完成を急ぐラモラックの建造の作業を行っているレイスとナイトオブファイブ専用ＫＭＦチームの元に厄介な話が舞い降りて来る。
それは・・・・・・
「お見合い・・・ですか」
それまで何の身分も持っていなかったレイス・リンテンド。
しかしラウンズに襲名され、貴族として子爵の位が与えられたレイス。
まだ若く、軍でも絶大な発言権を持っているレイスの将来性は他の貴族の子弟を寄せ付けず、権力拡大を狙う貴族や、爵位は持たないが大きな財力を持つ名家の数々からうちの娘と是非にと言うお見合い話が数多く持ちかけられていた。
「今はラモラックのことが手一杯でそんなことに時間をかけている余裕はないんだけど」
ラモラックの資料を片手に持ちながら、めんどくさいという態度で話し相手であるレオ君にそう答える。
「しかし相手の中にはブリタニア国内でも有名な貴族のご令嬢もいらっしゃいます、それを全て断ると言うのもつい先日まで爵位を持っていなかったレイの立場じゃ少しまずいです」
山積みされたお見合い写真を見ながら、そう言って説得してくるレオ君。
確かについ先日まで爵位を持っていなかった俺が全てのお見合いを断るのは、貴族社会の中では良くないことだろう。
でも今はラモラックのことで本当に手が一杯なんだ。
もうすぐＥＵとの戦争が始まるかもしれないから、それまでには完成をさせなければならない。
「ご両親からもせめて一つだけでも受けてくれと言うお願いも来ております。レイ、ここは一つだけでも受けておくべきでは？ 受けさえすればその後のお見合いを断る口実作りも出来ますし」
レオ君はそう言って説得してくる。
両親からも頼まれているのか、まぁ当然お見合い写真は実家の方に送られて来るんだから当然か。
爵位を持っているのはレイだが、レイは普段から家には帰らず屋敷は彼の両親と使用人しかいない。
お見合い話は屋敷の方に来るので当然レイスの両親が対応しなければならない。
あまりにも来るお見合い話のために両親も疲れたのだろう、レオ君を経由して俺の説得したいのだろう。
「・・・・・・じゃあ、一つだけ受けることにするよ、その代わり条件がある」
「条件ですか？」
俺の言葉にレオ君はそれは何だと言う表情で聞いてくる。
「KMF関連の技術を持っている、またはそれに準ずる技術を持っていること」
ラモラックの完成を急ぐためにもそう言う技術は多いにこしたことはない。
「そうですか、それではその条件にあう家をリストアップしてみます。最終的な決定はどうされます？」
「レオ君に任せるよ」
ヒラヒラと手を振って後は任せたとレオ君に一言告げると、俺はラモラックの資料に目を戻していった。
それからは再びラウンズとしての公務とラモラックについてのレオ君との意見交換、それにたまにやってくるノネットさんとの模擬戦を繰り返す日々を送っていた。
だが今日は珍しく休み、ゆっくり休もうと思う。
自室でゴロゴロしておこう、と思っていると来客を告げるベルがなる。
誰だろうと思って玄関に向かうとそこには正装姿の両親とレオ君が立っている。
「何？」
「お見合いです」
今日！？
そう言えばちょっと前にお見合いの日取りが決まったって言ってた。
「服用意してないんだけど」
完全に忘れてたので一切用意していない。
「こちらをどうぞ」
レオ君がそう言って俺のラウンズの制服を手渡してくる。
それを受け取って３０分で支度をして３人と共に車に乗り込む。
「それでお見合いの相手ってどんな家の人？」
人選は完全にレオ君と両親に任せていたので相手の情報を一切知らない。
「元は爵位を持っていたのですが今は没落した家の一人娘さんです」
へぇ〜、なんかどこかで聞いたことあるような人だな。
車に乗り込んでしばらくするとブリタニアでも有名なホテルの前に車が止まる。
ボーイに案内されてホテル内のレストランに案内される。
レストランに入ると貸切とかかれてあったので、お見合い相手しかいないと言うことになる。
そしてそのお見合い相手はすでに到着しており、相手の両親であろう二人とその奥に一人の女性が立っている。
「はじめまして、リンテンド卿。うちの娘のミレイと言います」
その女性がこちらを向く。
「はじめまして、ミレイ・アッシュフォードと言います」
頭を下げるその女性、ミレイさん。
頭を抱える俺。
こんなところで原作キャラが・・・・・・
「はじめまして、レイス・リンテンドです」
そう言って俺もミレイさんに頭を下げる。
その後はしばらくは両親達の社交辞令の会話が続いたが、
「それでは後は若い者だけで」
と言う言葉を残し両親達は去っていく。
残された俺とミレイさん。
お互いが口を閉じたままただ無為に時が過ぎて行く。
「あの」
「その」
空気に耐えられなくなりお互いが口を開き、またも気まずくなってしまう。
「ふふっ」
「ははっ」
こうなれば二人とも笑うしかなく、お互いに笑いあう。
「こんなの久しぶり」
ミレイさんがそう言って口を開く。
「久しぶり？」
「えぇ、私の家って没落して、それを何とかしようと両親がすぐにお見合いを組んでくるんです。相手はいつも貴族、貴族。やることは自分のことや家の自慢話ば〜っかり。だからリンテンド卿の態度がとても新鮮で、あっ別に悪い意味ではないですから」
先ほどまでと違い、言葉は敬語のままだが、ややくだけた態度になるミレイさん。
歳が近いって言うこともあってか、それとも俺が最近まで爵位も持たぬ身分のものだと思って侮っているのか。
まぁ後者はないだろう、ミレイさんはそんな人ではないはず。
「敬語は辞めてもらっていいですよ、仕事や公の場以外でまでそれは面倒です」
俺の言葉に驚いた顔を見せるミレイさん。
まぁ変わり者ならともかく普通の貴族ならこんなこと言うまい。
「不思議な人ね、リンテンド卿、いえ、レイス君」
「貴族としては変なことはわかってる」
「だからレイス君には本当のことを話すわね、私本当はお見合いも、ましてや結婚なんてしたくないの」
真剣な表情でそう話しだすミレイさん。
「両親が家のためと考えているのはわかるの、それはアッシュフォード家に生まれた私も理解してる。でも私はそんなことで結婚したいなんて思ってない。だからこれまでもあの手この手で組まれてきたお見合いを破談にしてきたの」
そこまで言ってため息を一つ吐く。
「でももうすぐそれも出来なくなる、学生のうちは両親も見逃してくれると思うけど、卒業してしまえばそうも言っていられなくなるの」
悲しそうな目で俺を見つめながらそう語るミレイさん。
「学生でいられるのもあと２年、それが過ぎれば私は何処かの貴族と結婚させられるわ。ねぇ、私どうすれば言いと思う？」
答えなどないとわかっているような瞳でそう尋ねてくるミレイさん。
「・・・・・・残念だけど俺にはいい答えはないよ」
その答えを聞いて落胆するミレイさん。
「でも提案することは出来る、俺と契約を結びませんか？」
「契約？」
突然の提案に戸惑うミレイさん。
「俺もお見合いの話が多く来ていてうんざりしてるんです、だから俺もミレイさんもお見合いという厄介な問題を取り除くために、俺たちが婚約者であるということにすればいいんです。何時でも破棄できる、そんな仮初めの婚約を」
「・・・でもそんな契約あなたに他のメリットはあるの？はっきり言って没落したアッシュフォードにはたいした価値はないわよ？」
ミレイさんは俺がそんな小さなメリットだけで婚約してもいいのかと尋ねてくる。
「俺がお見合いを受ける上で一つだけ条件にした事があるんです」
俺は指を一つ立ててそう言う。
「条件？」
ミレイさんは意味がわからないと言った表情になる。
「その条件とはＫＮＦ関連の技術を持っている、またはそれに準ずる技術を持っていること。婚約すれば俺はその技術をもらいうけることが出来る。つまりラウンズである俺にとってはミレイさんとの婚約は願ってもないことなんだ。それに」
「それに？」
「たとえ嘘だとしてもこんなにきれいな婚約者なんて願ってもないよ」
俺の言葉に顔を真っ赤にして驚くミレイさん。
そんな様子を見てしてやったりと言う笑いを見せると手を差し出す。
「この契約結びますか？」
じっと俺のことを見つめるミレイさん、そしてすっと握り返された俺の手。
ここに一つの契約が成立した。
こうして俺とミレイさんは婚約者となったのだった。
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