in side
さて、学校は予定通り午前中に終わり、俺と理華は着替えて学校で美希に言われた待ち合わせ場所にいた。
「そうだ。スカアハがGUMPを持ってこいと言っていたぞ」という、美希の話でGUMPはリュックの中だけど……
「なんでまたGUMP持ってこなきゃならないんだ?」
「さぁ……」
思わず首を傾げるけど、理華もわからないといった様子で首を傾げる。
別にボルテクス界に行く訳じゃないはずなんだが……何考えてんだろ?
「よ、翔太」
なんてことを考えてる内に、直貴と一緒に来た克也が手を振ってこっちに来た。
「やっぱり、来たか……」
「いいじゃねぇか。街見て回るんだろ? それに付いて行ったって」
呆れる俺に直貴はそう言うが……確かに街を見て回るだけだけどね。でも、どこ行く気だろ?
「あ、あれじゃない?」
「あれって……少しデカすぎねぇか?」
と、理華が指差すんだけど……うん、でっかいよね? 思わず疑問が漏れちゃったよ?
で、そのデカイバスはといえば、俺達の前に停車し――
「うむ、ちゃんといるな。ほら、さっさと乗らんか」
出てきた女性に首を傾げるはめになりました。あれ? この人どっかで見たような……あ――
「もしかして、スカアハ?」
「もしかして、わからなかったのか?」
思わず指を差しながら聞いちゃうけど、女性ことスカアハは呆れた様子だった。
いや、だってね……いつもの水着みたいな服の上にコート姿じゃなくて、女性用スーツみたいな服を着てるんだもの。
帽子も被ってないし……これで髪の色まで違ってたら、気付かないって。
「いや、服装がいつものと違ってたからさ……」
「なに、私も同行しようと思ったまでだ。だが、いつもの服装では問題がありすぎるので、美希に頼んで服を借りたのだよ。
他の仲魔達の服も用意してもらっている。そっちは中で着替えてもらうことになるがな」
思わず気になったことを言ってしまったが、スカアハは笑みを交えて答えてくれました。
なるほど、GUMPを持ってこいと言ったのはそのためか。確かに俺の仲魔って人の姿……ていうか、全員女性だしな。
……ええと、今頃気付いたんだが……これって完全にダメだよね? 仲魔が全員女性の姿って……
「ど、どうしたの?」
「いや、嫌なことに気付いただけだ……」
思わずうつむいて悩んでしまった俺に理華は戸惑いながら声を掛けてきたけど……
いや、今は気にしないでおこう。その次点でダメな気がしたけど。
それはそれとして、バスに乗り込んだ俺達。
「こんにちわ、翔太君」
それを出迎えてくれたのはウルスラさんだった。着ているのはブラウスにスカートとシンプルな感じ。
クノーさんはスカアハと同じで女性用スーツみたいな服を着ている。
刹那と真名にミナトは持ってきてた普段着を着ている。ルミアだけはいつも着ている服だったけど。
まぁ、ルミアの場合は元から秘書風な服装だったしな。でぇ――
「な、なんだよ……」
なぜか、恥ずかしそうにしているクー・フーリン。
着ているのはブラウスに短めのスカート……似合ってはいるんですが……恥ずかしそうにスカートの裾を押えないでください。萌えます。
「こ、これはスカアハが無理矢理……」
「いや、似合ってるけどね」
「え? な、あ、馬鹿!?」
恥ずかしそうにしてるクー・フーリンですが、本音を言ったら顔を真っ赤にして怒られました。なんでだろう?
「それじゃあ、仲魔達を喚び出せ。着替えさせるからな」
「へいへい」
スカアハに言われてGUMPを操作し、仲魔達を喚び出し――
「じゃあ、しばらく待っていてくれ」
そう言ってからカーテンを閉めるスカアハ。俺と克也と直貴は閉め出されたので空いてる席に座るとバスが走り出した。
「これを着るのかホ?」
「このままでいいホ」
「そういうわけにはいかないの。これに着替えないと、翔太と一緒に歩けないわよ?」
「うう〜……仕方がないホ」
嫌がるフロストとランタンの声が聞こえるが、理華にたしなめられていた。
ま、あの格好はな……特にランタン……マントの下、何も着てないよね?
「あら、ルカさんってスタイルいいですわね」
「あら、そういうあなただって……少し羨ましいかも」
シルフとルカのそんなやりとりが聞こえる。ていうかルカさん、どこが羨ましいのですか?
「ん〜、これに着替えるの?」
「うむ、仕方あるまい。アリスはともかく、おぬしの場合は少々目立つからな」
不機嫌そうなモー・ショボーに美希が言い聞かせていたが……モー・ショボーの服って、民族衣装みたいだしな。
それにどことなく冬服っぽいし。夏真っ盛りってな時期にその格好はおかしすぎるよね。
逆にアリスはワンピースだから、普通の女の子に見えるな。
「う〜、変な感じだホ」
「ちょ、ちょっと!? 何してるのよ!?」
「これって、胸に付けなきゃならないのかホ?」
「うう、こんなの履きたくないホ」
「だから、履かなきゃダメなんだってば!?」
嫌がってるフロストとランタンだが、なぜか理華の慌てた声が聞こえる。
うん、何してんだろ? すっげぇ、気になるよ。気になるけどね。
「やめろ、それは死亡フラグだ」
「で、でも〜……」
ふらふらとカーテンに近付いていく直貴の襟首をつかむ。完全に覗きをする気だったな、こいつ。
いや、俺も気になるよ? 気になるけどね……中にいる奴らがどんなのかを思い出せ。
「燃やされたり凍らされたり感電させられたりしてもいいのか? 下手すると殴られたり刻まれたり撃たれたりするぞ?」
「う……」
俺の話に直貴は青くなる。そう、カーテンの中にいる連中はそれがマジで出来る連中なんだ。
んな奴らの着替えを覗いてみろ。うん、下手すると死ねるって。
とまぁ、そんな悶々とした中、バスは目的地へと向かうのだった。
「なぁ、ここってまずくないか? 特に刹那と真名とか……」
目的地に到着し、降りたところで思わずそんな疑問を漏らす。
というのもね……ここって、秋葉原なんだよ。なんでまた、オタクの聖地の1つに来ちゃうわけ?
ほら、刹那と真名が注目されてるじゃないか。マジモンだと知れたら本気でマズイと思うけど。
ちなみにだが、着替えた仲魔達の服装はというと――
フロストとランタンは柄違いの半袖シャツにホットパンツにベスト。
ルカとシルフは女性用のスーツみたいな服。モー・ショボーはワンピースである。
うん、周りの注目がすげぇ……全員、美少女&美女だしな……後、何気に俺が睨まれてるような気がするのはなぜ?
「ああ、それなのだが……ある人に会うことになっているのだが、その人が待ち合わせ場所に指定したのがあそこなのだ」
と、美希がすまなそうに言いながら指を差したのは某大型電機量販店だった。
いや、なんでまたあんな所を待ち合わせ場所にしたんだろ? わかりにくいと思うんだけどな?
ていうか、誰なんだろ? 美希が待ち合わせしてる人って?
気にはなったが、とりあえず店の中に入ることにした。のはいいんだけど――
「これ、なんだホ?」
「不思議な機械が一杯ですね」
フロストやルカが興味深げにあちこちを見ている。スカアハ以外の仲魔達も似たようなもんだったけど。
そういや、仲魔達もこっちの世界に来るとはいっても、その間はGUMPの中だしな。
一応、ボルテクス界にも同じような物があるけど、無い物もあるから気になってるんだろうな。
「あれ、面白そうだホ」
「どれどれ〜?」
「待て。あんまり、あちこち触ろうとしないでくれ」
「「ええ〜?」」
ランタンとモー・ショボーが商品に触ろうとしたのを止める。2人ともなんで? という顔をしてたが……
ちなみに触ろうとしてたのはCDコンポだった。ボルテクス界だと音楽を聴く物はレコードとレトロな物だけど。
「これは……COMP……かしら?」
と、ウルスラさんが注目していたのはノートパソコンだった。
確かにCOMPの中には似たような形のもあるしな。ウルスラさんがそう思っても不思議じゃないか。
ボルテクス界じゃパソコンなんて無いから、なおさらそう思ってもおかしくはないだろうし。
「それはパソコンですよ。それでゲームが出来たりとか……書類を作るとかのお仕事が出来たりするんですよ」
「これで? けど、書類を作るといっても紙は無いようだけど……」
「ほら、あそこにあるプリンター。あれにパソコンで作ったのを印刷するんですよ」
俺の説明にウルスラさんは軽く驚きながらもそんな疑問を言うのだが、そこは理華が答えてくれた。
で、聞いたウルスラさんはというとあごに手をやり――
「これは……私でも使えるのかしら?」
「まぁ、使い方を覚えれば大丈夫だとは思いますけどね。でも、買うにはなぁ……」
ウルスラさんに答えつつ、そのことを思い出す。だって、ウルスラさんはこっちの世界のお金は持ってないしな。
それにパソコンとプリンターを安い奴にしたって結構掛かるだろうし……俺、そんなに持ってないしな。
「なら、私がなんとかしよう」
「おいおい、いいのか?」
「なに、多少型が古くとも多少手直しをしておけば十分に使えるさ。会社に聞けば、その手のパソコンはあるはずだからな」
美希の言葉に思わずジト目になるが、聞いて納得。そういや美希はお嬢様だし、それくらいは簡単か。
「いいのかしら?」
「構わぬ。私達もお世話になるのだからな。これくらいならば、雑作も無い」
首を傾げるウルスラさんに美希はうなずき……て、ちょっと待て。お世話になる?
「どういうことさ?」
「そういえば、話していなかったな。私達の活動拠点をサマナーギルドにするのだ」
「彼女達もサマナーだしね」
首を傾げると美希は答えて、ウルスラさんはうなずくけど……ええと、ちょいと待て。
活動? 活動って何?
「いや、意味がわからんのだけど?」
「お前は考えてもいないようだがな。私達の目的は個人の力ではどうにも出来なくなる時がくる。
そうならない為にも後ろ盾やサポートをしてくれる者達が必要となる。その為に美希やウルスラ達に頼んだのだ」
俺の疑問にスカアハが腕を組みながら答えるけど……いや、実感無いからなんとも言えないけど、そんなものなのかな?
いや、大変な事だってのはなんとなくわかるんだけどさ。
最近、困ったことばかり判明して……欝になりそうなんで、あんま考えたくないんだよな。
「お〜、見つめた。どこ行ったかと思ったぞ」
「師匠……お手数を掛け、申し訳ありません」
と、声が聞こえたかと思うと、こっちに手を振りながらやってくる老人がいた。背は俺よりも頭一つ分小さいかなという感じ。
頭のてっぺんは見事にツルピカ。サイドと後頭部に白髪残ってるという、ある意味お約束な髪型(?)をしている。
着ているのはチェック柄の半袖にズボン。で、なぜか下駄をはいてると……で、その老人に向かって美希が頭を下げていた。
「もしかして、待ち合わせてた人って――」
「そうだ。神代 権三郎殿といって、私の柔術の師匠でもある」
「ま、そういうこった」
問い掛けると美希は右手を向けて老人こと権三郎さんを紹介してくれた。
まぁ、美希が武術を習ってるのは知ってるけど、師匠とかは初めて会ったな。
で、紹介された権三郎さんはというと、右手を軽く挙げてから挨拶して――
「てめぇか? 美希が言ってた男は……ふむ、妙な鍛え方してんなぁ〜」
「いや、妙って言われてもね……」
あごに手をやってこっちを見てくるもんだから、思わず引いてしまう。
けど、俺の場合は鍛えてるわけじゃないんだけど……
「こやつの場合は鍛えているのではなく、戦いによって研磨された物だ。
だが、完全に自己流ゆえ、その歪みが出てしまっている。妙なのはそのせいだろう」
「あんたがこいつの師匠か……なるほど……で、こいつの整体だけでいいのかい? 俺が鍛えてやってもいいんだぜ?」
「出来ればそうしたいのだがな。だが、その猶予も無い。話は聞いているだろうから、整体を頼みたいのだが」
「あの〜……本人そっちのけで話進めるのやめてくれません?」
なにやら、とんでもない事を話し合ってるスカアハと権三郎さん。頼むから、本人無視して話を進めないんで欲しいんですけど?
ていうか、整体って……あれやるの? あれ、すっごく痛かったんですけど……
「後で話す。ここで話せるようなものでもないのでな」
「ああ、そうかい……」
スカアハの返事に思わずジト目になるけど……いや、俺の知らない所で話を進められても困るんだけどさ。
なんだか、すっごく不安になりますよ? ていうか、なにやってんのよ?
「しかし……この世界の機械は凄いな」
「ん? そうかな?」
「ええ、あのようなテレビは私達の世界にはそう多くはありませんでしたから」
真名の漏らしたひと言に首を傾げるけど、刹那は液晶テレビが並んでる棚に顔を向けながら答えていた。
これは後でわかったことなんだけど、ネギま!の連載が始まったのは2003年。
漫画の方でも一部を除いた電化製品のレベルはその当時の物だったらしい。
6年も立てば、色々と変わってるのは当然だよなぁ。携帯でも1・2年でとんでもなく性能が上がってたりするしな。
「そういうもんなのかなぁ……」
まぁ、この時はそんなことはわかんなかったんで、俺としてはそんなもんなのかなという程度の考えだったんだけど。
そんなわけで俺達は店の中をある程度見て回ってから、次の場所へと向かうこととなったのだった。
あとがき
そんなわけで翔太の世界にやってきた刹那と真名とミナト、それにウルスラにクノー。
しかし、刹那達はともかくウルスラとクノーの反応が薄すぎたかな? という感がありますが……
それはそれとして、つかの間の日常。それは終わりに近付き、それは別れの時が近付くことになります。
が、次回は幕間その2だったりします。お話は今回のお話の前夜。
翔太達と別れたスカアハらが話し合いをしている。その内容とは? というお話です。お楽しみに〜
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