外伝2『太平洋戦争編』
八十八話『シャルル・ド・ゴールの誤算』


――1947年になると、軍備更新に軍事費が費やされていた。特に、日本から大量に89式小銃が供与されたのもあり、主計科などの補給部門はパニックであった。扶桑空軍は黒江達のおかげで、複数の小銃を持っており、亡命リベリオン系ウィッチにはM14が好まれた。これはM14は元々、BARの更新用でもあったからで、同銃の愛用者であるシャーリーは14をいち早く受領していた――

「お、シャーリー。14を兵器局から受け取ったのか?」

「ウィッチなら、フルオートでも余裕だしね。ガーランドの後継だし、16は対人はともかく、対物向きじゃねーし、対物ならコレに限るよ」

圭子と語らうシャーリー。彼女は魔弾隊に配属されており、書類上は出向扱いである。武器をBARからM14に更新したらしく、真新しい銃を手に、ご機嫌だ。

「お前、前身のM1は使ってねーような?」

「あれは空中戦向きじゃないからなー。空中戦じゃBARの方が使えるんだ。あのクリップ式は、空中戦だとミスって指挟んじまうんだよ」

「なるほどなー」

「箱型のマガジンは持ち運びし易いし、これで空中戦での装填も楽になるよ」

「まー、レシプロ相手なら、7.92ミリをコクピットのキャノピーにぶちかませば落とせるしな。ジェット相手だとそうはいかんけど」

「その時はリボルバーカノンでどうにかすんさ。のび太なんて、マグナムでヘリ落とせたし」

「あいつはウィークポイントをよく知ってるし、戦闘ヘリの武装に弾当てて落とすのも朝飯前だ。これで偶にしか撃ってね―んだぞ?プロのあたしら形無しだぜ」

圭子はのび太の才能に嫉妬し、そして魅せられた人物である。自分が元々、射撃専門であったのもあり、何も訓練を受けていないはずののび太が自分より遥かに、射撃の全てで上回る事に嫉妬の感情を懐き、それが時を経るにつれ、羨望へ変わった。のび太は小学生当時の時点でバレルの製造精度を見ただけで判断できるほどの観察力を持ち、大人になると、デイブ・マッカートニーとも付き合いがあるほどの名うてに成長している。その事もあり、64Fの銃器の精度は他部隊よりも極めて良好である。のび太に敬意を払うような言動なのは、のび太の才覚は『生まれた時代が西部開拓時代なら、ワイアット・アープやビリー・ザ・キッドのような名うてになれた』と自負するほどのものであるからだ。しかし、少年期は色々な制約もあり、まともな訓練は積んでない。高校以降であれば、射撃部に所属するのだが、子供時代は偶に大冒険か、ジャイアンへの仕返しに用いる程度である。それにも関わらず、圭子やシャーリーが霞む腕であり、雪音クリスも『バケモンか!?』と驚くほどに無敵である。

「あいつなぁ。偶に鼻くそほじって飛ばす程度のことしかしてねーのに、プロのあたしらより早打ちで、しかもリロードが人間業じゃねー。どうなってやがる」

「あいつ、偶に名画座行くだろ?『夕陽のガンマン』とか『荒野の用心棒』、『勇気ある追跡』、『リオ・ブラボー』とか見てたらしーんだよ」

「あいつ、最近は調を連れていってるし、あいつも好きだなぁ。まっ、あたしも何回か付き合ったけど」

「西部劇は要するに、日本のチャンバラと似たようなもんだろ?」

「ポジション的にはね。日本と違うのは、それがフロンティア・スピリッツの根源なんだよ。ガンマン、アウトロー、インディアン、メキシコ近くの岩場とか…それが郷愁を誘うんだよ」

リベリオン/アメリカの人々にとって、西部開拓時代の風景は郷愁を誘う何かがあるのだ。敢えてインディアンと言ったのは、ネイティブ〜だと、圭子にはわかりにくいからだろう。旧506/B部隊の面々も、のび太と西部劇を熱く語りあえる者揃いで、隊長のジーナ・プレディ大佐でさえ、のび太と数時間に渡り、西部劇の話題を話し込んだほどに入れ込んでいる。黒田が誘い、のび太の街を訪れた時など、名画座でリバイバル上映されていた『荒野の七人』に、B部隊の面々(ジェニファーが紆余曲折を経て『除隊』したので、実質的に4人に減ったが)が興奮していた事は語り草である。

「元ノーブルのB部隊の連中、荒野の七人に興奮してやがったからな。あのジーナ大佐も、のび太がテンガロン・ハットを送ったら、ガキみてーに喜んでたし」

「あれはガンマンのなりきり道具の一つだしな。かぶり方も工夫しないと」

シャーリーはのび太とは付き合いが長いほうであるので、のび太の良き友人である。元ノーブルB部隊の面々が戦後の良質な西部劇に憧れるのはほのぼのした気持ちで見ている。B部隊はダイ・アナザー・デイ後は解散状態にあるが、黒田の誘いで、全員がこの大戦に参戦している。また、ロザリーの後を継いだペリーヌがモードレッドに覚醒し、B部隊とウマがあったからか、新生ノーブルにも改めて籍を置いている。モードレッドはペリーヌと共存する形で現界したため、自分がB部隊の面々に接触することで、生まれながらに貴族の誇りを表に出すペリーヌの緩衝役を引き受けていた。円卓の騎士でありながら、気取らない粗野な性格のモードレッドはB部隊の面々を懐柔し、ペリーヌの手助けをしている。ペリーヌもモードレッドの存在を受け入れたため、最近はモードレッドが肉体を動かしている。ロザリーが引退したため、なし崩し的に同隊を引き継いだペリーヌ。501に籍を残しつつ、ノーブルの二代目隊長を兼任しているのも、ド・ゴールのわがままの尻ぬぐいの感がある。

「ペリーヌも大変だよな。モードレッドと体をシェアしあって、その上にド・ゴールの野郎の尻ぬぐいだろ?大丈夫かね?」

「ノーブルは今や書類上だけの部隊だしな。あたしも籍は置いてるし、実質的にガリアのメンツのために、実働できなかった統合戦闘航空団の汚名は引っ被ったままだ。ペリーヌも大変だよ」

「ガリア、いやド・ゴールは何考えてたんだよ」

「大方、ブリタニアが衰退期に入ってたから、ガリアが中興するためのプロパガンダに使うつもりだったんだろ?ジャンヌとアストルフォが苦言呈したら、泣いてたけど」

国の英雄達に『貴方(キミ)は優秀な軍人であっても、国を治めるには愛国主義にすぎる』と言われた彼はひどく落ち込んだ。確かに、ド・ゴールは傑出した才覚を持つ、優秀な軍人である。早期に機械化部隊の将来性を見抜き、自由ガリアの機械化部隊の精強さは一定の定評があるし、彼自身も軍事的戦略などでは天才である。前大戦の英雄で、かつての上官のペタンと違い、開明的ではある。しかしながら、彼は軍人としては英雄だが、政治的には傲慢不遜かつ身勝手な面が多い。そこが後年にアルジェリア/インドシナ戦争で敗戦する要因であった。

「でも、どうすんだろうな。扶桑と将来、植民地支配のために対決したって、兵器が戦後第二世代水準に飛躍した扶桑に勝てるもんかよ」

「奴にとって、太平洋の戦は対岸の火事さ。扶桑を侮蔑してるような節もあるし、インドシナとアルジェリアで軍隊が地獄を見なけりゃ、わからんだろうよ」

「可哀想に、ガリア軍。戦間期水準の兵器で、戦後世代の武器とやり合うのかよ」

「仕方がない。一度、こてんぱんにやられねーと、ガリアの連中の夢は覚めないだろうさ。ペリーヌが進言するだろうが、大和と武蔵に枢機卿がボコされてから始めて、事の重大さに気づくろうさ。昔のワーテルローの再来だ」

ガリアはワーテルローの戦いでナポレオンが再度の敗北を喫したことで、大国の地位から滑り落ちた。ド・ゴールは欧州の盟主の地位をブリタニアから掠め取ろうと策謀を練っているが、それは彼の傲慢である。圭子が引き合いに出したのは、ド・ゴールは下手を打てば、ナポレオンの道をたどる可能性が大きいからであろう。この戦争を熱心に研究しているのは、当事者であるブリタニアと亡命リベリオンとカールスラント。ガリアは対岸の火事と言わんばかりに無関心であり、大和型戦艦の公称スペックを未だに信じ切っている。国内事情としては仕方がなかったが、情報収集を怠っていたのが運の尽き。ド・ゴール自体は情報収集に余念がないが、各地に散っていたものたちがまた寄り集まると、軍部上層部はまたも保守化し、ド・ゴールをまたまた憤慨させる。この状況は、この戦争の時期から、更に後の『対決』の際、ジャン・バールが大和によって一方的に叩きのめされ、『浮かべる廃材』の様相を呈するまで続く。大和が度重なる強化で60口径46cm砲を手に入れていた事もあるが、ジャン・バールはその改善が殆どなされていなかったのもあり、無力ぶりを露呈したという。

「インドシナでジャン・バールはフルボッコだったよな、確か?」

「50年代にな。今回は60口径46cmに強化されていくから、一撃で主砲が沈黙させられるんじゃね?」

圭子もシャーリーも、ガリアが今後に遭遇する事態は知っているので、何気に残酷な事を言い合う。大和型戦艦は修理の度に強化されるので、この時点で主砲の換装は決定されている。この時期に武蔵でテストされている『45口径51cm連装砲』は一発あたりの威力は強まるが、門数が減るので、投射重量が落ちてしまうのが難点である。そのため、60口径砲に強化する方法で落ち着いたのだ。その貫通力は相当なもので、ジャン・バールの防御程度は軽く貫通せしめる。

「だろうなぁ。H級やモンタナと戦うために強化されてるから、ジャン・バールくらいじゃ、子供と大人だよな」

ジャン・バールは所詮、38cm砲戦艦。同格の相手と渡り合うのを想定して強化を重ねられた大和型戦艦と戦うこと事態が無謀である。大和型戦艦は元から46cm砲対応であり、それが『航空機時代に即していない!』という誹りを受け、装甲や船体構造そのものすら強化を重ねられているので、ジャン・バールなどは三下扱いなのである。

「いや、赤ん坊と屈強な軍人だよ。殆ど宇宙戦艦に改造されてるんだぜ?未来人が膨大な予算にモノ言わせて改造したから。対空砲なんてパルスレーザーだぜ?レシプロ機なんて紙飛行機だぜ。未来世界は素材に人件費や燃料費がかからないから高くても半値だし」

「改造しすぎだよ。何と戦うんだよ」

「だから、21世紀の連中がうるさいから、艦政本部が連邦に丸投げしちまったんだ。410ミリの舷側装甲を薄いとか言いやがってよ。全体防御にしろとか……。で、丸投げだ。次第に強化されてるから、中身は宇宙戦艦だぜ」

「だーかーらおかしーて!アメリカだってそこまで言わねーぞ!?」

「21世紀の日本の連中はアニメの『宇宙戦艦ヤマト』に毒され過ぎてんだよ。戦艦は艦隊丸ごとから攻撃されても大丈夫じゃなきゃ駄目だと思ってるんだ。単艦で沖縄の時の攻撃隊を生き残るなんぞ、当時のアイオワだって無理なのによ」

「第一、単艦で突っ込ませてはいないはずなんだけどな。坊ノ岬沖海戦。それに、戦艦は単艦で突っ込ませてはいないはずだぜ?レイテ沖海戦にしても。栗田さんなんて、大和に死に場所を与えなかっただけで誹謗中傷されて、一時は郷里に引きこもっちまったし。学が有るようで抜けてるんだわ、日本人って連中は」

「本当。亡命リベリオンも好き勝手言われてるけど、爆撃機連中なんて鬼畜生みたいに言われるんで、B29の乗り手が……」

「あー……エノラ・ゲイとボックスカーが向こう側なのが救いだよ。いたら被爆地の連中がリンチして内蔵出して甚振るだろうし」

「なんだよ、それ」

「それくらい白い目で見られてんだよ、あれは」

「飛んでるのが見つかったら?」

「空対空特攻も辞さないな、連中は」

亡命リベリオンも、アメリカには言えない憎悪などをぶつけられるのは同じで、B29の乗員のなり手が少ないという状況である。そのため、早期にB-1などでも作る事が検討されている。ウィッチ閥は基本的に大量殺戮兵器となる戦略爆撃機を嫌うため、戦略爆撃機乗りを侮蔑するが、もはや、ウィッチ華やかりし時代は終わっているのだ。

「B公の連中はウィッチ閥から見下されてるからな。その割には、それがもたらす破壊を恐れてる矛盾がある。だから連中は脳みその栄養が足りてねえんだ。たしかに、日本はあれにこっぴどくやられたが、戦争が終わって随分経ってる。あれに対しては、憎悪というよりは、追い越すべき象徴のように捉えてた連中も多い。だから今、お前らの同僚が遭ってる事は、ウィッチ閥の僻みや恐れからのものだ」

「妬みや恐れ?」

「あれにしたって、敵に9トンの爆弾を降らせられるからな。ウィッチは戦闘爆撃に用いると、250kg爆弾くらいしか無理だ。対人相手だと、爆弾を抱えてると命取りだしな」

「だよなあ。扶桑人のほうが苛烈になりそうだし、味方ウィッチ殺しちまうのも出るだろうな」

「だから、ウィッチの戦闘服は巫女服か日の丸が縫い付けられたジャケット着用になったんだ。住民に殺されたのは多いしな、日本でも」

この頃には敵味方識別のため、日の丸が縫い付けられたジャケットか巫女服の着用がウィッチに義務付けられていた。もっとも卑劣だが、日系人で安心させたところを爆撃する手法を敵が取ったがため、疑心暗鬼になった住民に集団リンチされるウィッチが生じたからだ。結果、国民に戦争ルールの啓蒙をしなければならなくなった扶桑。そのため、ラジオやTVでその啓蒙番組を放映している。また、日本の左派の横槍の阻止が一番の課題であり、それが扶桑が抱える政治的問題である。扶桑は日本の左派を『戦争遂行に際しての獅子身中の虫』と考えており、少なからずその悪影響を受け、帰還兵に厳しい環境が田舎には作られ始めている。新学校で反戦ヘ育を受けた者達が反戦デモで罵声を浴びせるからだ。そのため、ウィッチに覚醒したモノを守ろうと、隔離してしまう者も生じ、それがウィッチの数の低下の要因となってもいる。無論、陛下の行幸や玉音放送の効果で、田舎からの集団就職者も送られてくるものの、お世辞にもヘ育の質は高くはなく、戦力になるのは4割行けば御の字である。この状況は軍ウィッチには良くないため、前線はもっぱら空軍の一握りの優秀者が支えているとさえ揶揄されている。

「それに、今はMATが盛期を迎えつつあるから、軍に好き好んで来る奴は少なくなってる。更に、扶桑のウィッチの発現がちょうど休眠期に入ってる。あたしらが支えなくちゃ、この国は終わるって状況になった」

「そうか、もう本当なら大日本帝国は消えてる頃だから……」

「その帳尻合わせなんだろうな……参るぜ。面倒い事になりやがったが、この際だ。修羅神でもなんでもなって、敵をぶっ飛ばす。これしかねぇぜ」

「わーお、カ・ゲ・キ」


圭子は好戦的なところを隠さない。それが今回においては重要なファクターとなっている。

「お前だって、特注したISに『武天八極式』なんてつけちまって。どこのコードギ○スだ?お前」

「いいじゃん!カッコイイんだし!!」

「てっきり『ザ・ジエンド』ってつけるかと思ったぜ

「なんか語呂悪いじゃん!」

シャーリーは前史でも特注したISを使ったが、今回においては、明確に『武天八極式』という個体名をつけている。大まかな元ネタはズバリ『コードギ○ス』であり、シルエットや武器も元ネタに似通っている。圭子は『エウレ○セブン』かと思ったが、『コードギ○ス』で来たので、からかう。

「つーか、お前。そうすると、『弾けろブリタニアァァ!!』とか言わんとな」

「相手、ブ、ブリタニアじゃねーし!」

ニヤニヤしながらシャーリーをからかう圭子。ISのコンセプトを決める際に、コードギ○スを見たかどうかは定かではないが、まんまなネーミングから察するに、好きなロボらしいのは分かる。

「つーか、なんだよそのグッドラックとかやる時みたいなポーズは!ちくしょう、あたしだって迷ったんだぞぉ〜!」

「へいへい」

「なんだよ、あんただってこの間、アガートラーム纏ってたじゃん!」

「あれはテストだテスト。ん……綾香からだ。何々〜、『坂本が、新京じゃ変身して動けって言うから、変身して駅を出るぜ』だって」

「どういう事だ?」

「あ、思い出した。漣堂であたしの本の映画化記念フェアしてるんだ」

「本屋のフェアか。で、また変身したってわけか」

「だな。添付された写真見ろよ」

「あ、本当だ」

写真ファイルを開いてみると、調の容姿に変身した黒江が、新京駅をバックにピースサインしている。姿に合わせた若々しい服装にしている事から、坂本から何らかのアドバイスでももらったのだろう。黒江の実年齢からすれば、相当に無理している服装なので、護身用に二人は苦笑いである。シンフォギアを持ってもいるので、瞳の色と160cm台の背丈以外は調そのものである。ただし、調も日本でアニメに登場し、有名になりつつあるので、圭子は『どっちみち、もみくちゃにされるだろう』と予測している。(ただし、黒江がかなり影響を与え、成り代わり前の調本来のキャラからは離れてしまったが)その事は調AがBに伝え、また、その際の映像を見せると。

「な、何これ!?」

「師匠が私に成り代わってた時の記録映像。ちょうど響さんと戦ってる時の奴だね。時系列はちょうどフロンティア事変の時。この時、私は入れ替わりで異世界の過去に関わる羽目になったんだよね、おかげで色々勉強させてもらったよ」

映像は響が黒江と数度目の接触を試みているところで、『手を取り合える』と説く響だが、黒江は状況を掴みきっていないので、これを拒否。黒江は空中元素固定でエクスカリバーを形成して構える。黄金に輝く剣。その威圧感にも臆さない響。

「だとしても、そんな理由、戦う理由になってないよ、調ちゃん!」

「わりぃな。こっちにも事情があるんでね。もうちょい見定める必要があるんだ」

映像での響はいつもの響だが、映像の自分らしき人物は言葉づかいがまるで違い、落ち着いた印象を受ける。

「見定めるって……一体何を!?」

「それを言う必要は無い」

「だとしても、事情を話してよ!マリアさんや切歌ちゃんと離れてでも、成し遂げたいものがあるから、一人で動いてるんでしょう?」

「そんな理由じゃないさ。だが、降りかかる火の粉は払わないとな」

「えッ!?」

黒江は響が驚いている内に、エクスカリバーを発動する。天に掲げられた剣が黄金色の輝きを纏い、魔力と小宇宙の融合エネルギーが迸り、オーラを纏う。周囲の魔力も使用した極大のエネルギーが剣に集束してゆく。

「黄金の剣……!?」

「勝利を約束された剣の伝説を知ってるか?」

「アーサー王伝説の……でも、それはあるかどうかも分からない聖遺物だって!?」

「じゃ、味わってみな。『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!」

黒江はエクスカリバーを使う。エクスカリバーのエネルギーは強大で、一直線に斬撃エネルギーとなり、響を襲う。響は聖遺物と一体化が進みつつあった当時の自分の体とギアの特性とガンニグールの特性でエネルギーを吸収せんとしたが、エクスカリバーのエネルギーまでは吸収は無理があり、響の聖遺物との一体化を目に見えて促進させるだけであり、エクスカリバーのエネルギーが響の体を駆け巡り、ギアにヒビをいれていくところで、映像は終わる。

「な、なにこれ…。」

「約束された勝利の剣。私と師匠はその力を持ってる」

「響さんはどうしたの?」

「無事だよ。ただ、色々な理由で数週間は昏睡状態だったらしいけど。私はこんな感じで師匠と入れ替わってた。そこでマリアや切ちゃんとひとまず道を違えた」

「道を違えた…!?」

「切ちゃんは場所を違えても、心は何処かで繋がってる。 そして同じ場所を目指して今も頑張ってる。 マリアも新しい目標に向かって頑張ってる。肉体のいる場所なんて関係ないよ、信じ合える仲間の心はいつもそばに在るから」

調Aは明朗快活に言う。Bは信じられないと言った感じだ。映像の破壊力もそうだが、切歌が側にいなくても大丈夫という事は、ここには切歌はいない事の証明でもある。ここがAとBとにある最大の違いであり、元々有していた依存心の鏡のようなものである。Aは切歌と道を違えたという一言に取り乱すBを見て、自分がかつて有していた依存心の大きさを悟り、分かっていたことだが、何となく自分の未熟さを示される形なので、思わず一息つくのだった。



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