in side

「く、いっつぅ……」
「動かないで……なんなのあいつ? 悪魔とは違うようだけど……」
 ミュウとエンジェルの魔法による治療を受けつつ状況を見てみたが……ミュウが戸惑うのも無理はないよな。
チルノは幻想郷に住む妖精だったはずだ。それがいきなりあんな姿になるなんて……
さっき何かを持っていたように見えたけど、それの影響か? 後、明らかにこっちの旗色が良くない。というのも――
「な、なんで!?」
「あははははは! なに、その豆鉄砲? 全然効かないよ!」
 早苗が驚いてるけど、俺も驚いてる。つ〜のも霊夢、魔理沙、早苗の攻撃がまったく効いてないんだよ。
なんか、見えない壁みたいなのに阻まれてる感じ。あれ? あれってもしかして――
「ええい!」
「だから、意味ないって言ってるだろ!」
「霊符『夢想封印』!!」
「ガルーラ!」
「く! うるさいな!」
「あぶな!?」
「きゃ!」
 理華が銃を撃つけど効果無し。だが、霊夢の今の攻撃とモー・ショボーの攻撃で少しだけひるんだ。
だが、本当にひるんだだけで氷の塊を撃ち出して反撃。霊夢はなんか結界みたいなのを張って防ぎ、モー・ショボーはかろうじてだが避けれた。
理華の銃が効かないってことは銃攻撃無効か? そういや、ボルテクス界にもそういうのがいたな。
さっきみたいに見えない壁みたいなのに阻まれて。でも、なんで霊夢達の攻撃も効かないんだ?
もしかして、霊夢達の攻撃も銃攻撃? 確かにあれは撃つだけどさ……いや、今はそんな場合じゃないか。
モー・ショボーの魔法や霊夢の今の攻撃は通じたってことは、霊夢の今の攻撃は魔法みたいなもんってことか……
でも、それほど効いてるって訳じゃなさそうだな。
「おおりゃ!」
「ぐ! うるさいな!」
「うご!?」
 オニが攻撃を仕掛けるけど……腕で受け止めたが、少し効いたらしい。チルノが顔をしかめた。
でも、オニが反撃喰らって吹っ飛ばされてる。なるほど、普通の攻撃なら普通に効く訳か。
だが、悪魔でも普通にだから、それで倒せるかって言われたら……くそ……他に方法は無いのか?
「もぉ! どうにかならないの!?」
「んなこと言われたって……おわ!?」
 霊夢も流石に苛ついてるが……魔理沙のように打つ手が無いらしい。チルノが氷の弾幕は飛ばしてくる。
幸い、こっちに来てないけど……霊夢達は避けるのが精一杯で攻撃出来ないみたいだな。
俺の方もミュウとエンジェルのおかげで怪我は治ってきてるが……俺の手持ちの武器じゃ、どうしようも――
〈胸の……石――〉
「へ? 今、何か言った?」
「え? 何も申しておりませんが?」
「それよりどうすんの?」
 なんか聞こえたんだが、エンジェルやミュウが何かを言った訳じゃなさそうだ。ミュウが困ったように聞いてくるけど……
でも、今確かに胸の石とか……胸の石? あれ? そういや、チルノの服に付いてる宝石、胸のだけ色が違うくね?
他のは透明なのや青色とかなんだが、胸のだけなぜか赤い。あれって、何か意味が……試してみる価値はあるか?
「あんがとよ……」
「大丈夫なの?」
 傷もだいぶ治ったんで礼を言ってから俺は立ち上がる。ミュウに心配されたが、構わずGUMPを操作した。
さっき仲魔にしたゴブリンを喚び出すために。
「な、なんだよ?」
「お前、何が出来る?」
「な、何がって……大した事は出来ねぇよ!? ラクカジャとか……ブレスを吐くくらいで――」
 怯えるゴブリンが答えるが……ラクカジャ……確か、何かを上げる魔法じゃなかったっけ?
それとブレスか……あれ、厄介なんだよな。周りが見えなくなったりとか、毒喰らったりとか……
毒を喰らうって、結構苦しいんだよねぇ……じゃなくて!
「よし、俺があいつに突っ込むから、お前は援護! あいつに向かってブレスを吐け! 後、魔法も俺に掛けといてくれ!」
「わ、わかった! ラクカジャ!」
 ゴブリンに魔法を掛けてもらい、刃物を持つ。狙いはあの胸の赤い宝石……どうやって狙お……
ああ、もう……ぶっつけで行くしかないか!
「え? え? ええ?」
 なので、ゴブリンをつかみ上げ――
「行ってこおぉぉぉぉぉい!!」
「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 思いっきり、チルノに向かってぶん投げた。
「や、約束違うじゃねぇかぁぁぁぁぁ!?」
「うきゃ!?」
 おお、ぶん投げられてもちゃんとブレス出してる。それにチルノが驚いていた。ナイスだと思いつつ、それを見届けてから駆け出す。
俺もブレスの中に飛び込むが、んなのは気にしてられないっての!
「うおぉぉぉぉぉ!?」
 この時、叫ぶ必要なんて無かったんだが……勢いで思わず叫んでしまったんだ。結果――
「そこかぁ!」
「うご!?」
 チルノに見つかり、何かを撃ってきたのか飛び込んできた俺の腹に衝撃が来た。だけど、付いた勢いは止まらず――
「なっろおぉぉぉぉぉぉ!?」
「きゃ!?」
 俺の刃物の先はチルノの胸の赤い石を叩き――
「おぐぅ!?」
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!?」
 転げるように落ちる俺。その後ろではチルノが光の柱に包まれていた。
いっつぅ……なんか、腹が痛いと思ったら、つららみたいな氷が刺さってたのか……
なんてことを考えてたら光の柱が消え、元に戻ったチルノがゆっくりと地面に倒れた。
その横ではいつの間にやら石版みたいなのがあったんだが……ありゃ、なんだ?
 あれ? 周りの雰囲気が変わった……というか、普通になった?
「翔太!?」
「もう、無茶しすぎよ……今、治療するから……エンジェルも手伝って!」
「はい!」
 なんてことしてたら理華達がやってきて、再度治療を始める。
「おぐ! ぐ……」
 でも、つららふぁ刺さったままじゃ治療は出来ないので自分で抜いたが……あ、気が遠くなる……
「血が……ディア!」
「翔太は魔石使って! ディア!」
 慌てるエンジェルの横で、理華がそう言いながら魔法を掛けてきた。
俺も理華に言われて魔石を割るが……1個じゃ足りないらしい。もう1個必要かな?
「大丈夫なのですか!?」
「血は止まったけど……」
「これって……何かな?」
 早苗達も遅れてやってきて理華がそれに答えてる時、ミュウはチルノの横に落ちていた石版に近付いていた。
お〜い、それって危なくないか〜――
「きゃ!?」
 ミュウが石版に触れた瞬間、なんか火花みたいなのがミュウの体から飛んだ……てぇ!?
「て、大丈夫か!?」
「ちょっと、じっとしてて!」
「う、うん……何ともない……」
 叫んだら理華に怒られたが、ミュウ自身は何事も無かったようでこっちに戻ってくる。
たく、なんなんだ、あの石版?
「ふふふ……まさか、あれをなんとかしちゃうなんて……君、本当に凄いよ」
 なんてこと考えてたら聞き覚えがある声……て、あの野郎……
「てめぇ……何が目的だ!」
「ちょっと待ちなよ。ボクは別にケンカしに来たわけじゃない。だから、それを下ろしてくれないかな?」
 思わず叫んでた。俺が睨む先にいたのはあのゴスロリボクっ娘。霊夢達が思わず構えたが、そいつに言われて札やカードみたいなのを下ろした。
ま、情けない話だが、俺じゃあいつの相手にならないし、霊夢達でもどうだか……ていうかあの野郎、何が目的なんだ?
「ああ、そういえば言ってなかったね。今回のことはボクが何かした訳じゃない。
ある悪魔が目的を達成しようとしたけど失敗したんだよ。それで、今度は目的を新たにして再び動き出したのさ。
ボクはね、それに便乗してるだけ。君にその目的に突っ込ませてどう動くのかを見たいのさ」
「て、てめぇ……」
 ゴスロリボクっ娘の話を聞いて怒りがこみ上げてくる。あの野郎……遊んでやがる。
つまりだ。あの野郎は俺達が慌てふためくのを見て楽しみたいだけなんだ。
それがわかって殴ってやりたい衝動が出てくるが……それが出来ない。傷もそうだが、あいつには絶対に敵わない。
それだけの差が……あるんだよ。だって、威圧感凄いんだよ。あの霊夢達ですらたじろぐくらいに。
「やれやれ、嫌われちゃったか……まぁ、いいや。言っとくけど、ボルテクス界と繋がった世界が崩壊するのは事実だよ。
それがその悪魔の目的の1つだからね」
「まて、その悪魔の目的ってのはなんだ……」
 ゴスロリボクっ娘の話でそのことが気に掛かって聞いてみる。ボルテクス界と繋がった世界が崩壊なんてことするんだ。
きっと録でもない目的に違いないが――
「残念だけど、そこまでは教えられないね。でも、これからボルテクス界と繋がる世界に行ってみればいい。
君はどこかの世界でその答えを見つけることになるさ。あ、そうそう。その石版は持っていた方がいいよ。
それがボルテクス界と繋がった世界の崩壊を止める鍵になるからね」
 ゴスロリボクっ娘に言われて石版を見てみる。あれが崩壊を止める鍵? いや、ありがちっていったらありがちだけどさ……
「最後に……今回のことは驚いてるんだよ。いや、本当さ。今の君達じゃ、あれをどうにか出来る力を持っているはずが無い。
なのに、力の根源を見つけて壊した。良くわかったと感心してるよ」
 ゴスロリボクっ娘がんなこと言ってるが、全然嬉しくない。でも、あれって声が聞こえたからなんだが……あの声って一体……
「じゃあ、次の世界で待ってるよ。もっとも、次の世界にたどり着けないだろうけどね」
 なんて、楽しそうにいいながらゴスロリボクっ娘は消えてしまうのだが……あの野郎、俺達の武器が悪魔に通じなくなってるの知ってるな。
「あの野郎……くぅ……」
「あ、大丈夫ですか!?」
「どうなんだよ?」
「傷は治ったけど……一度、ちゃんと診てもらった方がいいかも……」
「しょうがないわね。魔理沙は永琳を呼んできて。私達はこのまま神社に戻るから」
「わかった!」
 傷が痛んで思わずうずくまる。早苗が心配してくれるが、魔理沙に答える理華の言う通りかもしれん。
傷はすでにふさがってるけど、痛みがまだ残ってる。こりゃ、医者に診てもらった方がいいか?
でも、なんて言えばいいんだろ? 冒険してて怪我しました? 言えねぇ……絶対におかしな奴だって思われるって。
 まぁ、霊夢に頼まれた魔理沙が飛んでいったので、その心配は無さそうだけど……永琳って誰だっけ?
なんてことを考えていたせいか、この時は気付かなかったんだよ。俺達を見ていた奴がいたなんて――


 あの後、俺は理華やエンジェルに肩を貸してもらいながら歩いてると紫と萃香に再会し、話を聞いた紫が空間に裂け目を作って神社に送ってくれた。
流石に今回は落とされなかったけど……で、神社に着くと――
「あれ? 霖之助さんじゃない。どうしたの?」
 そこには1人の男性がいた。銀髪の髪に眼鏡を掛け、中国風な感じの服を着ている。霊夢は知り合いらしいけど――
誰だろうと思いつつ理華とエンジェルに肩を借りっぱなしもなんなので、腰掛けられる所に座らせてもらう。
「いや、外の世界とは別の所から人が来たと聞いてね。少し話を聞けないかと……まぁ、出来れば珍しい物を譲ってもらえないかとも思ってるが」
 と、霖之助と呼ばれた男性は苦笑混じりに話すんだけど……どなた?
「ああ、そういえば名乗っていなかったね。ボクの名は森近 霖之助だ。魔法の森で香霖堂という古道具屋を営んでいる」
「あ、どうも……相川 翔太です……」
「谷川 理華です……」
 霖之助さんの自己紹介に思わず頭を下げながらこっちも名乗り、仲魔達も名乗ったところで――
「ふむ、面白い者達だね。では、早速だけど――」
「悪いけど、それは遠慮してもらえないかしら?」
 霖之助さんが話を聞こうとしたら紫に止められてしまう。でもまぁ、ボルテクス界のことを聞かれてもな。
俺だって、知ってることってそんなに多く無いし――
「やれやれ……じゃあ、何かもらえないかな? 大したお礼は出来ないけど」
「あなたは――」
「あ、いや……それくらいでしたら」
 霖之助さんのしつこさに紫が何かを言おうとしたが、その前に俺がリュックを下ろして中身を探る。
流石に弾丸はマズイだろうから……魔石とチャクラドロップかな? 前回の反省を踏まえてストックはあるし。
毒消しとかの石は多くはないけど……あ、これって悪魔が落としていった奴じゃん。
ゴミみたいなもんなんだけど……そういや、リュックに突っ込んどいてそのままだったな。
まぁ、別に変なもんじゃないし、いいかと魔石やチャクラドロップ、毒消しとかの石と一緒に並べていく。
 で、霖之助さんはそれを見てから、悪魔が落とした物を手に取り眺める。
しばらくの間、眺めてから手に取っていた物を置いてため息を吐き――
「これは……しかるべき所に持っていくといい」
「はい?」
 なんか、変なことを言い出しました。いや、なんでさ?
「これはね、しかるべき所に持っていくことで本当の価値が出る物なんだ。だから、今はこれはもらえないな」
「は、はぁ……」
 という霖之助さんだが……しかるべき所って言われてもな……
悪魔が落とした物だし、ヴィクトルさんが何か知ってるかも。戻ったら聞いてみるか。
「それと……これはもらってもいいかな?」
「あ、それなら……数はあるので」
 と、霖之助さんが手に取ったのは魔石やチャクラドロップ、毒消しなんかの石である。
それらはストックがあるので1個くらいなら別に構わないしな。
「ありがとう。お礼はいずれするよ」
「あ、別にいいですよ」
 立ち上がる霖之助さんにそう言っておく。まぁ、金額的にもそれほど高くないしな。
「じゃあ、ボクはこれで。今日はありがとう」
「ああ、いえ……」
 頭を下げる霖之助さんに、手を振りながら答えた。別に本当に大したことしてないしな。
それに悪魔との交渉で魔石やチャクラドロップとかを使う時があるから、多く持ってただけだし。
なんてことを考えている内に霖之助さんは去っていった。
「そういえば……霖之助さんは誰から翔太達の話を聞いたのかしら?」
 なんて、霊夢の話には気付かなかったけどね。


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 自分の店へと向かう霖之助。だが、不意に立ち止まる。すると彼の背後で木の陰から何者かが現われる。
それなりに高い身長にほっそりとした体をシューズにジーンズ、白のTシャツに青のジャケットで纏っており、両手にはドライバーグローブをはめている。
黒髪は短く刈り上げられており、顔はそれなりに整っているのだが……見た目的には若い青年だった。10代後半といったところだろうか?
それなりに整った顔立ちだが、特筆すべきは穏やかな顔付きだろう。そう、穏やかなのだ。見た目の若さとは不釣り合いなくらいに。
「あれでいいのかい?」
「ありがとうございます。あれで彼は先に進めますよ」
 霖之助の問い掛けに青年は頭を下げながら答えた。そう、霖之助があの場にいたのはこの青年に頼まれたからである。
そんな青年の様子に霖之助はため息を吐くが――
「それなら、君がやればいいじゃないか」
「確かにそうするべきなのでしょう……いえ、本来ならば今回の原因となる者を倒すのは私の役目だったのですが……」
「ならば、なぜそれをやらない?」
 青年の言葉に霖之助は少し睨むような形で問い掛ける。
霖之助は非情な者ではない。傷はふさがっていたとはいたが、かなりの手傷を負ったのだろう。
明らかに足取りが危ういな状態だった。本来ならそれを心配してやりたかったが……青年に頼まれてあのことを示唆してきたのだ。
翔太達には絶対に必要なことだと言われて。だから、耐えてそれを成し遂げてきた。
なのに、青年は大元をなんとか出来ると言った。ならば、なぜやらない? 霖之助の中で怒りとも言える感情が沸き立つが――
「彼は……運命に呪いを掛けられてしまったのですよ」
「なに?」
 青年の予想外の話に訝しげな顔になってしまった。話した青年はといえば、空を見上げ――
「困ったことですが……それによって彼は運命に囚われてしまったんです。
例え、今回のことを私が解決したとしても、彼は今と同じような事に巻き込まれてしまう。それでは意味が無いのですよ」
 どこか、悲しげな顔で青年は話したが……霖之助としては信じがたい話であった。
別に運命云々を信じていないわけではない。だが、運命に呪いを掛けられる奴がいるのかと思ってしまう。
「では、どうする気なんだ?」
「彼自身で解決してもらうしかありません。それだけが、彼が解放される唯一の方法です。
今回ばかりは私もそこまで手出しは出来ませんからね」
 霖之助の問いに青年はため息混じりに答えるが……あの翔太という者が一体何をしたというのか?
霖之助は思わずそう考えてしまうのだが……翔太は何もしていない。ただ、巻き込まれた被害者である。
もし、そのことを霖之助が知ったらどう思うだろうか?
「そうか……でも、今回の事をボクがやる意味があったのかい?」
「まだ、私はあれに目を付けられるわけにはいきませんからね。もしそうなったら、それは翔太さんの負担になってしまいます。
それは出来るだけ避けたいのですよ」
 納得しつつも思わずそのことを聞く霖之助だが、青年は苦笑混じりにそう答える。
霖之助も目の前の青年がただの人間だとは思ってはいない。だが、ただ者ではないという以外は名前すらも知らないのだ。
「はぁ……まぁいい。こうして君の頼みを聞いたんだ。せめて、君が何者かくらいは聞かせて欲しいけどね」
「あいにくですがそれを話すことは出来ません。ただ、名前くらいでしたら……」
 霖之助にそういうと、青年は体を向け――
「アオイ シンジと申します。このお礼はいずれいたしますので……では――」
 優雅に頭を下げながら名乗ると、シンジの姿が消えてしまう。まるで初めからそこに何も無かったかのように。
その様子を霖之助は軽く戸惑いながらも見ていたが――
「やれやれ……変な者と知り合ってしまったかな?」
 思わずため息を吐き、振り返って自分の店へと歩き始めるのだった。


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 さてあの後、魔理沙が連れてきた八意 永琳という女性に体を診られ、異常無しと言われた。
ただ、しばらくの間休息は必要と言われ、薬をもらったけど……で、今は――
「やれやれ、賑やかなもんだな」
 夜という時間に神社には人だかりが出来ていた。いや、人だかりというか……宴会?
そうだよな。なんか、酒飲んで騒いでるし……仲魔達も一緒になって飲んでるしね。ていうか、あれはチルノじゃないか?
あんなことになったってのに、良くもまぁ平気な顔して……
「あなたは飲まないのかしら?」
「あ、いや……俺、未成年なんで」
「同じく……」
「何よそれ? まぁ、いいけど」
 と、ナイトキャップのような帽子をかぶり可愛らしいドレスを着た、背中にコウモリのような翼を生やした少女に手を振って断る。
確か、レミリアだったっけ? 吸血鬼だったかな? その子に理華と一緒に手を振って断った。レミリアには首を傾げられたけど。
「ふむ……」
 と、そのレミリアはなぜかじっと俺を見てくる。何かしたっけ、俺?
「なるほど……そういうことか……」
「あの……どういうこと?」
「あなたにそれを聞く覚悟はあるかしら?」
 なんか気になったんだけど、なぜか笑みを浮かべるレミリアからとんでもないこと言われた。いや、覚悟って何!?
「え、遠慮しておく……」
「そう。まぁ、気になったのならいつでも聞きに来なさい」
 顔が引きつるのを感じながら断る。いや、嫌な予感しかしないんだって。
レミリアはなんかしてやったりの笑みを浮かべてるけど……気のせいじゃないよな?
「しかし……あなたの世界がそのようなところなんてね」
 と、隣にいた紫はため息を吐いていた。なんのことかというと、幻想郷に来た時のやりとりを覚えていた紫がどういうことなのか聞いてきたのだ。
隠すようなことでもなかったんで話したんだけど……まぁ、大した事にはならないと思うけどな?
「それで……あなたはこれからどうするの?」
「戻って、別の世界に通じる穴を探すよ。どうにも、そうしなきゃならないみたいだしな」
 紫に答えながら、リュックからある物を取り出す。それはチルノを倒した時に出た石版だった。
あの後、ミュウが触った時に起きたような事は起こらず、普通に持っていられたが……これが世界の崩壊を止める鍵ね。
でも、どう使うんだか……ん〜、表面には文字や絵みたいなのが刻み込まれてるんだけど、それとは別に六芒星の形で6つの丸いくぼみがある。
これに何かはめるのか? それもありがちなんだけど……ま、その時になればわかるか。
「そう……そういえば、聞いておきたいのだけど……あなたはなぜ戦うの?」
 と、紫にそんなことを聞かれるが……戦う理由ね。そんなのは簡単だ。
「死にたくないから」
「は?」
「だから、死にたくないから。崩壊ってのがどんなものかわからんけど、あのゴスロリボクっ娘の話じゃ消滅みたいなもんらしいからな。
そうなったら、俺達も死ぬって事になりかねないし……そんなの嫌だからな。それに知り合いが死ぬってのも嫌だし」
 呆然とする紫に石版をリュックに戻しつつ話すのだが、なぜかレミリアも同じ顔になってた。しっかし、俺としてはこれが理由だしな。
ちなみにこの時、理華がつらそうな顔になっていたことに気付かなかったけど。
「変な奴ね、あなたって」
「悪かったな」
 紫に言われて、思わずため息を吐く。ま、理由としてはあれだしな。しょうがないか。
「悪いけど、この幻想郷を守るために私達は協力出来ない。穴にも結界を張って、これ以上何者も通れないようにするわ」
「そんな――」
「いや、わかった」
 紫の話に理華が突っかかろうとするが、手を挙げてそれを止める。
「責めないのね?」
「手伝って欲しいのは確かだけど……あんたらにも都合はあるだろうしな」
 紫に聞かれたのでそう言っておく。確か、幻想郷は特殊な場所だって覚えがある。それで手伝えないということなのだろう。
「でも、感謝はしているわ。もし、あなたがああしなければ……霊夢でもあれを倒すのは無理だったでしょう。
それこそ、私や萃香が出なければならなかったでしょうね。別にそれに問題があるわけでもないけど……
でも、大事な事になる前にあなたが倒してくれたもの」
「そりゃどうも……」
 紫に言われて複雑な気分になる。というか、あれって偶然が重なっただけなんだよな。
なんか、変な声が聞こえたせいで胸にある石が気になっただけだし……そういや、あの声って結局なんだったんだ?
「だから、この礼はいつかさせてもらうわ」
「はぁ……」
 紫の話に俺はあいまいな返事を返す。礼といってもなぁ……別に何か欲しいってわけじゃないし……
などと、騒がしくなる宴会を見ながらそんなことを考える。




 あとがき
そんなわけで東方編はこれにて一旦終了です。出番がないわけではないですが、しばらくは登場しません。
にしても、今回はあっさりと終わらせちゃいましたかね?
そして、出しちゃいました。私を象徴するキャラが……ただ、今回は裏方メインですがね。
しかし、これはチートすぎるかと反省してたりしますけど……
さて、次回は再びボルテクス界へ。そこで翔太達は新たな力を手にすることに?
それと質問ありましたが、理華がサマナーになることは無いです。代わりにもう1人のヒロインがなりますけど。
そのヒロインの登場はもうしばらくお待ちください。では、次回をお楽しみに〜



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