in side

 さて、俺達の襲撃だが、予想以上に上手く行っていた。
銃で攻撃されるのは嫌だったので動き回っていたのだが、それが相手を翻弄することに繋がっていた。
また、魔法であっちこっち爆破してるのも相手を混乱させていたようだしな。
それに相手の銃がフォルマと合成された物じゃ無かったのも助かっている。
後で聞いた話なんだが、レイさん達の世界では弾丸の方に悪魔に効果があるように加工するんだそうな。
ただ、大量生産品だと効果はそれほど高くないらしく……
こいつらが使ってるのはその弾丸みたいで、そのことに気付いた仲魔達が突っ込んでいた。
 まぁ、問題もあって……といっても、俺の個人的な問題なのだが……
スカアハに言われて、人相手には手加減しろと言われていたのだが……その手加減がすっごく難しかった。
だって、力を抜いたはずが思いっきり殴り飛ばしたり……かと思えば、大してダメージを与えられなかったりと……
手加減がこんなに難しいとは思わなかったよ。
 と、そんな苦戦があったが、外に出てきた奴らはあらかた倒してしまう。
で、メディアによって拘束の魔術を掛けられて――
「よし、これより中に入るが……気を付けろ。奴らも馬鹿では無い。なにかしらの対策をしているはずだからな」
「だろうな」
 スカアハの言葉に俺はため息を吐く。映画とかでもありがちなシチュエーションだし。
それはみんなも感じていたようでうなずき、それから静かに洞窟へと入っていく。
中は電灯が設置されているので、それなりに明るい……が、結構入り組んでるので、待ち伏せとかしてそう――
「おわっと!?」
 とか思ってたら、いきなり撃たれました。あぶねぇ……もうちょっと前に出てたら、当ってたよ!?
「シルフ!」
「はい!」
 とか思ってる内にスカアハの指示でシルフが飛び出していた。
「くそ! 撃て!」
 なんていう声が聞こえたかと思うと、銃撃音が聞こえてくるが――
「ぐは!?」
「がぁ!?」
 なんて悲鳴が聞こえると銃撃音が聞こえなくなり、シルフが顔を出して手招きしてきたので俺達も進んでいく。
やはりというか、人間相手だとなんか気を使うな……まったく、悪魔と同じくぶっ飛ばせればなぁ。
なぜか、やってもいいよな? と思ってしまって、軽く自己嫌悪を感じちゃったけど……


 out side

「こやつらか……侵入者とは……」
 洞窟の奥深く……まるで広場になっているような場所でその者達はいた。
その中では様々な機器が設置されており……中には液体が満たされた巨大なシリンダーもあった。
そのシリンダーの中には人や悪魔の姿が見える。
 そんな機器の中に設置されているモニターを1人の初老の男性が見ていた。
白髪が交じるオールバックの髪。やや奇抜なデザインのメガネを掛け、薄茶色のズボンに白のワイシャツ、白衣を着ていた。
「ふむ、ただのサマナーではないな。それにあの女ども……悪魔か? ふふ、中々面白いじゃないか」
「どういたしますか?」
 楽しそうに見ているオールバックの男だが、研究員と思われる男に問われて考えるような仕草を見せ――
「実験体をぶつけてみよう。どれほどの物なのか見てみたい」
「しかし――」
「構わんよ。もしかしたら、”あれ”の稼働実験を出来るかもしれないからな」
 その言葉を聞いた研究員は反論しようとするが、 話したオールバックの男は右手を突き出しながらそう答えた。
そう、ここへ来たのは”実験材料”を集めるのと――
「いよいよ、お前を動かす日が来たぞ……」
 嬉しそうに……本当に嬉しそうに、オールバックの男は他のシリンダーよりも巨大なシリンダーを見つめていた。
その中にいたのは大きな人型……だが、その姿は……もし、翔太が見ていたらこう言うだろう。
「なんで、タイラントがここにいるの?」と――

 そんな光景をシリンダーの中にいるトニオは、まるで見ているかのように薄目を開けていたのだった。


 in side

 相手が出てきてはシルフやクー・フーリンなどが飛び出して倒していく。
そんな調子で洞窟の奥へと進んでいた……んだけど――
「なぁ、なんかおかしくないか?」
「ああ……静かだな……」
 それに気付いて声を掛けると、スカアハがうなずいてくれた。確かに静かすぎる。
散発的とはいえ、攻撃してきたのが……今は無い。うん、こういうのって、罠とかあったりするフラグじゃね?
なんてことを考えていた時だった。何かが近付いてくる気配を感じたので構えたのだが……
「な、なに……あれ……」
 それをみた理華が戸惑っていたが……俺は顔をしかめていたと思う。
というのも、近付いてきたのは悪魔……ではなく、どっちかというとゾンビと言った方がいい。
こそげ落ちてる皮膚とか……半ば腐乱してるんじゃないかという腕とか……ハッキリ言って気持ち悪いです。
それが8体……どっかのゲームを思い出すな……
「く……遅かったか……」
「え、もしかして……」
「ああ、間違いあらへん……人間と悪魔の合成体や……どう見ても失敗作やけどな……」
 スカアハが悔しそうな顔をしながら漏らしたひと言にまさかとは思ったが……
スリルさんの言葉でそうだとわかってしまう。
おいおい、マジかよ……そういうのは漫画とか映画とか……それだけの話にして欲しかったぞ。
「そ、そんな……」
「じゃ、じゃあ、攫われたサマナー達は……」
「今は奴らを倒す……といっても、動けなくするだけでいい。シンジなら、あいつらを元に戻せるはずだ」
 青くなる理華の横で美希は慌てるが、スカアハは忌々しそうにしながらもそう答えた。
確かにあのチートなら、元に戻せそうな気はするな。
「ホンマかいな!? 普通、あんなになったら、元にもどせへんで!?」
「普通ならな。だが、あやつは普通では無いのでね。ともかく、奴らの動きを止めるぞ!」
 スリルさんが驚いてるが、スカアハはそれに答えつつ指示を出した。
確かにあっちは襲いかかってくる気が満々にしか見えないしな。ていうか、動きが速い。
まぁ、速いと言っても――
「でりゃあ!」
「うご!?」
 映画とかで見るゾンビよりもとなるけど。奥地にいる悪魔から見れば全然だ。
なので、振り回された腕をかがんで避けて蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたゾンビ……と言っていいかはわからんが……
とりあえず、ゾンビと呼ぶとして……そいつはあっさりと吹っ飛んで壁に激突し、崩れるように倒れて動かなくなった。
「おらぁ!」
「うおぉ!」
 クー・フーリンやケルベロスなんかも殴り飛ばしてたりするし――
「はぁ!」
 スカアハも蹴り飛ばしていたが、表情から見て怒ってるのが良くわかる。
ま、こんなのを見せられたらな……理華や美希みたいに戸惑うか、怒りを感じるか……
俺の場合は戸惑ってもいるが、どっちかというと怒ってると言ってもいいだろう。
ていうか、むかついている。こんなことをした奴にたいしてだが。
 それはともかく、ゾンビ達はあっさりと片付いてしまった。
「よし、メディアは奴らを拘束――」
「あ、あれ!?」
 すかさずスカアハが指示を出そうとした時、理華が驚いて指を差した。
俺達もすぐに顔を向けると……え? あ……なんで?
「き、消えていく……」
 呆然と呟く美希だが、気持ちは俺も一緒だ。
だって、ゾンビ達が……体から光の粒子みたいなのが出たと思うと体が薄れていって――
やがて、完全に消えてしまったんだから……いや、待てよ!? なんで、消えるんだよ!?
「不安定過ぎたんや……それが衝撃を受けたせいで崩壊して……」
「そ、んな……」
 悔しそうな顔をするスリルさんの言葉にリゼルが顔を青くしていたが……理華や美希も一緒だった。
俺は……拳を握りしめていた。助けたかった……助けるつもりだった……なのに――
それはクー・フーリンやスカアハも同じらしい。スカアハなんて、明らかに怒りで顔が歪んでる。
そのせいなのか、ミュウは不安そうな顔をしてたが……それはケルベロスとメディア以外の仲魔達も一緒だった。
2人はどっちかというと平然としているように見える。
「まったく……やり方としては三流以下ね。こんなのを寄越すなんて」
「そ、そんな……こんなのって……」
「あなた達はしょうがないけど、私から見ればそうとしか言えないのよ。これで終わりなら……の話になるけど」
 戸惑いを見せる理華にメディアはため息を吐きつつ答えるんだが……それって――
「まだ出てくるってことか?」
「多分だけど……これじゃ、あまりにもお粗末すぎるもの」
『お粗末か……あれでも一応は並のサマナーを簡単に殺せる力を持っていたのだがね』
 思わず聞いてみるとメディアが答え……スピーカーから聞こえてくるような声が聞こえてきた。
どうやら、カメラかなんかでこちらを見てたみたいだけど……
「てめぇか……あんなもん出したのは……」
『あんな物か……確かにあれはこの世界の人間と悪魔合成に失敗した物だがね』
「どこにいる? 殴りに行くから動くなよ?」
 俺の疑問に答えた声の話を聞いて、そう思ったのは悪くないと思いたい。
正義感とかそういうのじゃなく、ただ単に胸くそ悪かっただけだが。
『くだらん……正義の味方のつもりか?』
「いんや、ただ単にお前みたいなのが嫌いなだけだ」
「この声……やはり、オレルか!」
 聞こえてきた声にキッパリと断っておく。うん、絶対にろくな奴じゃなさそうだしな。
そんな時にスリルさんがいきなり叫んだけど……オレルって、あれか? スリルさんが話してた――
『スリルか……組織を裏切った貴様がこの世界にいるとはな』
「やかましい! 失敗続きで逃げ出したんは確かやけど……けど、今となってはせいせいしとるわ!」
 オレルと呼ばれた男に言われてか、スリルさんは怒ってたが……あ、レイさんがスリルさんを睨んでる。
そういや、スリルさんが元は武狼にいたってことを話してなかったっけ?
『まぁいい……組織から、貴様の抹殺指令が出ていたところだ。
それにそのサマナーは実験素体としては非常に興味深いからな。是非とも手に入れたい』
「よし、どこにいるか話せ。絶対に殴るから」
 とんでもねぇことを言い出すオレルに俺は手を組んで鳴らしつつ、そんなことを言ってみる。
うん、やっぱりろくでもねぇよ。こういうのは成敗してもいいよな?
『だが、あれ程度ではそれも無理そうだからな。こいつらの相手をしてもらおう』
「聞けよ、人の話!?」
 まるっきり無視して話を進めるオレルに思わず突っ込む……うん、こういう奴って、本当に人の話を聞かないよね。
とか思ってたら、向こうの方から何かが来て……って、おい!
「なんで、タイラントとハンターがいるんだよ?」
 思わずツッコミを入れてしまったが……いや、だって某細菌汚染で有名なゲームに登場するモンスターが出たんだよ。
流石にそっくりってわけじゃなく、どことなく似てるって感じなんだけどね。
両方ともゲームの姿に悪魔的な要素をミックスしたって感じだし……
『こいつらは先程の失敗作とは違う。悪魔を超えた兵器……その力を思い知るがいい』
 なんか、どっかのお約束みたいなことを言っているオレルだが……それは無視しておいて――
「なぁ、スリルさん。やり過ぎたら……さっきの奴らみたいに消えちまうのか?」
「え? あ、勝てるんか……あれ?」
 タイラント達を睨みつつ聞いてみる。スリルさんは驚いてたが……それほど強いとは感じない。
たぶん、士郎の世界への穴の周辺に出る奴らくらいだろ……とは思う。俺の見立てが間違ってなかったらな。
「さてな……で、どうなんだ?」
「そ、そやな……断言は出来へんが……可能性としてはありえなくもないな」
「そうか……メディア、魔術であいつらを動けなくすることって出来るか?」
「出来なくも無いけど……動けなくなるまで痛め付けた方が確実よ。
あの手のタイプは何かの拍子で魔術を解く可能性もあるもの」
 スリルさんの返事を聞いてから、メディアに聞いてみたが……どうも、状況は芳しくないな。
俺としては戦ってる最中にメディアにあいつらを動けなくしてもらい、
その間にシンジに来てもらって元に戻してもらおうと思ったんだが――
「スカアハ、シンジはいつ頃来れるか聞けるか?」
「聞いてみたが……今日明日は無理だそうだ……それと……元に戻すのは難しいらしい」
「は?」
 スカアハに聞いてみたんだが、沈痛な面持ちでそんな返事が返ってきました。
いや、どういうことよ? あいつはなんでも出来るチートじゃないのか?
「体の方は可能だそうだが……あの手のタイプは薬か何かで精神や記憶を消滅に近い形で破壊されてることが多いらしい。
そうなのであれば、いくらあやつでも無理だそうだ。失った物は取り戻せない……と言ってきたよ」
 沈痛な面持ちのまま、スカアハは話してたんだが……確かにあり得そうな話だよな。
漫画とかでも、薬漬けにして心を崩壊させるなんてのもあったし……まったく――
「胸くそ悪いことさせやがって……」
 思わずぼやきながら、俺は剣を構える。
さっき考えた作戦通りに行くか……ま、心が壊されてないというのは賭けみたいなもんだが……
問題はやり過ぎないようにするのが難しいってことなんだけど――
「しょ、翔太……あれって、人……なんでしょ?」
「わかってる……だがな、俺は死にたくないんでね」
 戸惑う理華にそう答える。たぶんだが、オレルって奴に捕まったら、死んだも同然のことをされるだろう。
例えば、目の前で今にも襲いかかろうとしてるタイラントもどきなんかにされるとか――
そんなのは本気でごめんこうむるんでね。だから、抵抗したっていいよな?
「やりすぎたら……ま、謝っておくさ」
 思わずそんなことを言ってしまうが……ま、助けられるなら助けてやりたいさ。
けど、上手くやれるかは……ハッキリ言って自信が無い。でも、オレルみたいな奴の思い通りになるのもごめんだからな。
だから、今はあれをぶっ飛ばす! そんなことを思いながら、俺は襲いかかるタイラントもどきを睨むのだった。



 あとがき
というわけで、もう1つの現実を目の当たりにする翔太達。
果たして、攫われたサマナー達を助けることが出来るのか? 

さて、文章が単調では? という、ご意見を頂きましたが……
ごめんなさい。単調にならないように気を付けているのですが、やはり4日間隔連載だと限界があります。
しかし、連載間隔を崩してしまうと、連載自体が危うくなっちゃうので……精神的な意味で……
なので、このまま進めていきたいと思っております。時間があれば、修正していくつもりではありますが。

次回ですが、襲いかかるモンスターを倒し、オレルの元にたどり着く翔太達。
しかし、そこで待っていたのは……というお話です。お楽しみに〜



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