外伝その407『ユトランド沖海戦の再来5』
――黒江と事実上のソウルシスター関係になった月詠調。結果として、切歌とは別の道を歩むことになったため、それが立花響の反発を生んだのは事実である。響は桜セイバーと精神世界で戦うことで自分の思いに決着をつけ、調が黒江やのび太のもとへ出奔した事を受け入った。さらに言えば、次元世界には、自分達の常識を覆せる存在など、いくらでもいる事も受け入れた。そして、自身の別人格と化していた桜セイバーの事も。全てを受け入れる事で、人格は立花響のままでも、桜セイバーの姿を任意で取れるようになった。黒江らが小日向未来を呼ぼうとしていることは『知っている』。それに甘えられないと奮起した結果、桜セイバーと精神的に共存する事に成功したのだ。そして、桜セイバーの攻撃性も緩和され、穏やかな側面が表れていた――
「あなたは響さんと共存を選んだんですね。沖田さん」
「結果的にはそうなります。あの子の心意気に打たれたとでも思ってください」
桜セイバー(沖田総司)は他人の空似でありつつも、アルトリア・ペンドラゴンにとても良く似ている。だが、着ているものは新選組の羽織であり、日本の英霊である事を表している。剣士としては最強クラスだが、難点がある。病弱さだ。生前の病弱さは、飛び抜けて頑健である立花響の肉体を素体に転生する事で『緩和』はされたが、完全には消えないらしい。一見して、二人は真逆の気質なようだが、根底が似ている事に調は気づいた。
「僕は響と共存する事になります。それが僕に示された道なら、受け入れる所存です」
沖田総司としての一人称は、僕と俺を使い分けているらしい。激昂すると俺になり、普段は僕を通している。『私』も使うが、生前は男性だった世界の比率が高いからだろう。
「あなたの上役には、そのようにご報告して結構です」
「わかりました」
言葉の端々に時代性が出る沖田。その微笑みは立花響との共存を最終的に選んだ清々しさを感じさせた。アルトリアと不思議なほど瓜二つな外見だが、中身は武士であり、騎士ではない。しかも、近代と中世の境界線上の時代に生きた近代兵士に限りなく近い武士。そこが根本で異なる。桜セイバーという俗名は悪くはないとしつつ、沖田総司と呼んで欲しいとぼやくあたり、新選組隊士であり、緋村剣心のその後を知りたがるなど、生前は緋村剣心と戦った沖田総司である節も見受けられ、調は更に桜セイバーに関する調査を継続することにした。
――歴代のプリキュア達は64Fの一員として戦っているわけだが、パンチ力そのものは不足気味であり、現役時より強くなっていながらも、クライシス帝国の強大さの前に、容易く追い詰められる事も多かった。当時のクライシス帝国は住処である怪魔界そのものの維持が不可能に陥りつつあり、急ぎ、地球への移民を達成しなければ、種族そのものが絶えてしまう危機的状況下にあった。そのため、平均戦闘レベルが仮面ライダーBLACKを上回る怪人が続々登場しつつあるが、幹部の一人であるボスガンは卑劣漢そのものの戦法でプリキュアらに対抗した。当時の時点でプリキュア勢の精神的支柱と目されるキュアドリームの精神を攻めるべく、戦友のキュアルージュを傷めつけ、怪魔稲妻剣を失ったボスガンがこしらえた剣『電磁波剣』で以て、ドリームの目の前で横薙ぎに切り捨てるという暴挙に出てしまう。要はRXの戦友『霞のジョー』に使った手を懲りずに使ったわけだ。――
「あああああっ!……」
飛び散る鮮血。ボスガンの電磁波剣がルージュの下腹部を横薙ぎに斬り裂いたのだ。ドリームに見せつけるかのように、わざと大仰な振り方で。ルージュは片膝をついて、その場にうずくまり、倒れる。ドリームは駆け寄り、すぐに応急救護を行う。ボスガンの高笑いが響く。ドリームは瞬時に燃え上がる感情のままに、ボスガンを睨みつける。まるで、RX/南光太郎のように。
「小娘、そいつを失うのが怖いのか?フハハ……」
勝ち誇り、哄笑するボスガン。バイオライダーにあっさり撃退されたことから何も学ばない愚かさこそが彼が小物と言われる所以である。ドリームは哄笑を吹き飛ばさん勢いでブルームから受け継いだ精霊の力を全開し、視認できるほど強大なオーラを纏い、憤怒の表情を見せる。それは当人にとっても久しぶりの感情だった。
――ドリーム/のぞみは自分の失いたくないモノが傷つけられた時だけ、ありのままの激情を見せる。本気で怒ったのは二年間の現役時代を通しても、片手でで数えられる程度である。しかし、今回はのぞみが失いたくない友達の筆頭であるルージュ/りんが絶対的な窮地に追い込まれた最初のケースであったため、転生後、彼女の中で何かが弾けた最初の例でもあった――
「アンタだけは……絶対許さない!!」
オールスターズとしては、スイートの決めセリフで通る『絶対許さない』だが、それ以前のプリキュアが言わなかったのかと言うと、そうではない。仮面ライダーBLACKRX/南光太郎が『許さん!!』をキメ台詞にしているように、スイート以外のプリキュアが口にする事もある。のぞみは現役時に一回だけだが、『絶対許さない』と言った事があるため、非道なボスガンすらもあからさまに怯ませるほどの怒気を発しながらの『絶対許さない』との啖呵は、のぞみがりんを失うのを何よりも恐れ、この場ではプリキュアとしての体裁よりも個人的な感情を優先させた証であった。そして、怒りの感情をエネルギーにして、シャイニングドリームへ二段変身する。
「ヌゥ……。小娘がッ!」
「アンタは卑怯よ!あたしを直接狙うならまだしも、りんちゃんを傷つけて、あたしが苦しむのを楽しもうなんて!!アンタなんて、剣士でも貴族でもない!光太郎さん……RXさんが出張るまでない、あたしが倒す!!」
ボスガンはバイオライダーのみならず、年端も行かぬ少女(少女というには語弊があるが…)にまで、自身が先祖代々受け継いできた騎士爵の称号と出自を否定され、罵倒されるという屈辱を味わった。曲がりなりにも、ボスガンとて、クライシス帝国きっての剣士のはずだが、RX/光太郎やダスマダーがあまりに強すぎる事などの理由で霞んでいる。ボスガンは慢心が多く、得物に頼る傾向が強いため、敗戦回数は多い。ストロンガー/城茂からは『あいつ、ゴマすりで出世したクチだぜ』と酷評されている。この時の戦闘がのぞみが錦から受け継いだ技能を初めて、100%発揮した例であった。得物は超獣戦隊ライブマンに修復してもらったスターライトフルーレであるが、刀身の材質がスーパー戦隊のテクノロジーとレーザーメタルで強化され、レーザーブレード機能がついていたりする。
「そのような細い刀身でこの電磁波剣を受け止められるものか!」
「アンタの攻撃なんかを受け止めるのに、刀身の大きさは関係ないっ!」
ボスガンは豪剣で鳴らしたが、この頃になると、得物に頼る比率が大きくなっていた事、のぞみ/ドリームが怒りに燃え、錦の肉体に刻まれていた力を上手く引き出せたという要因もあり、剣での対決は瞬く間にドリームが押していった。事前に黒江から剣技のコツを教わっていた事、最強形態である事でのスピードの差もドリームに有利であった。
「ムウン!!」
ボスガンは剣から電磁波を発し、拘束しようとするが、以前のバイオライダーとの戦いのように、エネルギーを逆に刀身に吸収され、弾き返される。
「バイオライダーとの戦いで、何も学んでないのが見え見えだっての!!」
ドリームはエネルギーを弾き返すと、改めてフルーレを変形させ、ツインブレード状態にする。
『ツインブレードッ!!』
(ココ、みんな…、あたしに力をっ!!)
『そぉぉぉえぇぇんざぁぁぁんッ!!』
「な、なんだと…!?」
アークインパルスと見せかけての双炎斬であった。フェイントでのタメからの一撃だ。黒江が教えたフェイント術の一つである。ボスガンはアークインパルス封じを考えていたが、双炎斬というフェイントをされては為す術もなく、炎に巻かれる形で呪詛を吐きつつ、逃げていく。
「おのれ、プリキュアの小娘の分際でこの私を…覚えておれ〜!!」
と、三下じみたセリフで逃げていくボスガンを尻目に、ドリームは応急処置を施された後は眠っているルージュをお姫様抱っこしながら、自前の翼でネメシスまで運んでいった。ドリームは報告したその場で上官である黒江に叱責されることとなった。
「お前、この先、りんに何かあったら、いちいちキレんのか?少しは冷静になれ」
「でも、先輩!」
「怒って何も見えなくなって、大事なモノを取りこぼしたら、後悔しても遅いと言ってるんだぞ」
黒江にもそういう経験はあるため、諭すように言う。かつて、智子と揉めた際、仲裁に入ったアムロに諌められて以来、黒江は諭すように叱る事を心がけている。ドリームは目を潤ませつつも、自分の主張は曲げたくないのか、拳を握りしめる。黒江は内心、平行線になりそうだと困ったが、そこに救世主がやってきた。
「後輩をそう叱ってやるな、綾香」
「茂さん、来たんですか」
「神さんや洋の奴と一緒にな。結城さんにメンテの日って言われてたんでな」
「あなたは…?」
「おっと、お嬢ちゃん。この姿だと始めてだったな。俺は城茂。バリバリの改造人間で、仮面ライダーストロンガーだ」
「あなたがあの時の仮面ライダー…」
茂は相変わらずのニヒリズムを感じさせる佇まいである。茂はスカイライダーの現役時代は猫を被っていたが、素は好戦的でニヒリズム全開のままだ。彼が定期メンテを終え(ナノマシンの調整や内部機器の一新など、自己修復機能には限界があるため、結城丈二、沖一也、本郷猛の三人がメンテナンスを行う。なお、沖一也は自前のチェックマシーンを持つが、その機械のメンテナンスも必要なので、メンテナンスは重要である。ZXは自己修復機能が強化されている最新のボディであるが、定期的なナノマシンの補充は必要であるので、その面でのメンテナンスは行っている。
「メンテ終わったんスか?」
「ああ。この嬢ちゃんと模擬戦した時に通常のダイナモが損傷してたようでな。結城さんが関心してたよ。俺のボディは頑丈だしな」
「そうですか。お前、やったな。この人の防御を僅かでも抜いたって事だ。だが…。」
「待て。嬢ちゃんの気持ちも分かるから、ここは俺に任せろ。」
茂は叱ろうとする黒江を諌め、自分が諭す役目を引き受ける。茂は基本的に兄貴分気質であるため、多くに慕われる。黒江も茂の言うことは素直に聞くため、黒江を立てつつ、諌める役目を引き受けたのだ。
「お嬢ちゃん、ダチ公を傷つけられて、怒る気持ちはよく分かる。だが、自分の思いすら守れない奴は何かを守れる訳がねぇ。熱くなるのは一向に構わねぇが、心の奥に冷静な、クールな自分を残して置くんだ。でなければ身近な大切な物を取り落とすからな、俺みたいなドジは踏むなよ?」
その時の茂はとても哀しげにも見えた。かつて、パートナーの岬ユリ子/電波人間タックルを喪ってしまった哀しみを未だに背負っているからだろう。自嘲的にも聞こえる暗喩を使い、ドリームを諭す。
「茂さん…」
「お嬢ちゃんよ、お前は転生から間もないガキだ。前世で持っちまった後悔があるだろうが、それはそれ、今は今だ。折角、神様がやり直せるチャンスをくれたんだ。その意味を考えてみようや」
茂はそれだけ言い、後の事は背中で語るようにして、執務室を出ていく。
「あの人が仮面ライダー……」
「そうだ。七号、仮面ライダーストロンガーこと、城茂。栄光の7人ライダーきっての風来坊だ」
栄光の7人ライダー。後輩ヒーローからも畏敬される最強のヒーローチーム。その筆頭格が茂である。黒江も彼を慕うため、彼に諭す役目を任せた。去った後に不思議と爽やかな感覚を残すのは、彼が生来持っていた面倒見の良さの為せる業だろう。
「なんか、すごく爽やかな感じがしました…」
「仮面ライダーは大自然の使者だからな、元来は。あの人の言葉を噛み締めていけよ」
この時の茂の言葉がその後、ダークプリキュア化しかけた際、のぞみを辛うじて押し留め、自身の長女の幻影に押しつぶされそうになりつつも、自身の選択を自己肯定し、前世の殻を破るきっかけとなる。
「あ、忘れてた。智子に伝えておけって言われたんだった」
「なんですかー?」
「智子の頼みだよ」
「智子先輩の頼みって?」
「実はな…」
「え、えぇ〜!?」
黒江はこの機会に、一年後の『大決戦』の伏線になる智子の頼みをドリームに伝える。
「と、智子先輩、変身願望あるんですか…?」
「あいつ、ストイックそうな面に見えんだろ?実はアレで結構ファンシー趣味なんだよ」
智子はストイックそうな外見だが、実は結構少女趣味で、今でも少女雑誌を読み漁り、少女漫画をこっそり集めているなど、かつてのしずかに似た『世間体を気にする』側面を持つ。
「意外ですー…。智子先輩はわたしの同期の間じゃ、カタブツのイメージですよ?」
「ガハハ、カタブツねぇ〜。俺らの頃にゃ有名だったんだがな。少女倶楽部にペンネームで投稿してるって…」
「綾香さん、のび太の撮った写真を届けに」
「フェリーチェか、入れ。今は面白い事話してるとこだ」
フェリーチェがやってきたわけだが、ここでフェリーチェからも、智子がしずかと意気投合し、しずかの成人後は歌劇団の友の会に入会している事、好きなスターの公演の時は有給を取って行っている事がバラされた。
「先輩、好きなんだ〜」
「しずかが見せてハメられた感じだよ。確か、しずかがのび太と結婚する前の高校生ん時だったな。だいたい、マフラーに“勇猛穴拭”とか書いて、強く自己暗示かけないと出撃出来ないくらい中身は少女だったんだから、今でもたいして根っこは変わってねーよ」
「のび太も苦笑いしてましたね、その時はたしか…のび太は風邪でのびてました」
「のび太、偶にイベント直前にコケる事あったからな、若い頃は」
「あ、フェリーチェ。みらいちゃんにフェリーチェの近況報告したら、すごくパニクられたんだけど…」
「す、すみません…」
トークイベントの際に野比家に泊まった時、ドリームはフェリーチェがのび太の義妹になっていた事を問い詰められ、朝まで質問攻めされたために疲れが取れず、もう二泊する羽目に陥った。みらいとしては、野比家に『中学・高校のセーラー服姿』と大学時代の大人びた私服姿のことは』の写真があったので、ドリームを問いただしただけだが、寝不足にさせられたため、ドラえもんに催眠機を借りる事態ともなった。みらいは言葉としては聞かされていたが、実際にその証拠を見ても、実感が沸かず、精神年齢が19歳過ぎなのにも関わず、ドリームを徹夜させるほど質問攻めしてしまった。モフルンもみらいを止められず、終わった直後に『ドリーム、大丈夫モフ…?』と同情するほどだった。
「ドラえもん君に砂男式さいみん機借りて、寝たよ。トークイベントで疲れてたから、よく眠れたよ」
「す、すみません…」
「スネ夫から聞いたぜ。そのイベント、話題になってるぞ、SNSで。メロディが殆ど紅月カレンだって」
21世紀で開かれたトークイベントでシャーリーは殆ど、キュアメロディというよりは紅月カレンとして愚痴っていたのもあり、SNSで話題になった。如何にも『仕事に疲れてます』オーラが出ているという雰囲気だったためか、某有名製薬会社が看板商品の滋養強壮ドリンクを64Fへ卸すと申し出ているという。
「ほれ、日本から直送の栄養ドリンクだ」
「先輩、見返りを求めたんですか、先方は」
「うちのCM出てちょ〜だった。引き受けたけど、戦闘が終わってからな」
「うららを誘おうかなぁ」
「先方の都合と折り合いがついたらな。お前とピーチに出て欲しいんだと」
「あのフレーズの練習しとくべきですかね?」
「やっとけ。広報は大喜びだそうだ」
黒江はマネジメントでも才能があるため、隊のPXに卸させる代わりにプリキュアをCMに出す取引を行っている。ちなみに、戦車道世界にいる春日野うらら/キュアレモネードは『来れれば、私がCMとかやりますよ。慣れてますから』と言っているが、合流は大洗の廃校騒動が尾を引いたため、デザリアム戦役までずれ込む。ちなみに、美々野くるみ/ミルキィローズは戦車道世界で最初に覚醒を遂げた戦士であり、カール自走臼砲を奪取する際に変身するなど、先行して暴れている。
「……ん?タブレットに電話?…はい?…うわっ!?くるみ!?」
「キュアベリーから番号を聞いた。お前という奴は…」
「あれ?くるみ、そーいう口調だった?」
「転生先の事情という奴だ。お前も分かるだろ?」
ミルキィローズは転生先が大洗女子学園の歴女チームのカエサルだったので、口調が完全にカエサルのそれとなっている。そのため、生前よりかなりフランクな印象を与える。
「あれ?もしかしなくても、今は地球人……だよね」
「当たり前だ、馬鹿者」
「どこからかけてるの?」
「戦車道の会場からだ。西住隊長の学校を廃校から守ってきたところだよ」
「変身できるの?」
「今しがた、役人を脅してきたところだ。あの木っ端役人の小細工ごとき、我らなら造作もなかったが」
「ゴメン、ハートをすぐに呼んじゃって」
「試合が終わったから、構わんさ。閣下の援助物資のおかげで完勝できたが、一つショックなのがあってな。相手のチームのリーダーが私を知らなかったんだ〜!」
「だって、ほら…島田愛里寿ちゃんって、まだ子供だよ?あたしたちの現役時代には小さすぎて見てない公算が…」
「くそぉーーー!!」
「あの、くるみさん。愛里寿ちゃんは多分、私達に興味が…」
「その声は…ありすちゃん?」
「お久しぶりです、ドリーム」
西住みほが話に加わった。かつてのキュアロゼッタ/四葉ありすとして。彼女も役人をキュアロゼッタとして脅す側に立ち、役人は上層部に切り捨てられそうと伝える。立場上、廃校騒動が終わらないと動けなかったことを侘び、先行してハートを向かわせたと告げる。彼女は軍略の天才であるため、現在ではキュアピースと双璧だろう。
「あ、黒江さんと代わってください。これからの作戦を伝えたいので」
「うん。わかった。先輩、さっそくですか?」
「そうだ。だが、あいつのカーチャン、智子に似てるから、俺じゃ吹いちまう。智子を直に行かせる」
「そんなに似てるんですか?」
「ケイが帰るなり爆笑だよ。あいつを30の終わりくらいに老けさせたら…的な姿だよ、西住のカーチャン。えーと、あった。ケイの写真だが…」
『ぶっ!』
黒江、フェリーチェ、ドリームの三者は笑いをこらえきれない。西住しほの風貌は智子を老けさせたら…を地で行く外見だからで、他人の空似にしても似過ぎである。
「お母さん、そんなに似てますか?」
「目つき以外は双子を疑うレベルだぜ、みほりん」
「うーん〜…」
黒江の冗談めかしてのみほりんという単語に苦笑いのみほ。受話器越しに黒江、ドリーム、フェリーチェの三者の吹き出す声が聞こえるからで、カエサル(くるみ)と共に苦笑いするしかなかった。なお、三人は全員、笑いを必死に堪えてうずくまる(黒江は机に顔をうずめ、腹を抱える始末だ。笑い上戸らしい)始末であり、みほは苦笑いするしか選択肢がなく、カエサルは若干、呆れつつも、三人に同意はするのだった。
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