in side

「つまり、こやつらはこの世界のことを知り、ここへ来た。兵器とする悪魔を狩るために……」
「それとこの世界の人間もよ。ここは生体マグネタイトに満ちあふれた世界だから……
ここに住む人間がどのような者なのかを調べて……ついでに色々とやるつもりのようね」
 呆れた様子で話すスカアハに、レイさんも呆れた様子で答えていた。
一応、俺達の自己紹介をしてから、レイさん達の事情を聞いたんだけど――
レイさん達は最初に言ってた通り、武狼の連中を追い掛けてボルテクス界に来たらしい。
なんでも、レイさん達が所属する組織ってのは、武狼みたいな犯罪者や組織を潰す為にあるんだと。
また、レイさんの本来のパートナーは、訳あってレイさん達の世界で行動してるらしい。
それで代わりに啓自さんが来た……と言っていた。
 あ、関係無いかもしれないけど、レイさん達には俺達がボルテクス界とは違う世界から来てるってのはまだ話して無い。
まぁ、混乱させるかもしれないから……とは、スカアハの意見だが。
「となると、早く何とかした方が良さそうだな。行方不明になったサマナーはこいつらが知っていそうだし」
 と、スカアハは縛り上げた男達を睨みながら、そんなことを漏らしていた。
まぁ、確かにその通りかも。こいつら、俺達のことを探してたみたいだしな。
大方、見られたから口封じを兼ねて……という所だろう。うん、レイさんのおかげで本当に助かったよ。
でないと、大怪我で済まなかったかもしれないしね。
「さて……貴様らのアジトがどこにあるのか……聞かせてもらえると助かるのだが?」
 睨みながら問い掛けるスカアハ。が、男達は無視。中には笑みを浮かべてる奴もいる。
うん、言う気ゼロだな。どうしたもんか……
「どうすんの?」
「こいつらが持っているCOMPを使わせてもらおう。アジトまでの道のりが記されているはずだからな」
「無駄だ。俺達のCOMPには認証機能がある。一度でも失敗すれば、データは全てデリートされる仕組みだ」
 男達を指差しながら聞いてみると、スカアハがため息混じりに答えるのだが……
男の1人が勝ち誇ったかのようにそんなことを言ってくれました。
ううむ、こういう時に手回しがいいのは、なんかむかつくな。
「だそうだけど?」
「ふむ……メディア、頼めるか?」
「ふぅ……しょうがないわね」
 で、顔を向けて聞いてみると、スカアハは少し考える素振りを見せてからメディアに頼んでいた。
メディアもため息を吐いてから男達に近付いて行ったけど……
「何をする気なの?」
「なに、少しだけ地獄を見てもらうだけだ」
「何気に物騒だな、おい」
 訝しげなレイさんにスカアハはあっさりと答えるのだが……あの、物騒すぎる発言なのですが……ていうか、地獄って何?
「やめときな、嬢ちゃん。例え、あんたが魔法を使ったとしても無駄だぞ。何も言わない死体が転がるだけだ」
「あら、そちらの方がマシだと思うかもしれないわよ?」
 嫌らしい笑みを向ける男だが、メディアはさわやかな笑みをしながら、そんなことを言い放つ。
男は首を傾げていたが……俺にはわかった。あれは悪魔の……本当の意味での悪魔の笑みだと……
「な!?」
 で、男がいきなりのことに驚いていた。まぁ、無理もないか……メディアの指が自分の胸に沈んでいくのを見たら……
ちなみにそれを見た俺は顔が引きつっております。理華や美希、香奈子さんにミュウとかも……普通にスプラッタだしな。
「な、な、な……はびゅ!?」
 驚き、戸惑う男だったが、いきなり妙な悲鳴を上げたかと思うと――
「あがががががががががががががががが――」
 やばい痙攣を起こし始めた……うん、見てて本気で怖いです。
「あら、いけない。アジトのこと聞かなきゃならなかったのに……ま、いいわ。他にもいるものね」
「その前に……何をしたんだ?」
 なんでもないように……しかも、さわやかな笑みを浮かべるメディア。
とりあえず、右手を控えめに挙げつつ聞いてみる。絶対にろくなことじゃ無さそうだけど……
「大丈夫よ。ちょっと、血を沸騰させただけ。死ぬことは無いから安心して。
まぁ、頭は逝っちゃって、生きてる限りは苦しみ続けるかもしれないけど」
「それのどこで安心しろと?」
 さわやかな笑みを浮かべるメディアの話を聞いて、俺は顔を手で覆いつつぼやいていた。
理華や美希も顔色悪くしてるし……軽いスプラッタみたいなもんだしな。
なので、安心出来る要素がどこにもありません。見ろよ、男達も引いてるぞ。あ、怖がってるのもいるや。
「さてと……あなたは話してくれるのよね?」
「や、やめろ……やめてくれえぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
 と、にこやかな笑みを向けるメディアだが……向けられた男は震えています。悲鳴も上げてるし。
まぁ、あんなのを見せられた後じゃな……でも、いいんだろうか……あれって……
ちなみにこの時は気付かなかったけど、捕まっている男達のほとんどは怯えてが……数人は冷静にその事を見ていた。
スカアハが言うには、そいつらはベテランらしいけど……
「いいのか? あれは?」
「本当なら、私だってこんなことはしたくはない。だが、嫌な予感がしてな……少しでも時間が惜しいのだ」
 顔を引きつらせながら聞いてみるのだが、スカアハは腕を組みつつも不満そうな顔をしている。
嫌な予感か……確かにそれは俺も感じてる。というか、今までのことを考えると、感じない方がおかしいかもしれないけど。
 ま、メディアのおかげで二人目であっさりと認証の仕方やある程度の情報がわかったのは、俺としても助かったけど。
しかし……なぁ……
「もうちょっと、穏便に出来なかったわけ?」
「まぁ、記憶を覗こうと思えば覗けたわね。覗かれたら、廃人になってたかもしれないけど」
「あ、そ……」
 とりあえず、それだけは言っておこうと思って……あっさりと言い放つメディアの言葉に顔を引きつらせるはめとなった。
どっちにしろ、物騒なのは変わりないのかよ。
「あなた達……何者なのかしら?」
「どういう意味かな?」
 で、今はあいつらから奪ったCOMPのオートマッピングでアジトへと向かってるのだが――
あ、ちなみに君嶋さんと香奈子さんは、あの男達を連れてノーディスに戻ってもらっている。
男達が変なことしないようにメディアが呪いとちょっとした催眠を掛けておいて……
まぁ、男達をそのままにして置けないのと、事情をギルドに話す必要があったので、その役を君嶋さんと香奈子さんにお願いしたわけだ。
 それはそれとして、その最中にレイさんが疑いの眼差しを向けながら、そんなことを聞いてきた。
スカアハが問い掛けるけど……まぁ、あれを見たら疑うのは当然か?
「さっきのあれ……魔法とか悪魔の力とかじゃないわ。もっと別な……異質な力よ。
私も魔法を使うし、それなりに知っているつもりだけど……だからこそ言えるのよ……」
「そうか……出来れば、このことは他言無用で頼む。お前達の組織にもな……」
 真剣な眼差しのレイさんの言葉に、スカアハはため息を吐いてから、俺達の事情を話し始めた。
流石に俺に掛けられてる呪いのことは話さなかったけど……で、話を聞いていたレイさんと啓自さんは微妙そうな顔をしていた。
というのも――
「信じられないわ……世界がそんなことになってるなんて……」
「ま、いきなりこんなことを聞かされれば、そう思うのが普通だろうな。だが、困ったことに事実なのでな。それが頭が痛い所だ」
「翔太はん……とんでもないことしてんやなぁ……」
「俺としては、なんでこんなことになってんだって気持ちだがな」
 半信半疑といった様子のレイさんにスカアハはため息混じりにそんなことを言っていた。
まぁ、自分の知らないことを信じろと言われても、普通は無理だよなぁ……
 で、俺はスリルさんの言葉を聞いて、手で顔を覆いつつうつむいていた。
うん、今更だけど、本当になんでこんなことになってんだろうかね? 俺、何かしたかな……
あ、流石に幻想郷でのことは話して無い。ていうか、俺が幻想郷を救ったって実感が無いんですけど。
「それに関しては後にしましょう。今はあいつらを止めるのが先よ」
「ああ……それに奴らはこの世界のことを……いや、悪魔のことを勘違いしてるかもしれん。それを教えてやらんとな」
 ため息を吐いてから、レイさんが真剣な表情でそんなことを言い出す。
スカアハもうなずいてるけど――
「すまないが、勘違いとは?」
「悪魔は決して獣では無い。思想の違いこそあれど、自分の意志を持つ存在だ。
しかも、人よりも強い力を持つ。そんなのが自分達の存在を脅かす者達を黙って見ていると思うか? 
このボルテクス界は実質的に悪魔寄りの世界と言える。
奴らがそうだと気付かずに、自分達の世界と同じことをしていたら……ま、ある意味自滅をするだろうな。
もっとも、それまで待つつもりは無いが」
 美希の問い掛けにスカアハは腕を組みつつ話していたが……ま、確かにそうかも。
このボルテクス界では人の数が圧倒的に少ない気がする。ボルテクス界で人が住む町や村は確認出来ているだけで4つ。
他にもあるそうだけど、ノーディス以外は住んでいる人数は少ないらしい。それを考えるとボルテクス界は悪魔の世界と言えるよな。
……今思ったんだが、ボルテクス界ってそもそもなんなんだ? 俺も詳しいことは知らないし。
確か、ヴィクトルさんが力ある悪魔によって創られたとか言ってた気がするけど……疑問に思うが、考えてわかるわけないか。
「ところで……大丈夫?」
「え? あ、はい……ただ、兄さんのことが心配だったので……」
 なにやらリィナが落ち込んでいたので声を掛けたんだけど、返ってきた言葉に元気は感じられなかった。
まぁ、無理もないか。兄が誘拐されたんだしな。
「それに……最近の兄さんは少しおかしかったから……」
「おかしかった?」
「なんて言えばいいのか……ただ、ひたすらに強くなろうとしてたんです。
それが少し怖いと感じてしまって……あ、すいません……これは関係無いですよね」
 その一言が気になったが、話したリィナは右手を振りつつそんなことを言うけど……
しかし、強くなろうとしてたって……トニオの奴、何があったんだ?


 で、悪魔と遭遇しながらも目的地に到着。といっても、いきなり目の前に出るような真似はしないけどね。
とりあえず、離れた場所から様子をうかがうんだけど――
アジトと思われる場所はどうやら洞窟の中らしい。その洞窟の前には4台のトレーラーが停まっている。
で、そのトレーラーの荷台から、何本ものケーブルが洞窟の中へと伸びていたけど――
「で、どうするのさ?」
「そうだな……事前に聞いていた情報通りなら、まだかなりの数があの中にいるはずだ。
何とか、数を減らしてから中に入りたいものだが――」
 聞いてみると、スカアハはあごに手をやりながら考えているようだった。
捕まえた男達から、この世界に来たのは全部で60人ほどと聞いている。研究者とか15人ほど。残りは雑用も兼ねた戦闘員らしい。
で、こちらから見えている見張りは4人。さっき捕まえた10人を差し引いて……洞窟の中には30人くらいいるわけか。
まぁ、流石に普通のケンカなら負ける気はしない。ていうか、悪魔の方が何倍も厄介だしな。
ただ、相手が銃とか持ってると違ってくる。いくらなんでも、銃で撃たれたら痛いで済まないって。
それに洞窟の中がどうなってるかにもよるしな。狭いと避けるなんてことは出来なくなるし。
「戦える奴らを少しでも減らしておきたいが……ベテランもいるから、早々上手くは行かないか……」
 未だに考え中のスカアハ。う〜む、爆発かなんかでおびき出して、外に出てきた所を一気にとかはダメなのかね?
「それはそれでアリだが……奴らも馬鹿ではあるまい。全部は無理だろうな」
 なんてことを言ってみたら、スカアハにそう言われてしまいました。
現実は映画のように行かないってわけね……でも、そうなると他に手なんてあるのか?
「しかし、今は時間が惜しい……クー・フーリン、シルフ、ケルベロスは銃弾は大丈夫だな?
翔太の作戦を決行後、お前達に斬り込み役を頼みたいのだが――」
「構わないぜ。銃弾の1発や2発、どうってことないしな」
「私の盾に防げない物はありません」
「ああ、少々暴れたいと思っていた所だ」
 スカアハの言葉にクー・フーリンにシルフ、ケルベロスはやる気を見せている。
けどなぁ、それっていいんだろうか? 危険にさらしてるようで嫌なんだけど?
「お前はもう少し、仲魔に頼る戦い方も覚えた方がいい」
「はい?」
 なんてことを呆れてるスカアハに言われちゃったけど……いや、どういうこと?
俺、基本的に仲魔に頼りっぱなしだと思うんだけど? まぁ、それはそれとして……
作戦決行となり、モー・ショボーがこっそりと洞窟から少し離れた所に行くと、魔法ででっかい竜巻を生み出し――
「な、なんだ!?」
「くそ!? 悪魔が襲ってきたか! 増援を要請しろ!」
 見張り達は見事なまでに驚き、騒いでいた。その間にモー・ショボーは魔法で竜巻を次々と生み出していた。
それに驚いたのか、洞窟から人が出てくる出てくる。ぱっと見で10人以上は出てきたな。
「やはり、全部は出てこないか……」
「でも、中にいるのは少なくなったから、結構やりやすくなったと思いますよ」
 やはりという顔をするスカアハだが、啓自さんは笑みを交えてそんなこと言っていた。
確かに半分くらいが外に出てきてるしな。予想外のことが起きなければ大丈夫だとは思うんだが……
なんだろうか? なんか、嫌な予感がするんだけど?
「確かにそうだが……仕方が無い。外に出てきたので全員倒してから、中に入る。それでいいな?」
「どの道、あいつらを逃すわけにはいかないもの。それで行くしかないわね」
 スカアハの問い掛けにレイさんは肩をすくめながら言葉を返していた。
確かにレイさん達の目的とかを考えると、そうした方がいいか――
「そうだな……そうだ。翔太、お前は手加減をしろよ? よし、行くぞ!」
 手加減をしろって……まぁ、確かにあの時はやり過ぎたけどね。
それはそれとして、そんなわけで、スカアハの号令と共に俺達は飛び出していった。
その先に待つ、嫌な予感がなんなのかを思い知らされることを知らずに――



 あとがき
まずはいつも誤字脱字報告をしてる方へ……私が使っている漢字変換ソフトはATOKです。
しかし、ATOKは設定によって変換方法が違うため……微妙に使いづらいです。
他にいいのはない物か……と、悩んでいたり。

 さて、攫われたサマナー救出のために突入した翔太達。その先に待つのはいったい……
次回はそんなお話。外に出た敵を倒し、洞窟の中へと突入した翔太達。
しかし、そこで彼らは現実を見るはめとなった……
そんなお話です。果たして、翔太達はサマナー達を助けられるのか?
次回をお楽しみに〜



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