翌日の昼、俺はユフィを連れてある場所へと向かっている。
ちなみに今乗っている車は皇族専用車ではなく、ダールトン将軍にお願いして借りた車だ。
といっても防弾仕様の特別性の車だが・・・・・・
「レイ、一体どこに行くんですか?」
「もうすぐ分かるよ、それよりこれつけておいてもらえるかな?」
と言って俺が手渡すのは毛染め用のスプレーと度の入っていない眼鏡とエプロン。
「あのこれは?」
「これから向かうところは一応俺が警備の手を回して安全になるようにしてあるけど、念のために変装をしておいて欲しいんだ。ほんとはカツラをかぶればいいんだけど、ユフィの髪は長いからカツラをかぶせると不自然に見えるかなと思ってね。そのスプレーは水で流せばすぐに落ちるし大丈夫だよ」
「わかりましたわ。じゃあ今やってしまいますね」と言ってユフィは髪にスプレーをかけて、10分後には全体を染め終わる。
ちなみに色は赤だ、彼女のピンクの髪は他の色に変えるとスプレーが切れてきた時にその部分だけが目立つ。なるべくわかり難くするために赤色になった。
そしてエプロンとは花屋のエプロンだ、車の後ろに花もつんである。
これをつけるためにユフィにはかなりラフな格好をしてもらっている。
これで彼女は一目見てもユーフェミア・リ・ブリタニアだとは誰も気づかないだろう。
そして目的地に到着する。
「レイ、ここって・・・・・・アッシュフォード学園ですよね?」
「そうだよ、君が本当に心配そうな顔をしていたからね。一目見るだけならという事で許可をもらってあるんだ。と言っても直接は会えないけどね」
「そんな、私のために。ありがとうございます。レイ」
本当に感激したのか目に涙を浮かべながらお礼を言ってくるユフィ。
俺より背の低いユフィは俺の顔を見ながらお礼を言うので当然上目遣いになる。
ユフィの上目遣いははっきり言って凶器だ、俺も思わずぐっと来てしまった。
「気にしなくていい」と答えようとしたが、結構ドキドキしたのでちゃんと言えなかった。
それから少し待っていると俺の電話の相手がやってきた。
「レイス君、おっ待たせ〜!ごめんね〜少し時間がかかっておそくなっちゃった」
「かまいませんよミレイさん。こちらが無理なお願いしたんですから。」
やってきた人物はミレイ・アッシュフォード、この学園の生徒会長だ。
"ミレイ・アッシュフォード"
アッシュフォード学園理事長・ルーベン・アッシュフォードの孫娘で、学園の生徒会会長。
ロクでもないイベントを考えては学園の皆を振り回したが、面倒見がよく人望も厚い。
ロイド・アスプルンドと婚約していたが結局それを破棄し、アナウンサーとしてお天気キャスターから報道・バラエティと幅広く活動した。
「今日は俺の無理なお願いを聞いていただいてありがとうございます」
「いいわよ、私とレイス君の仲じゃない。そんなこと気にすることないわ」
「あの、レイ。こちらの方は?」
俺がミレイさんと話しているとユフィが俺達の関係を恐る恐る尋ねてくる。
「ああ、ごめんユフィ。この人はミレイ・アッシュフォードさん。この学校の生徒会長さんだよ」
「ちなみに私はレイス君と婚約しているわ」
「なっ!!」
ミレイさんの告白に大声を出して驚いているユフィ。
そう、ここではロイドさんではなく、俺が彼女と婚約している。
「ミレイさん、ちゃんと話は正確に話さないと。彼女とは一応婚約と言うことにしてあるけど、それは彼女が政略結婚のためのお見合いが嫌いだからと言う理由で形だけの婚約なんだ。だから彼女が他に彼氏が出来たらこの婚約は即破棄されるんだよ」
ラウンズに任命された時色んなところから見合いの話が来て、どうしても一度だけ見合いをしなければ他に断りをいれられないという親の説得で受けた見合いの相手がなんとミレイさんだった。
「私はレイス君なら本当に結婚してもいいんだけどね」
「ミレイさん、あまり冗談を言ってはダメですよ。俺も傷つきますからね」
ミレイさんが小声で何か言っているが聞き取れない。
「彼女との婚約で俺のナイトメアの研究チームに何人か人を送ってもらっているんだ。アッシュフォードはあのマリアンヌ様のナイトメア開発に関わっていたからね、いろいろなデータがもらえるんだ。その代わりにアッシュフォードは俺との婚約で少しずつ以前のような力を取り戻しつつあるんだ。まあ、持ちつ持たれつと言うやつだよ」
そのおかげでラモラックの装甲の軽量化への道が見えた、今はまだ無理だがもうしばらくすれば試作パーツが出来上がるだろう。
「それじゃあミレイさん、例の件をそろそろお願いします」
「はいは〜い、じゃあ2人ともついてきて」
ミレイさんにつれられて先へと進む俺とユフィ。
たどり着いたのは生徒会室のあるクラブハウス、周りに咲いてある花の入れ替えのために、新たな花を届けに来たのが俺とユフィと言うことだ。2人とも花屋のロゴの入った帽子をかぶって顔を見えにくくしている。
ちなみにこの花屋は実際に存在している花屋だ。架空の店だともしルルーシュが気づいた時に怪しがって調べるだろうからな。
。
ミレイさんには事情を話してあるので、彼女がユーフェミア・リ・ブリタニアだと知っているし、目的は枢木スザクがちゃんと学園生活を送れているのかの確認と言うことも伝わっている。
またルルーシュの事情を知る彼女は、彼に大量の仕事を押し付ける等の事をしてこの場にこれないようにしているだろう。
ルルーシュをユフィに見られるわけにはいかないのだから。
「ユフィ、今そこに枢木スザクがいるから花を置くついでに少し見ればいいよ。でもあまり見すぎると怪しまれるからね」
「わかりました、ありがとうございます。レイ、ミレイさん」
「私も中から外を意識しないように注意しておくけど気をつけてね。終わったら一度声をかけてくれればいいから」
そして俺とユフィは車からクラブハウス前に花を摘み降ろす作業を開始する。
生徒会室が少し見える程度の位置に車がとめてあるので、花を降ろす際に少し見る事ができるだろう。
15分ぐらいで作業が終わり、ミレイさんにその旨を伝えて俺たちはクラブハウス前を後にする。
「ユフィ、生徒会室の中にいた彼の様子はどうだった?」
「はい、とても楽しそうに仕事をしていました。もしかしたら上手くいってないのではと思っていたんですがこ、れなら学園に入ってもらった甲斐がありましたわ」
俺の問いに満足そうな顔をして答えるユフィ。
「じゃあユフィ、俺は少し横の大学に用があるからここで分かれよう。さっきダールトン将軍に連絡しておいたから誰かが迎えに来るよ」
「わかりました、本当はついていきたいですけど何か大事なようなので先に帰らせてもらいますわ」
「そこまで大事ではないんだけどね、まあ仕事関係だからいちおう変装をとかないといけないからね。ユフィもその髪のスプレーはしっかり落としてね」
「はい、わかりました。では迎えの車も来たようなのでお先に失礼します」
「またね、ユフィ」
といって学園の外でユフィと別れて、俺はとなりの大学に向かう。
大学の方に尋ねて、特派の研究室前までやってきた俺は中に入る事にした。
「ロイドさ〜ん、いますか?」
「はいは〜い、おや、誰かと思えばレイス君じゃない。どうしたのこんなところに?」
「エリア11に派遣されましてね、それでここに遊びに来たんですよ」
「そうなんだ〜、本国待機のラウンズがこんなところに派遣されるなんてキミ何かやらかしたの?」
「何もしてませんよ。それをいうならロイドさんこそでしょう」
ここに派遣された理由は本当にわからないが、ラモラックの実戦投入がまだなのでここに派遣されたのはよかったかもしれない。
「ボクはクロヴィス殿下がここにいた時から居るからいいんだよ」
「そうですか、それよりなんでこんなところで研究してるんですか?」
「それがね、ちょっとした事情があってここに追いやられたんだ」
「ちょっとした事情でって、よっぽどな事をしない限りこんなところに追いやられませんよ」
たしかスザクが理由でコーネリアに軍から遠ざけられたんだったっけ「まあいいです。それであれがEUで話していたナイトメアですか?」
俺が指差すほうには白と金で彩られた1機のナイトメアが固定されている。
「そうだよ、ランスロットって言うんだ」
「ようやくこれに乗れるパイロットが見つかったんですか?この機体って乗るパイロットを選びましたよね」
「そうなんだよ。今までキミが最高の適合率を叩きだしていたんだけど、ここでキミを越える子が居たんだよ。適合率94%だよ、初出撃でその数字を出したんだから本当にすごかったよ」
「このオバケ機体もようやくパイロットが出来ましたか、よかったですね」
「オバケ? どういうこと?」
「圧倒的な機体の機動性で、敵の攻撃を全て回避するナイトメアなんてオバケナイトメアですよ」
普通は敵の攻撃を全弾回避しようなんて考えないからな。
「ボクのランスロットがオバケならキミの機体はなんなんだい?データだけ見せてもらったけどまるでモンスターじゃないか」
俺のラモラックをモンスターとは失礼な。
「何故モンスターなんですか?理由を聞かせてください。」
「キミの機体の武装がすごすぎるじゃない、キミの機体の火力ははっきり言って本当に1機で戦場を制圧できそうじゃないか。はっきり言って1ナイトメアの武装じゃないよ」
たしかに少し武装を欲張りすぎたかなと思う、でも作りたかったのだから仕方ない。
「まあラモラックなら可能かもしれませんね、それよりランスロットのパイロットはどうしたんですか? ここには見覚えのある研究員しかいませんが?」
「彼なら今は横にある学校で勉強中だよ。本当はボクも1日中訓練してもらいたいんだけどセシル君が怒るし、ユーフェミア様から学園に通わせるようにとの命令が出てるからね」
「ロ〜イ〜ド〜さ〜ん、何時も言っているでしょう、スザク君に無理な訓練をさせないようにって。なのにまだそんな事言っているんですか」
いつの間にか俺達の後ろから現れたセシルさん、軍人の俺でも全く気配に気づけないなんて、あんた一体何者だセシルさん。
「お久しぶりです、セシルさん。お元気でしたか?」
「お久しぶりでございます、リンテンド卿」
「セシルさん、俺はここの雰囲気が好きなんで、いつもどおりの話し方でいいですよ。ロイドさんなんて最初から普通にため口でしたよ」
「わかったわ、レイス君」
「それで話を戻しますけどロイドさんはきっとどこかに常識を忘れてきてしまったんです。もう一度常識を最低限教えなおす必要があると思いますよ」
「そうよね、レイス君もそう思うわよね。ロイドさん、これからはランスロットをいじる時間を少し減らしてでも常識を教えましょうか?」
「イヤだよ、めんどくさい。そんな事をしている暇があればランスロットをいじっているほうがいいよ」
「そうですか、常識を学ぶ気はないと、そう言うことですね?」
「うん、当たり前「プリンを当分禁止しますよ?」待ってセシル君、ボクがわるかったからそれだけはやめて」
すごく強気だったロイドさんがプリン禁止令が出たとたん態度を一転する。
どれだけプリンが大好きなのか? まあラクシャータにプリン伯爵と呼ばれるくらいだから相当なものなんだろう。
「まあセシルさん、今回はそれくらいで勘弁してあげましょう。態度が改善しなければその手に出ればいいわけですし」
「そうね、今回はレイス君に免じて許しますけど今度からは本当にプリンを禁止しますからね?」
「わかったよ〜」とほんとにわかったのかわかってないのかよくわからない返事をするロイドさん。
「そういえばロイドさん、以前話したブレイズルミナスは実用段階に入ったんですか?」
「ああ、あれね。もう実戦にも使えるよ。キミも機体につけたいんだよね、つけてあげようか?」
「はい、つけてもらいたいんですが今俺の機体は海の上を飛んでいるところですし、すぐに次の作戦があるようなんで、その作戦が終わってからお願いできますか?」
「うん、いいよ。つけたい時はここに運んできてくれればいいからね」
「わかりました。」
出来れば俺も今すぐにでもブレイズルミナスをつけたいが、時間がない今急いでつけてもエネルギー消費がどれだけかかるかわからないので、機体運用にズレが生じるだろうし、すぐに実戦に投入したくはない。時間がある時にしっかりと確認してから、調整して実戦に臨みたい。
「ただいま戻りました、セシルさん、ロイドさん」
ロイドさんとブレイズルミナスについて話し合っていると、どうやらスザクが戻ってきたようだ。それにしてもここの主任はロイドさんだが、セシルさんに先に挨拶をしている辺り、彼の中ではもうすでにセシルさんの方が偉いということになっているのだろう。
「お帰りなさい、スザク君」
「おっ帰り〜、スザク君」
「はい、ただいま戻りました。ああ、失礼しました。お客さんがいらっしゃったんですか」
「はじめまして、スザク君だっけ? レイス・リンテンドです」
「はじめまして、自分は枢木スザクです」
"枢木スザク"
日本最後の内閣総理大臣・枢木ゲンブの嫡子であるが、ブリタニアという国を中から変えるため、軍に入り名誉ブリタニア人となった日本人の少年で、ブリタニアによる日本侵攻前にルルーシュ、ナナリーと出会い親友となる。
ランスロットのデヴァイサーに選ばれると、その腕前で何度もルルーシュと黒の騎士団を苦しめてきた。のちにユーフェミアの選任騎士、ナイトオブセブン、ナイトオブゼロとドンドン昇進していき、最後はゼロとなってルルーシュを"世界の憎しみの象徴"として討ち、新たなるゼロとして世界を導いていく役目を担うことになった。
「スザク君こちらの方の事知らないの?」
「え、有名人なんですか? すいません、僕そういうの疎くって」
「はは、レイス君、君もまだまだ知られてないね」
「まあ俺は最後の方はほとんど戦場に出てませんからジノやアーニャに比べると知名度は低いのかもしれませんね」
「えっと、ジノやアーニャってもしかして?」
「ちゃんと挨拶しようか、俺の名前はレイス・リンテンド。ブリタニア軍ではナイトオブラウンズに所属している。ラウンズナンバーは5だよ」
目の前のスザクの顔色がドンドン悪くなっていく。ラウンズのメンバー相手にお前の事は知らないと言ってしまったからな。
「申し訳ありませんでした、じぶ「ああ、いいよ。気にしなくて。君は見たところ名誉ブリタニア人だよね。ここに来たって事はキミがランスロットのパイロット?」
「そうであります、自分がこのランスロットのデヴァイサーです」
「ふ〜ん、君相当いい腕してるみたいだね。あれに乗れるって事は?」
「いえ、そんな事はありません。自分などまだまだです」
「謙遜しなくていいよ、俺も一度あれの適合率を調べられたけど、君は俺より高いようだし」
「きょ、恐縮です。ありがとうございます」
「レイス君、名誉ブリタニア人がナイトメアに乗ってるって事には突っ込まないの」
「ロイドさん、どうせあなたが適合率が高いからって理由で乗せたんでしょう。あなたの後ろにはブリタニアの宰相がいるから他からも文句は言われないし」
「大正解、やっぱり君もすごいね。すぐにわかるなんて」
だって知ってたからね、その事は。
「で、彼が名誉ブリタニア人だからって、コーネリア殿下にここに追いやられたって所でしょう、なんとなくわかりますよ」
「すごいね〜、またまた正解」
「ロイドさんが俺にこのあと何を頼みたいかも当てましょうか?次の作戦で自分たちを戦場に出してくれといいたいんでしょう」
「そうなんだよ、コーネリア総督は僕たちの事を全く使ってくれないから暇で暇で仕方ないんだ。だから何とかしてくれないかな?」
「まあラウンズ権限で出撃させる事もできますが、俺も最初は待機になるんで俺の出撃と一緒でいいならいいですよ」
昨日はコーネリア殿下から単機で出撃しろと言われたが、ダールトン将軍と話し合い、最初は俺抜きで作戦を行うようにしてもらえるよう、ダールトン将軍がコーネリア殿下を説得中だ。
理由は俺が戦場に出ると回りは俺を当てにして作戦遂行が悪くなるかも知れないから、俺には後ろで控えてもらって士気をあげるほうがよいのではないかということだ。
俺が作戦に参加したら作戦遂行は簡単になるが、俺に頼って他の部隊が俺に作戦遂行を任せようとするのではないかと言うことだ。
コーネリア殿下もそういわれれば俺を最初から出そうとは思うまい。
そのままではラウンズのおかげで作戦が遂行できたという事になってしまうからな。
「じゃあ俺はこれで政庁に戻りますので次はナリタで会いましょう」
「わかったよ、じゃ〜ね〜」
「もう、ロイドさん!さようなら、レイス君」
「失礼します、リンテンド卿」
「さようなら、ロイドさん、セシルさん、スザク君。あ〜そうそうスザク君、学校は楽しい?」
「はい、最初はなじめませんでしたが、今はよくしてもらっています」
「そうか、ユフィが君の事心配してるみたいだったからね。でもその様子なら大丈夫みたいだね。ユフィも安心できるだろう」
と言い残し俺は大学から出ていった。
<スザク>
今日学校から特派に戻ると知らない男の子がいた。
その人はなんと自分が目指しているナイトオブラウンズのメンバーだった。
自分が失礼を働いたにもかかわらず、その人は普通に許してくれた。
話を聞くと僕の前でランスロットの適合率が高かったのは彼だったらしい。
「ロイドさん、リンテンド卿は何故こちらに?」
「彼は結構前からの知り合いでね、エリア11に来たからここによってくれたんだ」
「ユーフェミア様と知り合いのようですが、何か知っていますか?」
「まだユーフェミア様が身分を隠していた時に知り合ったようだよ。それでユーフェミア様と仲がいいから、よくコーネリア様が嫉妬しているらしいよ」
そうなのか、ユフィと呼ぶのが僕だけではないようなので少し残念だ。
彼のおかげで次のナリタの作戦に参加出来るようだ。
僕もナイトオブラウンズに入り、ナイトオブワンとなってエリア11を、日本を取り戻したいので、今は少しでも戦場に出て活躍するしかない。
戦場に出してくれる彼に今は感謝しようと思う。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m