外伝その413『ユトランド沖海戦の再来11』


――キュアドリームは模擬戦でなんとか勝利したわけだが、予想外過ぎた応酬でスタミナをかなり消費してしまったため、模擬戦はメロディとハートに託し、空母に帰投した。

「まいった。板谷さんが八神流の使い手なんて…。予想外過ぎて、疲れた〜…」

「まさか、あいつも使えたとはな。ご苦労」

「先輩、どうでした?」

「予想より頑張ったじゃないか。板谷が使えたのは俺も知らんかった。海軍め。公表しとけよ」

甲板に出て、悪態をつく黒江。海軍航空隊はプリキュアに対抗しうる板谷の技能を公にしなかったことを後日、国防会議で責め立てられる事になった。これはあまりに超人的な技は上層部が一括で公表を差し控えていたからだが、レイブンズの一件で立場が悪くなった海軍航空隊にはさらなる打撃となった。最も、草薙流古武術の陰の流派たる『八神流』は継承者の板谷が隠していた事もあり、海軍の誰も知らなかったため、責めようにも『責める相手』がいなかったのだが。

「海軍の上は国防会議でどういいわけするんですかね?」

「航空本部長は晒し者にされそうだな。個人の戦果は『基本的には認められることはなく、部隊戦果として記録されていた』のが海軍のここ数年の方針だったし、志賀とかはそういう教育を受けてきてる。だが、今となっちゃ、単なる邪魔者だよ」

扶桑海軍は対外的には『個人で撃墜王と言い合うのは勝手で、合同部隊に派遣される人員のみは人事的な都合で申告戦果を公式と認める』とする二枚舌な方針を1940年代前半から通してきた。これは七勇士の過半数が陸軍系の撃墜王だったことへの対抗心、坂本達『クロウズ』の戦果を誇示し、世代交代を内外に知らしめるためであったが、クロウズも高齢化したはずの時代にレイブンズがかつてと変わらぬ神通力を以て現役復帰を果たしたことで、本来はクロウズ後の時代を見越したはずの教育方針は時代にそぐわなくなった。皮肉にも、戦争が激しくなり、英雄が必要になる時代を迎えたため、海軍航空隊の同調圧力は国防会議でも問題視され、空軍への統合論が取り沙汰されるに至る。若本は七勇士の海軍系の中で唯一、参謀にもならず、一線で戦い続けたが、それは黒江の腹心に西沢が何食わぬ顔でいることへの反発もあったが、坂本の親友ポジションをすっかり奪われたことの嫉妬も大きかったりずる。

「若本先輩、なんか不機嫌そうでしたよ、この間見かけましたけど」

「あのガキ、相変わらずだな。坂本を西沢に取られて不満なんだと」

「へ?」

「あいつ、講道館で一緒だったらしくてな。後から入ってきて、三羽烏に収まった西沢に妬いてるんだよ」

「意外ですね、剣以外に興味なさそうなのに、あの人」

若本は坂本の親友を自負していたので、後からぽっと出で現れ、ちゃっかり坂本を負かし、リバウ最強の名を欲しいままにし、黒江の腹心の一人と見做されている西沢に嫉妬していた。若本は対抗心が昔から強いため、Gウィッチ化後も黒江たちからは『子供扱い』のままだが、若本が根本的に張り合う事が生きがいな人間で、子供っぽさを多分に残すからだろう。西沢は対照的にGウィッチ化後は黒江の腹心として動き、落ち着いた態度を見せる事が当たり前であり、かつての自由気ままさは鳴りを潜めた。黒江の信頼が篤い点も若本からの嫉妬の理由だが、これは若本が黒江に追いつこうと鍛錬を続けていたための対抗心に由来する。

「あいつ、俺を目標にしてるって言ってるが、あいつは叩き上げだから、俺とは質が違うんだがな」

若干困っている黒江。自分は正規の士官教育を受けているため、目標にするのはいいが、士官教育の空中指揮の理論は若本の経験則には当てはまらないとしている。

「あの人の戦ぶりはどうだったんですか?」

「事変の頃はまだガキだったから、イタズラ坊主でな。よく智子を『陸軍の粋がってるお嬢』って言ってたな」

赤松がお嬢と呼んだのが始まりになり、智子の風貌がそれっぽいことから、智子は事変経験者の間での渾名は『お嬢』であった。また、1943年頃に智子の消息を昭和天皇が訪ねたことで一騒動になり、武子が欧州から呼び出された事は扶桑陸軍の参謀本部の部内では記憶に新しいという。

「智子のやつの覚醒は俺より一年早かったらしい。それでスオムスで無双しちまったから、お上が航空総監を呼び出して叱責したんだと。ケイから聞いたが、フジの覚醒はその時にお上に問いただされたストレスかららしいぞ」

「気が気でなかったんでしょうねぇ…」

「エイラから聞いたが、あいつ、アウロラと組んで無双したらしいのよな。それで昔の神通力が戻ったって、マンシュタイン元帥が諸手を挙げて大喜びでな。モンティはその逆になったってぼやいたがな」

「智子先輩、それで白薔薇勲章を?」

「ああ。エイラとニパが最初に俺たちの本当の力を見たガキになるな。」

「なるほど」

「で、今は菅野が芳佳の相棒を自認してんだろ?覚醒前のリーネが妬いてな。そこは黒田に感謝だよ」

「ベクトルが別の向きになっただけじゃ?」

「まーな。ま、お前の覚醒も急だったからな。智子も驚いてたぞ」

「無我夢中でしたけど、脳裏に昔の記憶が走馬灯のようにフラッシュバックしたのは覚えてますよ。嬉しかったですよ、正直」

フラッシュバックをきっかけにのぞみとしての自我意識が覚醒したこと、そのままプリキュアになり、かつての極め技で屠ったことで自分の今際の際の願いが叶った事を実感し、嬉しかったと述懐するキュアドリーム。錦の立場を継いだのは、錦の肉体を使うことで黄泉帰ったことへの贖罪意識もあると告白した。

「錦の意識は徐々にお前と同化していくはずだ。その過程で色々起こるだろうが、天姫のことは俺たちが処理する。電話ならいいが、中島家に知られると不味い」

「姉貴が調べるはずですしね。姉貴に知られたらヤバいですよ」

「機密指定にするが、錦の姉貴は軍部に顔が効くからな」

黒江はその事を危惧するが、実際には天姫は事の次第を知っていて、身を引いたのである。自分の実力では偉大な先輩達の足手まといになると考えて。中島小鷹(中島家長女)にも事の次第は知らせず、手紙や電話のやり取りに留めることで穏便な成り行きになる事を願ったのである。中島家が『次女が実質的に別人となった事』を認識しなかったのは、諏訪天姫が事の全てを自分の胸にしまったからであった。

「天姫のヤツ、薄々とあたしの事に気づいてるっぽいんですよねぇ」

「あいつ、身を引いたな」

「え?」

「お前がプリキュアになれば、あいつの実力じゃ足手まといだし、俺たちが復帰すれば、あいつは名家の七光りって誹りを受ける。それを分かってたから、錦の姉貴に言わなかったんじゃないかな」

「そんな気はしてましたけど、まさか」

「あいつに、なんかお歳暮を送ってやれ。アイツがG化しないかぎり、俺たちと直接の関わりは無くなるからな、これから」

「分かりました」

「お、シャーリーが母艦乗りを落としたな」

「みたいですね」

「あいつ、MVSと蹴りを使うからな。板谷みたいな連中はそうはいないから、普通はああなる」

「あの子は高速戦闘が得意ですからね」

「生前はロッド使いだったくせに、今は輻射波動とMVS使うだからなー。相方が見たら卒倒しそうだぜ」

「奏ちゃんが見たら、泡吹きますね、あれ。情け容赦ないし」

「紅月カレンとしての攻撃性が強く出てるんだよ。前世が前世だから、日本に住みたいとか言ってる。お前とはその前から因縁があるのは分かってる。だから、お前と組ませたんだよ」

「知ってたんですね」

「当たり前だ。のび太が調べてくれるんでな」

「反則ですよぉ」

「のび太は漫画オタクだが、両親がオタク趣味に理解が無くてな。時々、俺が漫画やゲームを買い与えてたんだよ、ガキの頃は。俺が買い与えたものなら、両親もとやかく言わないからな。その関係で、漫画評論家になろうとしてた時期もあったぞ」

のび太は雲の王国の冒険やアニマル惑星の冒険を経た後は徐々に環境問題に興味を持ち、最終的に環境省へ入省した。子供の頃は漫画評論家を夢見た事もある。のび太としずかは片親が厳格な躾をしていた反動もあり、息子の趣味に寛容であった。

「へぇー…」

「ま、のび太の両親は良くも悪くも昭和後期以前の価値観で育ってきた世代だ。バブル崩壊後もおふくろさんがバブル期以前の価値観で教育してたのが良い証拠だよ」

「のび太くん、それ愚痴ってましたよ」

「中高の六年位は大学受験のためだけに費やさせたからな、おふくろさん。だから、大学の四年間からは放任主義に変わったのさ。のび太が愚痴るのは、多感な時期に家族との思い出が殆どないからさ」

野比玉子は息子の六年間を大学受験の準備期間にした事への罪悪感は強かったようで、大学に在籍中の頃から放任主義に変わり、のび太がモータースポーツに傾倒する事も許した。2020年代になる頃には『人のいい老婆』として、穏やかな余生を送っている。それはのび太が大学に入った事で『肩の荷が下りて』からは息子に厳しくする必要が無くなったからだろう。息子への『アメ』の役目を夫や親戚、黒江達に任せ、自分は『ムチ』であろうとした。それが受験戦争時代に学生であった玉子が選んだ教育だった。義母にあたる『のび太のおばあちゃん』に憧れつつも、厳しい教育を息子に施したが、大学受験に息子の六年を犠牲にさせたという罪悪感も強く、その贖罪意識から、大学時代からは放任主義になったのだろう。

「なんで、そうなったんですか」

「後で言ってたが、のび太が浪人することが目に見えてたからって言ってた。しずかと同じ大学に行くって言い出した時から、とにかく勉強させたって。入った後は好きにさせたのは、その償いだろうな」

のび太はしずかと同じ大学を出ている。息子が大学生になった後は放任主義に切り替えた玉子。そのため、のび太が本当の意味で青春を謳歌したのは大学時代〜結婚前とごく短期間になる。のび太が30代に入る頃になっても気が若いのは、この事が強く影響している。しかしながら、その頃にはノビスケが学齢期を迎えるので、しずかに『落ち着いてほしい』と言われているため、あまり動けなくなるとは言われている。彼は30代からは『黒幕然』とした動きを取っていくが、家庭的事情が理由であった。

「だが、あいつもそろそろ30代になるから、カミさんから落ち着いてくれって言われてるみたいでな。これからはマネジメントに仕事の主軸を移すそうだ」

「大変だなぁ」

「のび太は表向きは普通の公務員だからな。倅が学齢期になるから、共働きとは言え、のび太に落ち着いてほしいんだろうな」

のび太が30代に入る頃に裏稼業の主軸をマネジメントに切り替えたのは、そういう事情であった。しずかは表向きは清楚な人物を通しているが、実際はかなり気性が荒い(息子の気性が荒いのは彼女の影響であろう)。それはのぞみも知っている。結婚後は尻に敷かれ気味なのび太に同情する二人であった。








――2019年も終わり、2020年を迎えた日本。前年度に問題になっていた軍内のいじめ問題と戦果公認問題は当時の当事者達の多くが退役済みである(死亡者もいた)、既に黒江が中将(将)に昇進済みであるという事を差っ引いても、軍内の同調圧力によるいじめ、それを誘発した責任の所在をハッキリさせるとし、当時の上官であった江藤への訓告処分が正式に決まり、退役済みのいじめの加害者達の恩給のマイナス査定が決議された。これはかなり穏便な処分で、当初は加害者の過去の軍籍抹消と恩給受給資格の喪失も検討された。だが、血の気が多い軍人達の反乱防止と困窮防止のため、かなりトーンを抑えての処分が下された。だが、これが図らずもクーデターの遠因となり、主犯の海軍航空隊の独立性が太平洋戦争でかなり希薄化する理由付けとなる。また、扶桑航空隊に根強い『エースなどという称号、制度は扶桑においては、公的に一切存在しない』という認識もカールスラントの鼻っ柱を折る政治的意図のもと、ダイ・アナザー・デイの長期化を大義名分に、正式に撃墜王が公認化された事で一掃されていく。(自衛隊側が5機撃墜で撃墜王と認定されていくため、その対抗意識が大きかった。また、マスメディア向けに宣伝が必要になった都合上、撃墜王がいないと翌年度の予算が減るのだ)――




――メネシス 坂本の執務室――

「やれやれ。海軍の若い衆は血気盛んでいかんよ」

「プロパガンダの必要もわからない子が増えたわね。あの子(志賀)が疎んじられてる理由がわからないのかしら」

「醇子、私達の時代が終わるのを見越しての海軍の方針だったそうだ。だが、黒江たちが神通力をそのままに復帰したんで、御破算になった。戦力の平均化よりも、最精鋭部隊のほうが政治的に必要とされる時代を読めん阿呆どもが増えたのは海軍航空の怠慢だよ」

「そこは隊長も愚痴ってたわ」

「あの人は人を育てる事に定評があったからな。それが最精鋭ばかりの部隊の隊長に祭り上げられたんだ。面白くないんだろう」

「時代よね」

「お前の前世がプリキュアのほうが衝撃だよ、私には」

苦笑いのキュアマーメイド。ここ最近、プリキュアとして活動している竹井だが、幹部とは言え、煩わしい事務作業から解放されたため、割合に気楽なポジションである。

「まさか、ウチから何人もプリキュアが出るとはな」

「偶然よ。代もバラバラで、チームの誰かどうかは欠員状態だもの」

「とは言え、仮面ライダーらに引けを取らない戦闘力を出せるというのは喜ばしいことだ。黒江達が強すぎて、周りが霞んだのが問題の発端だからな」

「問題はもっとも穏便に?」

「ああ。日本としても、村八分になりかねないほどの反応が出たのは予想外だったらしくてな。それと、退役者まで裁いたのは軍の若い衆の反発を招いている。統合戦闘航空団の殆どを強引に統合した事そのものは強い反発を招くのは予測していたようだがな」

「他の方法はなかったの?」

「転生者など、どこの部隊でも持て余すだろう?今次作戦のみの合同部隊とする案が有力だったが、カールスラント空軍の権威がガタ落ちな上、転生者が立て続けに現れるわ、スーパーロボットが使われて、各所にウィッチ部隊を置く意義が薄れた事もあって、統合案が採択された。転生者の時点で、通常部隊から私達は切り離されたわけだ。黒江の事があるから当然だが、寂しいものだ」

スーパーロボットが戦うことで、怪異に対して分散配置を行う必要が薄れ、64Fによる統合戦闘航空団の取り込み(乗っ取り)はなされた。統合戦闘航空団当時の編成がそのまま維持されたかと言うと、そうではなかった部隊も多い。502はサーシャが不祥事で離脱し、506はロザリーが外れ、504はフレデリカが参謀に抜擢されて離任し、赤ズボン隊は療養、新設されていた507は前身のいらん子中隊当時のメンバーのみが属しているなど、意外と欠員は多い。なお、501も書類上はルッキーニとリーネが特務に抜擢されて離任し、サーニャがオラーシャ軍を退役した扱いであるため、書類上は入れ替わりがかなり起こったとされている。

「書類上はリーネとルッキーニを特務に引き抜かれた扱いとはな。なぜそうした?」

「仕方ないわ。今のあの子達のパーソナリティは別人だもの。サーニャさんも退役した扱いにしたし、色々と都合が悪いからよ」

「お前、プリキュアとしては海藤みなみを名乗るのか?」

「ウチは軍人の家系で、お父様はカタブツだもの。仕方ないのよ、前世での自分の名前だから、偽名ではないし」

「夢原のことが機密扱いなのは?」

「錦さんの肉体の意識を上書きして黄泉帰ったからよ。双方の記憶はあるのだけど、意識は完全にのぞみのそれが主人格になった。そんな事、家族に言えると思う?」

「う、うぅーむ……」

「それに諏訪さんには、彼女がGにならない限り、このことは伝えられないし、仕事での接触もさせられないわよ」

「そうだな…。黒江達は階級もあるから、好きにさせるが、最近の若い衆が奴らの武勇伝を知らんとはな。参ったよ」

「有望な新人を統合戦闘航空団に送り込む事も無くなったし、通常は興味がない事でしょうしね」

この頃には統合戦闘航空団の統廃合と運用方針転換で『有望な新人を補充要員として派遣する』事も無くなり、ひかりの同期である『三隅美也』などの派遣の話も無くなり、既に派遣済みのひかり以外の同期は高等工科学校での『再教育』対象とされたため、ウィッチの軍雇用形態が大きく変容し始めた象徴とされたのである。

「やれやれ…」

呆れる坂本。黒江達三人のストッパーを自分が担っている事には苦笑しつつも、やっと自分の的確なポジションを見つけられた嬉しさもあった。坂本の執務室には、事変当時に四人で取った写真が飾られているのがその証明だった。








――連合艦隊は航空隊の訓練をしつつ、敵艦隊との決戦に向かう。潜水艦隊と艦娘部隊の時間稼ぎで多少の時間的猶予が与えられたとは言え、敵の航空隊の物量は尚も圧倒的であることから、対艦ミサイルによる飽和攻撃が決議された。主な目標は敵護衛空母。護衛空母は攻撃に弱く、総じて『捨て駒』扱いであるため、ジープ空母という渾名はウィッチ世界では蔑称であった。扶桑はそれに相当する軽空母と特設空母が空母としては退役したため、艦種としては廃止されている。後世の記録によれば、『対艦ミサイル一発で大破してしまう』という脆弱性が明らかになり、第一線では用いられなくなったという――









――この時のブリタニア空母機動部隊は『いないよりマシ』程度の数ではあったが、艦載機はジェット機に更新されていた。空母の数が史実より少なかったことで更新が成ったのである。ただし、まともな空母機動部隊としての出撃は今回が初めてであり、戦力としての有効性は疑問視されていた。日本連邦は米国と唯一、まともに空母戦を戦った自負から、ブリタニア空母機動部隊を見下していたものの、英国の持つ豊富なノウハウを伝授される上、レシプロ時代とジェット時代の間に致命的な『断絶』がないため、その点が唯一の優位点であった。制空戦闘機は機銃装備仕様に改良されたシービクセンであり、自前の本式の艦上戦闘機がジェット第二世代で止まってしまった事に衝撃を受けつつも、配備を進めさせた。艦載機の質においては、扶桑に次ぐものとなり、この時代では世界第二位の質と言えた。ただし、史実より空母の数が圧倒的に少なく、インプラカブル級航空母艦すら存在していない有様であり、オーディシャス級航空母艦の建造が緊急で続行され、さらなる大型空母の建造が決められた。だが、それらが竣工するには年単位の時間が必要とされたため、相当に無理を重ねた在来艦の改装で場繋ぎをするしかなかった。ブリタニアにできる最大限度の努力はそんなものだった。戦艦の保有数を減らし、空母を増やす事はブリタニアの風土においては難しい事の表れであった――







――二カ国連合艦隊は航空隊を訓練しつつ、決戦に備える。政治的にはウィッチの従来通りの用兵にトドメがさされる戦と記録される海戦は確実に迫っていた。巨万の航空戦力にどう立ち向かうのか?その議題が連合艦隊を悩ませた。ウィッチ達の多くは文字通りの巨万のリベリオン海軍と海兵隊の航空戦力の威容に慄く事になる。ミノフスキー粒子でお互いに遠距離索敵が難しいため、そこはこの時代と大して変わらない。M粒子はウィッチの索敵魔法を阻害する効果があるため、ティターンズも積極的に散布するため、ナイトウィッチの利点は殆ど消えてしまったと言っていい。また、最高速度が時速650キロを超える世代の戦闘機との交戦経験がない者が多かった事もウィッチ隊の苦戦の理由であり、この苦戦が従来通りのウィッチ用兵に事実上の終止符を打つ事の伏線となるが、Gウィッチ達の奮戦のおかげで『不要物』と見做されなかったのも事実であり、生き残るのに必要とされる一人あたりの戦闘単位が大きく引き上げられた事が理由であった。敵機の主力はF6FとF4Uのままだ。『F2Hバンシー』や『F9Fクーガー』などのジェット艦上機はまだ現れていなかったが、それまでF2Aが多数派であった時代より圧倒的に高性能であり、そこも二カ国連合艦隊の空母機動部隊ウィッチが苦戦を強いられてしまう理由であった――



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