in side

「だぁ! うっとしい!?」
「仕方あるまい! 銃を使える者は妖精を狙え! それ以外は悪魔だ!」
 あまりの状況に思わず叫んでしまうが、それは指示を出しているスカアハに怒られていた。
さて、俺達は紫に頼まれて悪魔退治に来たのだが――
「ていうか、なんで幻想郷の妖精まで襲ってくるんだ!? しかも、寒いし!?」
「気持ちはわからなくもないけど、悪魔の方を頼むよ、翔太さん」
 それでも叫んでしまうの状況なんだよ。まず、なぜか幻想郷の妖精が襲ってくる。しかも、たくさん。
こっちの方は霊夢や魔理沙、早苗に妖夢に相手してもらってるけど、それでもこっちに来る妖精がいる。
そっちは美希や君嶋さんに香奈子さん、真名にスカアハにウルスラさんと銃を持ってるのが対処している。
ちなみにだが、ウルスラさんの武器は両手に銃だったりする。
 で、残りは悪魔の相手をしてる。真名に言われた俺ももちろん、悪魔の相手だ。
で、もう1つの問題が寒さ。確か、博麗神社にいた時は夏が近いかな〜って感じだったんだけど、ここはまるで冬のように寒い。
そのせいなのか、襲ってくる悪魔は氷結魔法や氷結に耐性持ってるのが多いし。
「仕方あるまい。刹那、飛べるな? 飛んで、上から悪魔を押さえ込め! 翔太はそこに突っ込んでいけ!」
「え? ですけど――」
「さっさとやらんか!?」
「は、はいぃ!?」
 その指示に刹那は戸惑ったけど、スカアハに怒鳴られて悲鳴を上げながら翼を出して飛んでいった。
ていうか、あれが刹那の翼か〜……あれ? なんがキラキラしてね? 確か、漫画じゃ純白とか書いてあったような――
「何ボケっとしている! お前も行かんか!」
「へぇ〜い」
「はぁ!」
 スカアハに怒鳴られて剣を構える。その間に刹那は3体の悪魔に斬り込んでいき――
「どっせぇ!」
 俺も突っ込んで悪魔を纏めて切り裂き――
「離れて! アギラオ!」
『ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!?』
 理華の声に俺と刹那はすぐさま離れるとそこに炎が飛び込んできて、悪魔達を焼き払った。
「ふぅ〜……やっと静かになったわ」
 と、霊夢がため息を吐きながら降りてきた。良く見たら悪魔や妖精の姿が見えない。
ああ、なんとか追い払えたのか。しっかし――
「悪魔はともかく、なんで幻想郷の妖精まで襲ってくるんだよ?」
「ああ、たぶん刺激されたんじゃないのか? 妖精ってのは異変とかになるといっつも騒ぎ出すしな」
 俺のぼやきに魔理沙が答えるけど……そういや、ゲームじゃ雑魚キャラは妖精だったっけ?
にしても騒ぐにしたって数が多すぎやしないか? おかげで戦うのが大変だっての。
「にしても、翔太さんもお強くなられましたね?」
「まぁ、なんていうか……それなりに戦えないとやってけないしな」
 早苗に言われて、後頭部を掻きつつ答えるが……まぁ、戦えないと探索なんて出来ないしな。
武器のおかげでもあるけど、それなりに戦えないとねぇ……
「それなりにと言われてしまうと私も困るのですけど……」
 なんてこと言いつつ刹那が戻ってきた。翼を出しっぱなしで。ふむ、翼か……
「なぁ、刹那」
「なんでしょうか?」
「翼、触ってもいい?」
「へ?」
 頼んでみたら刹那がポカンとしてました。いや、だってさ――
「いやぁ〜、漫画でも見てたけど、どんな感触なのかな〜とね」
「え? あ、いや、その――」
「やめんか」
「あた」
 本音を言ってみたら刹那が戸惑ってました。スカアハに小突かれて止められたけど。
「ところで刹那さんも烏天狗なのですか?」
「あ、いや、私はその――」
「こやつは烏族と言われる一族のハーフだよ」
「そうなのですか」
 戸惑ってる刹那の代わりにスカアハが答えると、問い掛けた妖夢はなにやらうなずいていた。
で、それに戸惑ったのは刹那である。というのも――
「えっと、何も思わないんですか? 翼が白いとか?」
「それが何か問題でも?」
 刹那がそんなことを聞くけど、妖夢は首を傾げた。まぁ、妖夢の言うとおりだよな。
それで誰かが困るわけじゃないし。あ、驚く人はいるかもしれないか?
「前にも話したが、気にする奴もいればこの者のように気にしない者もいる。事情を知る知らないに関わらずな。
お前はそういう者もいるということを知っておいた方がいい」
 などと、腕を組みつつ話すスカアハ。刹那はポカンとしてたけど……まぁ、俺としては刹那は気にしすぎだと思うなぁ。
確か迫害されてたらしいから、しょうがないかもしれないけどね。
「それにしても、妖精だったか? それがさっきみたいな数で来られるとまずいな」
「ええ……流石に手持ちの弾丸だけだと厳しいわね」
 君嶋さんの言葉にウルスラさんがうなずいた。そうなんだよな。
幻想郷の妖精は悪魔より弱い。大抵は銃の1・2発で簡単に倒せる。問題なのはその数。
そりゃもういったいどんだけの数がいるんだと思う位の数が来るんだもん。
霊夢や魔理沙、早苗や妖夢のおかげでこっちに来る数はだいぶ減ってるけど、それでも数は多い。
別に直接斬ったりして倒せなくもないけど、妖精も霊夢達みたく撃ってくるからねぇ。
だから、銃で倒した方が安全だけど……数が多いもんで弾丸が心許なくなってきた。
銃を使うサマナーなんかはボルテクス界で探索とかやる時はかなりの数の弾丸を持っていくのは普通だ。
銃攻撃が弱点のは除くけど、悪魔ってのは銃弾1発くらいじゃ倒せないしな。
だからなんだけど……それでも妖精の数の多さには大して役立ってない様子。
一応、まだそれなりの数はあるけど……さっきみたいな数が来るとやばいよなぁ……
「なるほど……彼のお気に入りはそれなりに出来るということか」
 なんてことを考えてたら、そんな声が聞こえてきました。
なんだろうと顔を向けてみると……白いワンピースを着た女の子がこっちを見てました。
ブロンドの髪は腰の辺りまで伸びており、なんか羊の角みたいな髪飾りを付けている。
顔立ちは……なんて言えばいいんだろうか……人形みたいな印象を受けるんだけど……
「なぁ……あの子、やばくない?」
「ああ……まさか、ルシファー殿が直々に来られるとはな」
「さて、なんのことかな? 私はルイ・サイファーというしがない少女だよ。スカアハの姿をした誰かさん?」
 思わずそんなことを漏らすけど、スカアハさんはうなずいてくれました。
ねぇ、ルシファーって何? 詳しくは知らないけど、確かとんでもねぇ悪魔じゃなかったっけ?
いやね、気配からしてとんでもねぇとは思ってたよ? 本気でとんでもねぇじゃねぇか!?
 なに、ルイ・サイファーって!? 誤魔化してるつもりか!? 見ろ! 刹那や真名なんか顔引きつってるぞ!
理華やミュウにアリスなんて少し怯えてるし! そんなのがなんでここにいるのさ!?
 ちなみにこの混乱で俺はルシファー……いや、ルイ・サイファーと名乗る少女のひと言に気付いてなかったけど。
「それで何の用だ? まさか、これはお前の仕業とかだったりするのか?」
「それは違うよ。私は様子を見に来ただけさ。彼の者がお気に入りの青年をね」
 前に出て槍を構えるクー・フーリンにルイ・サイファーは笑顔を交えて答えるんだけど……
彼の者? お気に入り? なんだろう? 激しく嫌な予感しかしないのは……
「ついでに言っておくけど、今回の大元となっていることを起こしてる奴には迷惑してるんだよ。
なにをトチ狂ったのか、根源から変えようとしてしまっている。それは我々が望むものではないさ」
「なるほどな……」
 ルイ・サイファーの話にスカアハはなぜかうなずいてるし。
ん? いや、ちょっと待て――
「いや、なんでうなずいてるのさ?」
「なに……なにが起きているのか、おおよそ知っているからだよ」
「おや、あれはそれなりに秘密裏に動いていたと思っていたけどな?」
「知り合いがとんでもなくてな」
 気になって問い掛けたら、スカアハは呆れた様子で答えてたけどね。
ルイ・サイファーは感心したような顔をしてたけど……なに、そいつ?
とんでもないって、なんでとんでもないのよ?
「まぁ、いい……ともかく、私は今回のことには関わっていない。むしろ、失敗して欲しいとすら思っている。
そういった意味では君達を応援してるんだよ?」
「本当にか?」
「疑り深いね……ま、しょうがないけど……でも、応援しているのは本当さ。
ボルテクス界に戻ったら、ノーディスの町でラットという悪魔を探してみな。種族は堕天使メルコムだ。
君達に協力するように言ってある」
 スカアハは睨んでいる。まぁ、明らかに怪しいしな。
で、肩をすくめながら話すルイ・サイファーはといえば、そんなことを言い出すけど。
協力ねぇ……なにしてくれるんだろうか? もしかして、罠だったりとか……すっげぇ、ありそうなんだけど……
「まぁ、それもここにいる奴をなんとか出来たらだろうけどね。
ああ、この原因となってる奴は結構厄介だから、気を付けなよ。じゃあね」
 そう言って、ルイ・サイファーは消えてしまった。なんか、どっかの誰かを思い出すなぁ……
「なぁ、どういうことさ?」
「さてね……しかし、奴の言葉も全てが嘘ではあるまい。
今回の大元となった異変を起こした奴の思惑と、ルイ・サイファーのような者達の思惑はまったく違ったものだからな。
そういった意味では、応援してるというのは本音だろうよ」
 思わず聞いてしまうけど、スカアハは腕を組んで答えるだけである。
しっかし、その表情は複雑そうに見えた。確かになんか怪しさ爆発って感じもあったしな。
ん? そういや……
「なぁ、今回の大元を起こした奴とか言ってたけど……もしかして、何か知ってんの?」
「……今はまだ、それを話せる段階ではない。だが、必ず話す……それまでは待って欲しい」
 気になって聞いてみたんだが……そういや、何がどうなってるかなんて、知らないんだよな。
誰かがボルテクス界とボルテクス界と繋がった世界を崩壊させるとかぐらいしか……
 けど、スカアハは渋そうな顔してそういうだけだし……何がどうなってんのさ?
「翔太は……なんともないのか?」
「はい?」
 美希の声が聞こえたんで振り返ってみると美希が青い顔をしていた。
君嶋さんや香奈子さん、それにウルスラさんにクノーさんも。理華や仲魔達はすでにいつもの様子に戻ってたけど。
あ、良く見たら刹那や真名はまだ戸惑ってる感じがするな。
「あれは……なんだったんだ? 悪魔だったとは思うが……」
「ああ……あんなのは……初めてだ……」
 なんか、怯えているように見えるクノーさん。君嶋さんも戸惑ってるし……
まぁ、いきなりあんなのが出たらそうなってもおかしくないか。
「なんていうか……なんで、翔太君は平気なの?」
「ん〜……慣れ?」
「慣れって……あなたもとんでもないわね……」
 怯えた様子の香奈子さんの疑問に首を傾げながら答えたら、ウルスラさんにそんなこと言われました。
「まったくだ……あれは慣れでなんとかなるものじゃないだろうに……」
「いや、あれと同じくらいなのには何回も会ってるしな」
 呆れてる真名に後頭部を掻きつつ答えてみる。うん、今考えるとなんかとんでもない奴らばっかりに会ってるよね。
あのゴスロリボクっ娘とかさっきのルイ・サイファーとかボスっぽい悪魔達とか……そんなのに何度も会ってれば慣れてくるって。
そういう奴らに文句言ってやりたいけど……うん、無理だね。普通に話せるくらいで、戦ったら敵わなそうなのがいるし。


 まぁ、そんなこともあったが、その後も悪魔や幻想郷の妖精とかの襲撃を退けながら先へと進み――
「なに、あれ……」
 その場所に来た時、それを見た理華は呆然と呟いた。いや、俺も同じ気持ちだったけどね。
「ヒ〜ホ〜……ここはいいホ……ここを支配してやるホ……」
 で、何を見たかといえば、ジャックフロストっぽい何か……なぜ、そんな言い方をしてるかというと――
まず、マントと杖を纏っているはまだいい。しかし、頭には帽子ではなく、なんと言えばいいか……
あれだ。モーツアルトとかの肖像画に良くある金髪ロール髪。そんな頭になってんだよ。しかも、その上に王冠も乗ってるし。
それだけなら、まだ良かったんだけどね……
「なぁ、翔太さん……あれはデカすぎないかな?」
「デカイで済むか……あれ?」
 真名の言葉に思わずツッコムけど……いやね、言葉通りでっかいのよ。ちょっとした山くらいに……
あ〜……あれをどうしろと?
「あのさ……あれ、倒せんの?」
「不可能ではないが……厄介なのは違いない」
 思わず出た疑問にスカアハがため息混じりに答えてくれました。うん、そうだよね。デカすぎるよね……
剣、効くのかな……なんか、俺の剣が爪楊枝みたいな感覚に思えるんだけど?
「む? お前らは誰だホ?」
「あ、気付かれた」
「なら、先手必勝だ!」
 でっかいフロストがこっちに気付いたので思わずそんなことを漏らすと、魔理沙が前に出て――
「恋符『マスタースパーク』!!」
 六角形をした物からとんでもねぇビームをぶっ放しました。いや、マジでとんでもなくね?
ビームが太すぎて、でっかいフロストでも飲み込めそうだよ? あ、あれなら倒せる――
「甘いホ!」
 と、思ったらでっかいフロストの足下から大量のフロストが現われて、魔理沙が放ったビームとぶつかり合った。
うわ〜……魔理沙のビームが防がれてら……なんで、あんなので防げるんだ? ていうか、どんだけフロストがいるんだ?
「な!?」
 魔理沙もこれには驚いたようで……だって、ビームが完全に防がれたしね。
いや、俺も呆然としてるよ。というか、マジでヤバくね?
「お前ら、オイラを倒しに来たのかホ?」
「そうよ。とっとと終わらせてお茶が飲みたいの。だから、さっさと倒されなさい」
「なまいきだホ! お前ら、やってしまうホ!」
 でっかいフロストに霊夢がそんなこと言うもんだから怒らせたようで、大量のフロストがこっちに来た。
「霊夢の馬鹿〜!? 何、挑発してんのさ!?」
「うっさいわね〜。倒せばいいでしょうが、倒せば」
 思わず出た文句に霊夢は不服そうにしながらも襲ってくるフロストを倒していく。
けど、この状況はマズイ。フロスト自体は倒すことは難しくない。その姿から耐性と弱点なんて丸わかりだしな。
問題なのは――
「隊長〜……弾がもう……」
「こっちもだ。くそ……この数では……」
 泣きそうな香奈子さんだが、君嶋さんも悔しそうな顔をしている。
そ、手持ちの弾丸が尽きそうなんだよ。ここに来るまでに悪魔や幻想郷の妖精と戦ってきたんだが……
そいつらを倒すのにかなりの弾丸を使ってたんだよね。
俺や理華なんかはまだいいが、銃しか持ってない君嶋さんや香奈子さんに真名やウルスラさんはかなりヤバイ。
「いかん! 霊夢! そこから離れろ!」
「え?」
 いきなりスカアハが叫んだんで霊夢が振り向くと――
「ホォ−!」
 なんか、でっかいフロストが魔法をぶっ放してました。て、やべぇ!?
「くっ!?」
 霊夢も気付いてお札を構えるが……微妙に間に合わねぇって、あれは!
「なろ!」
「きゃ!?」
 そう感じて、霊夢を突き飛ばす。次の瞬間、とんでもなく冷たい冷気が俺に右腕に当たり――
「でぇ!?」
 右腕がでっかい氷に包まれてしまいました。しかも、そばにあった木を巻き込んで――
てぇ、ヤバイじゃねぇか!? 動けないよこれ!? 右腕の氷ががっしりと包み込んでて動かせないし、冷たいし!?
「まずはお前からやっつけてやるホー」
「わぁ〜!? ちょっと待ったぁ!?」
 しかも、でっかいフロストがこっちに来るし!? いや、マジで待ってって!?
「翔太!?」
「翔太さん!?」
 理華と刹那の叫びながらこっちに来るけど、流石に離れすぎだって。
ていうか、霊夢さん! あんた呆然としてないで助けて欲しいんだけど!?
てぇ、あいつがもう近くに来てるし!? どうすりゃいいんだぁぁぁぁぁ!?



 あとがき
本当ならこの話で終わる予定だったのですが……すいません。間に合いませんでした^^;
うん、連載感覚1日延ばした方がいいかな? 出来たら1週間で〜とか考えてるんですがねぇ……
そんなわけでピンチになってる翔太。そのピンチを救ったのは霊夢……ではなく、意外な者達だった。
次回はある意味王道(?)なお話です。お楽しみに〜



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