in side
さて、俺の目の前にはなぜか美希と克也と直貴がいる。3人ほど知らない顔がいるが……そっちは後で聞けばいいとして――
にしても、なんでボルテクス界にいるんだ? 俺達がこっちの方に来たのは探索に向かう途中だったからなんだが……
そしたら美希達が悪魔の群れに襲われてたんで助けたと――
「いや、その……な……」
と、美希はなぜか顔をそらしつつ、何かを言おうとしている。うん、可愛いけどね。今回ばかりは誤魔化されないよ?
つ〜か、俺は何回も言ってたよね? ボルテクス界に来るなって? なのになんでいるのさ?
「すまないが……君はお嬢の知り合いか?」
「あ、ああ……翔太は私の幼馴染みだ……」
野戦服を着たおっさんに聞かれるが、美希が代わりに答えてくれたけど……そういや、この人達って誰だ?
一応、武器は持ってるけど……それを聞くべく、美希に視線を向け――
「幼馴染み? そんな者がなぜ、この世界に?」
おっさんが美希に顔を向けて聞いていた。どうやら、この人は俺達の事情を知らないらしい。
で、美希はといえば……視線を漂わせていた。うん、なんか嫌な予感するんだがね。
それはそれとして――
「にしても、お前達もなんでこっちに……」
とりあえず、なんで2人もこっちにいるのか聞こうとして顔を向けたんだが、克也と直貴はなぜかある方へと顔を向けたまま固まっていた。
何を見てるんだろうかと思ってそっちの方に顔を向けると……刹那と真名か……あ、やっべ――
「あ、あの……失礼ですが、お2人のお名前は?」
「え? あ、私は桜咲 刹那といいますが……」
「龍宮 真名だ」
声を掛けようとしたけど遅かった。すでに直貴が2人に名前を聞いて、2人も少し戸惑った様子で答えてるし。
で、名前を聞いた直貴はというと、克也と共に一瞬固まり――
「「マジでぇぇぇぇぇぇ!!?」」
「きゃ!?」
「な、なんだ!?」
2人して叫んでました。おかげで刹那と真名は驚いております。まぁ、克也と直貴の反応はある意味当然か……
直貴はアニメや漫画オタだし、克也もゲームオタではあるが、ネギま!は結構有名だから当然知っている。
そんな2人が刹那と真名を見れば当然の反応か……
「お、おい!? なんで、2人がいるの!? ていうか、マジモンなのか!?」
「あ〜……なんてぇか……ネギま!の世界に行ってきたからな……」
詰め寄る直貴にとりあえず答えておく。下手に誤魔化しても意味無さそうな気がしたんで一応正直に……
「なにぃ!? あるのか!? マジでネギま!の世界が!?」
「連れてってくれよ! 頼むからさ!?」
「出来るか!? ただでさえ、あっちの人達に睨まれてんのに、更に疑われるようなこと出来るかぁ!?」
案の定、克也もその事実に驚き、直貴が詰め寄ってくるが、俺は絶叫をもって断った。
いや、どうも学園長とかに疑われてるのは間違いなさそうだしな。そんな所へ克也と直貴を連れて行ったらどうなるか?
こいつらのことだから騒ぎ出すだろう。喜ぶという形で……でも、それはどう見たって不審者そのものです。
うん、連れて行けるわけないね。これ以上、疑われるような真似は出来るわけないし。
「なんだとぉ!? ていうか、てめぇいつの間に美人が増えてんだよ!?」
「仲魔だっつぅ〜の。というか、1人は俺の師匠を自称してるし」
「自称ではなく、そのものだがな」
それでも直貴は詰め寄ってくるが、一応断っておく。スカアハからツッコミをもらったけど。
「すまないが……事情を話してもらえると助かるのだが……」
と、おっさんから言われてしまう。顔はなんとなく引きつっているように見えたけど。
「ふむ、事情は話すべきだろう。今日の探索は打ち切って、町に戻った方が良さそうだな」
「だな……」
スカアハの言葉にうなずく。ていうか、こいつらほっぽっておくわけにはいかないし、かといって一緒に探索というのは危険すぎる。
そんなわけでお互いの自己紹介を交えて、町に戻りつつ俺達のことを話したんだが――
「そのようなことを……お嬢は知っていたので?」
「すまぬ……言っても信じてもらえぬと思ったのでな……」
おっさんこと君嶋さんに美希はすまなそうな顔をしていた。まぁ、世界が崩壊するかもと言っても、普通は信じないわなぁ。
ちなみに美希は俺達を手伝いたいと親の会社を動かしたらしい。手伝ってくれるのは嬉しいが、危ないって何度も言ってただろうに。
しかも、会社を動かしたって……やばくないか? それって?
「それにしても悪魔ですか……その小さい子やあの可愛らしい2人はともかく、他の方々を見てるとそうは思えませんが……」
と、仲魔達を見てそんなことを言う京介さん。まぁ、スカアハとかは普通に女性にしか見えないしな。
モー・ショボーだって、髪型を気にしなけりゃ普通に女の子に見えるし。
で、今気付いたんだけど……香奈子さんの視線がフロストとランタンに向けられてままだったりする。
顔を赤らめていたりするけど、もしかして可愛い物好きとか?
「ほら、町が見えてきたよ」
「ほぉ〜、あれがそうなのか……」
ノーディスが見えてきたので理華が指差すと、君嶋さんが感心したような顔を向けていた。
やれやれ、今日の探索は諦めた方がいいよな、やっぱ……
そんなことを思いつつ、町に入ったんだが――
「お、翔太じゃないか。どうしたんだ? 今日は戻るのが早いじゃないか?」
「色々とあってね……」
町の人達に声を掛けられるんで、適当に答えておく。
「なぁなぁ、なんか人気者になってね?」
「色々とあってな……」
思わず明後日を見つつ、克也の疑問に答えておく。ホント、色々とあったよなぁ〜……
でもさ、良く考えたらスラム街のチンピラ達を壊滅って……今考えると、なんであんなことしたかな?
あれがきっかけのような気がする。町の人達にすっげぇ感謝されたしな。
「ここは?」
「こっちの世界での俺達の家だよ」
「家って……なんでそんな物を持ってんだよ?」
「……まぁ、色々と……」
美希に聞かれたんで答えたら、直貴にそんなことを聞かれた。返事は誤魔化したけど……
いや、気が付いたらもらってましたとか言ったら、話がややこしそうだったしな。
そんなことを考えつつ、自分の家に入ったら――
「あ、翔太様」
ラウルと話していたメアリがいました。なぜだろう? そこはかとなく嫌な予感が……
「ちょうど良い所に戻られました。ヴィクトル様がお呼びです」
「やっぱりかい」
メアリの言葉に思わず漏らしてしまう。いや、メアリがここに来たってことはそういうことなんだろうけどさ。
「なぁ、翔太……気のせいじゃなかったら、あの子ってゲームに出てた――」
「気のせいだ」
克也が何かを言おうとしていたが、キッパリと断っておく。ていうか、ここでそんなことを話したら、話がややこしくなるだけだし。
しっかし、今度は何させるつもりなんだろうか? いや、世話になってるから断る気は無いけどさ。
「で、何か用事なの?」
「それは来てから話すとおっしゃっておりましたが?」
聞いたら即答で返されました。メアリ……最近、お茶目になってきてませんか?
最初の方こそ、淡々といった感じだったんだが……ここ最近は首を傾げたりとか、そういう仕草が増えてきている。
いや、いいんだけどね。別に俺達に問題にならなけりゃそれで。
「しょうがないか……わりぃ、一緒に来てくれるか?」
「私達は別に構わないが……」
振り向いてそう言っておくと、美希が戸惑った様子で答えてました。
まぁ、いきなりこんなことになったら戸惑うのも当然か。
「つ〜わけで俺達は行ってきます。で、申し訳無いんですが、今日は人数多くなるんで多めに買っておいてもらえますか?
お昼は外で食べてきますんで」
「わかりました。では、後ほど」
夕飯の材料の代金を渡しつつ、ラウルに頼んでおく。今になって思うとあそこで会った時に美希達を帰すべきだったんだろうけど……
いや、また同じことしそうだな。美希って、なんか義理堅いところがあるし。だから、納得するまではこっちに泊めた方がいいかもしれない。
そんな理由でラウルに頼んでおいたんだが――
「な、なぁ、翔太……あの人誰? 悪魔だと思うけど……」
「あ〜……この家のお手伝いさん……かな?」
「なにぃ!? 家まで持ってメイドまでいるだとぉ!? お前、羨ましすぎるぞ!?」
克也に聞かれたんで明後日見つつ答えたら、直貴がいきなり吼えました。
いや、メイドじゃ無いって。見た目はそれっぽく見えるけどさ。メイドじゃ……無いはずだよね?
なぜかそんな不安を感じつつ、未だに騒がしい直貴を無視してヴィクトルさんの所に向かうことにしたのだった。
「業魔殿にヨーソロー!」
はい、相変わらずの出迎えですね、ヴィクトルさん。
初めて見た美希や君嶋さんに香奈子さん、克也と直貴と京介さんは呆気に取られてますよ。
「む、どうやら初めて見る者達がいるようだが?」
「ああ、知り合いがどういうわけかこっちに来ちゃいまして……で、用事ってなんですか?」
首を傾げるヴィクトルさんに答えつつ、とりあえず用件を聞いてみる。厄介ごとじゃなけりゃいいけど。
「うむ、以前君が持ってきたドリー・カドモンだが、起動出来ないのだ。不良品というわけではないようなのだが……
そこで君にあのドリー・カドモンを渡した人物に確認を取ってきて欲しい」
なんてこと考えてたら、ヴィクトルさんにそんなことを頼まれました。
でもまぁ、聞いてみると大したことないことだな。お昼食べてから行っても、夕方前には戻れるし。
「あ、あの……」
なんてことを考えてたら声が聞こえたんで振り向いてみると……香奈子さんがどっかを指差しながらヴィクトルさんに顔を向けていた。
なんだろうと思って指差した方に顔を向けたら、俺と同じGUMPやら色んな形をしたCOMPなんかが飾ってあった。
「何かな?」
「あれって、翔太君が持ってるのと――」
「いかにも。あれらは全てサマナーとなるべく必要となる召喚機『COMP』だ」
震える声で問い掛ける香奈子さんに、問い掛けたヴィクトルさんが答えた。
そういや、ノーディスに来る時にGUMPのことを簡単に話したっけ。その時、香奈子さんはかなり興味持ってたみたいだけど。
それでかな? 同じ物を見て興味が出ちゃったと。
「あれって、譲ってもらえるのですか?」
「うむ、構わん。好きな物を持っていくがいい」
「え、いいの?」
問い掛ける香奈子さんにヴィクトルさんはあっさりと答えたんで、思わず聞き返してしまった。
いや、なんかあっさりすぎねぇ?
「ここに来た時点でその資格を持っているのだ。別に問題では無い」
「えっと、ただで……いいのですか?」
「むろん無償では無いが、定期的に悪魔を渡してくれれば良い。私としてはそれで十分なのでな」
戸惑ってる香奈子さんに説明してたヴィクトルさんが答えてました。そういや、ここ最近研究用の悪魔を出してないな。
交渉めんどくさいんだけど……適当なのを見繕っておいた方がいいかなぁ〜……
なんてことを考えてる内に香奈子さんとなぜか美希までもがCOMPを選んでいたりする。
いや、なんで美希まで? なんて疑問を考えていたら、2人とも選び終わったようだった。
で、2人が選んだのは香奈子さんは左腕にカバー付きのキーボードを装着するタイプ。
モニターは左目に付けたゴーグルに表示されるようになっている。ちなみに無線、つまりコードが無い。
コードがあると邪魔になるんだよね。俺のGUMPもそんな風に出来ないかな?
それで美希はといえば、俺と同じGUMPだったりする。ただ、色は赤かったりするけどね。
「なんでそんな物を……」
「いや、興味がありまして……あれ? 文字がわからない?」
「ああ、それはヴィクトルさんに頼めば、直してくれますよ」
呆れてる君嶋さんに香奈子さんは嬉しそうに言ってるが、文字のことで首を傾げてたんで言っておく。
まぁ、そっちはいいんだけど――
「しっかし、なんで美希まで……」
「あ、いや……私も興味があって……」
聞いてみたら、美希はなぜかもじもじしてました。うん、見てると可愛いけどね。
「く! 羨ましい! 羨ましすぎるぞ、翔太ぁ〜!?」
「何がだ?」
いきなり涙を浮かべて言ってくる直貴に顔をしかめつつ聞いてみるが……
俺はこの時気付かなかったけど、理華とミュウとルカとクー・フーリン、シルフにモー・ショボーにアリスが睨んでたらしい。
その光景にスカアハと真名と刹那は呆れた目で見てたらしく、ミナトや克也は顔が引きつってたらしいけどね。
とりあえず、美希と香奈子さんのGUMPとCOMPの設定を終えた後、俺達は村正さんの所に向かった。
というのも、今後のことを考えると君嶋さんや香奈子さん、美希の装備を強化した方がいいと思ったからなんだけど――
「ふむ、これは――」
村正さんは美希が持っていた日本刀をなぜかじっくりと眺めていました。なんでさ?
「どうか、なさったのですか?」
「あ、これは失礼……良く出来た刀でしたので……これはまた、名のある刀鍛冶が打った物なのでしょうな」
「そうなのですか?」
感心したように答える村正さんだが、問い掛けた美希はといえば首を傾げている。
「違うのですか?」
「いや、その……武器として質の良い物をと……それでその刀にしたのです。名はそれほど売れてないと思いましたが……」
「なんと、そうでしたか……ですが、これほど良い刀を打てる方です。いずれ、名が売れるかもしれませんね」
美希の言葉に逆に首を傾げていた村正さんはなにやら感心していたけど、やっぱりというか俺にはわからん。
刹那だけはなにやらうなずいていたりするけどね。
なお、まったくの余談だけど村正さんの言うとおり、美希が持っていた刀を打った人は後に有名になったらしい。
もっとも、刀を使う人限定らしいけどな。
「出来ましたら、この刀を後学のために譲ってもらえないでしょうか?
むろん、ただでとは言いません。代わりに私が打ちました刀を差し上げますので」
「え? あ……よろしいのですか?」
村正さんの申し出に美希は戸惑ってるけど……まぁ、持ってた剣がなにやら気に入られていきなり欲しいと言われれば当然かな?
「ええ、この剣はそれだけの価値がありますので」
「そうでしたか……そういうことでしたら、私は構いません」
「ありがとうございます。ところで防具の合成は行っていきますか?」
「合成?」
嬉しそうにしている村正さんの問い掛けに、うなずいていた美希は首を傾げるけど――
あ、そういや合成のこと話してなかったっけ? どうりでここに連れてきた時に変な顔をしてると思ったら。
「合成っていうのはフォルマっていう物と武器や防具を合成させて、強くすることだ。俺や理華もやってるよ」
「そうなのか……では、今着ている防具も?」
「はい、可能ですよ」
俺の話に美希が問い掛けると村正さんが笑顔で答えてくれた。
それを見てか、美希は防具を脱ぎ始める。まぁ、基本的に俺と同じなんで下着姿に〜なんてことはないけど……
美希はこういう所に無頓着だからな。昔、俺と美希の前で堂々と下着姿見せた時があったし……あの時から大きかったな。
そんなわけでフォルマと合成代金を出して、美希の防具を合成するのだった。
ちなみに君嶋さんと香奈子さんは今は必要無いと断ったけどね。ただ……合成場面に美希達が呆気に取られてたのは……仕方ないよな?
「う〜ん、出来なくは無いんだけど……リボルバーはかなり使いづらいわよ?」
「そうなのですか?」
さて、ラリーさんの所に行ったんだが、美希の銃を合成しようとして、そんなことをラリーさんに言われてしまった。
確かにリボルバーはなぁ……漫画やアニメとかで見るけど、弾込めるのって面倒そうだし。
「私としてはこちらの方が主ですので……」
「だとしてもよ。必要な時に撃てないと危ないわよ?」
申し訳なさそうに村正さんにもらった日本刀に手を添えつつ美希は言うんだけど、ラリーさんは呆れていました。
でもまぁ、俺もラリーさんの意見には納得。撃とうと思って弾切れで怖い思いをしたのは一度や二度じゃ無いしな。
「とりあえず、初心者にはベレッタがお勧めかしら。翔太、あんた持ってたわよね? それ貸してあげたら?」
「あ、ういっす」
ラリーさんに言われてベレッタを取り出す。ちなみに今はベレッタとデザートイーグルという銃の2つを持ってる。
というのも、デザートイーグルは威力がある分扱いにくいと言われてたんで、
慣れるまでは比較的弱い悪魔がいる所でデザートイーグルを使い、強い所はベレッタという感じで使ってたんだけど――
反動とかそれほどでもなかったので、すでにデザートイーグルがメインになってたりする。
真名は普通はそんな簡単に慣れるもんじゃないんだがと呆れられてましたが……
「あ、ああ……すまない……」
そんなわけでベレッタを受け取る美希だが、なんで顔が赤いのさ?
「で、あなた達のだけど……流石にすぐには無理だから、私の銃をレンタルするけど?
あなた達なら、翔太みたくぞんざいに使わないでしょうしね」
で、ラリーさんはこっちを睨みつつ、そんなことを言ってくる。
そんな睨まんでください。あなたのせいで真名に銃のメンテナンスのやり方、教わる羽目になったんですから。
いやね、かな〜り厳しいのよ。自分の命に関わるからってね。スカアハもその通りだって言ってやらせるし……
「しかし、我々には手持ちが……」
「翔太に出させればいいでしょ? お金だけは持ってるんだし」
で、君嶋さんはそんな理由で渋っていたが、ラリーさんはこっちを見つつそんなこと言ってくるし。
まぁ、そうなるはなぁ……お金は持ってるのは確かだけどね……最近、出費が増えてるんですけど……
「いいの……かね?」
「まぁ、ボルテクス界じゃ武器は強い方がいいですしね。ああ、お金の方はご心配なく。
確かに持ってますから……ここ最近、ちょっと出費が激しいですけど……」
戸惑う君嶋さんに顔を背けつつ答える……あ、なぜか涙が……
いや、本当……最近、出費が激しいよね。麻帆良で使った道具とか、刹那や真名の装備とか食事代とか……
クノーさんやトニオ達の装備とか……うん、なんでだろうね?
「あ、あの……麻帆良に戻りましたら、出してもらえるようにいたしますから」
「わ、私も戻ったら、代金は出すから……な?」
「うん、ありがとうな……」
戸惑ってる刹那と美希の優しさが心に染みます。うん、本当に嬉しいよ。
まぁ、そんなこともあったが、君嶋さんと香奈子さんは持っていた銃を渡して、代わりの銃を借りたのでした。
お金はその場でしっかりと取られたけどな……
「ふ〜ん、そうなのかい。ま、ゆっくりしていきなよ」
さて、今俺達はリョカさんの酒場に来ています。昼食を食べるためにね。で、リョカさんにそんなことを言われてたり。
ちなみにリョカさんには俺達が別の世界から来てるってのは話してある。まぁ、ルカがすでに来てるしな。
「にしても……君はこの世界でどうやってお金を稼いでいるんだい?」
「ん? 生体マグネタイトを換金してますけど?」
「生体マグネタイト? なんだい、それは?」
君嶋さんにそんなことを聞かれたんで答えたら、京介さんに聞かれたんだけど――
「あ〜……そういや、俺も良く知らないな」
なんて言ったら、何かもの凄い音がしました。見てみたらスカアハがテーブルに突っ伏してました。なんで?
「貴様! サマナーだろうが! なんで知らないんだ!?」
「あ〜いや……悪魔のエネルギー的なもんかな〜って感じだったんで、あんまり気にしたことないんだってば」
と思ったら、いきなり起き上がったスカアハに襟首締め上げられた挙句に怒られました。
いや、本当に気にしたこと無いから、調べたこと無いんだって。
「まったく……生体マグネタイトとはいわゆる生命エネルギーだ。
悪魔は本来魂魄……まぁ、お前達には幽霊の類と言えばわかりやすいかもしれんが……すなわち実体を持たない。
実体化するためには生体マグネタイトが必要なのだが、このボルテクス界は生体マグネタイトで満ちた世界だ。
故に悪魔達が実体化しているわけだが……これが人間が襲われる理由ともなっている」
「どういうことですか?」
スカアハの説明に香奈子さんが首を傾げるが……そういや、人間も生体マグネタイトを持っているとか聞いた覚えがあるような――
「生体マグネタイトは感情の変動が激しい生物ほど多く持つとされている。人間はその典型だからな。
また、多量の生体マグネタイトを得ることは悪魔にとっては自身の強化に繋がる。それ故に襲われるわけだ」
「なるほど……ところで生体マグネタイトは人間に影響を与えるのですか?」
スカアハの説明に京介さんがうなずきつつそんなことを聞いてきた。
そういや、そこら辺気にしたこと無いけど、聞いてみたら気になるな。実際、どうなんだろ?
「まぁ……そろそろ話すべきか……
確かに今まで生体マグネタイトの影響を受けなかった者がこのボルテクス界に来た場合、何かしらの影響は出る。その典型が翔太だろうな」
「へ? 俺?」
スカアハの話に思わず自分を指差してしまうけど……え? 俺って、影響受けてたの?
「お前は自覚が無いようだがな……普通、人間が悪魔と剣で打ち合うなぞ、達人クラスか刹那のように気で強化でもしなければ無理だ。
お前の場合は今までのやり方で悪魔と戦い続けたせいで、その方向性に強化される形で影響を受けたわけだ。
ちなみに言っておくが、今のお前は刹那なんかよりも強いぞ」
「え? マジで!?」
「ええ……戦い方にもよるのでしょうが……普通に戦ったら、勝てる気はしませんね……」
スカアハの言葉に驚いてると、刹那は申し訳なさそうに答えていたけどさ……
いや、何? 俺って、漫画のキャラより強くなってたの? 刹那って、確かかな〜り強かったよね?
なのに、俺の方が強いって……なに、そのチート?
「まったく……本気で自覚してないようだから言っておくがな……
今お前達が行ける所に現われる悪魔とお前と同じやり方で戦える人間なぞ、そうはいない」
「ですね……私も気で強化したり、奥義を使ってやっとですし……」
呆れられてるスカアハに続いて、刹那もため息混じりで言ってますが……
ええと、それって俺が異常ってこと? 何、俺ってそんなに凄いことになってたの?
え、マジで? なんか、実感無いんですけど?
「わかってないようだな……まぁ、戦ってる相手がいつも格上なのだから、当然なのかもしれんがね。
(もっとも、この短期間でそこまでの力を得たら、何かしらの影響が体に出るかもしれんが……)」
スカアハに呆れられていたが……途中からはなんて言ったんだ? なんか、小声で聞こえなかったんだけど?
まぁ、でも……確かに戦ってるのがいつも俺達より強い悪魔ばっかだしなぁ……人間とケンカしたことなんて……
リニアスとかいう女性とはあったけど、あいつも悪魔並に強かったから参考にならないか?
「ともかくだ、普通の人間相手に本気でケンカなんてするなよ? 今のお前は殴り殺すなんて簡単に出来るだけの力があるんだからな」
「え?」
スカアハに言われて思わず顔が引きつる。いや、ていうか殴り殺すって……やりたくないんですけど?
というか、俺っていつの間にそんなことになってたのさ? なんか、欝になりそうなんですけど?
「にしちゃ、いつも通りって感じがするけどな?」
「ていうか、変わってないような気がするけどね」
「強さは認めるが……確かにな」
上から順に克也、直貴、美希の言葉でした。あれ? なんでだろ?
大した言葉じゃないはずなのに、なんか泣けそうだよ?
「おや、なにやら賑やかだね」
なんてことを考えてたら声を掛けられたんで振り向いてみたらクノーさんがいた。
「それでは彼が?」
「そう、噂のレディースサマナーさ」
「あのすみません……それ、勘弁してください……」
で、横にいた見知らぬ女性と話していた。その女性は背中まで伸びるエメラルドグリーンの髪に知的美人と言っていい顔立ち。
背は高くて見た目はモデル体型という体を女性用スーツみたいな服で包んでいたけど……
とりあえず、すみません。そのあだ名は勘弁してください……それを知ってからは軽く自己嫌悪なんだから……
「レディースサマナーとは?」
「聞かないでくれ。ええと――」
「ああ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私はウルスラ・ローラン。君の噂は色々と聞かせてもらってるわ」
こっちを見てる美希にそう言いつつ、誰なのかを聞こうとしてウルスラ……さんでいいのかな?
ともかく笑顔でそんなこと言ってくれるのだが……
「噂って?」
ほら、克也が興味持っちゃったじゃないか。直貴も聞きたそうにしてるし……
「頼む、今は聞かんでくれ……」
とりあえず、少しうなだれつつそう言っておく。だってさ、自分が意図してない所で変な噂があったらへこまないか?
いや、一流のサマナーって言われても俺としてはむずがゆいだけだし、
レディースサマナーは意図してなかったとはいえ、知ってショックだったし……
「彼女は前に話した知り合いだよ」
「ああ、サマナーのギルドを作るって話してた」
「あなたがサマナーギルドに入ってくれると言ったおかげで色々と助かってるわ。あなたは色んな意味で有名人だしね」
クノーさんの言葉にそのことを思い出すと、ウルスラさんに笑顔でそんなことを言われました。
ていうか、何が助かってるんだろうか? なぜだろう……なんか不安を感じるんだけど?
「ところで今日はこれから予定でもあるのかな?」
「ヴィクトルさんに頼まれて、スリルさん所に行くつもりなんですけど」
「スリル? 誰かな?」
「ええと……科学者と言えばいいのかな? 俺のGUMPを強化してくれたりしてましたけど」
「GUMPを強化? どんな物なのかな、それは?」
「ええと、仲魔に出来るストックを12体に増えたのと……オートマッピングの範囲が広くなりましたね。後、悪魔解析とかかな?」
聞かれたことに答えてたら、聞いてきたクノーさんは少し驚いたような顔をしていた。
オートマッピング機能は本当に助かってたりする。なにしろ、記録される範囲が結構広くなったからな。
おかげでマッピングが凄く楽になったし。後、悪魔解析機能だけど、解析に掛かる時間が少しだけ短くなったっけ。
「すまないけど、私達をその人の所へ案内してくれないかしら?」
「へ?」
「COMPを強化というのに興味が出たのよ。そういう強化がなされるのなら、私達にようなサマナーは色々と助かるでしょうしね」
ウルスラさんに聞かれて戸惑ったけど、話を聞いて納得した。
確かにGUMPを強化してもらってから、戦いとかは楽になった所もあったしな。
「まぁ、本当はギルドのことで話し合いたかったけど、それはまた今度にするわ」
「そうですか……まぁ、俺達が昼食食べてからになりますけど、いいですかね?」
「いいわよ。私達もそのつもりでここに来たから。マスター、メニューをちょうだい」
ウルスラさんに確認を取り、ほっとため息を吐く俺。何気に人数が増えたけど……まぁ、いいかな?
なんてことを考えつつ、俺は注文した食事が来るのを待っていた。
あとがき
そんなわけで、クノー達も交えてスリルの所へ向かうこととなった翔太達。
次回はそのスリルの所であることが起きていて……というお話です。
ところでキャラの名前で気付いた方もいるかもしれませんが……
実はファンタシースターポータブル2のキャラの名前を使っていたりします。
つ〜のもキャラの名前考えるの苦手でして……で、今やってるゲームでもあったりしますが。
うん、ダメっぽいよね、私^^;
こんな状況ですが、次回をお楽しみに〜
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