out side

「ふむ、幻想郷のぉ……」
 麻帆良学園、学園長室――
そこで学園長はあごひげを弄りつつ、高畑の報告を聞いていた。
異世界『幻想郷』……人、妖怪、妖精、神が住まう世界――
それ故にいざこざもあるが、それらが共存する郷……
人と妖怪の関係を知る者なら、信じられないような世界であった。
 学園長もそんな1人なので高畑の報告を聞いたとしても、簡単には信じなかったかもしれない。
では、なぜ信じられたか……は、すぐにわかるとして――
本来なら、幻想郷のことは秘密にするべきなのだが、高畑が報告したのにはわけがある。
まず、幻想郷へ行ったのが高畑だけでは無かったこと。ネギや明日菜など、複数の人間が幻想郷へ行っている。
そのため、いかに秘密にして欲しいと約束したとしても、なんらかの形で漏れる可能性はあった。
ならば、それを前提に対策を練った方がいいと考えたのである。
 まぁ、幻想郷への道が閉ざされたのが一番大きいだろう。ボルテクス界から幻想郷へ通じる穴が消えたのである。
シンジによると幻想郷が崩壊の運命から解き放たれた為だと言うが――
その為、”ある方法”を除いて、幻想郷へ行くことは叶わなくなったのだった。
「その世界を翔太君は救ったわけか……やれやれ、下手をしたら大変なことになっていたかもしれんの」
 などと、学園長はため息混じりに漏らしていたが――
翔太のしたことは異なる世界での事ということもあり、世間に知られることは無いだろう。
しかし、もし知られたりしたら……あらゆる厄介ごとが翔太に降りかかる可能性があった。
なにしろ、ナギ・スプリングフィールドという前例があるのだから……
だから、学園長はそのことは他には明かすまいと考えていた。それはそれとして――
「で、彼らはなんでいるのかの?」
「あははは……」
 と、顔を向ける学園長に高畑は苦笑していた。さて、何があったかというと――
「ふむ、緑茶もたまにはいいもんですよねぇ〜」
「私はいつも飲んでるけど」
 来客用のソファーに当たり前のように座る人物が2人。
1人は見た目こそ青年だが、見た目よりも不釣り合いなほどに穏やかな顔をするアオイ シンジ。
もう1人は見た目こそ少女……それ以上はあえて何も言うまい、八雲 紫である。
ちなみにその紫の後ろで藍が苦笑混じりにその光景を見ていたりする。
 そう、学園長が幻想郷の存在を信じられたのは紫がいたからである。
今でこそ抑えられているが、その存在感は学園長も今まで感じたことが無い程。
それだけでただ者で無いことが理解出来たのだ。
「それであなた方がここにおられるのはなぜかの?」
「そうですわね……私と藍がここにいるのは翔太の援助をすることを宣言するためです。
といっても、具体的に何をするかはまだ決まっておりませんが」
 学園長の問い掛けに紫は湯飲みをテーブルに置き、座ったまま体を向けて答えていた。
幻想郷が崩壊の運命から逃れたことで色々と余裕が出来たことと、翔太がその立役者であることからの宣言である。
だが、崩壊の運命に巻き込まれた影響がまだ残っているのと、どのような援助をするかが決まっていないため、
今すぐにというわけにはいかなかったが――
「それと……もし、翔太と敵対するようであれば――」
「わしにはそんなつもりは無い。彼には色々と助けてもらってるからの。
じゃが、周りはそうはいかんじゃろうからな。気を付けておこう」
 そんなことを言い出す紫に、学園長はなんてこと無いように返すのだが――
実は紫、この時は存在感を解放していた。高畑ですら恐れを抱くほどの……
学園長も同じであったが、かろうじてそれを表に出さなかったのである。
まぁ、同時に紫には敵わないとわかってしまったが……
「そう、それは良かったですわ」
「ふぅ……それでおぬしは?」
「ええ……少々、困った事が起きましてね」
 その返事を聞いてか、微笑む紫。同時にその存在感も消えていった。
そのことに安堵のため息を吐く学園長だが、気を取り直して問い掛けた。
聞かれたシンジも湯飲みをテーブルに置き、ため息を吐いてからそのことを話し始めるのだった。


 in side

 さて、今の俺は何をしてるかと言えば、エヴァの別荘の中でビーチチェアーに寝そべってラノベを読んでいたりする。
あの幻想郷の出来事から3日……つっても、別荘での話だけどな。そこで休暇を楽しんでいる。
ちなみにラノベはシンジに頼んで、元いた世界の俺の部屋から持ってきてもらっている。
といっても、ほとんどオタクライフみたいなもの……え? 何を読んでるかって? それは――
「これの次、あるかしら?」
「読むの早くね?」
「読みやすいのよ。話も面白いし。それにしてもこいつが持ってる『幻想殺し』だったかしら?
もし、本当にいるなら、どんな手なのか調べてみたいわね」
 そのことに思わずため息が出るが、本を差し出してきたパチュリーはそんなことを言ってきた。
いや、本当にいそうだよね。前例が俺の周りにいるし……
 さて、なんでパチュリーがここにいるのか? いや、パチュリーだけじゃないんだけどね。
あっちの方では後ろに咲夜さんに日傘を持たせて立たせているレミリアがイスに座って紅茶を嗜んでるし――
別な所ではココネとフランドールが遊んでたり――
パチュリーもラノベを読みつつも、凜とメディアに橙子さん、
それにエヴァやアリス・マーガトロイドと一緒になってあれやこれやと話している。
 ああ、パチュリー達がいる理由だったな。ま、簡単に言うと遊びに来たって所だ。
幻想郷が崩壊の運命から逃れたことでボルテクス界と通じる穴は消えたけど、シンジや紫ならこことの行き来は可能みたいなんだわ。
で、それを利用して、ここに遊びに来ていると。ちなみにだが、来ているのは何もパチュリー達だけでは無い。
「ううむ、分身すら通じぬとは……」
「ふふふ、その程度ではまだまでですねぇ〜」
 いつも通りの糸目な楓……しかし、その表情は引きつっていた。
なにしろ、自分の攻撃が文に通じていないのだから……
ま、文がここにいるのはいつも通りの取材だ。そこで文が烏天狗と知った楓が手合わせを願ったのである。
で、結果は2人を見ての通りだ。なにしろ、楓の分身があっさりと全滅させられてたし。
流石は幻想郷一の速さ。俺も動きを追うのがやっとだったな。
「アイヤ〜……なんで当らないアルカ?」
「そんな力任せでは当りませんよ」
 で、古菲は美鈴と組み手をしているが、古菲の拳は当たりもしない。
いや、それはいいんだが……美鈴、あんた門番じゃなかったっけ? いいのか? 門番は?
と、思ったんだが、守りは別にいるからと連れてきた……とは、レミリアの弁である。
「あわわわ!?」
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
「ほらほら、そんなんじゃ相手にならないぜ」
 で、あっちでは逃げ惑ってるネギと明日菜。その様子を魔理沙は箒にまたがって、飛びながら見ていた。
弾幕撃ちながら……うん、あれは無理ゲーだよな。
最初、明日菜のハリセンを使って弾幕を防いでいたんだが、魔理沙もそれに気付いたのか弾幕に爆発を追加したのである。
明日菜はまだ気付いてないようだが、魔法無効化能力でも爆発の衝撃とかまでは消せず――
結果として、翻弄される羽目になっているわけだ。
「く、強い……」
「ええ……西洋の剣を侮っていたつもりはありませんが……」
「はい、流石はセイバーさんです」
「ヨウム、トウコ、セツナ。あなた方も十分に強い。ですが、私も簡単には負けられませんので」
 妖夢に刀子さん、刹那がセイバー相手に剣の組み手をやってるが……どうやら、セイバー無双のようだ。
ちなみにその光景を幽々子が饅頭食べながら見てるが……おい、何個喰ってる?
勘違いじゃなきゃ、20個は行ってると思ったが……
 そんな光景を見てから、俺はパチュリーにも読ませてる『某不幸体質が主人公』のラノベに視線を向ける。
「「アリス〜」」
「あらあら、あなた達ったら」
 ちなみにアリス・マーガトロイドの周りを上海&蓬莱人形が飛び回り、それをアリスは微笑ましく見ている。
なんでも、自立行動する人形を創るのがアリス・マーガトロイドの目標だったのだが、
エヴァと技術交換することでついに達成させたのだそうな。
しかし、アリス・マーガトロイドはこれで満足はせず、更なる可能性を求めて研究を続けるらしい。
どんな可能性なんだろうか? というのは、東方のあの格闘弾幕ゲームで知ることとなるが――
「にしても――」
 と、パチュリーがジト目でこっちを見てくる。うん、言いたいことはわかるよ?
でも、あえて突っ込まないで欲しい……というのが、本音なんだがな。
「見事なまでのハーレムね」
「言わんでくれ……」
 結局、パチュリーに言われたが……ため息混じりに言葉を返した。
さて、何があったかというと……俺の周りを理華に美希、真名にアキラと裕奈に千鶴、
それにミュウにスカアハ、クー・フーリンなどの仲魔達がいたからである。
しかも、全員水着……美希も水着だ。理華や真名みたく、ヒモビキニで……
本人、最初は恥ずかしがってたが、いつの間にか当然な顔してるし。
 幻想郷でのあの出来事でみんなが俺に好意を持ってくれたのは流石にわかった。
まぁ、最初はいきなりすぎて混乱したけどな。それも収まるともしやと思い、それとなく確かめたら……ビンゴだったと。
いや、嬉しいよ。女性から好かれるというのは、あれかもしれんが嬉しいことだ。でも、どうしたらいいかわからない。
だって、この中から1人を選んだら、なんか問題になりそうだし――
 それとは別に刹那と真名からも好意を向けられてたのは驚いたけど……いや、俺は特別なことした覚えが無いんだけど?
それにいいんだろうか? なんか、マズイ気がするのは……俺だけかね?
「でしたら、全員と付き合ってもいいのでは?」
 なんてことを言い出したシンジは全力で殴ったが。あっさりと避けられたけど……
しかし、それを理華達がマジで受け取ってしまい……俺としてはどうしたらいいもんかと悩んでしまったが。
ちなみにこの時は知らなかったけど、理華達もただ考えも無しにシンジの提案を受けたわけではないらしい。
「翔太さんに与えたアーマーによって、力を十全に使えるようにはなりましたが――
それでも外的要因となっている力をどうにかしたわけではありません。一種の時間稼ぎみたいな物ですよ」
 と、宴会の最中にアーマーのことを聞いてみたら、シンジからそんな風に返ってきた。
つまり、俺の体に無茶を掛けてる外的要因が無くなったわけじゃないので、体が壊れる危険性はまだあるんだそうな。
一応、アーマーによってその時間は延びたそうだけど、どれ程かはシンジにもわからないとのこと。
まぁ、それを踏まえて、俺のGUMPも色々と改良したそうだが……
 ともかくそんなこともあって、俺への負担を減らそうと理華達は互いに協力することにしたらしい。
これは喜んでいいんだろうか? 俺としては悩むところなんだが……いや、嬉しいことは嬉しいよ?
でも、休んでる時にこうして周りにいなくてもいいとは思うんだけど?
「ふふふ、いい感じでラブ臭がするじゃないの」
「ぶ〜ぶ〜、羨ましいぞ〜」
「プールに投げ込むぞ、この野郎……」
 からかってくるハルナと蒔寺を睨んでおく。なぜか、怯えられたが……
こいつらはと思いつつ、ラノベに視線を向け――
「いい感じでみなさん楽しそうですね〜」
「ええ、まったく――」
 いつの間にいたのか、俺の横にシンジとスキマがいた。藍さんもスキマの後ろにいたが……
ところでテーブルとイスとティーセットはお前らのデフォなのか?
「で、お前らは何しに来たんだ?」
「何って、理華さんと美希さんの新しい装備を持ってきたんですけど?」
「私達の……ですか?」
 とりあえず聞いてみたら、シンジは首を傾げながら答えてたが……
だったら、それはいらんだろうと思うのは俺だけか? 後、スキマ。なんで一緒にいるの?
「その方が面白そうだからよ」
「だから、人の考えを読むな」
 スキマにツッコミを入れる中、理華と美希はシンジから包みを受け取ると屋敷の中へと入っていく。
どうやら、着替えるみたいだが――
「まぁ、2人の装備を持ってきたのはついでみたいなものなんですがね」
「どういうことだよ?」
「前に新しい世界のことを話したと思いますが、そこでのことと……後は嬉しくない報告がありまして」
 顔を向ける俺に、話し出したシンジは人差し指を立てつつ、そんなことを言い出すが……
おい、なんだよ。嬉しくない報告って――
「まず、新しい世界の方ですが、そこに現れた悪魔はその世界の方々が倒したようです」
「良く倒せたな?」
「ま、その世界で前例があった……と、今はお答えしておきましょう」
 話を聞いて軽く驚いてるスカアハ。そりゃそうだ。
その世界に現れた悪魔がどの程度かはわからないけど、人が相手だと普通じゃまず敵わない。
例え、ピクシー相手でも油断するとあっさりと殺されるしな。
 けど、シンジが言う前例ってなんだ? どんな前例なんだろうか?
「ま、それはそれとして、翔太さん達には時を見て、その世界に行ってもらうことになると思います」
「は、なんで? 解決したんじゃないのか?」
「その世界の人達が宇宙の卵を持ってるんですよ。それを手に入れなきゃならないんですって。
まぁ、欲しいと言って渡してもらえるわけじゃありませんから、その際は私も交渉に行きますけど」
 いきなりそんなことを言われて首を傾げるが、話したシンジの返事を聞いて納得する。
そういや、宇宙の卵は大事だって言ってたっけ……て、あれ? なんで大事なんだっけ?
確か、とてつもなくとんでもない物だって話は聞いてるけど――
「なぁ――」
「翔太、どうかな?」
「に、似合うか?」
 そのことを聞こうと思ったら、理華と美希に声を掛けられたんで振り向いてみる。
振り向いてみると同じ格好をした理華と美希の姿が……アーマー自体は理華が以前から身に付けてたのと一緒。
違うのは肩と胸、それと腕に防具が付いたくらいか……胸の谷間がすっごく出てるけど……
今になって気付いたが……理華の奴、本気で大胆になったよな……最初の頃は胸元までチャックを締めてたのに……
今じゃ平気でヘソ出しかい……美希の方は流石にそこまでじゃないが、それでも胸は全開か……うん、ともかく俺が言いたいのは――
「似合う。間違いなく、絶対に」
 そう、似合っていることだ。2人とも顔もいいし、スタイルもいいからな。
だからこそ、こういった物が似合うんだろうなぁ〜……と、内心ドキドキしながら思ってみる。
うん、実はエロすぎて困ってるんです。下手したら鼻血もんですよ?
「そ、そうか?」
「ありがとう」
 美希さん、顔を赤らめないでください。色々と困ってしまいます。
理華も満面な笑顔をどうもありがとう。2人とも抱きしめてもいいですか? いや、やったら色々とマズイからやらんけどね。
うん、もうどうしたらいいんでしょうかね、俺……
「とりあえず、周りの方々の視線に気付いた方がいいですよ」
 なんてシンジに言われて現実に引き戻されると……
うん、ミュウやスカアハ、クー・フーリンの仲魔のみなさんに刹那に裕奈と千鶴、アキラにまで睨まれてました。
しょうがないじゃないですか……そういうのに興味がある年頃なのですよ。
「ふむ、翔太さんはああいうのが好みなのか……なら、私もそうしようかな?」
 真名さん、そんなこと言わんでください。いや、見てみたいよ? 興味が無いって言ったら嘘になるしな。
「まぁ、それはそれとして……嬉しくない報告ですが、士郎さん達にはご自分達の世界に戻ってもらいます」
「え? なんでよ?」
 シンジの言葉に疑問を投げかけたのは凜だが……
いや、なんで士郎達が元の世界に戻らなきゃならないんの? 理由が抜けてるんですけど?
「実は……この麻帆良と士郎さん達の世界に悪魔の侵攻が始まったんですよ」
「え!?」
 シンジの言葉に士郎は驚くんだが……いや、待て。ここと士郎達の世界に悪魔が侵攻したってなにさ?



 あとがき
そんなわけで今度こそ始まった翔太の休暇。本人はハーレム状態に悩みつつも楽しんでる様子。
そして、理華と美希のパワーアップをしましたが……今度は思いがけない事態が発生しました。
次回はシンジの指示でみんなと別れることとなった翔太達。そんなわけでボルテクス界に戻ってきますが――
そんなお話です。次回もお楽しみに〜



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