外伝その324『STORM2』
――ダイ・アナザー・デイでは、プリキュアやシンフォギアなどの異能、仮面ライダーらスーパーヒーロー達がサボタージュしている現場のウィッチたちを代替する働きを見せていた。ティターンズの背後にバダンの存在が確認された事で、ヒーローたちが本格的に戦線に加わったからだ。徐々にウィッチたちも身につまされ、サボタージュを辞める部隊が増えていた。ロシアの横槍でカールスラント系の空軍部隊の士気が崩壊してしまい、戦力にカウントできなくなっていた事は問題であり、統合参謀本部を訪れた花海ことはに戦線参加要請が出された。ことはは悩んだ末に了承し、キュアフェリーチェとして戦う事になった。とはいうものの、カールスラント空軍系部隊の士気崩壊は大問題であった。この時期、既に授与されたカールスラントの勲章の取り消しが前線で騒がれた。ドイツの主導でそのような話は出たが、流石に色々と不味いため(当初は人事記録に記載し、定期昇進考査でその経歴を考慮する程度にされていた)、既に授与された勲章の取り消しはなされる事はなかった。だが、噂は広まっていたためにパニックが誘発されていた。フェリーチェへの参謀本部の参戦要請はその兼ね合いであると言える。(後に、ドイツ連邦共和国はカールスラントのナチスとの関係性の否定と帝国国防軍のドイツ連邦軍との統合凍結、それらの上位組織としての連合軍への参加、兵器セールスの解禁が決定されるが、当分先である)スーパーロボットの天下無双の活躍が報じられる中、存在意義を見失い、部隊ごとMATへ移籍する者も続出していた時勢、強力な力を持つことはは是が非でも欲しい逸材であった。三週間のうちに、部隊ごと移籍した数は国籍を問わずに増大しており、前線でのウィッチ不足に繋がっていた。扶桑系部隊も64以外の陸上展開の航空部隊は既にMATへ部隊ごと移籍して消滅しており、64が南洋からの増援の引き受け場と化していた。消滅した飛行戦隊は有に五個を超えており、南洋から再派遣された古参の行き場は64しか残っていなかったのだ。本来、欧州には陸軍系の9F、11F、12Fなどがいたはずだが、それらは隊員がMATへ部隊ごと移籍して有名無実化しており、それらへ送り込まれるはずの111Fと112Fの人員が64Fに集中したため、64は加速度的に肥大化していった。――
――統合参謀本部では、ことはへ山本五十六、レイモンド・スプルーアンス、ウィリアム・ハルゼー、チェスター・ニミッツと言った錚々たる提督達が参戦要請を出した。当時、陸軍の名だたる将軍達はダイ・アナザー・デイの陣頭指揮で不在であり、統合参謀本部に詰めていたのは、海軍の提督達であった。これも日本側の政治圧力の弊害であり、ことはは彼らの要請を受諾し、64Fの第三次補充メンバーという事になり、調の代打という形で、予定を変更する形で戦線に加わる事になり、調と同等の待遇で扶桑軍人となった。(ひいては地球連邦軍の軍人へ)これは調がシンフォギアC世界より、なかなか帰還出来なかったからであった。シンフォギアC世界の動乱を終息させた事で、その世界のSONGが帰してくれないのである。(調はその世界の自分自身より切歌への対応が冷淡であったり、立花響へは塩対応であるなどの特徴があり、その世界の響達が職業軍人になった調と揉めるなどしたため、それもあり、ウィッチ世界に帰れなくなっていた)こうして、ことはは所定の手続きの完了を待って、扶桑皇国の軍人としての身分を得て、予定が変わり、長引いたダイ・アナザー・デイに従軍することとなった。ことはの加入を以て、64は真に、プリキュア勢で一個小隊は確実に編成可能となった。のぞみに生じた現象、北条響にある紅月カレンとしての好戦性と苛烈さという不安定要素はあるものの、ダイ・アナザー・デイで『太陽戦隊サンバルカン』や『超獣戦隊ライブマン』、『高速戦隊ターボレンジャー』などのスーパー戦隊が活躍しているので、プリキュア達もチームを何かかしら組むことが考えられていた。――
――ソビエツキー・ソユーズ 艦上――
「ピーチ、今後のためだ。お前にいいものを見せてやる」
「え?」
「はぁああ……!とりゃっ!」
黒江は黄金聖衣を纏った状態で気を昂ぶらせ、流派東方不敗の必殺技の一つを披露する。そして、流派東方不敗独特のフィンガー系の構えを見せる。
『俺のこの手が真赤に燃えるぅ!!勝利を掴めと轟き叫ぶぅ!!』
「な、なに!?綾香さんの右腕が……赤く燃えてる…!?」
「あれが、かの有名な流派東方不敗の闘技の中でも決め技の一つだよ。あたしの輻射波動と似たようなもんだけど、あの人のは気で起こしてる現象だ。まさか、黄金聖衣を着てる時に、気を小宇宙と併用するたぁな…。すげえ芸当だぜ」
驚くピーチに解説を入れるメロディ。気と小宇宙の併用は理論的には可能だが、聖闘士は肉体そのもののスペックそのものはあまり関係なくなる場合が多く、気を併用する実例が無かった。だが、すでに肉体を限界まで鍛えていた黒江が生物学的な限界を超え、聖闘士になる事で現実になった。つまり、黄金聖衣のフルスペックを出すための小宇宙を燃やしながら、気を練っているのだ。こういった側面でも、黒江は巧者とされる。(ただし、異能生存体はそんな『身体的スペック』をすべて無視するため、黒江はのび太とゴルゴにだけは模擬戦で勝てていない。また、懐に入り込んだとしても、銃口で鼻を突く戦術を心得ているし、異能生存体特有の現象である『生死に係る』場合、本人の能力とは別の要因で覆されるため、如何に黒江でも、のび太とゴルゴは倒せないのだ)
「黒江さん、あれを実践するのに、30年はかかったとか言ってたな」
「さ、30年!?」
「あくまで、前史で費やした年数だけどな。そりゃ、時間がいくらでもあるっていったって、一から格闘技を学んで、大会でタイトル総なめできるくらいになるのに、相応の年月費やさないとできないし、ゴルゴは嘘か真かは不明だけど、バッファローを素手で殺したって噂があるからな。それで時間かけて鍛えたとか言ってた。その結果を持ち越して、チートしてんだから強いんだよ。やりすぎて迫害されたけどな、あの人」
「つまり?」
「あの人達は『ズルして無敵モード』を地で行った最初の例。それでやりすぎたわけだ。何せ、本来は浦塩から撤退するはずが、浦塩だけは無双して、死守したんだ。それで周りから疎まれた。日本人の気質的に『出る杭は打たれる』からな」
「うわぁ…」
「仕方ねぇよ。当時はウィッチの戦闘法もあまり確立されてなかったんだ。それを常識を思いっきりぶち抜く三人の闘技だ。疎まれるぜ」
「どんな?」
「光速の攻撃、トマホークやブレード、ランサーだぞ?当時は日本刀で戦うのも珍しい時代だしな。おまけに、ろくな手持ちの機関銃もない時代にゲッターマシンガンやレーザーーキャノンだ。黎明期で、ろくな武器がないからって、光学兵器も使ったからだよ」
圭子が九六式軽機関銃すら満足に配備されていない時代に、自前の能力である『空中元素固定』を使い、ゲッターマシンガン(ゲッター1用の武器を人間サイズにしたもの)、ゲッターレーザーキャノン(これはゲッタードラゴン用)を造り、敵機を撃墜しまくった事を教えるメロディ。事変時に扶桑航空が恐れられた理由の半分くらいは圭子であると教える。今回においては、『扶桑陸軍飛行戦隊の狂気』という渾名を事変時につけられ、ある時期からは『血まみれの処刑人』とも畏れられている。レイブンズでは最初に現役復帰し、黒田を従え、アフリカで未来行きまで活躍した事から、比較的に現役世代との軋轢がない。そこも他の二人にはない利点であった。(結果的に、この時の不在がマルセイユの精神的成長のきっかけとなった)
「それは良いんだよ。問題は参謀だよ。その時の戦果を他の部隊に分配しやがったそうだ。それが尾を引いて、今のこの有様だそうだ。ったく、チームワーク重視もいきすぎると厄介だぜ」
メロディの言う通り、江藤はその戦果を当時に存在した諸部隊に分配した。江藤は覚醒後、赤松に『あなた方が転生者と分かってれば、ちゃんとあの三人の戦果としたのに!』と訴えている。江藤が処方面から睨まれたのは、事変の記録の書き換えが膨大になる事、他部隊の戦果とされたものが旧64Fの戦果になる事で生ずる問題の大きさであった。つまり、『他部隊へ授与されていた勲章や感状の取り扱いの問題が浮上したから』最前線送りになった事になる。『戦って戦果を挙げれば、行為の罪を軽減する』という条件が指定されたからでもある。これは当時、江藤は転生者からは蚊帳の外だった事が考慮されたからで、事変の当事者であった他部隊がダイ・アナザー・デイ当時には代替わりした隊員の移籍や再編で殆ど現存していなかった(権利を受け継いだ戦隊がMATに移籍して、その部隊も存続していなかったケースもあった)幸運により、参謀本部が悲観したほどの事態にはならず、江藤はその他の理由もあり、降格処分を免れた。だが、連帯責任で退役者の年金にマイナス査定がつけられたため、江藤はしばらく、退役済みの同期と先輩達に睨まれる羽目となった。(それを解消するため、現役復帰して功績を更に得る方法が取れるようになったため、その期間は数年ほどだったという)
「で、いざ復帰したら、案の定の世代間対立。参謀は厄介なことをしてくれたもんだぜ。あの人達の元上官でなけりゃ、ぶん殴ってるぜ」
「ゴタゴタすんのはあと10年も無いだろ?新人が入ってきたら、坂本やなんかが確り教育してウチに送り込んでくるだろうよ?隊長も反省してるし、黄泉比良坂を若さんに見させられて泣いてるんだ。俺としちゃ、もう気にしてねぇさ」
メロディは江藤をあまりよく思ってはいないようである。これは扶桑でのウィッチの世代間対立を冷めた目で見ている他国軍人のいい例である。江藤は黒江達の上官だったので、面と向かっての悪口を控えているだけで、本当は一発、思いっきり殴りたいらしい。それを黒江が宥める。他国軍人にとって、レイブンズの奇跡は模範とされ、メロディ(シャーリー)も軍入隊後に知ったからこそ、江藤を罵りたいだろうが、江藤としても困惑の事態なのだ。むしろ、責任の殆どを押し付けられ、昭和天皇の御前で申し開きをする羽目になった江藤が一番に泣きたいだろう。昭和天皇は事変後もレイブンズを強く寵愛しており、『私の軍事顧問になってもらいたいくらいだ』としており、陸奥の取り成しがなければ、昭和天皇の叱責が飛びかねなかった。当時、天皇直々の叱責は扶桑軍人の最大の恥とされており、江藤が事後にベロンベロンに酔っ払ったのも、この申し開きの心労によるもので、陸奥の取り成しが救いの神に見えたからだ。(その点で陸奥は功労者であり、山本五十六に褒められたという。また、黒江が手を打ち、天皇を説得し、陸奥にも取り成しを頼んでいたのがわかるのは数年後のこと。また、黒江は陸奥の性格を把握していたので、念を入れ、自分で予め、昭和天皇に拝謁したとも)
――他国での評価で何かの自国での評価を改めるのは日本系国家には多く、古くは『八木・宇田アンテナ』や『フィン・スタビライザー』、人物では『杉原千畝』など、日本系国家特有の現象である。レイブンズもその通りで、自国よりも他国で伝説視され、それに驚いた参謀本部が手のひらを返して厚遇しだした。その煽りを受けたのが、事変当時の隊長級の者達であると言っていい――
「……なんか、日本って舶来コンプレックスなんだね」
「扶桑もだけど、根本的に舶来物に弱い上、自国がすごい発明してるのに気が付かなかったり、世界基準で偉いことをした外交官をクビにしたりしてるんだよな。だから、日本がそこを責め立ててる。まあ、日本も『お前が言うな』なんだけど、扶桑もタジタジだよ。八木・宇田アンテナは擁護のしようがねぇけど」
「んじゃ、綾香さん達のケースは」
「ほら、有名な杉原外務官みたいなケースだよ。ただ、三人はお上のお気に入りだったから、本格的な手出しは控えて、冷遇に留めておいたのが違いだけど」
「で、いざ外国で伝説になってるとわかった途端……」
「そ、手のひら返してる。それで当時の関係者を慌てて罰したり、後任に責任被せてるってわけ」
「うぇ…、なんか会社でありそうな話」
「日本企業に限られるけどな、これ…」
メロディもピーチも、レイブンズが遭ってきた苦難にげんなりする。その間にも、黒江はゴッドフィンガーを撃つ態勢に入る。(ちなみに、実際は武子も、江藤の判断に関係していたが、当時の地位は少尉であったために『若さ』を考慮され、処罰を免れている。武子自身は禊を求めての厳罰を望んだが、当時の立場と現場の士気の関係、黒江達が隊長を辞退し、武子を推薦していた事もあり、新64の隊長に収まっていた。武子はその地位を個人としては望んでいなかったが、『皇室を守るために、話を引き受けた』と公言する尊皇家である)
『ばあああああああああくねぇぇつ!!ゴォォッド!!フィッガァァァ!!』
ドモン・カッシュ独特の滑舌までご丁寧に再現し、ちゃんと指の配置まで合ったゴッドフィンガーを披露した黒江。赤熱化させた手を密着させ、爆砕する形のもので、一言で言うなら、炎属性のアイアンクローである。ゴッドフィンガーは本来、機体の機能であるが、元々、フィンガー系の技は流派東方不敗の奥義の一つであるため、それを応用すれば、生身でも再現可能である。聖闘士の技は何代にも渡って継承されてきた技が多いため、既に見切られている場合がある。黒江はこうした戦法で攻めるのだ。ゴッドフィンガーは炎属性であるため、同じ炎属性のプリキュアであるルージュが呆然としてしまう効果を生んだ。その表情は現役時代の『ある出来事』以来のものだった。
「へ……ぇ…!!?ち、ちょっと!!何よ、あれ!?なんなの、どうなってんの!?」
「あれくらいで驚いてんのかよ、ルージュ」
「アレくらい!?どうなってんのよ!?説明しなさいよぉ!?」
「ピーチとの話を聞いてなかったのか?ったく、お前なぁ…。後で説明してやっから、落ち着けよ」
「ぐぐ……。」
ルージュは基本、ツッコミ役だが、この時ばかりは驚き役である。ルージュはドリームが生前の失敗を引きずり、『戦士』であることにアイデンティティを求め、錦の肉体に秘める闘争本能に身を委ねやすくなっているのに対し、概ね、現役時代の性格を保っている。精神面はすっかり成熟しており、過去に春日野うららに対して言ってしまった失言を気に病むなどの成長を見せている。ドリーム/のぞみが生前の壮年〜晩年期の長女との確執をトラウマにしていて、転生先の肉体が秘める強い闘争本能に身を委ねやすくなっていることを知ると、その傾向を危惧するなど、のぞみの世界の自分の不甲斐なさに怒りを感じ、『幼馴染』としての姿に立ち返った姿も見せている。ただし、戦士としては、出身世界が『2017年(キラキラプリキュアアラモードの現役時代)を最後に、プリキュアの役目がすべて終わった世界』であるため、『青年期が終わる年齢まで、邪な存在と戦い続けた』のぞみに対しての劣等感があると言わざるを得ないところも覗かせている。これは『戦士を2017年で引退した自分が、戦士であり続けるのを渇望するまでに追い詰められた心理状態ののぞみを支えられるのか?』という、りんなりの葛藤も関係している。同時に、のぞみはある年齢まで『戦士であり続けた』ために『経験差』が生じている事への、りんなりのコンプレックスの表れでもあった。
「ルージュ。お前……、薄々感じてたけどよ。もしかして、ドリームと出身世界が違うことを?」
「その通りよ…。あの子はあたしが先に死んじゃった世界の出身。あたしは2017年でプリキュアそのものが必要とされなくなった世界に生きたけど、あの子はそれ以降も戦い続けて、ついには自分の子に生き方を否定されて、戦士としての自分に存在意義を見出すしかなくなった。そんなあの子を、全てが上手くいった世界線のあたしが支えていいの?それ以前に、その世界線のあたしはその悩みに気づけなかった。それを考えると、いても立ってもいられないのよ…!」
メロディは悟る。ルージュが地味にコンプレックスを抱え込んでいたことを。のぞみが悩んだ問題に何もしなかったらしき、別の自分への怒りを垣間見せるルージュ。ただし、55歳のび太が語るところによると、『あの子に戦士である事への渇望はないさ。むしろ、仲間と共にある事への渇望で、その象徴がプリキュアとしての戦いだったのさ、あの子は』と評し、のぞみの悩みを代弁している。壮年期のび太にとっては養子との結婚で、義理の娘になるためか、のぞみの願いをもっとも理解していた。それに代わる形でメロディは言う。
「アレはもしかしたら戦いを望んでる訳じゃないのかも知れない、お前と向き合ってる時にしか見せない笑顔もあるし」
「え…」
「それにな、あたしだって、前世で仲間に加えてほしかった奴に蚊帳の外にされて、掌で踊らされてた事がある。それを思うと、腹の虫が収まらない時が多い!だけどな、自我を引き継いで生まれ変われたのは、ある種のチャンスでもあるんだぞ、ルージュ。あたしらは次元世界全体の女の子の願いと想いを背負ってるんだぞ。あたし達はのび太や仮面ライダー、英霊たちみたいな強い意志は持ち合わせてないし、心の強さもないかもしれない。それは人によっちゃ『超常的な力を持つくせに』って馬鹿にするだろうさ。だけどな。目覚めたその魂があれば、何度だって強くなれるし、熱くなれる。心の闇を映す鏡なんて壊すほどに」
メロディは多分に何人かの平成仮面ライダーや、のび太の生き様を意識した一言をルージュに言い、奮起を促す。生前の北条響としての軽めの口調ではなく、シャーリー本来の大人びていて、それでいて相応の血気盛んさ、更にどことなく母性も感じさせる『大人』としての口調で言ったため、ルージュを驚かす。さらに、紅月カレンとしてのルルーシュ・ランペルージへの悪態も織り交ぜるあたり、彼へ言いたいことを地味に溜め込んでいるらしい。
「アンタ……」
「クサイとは思うけどよ、昭和の仮面ライダーは昭和40年代から、ずっと戦い続けてるんだぜ?のび太なんて、天寿を全うしても、あたしらのために輪廻転生してくれるんだ。周りから『弾除け』、『パシリ』、『道具』って陰口が飛ぼうが、だ。ヒロインしてるあたしらより、よっぽど勇気がいる選択だ。あたしらは選ばれたけど、のび太には選択の余地があったからな」
「それじゃ、あの人は」
「そう。あたしらに付き合うために、子孫への輪廻転生を選んだ。23世紀以降の子孫へな。あたしらはこの先、永遠に等しい時間を今の姿で過ごさないとならないんだ。それに付き合わせた責任をとらんとならん。歳を食わなくなって、死を乗り越えた存在として。誰がなんと言ってもな。」
メロディはのび太の重大な選択を聞いており、転生で死を乗り越えた存在としての責任を果たす意義を見出していた。のび太を修羅の道に巻き込んだ罪悪感を感じつつも、昭和ライダー達同様の『道』を歩む事を明言する。
『それでも好きにやらせてもらってる、気に入らない邪悪を蹴散らすのに都合が良い仕事してるだけだし、気にしないでよ』
のび太は常々、Gウィッチにこう言っている。のび太はお人好しという誹りを気に留めず、転生することを考えていると。のび太を安らかに眠らせろという誹謗中傷も意に介さず、常に理解者であり、のぞみには義理の父になり、ことはは義理の兄、調は『守るべき場所』として、のび太のいる場所を見ている。
『僕は正義でもなんでもないけど、自分の筋は通したいアウトロー公務員が気楽で良いさ、悪人結構、気に入った正義に味方する通りすがりのガンマンで通すよ』
のび太は成人後はそれをポリシーにしており、その姿に、ことはと調は惚れ、それぞれ慕っている。メロディ(シャーリー)もその一人であり、アラモの戦いで死んだ先祖がいたらしいものあり、のび太に教えを請う事が多い。また、最近のお気に入りは、のび太が西部開拓時代で覚えた『チリコンカーン』(チリコンカルネ)らしい。のび太は成人後であれば、チリコンカーンとバンダナコーヒーを作れるため、成人後はGウィッチにそれを奮うなど、主夫としての存在感を見せている。のび太はこうした事でも、Gウィッチの支え役であった。
「それじゃ、説明すんぞ。黒江さんが習得した闘技があれだよ、爆熱ゴッドフィンガー。流派東方不敗の奥義の応用系。本当は気を集中し、相手の脳髄を麻痺させたり、頭蓋を貫いて脳を破砕する禁じ手があるそうだけどな」
『ヒィィト・エンド!!』
貫手で相手の鱗衣を貫き、持ち上げてエネルギーを爆発させる。その動きはゴッドガンダムを彷彿とさせる。だが、これはまだ致命傷にならない。それを確認したキュアピーチは追撃をかけようとする黒田を制する。
「こうなったら、一か八か!」
足元に『どこかで見た形状のエネルギー』を発生させ、そのエネルギーを右足に収束させて跳び蹴りを叩き込んだ。
「ピーチ、お前、今のは……あのライダーの」
「あたしも生まれ変わったのなら、できるかもって思って。ほら、プリキュアの力って光の力だし。流石に、あのライダーにはなりませんよ?」
冗談めかしつつ、キュアピーチはある平成ライダーと同じライダーキックを完コピして放った理由を黒江と黒田に説明した。ある平成ライダーの力とプリキュアの力は同質のものであり、同等の芸当もできるはずだと。キックは相手の鱗衣を見事に粉砕しており、スーパープリキュア化していたのが、更にその力の片鱗を行使したことで、破壊力は二乗で強化され、相手はノックアウト状態に陥った。
「賭けだったけど、出来て良かった。このままじゃ、プリキュアの看板がすたるし」
「そ、そうか。なら……、ドリーム。今の状態ならできるはずだ!体にゲッター線が漲ってるなら!」
「おっしゃ!!こうなりゃ、ぶっつけ本番だぁ!!うぉぉぉぉっ!」
ドリームは空高く舞い上がり、体に滾っていたゲッターエネルギーを攻撃に転化させるべく、黒江の言わんことを悟り、ある事を実行した。それは。
『ゲッタァァァ!!シャァァァイィィィィン!!』
ゲッターシャイン。エネルギーを開放して体に纏うシャインスパークの前段階である。ゲッター線が漲っている状態だからこそ起こせる攻撃だった。ゲッターロボ最終兵器。その名も。
『シャイィィィンスパァァァァク!!』
シューティングスターの10倍以上のエネルギーをその身に纏い、眩い光を放ちつつ、突撃。急降下からシャインスパークを放った。奇しくも、シューティングスターとシャインスパークはやり方がほぼ同じであったため、神闘士も流石に避けようがない角度からのエネルギーの発射を心得ていた。その際、ドリームの顔にはハッキリとゲッター線の紋章が刻まれており、圭子と同じように、ゲッター線に可能性を見出された事が示されていた。
『からのぉ!!シャイニングゥブロウー!!』
エネルギーの炸裂寸前にトドメのフィニッシュブローを入れる。エネルギーの炸裂を一点に抑える意図もあってのブローである。
「ぐおおおおっ!?」
神闘士もシャインスパークとフィニッシュブローを浴びてはただではすまず、ローブの各部はボロボロになり、全身から流血していた。だが、それでも倒れはせず、先に倒された海闘士を回収し、ソビエツキー・ソユーズから去るだけの余力は残っていた。
「チィ…勝負は預ける!」
「へへ、おととい来やがれってんだ!」
もっとも、シャインスパークの炸裂にも関わず、まったく損傷しないソビエツキー・ソユーズの甲板は特筆すべき事項だろう。ソビエツキー・ソユーズはこれで防衛戦力を失った事になり、その後は嘘のようにスムーズに鹵獲に成功した。(黄金聖闘士三人とプリキュアが四人以上では、通常の兵士では、どうあがいても絶望である)鹵獲されたソビエツキー・ソユーズはブリタニアがしばらく管理する事になり、前線から離れた港湾に回航され、繋留される事になった。(オラーシャがロマノフ朝風の名に改名しての保有を望んだが、オラーシャにはもはやその余裕はないのと、ロシアか財政援助をしなかった事で見送られ、ソビエツキー・ソユーズはブリタニアの管理下で数年を過ごす事になった。ただし、オラーシャ海軍の試作品と砲の規格が一致していた偶然から、オラーシャ海軍が発注をキャンセルしていた新戦艦の枠での保有が許され、ロシアの要望で艦名は『インペラトリーツァ・エカチェリーナ』へ変更されたものの、ロシアがその絡みで、ようやく財政支援をした事で保有する事になったという。)
――プリキュア達は一応、自前の力でないにしろ、神闘士と海闘士を退けた。ドリームはゲッター線が放出されたために普段の口調に戻っていたが、『ゲッター線に選ばれた』自覚が芽生えた。以後、圭子に次ぐ『ゲッター線の力を行使する者』となり、光子力を制御したフェリーチェと対になっていき、戦闘でコンビを組む事が増加していくのであった。ピーチはプリキュアのままで、ある平成ライダーの力(ひいては人の可能性の力)の片鱗を使ってみせ、プリキュアに一つの可能性を齎した。ラ級戦艦の鹵獲は多大な戦功であるため、直接戦った5人に個人感状が授与され、部隊感状も発行された。(『時代遅れ』という反対論が出たものの、勲章の授与に比べれば敷居が低い事から、現場の士気の関係もあり、扶桑軍の判断で発行された。また、戦闘そのものは続いている事から、金鵄勲章の授与の時期でもないし、代替品扱いされていた陸軍武功徽章は授与が停止されてしまったため、感状は連発されていた。)そのため、制度の周知と改訂がなされ、空軍設立後に『空軍武功栄章』の創設がなされる事になり、空軍においては、一応の対処はなされた。メロディが苦言を呈したように、レイブンズへの手のひら返しなどは余りにも急激すぎたため、この後もしばしの間、影響が尾を引く事になる。
――この時期は未来世界においては、デザリアム戦役の前段階であったため、鹵獲したミネルバに格納されていたパーツを組み上げてのインパルスの稼働テストがコンペイトウに搬入され、OSの書き換えがなされた上で行われていた他、コズミック・イラ世界から、新たにいくつかの機体(コズミック・イラ世界への二度目の介入の際に、ストライクルージュ(地球連邦軍製の個体なので、正確には返還か)とガイアが提供された)が地球連邦軍の手に渡った。その内の地球連邦軍製ストライクルージュは、コズミック・イラ世界のオーブ首長国連邦がパーツの取り替えが効かないことを理由に、ヤキン・ドゥーエ戦後はまったく運用していなかったために稼働データが不足しており、そのデータを埋めることが検討され、とりあえずは21世紀新生野比家に搬入され、しばしの間、保管される事になった。(正確に言えば、完成していたストライクルージュに地球連邦が手を加え、動力部を反応炉に変えるなどした個体。また、地球連邦が予備パーツを製造し、動力を世界相応のものに変えた個体が戦後は使用されていた)当時の野比家はシャルロット・デュノアとセシリア・オルコットのIS(小型改修型。セシリアはストライクガンナー装備)の運用テスト中であったため、のび太のタブレットには、改修でアーマー部が小型化され、脚部の機能が強化された事で本格的な歩行が可能になった恩恵を受けて、IS姿のままで野比家の家事をするシャル、IS姿でソファに座って、紅茶を飲むセシリアの姿を収めた写真がキュアマーチから送られてきている。ある意味シュールだが、一応は改修後のISの長時間稼働テストの一環である。彼女たちがストライクルージュの搬入作業を見どける事になる。(ちなみに、ストライクルージュのOSは搬入時に地球連邦のものに書き換えられており、操縦性では高性能化している)ガイアの搬入は遅れたが、これは輸送船の手配の遅れであった。
――その日の夜、ソビエツキー・ソユーズの回航後のロンドン――
「先輩、何を見てるんです」
「ああ、マーチからの定時連絡だよ。見ろ、中々にシュールな光景が写ってる」
「あ、本当だ。箒の仲間の子達ですね?」
「のび太んちを守らせているんだが、こうして見ると、シュールだな」
ISを展開したままでくつろいだり、家事をするのはシュールな光景である。同じISを持つ箒は元来の性格や、ところどころ垣間見せるおっちょこちょいさで、家事に殆ど縁がなかった上、野比家にいる時は調に家事を任せる事が普通だったからだろう。(同質の魂を持つマリア・カデンツァヴナ・イヴとは対照的である)
「この分だと、わたし達も変身したままで家事できそう」
「あ、お前はだめだぞ。前科あるだろ」
「うぅ。それは勘弁して下さいよぉ。今は違いますって。りんちゃんに言っても、信じてもらえないんですよー!」
「諦めろ。お前の前世を知ってる奴は多分、みんなそう思ってる」
「あーん!黒田先輩まで〜!」
黒江と黒田に同行していたのぞみ。ブリタニアまでソビエツキー・ソユーズを運んだはいいが、すぐには戻れないため、ロンドンで6時間(敵艦隊がスーパー戦隊やメカゴジラの撹乱攻撃、ソビエツキー・ソユーズの鹵獲で進撃を躊躇った)ほどの上陸は許容された。もっとも、ブリタニア料理は不味いため、ロンドンでブリタニアのディナーを食う気はないが。
「ロンドンの飯で食えるのはフィッシュアンドチップスか、朝飯くらいだ。メカゴジラを遊撃させて、スーパー戦隊に撹乱を頼んでた甲斐があった」
「メカゴジラをどうやって空戦で?」
「支援機と合体して、スーパーメカゴジラになりゃいい。戦艦相手の支援機には丁度いい。後継に予定されてたMOGERAは造られたかどうかはわからん。MOGERAの設計はあるが、日本の景気が底を打つ時代にバッティングしてたんだよ、設計の完了がな」
メカゴジラの愛称は機龍だが、その名称通りの武装がないモデルが量産されていたため、部内では『スーパーメカゴジラ』と呼ばれる。在来技術の割合が90年代になると高くなり、当時としての安全牌が取られた設計になっている。後継、もしくは競作としては『MOGERA』が予定されていたそうであるが、奇しくも設計の完了が、日本の景気が極度に悪化した時代にバッティングしてしまい、実機の製作は不明である。しかし、現在のところ、自衛隊秘匿兵器の中で一番の大物であるメカゴジラは一年戦争当時のジムは愚か、RX-78シリーズすらも上回る強度を有しており、オーパーツである事を証明している。その装甲強度は1940年代の米軍系重巡の主砲はもちろん、標準的な米戦艦の16インチ砲の一斉砲撃を意に介さないほどであり、黒江が後方攪乱のために発進させていた。その成果が報告され、巡洋艦と駆逐艦を多数行動不能にし、戦艦も三隻を戦闘不能に陥れたのだ。
「戦艦の二個戦隊、駆逐艦と巡洋艦を多数、行動不能にさせたそうだ。これでしばらく休憩できる時間は稼げた。戦艦を三隻、もしくは四隻を戦闘不能にして、護衛艦隊を減らせば、空母機動部隊の護衛をどうするか悩むはずだ」
「手が早いですね」
「せっかく、松代の旧大本営跡の格納庫に秘匿されてたのを引っ張りだしたんだ。使わない手はないし、サンバルカンやライブマン、マスクマン、ゴーグルファイブ、ターボレンジャーにも撹乱を依頼してある。日本は、『コツを掴めば』扱いやすいよ。オーバーテクノロジーでも何でもいいから、アメリカに一泡吹かせたい、大和型戦艦を大活躍させたいって願望が強いからな」
「大和を?」
「正確には、大和と武蔵だよ。それぞれ無駄死にって揶揄される最期を遂げた以上、戦艦として戦わせてみたいんだろうよ。日本海軍の悲願だったし、ニミッツのおっちゃんは揶揄してるがな」
オーバーテクノロジー満載の兵器を第二次大戦の米軍の力のシンボルであった米戦艦に使い、空から蹂躙する事を政治的に許容する辺り、日本が第二次大戦での科学力の敗北に深いトラウマを持っている事の表れである。その一方で『大和型戦艦に本来の想定運用での活躍をさせる』事を造船学的意味合いでの悲願とし、扶桑に大和型戦艦とその後継艦の出撃を奨励するなどの空母至上主義と矛盾した動きも見せている。『世界最大最強の戦艦は日本の戦艦である』という旧海軍の連合艦隊の抱いていた挟持と自負の再証明、誹謗中傷や誹りが未だに多い大和型戦艦の技術的意義の証明を求めている側面が強い。古くは日露戦争の日本海海戦の劇的勝利の遠い記憶に由来する連合艦隊の誇り、最盛期には『海戦の玄人』を自負していた挟持、その連合艦隊の落日の象徴と揶揄される大和型戦艦に、かつての戦艦三笠のような勝利の美酒を味わせてやりたいという願い。それを理解さえすれば、日本は御しやすいとする黒江。大和型戦艦への入れ込みようを扶桑側が首を傾げつつも『凄まじい』と評するのは、扶桑にとっては『海軍新鋭艦艇の一つ』という扱いでしかない大和型戦艦を『日本海軍の象徴』、『連合艦隊の栄光の具象化』、『日本戦艦究極の造形美』とするところである。扶桑が『1940年代のワークホース』と位置づけていた紀伊型戦艦を『所詮は戦間期型』と軽視し、紀伊型の近代化より、より設計の新しい大和型戦艦の増産を選ぶ様は扶桑の技術将校にとっては驚天動地だった。『大和型戦艦は重戦艦だし、より調達しやすい手頃な戦艦を検討してたし、紀伊型の近代化も予定してたのに!なんで、超大和型戦艦まで用意せねば…?』と信じられないものであったという。だが、戦艦というのは常に最新最強の艦砲を積むのが当たり前とする認識があるため、日本側の要求は的外れではないし、軍事的には正しかったりする。(井上成美は航空派として過激で、超大和型戦艦と超甲巡の計画が復活することを強く非難したが、日本側の計らいで、ある艦艇模型製作サークルの展示会に招かれ、ソビエツキー・ソユーズ、改ライオン級、H44級などのスクラッチ模型、吊るしの超大和型戦艦のキットを艦政本部長と共に目の当たりにして、ひっくり返ったという。更に、H級が本当に完成していたという凶報は彼をして、超大和型戦艦の存在を許容せざるを得ないと判断させ、危機感を強めた)扶桑艦政本部は呉の壊滅を境に、大和型戦艦を基本にしての重武装重装甲戦艦のバリエーションを展開していく事になるが、その事へ技官達の反発も確かにある。大和型戦艦の戦艦としての活躍は喜ばしい事だが、八八艦隊型戦艦の陳腐化で他用途への転用、もしくは性急な記念艦化には用兵側の反発も確かにあった。一年の議論の末に紀伊型戦艦は『尾張型航空戦艦』として、加賀型戦艦は『上陸支援艦』として太平洋戦争の期間までは現役であり続け、船体の老朽化で、1960年代に記念艦になるまで、戦場で活躍することになった。
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