外伝その322『HEATS』


――キュアラブリーとフォーチュンは果たしてどうなったのか?それを語るべきだろう。マジンガーZEROと真ドラゴンという超兵器と対峙した一同。――

「ハハハ、愚かな!いくらマジンカイザーのマジンパワーを全開にしたところで、単機でいったい何ができる!」

『誰が単機と言った?』

「何!?」

『偉大なる魔神皇帝を忘れてもらっては困るな、あしゅら男爵!』

「ぬぅ、剣鉄也め、貴様も来たのか!」

『俺だけではないぜ!』

『何!?』

『俺たちもいるぜ!』

「その声は一文字號!!」

『行くぜ、翔、剴!!』

『おう!!』

マジンエンペラーGと真ゲッターロボが援軍に駆けつけたのである。真ゲッターはゲットマシンの状態で駆けつけ、ゲッターチェンジを敢行する。

『チェーンジ!!真ゲッタァアアアアワン!』

「ぬううう、貴様ら…!」

思わぬ増援に、思い切り悔しがるあしゅら男爵。マジンガーとゲッター。その中でも最強を謳われる機体が出揃うのは壮観ですらあった。

「ならば、攻撃せよ、鉄仮面部隊!」

「そう思ったよ」

のび太は糸使いとしての本領を発揮してみせた。あしゅら男爵が号令をかけた瞬間、張り巡らせていた糸を使い、あしゅら男爵の配下である鉄仮面部隊を、彼らを潜んでいた複数の建物ごとバラバラに切り裂く。のび太のもう一つの才能『あやとり』。それが発揮された瞬間であった。

「すげえ…。お前、いつの間にそんな事を」

「22の頃から覚え始めて、25でモノにした技術さ。あやとりの応用だよ。僕は世間に言われるほど、銃一辺倒じゃないさ」

28歳ののび太はそう言ってのける。狼狽えるあしゅら男爵を他所に、一同は攻勢を開始する。

『ファイヤーブラスターッ!!』

『グレートブラスター!!』

『ゲッターァァァビィィム!!』

三大スーパーロボットの必殺技の同時発射である。超強力な攻撃の同時発射。俗に言う『ファイナルダイナミックスペシャル』である。この超豪華な攻撃はあまりの熱量で空間が揺らぐほどであったが、ZEROと真ドラゴンはほぼ無傷であった。

「嘘、今ので無傷なの!?」

「落ち着け、ラブリー!奴らの装甲は通常の攻撃で傷がつくもんじゃない。ひるませられれば御の字だ」

『しまったなぁ、Gを借りてきて真ドラゴンに割り込んだ方が勝ち目大きかったかもな』

『勝ち目なんざ、この腕でもぎ取るんだよ、剴!甲児、畳み掛けるぞ!』

『おう!』


『この程度で我らに傷を……』

『ふ、そう言うと思ったぜ!みんな、光子力とゲッターエネルギーをフルチャージだ!』

『おう!』

甲児の号令で、三大スーパーロボットがエネルギーを全開にする。光子力は黄色、ゲッターエネルギーは白。高濃度かつ高密度のエネルギーで空間が大きく揺らぐ。

「嘘、空間がまた揺れてる!?」

「何が起こったの、メロディ、フェリーチェ!」

「光子力とゲッターエネルギー。私達の知る限りの可能性の光の力がフルパワーになりつつあるんです!」

「よく見ておけ、お前ら。これが人が科学を発達した末に手に入れる可能性の光だ!」

若干興奮気味のメロディとフェリーチェ。真ゲッターはストナーサンシャイン、カイザーはカイザーノヴァ、エンペラーはサンダーボルトブレイカーの態勢に入っている。ラブリーとフォーチュンが目を奪われたのは、その腕に太陽を作り出す真ゲッターの姿である。

「何、まるで太陽みたいな輝き…、キュアサンシャインみたい…」

「その比じゃねぇ。あれこそがスーパーロボットの真髄って奴だ!神を超え、悪魔を滅するんだよ!」

フォーチュンにメロディが興奮気味に言う。真ゲッターのストナーサンシャインとマジンカイザーのカイザーノヴァが同時に放たれるとどうなるか。これは黒江すらも目にしたことがないもので、あまりのエネルギーで次元の裂け目が出来るとまでされ、通常は禁じ手である。しかし、相手が相手であるため、容認された。それにマジンエンペラーGのエネルギーも加わるため、何が起こるかわからない。フェリーチェであっても。

『真!!』

『ファイナルダイナミックスペシャル!!』

ストナーサンシャイン、サンダーボルトブレーカー、カイザーノヴァが同時に炸裂する。二機はまともに攻撃を受け、空間が歪み、効果範囲の全ては消滅していた。真ドラゴンはその巨体のバリアを貫かれ、竜の頭の半分がフレームが露出し、ドラゴン部も装甲が焼けただれる無残な姿ながら、自己再生を開始していた。自己再生プログラムの誤作動か、竜の頭から吐血するかのように、体を構成しているはずの新ゲットマシンを何組か吐き出した。のたうち回るような龍の悲鳴が響き、機能停止状態のゲットマシンが吐き出されてくる。地面にそのまま突き刺さる形で、10組のドラゴン号、ライガー号、ポセイドン号が同じマシン同士の組み合わせで墜落する。機能停止状態のマシンを吐瀉物のように吐き出すのは、おそらくは機能停止状態の炉心を切り捨て、新たに代替の炉心を自己製造するか、残った炉心で補うのだろうが、生物的なアクションである。ZEROも、再生が困難に陥るほどの大ダメージで、フレームが露出し、胸部が焼けただれるほどの重篤な損傷を負った。さすがのZEROもこれには潤滑油を血のように吐き、悲鳴を上げて無様にのたうち回る、

『オオ…オ…!オノレ、マガイモノドモメガァ…!』

「ZEROが苦しんでいる…」

自身のいかなる攻撃も受け流された経験があるフェリーチェが驚く。甲児は言う。可能性の光だと。

『そうだ。奴は不死身を豪語するけど、俺達は奴が想像もできない攻撃を食らわした。ZEROの弱点は無限の可能性を想像できない点だ!』

『ZEROと真ドラゴンの息の根は、この俺が止める!トドメだ!』

マジンエンペラーGが追撃のため、エンペラーオレオールを変形させ、疑似的なグレートブースター攻撃を敢行する。エンペラーは予備にスクランブルダッシュを搭載しており、それを一時的に使うことで、グレートブースターのような攻撃を可能にしている。ずばり、鉄也の隠し玉的な攻撃である。光速にまで加速し、幾何学な機動で迫り、その速度のエンペラーオレオールをぶつける。その名も『オレオールブースターG』である。発動時に雷を浴び、帯電しているため、疑似的な『サンダーブースター』的な側面もあった。

『超必殺!!オレオールブースターG!!』

鉄也はグレートブースターよりもかなりシビアなコントロールを要求される速度でも、正確無比な操縦をしてみせ、ブースターを切り離し、ZEROの土手っ腹にぶつけてみせた。事象の地平面すら開いたこの三連撃で、ZEROは魔神パワーの発動に支障をきたした。元はZのものでしかない光子力エンジンが大きくなりすぎたエネルギーを制御できず、ZEROスクランダーが通常のジェットスクランダーに戻り、体の一部が本来のZに戻ってしまう。

『バカナ、魔神パワー『変態』、『強化』が弱マッタダト!?グアア!』

「今の攻撃で、ZEROの体の中のチャクラの位置にあるブラックボックスが損壊したんだ!見てくれ、ZEROの姿が一部でも、元のZに戻ってる!」


のび太が言う。ZEROの力の根源は搭載されたブラックボックスと言える機構にある。それそのものを損壊させれば、いくらZEROでもどうしようもない。自己再生機能の盲点であった。ZEROの意志が新たな素体にしたのは、元に戻った箇所の意匠から、『デビルマンとの共闘』、『獣魔将軍の一派との死闘』を経た場合の世界線のZであるらしく、変態と強化が解けた箇所は元のZらしい姿に戻っており、パイルダーも通常のジェットパイルダーに戻っていた。言うならば、今のZEROはZとZEROの中間といった姿に退化していた。流石に、魔神パワーの根源となる機構を損傷しては、姿を完全には維持できないのだ。空間が歪むほどのエネルギーを連続で叩き込まれても、完全には破壊されないのは、魔神パワーのおかげであった。だが、流石に魔神パワーに異常を来すあたり、三大スーパーロボットの破壊力が如何に凄まじいか。

『街の人達は避難してたみたいだから、ドラえもんの道具で街はどうにかなる。さて、あいつらがどう出るか、だな』

『それにしても、ストナーサンシャインとカイザーノヴァを同時に受けて破壊されないなんてな。驚いたぜ』

『さて、もう一撃だ!ゴッドスクランダー!!』

『おい、その手で変形できるのか?』

『マジンガーがいけるって言ってるし『おじいちゃん』が制御出来るって言ってる』

『マジかよ』

兜甲児と一文字號はお互いに驚いていたが、あと一手が足りない事を悟る。甲児はマジンカイザーにもビッグバンパンチ用の回路と機構を組み込んでいたのだ。ゴッドスクランダーが次元を超えて飛来し、空中で本来のカイザースクランダーを収納し、ゴッドスクランダーとドッキングする。

『奥の手もう一つだ!!輝くZ神の名のもとに、すべてを素粒子まで打ち砕けぇぇぇ――ッ!!』

システムオールグリーン。そして『おジイちゃん』(スーパーデラックスゴージャスコンピュータ)も叫ぶ。

『甲児、ぶちかませぇい!!』

『サンキュー、おじいちゃん!!』

ビッグバンパンチに変形するマジンカイザー。ゴッドのビッグバンパンチを『真ビッグバンパンチ』というなら、さしずめ、カイザービッグバンパンチであろう。アイアンカッターはビッグバンパンチに巻き付き、まるで暗器のように指の間から針が突き出ている。その瞬間、プリキュア達とのび太はZ神が叫ぶようなビジョンを幻視した。

『見ろ、この力!!空を裂き、次元を割り、すべてを生み出す皇帝の拳!!カイザァァァァ!ビィィクバァァン!!パァァンチ!!』

ビッグバンパンチの時の口上はアレンジしつつ、これまた、ZEROも予想だにしない一撃が放たれ、ZEROのボディは致命傷を負う。

『ヴァジュラクラッシュ!』

某無敵系の日輪のスーパーロボットを意識したキメ台詞も入れ、貫通後変形を解き手刀を切り背を向け、決めポーズを決める。黒江も手刀での聖剣の際によくやったポーズだ。ZEROのボディはZに戻る。だが、口のスリット部は開閉可能なままで、そこを口のように動かし、断末魔の悲鳴をあげつつ、自己再生を懸命にかける。だが、ブラックボックスが損傷したため、再生は覚束かず、頭痛がする人間のように頭を抑え、Zに戻る自分を押さえつけようとしていた。今の一撃でパイルダーの中にいた生体ユニット化していた別次元の甲児の意識が辛うじて戻ったのだろう。それを悟ったプリキュア達が最後の一撃をかけるためのお膳立てのため、のび太が狙撃でパイルダーのキャノピーに罅を入れ、その隙にプリキュアとして、せめての一矢を報いるのだ。狙うはパイルダーのキャノピー。

『今なら、あたしらの攻撃が届く!!行くぞッ!!』

『うんっ!!』

四人のスーパープリキュアが同時にパイルダーのキャノピーにパンチをかます。プリキュア・コラボレーション・パンチである。歴代のピンク達によるパンチに比べれば、基礎的威力はだいぶ落ちるが、四人が最強形態であったのを考えれば、トントンであった。

『プリキュア!コラボレーション!!パァアンチ!!』

四人の渾身のパンチがパイルダーのキャノピーを叩き割る。それで見たものは、別次元の兜甲児だった。その意識は途切れ途切れで、完全にZEROの生体ユニットと化していた。このあまりの光景に、プリキュア達は言葉を失う。

「ZERO、これがお前のやることかぁ!!」

メロディはその次の瞬間、思わず絶叫する。別次元の兜甲児は、ゴッドに倒された個体同様に、コードで完全に絡め取られ、身動きを取れなくされており、体に生命維持のためか、コードが体に食い込む姿だったからだ。ZEROの力が弱まり、彼を束縛する力が弱まったためか、最期の意志でZEROのボディを吹き飛ばす自爆装置を発動させる。

『終わりだ……ZERO…。俺と一緒に……滅べ…』

振り絞るように発した掠れた声。これがその兜甲児の意志だった。

「ま、待て!!自爆するんじゃねぇ!!何か方法があんだろ!?」

「無駄だ……。こいつを滅ぼすには…自爆するしか…」

自爆装置だけでも阻止する方法はないのか。メロディは一瞬の間に考え、ある結論に達した。

「ドリーム!!お前の技を借りる!」

メロディはスターライトフルーレの別個体を召喚する。そして、シャイニングドリームのように、甲児の魂だけでも救わんと、ドリームと同じ技を放った。クレッシェンドキュアメロディの黄金の翼がシャイニングドリームのような天使を思わせる純白の翼に変わり、スターライトフルーレを構える。

『プリキュア!!スターライトォォォ!!ソリューション!!』

スイートプリキュアとしての浄化系大技は合体技が多いため、プリキュア5の浄化/攻撃を兼ねられる技を借りたメロディ。これは単独で放つ事ができる固有の大技がないためであり、スイートプリキュアとしての弱点であった。

「嘘、その技はドリームの…。な、なんで!?」

「ま、話せば長いんだよ、ラブリー。あいつには、あとで佐世保バーガーでもおごってやるさ。あたしは単独の大技がないしな」

シャイニング・クレッシェンド・キュアメロディというべき混合形態になったメロディ。決めポーズも決め、ドリームとの友情を後輩のラブリーに示唆する。

「綾香さんが聞いたらさ、どーせ、『やり方教えて唆した様なもんだし、第7艦隊バーガーにニューヨークチーズケーキ付けたヨコスカスペシャルセット奢ってやるよ』とか言うよ?」

「あの人、見かけによらず食うからな…」

「朝っぱらからステーキ食ってるハルゼー提督がいるけど」

「あのおっちゃんはオカシイ」

のび太が茶々を入れる。黒江が色々とすごい食生活である事が明らかになり、メロディ(シャーリー)も引くレベルであるらしい。この場にはいないが、想像はつくらしい。戦闘中に言えるあたりは余裕が出てきた証であった。ZEROの意志はソリューションで浄化されたマジンガーZからスッと抜け出し、霊体に近いエネルギー体(闇の帝王のようなアラストル体と言うべきか)の姿を見せる。

『私ハ不死身ダ、コレシキデ滅ビハセヌ!!あしゅら男爵ヨ、ココハ退クゾ』

『大層な捨て台詞だな、ZERO。何度でも来い!俺たちが叩きのめしてやるぜ!』

「真ドラゴンとZEROの傷が癒えたその時が貴様らの最後だ!覚えておれ!!」

ZEROが体に使っていたZから放出されたエネルギーが空中で大爆発を起こすのを見計らう形で、『二機』は姿を消す。ひとまずの勝利である。街は半壊状態に留まっており、空間が歪むほどのエネルギーが炸裂したにしては比較的に被害は少なかった。

『あ、メロディ。呼集がかかったぞ』

「休憩なしかよ、ちっとは休ませてくれー!」

「ラブリー、フォーチュン。今の奴等が私達が今、戦ってる敵です。私達についていってくれますか?」

「ここまで見せつけられて、黙っていられるわけがないよ。メロディ、フェリーチェ。連れて行って」

「この世界はどうする?」

「友達に頼んで、平成仮面ライダーの誰かを警備に派遣してもらうさ。そいつのおかげで来れたしな」

「ハワイから、キカイダー兄弟でも呼ぶかい?」

「それもありですね」

「なんかものすごい会話な気が…」

「気にするな。スーパーヒーロー作戦とスーパーロボット大戦がごちゃ混ぜになったみたいな世界から、のび太たちは来たからな。仮面ライダー達が加勢してくれてるし、こいつらが来てくれたしな」

『おいおい。その他扱いはやめてくれよ』

「るせぇ、號。大口叩いてる暇あったら、真ゲッターをもっと乗りこなせよな」

『へいへい』

『言われてるぞ、號』

『こいつは猪突猛進だからな』

二代目ゲッターチーム。元々はネオゲッターロボのために結成されたチームだが、初代チームが弁慶の行方不明で解散状態になった事で、なし崩し的に初代チームから真ゲッターを引き継いだ。ゲッター線への親和性も初代に劣らず、ストナーサンシャインを放つ事もできる。

「で、翔さん。あたしに呼集だって?」

『加藤准将から命令が下った。近々、大決戦だそうだぞ。それと、ゲットマシンの残骸は地球連邦軍に回収させる』

橘翔。早乙女博士の弟子の橘博士の愛娘だが、連邦空軍への所属経験があり、初代が現役の頃は空軍軍人であった経歴を持つ。二代目ゲッターチームに隼人が引き抜いた経緯があり、その点で言えば、整備班に在籍していたが、抜擢された大道剴より戦闘向きである。

「頼む。あ、のび太、こいつらをお前の家まで連れて行ってくれ。しばらくはこいつらを休ませないと」

「わかった。後でマーチに連絡を入れとく」

「あたしは仕事に戻らないと…。ちっとは休みたいぜ」

「あれ、メロディ。仕事って?」

「説明すると長くなる。のび太に詳しいことは説明を受けてくれ。」

「聞きかじりで悪いけど、メロディ。あなた、軍隊にいるの?」

フォーチュンが尋ねる。

「平たく言えばな。ものすごくややこしいんだ、これが。お前ら。しばらく休んだら、のび太がドリームやピーチが戦ってるところに連れて行くと思う」

「ドリームとピーチが!?」

「あいつらはプリキュアの殲滅を目指してる。それを阻止するためにあたしらは動いてる。言ったろ?オールスターズ全体の問題だって」

「そうです。それと、のび太。言ったほうがいいかな?」

「ああ。君のことか。ややこしいし、言っちゃったほうが」

「どうしたの、フェリーチェ」

「実は……。私、のび太と義理の兄妹になってるんだ…」

「…ふ、ふぇ?」

聞いた瞬間、目が点になるラブリー。フォーチュンも固まる。

「ぼくがガキの頃、この子の生活の基盤の相談してたら、うちの両親が気に入って養子にしちゃったんだ、僕もビックリさせられたよ。片棒担いだのガランド元帥と陸幕調査部の当時の部長。娘さんがファンなんでお礼がてら挨拶に行ったら喜ばれたよね?」

「そうそう。もう17年近く前だっけ」

「じ、17ねぇん!?あわわ…」

「私は年取りませんし、肉体的には。みらいとリコにはまだ言ってないけど」

「多分、泡吹くよ。僕の思春期から青年期を一緒に過ごして、大学まで出たし」

「転生した時点で神になる資格の一つは満たしてるから、これからの付き合いも長くなるはずですけどね、みんな」

「まーな。あたしなんてさ、人生を三回くらい別人として経験してさ。ぶん殴りたい奴も数人いるぜ」

メロディは紅月カレンとして、ルルーシュ・ランペルージと枢木スザクをぶん殴りたい事を公言している。ただし、スザクに声が似ているはずの號とは悪友関係であるので、スザクの性格や生き方を嫌悪している節がある。メロディは紅月カレンとしての経験から、ルルーシュのように生き方を貫くか、のび太のように自分の意志で運命を変えるか、流竜馬のように『本能と闘争心で未来を切り開く』タイプの男子に好意を持つようになっており、流竜馬を地味に尊敬している。その辺りは、自分がルルーシュとスザクの手のひらで踊らせられた事を後悔していると同時に、C.Cのように共犯者にしてくれなかった事を恨んでいるとも取れる。

『お前、リョウさんに憧れてるもんなー。ブラゲを見て喜んでたし』

「いいじゃんー!あのワイルドさ!」

意外な事に、ブラックゲッター(流竜馬案)に中二心を擽られる側面もあり、ああいう無骨さとワイルドさを両立させたデザインが好きらしいメロディ。そういうところは外見相応らしい。

「この三体のロボットは別の世界のものなのね?」

「そうです。詳しい説明はのび太の家に行ってからで。長いんですよ」

「どの辺が?」

「うーん。のび太の世界の23世紀までの流れもあるんで、ちょっとした講座くらいの時間がかかりますよ、ラブリー、フォーチュン」

「だから乱暴に丸めて、『スーパーロボット大戦』の様な世界辺りが一番短い説明になるんだよね」

「そういうことです。さあて、士さんにゲート開いてもらって、戻ろうか。士さんが手筈を整えてくれているはずです」

「そろそろゲートを開く時間だしな」





――こうして、彼女達がキュアラブリーとフォーチュンを救った頃、ウィッチ世界では、連合軍内部での権力闘争に破れつつあるガリアが問題を起こし、結果として、ド・ゴールを悩ました。当時、日本連邦が軍事的に主導権を握りつつあった。バラバラに四散し、軍事的資産の多くを喪失したガリアの軍事力など雀の涙で、戦車も運用ドクトリン含めて戦間期水準のままであるなど、ド・ゴールを悩ませた。日米英の戦後の情報戦とエアランド・バトルドクトリンは戦後の軍事学的進化を踏まえたもので、カールスラントの電撃戦を更に進化させた先進的なものであった。地球連邦軍のものはそれにMSを加えたものである。会議が続いていた扶桑本土の統合参謀本部では、愛国主義的なガリアの軍人たちが自軍の戦力を活用すべしとする論陣を張り、日米英の失笑を買っていた。当時の戦闘は既にガリア陸軍の戦力が出てきて、どうにかなるほど楽観するものではない。第二次世界大戦後期の中戦車が陳腐化し、朝鮮戦争水準の戦車が現れ始めた時代では、戦間期水準のガリア機甲部隊など、『やられに出てくる』ようなものである。センチュリオンと61式相当が量産され始め、陳腐化を理由に、ティーガーとパンターの生産が打ち切られた状況下では、ガリアの既存の機甲装備など、玩具同然である。(パンターはその後、後継予定のE50がさらなる改良を受けた後に『パンターV』として就役。『10.5cm Kw.K. L/70 Ausf. C』砲を積んで、戦中型カールスラント系中戦車の集大成として、一定期間、カールスラント陸軍を支えていくことになる)それにも関わず、突出したガリア部隊がアウトレンジ攻撃と近接航空支援で全滅する事態に陥った。ガリア方面の防衛戦力となる部隊が減った事は大問題であり、ガリアの愛国主義を罵る声が多く出た。しかし、ガリアとしては、植民地統治の正当性に疑義が生じていたため、植民地からの金属資源の供給を絶たれるのを恐れ、力を見せたがった。しかし、真逆の結果に終わったので、連合軍は悩んでいた。だが、軍事的に曙光を迎えつつある日本連邦とて、反戦・非戦の風潮により、良心的兵役拒否が増加し、ウィッチの新規確保も絶望的に落ち込んでしまう事態になっており、義勇兵でのウィッチ確保までも始まっていた。数年後からの『集団就職ウィッチ』は質が低い者が大多数な事が続いたため、義勇兵がしばしの間、第一線級ウィッチの供給元として機能していく。その過程で、山本五十六や井上成美に対しては史実の行為で批判が噴出しており、結局、井上成美は批判への憤慨の勢いで空軍へ移籍し、山本五十六は後任人事が揉めたため、しばし、国防大臣であり続けることになった。(山本五十六はミッドウェイやフォレスタル級の存在に腰を抜かし、更に新鋭戦艦の量産に腰を抜かしており、山本は軍政面では優秀であるが、軍略家ではない事を自覚していたため、『軍略は小沢くんや山口君に任せるよ』と公言している。井上は海軍の空軍化政策を批判されて激しく憤慨し、空軍へ移籍する。その点では、自身が自信を持っていた施策が他者に愚策と断じられた事に憤慨した井上のほうが、意外に熱しやすい性格であったと言える)山本五十六は空母機動部隊の拡充が質の強化と両立し得なくなった事を認識し、第一線空母機動部隊の近代化を急いだ。だが、実働一年の紫電改の後継モデルの登場を促され、困り果てたが、山西航空機は紫電改と同時期に開発されつつ、紫電改の登場で凍結状態だった新鋭機で、紫電改とそれほど変わりないオーソドックスな陣風を3000馬力級に手直しして応えた。空中給油機構搭載、将来的なターボプロップエンジンへの換装を見越した機体として登場、ジェット機の普及までの繋ぎを兼ねた『紫電改の制空用途での後継機種』として、日本海軍系レシプロ戦闘機の掉尾を飾った。陣風の実態は、途中まで造られていた局地戦闘機の試作品を改良し、制空用途に充てただけなのが実際のところであったが、高々度飛行可能な排気タービンを備える3000馬力級は伊達ではなく、全てで紫電改/烈風を上回り、一定の爆装を現地で施される事が多い。翼下パイロンはミサイル装備も考慮されているが、多くは現地で容易に調達できる通常爆弾を装備していた。陣風は原型からかなりの改良が施され、艦上戦闘機としても使用されるなど、実質は紫電改の次世代モデルと扱われた。山本五十六はこれに気をよくし、陣風の早急のスピンオフを目指したが、当時の開発能力はF-86に全力が注がれており、陣風のスピンオフどころではなかったりする――







――ソビエツキー・ソユーズが現れ、メロディが帰還すると、新早乙女研究所付近のゲッター線数値が下がり始めた事が報告された。真ゲッタードラゴンが胎動を始めたのだ――

「真ゲッタードラゴンが目覚め始めたそうだ」

「竜馬さん、どういう事っすか」

「弁慶と武蔵、博士の意志がお前らが出くわした龍とZEROを倒すために進化を促してるんだよ、シャーリー」

「真ゲッタードラゴンはそのために?」

「そうだ。弁慶が戻って来たら、武蔵の墓に墓参りするつもりだ。あいつは見かけによらず、ロマンチストだったしな」

巴武蔵。のび太の世界では、『熱い血潮も…涙も流さねえ冷血野郎のトカゲ共!!テメエらなんぞに、この地球は渡さん!!!これが貴様らの祖先を絶滅させたエネルギーの源だ!もう一度滅びやがれえぇぇ!!!』の咆哮と共に果てている。北条響(シャーリー)は竜馬たちを慕っているが、竜馬も事故死した妹を思い出すからか、響を邪険には扱っていなようで、意外に可愛がっている。

「竜馬さん、その、あたしも一緒に行っていいかな…?」

「いいぜ。あいつも、ボインちゃんが参ってくれれば、黄泉の国で喜ぶだろうよ」

ボインちゃん。元は隼人が若き日にスカウトに応じた時のセリフで、今やゲッター用語で『かわいい女の子』を指す。

「リョウ、アイツは線の細い大和撫子好みだ、ボインちゃん言ってたのは俺だ」

「そうだったな。来てたのか」

「真ゲッターの戦闘データの回収と、俺もライガーで久々に出たいんでな」

「隼人さん」

「それに、そんな事ばかり言ってるとセクハラだなんだと煩いのが集ってくるから自重しろ」

「ケッ、面倒くさい世の中だぜ」

「ふう。まさか、お前がプリキュアとはな。ミチルさんが驚いてたぞ、シャーリー」

「この姿だし、響でいいよ。北条響」

「前世は日本人か」

「その前だよ。直近は紅月カレンだったし。今はアメリカ人だけど」

「ま、いつもくっついてたあのガキが手が離れたから、寂しいんだろ?」

「それはそれなんだけど、エイラがうざいことに…」

ルッキーニの手が離れた事に一抹の寂しさはあるが、エイラが嫉妬からか、自室に割り込んでくるようになってしまったので、逆に困っていたシャーリー。ルッキーニの手にかからなくなったと思ったら、エイラは美遊・エーデルフェルトがリーネであること、イリヤがサーニャである事を突き止め、この頃には、シャーリーの部屋に押しかけるに至っていた。のぞみと美遊、イリヤはシャーリー(響)と同室であり、エイラはそこに押しかけていたので、もっぱら開いているみゆきの部屋に避難さいていた。また、のぞみは天姫の帰還で、一人部屋になってしまうのを懸念したりんの提言でシャーリーと同室にされたので、シャーリーの部屋は殆どプライベートがなかったりする。

「あのガキ、日本に送り込めばどうだ?自衛隊のお姉さんたちに教育されるぜ」

「パットン親父に言ってみるよ、ハハハ。あの野郎、イリヤが美遊やのぞみと絡んでるとなぁ」

「あいつらは絡む理由、美遊を介してだが、妖精さん的意味であるからな。まぁ、これも試練と思え」

「あたしも、アネモネ的意味で絡む理由あるっつーのに。そう考えるとあたしとのぞみは縁が深いな」

妖精さん的意味で、美遊・エーデルフェルト、夢原のぞみ、北条響の三者は縁が深い。その事に気づく竜馬と隼人。

「イリヤと美遊は平行世界の同一存在なんだし、両方嫁にしちまえって囁く自衛官がでるかもな」

「そ、そう言えば…!うおおお!でも、イリヤもバーサーカー使役する世界に比べれば、穏やかだよな?」

「まあ、普通に生まれた世界の存在だからな」

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは多くの世界でホムンクルスであったりするが、サーニャに転生した世界線のイリヤスフィール・フォン・アインツベルンは普通の魔法少女をしている比較的穏やかな生まれをした世界線の存在であった。また、美遊・エーデルフェルトはその平行世界の同一存在である。それを考えると複雑だが、美遊は『リネットとして、ビクビク生きていくより気が楽』と、美遊・エーデルフェルトになりきっている。如何にリネットとしての自分の立場を悲観していた証であり、イリヤと芳佳への愛を貫くために名を捨てた事でもある。また、当時は同性愛への理解が薄い頃でもあり、中々以てレズビアン的価値観は生きにくい時代でもある。美遊になったのは、ビショップ家に迷惑がかからないし、エーデルフェルトはスオムスの名家であり、文句も言えないからだろう。

「美遊・エーデルフェルトの事はどう説明するつもりだ?家に」

「隊長と元帥がビショップ家に菓子折り持っていくそうだけど…。リーネの母さん、荒くれ者だったっていうしなぁ」

「いつでも将官をヘルプできるようにしておけ。家名を捨てるとなると、荒れる可能性が高いぞ」

リネット・ビショップが美遊・エーデルフェルトに変貌した事はトップシークレットであるが、元英雄のミニーは現役時の威光でガランドをも圧迫すると容易に予測されていた。隼人の言う通り、参謀本部にはミニーからの問い合わせが何通も舞い込んでいた。予定は立てられているものの、対応は些かの場当たり的なものなのは否めない。モントゴメリーのツテで空軍と海軍の高官をヘルプ要員に確保しておくように、後に圭子が手筈を整えるが、ミニー・ビショップはかなりの激情家で、長子のウィルマより熱しやすい性格であることは意外に忘れ去られていた。英雄と謳われるだけの積極性もあり、ガランドとミーナが後に肝を冷やすことになったのは言うまでもない。



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