外伝2『太平洋戦争編』
六十七話『帝王の剣』
――日本の左派の国際問題級の妨害により、軍事行動に多大な悪影響が生じ、陸軍は行動が封殺されてしまい、その間、空軍は海兵隊紛いの仕事をもやらされており、64Fに至っては、連日連夜、戦線の火消しに追われていた。主力メンバーは一騎当千の戦闘術が求められ、結果、隊のほぼ全員が『必殺技持ち』で、隊長陣は『最低、セブンセンシズに覚醒済み』というハイパーインフレぶりになっていた。スリーレイブンズとそれに親しいモノはナインセンシズ級なので、隊長陣の一人一人が最低でも『蟹座のデスマスク』級の戦闘力に飛躍し、実際に数人は積尸気を習得した。『うちは聖域への人材派遣所かよ』と、B世界滞在中の黒江がネタにした程だが、訓練が聖闘士級だったりしたので、元々、力がある隊長陣が小宇宙に目覚めるのは必然で、隊長経験者の何割かは戦後、実際に黒江と智子に付き従い、聖域で白銀聖闘士に任じられている。例を挙げると、盾座、南十字座の白銀聖衣は聖戦後、64Fで新撰組の分隊長級だった者が空位の聖衣を受け継ぎ、聖域を支えたという聖域側の後の時代における記録が言い伝えられている。また、ロボットガールズも続々登場しており、既に鋼鉄ジーグ(ジーグさん)、グレンダイザー(グレンダさん)、マグネロボガ・キーン(ガッキー)、超人戦隊バラタック(バラたん)は現れ、参戦しており、それで戦線の均衡が保たれていた。
――64F 執務室
「隊長、奴らの数は底なしか!?あれではキリがないぞ!」
「来てもらっていきなりで悪いのだけど、敵の医療体制は凄まじくてね。こっちが数万人を病院送りにしても、その倍が補充されてくるのよね。ソ連と対峙したドイツ軍の気持ち、分かるわぁ」
「せめてオレが鋼鉄神になれれば……!」
ジークさんは大学生くらいの肉体を持ち、鋼鉄ジーグの司馬宙と同じく『死ねぇ!』、『全滅だ!』を口癖にしているが、メンタル面では中二病患者で、グレちゃんから笑われている。能力面では鋼鉄神ジーグと鋼鉄ジーグの双方を併せ持っており、パワー面では鋼鉄神の、アバウトさでは鋼鉄の側面が強く出ている。
「銅鐸ないと、鋼鉄神になれないじゃないの」
「なんてことだ!すっかり忘れていた!」
ジーグさんは基本形態は鋼鉄ジーグであるが、古代日本の遺産である『銅鐸』を取り込めれば、鋼鉄神ジーグにパワーアップできる能力がある。支援戦闘機『ビックシューター』を象ったトートバッグに武器を入れており、慌てふためくと、ドラえもんのように目当ての武器が出せなくなるので、グレちゃんからは『慌てると駄目な人』扱いである。ただし、体格相応にパワーは高く、ジーグブリーカーをかければ、並の陸戦怪異はバラバラに体を引き裂かれる。主に格闘戦向けの特性である。妹分のガッキー(マグネロボガ・キーン)からはライバル視されている。ガッキーは元の世界で格闘技を習っており、格闘技が自己流のジーグさんよりプロ意識があった。往年の名選手『アン○ィ・フグ』に憧れており、飛び膝蹴りを得意とする。(ガッキーの声色は声を聞いた黒江曰く、『けい○んでドラム叩いてるやつにそっくりだ』との事)
「はぁ。それで戦果は?」
「ガッキーの奴と合わせて、M48が30両、ウォーカーブルドックが10両、兵員輸送車20台は全滅させた。が、これで焼け石に水とはな」
「でもさ、まさかアメリカ軍相手に戦うなんて思わなかったよ、隊長さん」
「邪魔大王国とか、イザール星人と戦うよりはよほど楽じゃないの」
「そりゃそーだ」
ガッキーが加わる。明るめな声色と、お気楽な態度とは裏腹に、チームTのストッパーである。
――ロボットガールズは元になったスーパーロボットでおおよその区分があり、ガッキーとガイちゃんは同じチームに属している。それがチームTである。ZちゃんたちはチームZ、ゲッちゃんとジーグさんはチームGだ。(ガイちゃんは後に掛け持ちになるが)
「あなた達は概ね、将校待遇、その中の尉官相当になるわね。こちらで給金も払うから、それ以外は基本的に好きにしていいわ」
ロボットガールズは概ね、中尉から少尉待遇で扱われるようになり、人員区分は艦娘と同じカテゴリに当たる。艦娘と違い、指揮経験がないので、一士官扱いである。代表格が中尉相当になる予定だが、統率力の都合、チームZはグレンダさんが、チームTはガッキーが統率の役目を負わされている。
「分かった。で、向こうに行ったガイちゃんは何してるのさ」
「ああ、向こうでパワーアップの特訓中だそうよ。グレちゃんから送られたエンペラーソードを扱えるように」
「へー、あいつにしちゃめずらしー」
「これが戦闘で使った時の映像だそうよ」
ガイちゃんはエンペラーソードを扱えるよう、基本形態を『大空魔竜ガイキング』から『ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU』へ移行させるためのパワーアップを図っており、黒江に頼んで、特訓を繰り返している。これはガイキング・ザ・グレートやガイキング・ザ・ナイトへの二段変身を『大空魔竜ガイキング』の姿で行うのには無理がある事が判明したため、力を扱う上での基本フォーマットを『ガイキングLOD』へ移行させる必要が生じたからだ。
『うおわぁあ――っ!!』
雄叫びと共に大空魔竜ガイキングからガイキングLODに姿を変えるガイちゃん。前髪の髪形が変化しており、通常時より前髪の先が立っていたり、髪の分け方が変わっている。炎のオーラを纏っており、基礎戦闘力が上がった事を示すかのように、黒を基調としたカラーリングの装甲を纏っている。腕を天にかざし、角からパライザーの電撃を放つ。
『こぉぉい!!エンペラーソォ――ドッ!!』
パライザーで雷を招雷し、落ちた雷が剣の形をして実体化する。失ったミラクルドリルの代わりに借り受けているエンペラーソードだ。エンペラーソードはガイちゃんのパワーであれば片手持ちも可能だが、剣の大きさから、両手持ちで構える事が多い。ロボットアニメでおなじみの剣を持つ際のパースを決めた後、ウイングを最大パワーにし、一気に乱舞を浴びせ、最後に炎を纏わせて叩き斬る。ガイちゃんなりのアレンジ『エンペラーソード・ギガバースト』である。これはガイちゃんの力の源は炎であり、元の持ち主のグレちゃんの属性が雷である故のアレンジだ。それを見たジーグさんは大はしゃぎ、ガッキーは複雑そうである。
「う〜〜ん、あいつ、チームZとこの武器を使うなんてなぁ」
「武器を砕かれた応急処置も兼ねているのなら、そこは仕方があるまい。それにゲッちゃんとて、ソードトマホークを使っている。突っ込むのは野暮というものだ」
ジーグさんはいいことも言うが、基本的にはイタイ人扱いだ。ガイちゃんとしても、ミラクルドリルを砕かれること事態が想定外であり、エンペラーソードがグレちゃんから送られたものであることを知った時には、かなりの葛藤があったが、その葛藤を友情へ昇華させ、エンペラーソードを使っている。その証拠に、映像に映るガイちゃんの表情には迷いはない。
「魔神覇王剣(エンペラーソード)か」
「なんすか、それ。でも、確かになぁ」
「武器の予備は造れるけど、あなた達、武器の融通はしておいて。いざという時、専用武器が使えない時なんていくらでもあるわ」
「わかった」
「了解っす」
ガイちゃんとグレちゃんとに生じた奇妙な友情。エンペラーソードを使った経験が後に、ニューミラクルドリルに剣としての機能を求めるきっかけとなる。また、デスパーサイトを手刀の斬撃に切り替えていくきっかけにもなった。これはエクスカリバーに憧れたためだ。この事がきっかけで、ガイちゃんはグレちゃんから『ディバインソード』、『グレートスマッシャーパンチ』、『エンペラーソード』を借りることが多くなり、グレちゃんもリーチがある『ミラクルドリル』を借り受けるようになり、ロボットガールズ間の技の貸し借りが流行るきっかけとなった。ガイちゃんは『技に決定力が欠ける場合が多かった』のもあり、グレちゃんに恩義を感じるようになる。このことはZちゃんのガイちゃんへのライバル意識を確固たるものにし、『アタシを差し置いて、テメーが連携攻撃なんぞ!』と新聞を引き裂いて怒ったとか。
――グレちゃんは『エンペラーの片鱗』に目覚めつつあり、青年の姿で『エンペラーブレード』の乱舞を披露し、能力が神闘士に通じずに苦戦するZちゃんを救った。
「エンペラーブレードッ!」
この姿になると、声色がドスが効き、性格もダウナー系から離れて、鉄也に近い好戦的な性格に変貌する。乗り手の影響が顕著に生じたのだ。
「くらえぇえええ!!」
グレちゃんと思えぬ熱い台詞。エンペラーブレードをツインブレードにし、X字に斬り裂くアークインパルスも披露する。神闘士のゴッドローブを破壊するにはロボットガールズの通常の武装では荷が重いのだ。Zちゃんは『マジンガーZ』としての能力をフルに使ったが、『バイキング・タイガークロウ』にロケットパンチを弾かれ、ブレストファイヤーを手刀で弾かれるなど、いいところ無しで、グレちゃん(大人)が来る寸前まで大いにビビっていて、半泣きだった。マジンエンペラーG化したグレちゃんで互角なので、決定打を与えられないという状況だったが、通報で駆けつけた箒が『アトミックサンダーボルト』(超光速)を放つことでようやく撃退出来た。
「やれやれ。神闘士がいたらまず、黄金聖闘士の私たちに連絡してくれ。今のお前らの普段の力では荷が重い」
射手座の聖衣を纏った箒は言う。箒も智子の影響でナインセンシズに近づきつつあり、黄金聖闘士としての完成に近づいていた。
「ぐぬぬ!カイザーとかゴットになれば、アタシだって、光速くらい出せるつーの!!」
「自惚れるな。カイザーやゴッドになっても、力を使いこなければ、豚に真珠だ。それには鍛錬をしろ。力を使いこなせるまでだ。マジンガーZERO化しろとは言わんが、カイザーとゴッドの力を制御できるようにしておけ。そうでなければ、生き残れんぞ」
箒は以前の赤椿の一件があるため、黄金聖闘士になっても謙虚に振る舞っており、力に自惚れる事は無くなっている。Zちゃんに、かつての自分を見たのか、ZEROの子である故に『自惚れがある』のを戒めたのである。
「グレちゃん、エンペラーになったのか?」
「ああ、エンペラーオレオール型のアイテムを使えばなれるらしい」
「口調が鉄也さんに近くなっとるぞ?」
「この姿になると、乗り手の影響が出るらしくてな」
グレちゃんは鉄也の写し身とも言える性格である。彼の陰の面の多くは普段に出ているが、大人モード時には戦闘面での冷静さ、苛烈さと冷酷さが表に出る。これはゲッちゃんの『キレると竜馬&隼人の複合的な情け容赦ない性格になる』のと共通している。エンペラーブレードを仕舞うグレちゃん。青年の姿では凛々しい声になり、性格面もダウナー系としての面は鳴りを潜めている。
「エンペラーで互角とはな。神闘士というのは侮れんな」
「つーか、グレちゃん……キャラ変わってない!?」
「この姿になるとな。Zちゃんはキャラが安定してるからいいが」
「むー!」
「ギャグをしている場合か。とりあえず、基地に戻って報告だ」
と、一同は基地に戻り、武子に報告する。ロボットガールズと言えど、神闘士相手では荷が重いというのは、神闘士への真っ向からの対抗手段が黄金聖闘士しかないという事を意味する。
「くっそー!!なんだよ、神闘士ってのは!!ロケットパンチをペシってなんだよ、ペシってぇ!」
「彼らはアスガルドという北欧の地を守る闘士よ。平均戦闘力は聖闘士の白銀を凌ぐわ。あなた達ではよほどの例外でないと、真っ向からは無理よ」
神闘士は数は少ないが、戦闘力は概ね白銀聖闘士以上であり、力に頼りがちのロボットガールズを圧倒して然るべき実力者である。B世界に派遣された者は実際にガイキング・ザ・グレート、ガイキング・ザ・ナイトになったガイちゃんの心をへし折りかけたほどである。
「くっそー!!どうにかなんないの、隊長さん!!」
「みんな、この連絡先に各自で連絡しなさい」
「隊長さん、これって」
「拳法系のヒーロー達の連絡先よ。強くなりたければ、特訓あるのみよ」
「私の趣味ではないが、仕方がないか……」
大人グレちゃんが言う。大人モードでは鉄也ほど特訓好きではないが、言われればやる程度には改善されている。今回ばかりは相手が相手なのだ。
「よっしゃー!特訓あるのみ!」
元から拳法系女子のガッキーのみがはりきっている状況である。しかしながら、ガイちゃんの最高の力『ガイキング・ザ・グレート』、『ガイキング・ザ・ナイト』が真っ向から歯が立たず、あの熱血漢のガイちゃんが絶望しかけ、半泣きに追い込まれたという報告をロボットガールズは深刻に捉えていた。ガイちゃんが『あ、あたしの炎じゃ……勝てないの…?そんな……、ザ・グレートになって、ナイトにもなったのに……』と半泣きに追い込まれ、絶望しかけたというのは余程のことである。それが普段は特訓に興味がないグレちゃんも特訓をする気になったのだろう。
――そのガイちゃんは、B世界でエンペラーソードを以て、移動途中の502を護衛。グレちゃんから借り受けた力である事を自覚し、神でも斬り裂く聖剣『エクスカリバー』を持つ黒江への羨望。その全てを受け止めた事で、自然とガイキング・ザ・グレートとしての力を発動させ、エンペラーソードにハイドロブレイザー・ギガバーストのエネルギーを纏わせ、更にGウイングが赤く染まる。
『エンペラーーソード・ギガバーストぉぉっ!!』
ガイちゃんは炎と雷を背負い、友と誓った平和を守るため、帝王の剣を手に飛翔した。たち塞がる怪異を帝王の剣とガイキング・ザ・グレートの真の力で打ち砕く。ギガンタークロスとエンペラーソードを組み合わせ、炎を纏わせ、移動途中の巣の中心の超大型怪異をバラバラに切り裂いてゆく。奇しくも、剣技に『バースト』と名付けるのは、光戦隊マスクマンを思わせた。
「ハァアアアアア!!」
黒江から仕込まれた剣技。ガイちゃんは必死になって覚えた。それはガイキング・ザ・グレート化してさえも、殆ど敵わぬ敵が存在した事への衝撃と自分の心の弱さを嘆いた彼女が、面識がない人物に教えを請いてまで習得しようとしているものだった。
『これがあたしの炎と稲妻だぁあああああっ!!』
ガイちゃんは、機体のガイキング・ザ・グレートの乗り手である『ツワブキ・ダイヤ』を思わせるような熱い台詞回しで、技を決めた。オリジナル技となったため、最後のキメ台詞は『炎刃一閃!!』に変化している。これがガイちゃんなりの『自分』との向き合い方であり、前の自分を越え、新しい自分になろうとするガイちゃんの『若さ』が、ちょっぴり羨ましいのか、これまでの自分を振り返る黒江。新たな妹分のひたむきな姿に、その様子を見ている黒江は身につまされる気分だった。これが黒江の傷ついていた心に一筋の光明をもたらし、黒江が避けてきた『かつてのトラウマ』と向き合い、更に、今まで意識的に向き合って来なかった第二人格『あーや』と主人格として向き合う決意を固める。これが黒江の心の再構築が新たな段階に入る合図でもあったのだ。
『炎刃一閃!!』
技を決め、ガイキング・ザ・グレートとしての勇姿を誇示するガイちゃん。その笑顔は、前回での絶望を乗り越え、一歩踏み出す勇気に変えた証。Vサインを決め、笑うガイちゃんに、黒江は身につまされたのか、ちょっと複雑な気持ちだった。だが、ガイちゃんの姿に勇気づけられ、黒江も第二人格やトラウマと向き合ってみると智子に告げる。智子は『姉』として、『頑張りなさいよ、綾香』と優しく微笑みかけた。
「智子……私も向き合ってみるよ、『あいつ』と、自分のトラウマと。あいつが踏み出した以上、私もやらないとな」
「フッ……、頑張りなさいよ、綾香。姉としての言葉よ」
智子は黒江に対する『姉のような立ち位置』を公認する言葉を公の場で発した。その真意を悟ったハルトマンと伯爵のみがほのぼのした表情で、輸送機の窓から事の次第を見つめていた。これが、智子が黒江の『姉』という立場である事を公の場で示した最初の出来事だった。ハルトマンから教えられた者達が輸送機の中で赤面する。黒江は智子が『家族である』ことに安心感を感じ、実年齢は上ながら、『妹』として笑ったのだった。
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