フェミリンスの呪縛を振り切ったイリーナとエクリア。
 死すべき運命に抗ったリウイとセリーヌ。
 そして――今も抗い続けるセリカ。

 彼らには、私やアイドスにはない力がある。
 それは創造神が人類にのみ与えた“自ら運命を切り開く力”
 魔神も天使も、僅かに自由意志を与えられたエルフも。
 私やアイドスを含めた、神々ですら持ち得ない人であることの強さ。

 私たち神々は“世界の律”に縛られ、その運命に逆らうことはできない。
 しかし“人類”の末裔だけがそれを変える力を持っている。
 ただ発現させられる者は限られているが。

 ――それは今、私に剣を振るうこの騎士も同じ。

「はぁっ!」

 鋼の甲冑に、真紅のマントはマーズテリア騎士団の証。
 まだ少年と言っていい幼さを残す容貌だが、緑色の目には強い意思が宿っている。
 ……あの目、私は以前何処かで見た気がする。

「今のうちにそいつから離れて下さい!」

 そんな言葉を向けられて、困惑したような表情のエクリア。
 なるほどセリカを狙ってきたわけではなく、私の魔力を感じ、或いは私の特徴を知っていて魔神と看破。
 民間人と思われるエクリアに近付く私を退けようとしたわけか。
 確かに彼女が私の使徒とは思うまい。
 ……だが、少し不愉快だな。

 繰り出される力強い斬撃を片手間に受け流しつつ、その姿を改めてよく見る。
 顔に焦燥が浮かんでいるのは、自分が遊ばれていることを自覚しているからだろう。
 そうと分かって私に斬りかかってきたのは馬鹿者としか言えないが、その気概は賞賛に値する。
 だが、焦り過ぎだ。

「……」

 こちらに攻撃される前に倒すしかないと思っているのだろうが、連続した斬撃は単調で読み易い。
 牽制の一つもあるわけではなく、明らかに経験不足だ。

「柔よく剛を制し、剛よく柔を断つという言葉を知っているか?」
「……何をっ!」
「どちらか片方だけでは意味がないということだ」

 アイドスを片手に持ち替え、受け流した勢いを利用して腹に拳を一撃。
 相手の出方が掴めぬ以上、余計な諍いの種を蒔く理由はない。
 それに中々興味深い人間でもある。

「……倒れる……わけには……」
「ほぅ、かなり加減をしたとはいえまだ立つか」
「マーズテリアの……騎士として……魔神などに……負けるわけにはいかない……ッ!」
「……いいだろう」

 最後の気力を振り絞るように剣を構える男。
 その姿に感心しながら、私は瞳を閉じる。
 すうっと、感情が抜け落ちていく感覚。
 目を開け、見据えるのは一人の騎士。

「――――」

 エクリアの息を飲むような気配。
 その一方で対する騎士は後退りする。
 私の発する殺気に中てられたか。
 だが全力ではないのだから、これで怖気づいて貰っては困る。

「……くっ!」
「大した精神力だ。人間にしては……いや、人間だからこそか」
「何を、言っている……!」
「もう少し付き合ってやるのも良かったが、時間切れということだ」

 最後にその姿を見たのは、確か狭間の宮殿に踏み入る前だっただろうか。
 彼女はセリカと共にある様子だが、敵意がないことから戦争をしにきたわけではないらしい。
 それに私とあいつを捕えるというのならば、軍団単位で連れて来なければ意味がない。

「お止めなさい」

 勝てないと知りつつ、尚斬りかかろうとする若年の騎士を止める声。
 すっと耳の奥まで入り込み、従わずにはいられなくさせるような、涼やかな音色だ。
 その影響かは分からないが、草原を吹き抜ける風すら静まり辺りに静寂が訪れる。
 姿を現したのは……

「お久しぶりです、魔神……いえ、古神と呼んだ方が?」

 ――マーズテリアの聖女ルナ=クリア。

 彼女ほどの大物が何故ここにいるのかだとか、疑問は多々ある。
 加えてマーズテリアは私のことを知っていると、敢えてここで宣言する理由も分からない。
 幸い村人はいないため滞在に支障はないだろうが……厄介ごとに巻き込まれる予感がした。





 聖女の発した言葉に、彼女の周囲を固める騎士たちに動揺が奔った。
 ……無理もないな。
 魔神でさえ脅威というのに、邪神と称される古神に相対した者などいないのだろう。

「魔神だろうが古神だろうが、それは所詮人間が付けた呼称に過ぎない。好きに呼べ」

 仮にあいつを“父”とするのならば、私は古神に違いない。
 しかしそんなこと本当にどうでもいいことだ。
 何と呼ばれようが、私が“ルシファー”であることに変わりはない。

 しかしそんな私の発言が気に食わなかったらしい。
 一人の騎士が何か言おうとして聖女に止められる。
 彼女は私の物言いに苦笑しながらも、神の使徒たる威風を以て相対した。

「お前の方こそ、クリア・スーンとでも呼んだ方がいいのか?」
「……私は貴方に幼名など語りましたか?」
「セリカが気になるようだったので調べた」
「それは本当に?」
「嘘だ。昔、ハイシェラが暇潰しに調べていたそうだ」
「貴方は……ふふ、そうですか。しかし私のことはクリアで構わないと、そう言ったはずです」

 私と彼女の会話に唖然とする周囲の者たち。
 そんな中、はっとしたように漸くエクリアと騎士が動き出す。
 騎士の方はエクリアを気にしつつも、ゆっくりとクリアの傍へ。
 エクリアは、

「――ルシファー様!」
「大丈夫だ。……私はあいつほど信じる気はないが、ルナ=クリアに敵意はない」
「ルナ……っ!」

 眼前にいるのがマーズテリアの聖女であることに驚いたのだろう。
 再びエクリアは動きを止め、思わずといった様子で彼女の名を口に仕掛けた。

『随分と懐かしい人間に出会ったわね』
『……お知り合いですか?』

 そういえば、エクリアとセリーヌにはアストライアのことしか話していなかったか。
 ……机上の空論を語る意味もあるまい。

『友人……というほどの仲なのはセリカの方か。古き戦いで少し世話になった相手だ』
『彼女の尽力が無ければ、今頃私たちは中原諸国全てに狙われていたでしょうね』

 私とアイドス、エクリアがそんな会話をしている間に、クリアは傷を負った騎士に治癒魔術を施す。
 そして、独断専行だったのだろう。
 厳しい表情で叱責を加え、何かしらの命を下したようだ。

 それからクリアに遅れること数刻、セリーヌとカーリアンを連れたセリカが現れる。
 遺跡に出向いていたようだが、おそらくその過程で聖女に遭遇したのだと思う。

 闇夜の眷属であるカーリアンが至極嫌そうな顔をしているのは、マーズテリアだからだろう。
 しかしセリーヌのあの不安そうな表情は……
 ――っと、それに気付いたらしいセリカが、何を思ったのか髪を撫でる。
 驚いたようにセリーヌはセリカの顔を窺い、一度だけ頷いた。

「話があって俺たちを探していたらしい」

 さて、いよいよ以てきな臭くなってきた。
 マーズテリアの聖女がわざわざ出向く理由。
 余程のことがあったのだろうが……。

「若い子が先走ってしまったようで、申し訳なかったわ」
「お前が謝罪してどうする。そいつはマーズテリアの騎士として戦ったのだろう?
 尻込みするような腑抜けより好感が持てる」
「聖女としては頭を下げるわけにはいかないけれど、私個人としての謝罪は別よ」
「……相変わらず可笑しなやつだ」

 穏やかに微笑むその様は、やはりどこか似ていると感じざるを得ない。
 他でもない、アイドスの見せる仕草にだ。

「セリカの紹介で酒場に向かっていたところなのだけど、同行をお願いできるかしら」
「……いいだろう」

 私の了承の言葉を聞いたクリアは、体をエクリアの方に向ける。
 セリカたちに接触したということは、すでにエクリアが私の使徒であることは知っているはずだが。
 しかし結局彼女は、軽く挨拶をしただけで何も言うことはなかった。
 そのまま騎士たちを従えて歩き始める。

「待て。マーズテリアの騎士」
「私のこと、ですか……?」

 クリアが治癒を行ったとはいえ、体力の方は回復していないのかもしれない。
 やや辛そうにしながら彼は返事をした。

「名前を何というんだ?」

 戸惑っているのが、手に取るように分かる。
 私自身、何故そんなことを訊いたのか分からないのだから当然だ。
 彼は一度確認するようにクリアを見て、

「……リーフ・テルカといいます」
「テルカ……それとその目……ああ、そうか。シュミネリアの血縁か」
「私の一族を知って……いえ、ご存じなのですか?」
「お前の一族が、私の系譜などということはないから安心しろ」

 そんなことを私が言うと、興味深げに話を聞いていたクリアが突然笑い出した。

「御免なさい。でも、貴方も随分と変わったわね」
「そうか? いや、そうかもしれないな。……リーフ・テルカ、お前の名前確かに覚えておく」
『本当に気まぐれな人ね』

 アイドスのからかうような言葉を聞きながら、クリアたちを追い抜くように歩き始める。
 後方でセリカとクリアが何か言葉を交わす気配を感じたが、それは無視した。
 積もる話もあるだろうし、仮に私のことを話題にしているのならば、どうせ碌なことではないだろうから。





 向かった酒場『迷子の羊と羊飼い』亭の周囲をルナ=クリア一行が固め、村人を締め出してしまった。
 元々マーズテリアを疎む土地柄なのだが、屈強な騎士という武力と多額の謝礼金で事無きを得たらしいな。
 決していい感情は持たないだろう。
 だからといって逆らう気も……主人に至っては思わぬ収入を得たわけだから何か言う気も起きないようだ。
 だが場合によっては、相手に何の配慮もせずにこのようなことを実行する神殿の人間もいると聞く。
 クリアたちは立場から考えても、良心的な部類に入るだろう。

 ルナ=クリアとセリカが向かい合うように座り、私はセリカの隣に。
 そして後ろにそれぞれの従者が控え、カーリアンは居心地悪そうにしながらも私の隣に座るという構図で会談は始まった。

 まず捕縛のために出向いたのではないことをクリアが告げる。
 それは予め予想をしていたことだから驚きはない。
 怪訝に思ったのは、その後のクリアの言葉――マーズテリアから私たちに依頼があるというものだった。
 現神が神殺しや魔神と一時的とはいえ手を組む。
 それが前代未聞なのは言うまでもない。

「貴方たちには私達と一緒に“ベルゼビュード宮殿”へ向かって貰い、そこを支配しようとする闇の者たちを排除して欲しい」
「ベルゼビュード宮殿? 聞いたことがないな」
「最近になってオウスト内海上に突如浮上した宮殿よ。古神が住んでいたと伝えられています」

 ベルゼビュード宮殿は、レスペレント地方の地下を走る大迷宮の心臓部。
 ここを支配することはレスペレントを支配したも同じこと。
 光の神殿も調査に動き出したが、強力な魔神も狙っているため迂闊な人材を派遣できない。
 そこで、未知の魔神と戦うだけの経験と力を有する私たちを選んだのだとクリアは告げる。
 ……しかしまさか、ベルゼビュードの名をこんなところで聞くことになるとはな。

「神殿が手をこまねくような魔神とは……」
「深凌の楔魔……御存知?」

 エクリアの確かめるような問いにクリアが答える。
 セリカが砂漠で剣を交えたことを言うと、リーフは素直に驚きを示したが、クリアは笑っただけだった。

「復活した彼らは北ケレースを掌握するに留まらずレスペレント、ひいては西方諸国をも脅かす存在になる。
 それは、メンフィルとて望むところではないと思いますが?」
「……私に訊かれてもどうしようもないわ。
 メンフィルの国王はリウイであって、今の私はメンフィル軍に籍を置いているだけの旅人だもの」
「……そうですか。ならば、それは今は置いておきましょう。
 我々マーズテリアとしては、魔神の伸張を望みません。よって、何としても宮殿の掌握を食い止めたい」
「しかしお前が言ったことをメンフィルが気付いているのならば、かの国の王が動くだろう」
「メンフィルが軍を派遣したという報は既に入っています。……ですが」

 何か言い難いとでもいうような態度を見せるクリア。
 意を決したように再び口を開き、

「メンフィル王が魔神らと接触した形跡があり、メンフィル王が魔神らと密かに連携している可能性も否定できない。
 同盟を結んだとは公言していないけれど、そうかもしれない。
 となると北ケレースとレスペレントに闇陣営の一大勢力が出来上がり、次は西方諸国を脅かすでしょう」
「リウイがねえ……イリーナ様がいる限り、それはないと思うけど」
「確かに、私はメンフィル王と会談の場を持ちましたが、彼個人としては立派な将器を持つ、信頼に値する人柄と見受け――」
「待って! リウイと会ったって、まさかシルフィアは……」
「いえ、私は神格位を剥奪せよとの命は受けていませんし、他の者が執り行ったという事実もありません」
「……そう」

 どこか安心した様な顔を見せるカーリアンに、クリアは僅か笑みをみせる。
 そして彼女は、話を止められたことを気にもせず続きを話し始めた。

「ですが、かの国の立場はいろいろと複雑なものがあり、我々と手を結べば国内の魔族の反発を受ける可能性も出てくる。
 風女神に仕える天使を監視役として受け入れたという報も入っていますから、尚更……」
「リウイが光陣営の使徒を受け入れたっていうのっ!?」
「ええ、そのように報告を受けています。ですがそういった事実もあるため、神殿としてはメンフィルとの連携も十分可能と考えている。
 貴方たちに同行を依頼したのは、つまり万が一に備えてです」
「……メンフィルと戦う可能性も考えているわけか」
「はい、限りなく低いとは思いますが、それも想定した上で神殿は私たちを派遣したのです」
「わ、私もですか?」
「魔神ルシファーと手合せをして、貴方はどう感じたかしら?」
「……ただ遊ばれていると。ここまでの力の差があるとは思っていませんでした……」
「そう……ならば分かっているとは思いますが、今回の件は若い貴方にとって危険でも貴重な体験になるはず。
 先の戦いの中で自分の力を知ったように。もちろん、辞退しても構わないけれど」

 試すような眼差しを受けて、リーフは僅かに面食らったようだった。
 しかし姿勢を正すと、物怖じせずに従軍の意を表した。

『強かな女だ。私とリーフの戦いをギリギリまで止めなかったのは、この騎士を成長させようとしたのかもしれない』
『伊達に軍神の巫女ではないわね。……貴方が興味を持った人間が、できることとできないことを知った。
 今はそれで良しとしておいたら』
『こちらがリーフを殺さないのも計算済みかもしれないな。利用されたのは癪に障るが……まあいい』

 すでに“謝罪”は受け入れてしまっている。
 今更何を言っても無駄だろうし、矜持が許さない。
 僅かに申し訳なさそうな顔になった辺り、こちらの心情も察しているようだしな。

 しかし、事情は大分掴めてきた。
 それはセリカも同じようで、心話でどうするか尋ねてくる。

『俺達が手を貸す意味は何があるかな』
『さて……向こうにとっては都合のいい、使い捨ての駒であることに間違いはないの』
『あの、言い方は良くありませんが、私も同感です。セリカ様にこれまで以上に危険が及ぶ可能性も……』

 ハイシェラとセリーヌの意見。
 言葉にはしていないが、エクリアも同意見だと心情を伝えてきた。
 カーリアンはというと、複雑そうな顔をしていた。
 光の神殿の者を引き入れた真意を問い質したいとでも考えているのか。

「私達に協力していただいた場合の報酬を提示しましょう」

 表情から察したのか、クリアがそんなことを告げる。

「マーズテリア神殿からあなた方への組織での攻撃は行いません。他の光の神殿から攻撃を受けている間も、中立の立場を取ります」
「無期限というわけではないのだろう?」
「私が聖女である限り、この約束は守られるでしょう。
 ただし、あなた方からから攻撃があった時点で、この盟約は自動的に破棄されます」

 どこぞの国王と同じことを言う。

 ――いや、そうか。

 メンフィルと敵対した場合面倒なことになるな。
 ……そしてわざわざ私が古神だなどと言った理由も分かった。
 私とセリカ、双方受けねば報酬に意味はない。
 本当に、大した女だ。

 しかしそれも、まずは協力するかどうか決めてからだ。
 その辺り、分かっているのだろう。
 私やセリカの使徒なら別として、神殿の中立宣言などメンフィル所属のカーリアンには報酬でもなんでもない。
 だが、ここで報酬について話をすればそもそも受ける気があると宣言したも同じだ。

「悪いが、それぞれに事情があって直ぐには返事ができない」
「……分かりました。では、私は集落の裏口で待っていますので、結論が出たらいらしてください」

 クリアはそう告げると優雅に立ち上がり、リーフを初めとする騎士を伴って酒場を去った。





「確認しておきたいが、私とセリカがメンフィルの一件に関わっていた事実は存在しないことになっている。
 だからリウイとの盟約のことも簡単には持ち出せない。その上で、どうする?」
「俺は受けてもいいと思う。……それに罠だとしても、手が込み過ぎだ」
「……私は、マーズテリアのことは正直どうでもいい。ただちょっとリウイのことが気になるかな」

 セリカは、相手がルナ=クリアということもあるのだと思う。
 だが罠ではないというのは私も同意見だ。
 ベルゼビュード宮殿など、知識が正しければそんなところで仲間内で争っている余裕はない。

「現神最大の武力集団との争いを回避できるというのは、かなりの利点だと思う。
 ……しかし、だからといってメンフィルと戦うというのは避けたい。
 マーズテリアがメンフィルに喧嘩を売るのは勝手だが、巻き込まれては堪ったものではないからな」
「……そうですね。私もイリーナと戦うのは避けたい」
『面倒くさい連中だの。聖女が依頼したのは魔神を退けることのみ。メンフィルとも戦えとは言っていない。ならばその通りにすれば良い』

 これでどうだと告げるハイシェラ。
 瞬間、その場にいたカーリアン以外の面々が思わず魔神剣を凝視する。
 例によってセリーヌに通訳されたカーリアンも微妙な表情に。

『……ハイシェラ、それは屁理屈だと思うんだけど』
「しかし、ハイシェラにしてはいい意見だ」
『貴様ら、我を何だと思っておる……』
「だから日記帳――」
『――ルシファーッ! いつまでも下らぬ戯言を言うな!』

 そんなハイシェラの抗議の声に続くように湧き起こる笑い。
 彼女は“この戯け共がっ!”などと声を荒げていたが。

 しかしてこれで、それぞれに思う所はあるものの、マーズテリアとの一団との同行が決まった。
 目的地となるのは古の時代に魔界王子と謳われた、古神ベルゼブブの居城。
 おそらく封印が解かれているのならば、かの神の配下たる霊体の多い迷宮となっているはずだ。
 
 激戦が予想される。
 そして深凌の楔魔が関わるというのならば、ラーシェナとパイモンの二柱も……。
 どのような結末を迎えるにしても、これは私の我儘だが決着はこの手でつけたい。

 ラギールの店を利用して準備を整える。
 そうして私たちは聖女の待つ集落の裏に向かった。



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