ってるヒーローがいるっつーのに」
と、お冠の智子。銀色の瞳と青色の炎の凛々しい姿だが、顔がギャグ顔なので、些かカッコ悪い。絶対魔眼状態の孝美と違い、メリットしか存在しない。防御が下がるどころか、遥かに向上する上、小宇宙との併用で、超光速で動けるというメリットがある。それが孝美A/Bに劣等感を抱かせている。特にBは前世代のウィッチと侮っていたところに、模擬戦で使われて痛い目を見ている。しかも絶対魔眼でも補足不可能な超光速を披露されて。当初は孝美Bを打ちのめすつもりは無かった智子だが、変なプライドを固める前に完膚なきまでに叩き潰すため、敢えて全力で叩きのめした。それが今回の『騒動』の一因なのである。
「孝美の一件、どういたします?」
「マルセイユに任せましょう。それと、マジンエンペラーの力を認めない事にはハルトマンが許さないでしょうし、ここはマルセイユの働きに期待ね」
「ハンナを貴方が上手く使っているのは聞いております。あの問題児をよく……」
「あの子は自由にさせるのがコツよ。あの子があたしの他に言う事を聞くのは、エディータ・ロイマン大佐くらいね」
「隊長ならありえる事だ。しかし、以前より協調性が出ておりますが?」
「そう見える?」
「ええ。」
「多分ライーサのおかげね、ウマの合う相方がいれば他の隊員とも自然に馴染むわ」
「なるほど。部隊の移動は数日以内に完了せよとのことですが…。どこに行くかは決まっておりません。不思議なものです」
「やりすぎたな、こりゃ。この地域は叩き潰したし、北極海にでも逃げたかもな」
「503の担当地域からも塩が引くように撤退を始めたそうですが、あなた方はどれだけ叩き潰したんですか?」
「ざっと空戦が300、陸戦で500くらいはやったかな?軍団ごとやったのも多いし」
「あの子達のやったのも入れると、1000行くわよ」
「そっか、そうなると、弾が尽きただろうな。製造能力が追いつかないくらいに巣ごとやったしな」
「そうなると、一気に扶桑の大陸領とか、リバウは安全になったわね。軍団ごと殲滅したから、その損失は大きいだろうし、奴らは地形的要因で侵攻しても、まともな戦略はないはずだしね」
「ああ。問題はここの連合軍にその時間を有効活用出来るオツムがあるかどうかだが」
「アフリカに増員はされないはずだから、ロマーニャ?」
「その可能性はあるだろう。元の世界じゃティターンズと連邦の争いでロマーニャに人的資源が集められたが、それを私らが担ったはずだしな」
元の世界にいるB世界の者達の情報とを総合すれば、やはりロマーニャに人的資源が集中される。ティターンズと連邦がやった役目を自分らが担ったという帳尻合わせが起こったからだろうと、黒江は推測する。
「全ての道はローマに通ず、ですか?」
「そうだ。ローマだ。あそこが山場になる。今次大戦のな」
ローマ。即ちロマーニャ。その決戦が一つの山場であると断言する黒江。どの道、ティターンズと連邦がいなくとも、その流れは必然だろう。だが、今回は怪異だけだろうので、だいぶマシだ。ウォーロック研究を闇に葬る必要はあるだろうが、マジンエンペラーGと黄金聖闘士三人がいる以上、それに頼る必要はない。偉大な帝王あるかぎり、人類に敗北はないのだから。
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